冒頭でも述べている通り、ムーブメントは時計の駆動を司る内部機械です。ファッションアイテムでもある時計はまず外装(デザインの良さ)に目が行くものですが、内部機械であるムーブメントも時計を楽しむ上で重要なポイントと言えるでしょう。



時計のムーブメントには大きく分けて「機械式」と「クォーツ式」が存在します。

機械式は巻き上げられたゼンマイがほどける力を利用して時を刻むムーブメントで、クォーツ式は電池によって駆動するムーブメントです。

さらに機械式・クォーツ式の中でも複数種類に分けられており、機能や価格はピンキリです。時には、ムーブメントが時計のデザインに大きな影響を及ぼすこともあります。

なお、アナログ式であれば、この「動力源」の他に調速機構と輪列でムーブメントは構成されます。



すなわち、どのようなパーツが使われていて、どのような機能を持つのかはムーブメントによって大きく異なり、どのムーブメントを選ぶのかも時計選びの醍醐味となります。

ちなみに、ムーブメントの種類を表す際にCal.という略語が用いられますが、これは「キャリバー」と読みます。



①機械式ムーブメント
世界三大腕時計

機械式ムーブメントは、前述の通りゼンマイを巻き上げ、それがほどける力を利用して駆動させるムーブメントです。

機械式ムーブメントは主に「香箱(ゼンマイを格納する歯車)」「基本輪列(歯車が組み合わされて、香箱の回転を伝達していく機構)」「調速機」「脱進機(エスケープメント)」で構成されています。地板と呼ばれるムーブメント本体に、各パーツが組み込まれていきます。ちなみに各歯車類は、ブリッジでサンドイッチ状に挟み込むことで固定します。高級機などではこのブリッジにコート・ド・ジュネーブやペルラージュなどの装飾が施されており、それは見事ですよね。



また、ルビーは歯車の軸受け等に用いられており、摩耗を防ぐ目的がありますが、美観にも一役買っています。



そんな機械式ムーブメントの仕組みを簡単に解説すると、ゼンマイがほどける力を調速機・脱進機で制御し、各輪列(歯車)に伝えることで、規則正しい時刻表示をします。

とりわけ調速機・脱進機は機械式ムーブメントのキーアイテム!今後、「ムーブメントで時計を選ぶ」うえで、ぜひ知っておきたいパーツと言えます。

機械式時計 仕組み


調速機はテンプとも呼ばれる(テンポにちなむ)パーツのことで、ヒゲゼンマイを備えます。ヒゲゼンマイは伸縮性を持ったバネで、テンワの往復運動とともに膨張・伸縮し、ゼンマイを格納する香箱の回転スピードを制御します。ちなみにこのテンプの振動数はメーカーのスペック欄に記載されることも多く、「28,800振動/時(1秒間に1秒間に8振動)」「21,600振動/時(1秒間に6振動)」などといった表記を見たことがあるかもしれません。

テンプの振動数が高ければ高いほど細かく時間を刻むことが可能となります。

機械式時計 仕組み

出典:https://www.supakopitokei.com/franckmuller_copy86.html

このテンプの「テンポ」と各輪列を繋げ、精度を維持するのが脱進機です。ガンギ車とアンクルで構成されたこの機構はレバー脱進機と称されており、200年ほども前に発明されました。レバー脱進機は基本設計がほとんど変わらないまま、現代機械式ムーブメントに用いられることも驚きですよね。もっとも各パーツは格段に進化し、実用性はいや増しています。

なお、当然ながらゼンマイはほどけきると、時計の針が止まります。ゼンマイの持続時間のことを「パワーリザーブ」と呼び、文字盤にゼンマイ残量を示すパワーリザーブインジケーターが搭載されたモデルをラインナップするメーカーもあります。

https://www.rasupakopi.com/omega_z145.html
また、ゼンマイのパワーをトルク(回転力)と呼び、めいっぱい巻き上げられている状態だと最もトルクが強く、ほどけるにつれて弱まっていきます。トルクが弱まると、時計本来の精度が出しづらくなる傾向にありますが、これまた近年では各社が安定した精度維持のための機構開発に余念がありません。