この作品は執筆を終了しています。
歩道橋で歌う、おじさん。
-
- 1 : 2016/09/24(土) 18:59:51 :
-
短いお話です。
わい「書けるのか。」
脳内のわい「はよなんか書けや。」
書きます↓
-
- 2 : 2016/09/24(土) 19:06:35 :
-
大分昔のお話。
___きょっおのそぉ〜らはあおぃいのぉ〜♩
僕の通学路には歩道橋があった。少し短め。手摺りが低かった。
大人からしては少し危険なのではないだろうか。
一年生の頃。
そこの曲がり角を横断中の時だった。
ここを通るのは未だに慣れていない。
自分の身柄にしては大きめのピカピカなランドセルを背負って、通常通り通る。
……つもりだったのだか。
『きょっおのそぉ〜らはあおぃいのぉ〜♩』
歩道橋通りのど真ん中で歌っているおじさんがいた。
(………待て、なんだあのおじさん。)
音程はバラバラ。声も震えていた。けれど顔だけはにこにこし、微風に当たって気持ち良さそうだった。
……如何して歌っているのだろうか。
『…おじさん?』
やばい、凄く緊張する。
あまり人と話すことに慣れていなかったことに、バクバクと心臓が循環した。
『……ん〜?なんだい?』
そんな僕に笑顔で接してくれたおじさんがいた。
-
- 3 : 2016/09/24(土) 19:14:51 :
-
『如何してこんな処で歌っているんですか?』
というか先ず、僕は何故聞いたんだろうか。歌っていることに人様からの苦情は出ていない。
『今日は、良い天気だからねえー』
おじさんは僕にそれだけ言うと、再び歌い出した。
僕は数分、その歌を聞いていた。
『…あっ、もう行かなくちゃ。』
相手にしてもらったおじさんに僕は、行ってきますの一言も言わずにその場を離れ、さっさと学校に急ぎ足で学校に向かった。
それからそんな日が何日続いたであろうか。
自分の声が、低い。ランドセルも少し小さく見える身柄。
僕は六年生になっていた。
-
- 4 : 2016/09/24(土) 19:22:18 :
-
『きょお〜はくもっていぃ〜ヤダなぁ〜♩』
『あしたもはっれるといっいなぁ〜♩』
この六年間、おじさんはその日の天気などでの様々な替え歌でずっと、毎日、歩道橋の真ん中で歌っていた。
そして僕は、その歌を毎日聞いていた。
『あっ、おじさん、行ってくるね。』
おじさんとも会話をする様になった。仲良くなった。学校のこと、家でのこと。僕はいろいろと話してた。
『……んー、行ってらっしゃーぁ…い。』
けど、気付けばおじさんは口調が遅くなっていた。
声も小さく、身長は初めに僕と出会った時はおじさんの方がぐんと高かったが、僕はその差を無くし、むしろ僕の方がぐんと高くなっていた。
更に気付いたことがもう一つある。
『あっしたもここでぇうぅたえるぅ〜かなぁ〜♩』
必ず歌詞の中に、_明日もここで歌えるかなぁ_って。
入ってた。
-
- 5 : 2016/09/24(土) 19:29:12 :
-
またまたある日のこと。
それは僕が卒業する日。
その日はお母さんと一緒に登校した。
歩道橋の真ん中におじさんの姿が見えなかった。
そのまま歩道橋を通り過ぎる。
(…いやだ、言いたい。)
僕はお母さんに、ちょっと待ってて、と言って後戻りした。
見渡すと、見慣れた景色。
……あのねおじさん。僕はもう、わかっていたよ。
こんな日がいつか来るって。
おじさん、ありがとう。
『僕、これからも頑張るね。』
一言、そう言った。
くるりと背を向け、お母さんの元へと走って行った。
そんな思い出が、僕の中にはあった。
-
- 6 : 2016/09/24(土) 19:35:04 :
-
それから何十年か経って。大人になった僕。
『きょっおのそぉ〜らは……』
『あおぃいのぉ〜…♩』
たまに思い出す、あの歌というものが、僕にはあった。
終わり
- このスレッドは書き込みが制限されています。
- スレッド作成者が書き込みを許可していないため、書き込むことができません。
- 著者情報
- 「私小説」カテゴリの最新記事
- 「私小説」SSの交流広場
- 私小説 交流広場