この作品はオリジナルキャラクターを含みます。
東方白鬼録
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- 1 : 2016/11/09(水) 22:00:18 :
- 初投稿です。
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- 2 : 2016/11/09(水) 22:45:03 :
- 「そろそろかな?」
太陽も沈み、夜の闇が覆う森の中、一人の男が呟いた。
男は少し息を切らしながら、それでも軽快に森を進む。まるでその先に自分の宝物でもあるかのように。
「!・・・見つけた」
微笑みながらそう呟く男の視線の先にあるのは、見るからに廃れた寺だ。壁は穴だらけ、屋根瓦はほとんどなくなっており、あたりの草は伸び放題。
しかし、男は嬉々としてその寺の裏へ回る。
「これが・・・」
裏手にあったのは、これまた古ぼけた鳥居だ。
壊れかけている以外、特に珍しいものでもないが、
「彼らの言っていた通りなら、ここからいけるらしいが・・・」
男はしばらくあたりを見回し、ふと鳥居のさきに、薄いモヤのようなものを見つけた。
「さて・・・」
男はそのモヤへ向かう。
「行ってみるとしようか、『幻想郷』へ」
男が鳥居の中をくぐると、その瞬間、男は姿を消した。
ーーーーーーーーーーーー
「はあ・・・」
少々ため息をついてしまう。
今日もお賽銭は無し。いつものことだが、慣れることはなかった。
私は博麗霊夢。この博麗神社の巫女であり、この幻想郷で起きる異変を解決している。しかし、博麗神社は、お賽銭がないことから分かるように、参拝客がこない。おかげで生活は苦しく、いつもその日の食べ物にさえ困っている。
「紫のやつにもうちょっと支援してもらわないと・・・」
たまに食料やお金を持ってくる幻想郷の賢者の名を呟き、お茶でも飲んで待っていよう。
ーーーーーザワッーーーーー
「ッ!」
森が、揺れた。
実際は揺れてなどいないのだが、そう感じてしまうほど強力な妖気。
「なんなのよ・・・これ」
つい呟きながら、妖気の発生源へと飛ぶ。
微かな不安を感じながら。
ーーーーーーーーーーーー
とうとう来た。
かの妖怪の楽園、幻想郷。ひと昔前に出会った妖怪が作ると言っていたときは、出来るわけないと感じていた。しかし、彼女は作った。この幻想郷を。
「ここなら、静かに暮らせるかな・・・」
そのとき、突然目の前の空間がぱっくりとひらいた。
「ようこそ、幻想郷へ。しかし、いきなり結界の綻びをこじ開けて来るなんてやめてもらえるかしら」
ひらいた空間から、いきなり妖怪があらわれ、少々不機嫌そうにそう言った。
・・・相変わらず、胡散臭いな。
失礼だが、心の底からそう思った。
「すまないね、私が通るには綻びが小さくて、つい広げて来てしまった」
ここは正直に謝っておこう。
「あら、随分と聞き分けがいいのね」
彼女は私が謝ると、すぐに機嫌を戻した。というより、若干偉そうになった。それにさっきから、まるで知らない者にあったかのような態度である。
少し考えて、未だ姿を『変』えていた、と気づく。
「で、あなたは何者なのかしら?幻想郷に何をしに来たの?」
「すまない、その前に変化をとこう」
「え?」
どうやら変化には気づいてなかったらしい。変化をとくと、面食らった顔になり、その後私が誰か気づいたらしく、顔に驚愕の色が浮かぶ。
「や、久しぶりだね」
「な、な、な、な、あんた、いやあなた、なんで・・・!?」
「いやいや、八雲さんが幻想郷を完成させたと噂で聞いてね。興味もあったし」
八雲さんは口を閉じたりひらいたりしながら慌てふためき、やっとの思いで、という風に私の名前を呼んだ。
「は、は、白燐(はくり)!さん!?」
「・・・そんなに驚かなくても「いやあああああ!?」
・・・そんなに驚かなくてもいいのに。
突然パニックになった八雲さんは、空間の切れ目へと引っ込み、逃げてしまった。
・・・またか。
「いや、私は別に危害を加える気は無いのだがな・・・」
私は白燐。しがないただの白い鬼である。
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- 3 : 2016/11/11(金) 21:40:51 :
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「ここら辺かしら?」
妖力をたどって神社の近くの森まで来たが、突然妖力が消えてしまった。
「紫の妖力も感じたから急いだのに、なんですぐ消えんのよあのスキマは・・・」
あのスキマ妖怪が出て来たのなら、よほどの大物が来たのだろう。しかし、紫が消え、最初に感じた巨大な妖力も消えた今、霊夢は困っていた。
「案外その辺にまだいないかしら・・・ん?」
ふと下を見ると、森の木々の間から、誰か歩いているのが見えた。
「あいつかしら・・・」
ーーーーーーーーーーーー
八雲さんが消えてしまい、案内してもらえる存在がいなくなったので、仕方なく適当にぶらぶらしていると、
「ねえ、あなたかしら?結界を超えてきた妖怪は」
空から少女がふってきた。
「君は・・・」
よくわからない格好だった。全体的には巫女装束なのだが、脇を出しているし、なんだか巫女らしくない。
「私は博麗霊夢。幻想郷で妖怪退治をしているわ」
「へえ、君が・・・」
「なによ、意外?」
「まあね。私は白燐。ただの鬼だ」
とりあえず自己紹介話すると、彼女・・・博麗霊夢は少し驚いた顔をした。そこで、いつもの癖で八雲さんと別れてからまた変化していることに気づく。
「ああ、すまない、鬼のままだと色々厄介ごともあるからね。いつもは変化しているんだ」
「へえ」
「さて、私はまだ来たばかりだし、幻想郷について詳しく教えてもらえるとありがたいのだが・・・」
そう言うと、博麗さんは一瞬顔に疑いの色が浮かんだが、すぐにそれを引っ込めた。
「・・・まあいいわ、だったら神社に行きましょう。お茶くらいなら出したげる」
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- 4 : 2016/11/11(金) 21:53:22 :
- おかしな妖怪だった。
「ねえ、あなたかしら?結界を超えてきた妖怪は?」
私がそう聞くと、その妖怪はまるで最初からわかっていたのか、驚きもしなかった。
「君は・・・」
銀に近い灰色の髪に、銀色の目、顔立ちはまだまだ若く、霊夢より少し年上のような気がする。着ているのは暗い灰色の着物で、腰あたりに刀と・・・筆と紙の束?を提げた、妖怪には見えない格好だ。しかし、感じる妖力はこいつを妖怪だとわからせた。その後も軽く話しをしてみたが、不審なところは外見以外に見られない。
「さて、私はまだ来たばかりだし、幻想郷について詳しく教えてもらえるとありがたいのだが・・・」
見てくれは無害な感じだが、こいつは妖怪である。教えて良いものか、一瞬悩んだ。しかし、先ほど感じた妖力が気になるが、今の所問題はないので、とりあえず神社でもっと詳しく話をすることにした。
「・・・まあいいわ、だったら神社に行きましょう。お茶くらいなら出したげる」
すると、妖怪は心から嬉しそうに笑った。
・・・案外かわいいかも。
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- 5 : 2016/11/11(金) 22:12:22 :
- 博麗さんについて行くと、神社にたどり着いた。
「ここですか」
「ええ、ようこそ博麗神社へ」
神社の近くに建っていた家へ招かれる。
居間に通され、霊夢さんがお茶を持ってくる。
「さで、私も色々聞きたいけど、まずはあなたの質問から聞いてあげる」
「おや、それはありがたい」
そこからはひたすら質問した。幻想郷の有名なところや危険なところ、幻想郷の里についてなど。
「ふう、かなり質問してしまったな。すまないな霊夢さん」
「別にいいわよ、神隠しで偶然やってくる人間にもおんなじような質問好きはいるもの、もう慣れたわ。それと、私のことは霊夢でいいわ」
「そうか、ではそうさせていただこうかな」
「あ、そうだ、白燐、あなた聞いてこなかったけど、幻想郷では、妖怪同士や人間に対しての殺し合いはダメよ。喧嘩なら別に構わないけど」
「そこは問題ないよ。私は喧嘩や戦いは苦手だからね」
「そう?あ、それと喧嘩とかでは、スペルカードルールっていうものを使うわ」
「スペ・・・なんだって?」
「スペルカードルール。簡単にいうt「おーい!霊夢ー!」
霊夢さんの説明に被って、外から誰かが呼びかけてきた。すると、霊夢さんがあからさまにげんなりする。
「どうしました?」
「あー・・・、いやなんでもないわ」
「あ、いたいた、霊夢いるんなら返事くらい・・・」
声の主が、私を見だとたん固まった。
・・・魔女?
外の世界では自由気ままに世界中を歩いていたので、魔女にも数回会っている。彼らとほぼ同じような格好をしていた。
「霊夢!?お前男ができたのか!?」
「んなわけないでしょうが!!」
そこから突然口喧嘩が始まった。と、
「霊夢!急いで支度しなさい!早くしないとあの鬼神が・・・っていやあああ!?もういる!?」
「あ、八雲さん、ちょうどよかった、あの子達を・・・」
「いやあああ!!霊夢何してるの早く下がってホラその人から離れなさい!?」
・・・なんだこれ
突然騒がしくなった居間で、一人お茶をすすり思考をリセットする。まさかこんなことになるなんて・・・
・・・・というよりいつから私は鬼神になったのだろう?
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- 6 : 2016/11/12(土) 00:03:54 :
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とりあえず、三人に落ち着いてもらってから、先ほどの質問を繰り返す。
「で、スペルカードルールとは何なのかな?」
未だ魔女・・・霧雨魔理沙と睨み合いながら、霊夢が答える。
「簡単にいうと、妖怪と人間が対等に勝負するためのルールね。弾幕っていう弾を飛ばしたり、スペルカードっていうカードで特別な技を出したりして、先に相手を撃墜した方が勝ち、後から文句はなし、って感じね」
スペルカード・・・弾幕・・・か。
「なるほど、よく考えられてるね」
「異変とか、問題ごともこれで解決するんだぜ!」
そういって得意げに霧雨さんがスペルカードと思われるカードを見せてくる。
「ほう、これが・・・」
「まあ、私からいうことはこれで終わりなんだけど・・・」
と、霊夢が八雲さんを睨む。その視線につられて、私も見ると、途端にビクッと怯えられてしまう。
「・・・あー、私は何かあなたの気に障ってしまうことをしてましたか・・・?」
と聞くと、
「いっ、いやそんなことはないわ・・・ですわ!別にこわがってなんかないわ!」
だめだ、よくわからない。
「紫、あんたなんで白燐をそんなに怖がるの?」
霊夢がジト目で睨む。大妖怪に対してなかなか肝が座ってるな。
「へっ!?いや、そのー・・・」
八雲さんの返事は歯切れが悪い。何をためらっているのか。しばらくして、覚悟を決めたのか、話し始めた。
「・・・いいわ、この際教えておきましょう。この人はね・・・
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- 7 : 2016/11/12(土) 00:04:54 :
- ここからは完全に作者の妄想です。それでも許せるならどうぞ。
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- 8 : 2016/11/12(土) 00:35:44 :
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このままではいけない。
妖怪と人間の共存する世界、幻想郷を作るという私の計画は、これまでゆっくりながら、着実に進行していた。しかし、ここへきて問題が発生した。
妖怪たちの力が強くなりすぎているのである。
未だ陰陽道がはっきりと確立していないこの時代、人間はそれら大妖怪に分類される妖怪たち相手に、なすすべなくその数を減らされていた。
「このままいけば、人間がいなくなってしまう・・・そうなっては私たちの存在すら危うい・・・でも、私だけでどうにかできるわけでもない・・・どうすればいいの・・・」
そう、妖怪は人間の恐れから生まれた存在だ。なので、人間がいなくなると、妖怪のたどり着く先も消滅である。かといって、いくら紫が大妖怪に名を連ねる妖怪でも、他の大妖怪の勢力を一人で潰すのは不可能である。
「また月は攻め込ませて妖怪を減らす・・・だめね、もう誰も行こうとはしないでしょう」
そう、昔一度同じようなことは起きたのである。そのときは、妖怪たちの力の矛先を月の民に向けさせることで地上の人間の絶滅を防いだ。しかし、月の民は予想以上に発達した文明を持っていた。月の民と妖怪の戦争は、月の民による妖怪の大量殺戮により幕を下ろした。以降、妖怪たちの間では、『月の民には手を出したらやばい』という教訓が語り継がれた。
「でも、このままいってもあるのは破滅・・・ああああもう!どうすればいいのよー!」
と、そのとき、ふと思いついた。この状況を変える、悪魔のような方法を。
それは、・・妖怪の巨大勢力同士を、嘘の情報で同士討ちさせることだった。
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考え出したのは突然だったが、実行に移したのは4日後だった。いくらなんでも無茶だと承知していたし、何より失敗しようが成功しようが、紫は全妖怪勢力から狙われる危険性を孕んでいたからだ。
しかし、紫は実行した。人間と妖怪の幻想郷を作るために。
まず、山の妖怪を束ねる鬼と天狗のトップーーー
鬼子母神と天魔を嘘の情報で呼び出し、それっぽい情報を信じ込ませ、たまに本当の情報を混ぜながら巧みに誘導し、ついに戦争へと踏み切らせた。
また、各地の大妖怪の元をまわり、説得し続け、とうとう明日、本当の大義名分のない戦争が始まるというところまでこぎつけた。
「はあ・・・」
紫は、根回しやもしもの時の予防線の設置が終わると、その場に寝転んだ。
(このままいけば妖怪たちは戦い合い、やがてどの勢力も衰退するでしょうけど・・・)
・・・私、やばいかも?
ーーーーーーーーーーー
「「いやなにしてんの!?」」
隣で話を聞いていた霊夢と魔理沙が同時に叫んだ。
「いや、あのときは本当にそれぐらい切羽詰まってたというかなんというか・・・」
紫も、さすがにやりすぎな解決方法だと思っていたのか、申し訳なさそうに見える。
「いやあんた、大妖怪たちで戦争とか、日本ほろぶでしょうが!」
「い、一応その辺の予防線はちゃんとしておいたし・・・」
「・・・私その時代に生まれてなくてよかったぜ」
まったくである。
「・・・で?その話と白燐がどう関係すんのよ?」
「え?あ、そ、そうね、その話よね。それは・・・
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- 9 : 2016/11/14(月) 22:25:58 :
- 始まった。
大妖怪と、その子分や部下を巻き込んだ、妖怪たちの戦争・・・あるいは憂さ晴らしともいう。
「今のところは・・・まだ問題ないか」
正直、あらゆる不測の事態には備えているものの、不安は拭えない。なぜなら、この戦争には、鬼子母神と天魔がいるのだから。
「ほらほら、もっと骨のある奴はいないのかい!?」
「はっはっはっ!わしを殺したければ、最低でも十人同時にこんか!」
・・・なんであんなに簡単に妖怪たちがぶっ飛ぶんだろう。すでに戦っているのは天狗と鬼だけである。いくらなんでもこれは・・・。あの二人に声をかけるべきだったのか、真剣に悩み始めた。と、
「ここか、騒がしいのは」
「!?」
突然、背後から声がした。まさか、戦争には不干渉だとあらかじめ言ってはいたが、それを無視して私を襲いに来たのか。
「誰かしら?」
後ろを振り向くと、鬼ーー白燐なのだが、紫はまだそれを知らないーーが立っていた。
「あ、すまない、邪魔したかな?同胞たちが張り切りながらどこかへ行ったものだから、気になってね」
そのあまり圧を感じない物腰に、敵意が感じられなかったので紫はとりあえず安堵した。
「お仲間ならあそこよ。今は戦争中だけど」
と、すでに鬼子母神と天魔以外はほぼ立ててない戦場に向き直す。
「あとはあの二人のどちらかが勝って終わりね。これで少しは妖怪たちもおとなしく・・・」
そこまで言って、隣で戦場を見ている鬼の様子がおかしいことに気づく。鬼ならば好戦的な性格のはずなので、戦場に乗り込もうとしてもおかしくない。しかし、その鬼はただじっと鬼子母神と天魔の戦いを見ている。そして、その姿を見ると、なぜか身がすくんだ。ありえない。たかが鬼一人に、紫がなぜ怯えているのか。
「どうしたのかしら?」
それだけをやっと言葉にするが、返事はない。と、
「すいません、少々行ってまいります」
「え?」
どこへ・・・、と言おうとしたが、その時には彼の姿はなかった。
「なっ!?」
慌てて戦場を見ると、すでに彼はそこに居た。
ーーーーーーーーーーーー
「あんたとはまだ真剣に戦ってなかったねぇ」
「そうじゃな、一度はっきりさせておいてもいいのう。どちらが強いか」
鬼の神と天狗の長。二人の大妖怪の妖気に、周りで倒れていた妖怪は慌てて逃げ出した。
「上等だよ、じゃあ負けた方が下の者も含めて勝った方の部下ってのはどうだい?」
「ほお、鬼が人の下につくのが好きとは知らんかったの」
お互いに爆発寸前の状態で睨み合っている時である。
「失礼、そこのお二方」
気の抜けた声がした。
(おいぃぃぃ!何やってんだ、あのバカ!?)
(やめろー!二人を刺激すんな!?)
周囲の鬼や天狗たちが、声の主を必死に呼び止める。
「「あ?」」
しかし、その甲斐なく二人はその男に狙いをつけた。
「なんじゃおぬし、邪魔するなら消すぞ」
「なんだ、白燐か。手出しすんな、これはあたしの喧嘩だよ」
二人はなおもメンチをきりながらそういった。
しかし、
「いや、もう終わりでしょう」
白燐は、止まらなかった。
「おいおいおい、何いっとるんじゃこのバカは。おい鬼子母神、おぬし相当バカな部下連れとるの」
「いや、白燐はあたしの部下じゃないさ。けど喧嘩の邪魔はいただけないね」
二人の殺気が白燐に向く。しかし、物怖じすることなく白燐は、
「周りを見なさいお二方。すでにだいぶあばれただろう。いい加減ここらで終わりにするべきだ」
白燐の言い分は最もであった。が、相手が悪かった。
「うるさいやつじゃ、もう良い、お前から消してやるわ」
(あばぁぁぁぁぁ!?)
天狗たちが慌てだした。
「そうだね、邪魔するなら白燐だろうと容赦しないよ」
(あ、白燐死んだ)
鬼たちは悟った。
「・・・それは二人とも私を相手にしようということかな?」
「ああ」
「うむ」
「そうか・・・」
ーーーーザワッーーーー
「っ!?」
二人は殺気をかんじ、後ろへとんだ。
「白燐・・・」
「貴様・・・」
「私は他の同胞とちがって、喧嘩は嫌いなんだ」
白き鬼は、そういって、
「ただ、」
ーーーー嗤った。
「『殺し合い』は誰よりもすきだがね」
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- 10 : 2016/11/17(木) 23:46:01 :
- ーーーーーーーー
「どういうことなの・・・」
呆然としてそう呟くしかなかった。
突然現れた鬼が突然鬼子母神と天魔の戦いに水を差して、あ、あの鬼死んだ、とか考えていた紫。しかし、視線の先にある光景は、
「ちょっ、白燐!待ってやめてストップストップこの虫の大群やめていたたた!」
「みぎゃー!?わしの羽にくっつくなハエどもー!!」
あの鬼に子供のようにあしらわれる鬼子母神と天魔であった。
ーーーーーーーーーーーー
いや、つい殺し合いできると思ってとんでもない啖呵を切ってしまった。よくよく考えると、この二人と同時に殺し合うのはどう考えても無理である。
(とりあえず一対一になるか)
そうかんがえ、腰に帯びている刀ーーーーのとなりに帯びている筆と紙に手を伸ばす。
二人が身構える。
「ああ、そんなに警戒しなくても、別に卑怯なことはしないよ」
「はっ、どうだか。あんた喧嘩に誘っても全く応じないしね。どんな戦いすんのかわからない以上、警戒もするさね」
いやはや、戦闘狂、鬼子母神などと呼ばれてはいるがこの女、以外にも慎重な性格だったのを忘れていた。
・・・あくまで鬼の中ではだが。
ーーーーーーーーーーーー
殺気が消えた。
(どうなっておる?)
天魔と呼ばれるようになって久しく感じなかった感情、恐怖が湧き上がる。しかし、突然現れた鬼は、なぜか殺気をすぐ引っ込めた。
(何を考えておる・・・)
天魔は、鬼子母神と違い、白燐との直接的な面識がなかった。故に、白燐が殺気を収めた時のわずかな動きに気づいた。左手は刀の方へ伸ばしているが、それにまぎれるように、左手を袖の奥へ伸ばしていた。
(暗器か・・・)
天魔は、どんな攻撃が来ても対処できるよう、己の能力、『空域を制する程度の能力』を発動させようとした。『空域を制する程度の能力』は、文字通り、自分から一定範囲の空域を自由に操ることができる。その能力で、天魔は空気の渦を身に纏った。
「ああ、そんなに警戒しなくても、卑怯なことはしないよ」
と、白燐が微笑むが、天魔は警戒を解かない。
(絶対にこいつはやばい)
ーーーーーーーーーー
やれやれ、そろそろかな。
天魔は何やら能力を発動させたらしい。空気の渦を身に纏っており、おそらくあれに触れようとすればたちまちズタズタにされるだろう。鬼子母神の方もちゃっかり能力を発動させている。確か、『加え減らす程度の能力』だったか。一昔前、鬼子母神の喧嘩をチラッと見たときは、パンチのスピードを『加』速して、
自身の体重を極限まで『減』量して、相手の鬼をボコボコにしていたか。やはり二人同時はきついな。
ーーーーーー能力を使わなければ。
「さて、そろそろ始めよう」
二人は殺気を放ち始める。まだ・・・まだ・・・ここ!
二人同時にこちらへ突っ込もうとしたその瞬間に、左手でこっそり用意した紙を投げる。投げた紙には、『蝿』、『群』の文字。
「!?」
「なっ!?」
二人は予想外の攻撃にひるむ。そこで能力発動。紙は形を変え、数を増やす。これが私の能力、『言の葉を操る程度の能力』である。書いた文字を具現化させるだけの、単純だが強力無比な能力である。
ブウウウウウウン
耳障りな音を立てながら、蝿たちが二人へ殺到する。
「「のぁぁぁぁぁ!?」」
たちまち二人は蝿の群れに飲み込まれ、悲鳴を上げ始めた。そして最初に戻る。
ーーーーーーーーーー
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- 11 : 2016/11/20(日) 03:06:44 :
- 「調子にぃぃ、のんなこらぁ!」
鬼子母神がその規格外の腕力で蝿たちを吹き飛ばす。
「さすがに長くは持たないか・・・」
天魔はまだ動揺しているようで、羽についた蝿たちを必死に取ろうとしている。
「白燐、あんた殺し合いが好きなんだろ?だったらこんな面倒くさい真似してないで、とっととかかってこい!」
「いやいや、こちらにも事情があってね。まあ、準備は終わったから、まず鬼子母神様からお相手ねがいます」
腰から刀を抜く。
「いいだろう、さんざんコケにしてくれた礼はたっぷり返してやるよ!」
鬼子母神も拳を構える。
「ちょ、待つのじゃ、わしも戦うからこの蝿なんとかしてくれい!」
二人に華麗にスルーされるのは、未だ蝿に群がられている天魔。
最初に動いたのは鬼子母神だった。
「セェェイ!!」
ーーーーーーーーーーーー
拳がドヒュッという、普通ならありえない音を立てながら顔の横を通り過ぎる。
鬼子母神のラッシュは、まさに神速とでもいうべきものだった。能力で動きを加速するだけでなく、インパクトの瞬間だけ拳を重くしてくる。
「当たっただけで即死なんて、反則級だな」
「全部避けてる奴がよくいうよ!」
しかし、さすがにこのままではいつかあの拳で殴り殺されてしまう。そこで、またこっそり仕込んでいた紙を発動状態にする。
「どぉりゃぁ!」
ついに、鬼子母神の拳が顔面を捉える。
「どうだい!」
「いや、効かないな」
「なっ!?」
発動させたのは、『堅』の文字。私の能力を使って書いた文字は、その文字の持つ意味そのものを生み出す。この場合は、私の体が『堅い』という材質を『生み出した』ことになる。
「またその紙かい。一体どんな能力だよ、私の拳をじかに受けて立ってた奴なんて、久しくいないよ」
「それはどうも」
軽く会話を行いながら、体に貼った紙を剥がす。このままでは、『堅』の性質そのままになってしまい、体の動きまで堅くなってしまう。
「案外使いづらい能力だよ」
誰にともなく呟く。
「あのー、そろそろ助けてもらえんかの!?あっ、ちょ、服の中は!服の中はヤメテ!?」
一方天魔は蝿と戦っていた。
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- 12 : 2016/11/23(水) 05:57:18 :
- ーーーーーーーー
魑魅魍魎、妖怪たちの一大戦争。その戦場となった荒野で、二人の鬼が戦っていた。
「あんた・・・幾ら何でも馬鹿にしてるよ」
鬼の神ーーーー鬼子母神が拳とともにそう投げかける。
「ん?そうかな?」
対する白き鬼は、微笑を浮かべつつその拳をいなす。
「さっきから攻撃してこないじゃないか。殺し合いが好きってのは見栄かい?」
「いや、多分見栄ではないよ」
会話はとても和やかだが、ぶつかり合う拳は、ただの拳ではありえない轟音と突風を巻き起こす。
「・・・すげぇ」
遠巻きにその応酬を見ていた、鬼か天狗が呟いた。
今や戦場で戦っているのは、突然乱入してきた鬼と鬼子母神のみである。みなその雲の上の戦いに見入り、息を飲む。
「いい加減に本気できな!そんな拳じゃあたしは殺さないよ!」
鬼子母神が吠える。
「・・・すまないが、私の腕力はこれで全力だ」
「は?」
鬼子母神の挑発に、鬼は予想外の事実を伝えた。
「いやいやいやいや、あんた鬼だろ?さっきからずっと中級妖怪ぐらいの力じゃないか」
「本当にその程度なんだよ、私の腕力は」
あくまで飄々とした態度で、カラカラと笑う。
そして、とっておきの宝物を見せる子供のような笑顔で、
「その代わり脚力には自信ありだが」
その言葉が発せられたと同時に、鬼子母神の左腕が掻き消えた。
ーーーーーーーーーー
なにがおきた!?
鬼子母神は、突然の事態にひどく混乱していた。全く見えなかった訳ではない。しかし、予想外の足技に体がついてこなかった。いや、感覚すら追いつかず、自らの本能とでもいうべきものが、体を咄嗟に右へずらした。その直後、左腕を持っていかれた。
(そんな馬鹿な!あたしが避けれないほどの早さだって!?)
ひたすら頭の中には、『ありえない』の文字だけが巡った。油断はしなかった。むしろ、得体の知れない、白燐の能力に対して、いつでも対処できるよう、細心の注意をはらっていた。しかし、白燐が能力を使ったのは最初の『蠅』だけで、今の今まで全く使っていない。鬼子母神は白燐の能力を警戒するあまり、白燐の物理的攻撃への注意を一瞬怠った。
『油断した!くそっ、能力ばかりに気を取られた!)
後悔先に立たず。失った左腕を元に戻そうと妖力を流しながら距離をとる。しかし、
「終わりだ」
読まれてた!?
すでに白燐は動揺する鬼子母神を逃さなかった。
「最後に何か?」
勝敗の決した習慣。
「はは・・・天晴お見事」
そこで鬼子母神の記憶は途切れた。
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- 13 : 2016/11/23(水) 09:19:49 :
- 【訂正】
✖︎勝負の決した習慣
◯勝負の決した瞬間
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- 14 : 2016/11/23(水) 11:04:09 :
- ーーーーーーーーーー
鬼の見事な踵落としが決まり、鬼子母神は地に伏した。周りで見ている鬼たちの中には、あり得ない決着への動揺や、鬼の神をいともたやすくねじ伏せた鬼への畏怖とも取れるどよめきがうまれる。
しかし、まだ天魔が残っている。故に、鬼たちと違い未だ天狗の衆はわずかばかりの余裕を持っていた。
自らの主人が負けるはずないと。
戦いを見守る紫は、そんな天狗と鬼の状況などみていなかった。
(なんなの!?あの鬼は!)
鬼子母神を倒した。あの鬼が。なんの変哲も無い。
あり得ない。しかし実際、鬼子母神は倒れている。周りのざわめきなど興味がないかのように、鬼子母神を下した鬼は天魔へ向かう。天魔もすでに蠅とのじゃれ合いを終え、戦闘態勢に入っていた。
ーーーーーーーー
恐ろしい。
鬼子母神と乱入者の鬼との戦いを見て、天魔はまず恐怖を覚えた。鬼子母神は、さすがの力を見せていた。能力に頼るだけでなく、かといって闇雲に突っ込むのでもなく、その戦いは一見野蛮で、それでいて考えられた動きをしていた。もしあのまま戦っていれば、苦戦していただろう。負ける気はしないが。しかし、乱入者・・・白燐とかいう鬼は、文字通り別次元の存在だった。豪快かつ繊細な鬼子母神の猛攻を、のらりくらりとかわし、その拳を叩き込んでいく。
「ふざけるなよ・・・」
自然と悪態をついていた。そもそもこの戦争には暇つぶし程度の気持ちで同胞を連れ参戦した。鬼の神と見えた時も、なるほど強いな、としか感じなかった。しかし、あの鬼には、なぜか自分の勝てるイメージが全く湧かない。やはり、自分の予想通り、こいつはやばい。勝つ負けるよりさきに、戦いになるのか?という負け犬意識が顔を出す。そして、決着は訪れた。鬼子母神は、白燐の踵落としおもろに受け、気絶。そして、白燐はそのままこちらへ向かってくる。
「おぬし、それほどの力を有していながら、何故鬼の長にはならんのじゃ」
時間稼ぎでも何でもなく、本心からくる疑問をぶつけた。
「いやぁ、私は人の上に立つのは苦手なんだ。上に立つより、同じ目線の方が面白い」
「・・・ッハ!ハハハ!なるほど、おもしろい!」
自然と天魔は笑っていた。鬼でありながら、鬼らしからぬことをのたまう。しかし、その言葉に共感した。
「我は天魔!そなたの武勇に敬意を表し、全力でお相手つかまつる!」
天魔は、自分がこの鬼に対して感じる感情が、恐ろしい奴から、愉快な奴へと変わっていることに気づきながら、戦闘態勢を取り直す。
「私は白燐!天魔殿の敬意に感謝を込めて、こちらも全力でお相手いたす!」
白燐も天魔に対し、最大限の敬意を表す。
そして、動いたのはほぼ同時だった。
ーーーーーーーーーー
結果だけを言えば、白燐の圧勝だった。天魔は鬼子母神とほぼ同等の力を見せたが、白燐には触れることすらできなかった。
「負けた負けた。わしの完敗じゃ」
鬼子母神と同じように地に伏した天魔は、そう呟いた。右腕は折れ、あばらも何本かいっているようだった。
「いや、あなたがたは強かった。私も割とギリギリだったよ」
隣には、白燐が座っていた。その隣では、鬼子母神が不満げな顔をして倒れていた。
「あたしは納得いかないね!もっとあんたと戦りたいんだよ!治ったらもっぺんやるぞ白燐」
「勘弁してください、まだ拳がいたいんですよ?」
戦争は終わり、参加した妖怪たちは各々持ち寄った酒で、大宴会を開いていた。鬼子母神と天魔の周りには、何故か誰もこなかった。
「二人の部下はどこへ?」
「「あんたがいるからびびって近づけないんだよ」」
「・・・そんなとって食ったりするわけじゃないのに」
その後、妖怪たちの間では、取り決めと教訓が生まれた。取り決めとは、『人間をむやみやたらに襲うのは自重しよう』。教訓とは、『白い鬼を怒らせるな。というか死にたくなければ近づくな』である。
ーーーーーーーーーー
「何ともぶっ飛んだ話だぜ」
全てを聞き終えた魔理沙は呟いた。鬼の神と天狗の長を、たった一人であしらった鬼。規格外にもほどがある。
「でも、何だか実感ないわね。目の前の鬼がその鬼神様って言われても」
「まあ、私も鬼神なんて呼ばれてるとは知らなかったけど・・・でも、今の私はのんびり余生を過ごしたいだけだから、幻想郷で厄介ごとを起こす気はないよ」
その言葉に、紫は安堵の表情を浮かべた。
「それならば、白燐さ・・・、白燐の幻想入りを認めましょう」
「家とかどうするんだぜ?」
「そうだなあ、特に決めてないが、人里とやらには一度行きたいな」
「家なら私が用意します」
紫は、すっかり調子を取り戻していた。
「あ、八雲さん」
白燐が紫に近づく。
「ぴい!?」
全然取り戻してなかった。
ーーーーーーーーーー
-
- 15 : 2016/11/26(土) 22:23:20 :
- 「とりあえず白燐はこれから何すんだ?」
ひとしきり紫の慌てぶりを笑ってから、魔理沙は白燐に尋ねる。
「そうだなあ、家については八雲さんに任せるとして、これからの予定は特にないかな」
「じゃあ弾幕ごっこしようぜ!」
そう言って魔理沙はスペルカードを取り出す。
「いや、白燐ひ来たばっかだしカード持ってないでしょうが」
呆れたように言う霊夢。
「そんなのやってるうちに慣れるさ!さあ、早く準備しな!」
そんなこと御構い無し、すでにやる気満々な魔理沙。
白燐は、少し考え込んで、頷く。
「ふむ、確かに幻想郷で過ごす以上、弾幕ごっこに慣れておいたほうがいいか」
「・・・あんたやっぱのんびり屋な上に楽天的ね」
白燐にも呆れた様子の霊夢。
「魔理沙・・・せめて墓くらいつくるべきかしら」
「私は負ける前提か。というか死ぬ前提か」
紫はあいもかわらず白燐を過大評価していた。
というか未だにこちらをビクビク警戒していた。解せぬ。
(外では奇跡的に人間の友人も出来たというのに・・・。何かした覚えはないのだが・・・あ、まさか・・・)
「八雲さん」
「ヒィ!?はい!何かしら!?」
「ちょっと失礼」
「ひゃあ!?」
霊夢と魔理沙が驚愕するなか、白燐は紫の帽子をとる。
「ちょ、何を・・・」
「ああ、やっぱりあった」
そう言って白燐が帽子から剥がしたのは、一枚の小さな紙切れ。
「なんだぜ、それ?」
「私の能力が使われた紙だよ。書いてあるのは『恐』だ」
「あれ?白燐から感じてた怖さが消えた!?」
やはり、昔戦争を止めた後の宴会で、悪ふざけでつけた紙に気づかないで被っていたのか。たしか、『紫の中で今最も危険だと感じている存在への半永久の恐怖』だったか。事の次第を紫に教える。
「そんな物騒なものはらないでよ!?」
「いやぁ、つい魔が差してね」
後悔はしないが、反省はすることにした。
「なあなあ、弾幕ごっこは!?」
おっと忘れてた。
ーーーーーーーーーー
「じゃあいくぜ!」
白燐と魔理沙は、博麗神社の境内の上空にいた。
「白燐は一応初めてだし、スペルカードは二枚な!」
「いや、そもそもスペルカード自体まだ持ってないからな?」
というか、これはどうすればいいのだろう。弾幕程度なら撃てないこともないが、スペルカードはどうしようもない。
「いくぜ!『
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- 16 : 2016/11/26(土) 22:54:54 :
- ーーーーーーーー
「いくぜ!『魔符(スターダストレヴァリエ)』!」
魔理沙がいきなりスペルカードを使う。
「ほお、なかなか綺麗だ」
お世辞ではなく、本心の感想を述べる。
「そんな悠長なこと言ってると、あっという間に落としちまうぜ?」
「そう簡単に鬼は落とせないぞ?」
白燐は初めての弾幕ごっこにも関わらず、当たり前のように回避していく。
「しかし、こちらも攻撃手段が欲しいな・・・。仕方ない、割と卑怯だが、これで行こう。いくぞ魔理沙」
「おう!かかってこい!」
白燐は腰から筆と紙束を外す。そして、尋常ではないスピードで文字を書く。回避しながら。
(くそ!当たらないか!なら、最後のとっておきで・・・)
魔理沙は別のスペルカードを宣言する。
「これでもくらえ!『恋符(マスタースパーク)』!」
極太のカラフルなレーザーが白燐を襲う。
「待ってたよ、大技!」
「なに!?」
しかし、白燐はそれを避けるのではなく、あえて射線に入った。
「へっ!私のマスタースパークを止めるのは不可能だぜ!」
「ああ、止めはしないよ。ちょいと借りるだけさ」
そう言って白燐は書き終えた紙札を二枚投げる。一つはマスタースパークへ。もう一つは魔理沙のはるか後方へ。
「どこ狙ってんだ!」
「いや、狙いは正確だよ」
と、その時、白燐を今まさに飲み込まんとしていたマスタースパークが、紙札に吸い込まれる。
「へ?」
突然の出来事に固まった魔理沙の横、通り過ぎる寸前のもう一枚から、吸い込まれたマスタースパークが吐き出される。
「ぎゃあああ!?」
そして、魔理沙は自らのマスタースパークにやられた。
ーーーーーーーー
「さて、私の勝ちだな」
自分の攻撃に落とされた魔理沙に続き、白燐は境内に降り立った。
「くっそー!なんだったんだよ今の!」
悔しそうに魔理沙が尋ねる。
「ああ、能力で作った即席のお札だよ。マスタースパークの方へ飛ばしたのは、『吸』、吸い込んだマスタースパークを吐き出したのは『吐』だ」
「なるほど、白燐の能力は書いた文字の意味を具現化する能力なのね」
先ほどまで弾幕ごっこを眺めていた紫が、そう分析する。
「いや、もっと具体的にはちょっと違うかな」
「え?」
「私の能力は、『言の葉』、つまり言葉を操るんだ。紙に書いて飛ばしたり、体につけたりしているのは、扱いやすさを重視した使い方をしているだけなんだよ」
「つまり、やろうと思えば、使いたい言葉を口に出すだけでも能力を使えるの?」
紫の後についてきた霊夢がそう分析し直した。
「そうだね、だいたいあってるよ。他にも、ちょっと疲れるけど、集中すればいい心に念じるだけでも発動する」
「マジかよ!?完全にチートじゃねえか!」
「ははは・・・でもほとんどは扱いやすい方法ほど、効力の持続時間も短いかな」
三人とも唖然とする。まあ、こんな『ぼくのかんがえたさいきょうののうりょく』的なものを持っているといえば当然か。
「・・・本当、恐ろしいものね。どうりで鬼子母神と天魔を相手にできるわけだわ」
「というか、私の帽子に貼った札かなり長い間効いてたけど、イタズラにしては凝ってたってことじゃない!?」
「そりゃあ、あんな戦争起こした罰も兼ねてたからな」
「ちょ、あれはあの時には必要だったことで・・・!」
「さて、人里でも見にいくか」
「私が案内してやるぜ!」
「話を聞けぇぇぇ!」
神社の境内で、紫の絶叫が響いた。
-
- 17 : 2016/12/02(金) 00:39:14 :
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「そーいやあ白燐はなんで人里に行きたいんだ?」
紫をスルーして博麗神社を離れた魔理沙と白燐。
霊夢は「怠い」と言ってついて来ず、紫も話を聞いてもらえないとわかると何処かへ行った。そして現在、人里へ歩いて向かっている。
「うーん、特に理由らしい理由はないんだけど、強いて言うなら人間が好きだからかな」
「へー、鬼ってそんなもんなのか?」
「大体昔から鬼は人間好きだよ。幻想郷にも鬼はいるんだろ?」
「あー、いるにはいるが地底にいるんだ」
「地底?」
「ま、いろいろあるんだよ」
適当にはぐらかす魔理沙。もう少し追求してみたい気もしたが、人里に先に着いた。
「お、着いた。ここが人里だぜ」
「へえ、割と人がいるもんだな」
白燐は外にいた頃は都市へは近づかないようにしていたので、人が多い所は久しぶりだった。
「里では変化しなくてもいいのかな?」
「いいんじゃないか?いろんな妖怪が来てるから割と目立たないかもしれないぜ?あ、でも鬼なんて滅多に見ないし、さすがにまずいかな?」
「とりあえず変化しとこう」
そう言って白燐は懐から『変』の文字が書かれた紙を取り出し、自分に貼る。すると、たちまち白燐の体は人になった。
「へえ、やっぱ便利な能力だな、それ」
「いや、案外そうでもないよ」
羨望の言葉を漏らす魔理沙に、白燐は笑って答える。
「っていうか、すげえな、その変化。妖力も感じなくなったぜ」
「ああ、この能力の弱点?みたいなものかな。加減が割と難しいんだ。頑張れば妖力だけ残したりも出来るんだけど、何も調整しないと全て『変』わるんだ」
二人は通りを歩きながら話し続けた。そして、とある建物まで来た。
「ここは?」
「寺子屋だぜ。ここに人里の代表的なのがいるんだ。あいつにだけは白燐のこと一応教えとかないとな」
そう言って魔理沙は遠慮なしに入っていく。
「おーい、慧音ー、いるかー?」
いるかー、と聞いてはいるが、返事を待たずにあがる魔理沙。
「おい魔理沙、勝手に入るのは・・・」
「まあまあ、気にしない気にしない」
気にするべきである。
「呼んだかー、あと、いい加減勝手にあがるのをやめないか魔理沙。何度言ったらわかるんだ」
と、奥からやや背の高い女性が出て来た。淡い青の服にを着て、頭には何やら教師めいた帽子を被っている。
「ん?そちらはどなたかな?」
「いきなりすいません、私は白燐と言います。ついさっき幻想郷に来たばかりの者です」
ーーーーーーーーーーーー
-
- 19 : 2016/12/04(日) 21:58:38 :
- ーーーーーーーーーー
「外の世界から来た鬼か・・・」
そう言ってお茶を啜る女性ーー慧音の前には、白燐と魔理沙。
「里の者に危害を加えないのなら私としては問題ない。しかし、人里に住むのか?」
「そこまではまだ。ただ、もしそうなった時にあなたに何も言っていないと、あとあと困るらしいので挨拶に」
「こいつ面白いんだぜ!弾幕ごっこ初めての癖に私に勝ったんだ!」
と、なぜか自慢げな魔理沙。
「なぜ魔理沙が威張る・・・。まあいい、白燐といったな。歓迎するよ。これからよろしくな」
と言って慧音が手を差し出す。白燐もその手をとり、少し微笑みながら、挨拶する。
「こちらこそ。ところで、一つ聞きたいのですが・・・」
「何かな?」
「地底とやらへは、どうすれば行けますか?」
と白燐が聞く。
「地底?なんでそんなことを聞くんだ?」
慧音は若干顔を曇らせる。
「あそこはかなり昔に、この幻想郷のルールを守らない者たちが作った場所で、ろくなところじゃないぞ」
しかし、白燐はなお笑いながら言う。
「いや、古い知人に会えるかもしれないからね」
慧音と魔理沙は、首を傾げていた。
「・・・よく分からないが、私は地底への行き方は知らない。幻想郷の賢者なら知っているだろうが」
「そうか・・・。いやすまない、変なことを聞いた。どれ、そろそろお暇しよう」
そう言って白燐は立ち上がった。「なんだか空気になった気分だぜ・・・」と言いながら魔理沙も立ち上がる。慧音と話している間はずっと暇そうだった。
「では、また何かあったら頼らせてもらうよ」
「ああ、その時はできる限り力になろう」
そして、白燐と魔理沙は寺子屋を出た。
ーーーーーーーーーーーー
「・・・で、白燐はこれからどこへ行くんだぜ?」
寺子屋をでてすぐ、魔理沙は白燐に尋ねる。
「地底への道を探そうと思う」
「はあ?でも、慧音だって知らないのにどうやって。まさか紫に聞くのか?」
「ちょっと便利な式を使うだけさ」
そう言って白燐は紙と筆を取り出す。
「あ!また能力か!」
「まあね。今回はちょっと複雑なものにしようかな」
そう言って白燐はさらさらと書き始める。今までのように一文字では無く、三文字である。
「よし、こい!」
そう言って紙を地面に投げる。すると、ボンッという音と煙と共に、1匹の鷹が現れる。
「うおっ、今度はどんな奴なんだ?」
魔理沙は、興味を惹かれながら尋ねる。
「『探』と『道』と『鷹』だよ。地底までの道を探せ。見つけたら一旦戻ってこい。行け!」
と、白燐が言うと、鷹は一声鳴いて、翼を広げ飛んで行った。
「じゃあ、私は帰るぜ。じゃーなー」
そう言って魔理沙は帰って行った。
「さて、見つかるまでだけでも・・・」
そう言ってまた紙を一枚取り出し、『釣竿』と書く。
「釣りをしようかな」
-
- 20 : 2016/12/11(日) 00:44:35 :
- ーーーーーーーーーー
時は流れ、すでに太陽は真上をやや通り過ぎた。
「・・・釣れないものだなあ」
白燐は、呑気にそうぼやく。かれこれ二時間近く竿を川に垂らすが、全く釣れなかった。
「飛ばした式(もどき)も帰ってこないしなあ。上流へ行くか」
ーーーーーーーーーー
しばらくして、白燐は広大な湖にでた。
「ほお、これはまた大きい。ここなら釣れるかな?」
そう言って糸を垂らす。と、背後から声をかけられる。
「やい!あんただれだ!ここはあたいの縄張りだよ!」
「チ、チルノちゃん・・・やめとこうよお」
振り向くと、やや勝気そうな青い妖精と、大人しそうな緑の妖精がいた。
「おや、そうなのかい。それはすまなかったね。あ、ちょっと待ってもらえるかな。何かかかった」
「あたいを無視するんじゃないよ!聞いてんの!?」
「チルノちゃん、そんな言い方しちゃダメだよ・・・」
しかし、白燐は竿に集中しており、完全にシカトした。
「・・・きた!」
そして、本日初の魚ゲット・・・
「あたいの話を聞けぇぇ!」
「グホッ!?」
とはならず、怒ったチルノの弾幕を受け、竿とともに湖へ落ちた。
「チルノちゃん!?」
「やいやい!あたいを無視するとはいい度胸ね!勝負よ!スペルカードは二枚ね!」
「チルノちゃんもう弾幕撃っちゃったからね!?その宣言遅いよ!?」
などと妖精二人が問答していると、ザバァッと白燐が湖から這い上がる。
「・・・」
「どうしたの黙り込んで!あたいの強さにビビったの!?」
「チルノちゃん!」
「・・・いいだろう、君の挑戦受けよう」
そう言った白燐の顔は、チルノからは見えなかったが、緑の妖精・・・大妖精は、その顔を見て「ヒィッ!?」と恐怖した。その後、湖のほとりに、チルノの悲鳴がこだました。
-
- 21 : 2016/12/27(火) 23:43:17 :
- ーーーーーーーー
「うう、まだ痛い・・・」
白燐を湖に叩き落とし、そのお返しにデコピンを食らったチルノは、おでこを抑えながらつぶやいた。
「でもあれはチルノちゃんが悪いよ」
「だって大ちゃん、あたいの縄張りに勝手に入って来るから・・・」
そんなチルノを心配しつつも、やんわりと説教する大妖精。そして、
「さて、二人とももうこっちを見ていいよ」
湖に叩き落とされ、ずぶ濡れになった服を乾かしている白燐。
「あれ?替えの服なんて持ってましたっけ?」
大妖精は、白燐が初めて見たときは釣竿しか持っていなかったのに、替えの服を持っていたことに疑問をもった。
「まあ、いろいろ便利な能力があるからね」
もっていた筆も紙も湖に落ちた時に使い物にならなくなった。しかし、白燐の能力はそもそも『言の葉』を操るものだ。白燐は大妖精とチルノに後ろを向かせ、服を脱ぐと、
「『脱水』」
と呟く。すると、手に持っていた服の水気はたちまち抜けて行く。あっという間に服は乾き、故に替えの服を探すまでもなかった。
「ところで君達、ここらで有名な観光地とか、知らないかい?」
「え?観光地ですか?う〜ん、そんなものなかったと思いますよ?」
「面白いところなら、あの赤い家とかね!」
「ほお・・・なんというか・・・」
チルノがまっすぐ指差した先には、見ているだけで目が疲れるような真紅の建物があった。・・・しかし・・・
「趣味が悪い建物だね」
「は、はっきり言いますね・・・」
屋根や一部だけが赤ならまだ問題ないだろうが、塀にいたるまで真っ赤な館は、趣味が悪いと言わざるを得ない様相を呈していた。
(でもまあ、何があるか気にはなるね)
白燐は、真紅の建物ーーーー紅魔館の中からわずかに漏れる気配・・・『狂気』に惹かれた。
(あそこには何かが、いる。いいね、面白そうだ)
「あの・・・」
考え事をしていた白燐に、大妖精が話かける。
「何かな?」
「あの、あそこには行かないほうがいいですよ?あそこは吸血鬼の住んでるところですから、あなたが行ったら殺されちゃいます!」
白燐は能力で人間に変化しているため、大妖精は白燐を人間だと勘違いしたままだった。故に白燐を心配してくれていた。
「心配してくれてありがとう。でも私なら大丈夫だ。二人とも、またここで釣りをしに来たら会おう」
「本当に、気をつけてくださいねー!」
「今度はちゃんとあたいと勝負しなさいよー!」
未だ心配している様子の大妖精と、元気に叫ぶチルノに手を振りつつ、白燐は紅魔館へと歩いて行った。
-
- 22 : 2017/01/13(金) 01:25:10 :
- ーーーーーーーーー
紅魔館
「パチェ、フランの様子はどう?」
白燐が紅魔館へと歩みを進めていた時、紅魔館の主である吸血鬼ーーレミリア・スカーレットは、親友のパチュリー・ノーレッジと共に紅茶を飲んでいた。
「異変で霊夢達が来てから大分落ち着いたんじゃないかしら。ここ最近はあまり狂気に振り回されてないみたいだし」
と、気だるげな声でパチュリーは答える。
「そう・・・。でも完全に克服できたわけではないのね?」
「ええ。今のところはどうにかなってるけど、あれが今後また暴れ出すようになったら、さすがに私でも匙を投げるしか無くなるわね」
それを聞くと、レミリアは紅茶を飲みながら薄く微笑んだ。
「なによ、いい話ではなかったはずだけど?」
「いやね、今朝能力を使ったのよ」
それを聞いて、パチュリーは理解した。
「何か起こるのね?」
レミリアの能力は、『運命を操る程度の能力』・・・
ぶっちゃけて言えば未来予知である。
「今回は断片的にしか見れなかったわ。でも、確かに見た。フランが笑いながら庭の上を飛び回る未来がね」
レミリアは、まるでそれがすでに訪れた光景かのように幸せそうな笑みを浮かべながら紅茶を飲む。そんな親友の様子に、それがいつのことかは分からないのに、呑気なものねと呆れていた。
ーーーーーーーーー
一方、白燐は紅魔館の門の前に来ていた。
「・・・まさか寝てるのか?」
門の前には、中華風の服を着た女性が立っていた。・・・腕を組み、下を向いてまるで寝ているかのような体勢で。
「なんで寝ているのかは知らないが、これは通っていいのか?」
そう、もし本当に寝ているのなら、このまま白燐が通ることは容易だ。しかし、その後この中華風の娘が怒られるのは目に見えている。
「起こそうか・・・」
未だ門の横に立ちながら眠る門番を起こすため、近づいた白燐。しかし、肩を叩く寸前、突如左から何かが飛んでくる。
「っ!」
すぐさま白燐は回避した。飛んできたのは、門番の右足による一閃だった。
「どなたか知りませんが、ここは立ち入り禁止ですよ」
「なんだ、寝てたのかと思ったら、起きてたのか」
「・・・当たり前じゃないですか」
「本当に寝てたんだな・・・」
うぐっ、とおかしな声を出しつつ、戦闘体制に入る門番。
「で、あなたは紅魔館(ここ)へなにしに来たのでしょうか」
返答次第では排除する、とでも言いたげに殺気を飛ばす門番。しかし、あくまで白燐は狂気の出所を調べに来たのであり、戦う気はなかった。
「ここから少々おかしな気配が漏れていてね。調べたいんだ、通してくれ」
「それは無理な相談ですね。どうしても通りたければ、私を突破することです」
やれやれ、と白燐はため息をついた。
「君を倒せば通してくれるのかい?」
「ええ、どうやらあなたは相当強い妖怪の様ですし」
「驚いたな、一応人間に変化してるし、能力を使っているからバレることはないはずなんだが」
「あなたの気は普通の人間とは違う流れですから」
「なるほど、気か。今後の参考にさせてもらおう」
その言葉を最後に、二人とも黙ったまま対峙し続けた。
「っ!」
先に仕掛けたのは門番ーー紅美鈴だった。素早く伸びた脚が、鞭の様にしなりながら白燐の首元を寸分たがわず狙う。
「っ!?かはっ!」
しかし、攻撃を当てたのは白燐の方だった。
(なにが・・・あちらは構えてすらなかったはず・・・!)
無防備に佇んでいた白燐。しかし、気づくと白燐は拳を美鈴の腹にめり込ませていた。
「君はなかなかに強いよ。妖怪でありながら武術も心得ている」
だが、しかし。
「鬼を舐めるな、君じゃあ殺す気にもなれやしない。伸び代はあるんだ、出直してこい」
そこで美鈴の意識は途切れた。
「さて、約束通り『じゃれて』あげたし、これで通れるな」
そうして白燐は紅魔館へと入っていった。
美鈴・・・気絶
-
- 23 : 2017/03/06(月) 16:46:47 :
- ーーーーーーーーー
「誰もいないな」
門番の美鈴を倒した白燐は、紅魔館のロビーのような所にいた。
(狂気は・・・消えているか。隠れたのか?)
白燐が辿って来た狂気もなりを潜めており、白燐は立往生していた。
「さて、どうしようか・・・」
「あら、お客さんかしら?」
「ん?」
ロビーのど真ん中で突っ立っていると、階段の上から、メイドが降りて来た。
「人間・・・か?」
「ええ、そうよ。そしてあなたは侵入者、ね」
(これまた面白そうなのが来たな・・・)
「私は紅魔館のメイド、十六夜咲夜。お嬢様がお呼びです。どうぞこちらへ」
どうやらもう気づかれていたようであった。
白燐は黙ってそれに従い、メイドーー十六夜咲夜について行った。
「侵入者様、靴は脱がなくてもよろしいです」
「白燐だ」
ーーーーーーーーーー
「お嬢様、侵入者をお連れしました」
「だから白燐だって」
咲夜に連れられて、とある部屋の前に来た。
(しかしまあ、なんでこんなに部屋が多いんだろうか?見かけ以上に広いようだ)
「入っていいわよ」
中から声がした。これから会うのは、吸血鬼。感じる力も相当のもの。果たしてどんな姿なのか、と白燐は若干楽しみにしながら、咲夜に続いて部屋に入った。
「ようこそ紅魔館へ。私がここの主、レミリア・スカーレットだ」
「・・・」
「どうした?鬼ともあろう者が、怖気づいたか?」
この館の主らしい幼・・・少女が、フン、と鼻で笑う。
「なんとかいったらどうだ?」
「あ、ああ、そうだね自己紹介しよう。私は白燐。ところで、そのー、君がここの主・・・でいいのかな?」
「さっきからそう言っているだろう。で、貴様は何の用で我が屋敷へ来た」
そう言ってレミリアは笑った。
そして、白燐もここでやっと驚きから立ち直り、目的を話した。
「ここに狂気を持つなにかがいるだろう?」
この質問に、レミリアの顔が曇る。
「どこでそれを知った?」
「なに、狂気とかの感情は人一倍感じるものでね」
レミリアは、少し考えるような仕草をしてから、話し始めた。
「多分それは、私の妹ね」
-
- 24 : 2023/07/09(日) 15:59:45 :
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2 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 16:43:56 このユーザーのレスのみ表示する
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16 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 19:01:59 このユーザーのレスのみ表示する
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36 : 2021年11月6日 : 2021/10/13(水) 19:43:59 このユーザーのレスのみ表示する
理想は登録ユーザーが20人ぐらい増えて、noteをカオスにしてくれて、管理人の手に負えなくなって最悪閉鎖に追い込まれたら嬉しいな
22 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:37:51 このユーザーのレスのみ表示する
以前未登録に垢あげた時は複数の他のユーザーに乗っ取られたりで面倒だったからね。
46 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:45:59 このユーザーのレスのみ表示する
ぶっちゃけグループ二個ぐらい潰した事あるからね
52 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:48:34 このユーザーのレスのみ表示する
一応、自分で名前つけてる未登録で、かつ「あ、コイツならもしかしたらnoteぶっ壊せるかも」て思った奴笑
89 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 21:17:27 このユーザーのレスのみ表示する
noteがよりカオスにって運営側の手に負えなくなって閉鎖されたら万々歳だからな、俺のning依存症を終わらせてくれ
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