この作品はオリジナルキャラクターを含みます。
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私を見てよ
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- 1 : 2015/07/02(木) 00:14:59 :
- 私小説の初シリーズです。短編ですが頑張ります
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- 2 : 2015/07/02(木) 20:44:32 :
「お姉ちゃんがいじめて来たよぉ~~!」
「こら!結!お姉ちゃん何だから弟をいじめないの!!」
「違う。私、やってない」
「嘘おっしゃい!!こんなに泣いてるじゃないの!」
「うぇっ……ひっく…グスン…ママぁ……」
「よしよし、あっちでテレビ見ておいで」
私の名前は、橘結。
中学二年でごく普通の中学生。
でも、少し皆と違うところがある。
一つ目は、お父さんがいないこと。
二年前に病死した。
お葬式の時はひどく泣き叫んだのを覚えてる。
二つ目は、お母さん。
どこにでもいる普通のお母さんと思うだろう。
でも違う。
私のお母さんは、弟が生まれてから私を邪魔者扱いするようになってきた。
お父さんが死んでからは私の部屋も、無理矢理なくして弟の部屋にした。
・・・・・・・・
まるで、本当の娘ではないような扱い
どうして、こんなのがお母さんなのだろう。
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- 4 : 2015/07/02(木) 20:57:43 :
- 今のは、弟が私の宿題に落書きをしようとしてたから少し叱っただけ。
それなのに弟は、地が割れるような声で泣き叫んだ。
スマホをいじってるお母さんの元へ行ってもっと大きな声で泣いた。
お母さんはスマホの画面から目を離さないで私を叱った。
「泣き方で普通何したかわかるはずないじゃん」ボソ
お母さんは耳がいい。
すぐ聞き取って反撃してきた。
「いつもと泣き方違うから、あんたが酷いことしたんでしょう?」
「・・・は?」
訳がわからない。
相変わらずスマホの画面から目を離さないお母さんに何がわかるの?
何が見えるの?
自分が興味ある話題でしょ?
私達の何を見てたって言うの?
「じゃあ何したか言ってよ!わかるんでしょ?明確に!さぁはいどうぞ言ってください」
「んなのあんたが酷いことしたのよ!」
埒が明かない。
もうめんどくさいとさえ思う。
「はいはい私が悪いですよ!!すみませんでしたね!!」
イライラを謝罪にぶつけて、部屋に戻った。
机の上には青いクレヨンで落書き済みの数学のプリント。
それを見ると、無償に胸が苦しくなった。
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- 5 : 2015/07/02(木) 21:52:14 :
翌日。学校に行った。
学校は天国だ!お母さんはいないし、弟はまだ保育園だから学校にいない。
唯一のゆったりできる場所。
幸い、友達にもグンと恵まれている。
「おっはー!結~!」
「おはよー。今日はやいね」
「お母さんが毎日煩くてさ……」
この子の言う、『煩い』は、悪い方ではない。
「ちゃんと朝食食べなさいよ」
「時間割りはしたの?忘れ物はない?」
普通の会話だ。
普通の母と子の会話だ。
普通の親子の会話だ。
普通の家族の会話だ。
私の家にはそれがない。弟に付きっきりで、私が起きる頃にはリビングにいない。
お母さんの部屋で、弟は愛されている。
私が一人で朝食を食べている間、ずっと弟の笑い声が響きわたる。
無邪気な笑い声。それが私にとって許せなかった。
「結?考え込んでどうかした?」
「……え!?な、何でもないよ?」
「そう?相談したいときは言ってね。いつでも相手になるよ」
「大丈夫だよ。ありがとう」
最高だ。
いつも学校だったらいいのにな。
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- 6 : 2015/07/02(木) 22:02:37 :
- お昼休み。今日の給食、美味しかったな。
家ではお母さんずっとスマホしてるからいつも家族全員分私が作ってる。
スマホの画面をぶっ壊したいと思うことが度々ある。
「おーい、結やーい」
「おー」
今、親友の美優が走ってきた。
「ふぅ……今日もS君、かっこよかった!」
美優には好きな人がいる。
毎日毎日、私に【S君】について語ってくれる。
それを聞くだけで、私は満足だ。
「あのさ、美優」
「ん?何?」
「……相談、いいかな?」
「……お母さんのこと?」
「……うん」
流石親友だ。
一発で当てる何て中々じゃないか。
「で、どうしたん?」
お母さんの話になると、美優は真面目だ。
私のお母さんの実態を理解してるからだ。
「最近、スマホばっかりやってて。その癖私と弟の喧嘩は、自分は見てたように言うんだ。実際とは違うことを言うんだ。しかも、それを思い込んでいつまでも、いつまでも、私を攻め続けてくる」
「……」
「私……スマホより価値が低いんだって思った」
「!」
だって、私を見ている時間よりスマホの方が長いんだ。
見てないのに、口だけは出してくる。
そんなお母さんと、それを分かってて大声で泣き叫ぶ弟が大嫌いだった。
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- 7 : 2015/07/02(木) 22:07:21 :
「結……」
「……」
「……」
「ごめん。美優にはわからないよね。家族の問題だもん」
「そ、そんなこと……」
「よし、明日も頑張るか!お母さんにはまけないぞ~!」
「結……」
私が無理していることは美優も分かっていた。
でも、橘家の問題。
下手に口出しはできない。
ごめんね、美優。親友の貴女を困らせちゃって。
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- 8 : 2015/07/02(木) 22:11:44 :
家に帰れば、スマホとにらめっこしているお母さんとテレビにお守りされてる弟。
親子で画面に釘付けになっている。
部屋でカバンを下ろして急いで夕食の準備に取り掛かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
部屋に戻ったら昨日と同じように弟は落書きの用意をしていた。
「ねぇ……いい加減やめてよ」
「お絵描きお絵描き!」
「白い紙あげるから、あっちでしてきて」
「やだ!この紙がいいの!」
弟の手には私の好きな国語の作文用紙。
フザケンナ。
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- 10 : 2015/07/03(金) 22:46:31 :
- この時、私を繋いでいた我慢の縄が切れてしまった。
「いい加減にしろって言ってんでしょ!!」
「!?」
「いつもいつもいつも!!あんたのせいで私はいつも見下ろされる!!」
「ぅ……」
「泣くな!!泣いてもお母さんになんか負けないからね……もうあんたの策略もこれぐらいで終わりよ!!」
私は、人生で初めて弟に怒った。
初めての私の怒りに、弟は立往生。
騒ぎを聞き付けたお母さんが私の部屋へ侵入してくる。
「何よ今の声!」
珍しくスマホから目を離したと思えば鬼の形相か。
バカらしい。そんなもので子供が怖じ気づくなら世の中いい子ちゃんばかりだ。
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- 13 : 2015/07/05(日) 22:36:17 :
「ま、ママぁ……」
トテトテと、弟はお母さんに泣きつく。
よしよし、と頭を優しく撫でてやっているお母さんを私はキツく睨み付けた。
「……何よ、その顔」
「その顔ですが何か?」
「何睨み付けてるのよ!!」
「は?意味分かんない。今まで隠してただけで元々この顔ですけど?スマホから目ぇ離さないからそれぐらいもわからないんだ、へぇ~」
お母さんは顔を真っ赤にして怒ってる。
そして、私に一言。
「あんたなんか、うちの子じゃない!!出ていけ!!」
これが、子供に言うべき親の言葉なのだろうか?
そんなに言うぐらいなら、喜んで出ていってやる。
一生この家に戻らない覚悟で出ていってやる。
おばあちゃんの家に行くとか、そんな軽々しい家出なんかしない。
本格的に失踪してやる。
「最後に一言だけ言う」
「な、何よ」
「後悔するなよ」
「はぁ?」
間抜けな面したお母さんを後に、私は消えた。
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- 14 : 2015/07/05(日) 22:40:25 :
……どうしよう。
お姉ちゃんが、本当に出ていっちゃった。
本当は僕が……僕が悪いのに!
お姉ちゃんにわがまま言って困らせて僕が勝手に大声で泣いてママが怒って。
調子に乗って僕はわんわん泣き続けた。
ママの温もりに、お姉ちゃんの我慢強さに甘えて僕は……。
「ふ、ふん!どうせ明日にでも帰ってくるでしょ!」
「……ママ」
「心配ないわよ。あの子根性無しだしすぐ帰ってくるわよ。さぁねんねしましょう」
「うん……」
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- 15 : 2015/07/05(日) 22:44:34 :
次の日。僕はお姉ちゃんのことなんて忘れて保育園に行った。
まーくんとゆーくんと、皆と一緒に鬼ごっこしたりかくれんぼしたりした。
楽しかった。
でも、いつもと違うことに気付いちゃった。
ママのお迎えが、いつもより遅いんだ。
いつも僕は皆より早く帰るのに、今日は逆に僕が最後になっちゃった。
「あら、珍しいわねぇ」
保育園の先生も言っていた。
ママがお迎えにきたのはそれからしばらくしてからだった。
顔の色が青くなってて、病気になっちゃったのかと思った。
ママは何やら、先生に事情をお話していた。
何の話だろう?
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- 16 : 2015/07/05(日) 22:48:09 :
お家に帰ると、お姉ちゃんがいなかった。
ようやく僕は、お姉ちゃんのことを思い出した。
_____お姉ちゃんは、出ていったんだ。
僕は罪悪感に見回られて……泣いた。
「お姉ちゃん……お姉ちゃぁん……」
「よしよし。直、帰ってくるわよ。」
どうしてママは、お姉ちゃんのことを心配しないの?
お姉ちゃんのあのお目目、見なかったの?
本当に怒ってた時のお顔だよ!
僕にもわかるのにどうしてママはわからないの!?
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- 19 : 2015/07/05(日) 23:26:44 :
あれからいっぱい時間が経ったけど、お姉ちゃんが帰ってくることはもうなかった。
ママは、おまわりさんにお願いをしていた。
お姉ちゃんを探してくださいって。
おまわりさんがお家にはいっぱい来て、僕もたくさん聞かれた。
おまわりさんは真剣なお顔をしてて……本当はとてもとても怖かったんだ。
お姉ちゃんを怒らせたのは本当は僕が一番悪いんだ。僕が調子に乗ってお姉ちゃんを困らせなかったら……
でも、おまわりさんやママに本当のことを言った後が怖い。
僕は何も言えなかった。
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- 20 : 2015/07/05(日) 23:32:20 :
_____姉貴が失踪して、10年ぐらいの月日が経った。
あれから警察は、未だに調査を続けているが、姉貴は見つからない。
一体どこへ行ったのか?
そもそも生きているのか?
そんなことは、誰にも分からなかった。
お袋は、この前死んだ。
胃癌だった。
お袋は最期まで、姉貴のことは一切口に出さなかった。
悪魔で、姉貴の存在を俺から消すつもりだったんだ。最期まで。
でも俺は、あの日のことを懸命に覚えている。
俺のせいで。姉貴は失踪。
所持品は財布とガラケー。そして、亡くなった親父の形見のみだ。
手がかりは、それしかなかったと言う。
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- 23 : 2015/07/06(月) 22:33:35 :
姉貴はあの日、どんな思いを抱いて失踪したのだろうか。
俺はあの日のことをずっと後悔し続けている。
もし、もしも、姉貴に会えるのなら必ず謝りたい。
謝罪しないと気が済まない。
『ピーンポーン』
玄関のインターホンが鳴り響く。
俺は頭を降って事を忘れ、玄関に向かった。
「どちら様ですか?」
「……私」
私と言われても聞き慣れない声。誰だかわからない。お袋の友達なら、そう名乗る筈。でも俺の友達でもない声。
「だから、私よ。橘結」
聞き覚えのある名前に反応して直ぐ様ドアをオープンした。
いきなりだったので、鼻をドアで打っていた。
「いたっ!」
「姉貴!?本当に、姉貴なのか?」
「うわ……あんた大きくなったね」
「姉貴……ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
「!?」
俺は謝りながら泣きじゃくった。気がつくと、姉貴は俺の頭を胸に引き寄せて抱いていた。
「……!」
「お姉ちゃん帰って来たぞ。ただいま」
「お帰りぃ……ごめんなさいぃ!!」
「もうそのことは気にせんでいい。過去は変えられないんだから」
「俺が……あの時調子に乗らずに謝ってれば、姉貴は……」
「もういいって。お母さん死んだし私もう、ここ出ていく理由なくなったしすっきり♪」
「……でも、お葬式ぐらいは出たかったな」
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- 24 : 2015/07/06(月) 23:13:59 :
- 期待です!
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- 25 : 2015/07/07(火) 22:23:08 :
姉貴は、お袋が死んだから戻ってきた。
……しかし、疑問だ。
俺は姉貴のメールアドレスすら知らないというのに何故、死んだというのがわかったのだろうか?
俺が伝えたのは婆ちゃんと従兄弟と、お袋の仕事の仲間だけだったのに。
何故なんだ?
「あー……久しぶりだねぇ。」
「私の部屋、何か手入れした?」
姉貴が振り返って聞いてきた。
「ううん。俺が時々、掃除している以外は何も」
「あー、ありがとう。じゃあ、あの日の宿題とか残ってるかなぁ」
トコトコと、呑気に部屋へ行った。
まるで、あの時のことを思い出さないようにしているみたいに。
久しぶりだからかもしれないけど……俺、姉貴のことよく分かんないよ。
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- 26 : 2015/07/07(火) 22:28:21 :
_____10年振りに、この部屋へ戻ってきた。
お母さんが死んだって聞かされたのは、美優が知らせてくれたんだよね。
家出してから、美優に色々と世話をかけてとうとう警察に見つからないで10年経っちった。
美優、この町から離れていなかったんだ。
もう24歳だし、そろそろ結婚したいとか言ってたけど、あの子モテモテなんだよね。
・・・羨ましい。
机の上には、少し黄色くなった作文用紙。
そして、赤いクレヨン。
本当にあの日のままじゃん。せめて片付けなよwwと、思いながらもあの日、出ていったことを後悔している自分がいる。
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- 27 : 2015/07/10(金) 22:51:25 :
お母さんは、どうだったか知らないけど、皆、心配して私にメールやら電話やら。
お母さん、私のメールアドレスとか興味無かったし私もお母さんのアドレスなんて知りたくもなかった。
だから、連絡が取れなかった。
「姉貴……」
「ん?何よ?」
「もう、この家から離れない?」
「……」
実は、迷ってる。
お母さんが死んだから、暮らしたいけれど、それは虫が良すぎる。
弟が、何と思うのやら……考えただけで怖い。
「俺……今までのこと、姉貴の口から聞きたい」
「……!」
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- 28 : 2015/07/10(金) 23:01:42 :
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コイツ……生意気なこと言っちゃって!
もう!かわいいな!
普通、3~5歳ぐらいがかわいいと思うのに、私は何故だか15歳の弟がかわいいと思った。
私を楽々と越している身長。
ちょっと生えている口回りのヒゲ。
……成長したんだね。
昔より、声の低さも、言うこともかなり変わった。
昔は、大嫌いだったけど、今は逆だよ。私のことを長年引きずっていたんだ。
ごめんね。
「うん……じゃあ、一緒に住もうかな!」
「……っしゃ!」
「その代わり、受験合格しろよ~?」
「当たり前だろ?」
「ふふ、そうだね。」
昔は、家にいること自体うざったくて死にたいとすら思った。
でも、家を出ても一人では生きていけなくてたくさんの人の手を借りた。
ここで、初めて気づいた。
お母さんは、この経験を何度も何度も繰り返している。
辛いだろう、疲れるだろう。
それの休憩の延長が、過度のスマホのやり過ぎの原因だったのではないかな。
私を怒ってたのは、まだ小さい弟に精一杯の愛情を注いでいたから。
私に構える程、余裕はなかったんだ。
お母さん、ごめんなさい。
あの時は幼くて自分のことしか言えなかった。考えれなかった。
でも、今はわかる気がするんだ。
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- 29 : 2015/07/10(金) 23:02:41 :
そうして私は、仏壇に線香を彩った。
end
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- 30 : 2015/07/10(金) 23:08:04 :
- 【子供から大人へのメッセージ】
いくら忙しいからと言って愛情を注ぐのを怒りに変えては私達はとても傷つきます。もっと子供を見てあげてください
そして、いつもありがとうございます。私達を養っていくために一生懸命働いてくださり。もっと楽させるために私達も精一杯の努力をしているつもりです。まだまだ未熟で卵なので、色々と迷惑をかけますが、どうぞよろしくお願いします。
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- 31 : 2015/07/10(金) 23:14:20 :
- っちょ、泣きそうになったじゃないか!感動だ!!!
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- 32 : 2015/07/12(日) 16:59:12 :
- 僕、思いっきり泣いちゃいました
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- 33 : 2015/07/13(月) 01:26:22 :
- うわーん
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- 34 : 2016/07/13(水) 19:42:16 :
- う…ヒッグ…う、うわーん!!!
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- 35 : 2017/06/25(日) 20:08:54 :
- 。゚(゚^ω^゚)゚。 超 感 動 ! !
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- 36 : 2017/07/21(金) 11:14:27 :
- わ、私のお母さんみたいじゃないか!
なにが言いたいっていうと超感動
- このスレッドは書き込みが制限されています。
- スレッド作成者が書き込みを許可していないため、書き込むことができません。
- 著者情報
- この作品はシリーズ作品です
-
子供から大人へ伝えたいメッセージ シリーズ
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