「おまちしていました」

え...?

「さぁいきましょう」



(行く?一体どこへ...)

少女は歩き始める。


(どうする…?この少女について行くか…
いや、だがこの少女も危険かもしれない…)

だが、あたりを見渡りしても
何もない上に帰る手がかりすらない。

(今は少女についていくしかない...か)


危険だとも思ったが
ここに突っ立っているよりもマシだ。そう思った

少女は階段を登りはじめようとしている。
俺は小説を書く道具が入ったカバン、そして毎日宝物のように持ち歩いている
自分の小説ををにぎりしめ、
少女の後についていく。


「ここはどこなんだ」

「君は一体何者なんだ」

たったそれだけのこと。

なのに、今目の前を歩いている少女の背中を見ると喉が詰まったように声が出ない。


いや、言ってはいけない。そんな雰囲気を感じる...
ただの、可愛い女の子なのに言ったらなんか
ぶち殺される気がする。
黙って少女の歩く後ろを歩いた。

ふと、周りを見渡す。

周りは自分が書いた通りだった。
周りの壁はボロボロの古いコンクリート、水飲み場には赤黒い液体がたまっている。
全て自分の書いた【アポルカルト駅】だった。実に恐ろしい。

しかし、一つ気づいたことは自分が細かく書いてないところは何もないということだった。

(やはり、ここは俺が書いた【アポルカルト駅】だが、俺のイメージとは若干違う。 書いたところしか再現されてないのか?)

そんなことを考えながら、しばらく道をあるいていると三つに道が分かれていた。
右側にはのぼりの階段、左には先の見えない道がつづいていた。
ここも同じだった。だが、一つ違うことがあった。


「あちらです。」

少女が指をさした、真ん中の道の先にあったのは
一つの赤い家だった。



少女が家の扉を開け、中へと入っていく。
少し警戒しつつ、少女の後ろを追いかけた。

そこに広がっていたのは
広大な空間だった。
奥までは長すぎて見えず、高さは軽く数百メートルはありそうだ。
そしてその壁一面に大量の本が綺麗に整頓され置いてあった。
そんな景色に見とれてしばらく突っ立っていた。

「あ...」
横から声がした、左を見る。
そこにいたのは、髪の長い一人の幼女だった。
フワフワとした青のドレスのようなものを着ていて、髪には大きい花の髪飾りをつけていた。


「あ...ごめん」

俺の横を少し急ぎ足で通っていき、真ん中にある
小さな椅子に腰を掛け、本を熱心に読み始めた。


俺は入り口からすぐ右にある小さな部屋に案内された。
その部屋はさっきの場所とは違いあまり広くない、
というより狭いくらいの部屋だった。

そこには大きい机といすがいくつか、
蝶が描かれている大きな絵画一つあるだけだった。

「そこにおかけになってお待ちください」

そう、言われ彼女は部屋を出ていってしまった。

今までの事を少し頭の中で振り返った。
まず、今の現状で分かったことは2つ。

一つは、
この場所は間違えなく俺が書いた【少年たちの冒険記】にでてくる
【アポルカルト駅】だということ。

そしてもう一つは
小説で書いていないところや、人物(生物、化け物等)は再現されていないことだ

では、なんで俺はこんなところに…

ギィー

扉が開いた。中から出てきたのは、
先ほど俺の横にいた幼女と、駅からここまで案内した少女。
そしてもう一人女の子がいた。

黄色を基調としたドレスを着ておりまるで、どこかのお姫様のような、無邪気な少女がいた。

「ねぇねぇ!はなしてなんなの?ねーえー」

この後俺はどうなってしまうんだろうか...