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夕日が見せたもの
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- 1 : 2020/02/05(水) 23:03:47 :
- お久しぶりですねぇ!えんがわ好きのカラミティです
オリジナルコトダ祭りなるものに参加させてもらいました。参加者と設けられたお題は以下の通りになります
参加者(敬称略)
・De
・風邪は不治の病
・ししゃもん
・あげぴよ
・カラミティ
お題
・お風呂
・夕焼け
・光
・シール
・崖
では、稚拙な文にはなりますが、ゆーっくりとどうぞ
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- 2 : 2020/02/05(水) 23:04:24 :
「ぎゃーっはっはっは!!おい下っ端!こっちにも持ってこい!!」
「あっ、はい…すんま…すみません。ただいま」
「そういやお前もそろそろ2年目だなぁ?もうただの下っ端にしとくのは止めるか?」
「い、いや…オレは別に…」
「けっ、そうかよ。お前ってこーじょーしんってやつがねぇよなぁ。まっ、こんなとこにいてそんなもんあるわけねーよな!速く持ってこいよ!」
「…………はい」
なにやってんだろうな、オレ
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- 3 : 2020/02/05(水) 23:04:55 :
- オレの名前は、英雄
生まれた頃から、全てが普通な平穏な暮らしをしていた
ただ他とちょっと違うのは、ヒデオって名前の文字が英雄なことかね
多分だけど親父が、ささやかな誰かの英雄になれるような男に育って欲しい…まあ、要するに一家を背負うような男になってほしいとかそんな感じで名前を付けたんだろう
もう、聞くことはできないから、分からないけど
「……何が英雄だよ」
今のオレは、英雄はおろか、到底真っ当な人生を送ってるとは言えない。まさに崖っぷちな人生だ
さっき馬鹿騒ぎしてた連中は、町規模の不良グループの連中。まあ、オレもそこに入ってるから、アイツらを悪く言えない立場なんだが
入った経緯は、別に不良になりたかったとかそんなんじゃない。大学進学もせず、かと言って就職やバイトもしてるワケじゃない。そんなヤツらの集まりを、偶然見付けてそのまま…って感じだった
金にはまぁ…今のところ困ってはいない。だからあんなとこにいるんだが、もうあと3年もしたら、それも尽きるんだろう
「……なにやってんだろうな、オレ」
こう呟くのも何度目だろうか。答えが返ってくるわけもなく、ただ惰性で生きてるだけで、かと言って何もしようとしない。こんなオレに、何が…
「……夕焼け、か」
この坂の上から見える夕焼け。それだけは、昔から変わらない
「………ん?」
ただ、今日は、今日だけは違っていた
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- 4 : 2020/02/05(水) 23:05:20 :
- 「……こんなとこに銭湯なんかあったか?」
坂の上から見えた夕焼け。そこから射す光に導かれるように、オレは歩き始めた
一応、ここはオレの生まれ育った町だ。それなりに地理は把握してるはずだったんだが…
「……そういや広い風呂なんて、もう10年は入ってないな…久しぶりに、入るかな」
「いらっしゃい」
「あっ、これ…」
「あいよ」
男湯に入り、番台にいるおばちゃんにお金を渡す。って、そういやタオル無いじゃんか。買わないと…
「タオル、そこにあるから」
「えっ…あっ、どうもっす」
タオル、タダで貸してくれるんだ。じゃあこのまま入って…あっ
「しまった。背中…」
グループに入るとき、強制されたもの。これは流石に…
「ああ、兄ちゃん。背中の、ちゃんと剥がしてくれればいいからね」
「あっ…すみません。ありがとうございます」
よかった。背中のタトゥー、シールとはいえ流石に公共施設じゃまずいだろとは思ったんだけど…優しいな、ここ
「んじゃ、入るかな」
でも、もうバレるぐらいまでになっちゃったんだな。服脱いでないのに、タトゥーしてるって
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- 5 : 2020/02/05(水) 23:05:55 :
- 「ふー、いい湯だなぁ」
ばばんばばんばんばん、とか聞こえそうな感じ。実際に気持ちいいんだから仕方ないよな
「しかし、いくら考えてもここに銭湯なんて無かったはずなんだがなぁ…まあ、気のせいか」
仮設じゃあるまいし、銭湯なんて突貫工事で出来るものじゃないしな。この広い3つが一つにくっ付いたようなデカい風呂とか、あの富士山の絵とか、床のなんかタイル?だっけ、他にも色々と設備とか必要だからな
「………身体洗お」
いくら考えても仕方ない、早いとこ洗ってもう一回入って、ちょっとしたら帰るか
「父ちゃん!ここの風呂おっきい!いてっ!」
「あっ」
風呂から上がって、洗い場まで歩いてると、走ってきた子供がオレにぶつかった
「ご、ごめんなさい…」
「ああ、いや。オレは大丈夫だから。それより、こんなとこで走ったりしたら危ないよ?」
「うん!気をつける!」
今度は慎重に風呂まで歩いていった。あそこまでやる必要は無いと思うけどな…
しかし、今時身体にシール貼ってる子供なんて珍しいな。防水シールだとは思うんだけど、しかも背中に
「……背中、か」
オレも昔はあんな感じに、背中にヒーローのシールとか貼ってたっけな。でも、今は…
「…頭洗うか」
頭を濡らして、シャンプーで頭を洗う。この間、目を瞑ってるから何も見えない
「おいおい、ちゃんと掛け湯したんだろうな?」
「父ちゃん!それはやったよ!」
「ならいいんだ、あんま他に迷惑かけんなよ?ヒデオ」
………えっ?
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- 6 : 2020/02/05(水) 23:06:20 :
- 「ねぇ、父ちゃん。なんでボクの名前ってヒデオなの?」
「んーとな、お前の名前は死んだ母ちゃんと一緒に考えたんだよ。男の子だったらヒデオ、ってのはいの一番に決まったなぁ」
「ふーん…女の子だったら?」
「考えてる時に男だって分かったからよ、考える必要が無くなった。で、ヒデオ。お前さんの名前、他に読み方あるって分かるか?」
「えっと…分かんない!」
「まあまだチビ助だからなぁ、分からなくても仕方ねぇか。ヒデオ、お前の名前はえいゆうとも読むんだよ。言い方変えると、ヒーローだな」
「ヒーローって、あのヒーロー?ボクにはなれないでしょ」
「いや俺も別になってほしいって思って付けたわけじゃないけど、そんな即答されるとちょっと悲しいからやめてくれ」
「じゃあなんでそんな名前にしたの?」
「女もそうだけどよ、男ってのはな、色々背負って生きてくもんなんだよ。ただな、やっぱり限度ってもんがあるんだよ。1人だけじゃ背負いきれねぇ。だから、名前に英雄って付けときゃ、心に余裕がでるだろ?俺には、英雄が付いてるってな」
「うーん…そうかな?」
「そりゃ英雄ってのは、人一倍努力とかはするもんさ。お前にも、少しは頑張ってもらいたいんだよ。まぁ、デカくなって仕事するなり結婚するなりすりゃ、背負ってくれる仲間も増えるってワケよ。英雄ってのは、別にずっと1人で戦ってるワケじゃねぇんだからよ。だから…」
「あんま、気負い過ぎないぐらいには頑張れよ。英雄」
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- 7 : 2020/02/05(水) 23:07:32 :
- オレが頭を洗い終わって、風呂の方を見ても、誰もいなかった
風呂から上がって、番台を見ても、おばちゃんの姿は見当たらず。銭湯から出て、しばらく経ってから振り返ると、あの大きな煙突すら、見当たらなかった
「なんだったんだろうな…あれ」
幻にしては、かなり現実味があったというか…でも、そんなことはもうどうだっていい
「……親父に怒られちまったな」
やっぱ、今のままってのはマズイよな
名前の由来はよく分かんなかったけど、気負い過ぎないぐらいにがんばれ、か…そうだよな。まずはそこから、だよな
「まずはバイトからだな。そこから、少しずつ頑張っていこう」
高卒でしばらく何もしてなかったオレを雇ってくれるか?という不安が無いわけじゃないが、何もしないよりはマシだろう。断られても、また次を探せばいい
「……そうだ。その方が、今なんかより大分マシだ。見ててくれよ、親父。お袋も」
その前に、このタトゥーシール、捨てなきゃな。あと、墓参りにも行くか。酒好きだったから、それも買って…
『おう、待ってるぞ。英雄』
「……ああ、楽しみにしててくれよ。親父」
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- 8 : 2020/02/05(水) 23:11:33 :
- あとがき
ジャンルってファンタジーでいいの?とは思うんですけど、あの中から選ぶとしたらこれしか無かったと思うんです
お題の回収、捉え方次第という言葉を使わせてもらってもいいっすかね?とくに崖。僕にとって崖と言われたら火サスしか思いつかなかったもんで…
ともかく、短いお話となりましたが、まぁ僕の過去のコトダ祭りなSS、どれも短いものでしたので、まあいつも通りだろうと思ってくれたら幸いです。いや、思え。これが僕なんじゃ
久々なコトダ祭り、というかSSnote。懐かしさも出てきましたが、今回はここまで。またどこかで、お会いしましょう
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