この作品はオリジナルキャラクターを含みます。
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バッテリーが切れました【夏花祭】
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- 1 : 2017/08/11(金) 11:39:59 :
- どうも、このイベントでははじめまして
メリーさんです
今回この夏花祭(http://www.ssnote.net/groups/835)
に初参加することとなり非常にビクビクしております
ジャンルは一応SFとさせていただきますが…
藤子F不二夫さんの造語でもある「少し不思議」をジャンルテーマとさせてください(ダメなら変えます…)
では…どうぞ
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- 2 : 2017/08/11(金) 11:47:42 :
- 「お姉さん誰ですか?」
唐突に聞かれたそんな質問。
聞いてきたのは12歳くらいのガキだ。ガキの眼には汚れひとつねぇ。なんでアタシにそんなこと聞いてくるんだ?
まあ答えねぇとこの手は泣きわめくことが多いからアタシは仕方なしに答えることにした。
「アタシ?アタシはそこのジーさんの見張りに来たんだよ」
「見張りって…なんで?」
なんでって…それがアタシの仕事だからだ。
「ここはアンタが関わることじゃねぇよ。帰れ」
えー。とガキは柔らかい頬っぺたを膨らませた。
そんなことしたってアタシが靡くわけがない。
だいたいアンタには何も関係…
待て、
こいつ…誰だ?
このジーさんには家族は居なくて天涯孤独。もうすぐくたばるけれど見送ってくれるやつもいねーはずだ。
にも関わらず…アタシの目の前には居るはずのないガキがいた。
もしかして寂しくなってジーさんが養子を探したとか?
いや、ねぇな
そんな記録があったらこっちが把握していないはずがない。役所に届けてない?そんなのこっちには通用しない。
なら……こいつはなんなんだ?
しかも…今気づいたけど…
こいつから生命力を一切感じねぇ!なんだ!?幽霊か?
誰かがトチって逃げ出した幽霊か?
いやいや、ガキの幽霊は今じゃ珍しいから逃げ出したなーんて情報があったらアタシが耳にしてる…
なら…こいつは…
「どうしたの?お姉さん?」
ガキはキョトンとした顔でアタシの顔を覗きこんだ。邪悪なものは一切感じられねぇ。
「アンタ…アンタはなんなんだ?」
人間は理解できないものに出会うと恐怖を感じ震えるという。まさしくアタシもそんなかんじだった。人間じゃねぇけど。
「ボクはお爺ちゃんに作られたロボットだよ?」
そのあとご丁寧に名前を名乗ってにっこりした。
ろ、ロボットって……
あまりにも不可思議なことに頭がくらくらしてきてその場に倒れそうになった。
ここで大事なことに気づくべきだったのかもしれない。
それは、
アタシが死神である上
死にかけの人間にしか見えないはずなのに
こいつにはアタシの姿が見えてるってことだった。
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- 3 : 2017/08/11(金) 11:49:18 :
「お姉さんシニガミ?なんだ」
へー、と見た目年齢に似合わない無邪気さで答えた。
そのくらいの年になると死神を見りゃ怯えるか…
いや、最近は目を輝かせる奴が割りといるな。
とはいっても現世の奴等が想像する死神とは違って暑苦しいフードを被ってる訳ではないし、しゃれこうべの仮面も付けてない。そんな古くさくてダセーカッコは今どきだれもしねぇ。やってたら頭の固いオッサンか未だに引退しない無駄に元気なジー様くらいだ。
かといって着物をしてどっかの派閥とドンパチしてねーし、怪しいノートはもってねぇし、ましてやリンゴを丸かじりなんてしねぇ。ウサギちゃんにするだろ?普通。
アタシら死神は死ぬ一週間前の人間の元へ行き、逃げ出さないよう見張っておく。そして黄泉の国へ連れていく。逃げでもしたら取っ捕まえて首引っ張ってでも連れていくのが仕事だ。
なんだろうな。現世でいえばホゴカンサツカン?じゃねーのか?そんな仕事。
でだ、今回アタシの仕事が機械いじりをして丸60年。誰とも関わらず孤独に生きて、あと一週間の命となったジーさんの魂を逃げ出さないようにやって来たって訳だ。
「とても大事な仕事をしに来たんだ」
「ま、まあ…そうだな」
「その格好で?」
「うるせー!!アタシはこのカッコが好きなだけだ!」
先程フードをどうのといったがアタシはタンクトップにホットパンツ、ニーハイと、とてもじゃねーけど死神には見えねぇカッコをしている。
夏にショッピングモールで見掛けるカッコって思って貰えればいい。
「……………上から90.57.89」
「…急になんだよ」
「お爺ちゃん好みのスタイルだね」
おい、ジーさんこのガキになんてプログラミングしてんだ。
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- 4 : 2017/08/11(金) 11:53:57 :
- んかガキの相手をするの疲れてきたわ。元々ガキは苦手だ。どうしても騒ぐに決まってるからだ。
自分が死ぬって分かってないならまだいい。死んだって分かったらギャーギャー騒ぎ立てて何がなんでも生き返ろうとする。そんなそこ出来やしないのにわんわん喚いて五月蝿いったらありゃしない。
しかしこいつはやけに大人しい。まあこんなガキも珍しくはない。騒がないに越したことはないからな。
しかし…ロボットか。
ジーさんも寂しかったのだろうな。誰一人として親しい関係を築かずにここまで生きてきたんだからな。
「お姉さんお茶いる?」
台所からひょっこりと顔を出したガキがコップに冷えた麦茶を持ってきた。
「いらねぇ。アタシらの食いもんとここの食いもんは違うんだ」
「お茶…ないの?」
まるで子犬のようにションボリとする。
「いや、まるっきり同じだけど本質的に違うんだ」
「…?」
「ま、アンタが気にするところじゃねーよ。それはアンタが飲みな」
「僕は食べたり飲んだりは出来ないんだ。壊れちゃうから」
「!?」
あっけからんと答えるガキにアタシは呆然とした。そりゃそうだと頭が理解するまで少し時間を要した。にしても…
「なんで…そんなこといえんだよ」
「え?だってそれが普通だもん。お爺ちゃんもここ一週間は点滴で食事してるもん」
ああ、そうだったな。にしてもそれが普通か…。こいつ多分ジーさんが食事しているところを見ているはずだし、アタシにお茶勧めてるところを見ると他人も飲食するってことは気づいているはずだ。なのに…
こいつは普通じゃないことにキ疑問をもたねーのか?
まあ、コイツ管轄じゃねぇからどうでもいいことだけどな。
「で、ジーさんはどうしてる?」
「もう…暫く声は聞いてないなぁ。」
「そうか…あのジーさん天才なんだかバカなんだか…」
今ジーさんは自分で作った延命装置でどうにか生きている。点滴は一応知り合いの医者からのものだ。延命装置は見届けとはいえその医者の御墨付きとか本当にわけ分からねえジーさんだ。
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- 5 : 2017/08/11(金) 11:56:36 :
- ジーさんが尽きるまで側で見張るのがアタシの仕事だ。寝たきりの爺婆の見張りほど見ててつまらねえものはねぇ。よもや意識でさえ混沌して話すのもままならねぇなら尚更だ。
でも、今回は違った。このガキと話すのは楽しい。アタシはガキが苦手だ。なのにコイツにはそんな感覚がない。人間じゃねぇからか?
呼吸だけするジーさんの横でガキととりとめのない話をする。
死神の世界の事
死後の世界の事
今まで見てきた奴の話
アタシ自身の人生
ガキんちょは目を目っ一杯に輝かせて聞いていた。
それが気持ち良かったけど…なんか違和感がある。
「なあ、アンタは…死ぬのって怖くねーの?」
「うーん…よくわかんない」
ロボットだからなのか死を理解してないのだろうか。首を傾げてそう答えた。
ロボットって…死ぬのだろうか。アタシだって死ぬかもしれないのに。
あっという間にお迎え前日になったこの日。アタシはコイツに死をどう捉えているか聞いてみたんだ。
明日にはコイツは一人ぼっちになってしまう。アタシだって忙しいんだ。このガキのもとにそう簡単に行けるはずもねぇんだ。
結果はこれだった。まあ仕方ないのかもしれない。
この日もただ雑談をして過ごした。ふとカレンダーをみると、明日、このジーさんの命日になる日。その日に赤く印が付いていることに気がついた。
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- 6 : 2017/08/11(金) 12:03:56 :
- ウトウトと眠気眼でジーさんの命が尽きるのを待つ。
ピーピーと音が鳴ったのが聞こえてくる。
ああ、ジーさんそろそろか。
ゆっくりジーさんの体から魂が抜けていくのがわかる。アタシはその魂に話しかけた。
「おい、ジーさん。アタシは死後の案内人だ。これからアンタを連れていくから逃げ出したら只じゃすまねぇからな」
「おお!ナイスボディ!」
………
まあ、無かったことはない。こんな反応。でもこういう態度の奴ほど扱いやすいからこれでいいんだけどな。
「どうやらワシの孫と話をしてくれたようだな。ありがとうな。寂しくなかっただろう」
「まあ、アンタのガキ…悪くは無かったよ」
「ワシの命が尽きるまで話し相手になってくれるようにしたのだがな…。まさか死神と仲良くなっとったとはな」
「へっ。別にいいだろ?アタシも退屈はしなかったよ。アイツにゃいい勉強になっただろうよ」
そういやあのガキ椅子で眠ったまま動かないな。ロボットは眠らねーとかいってた気がするけど…
まあいいか。そんなこともあるだろうな。
きっと泣くだろうな。これが死って知るんだろう。
そうやっておおきくなるものなんだ。
死なねえ命だなんてないんだ。
もう少し話をしたかったな。
でも…もうアタシがアンタと出会うことももうないな。
じゃあなガキ。達者でな
元気でやれよ。変な技術者につかまんじゃねぇぞ?
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- 7 : 2017/08/11(金) 12:17:07 :
少しして知り合いの医者がやって来た。
医者は世界的な発明家である老爺の脈をとり、死亡しているのを確認した。
あとはそれなりの機関に連れていけばいい。
無縁仏というやつだ。自分だって面倒は見たくない。
自分で作った延命装置を片付けていると枕元から遺書が出てきた。
彼には家族もなにもいない。医者だって言うほど親しいわけではない。
ここに来たのも仕事なだけだ。
なら…誰宛名のだろう?
裏をひっくり返すと
『これを最初に見つけたやつのみが読んでよい』
まあなんというか…
医者は弁護士に届けるべきか考えていたらある《もの》に目をやった。
これは…いつも出迎える少年の姿をしたロボットだ。
揺すってみても動かない。
故障なのだろうか?
…
もしかしたらこの遺書に答えがあるのかもしれない。
医者は封をあけ中身を確認した。
財産は国には渡さん!と欲の張った内容から始まりそして
自分が死んだらそのロボットはバッテリー切れを起こし機能を停止する。
そのロボットは破壊して同じ墓に埋めよ
なんなんだこれは
バッテリー切れだけならまだ使えるだろう。
医者は呆れたがあの発明家らしいと思い、手頃なハンマーを手に取ると
一気にそれに降り下ろした。
当然なのか、想定内なのかロボットは一気に壊れていった。
医者であろうものが命を奪うのに戸惑いはないのか。
そう訪ねられても医者は困るだろう。
医者はロボットに命はないと思っているのだから
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