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エレヒス 「一番近くて一番遠いあなた(お前)」
- 進撃の巨人 × 恋愛
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- 1 : 2018/01/03(水) 14:13:40 :
- 切なくなる予定です!
低速更新ですがよろしくお願いします!
-
- 2 : 2018/01/03(水) 14:24:00 :
- 昔の私はあなたと一番仲が良かったよね。
最初は怖かったけど、だんだん優しい人って思えるようになったんだよ。
知ってるよ?
あなたが宿舎裏にひっそり住んでいた親猫と子猫に朝食と夕食をあげてたの。
私も色々と手伝ったのにあの時のあなたは私の存在なんて知らなかったんだよね。
でも、ある日を境に私を知ってくれたね。
あの時かな。私があなただけに打ち明けた私の秘密。
あなたは余計な事を言わずに、ただ、私の頭を撫でてくれたね。
私はそのあとあなたの膝でぐっすり寝たんでしょ?
ちょっと筋肉て硬かったけど、暖かくて気持ちよかったな。
真夜中になって私を起こして、女子寮に連れてってくれたね。
「変な噂たったらゴメンだからな。」って言ってね。
ふふっ。朝、目が覚めると私はユミルといっしょに寝てたんだっけ。
ユミルが助けてくれたおかげで何事もなかったよね。
その次の日からかな。
急激に私たちの仲が深まったって知れ渡ったのは。
そこからはまた今度話そうかな。
-
- 3 : 2018/01/03(水) 20:06:18 :
- 昔の俺はお前と一番仲良かったよな。
最初は気持ち悪いだけのお前だったのに、
だんだんきれいな笑顔を見せるようになったな。
知ってるからな?
俺が猫の親子に飯あげてる時に物陰から覗いてるの。
そのあとに掃除とかしてくれてんのも知ってる。
笑顔は気持ち悪かったけど、行動は嫌いじゃなかった。
その行動も今となっては懐かしいな。
エレン「久々にあいつの事、思い出したな。」
日は落ち、夜空には星が散りばめられている。
エレン「寝るか。」スッ
-
- 4 : 2018/01/03(水) 20:30:10 :
- 期待です!
-
- 5 : 2018/01/03(水) 20:33:04 :
- いつもよりも長く寝た気がする…
ヒストリア「う、ぅん…」ファァ
…
いつもならすっと起きれるのに今日は何故か起きれない。
何故だろう。
きっと昨日あなたの事を思い出したからだ。
あの時は偶にだけど寝る時も側にいてくれたね。
あの時、隣あった温もりは今はもうない。
いつかきっと、またあの温もりを感じれるのかな。
私はあなたの事を思いながらベットから体を起こす。
トントン
ヒストリア「…はい。」
「ヒストリア様。朝食を食べましょう。今日の予定は…」
…
はぁ。
つまらない。
あなたが私の側にいればこんな気持ちにはならないのに…
-
- 6 : 2018/01/03(水) 20:34:43 :
- 名無しさん
ありがとです!
-
- 7 : 2018/01/03(水) 20:48:41 :
- 期待
-
- 8 : 2018/01/03(水) 20:52:32 :
- ふと目を覚ますと隣には金髪の誰かがいた。
スッ
違う…
俺はその金髪の頭を撫でた。
アルミンだ。
アルミン「…んん…」スピー
昔なら隣にはもっと小さくて柔らかい金髪がいた。
アルミンが嫌とかじゃない。
もっと昔ならアルミンとミカサが一番だったのにな。
俺は壁外調査に来てる。そうだ。巨人を駆逐するんだ。
巨人を絶滅させたらあいつとまた、楽しく喋れるのかな。
俺にはさっぱりだ。
体が重い…
昨日あいつの事を考えた時からだ。
あいつのいない朝にはもうなれたはずなのに。
ツー
!?
ベットに水が一滴。
そうか。
俺は泣いているのか。
…
……
お前が側に入ればこんな気持ちにはならないのにな。
俺はもう1度、布団を被った。
深く。
今空いている心を塞ぐように深く。
そして再び、眠りについた。
-
- 9 : 2018/01/03(水) 22:51:59 :
- せ、切ない、、
-
- 10 : 2018/01/04(木) 00:34:47 :
- 訓練兵の時に学んだ事は今は殆ど活かす事が出来ない。
あの時学んだのは勇気。根性。巨人に対しての知識。怒り。憎しみ。そして仲間。友達。親友…
そしてエレン。
エレンがいたから私は自分が生き延びる事を選んだのかな。
エレンが私を必要とし、私がエレンを必要としてたからあの頃の私は元気いっぱいだったのかな。
…
-
- 11 : 2018/01/04(木) 00:35:39 :
- なら今、エレンがいないこの壁内には何があるの?
財?
権利?
優遇?
そんなのいらない。
今からでもここを飛び出してあなたのもとへ飛んでいきたい。
でも駄目なんだよね。あなたは私がそっちに行くと困るよね。
昔、言ってくれたね。
「俺がそばに居るから。泣くなよな。」
…
……
なんだろう。この気持ち。
なんでこんなにもどかしいのだろう。
なんでこんなにも胸が痛いのだろう。
この気持ちを静めてくれるのはあなただけなの。
はやく…
1秒でもはやく…
今すぐにでもあなたの胸に抱きつきたい。
だから…
だから……
ヒストリア「はやく…帰ってきて…エレン。」
そう思って私は筆を手に取った。
手紙を書けば、あなたに私の気持ちは伝わるかしら。
ヒストリア「会いたいよ…エレン…」
筆を動かしてるつもりなのに紙が濡れていて書けないや。
毎日、私は手紙を書こうとする。
でもいつも失敗だ。
くず箱には積もり積もった紙でいっぱいいっぱいだ。
また一枚、私の涙で紙は濡れ、悲しさというバケツに放り込まれる。
雷雲が光る、真昼の闇空。
-
- 12 : 2018/01/04(木) 12:00:58 :
- 午前5時起床。
その文字が頭の中に浮かぶ。
…
……
!?
今何時だ?
エレンはまだ重い体をなんとか起こして古時計を見た。
見たという表現もおかしいのかもしれない。
脳内では“見ている”のに目は開かない。
時計の針の音が部屋全体に響いている。
ふいに昔、家族と住んでいた家を思い出した。
俺の部屋はこの部屋と同じような家具の配置だ。
あぁ、ミカサか。
俺が少しでも寝やすいようにしてくれたのか。
ありがとな。ミカサ。
あの時は俺もミカサも同じベットで寝てたな。
寒い時は二人で布団を顔まで被ってたな。
時々アルミンが泊まりに来た時は三人で寝たよな。
三人で寝るベットは狭すぎてなかなか眠れなかったな。
そうだ。アルミンはどこにいった?
後ろを振り返る。
ベットにはアルミンの姿はない。
あるのはぐちゃぐちゃになった掛け布団と古い本だけ。
アルミンはもう起きてたのか。
そう思い、俺はここに立っている理由を思い返す。
そうだ。時計を見に来たんだ。
懐かしい昔の出来事を振り返るうちにだんだんと目が覚めてきた。
チクタクと鳴り響くこの部屋にとても小さな声とともに全力でドアを開ける音が混じった。
「7時じゃねぇか…」
ガチャッ
古い本にはこう書かれていた。
『壁外のヒストリー』
それはアルミンのものだが、
二つの栞が挟まっている。
一つは アルミン とだけかかれた真っ白な栞。
もうひとつはポケットに入れて久々に使ったような折り目が多数付いている栞。
黒髪の少年と金髪の少女が手を繋いでる絵が描かれている。
エ …… & …………ア
シワがつくこの栞では文字はこれしか分からない。
だが、はっきりとわかる事もある。
この少年と少女はとても、とても笑顔な事。
窓から入り込む光がその本を照らし、
本と窓の間にはキラキラと光る埃が、
煌めいている。
-
- 13 : 2018/01/05(金) 00:23:22 :
- トントン
はい。なんて返事したくないけど、一応しなきゃね。
ヒストリア「はい。どうぞ。」
「ヒストリア様。今日は日が落ちる頃にパーティーがあります。まだ独身の男性もいらっしゃいますので気になる方が出来ましたら私にご相談下さい。」
ヒストリア「…はい。」
ガチャ
山積みになった書類をまだ半分も片付けていないのにこれだ。
パーティーなんていきたくない。
でも行かないと立場上ダメなんだよね。
私は毎月二回、パーティーに出ることが決まっている。
そのパーティーで未来に夫となる人を見つける為らしい。
私はもう決まっている。エレンです。
と。
そう言いたい。
でも言ったらあなたは嬉しい顔をしてくれる?
訓練兵の時はみんなにバラしてたけど、訓練兵卒業と同時にみんなには別れたって嘘の報告したよね。
そうしないとだめだ。なんていっちゃって。
私は最初、意味が理解出来なかったよ。
でも、全部私の為なのね。
ただ一つ。あなたがくれた一枚の紙とその紙と一緒にネックレスをくれたね。
私。今でもつけてるんだよ。
パーティーの時でもね。
パーティーに参加している男性たちは、
「良いネックレスだね。自分で買ったの?」
とか言ってくるけど、私は迷わず
「大切な人から貰ったものです。」
って言い切るんだよ。
でもいつも、
「あなたにそんな貧…古いネックレスは似合わないよ。僕がもっと豪華で素敵なものを沢山買ってあげます。」
だなんて言ってくるんだよ。
私は軽蔑したよ。
その人には迷わずビンタしてやったの。
そうしてあなたが外を出ていった時からずっと。
何人ビンタしたかわからないや。
その度に、遣いの人も
「ヒストリア様。また拒絶したんですか?あいては○○家の坊っちゃまですよ?」
私の気も知らずにね。
私は王と言っても、対してそんなに財産があるわけじゃない。
殆どが壁内の整備や、食料、貧困な方への少しの支援に回っている。
何故私なのだろうか。
何故私に媚びてくるのだろうか。
多分、それは私がパーティーではクリスタだからなんだと思う。
クリスタと言っても行動はそれなりに上品に振る舞うが、偽りの笑顔は変わらない。
私はもうヒストリアを受け入れてくれる最愛の人が見つかったからクリスタになんて戻りたくないの。
でもクリスタに戻らないとあなた以外は受け入れてくれないの。
この世界は残酷だね。
ふふっ。昔ミカサが言っていたね。
今、ミカサもそっちにいるんでしょ?
いいな、エレンと会えて。
エレンと喋れて。
エレンの目を見ることが出来て。
私は日々、書斎に積まれた夥しい書類と、
裏では気持ちの悪い笑みを浮かべている人しか見れないの。
私にはわかる。
私に話しかけてくる男の人は表では「爽やか」
という言葉が似合う人になっているのかもしれない。
でも、心の中は何か黒い物がようようと動いているようにみえる。
訓練兵の時にライナーが言っていた事を思い出す。
「クリスタは笑顔がとても可愛いな。」
あの時はうん!と偽りの笑顔して返したけどやつぱりライナーには私の表しかわからなかった。
私にはライナーやその他男子がひっそり話してるの知ってた。
その時の顔はきっとパーティーに参加してる人の心の黒い物を表しているのだろう。
寒気がしてしょうがない。
-
- 14 : 2018/01/05(金) 00:29:38 :
- でも、あなたは違ったね。
真顔でこっちを見て、
私を拒むような顔をして去る。
今思えば、あの時から意識してたのかも。
意識って言葉も使っていいのか分からないけどね。
最初は好意よりも疑問だったのかな。
その疑問が嫌悪に変わり、
そして好意になった。
そして今は、
「愛してる…か…」
自分でいうのも恥ずかしい。
そういえば、今度、壁に登って民へスピーチするんだっけ。
あ…
その日か。
あなたが帰ってくるのは。
-
- 15 : 2018/01/05(金) 06:52:50 :
- …良作の予感、
期待です!!
-
- 16 : 2018/01/05(金) 07:11:13 :
- 期待しかない
-
- 17 : 2018/01/05(金) 23:30:29 :
- 期待ですそして切ないですね
少し涙が出てきました
-
- 18 : 2018/01/05(金) 23:34:45 :
- 書き方がすごい上手くて尊敬!
-
- 19 : 2018/01/05(金) 23:55:16 :
- 小鳥が溜息をつく様に枝の木陰に隠れ、真下を覗いている。
巨人だ。
それも奇行種。
「あんなところにもいるのね。」
黒髪の幼馴染はそう言って瞬時に馬を飛び降り、巨人のうなじ目掛けて飛翔して行った。
使い慣れたブレードはいつもなら汚れが付着していているのに汚れがなく、よく尖っていて刃の先には太陽の光が屈折し、芸術のようにも思える。
ブレードを削いだのか。
「やっと帰れるね。エレンは帰ったら何する?」
金髪の幼馴染は馬に乗りながらだが、手馴れたようにこちらを向きながら馬のコントロールをしている。
「俺か?俺は…そうだなぁ。」
そんなの決まってるじゃないか。
ヒストリアに会いに行く。
しかし、もうみんなには別れたと告げている。
ミカサやアルミンにもだ。
それ以前にそう言っておかないと心が緩んで壁外調査に集中出来ない。
ヒストリアは王女だ。ただでさえ、ヒストリアが住む土地に入るには正式な服装や言葉遣い、身分証明書が必要になる。
調査兵団は庶民の中では良好な信用を得ているが、ヒストリアの住む“土地”ではあまり表現は良くない。
それに俺は別格らしい。
巨人になれる。これはあいつらからしたら壁外で生きる巨人と同じ扱いになっている。
酷いもんだな。
…
二人きりでは絶対会えないよな。
馬を走らせるのもあと一日はかかるだろう。
馬も疲れるだろうな。
「ありがとな…」スッ
馬の気持ちはさんざんヒストリアに教わったから充分理解出来る。
馬の世話をするヒストリアは女神。
それは、身内のいない子供にもわかるんだってな。
孤児院でアルミンが言ってた気がする。
片手でリードを。もう片方の手で馬を撫でる。
ブルルッ…
お?
若干ではあるが俺の尻の痛みが少なくなっている気がする。
俺の気持ちを理解しているのか。
「馬さんはね。ヒトと同じなの。ちゃんと感情ってのがあるの。だから冷たくしたり、見捨てたりしちゃダメだよ?」
ふいに孤児院で語っていたヒストリアを思い出す。
「ヒストリアにこのこの事伝えないとな…」
少し笑みが零れる。
まだまだ地平線には土しか見えない。
壁が見えるのはあと何個エピソードを思い返してからだろう。
時間はたっぷりある。
帰ってからヒストリアに会ったら沢山の話をしよう。
そしてヒストリアの話も聞こう。
…
俺は調査兵団だ。
いつ壁外調査に出させるかわからない。
壁内にいる時間。俺が幸せでいられる時間をたっぷり使ってお前と向き合おう。
…
……
………
調査兵団の馬波は鳥達とは真逆の方へと走り続けている。
自由はあともう少しで手に入る。
それまで自由の空へと消えていった鳥達とはお別れだ。
青空と並行に進むこの地に悲しみと希望を背負う馬爪の跡がまた増える。
-
- 20 : 2018/01/06(土) 00:38:00 :
- >>15 名無しさん
ありがとです!
-
- 21 : 2018/01/06(土) 00:38:53 :
- >>16 名無しさん
そうですか!
ありがとです!
-
- 22 : 2018/01/06(土) 00:41:24 :
- >>17 SAO 東方 進撃大好き男 さん
切なさが伝わるのは嬉しいです!
-
- 23 : 2018/01/06(土) 00:47:49 :
- >>18 名無しさん
尊敬ですか!?
まだまだ未熟者ですので…笑
-
- 24 : 2018/01/06(土) 22:58:16 :
- 素晴らしいです!
久々にヒストリアの良作見れて嬉しいです!
-
- 25 : 2018/01/06(土) 23:01:21 :
- …
……
………
朝日が登って数時間たった頃。
私は久しぶりにあなたの事を“じっくり”思い出した。
あなたの事はここ何日か“じっくり”とは考えれなかった。
壁上でのスピーチ原稿に祝伝。新たな公約に日々改正され続ける条約。
民は憲兵に不安を持ち、兵団という組織に子供を送りたくない等の意見が山のように書類で転送される。
私が壁上でスピーチを行う。
それは数週間前から全ての民に知れ渡っていた。
民報と書かれた木材の掲示板に今日の事が何十枚も張り出されていたらしい。
砂埃が舞い散る壁上に憲兵団が列を整えている。
晴天の空には雲一つなく、民は喉を乾かせ、壁上をじっと見つめている。
団の列は外側から見渡すほど長蛇の列を作っている。
その列の最前線、言わば地上から見上げれば見えるくらいのところに私は立っている。
若干ではあるが私の足は震えている。
未だにこの壁内全ての民に対して言葉をかける、という事に慣れないのだから。
今からお昼くらいまでの約数時間、私が長時間お話をしてしまい大変迷惑をかけてしまうことをまず謝罪しようか。
謝罪のあとは何をするのだろう。
今日の進行は全て憲兵団が行ってくれるという事は私も知っているが、私は今日の進行がどんなのか知らない。
第一教えてくれなかったから。
「ヒストリア様は壁上に立って、最初のお言葉だけで構いません。あとは私共で行いますので。」
「…でも、私が全部知らなくていいの?」
「…はい。」
私に後ろ姿を見せたまま、その憲兵の男は去っていった。
…
私は仮にもこの壁内の女王なのだからもう少し態度に気をつけてもらいたい。
だが、女王としての仕事は全うしてるとは言い難い。
書類の書き付け、事業の決定等は私が行っているが、憲兵は全ては教えてくれない。
その事業の表向きしか教えてくれないの。
だから言い方は悪いけど憲兵団の中にスパイを混じらせているの。
だから数日経てば全て分かるんだけどね。
この壁内は嘘と欲望が日々、積重なっている。
それは多分、自由がないからだと思う。
その自由をエレン達が取り返しに行っているのが気が付かないのかな。
それともこの狭い鳥籠の中だけでしか自分を強く出来ない弱虫なのかな。
その弱虫は特に王都の近くに住む見栄を張る男や、女なんだけれども。
私は地上いるそいつらを睨みつけてやった。
しかし、私の睨みには気付かずに庶民に椅子を持って来させ、その椅子に足を組んで堂々と座っている。
あの扱き使われている庶民達をはやく自由な世界へと飛びた出せたい。
巨人のいないヒトだけの世界へ。
頭ではこんな事を思っているものの、口には一切出さず、私のささやかな謝罪と民へのスピーチは軽く五分ほどで終わった。
あとは憲兵に任せればいい。
私の仕事は終わり。
今、何を言おうと憲兵に止められるだけだろう。
私は強制的に壁上から降ろされた。
憲兵がもつ立体機動装置で。
…
その立体機動装置を私に貸してくれないかしら?
憲兵団が使う立体機動装置は調査兵団が使う立体機動装置と少し違う。
ブレードが常時装備されていない事。
ガスの消費量は調査兵団のと比べて三倍ほど早い。
…
こんなんじゃあなたのところまで飛べないわね。
私は無表情で壁上から地上まで降りた。
空を見ると少し太陽は曇ががっている。
雨が降りそうだ。
私の嫌いな蛙が城の庭に飛び出てきそう。
もしその蛙があなたなら。
前触れもなく、突然現れたら。
私は驚かないだろう。
いつもあなたには驚かされていたから。
今度は私が脅かして、あなたの驚く顔を見てみたいな。
あなたのその幾つもの光を集める黒い瞳をめい一杯開かせて。
楽しみだね。エレン。
自由を象徴するような太陽は顔を隠した。
私達の自由はいつ来るのだろうか。
あなたと会えば少しは分かるかな。
一人の王女は一人の女の子として一人の男を待っている。
自由の先を夢見ながら。
-
- 26 : 2018/01/07(日) 18:34:59 :
- …
……
馬の脚力が上がる。
まるでラストスパートを駆け抜けるように。
壁が見えてきたのを察知したのだろう。
壁の“外”から見る壁は壁内よりも重圧を感じる。
これを感じ取れるのは俺ら“ヒト”だけなのだろう。
壁門が開く。
今日は王女のスピーチもあってか民は騒いでいた。
自分の都合の良い条約が結ばれて気分が浮かれている民や、そのまた逆の民もいる。
七割以上は前者だろう。
憲兵も少しはまるくなった。
王女が王女だからな。
頑固な王女。
本人は分かってないだろうがな。
調査兵団の最前列に馬を歩かせるエルヴィン団長は最後列が門を潜るのを確認すると口を大きく開けた。
「今回。私達調査兵団は…
…
……を証明出来、人類の第一歩、いや数十歩先まで歩けただろう!
そして、皆さんが気になっているであろう死亡者、行方不明者はいない!
我々はもうここまで来たのです!」
俺は少し聞き漏らしていた箇所もあったが、民はエルヴィン団長の言葉、一語一句全てを聞いていた。
拍手とともに歓声や祝福等の言葉が飛び交っている。
「ありがとう!調査兵団!」
「これからも頑張ってくれ!」
「巨人の小僧もよく頑張った!」
最後のは俺の事か。
少しはにかんでしまった。
…
……
………
これから調査兵団全兵で馬休所に行き、各自馬を休め、自由行動になっている。
俺はいち早く馬を預けに行き、王都へかけていった。
王都まではかなり距離がある。
走っていくにも少し休憩が必要だ。
数分走った後、空き地に寄り、腰掛けに身を委ねた。
空を見上げる。
朝方頃から空には雲が押し寄せていたが、灰色の空が更に黒澄んでゆく。
ポツリ、と一滴額に雨水が落ちてきた。
疲れた体に雨がポツリ、ポツリと度々落ちてくるのはなんだか気持ちがいい。
ここでゆったりと過ごすのが俺の目的ではない事を思い出し、再び王都へと足を運んだ。
…
……
………
ヒストリアのいるであろう城門にたどり着いた。
やはり憲兵がいる。
しかし、今日はいつもよりも人数が多いな。
俺はいつも通り兵団の手帳を見せた…はず。
憲兵は一瞬睨みつけてきたが、門を潜る事は出来た。
少し年期のある城の周りには大きな庭園がある。
前俺が蛙見つけた時、ヒストリアに見せたら目を見開いてしばらく口を聞いてくれなかったな。
今の天気は蛙にとって自由を勝ち取れる天気なのだろう。
よく雨の日は動き回る。
自分を獲物とする対象があまり動きたくないからな。
また一つ。エピソードが増えた。
これが最後だろうな。
城に入る為の最終確認として外玄関前で荷物チェックが行われる。
蛙を懐に入れてたら危なかったな。
…
……
………
このドアを開けるのも5回目くらいだろう。
手馴れたように固定板を外し、リングを引っ張り反時計回りに半周回す。
開音と同時に俺はあいつのいる最上階までかけていった。
-
- 27 : 2018/01/07(日) 20:02:26 :
- 紅茶をすする音が大部屋に一人、窓を見つめる王女によって不規則に鳴り響く。
窓の側にある小さな机には袋に入った鳥餌が置いてある。
窓を開けると木の幹と生えた枝を支えとした鳥の巣がある。
ぴよぴよ、ぴよぴよと三匹の小鳥は鳴いている。
巨人など知る由もない小鳥達は王女様に貰った鳥餌を頬一杯に詰め、幸せそうに首を振る。
親鳥はいつ帰ってくるのだろう。
自由な壁外へと羽ばたいていった親鳥はもう数週間見ていない。
……ユミルを思い出す。
胸のあたりから言葉が出そうなのに出ない。
込み上げてくる感情はどこに流せばいいのだろう。
窓を閉めて小鳥達には聞こえないように私はハンカチで口元を塞ぎ、思い切って出そうとした。
トントン
…
……
………
タイミングが悪い。
誰だろうか。
今日のお仕事は終わってるはずなのに。
もし遣いの人ならその人に怒鳴ろう。
「はい。どうぞ…」
ドアを開ける音が聞こえると同時に息をたっぷりと飲み込む。
準備は出来ている。
拳を握りしめて自分が今出せる精一杯の“声”を出そうとした。
「よっ。久しぶりだな…」
「!…あっっっっっ……。」
本当にタイミングが悪い人ね。
私のこの“声”が発散できないじゃない。
仕方ないなぁ…
…
……
………
私は久しぶりに涙が出た気がする。
あなたが来ても泣かないって決めてたのに。
おかえりって一番の笑顔で言えるように。
距離は遠くても心は近いって証明できるように。
私はあなたのもとへ歩く。
歩く。
歩く。
そして
走る。
走る。
涙が出ても気にしない。
あなたが今、目の前に立っているから。
私はあなたの胸に飛びついた。
「おかえり…っっ…エレンっっ!」ポロポロ
「あぁ。ただいま。ヒストリア。」
ぎゅっと。
力を入れずに。
あなたは私を包み込む。
私の“声”はあなたへの愛情に変わる。
あなたの“声”は私の心に響く。
私達の“声”は幸せに繋がる。
私にとって一番のあなたへ。
ずっと。
ずっとずっと。
あなたを。
エレンを…
だから今日はこれで最後ね。
ヒストリア「エレン…大好きです。」
…
……
………
…………
小鳥の巣には親鳥が帰ってきた。
疲れ果てた体を休めずに。
いや。
休めなくていいんだ。
私にとって一番であれば。
あなたにとって一番なら。
-
- 28 : 2018/01/07(日) 20:05:44 :
- 以上で、
エレヒス「一番近くて一番遠いあなた(お前)。」
を終了します。
短い文量でしたが、最後まで見て下さり有難うございました!
-
- 29 : 2018/01/07(日) 21:06:04 :
- 期待しててよかった!
いや、もう期待を遙かに上回る素晴らしいエレヒスでした
-
- 30 : 2018/01/07(日) 21:12:33 :
- >>29 名無しさん
ありがとうございます!
自分でも満足しています笑
-
- 31 : 2018/01/07(日) 21:27:08 :
- すごいよかったです!!!
-
- 32 : 2018/01/07(日) 21:27:54 :
- 上のものです、次の作品も期待してまってます!!笑
-
- 33 : 2018/01/07(日) 21:41:43 :
- >>32 名無しさん
ありがとうございます!!
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- 34 : 2018/01/07(日) 22:54:35 :
- 最高です……最高ですよ!
今後もしーののさんの作品を拝見したいと思います!
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- 35 : 2018/01/07(日) 23:29:17 :
- >>34 かき氷 さん
おぉ!ありがとうございます!!
自分はかき氷さんの作品に見入ってしまいました笑
頑張って執筆して下さいね!
-
- 36 : 2018/01/11(木) 23:16:15 :
- とても良い作品でした
有難う御座います。
-
- 37 : 2018/01/13(土) 22:14:15 :
- >>36 SAO 東方 進撃大好き男 さん
いえいえ!
最後まで見て頂き本当にありがとうございました!
-
- 38 : 2018/01/13(土) 22:38:53 :
- これからも頑張ってください
-
- 39 : 2018/01/13(土) 23:59:05 :
- >>38 名無しさん
ありがとうございます!!
頑張ります!
-
- 40 : 2018/01/22(月) 23:41:13 :
- めっちゃ感動しました!!
ほんとにほんとにいい作品です!
↑上からですいません・・・。
後日談とか読んでみたいです!
-
- 41 : 2018/01/23(火) 21:15:35 :
- >>40 名無しさん
ありがとうございます!!
後日談ですか…考えておきます!
-
- 42 : 2018/01/28(日) 23:30:50 :
- 現在執筆している作品が終了次第、後日談を執筆していきます!
長い目でお待ち下さい!
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- 43 : 2018/02/11(日) 17:21:21 :
- あれ、後日談は何処にありますか?
なかなか見つけられなくて>_<
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- 44 : 2018/02/11(日) 21:09:04 :
- >>43 標茶 さん
申し訳ないです。
こちらの身勝手な都合で削除致しました。
なのでこれの続きとなる作品を書いています!
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- 45 : 2018/02/24(土) 14:40:48 :
- 続き
http://www.ssnote.net/archives/57759
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- 46 : 2018/02/24(土) 16:20:48 :
- 神ssでした
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- 47 : 2018/09/23(日) 00:16:42 :
- 悪くなかった(・∀・)
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- 48 : 2019/09/08(日) 22:54:50 :
- 神作だーーーー
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