このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
白野「この...死に急ぎ野郎っ!!」 エレン「......!?」 【聖杯戦争 一回戦】
- 進撃の巨人 × Fate
- 2232
- 37
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- 2 : 2016/09/15(木) 01:06:50 :
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- 3 : 2016/09/15(木) 01:42:26 :
エレン「はぁッ!」ドゴッ!
人形「」ガクガクガクガク...ドサッ
人形は、もう動かなくなった。
......ここまで粉々に破壊されては動きようもない。
エレン「ん。まぁ、準備運動にはなったかな。久しぶりの出番だったから不安だったけど、この程度なら体術でカタをつけられる」
白野「――――――ッ」ヨロッ
少年...エレンが何やら言っている。
......が、その声は
ろくに耳に入ってこなかった。
左手に刻まれた印の発熱。
それは戦いの最中も徐々に強まり、
今や耐え難い激痛となって、意識を白く焼き焦がす。
???「手に刻まれたそれは令呪 。サーヴァントの主人となった証だ。使い方によってサーヴァントの力を強め、あるいは束縛する、3つの絶対命令権。まぁ使い捨ての強化装置とでも思えばいい」
???「ただし、それは同時に聖杯戦争本戦の参加証でもある。令呪を全て失えば、マスターは死ぬ。注意することだ」
再度あの声が聞こえてきた。
どうにか痛みを堪えつつ、
言葉に耳を傾ける。
???「困惑していることだろう。しかし、まずは......」
???「おめでとう。傷つき、迷い、辿り着いた者よ。主の名のもとに休息を与えよう。とりあえずは、ここがゴールと言う事になる」
???「随分と未熟な行軍だったが、だからこそ見応えあふれるものだった」
???「いや、私も長くこの任についているが、君ほど無防備なマスター候補は初めてだ。誇りたまえ。君の機転は、臆病ではあったが蛮勇だった」
......あらためて注意をかたむけると、
声はどことなく癪に障る。
厚みを持った声は三十代半ばの男だろうか。
場所が場所なだけに、
重苦しい神父服 をイメージさせる。
???「おや、私の素性 が気になるかね?光栄だが、そう大したものではない。何しろただのシステムだ」
???「私は案内役にすぎない。かつてこの戦いに関与した、とある人物の人となりを元にした定型文というヤツだ」
???「私は言葉であり、君がいま超えた峰 であり、かつて在った記録にすぎない」
記録―――
では、この声に文句を言っても、
何の答えも返ってこない、という事だろうか?
???「そうだ」
???「―――――だが、これもまた異例だな。君に、何者からか祝辞が届いている。"光あれ"と」
どこの誰かも分からない、
何者かから贈られた言葉。
...たった一言のそれが胸を衝くのは、
こめられた気持ちが真実だからだ。
ただ、"君に期待する"と。
それは短くても、祈りのような言葉だった。
???「では洗礼を始めよう。君にはその資格がある」
???「変わらずに繰り返し、飽くなき回り続ける日常。そこに背を向けて踏み出した君の決断は、生き残るにたる資格を得た」
???「しかし、これはまだ一歩目にすぎない。歓びたまえ、若き兵士よ。君の聖杯戦争はここから始まるのだ」
声の語る内容は、全く意味が分からない。
聖杯戦争......?
生き残る資格......?
???「然り。かつて地上に地上には全ての望みを叶える万能の願望器が存在した。人々はその奇跡を"聖杯"と呼称し、多くの欲望が無限を求め争い、しかして、至れるものは一人のみ」
???「この戦い――――このシステムはそのカタチを継承したもの。聖杯を手にするただ一人になる為の、魔術師 達の命を賭した戦争。君は今、その入り口に立ったのだ」
???「聞け、数多の魔術師よ。己が欲望で地上を照らさんと、諸君らは救世主たる罪人となった。ならば殺しあえ。熾天の玉座は、最も強い願いのみを迎えよう―――――」
その声はまさしく主の御言葉のように、
不視の伽藍に響き渡った。
殺し合い......?
魔術師......?
願いを叶える聖杯......?
そんな、頭に渦巻く多くの疑問のすべてを、
この体に刻み込むように。
???「戦いには剣が必要だ。それは主人 に仕える従者 。敵を貫く槍にして、牙を阻む盾。これからの戦いを切り開く為に用意された英霊。それが君の隣にいる者だよ」
-
- 4 : 2016/09/15(木) 01:49:46 :
隣にたたずむ少年を見る。
少年は特に顔を向けるでもなく、
時折つまらなそうに欠伸をしていた。
白野「彼が、サーヴァント......」
???「君の決断は、既に見させてもらった。もはや疑うまい。その決意を代価とし、聖杯戦争への扉を開こう」
その時。
印―――――令呪と呼ばれていたそれが、
再び痛みを増してきた。
駄目だ。
もう耐えられない。
白野「.........」ドサッ
限界がきて、
思考がホワイトアウトしていく。
そのまま気を失う一瞬前に、
あの声の、最後の言葉が聞こえた。
???「では、これより聖杯戦争を始めよう」
???「いかなる時代、いかなる歳月が流れようと、戦いをもって頂点を決するのは人の摂理」
???「月に招かれた、電子の世界の魔術師達よ。汝、自らを以って最強を証明せよ―――――」
-
- 5 : 2016/09/16(金) 21:02:40 :
-
泥濘の日常は燃え尽きた。
魔術師による生存競争。
運命の車輪は回る。
最も弱き者よ、剣を鍛えよ。
その命が育んだ、己の価値を示す為に――――――
-
- 6 : 2016/09/16(金) 21:15:09 :
-
【聖杯戦争1回戦 開幕】
――――――――――――――――――――
――――――――――――
――――――
空が焼けている。
家が溶けている。
人は潰れている。
路は途絶えている。
これが戦いの源泉。
これが再起の原風景。
ここで「私」は、ただ一人生き延びた。
思い出すな/忘れるな。
忘却は至上の救いであり、最悪の罪である。
忘れるな。
地獄から「私」は生まれた。
これは忌まわしい夢。
何処かであった、
何処にでもあった、
そして、此処 に起きた、幼年期の記憶である。
多くの血が流れ、響き渡る怨嗟の声を聞いた。
命は消える。思いのほかあっさりと。
肉親も友人も、名前を知らない隣人も他愛なく。
銃を持った兵士も、
生き延びようとする家族も、
最後まで醜くも逞しくあがき、
臨終の間際、穏やかな面もちで呼吸を止めた。
―――それが、どうしても承伏できなかった。
何故、という疑問が消えなかった。
紛争と天災の違いはあれ、
何故、このような悲劇が起きるのか。
何故、誰も救う事が出来ないのか。
いや、そもそも―――――
何故世界は、この地獄を許すのか。
-
- 7 : 2016/09/16(金) 21:22:47 :
...穏やかな雨が降る。
カタチあるもの、
生あるものは、一人を残して消え去った。
無力感と絶望の中、意識は薄れていく。
胸にあるのは疑問と怒りと――――――
雨を頬に感じながら、瞼を閉じる。
多くの人間の、人生の、時間の痕跡が、
跡形もなく消え去った。
この犠牲を見て、死の淵でなお頭をあげた。
認めない、と。
もし、もしもう一度
まだ命を与えられるのなら
今度は、今度こそは、決して――――――
だが二度はない。
雨はほどなくして、焼けた大地を清めていった。
忘れるな。
地獄から「私」は生まれた。
その意味を―――――
どうか、忘れないでくれ。
――――――――――――――――――
―――――――――――
―――――
――
-
- 8 : 2016/09/16(金) 22:00:07 :
白野「......ん」
......何か、
欠けた夢を、見ていたようだ。
目が覚めた。
ここは学校の保健室。
いつの間にか倒れて、運ばれてきたらしい。
それでは、あの扉の先の世界、
行く手を阻むドール、そしてサーヴァント......
あれらもすべて夢だった?
――――いや、この保健室は既に見慣れた日常のそれとは違っていた。似てはいるが、どこか異質で......
???「やっと目が覚めたか」シュンッ!
白野「わっ!?」ビクッ
ベットの横に、突然に人が現れた。
忘れようもない、強烈な印象を残したその姿――――
エレン「...何も驚く事は無いだろ。俺だよ、俺」クイクイ
白野「エレ、ン......?」
エレン「そうだ。普段は体力温存の為、さっきみたいに霊体化してるよ」
エレン「そんな事よりも、だ。遂に聖杯戦争の本戦が始まったようだぜ?いつまでボサッと寝転んでるつもりだ?」
白野「聖杯戦争?」
聖杯戦争―――
あの時も聞いた言葉だけれど、
一体どういう事なのだろう?
エレン「え、お前それも知らずに参加したのかよ...」タメイキ
エレン「あー...さっきの変な声の言ってた通りだって。要は、何でも願いを叶えますよー、っていう優勝賞品の聖杯を手にする為に、俺ら以外の奴はみんな殺しちまえって事だよ。分かったか?簡単な話だろ?」
白野「.......」
それほど――――というか、全然"簡単"ってレベルで済む話じゃ無いし、
素直に納得も出来ないけれど、
とりあえず理解はした。
自分は好む好まざるに関わらず、
その聖杯戦争とやらに
参加してしまった事だけは。
エレン「―――理解できたみたいだな。じゃ次に、お前サーヴァントってどういうモンか分かってる?」
白野「一応は...要は、私の使い魔のような存在って事なのでしょう?」
エレン「"立場的"にはな。ちなみに、サーヴァントには七つの種類があって、俺は"狂戦士 "のクラスに該当している。他にも色々あるが、俺のクラスは特に魔力の消費が著しい。だが、気にする必要はない。お前はただ、俺が勝ち抜く為の魔力を送り続けてくれればいい。
バーサーカー......彼の性格的には
多少付き合いにくそうな所もあるようだが、
頼もしい味方であることは間違いない―――――
――――――――――間違い、ない?
-
- 9 : 2016/09/16(金) 22:08:56 :
白野「あ、そういえば......」
英霊とは、過去―――つまり生前に何らかの形で名を残し、
英雄となった者達である。
バーサーカー......エレンは一体どんな英雄なのだろうか?
【エレン・イェーガー】という名の人物には、全くと言っていいのど、心当たりがない。
エレン「―――――ンな事はどうだっていいだろ。お前は自分が生き残る事だけに集中しろ」
今までに無いくらいきつく言い放った後、"行く時になったら呼んでくれ"と言い残し、サーヴァントは姿を消した。
どうやら、彼の事については、何より本人が知られる事を固く拒んでいるようだ。
なら、無理に聞き出す必要もないか......
そのうち、本人の気が向いたら話してもらうことにしよう。
-
- 10 : 2016/09/16(金) 22:27:14 :
???「あ、岸波さん目が覚めたんですか?よかったです」
保健室を出ようとベッドから立ち上がった時、
保健室のドアが開き、白衣の少女が入ってきた。
確かあの子は、予選の時は慎二の妹、という役だった―――――
桜「AIの間桐桜です。体の方は異常ありませんから、もうベッドから出ても大丈夫ですよ」ニコッ
桜「それと、セラフに入られた時に預からせて頂いた記憶 は返却させて頂きましたので、ご安心を」
桜「聖杯を求める魔術師は門をくぐる時に記憶を消され、一生徒として日常を送ります。そんな仮初の日常から自我を呼び起こし、自分を取り戻した者のみがマスターとして本戦に参加する―――以上が予選のルールでした」
桜「貴女も名前と過去を取り戻しましたので、確認をしておいてくださいね」
白野「......名前と、記憶を取り戻す......?」
それはおかしい。
確かに名前ははっきりと口にできる。
しかし、記憶がまったく思い出せない。
学園にいた頃は、みな普通の生徒だったと思い込まされていた、
というのは分かった。
しかし自分は、
いまだ以前の記憶が思い出せない―――――!
白野「駄目、思い出せない...記憶、戻ってないみたいなんだけど...?」
桜「え、記憶の返却に不備があるんですか...?それは、私には何とも。間桐桜 は運営用に作られたAIですので」
抗議の声はあっさりと無視された。
どうも、彼女は与えられた役割をこなすだけの
仮想人格のようだ。
桜「あ、それからこれ、渡しておきますね」スッ
白野「これは、携帯端末機?」
渡されたそれは、何かの端末らしい。
とりあえず連絡用の物みたいだが、
別の用途もあるかもしれない。
桜「本戦の参加者は表示されるメッセージに注意するように、との事です」
白野「.......」コクッ
-
- 11 : 2016/09/19(月) 16:23:33 :
白野(一通り学園内を見て回ったけど...)トコトコ
白野(聖杯戦争っていったって、一体どこに行って何をすればいいんだろう。図書室と校庭の弓道場を除いて、何処の教室にも中庭の教会にも入れない。桜から貰った端末もさっきから何も反応しないし...)
白野(取り敢えず、まだ屋上は見てなかったから、そこを見てから考えることにしよう)
-
- 12 : 2016/09/19(月) 17:17:44 :
???「一通り調べてはみたけど、大まかな作りはどこも、予選の学校と対して変わらないのね」
屋上に来てみるとそこには、
壁や床をペタペタと触って、何やら呟いている
美少女の姿があった。
あれは...直接の面識はないけれど、
きっと遠坂凜だろう。
容姿端麗、成績優秀な月見原学園のアイドル。
噂でも聞いたし、
慎二からもずいぶん愚痴を吹き込まれた。
ただ、そうした評判は、
あの平和な学校にいた頃に与えられたもの。
今は修正する必要があるだろう。
彼女の瞳に宿る強い意志の光は、
偶像などという淡いイメージの存在ではあり得ない。
聖杯戦争――――
ワケも分からないまま巻き込まれたとは言え、
ここはもう戦いの場......なのだ。
彼女がまとう空気が、それを如実に示している。
...そう。
実感はわかないが、目に映る人間はすべて、
殺し、殺される関係にすぎない。
そんな事実を、嫌でも気付かされてしまう。
凜「......あれ?ちょっと、そこのあなた」
彼女の目が、
こちらを見てふっと和らぐ。
凜「そう、あなたよ。...そう言えば、キャラの方はまだチェックしてなかったわよね」
凜「うん、ちょうどいいわ。ちょっとそこ動かないでね」
白野「え?ち、ちょっ...!?」
不意に伸ばされた彼女の指先が頬に触れる。
それは、細く、柔く。
戦場に相応しい、強い眼差しの持ち主が、
まだあどけなさの残る少女であることを、
何よりもはっきりと伝えてくる。
凜「へぇ、温かいんだ。生意気にも」サワサワ
白野「.....」ゴクリ
凜「...あれ?おかしいわね、顔が赤くなってるような気がするけど...」サワサワ
白野「............//////」カァァァァ
少女の顔が鼻先三センチまでぐっと近づく。
その距離に、心臓がどきりと鳴る。
頬にかかる息は微かに温かく、
風に流れる長い髪が首筋をかすめた。
無遠慮に肩やお腹をぺたぺたと触る仕草は、
さっきまでの鋭い眼差しの持ち主と
同じと思えないほどに幼い。
拒むことも出来ずに、
棒立ちのまま、
彼女の白い指先を見つめていた。
凜「なるほどね。思ったより作りがいいんだ。見かけただけじゃなく感触もリアルなんて。人間以上、褒めるべきなのかしら」サワサワ
白野「あ、あの......//」
凜「......ん?」クルッ
凜「...ちょっと、なに笑ってんのよ。NPCだってデータを調べておいた方が、今後何かの役に...」
彼女が顔をしかめつつ、
誰もいない後方を振り返った。
おそらく姿は見えないが、
彼女のサーヴァントがそこにいるのだろう。
凜「......え?彼女もマスター?ウソ......だ、だってマスターならもっと...」
白野「一応...はい...」コクコクコク
凜「ちょ、ちょっと待ってよ!それじゃあ、いま調査で体をベタベタ触ってた私って一体――――」
つい先程の行動を思い出したのか、
顔を真っ赤にしてしまった。
こちらも改めて顔が熱くなる。
凜「くっ、なんて恥ずかしい...」
凜「うるさい、私だって失敗ぐらいするってーの!痴女とか言うなっ!」
後半のセリフは、
おそらく彼女のサーヴァントが
余計な茶々でも入れたのだろう。
凜「職業病みたいなものよ。これだけキャラの作り が精密な仮想世界も無いんだから、調べなくて何が"ハッカー"だっての」クルッ
凜「大体、そっちも紛らわしいんじゃない?マスターのくせにそこらの一般生徒 キャラと同程度の影の薄さってどうなのよ」
凜「今だってぼんやりした顔して。まさかまだ予選の学生気分で、記憶がちゃんと戻ってないんじゃないでしょうね?」ジロッ
白野(―――――って、私のせいですかァ!!?)
...返答に困る。
彼女は冗談半分で言ったのだろうが、
それは紛れもない事実だった。
当事者である自分ですら、
途方に暮れてしまうほどの。
-
- 13 : 2016/09/19(月) 20:09:45 :
凜「え...ウソ。黙ってるって事は本当に記憶が戻ってないの?それって...かなりまずいわよ」
凜「聖杯戦争のシステム上、ここから出られるのは、最後まで勝ち残ったマスターだけ。途中退出は許されていないわ。記憶に不備があっても、今までの戦闘経験 がなくても、ホームに戻るコトは出来ないわよ?」
凜「......あ。でも別に関係ないわね。聖杯戦争の勝者は一人きり。あなたは結局、何処かで脱落するんだから」
白野「!!」
彼女の心配げな声が、急に醒めた。
目の前にいるのは、聖杯を奪い合う敵。
その事実を思い出したように。
――――いや、目の前の一人だけではない。
子の聖杯戦争に来ている者は全てが敵なのだ。
-
- 14 : 2016/09/19(月) 20:11:53 :
『―――――――――――ブチ殺す』
刹那、耳元で狂気を含んだ声が発された、気がした―――――
-
- 15 : 2016/09/19(月) 21:21:08 :
-
???『伏せろッ、嬢ちゃん!』バッ!
凜「えっ?何、ランサー......ひゃっ!?」
遠坂凜の背後――――
何もない、無の空間から怒声と共に、人影が現れたのが一瞬。
ソレを脳が情報処理し終えるまに、甲高い金属音が周囲に響き渡るのが、また一瞬。
そしてソレを聞き取るや否や、足元付近に唐突に刃物が出現し、粒子と化して消えたのが一瞬。
白野(何!?一体何が―――――)
呆然と立ち尽くすその眼前に、"そいつ"はいた。
仮想空間の鮮やかな青空と対を為す、深い群青。
つりあがった口元は粗暴で、獣臭じみたものがこちらにも伝わってくる。
......獣の視線は一見すると涼やかなものだった。
が、その瞳の奥底には、溢れんばかりの敵対心、殺気が渦めいていた。
青身の男は、この異様な状況において、私を――――――
いや。正しくは、"私の後ろに控えていた筈のモノ"を、その憤怒に満ちた眼差しで見つめている。
エレン「チッ...刃が浅かったか」
???「いいや。お前さん、ガキにしちゃあ中々の腕と見えた。今の斬り込みも、その反射速度も申し分ない。ただ、オレの方が一枚上手ってだけの話さ」
白野「―――――!」
軽々と、しかし殺意に満ちた声。
???「折角ウチのマスターが話し相手になってやって、折角"一回戦の組み合わせが違った"ってのに。不意打ちとは、お嬢ちゃんの相棒、躾がまるでなってないようだぜ?」
白野「―――――――――」ゴクリ
背筋が凍る。
なんという事のない、飄々とした男の声。
そんなものが、今まで聞いたどんな言葉より冷たく、吐き気がするほど恐ろしいなんて―――――
エレン「俺は誰の指図も受けるつもりはねェ。目の前の敵全てをぶっ殺して、聖杯を手に入れる―――――それだけだ」
先程まで霊体化していた相棒―――――エレンはいつの間にか実体となり、私の前で臨戦態勢に入っていた。
両方の手にはいつの間にか二本の剣が握られ、
腰部には見たこともない装置と、左右にそれぞれ直方体の箱のようなものが引っさげられている。
白野(不意打ち―――――!?いつの間に?)
エレン「邪魔だ。どけ」ドン!
白野「ッ――――――!?」
不意に腹部に衝撃が走り、身体が背後に飛ぶ。
強く背中を打ち付け、気が付いた時には私は、
エレンの背中を数メートル後方から見つめる形で横たわっていた。
白野「ぐゥ、ッ......!」ズキズキ
予選の時に味わった頭痛とは、また一味違った生々しい痛み。
あまり経験したことのないその痛みに驚き竦み、
気が付けば、身体を縮こませて震えていた。
???「――――――あーあ、失敗したなこりゃ。声を欠けるんじゃなかったぜ」タメイキ
男の腕が上がる。
エレン「―――――――――」
紅い、二メートルもの凶器。
男の手の中にあったそれが、禍々しいなにかを発し始める。
-
- 16 : 2016/09/19(月) 22:10:44 :
-
エレン「チッ―――――――――!」バッ
???「――――――――――」
髪を舞い上げる旋風。
―――――それには"間一髪"という言葉が、
よく似合っているものだとすぐに確信できた。
ほんの瞬きの間に突進してきたソレは、容赦なく屋上に張られ張られたフェンスごと、数秒前までエレンがいた空間を斬り払った。
エレン「グッ...!」ギリ
ランサー「ハッ―――――――!ゴオッ!
――――――青い旋風がエレンを追い込む。
この狭い屋上に、満足な退路などない。
目にも止まらぬ猛攻を、まるで煽られるように辛うじて往なす。
エレン「クソッ......!」パシュッ!
大ぶりの動作で連撃を弾き、僅かな隙をついて空を向く。
よく見ると、エレンの視線の先には、二本の細いワイヤーが伸ばされており、先端がしっかりと壁に固定されていた。
恐らく、このワイヤーはエレン自身が放った物だろう。
直後、腰に付けていた妙な装置から勢いよくガスが噴射され、
エレンの身体が宙に浮かび上がる。
そしてそのまま校庭へと消えていき、ほどなくして見えなくなった。
???「俺はあの野郎を追う。そこの嬢ちゃんの相手は任せたぜ」
白野(え?相手―――――――?)
凜「えぇ、分かったわ。あなたの力、見せてあげてランサー!」
ランサー「応ッ!」バッ
エレンの後を追うように校庭へと飛ぶ青ずくめの男―――――
ランサーを自然と目で追いかけながら、
今になってもう一人の”敵"の存在を思い出す。
白野(そうか、ランサーが敵対してしまった今、もう一人敵が残っている事に――――――!)
凜「Es ist gros, Es ist klein ......!!」
反応は早かった。
少女は左腕に刻まれた刻印のようなものを光らせ、一小節で魔術を組み上げる。
それが何を意味する呪文なのかは定かではない。
だが、この一瞬、まるで重量を失ったかのように遠坂凜の体は軽々と飛び上がる。
凜「ハァッ!」ドンッ!
瞬く間に距離を縮められる。
声を出す事は愚か、防御姿勢すらままならない。
その状況を好機と見てか、遠坂凜はどんどん加速していき―――――
凜「ッ――――――――!」ズンッ!
白野「あァ"っ......!」ゴフッ
勢いに乗った彼女の右拳が、私の体に深く抉りこんだ。
-
- 17 : 2016/09/19(月) 23:13:25 :
【Eren Side】
-
- 18 : 2016/09/20(火) 21:59:44 :
エレン「――――――――、は――――――――!」シュタッ
久々の立体起動。
着地時の手ほどきを何とか思い出し、地面に
足が付いたと同時に走り出す。
とにかく場所を変えないといけない。
奇襲が防がれたからには、屋上なんて
狭い場所ではなく、もっと自由に動き回れるところがいい。
悔しいが、あの槍捌きからしてアイツは、
俺なんかよりも遥かに強い。
壁が少ないおかげで立体起動は戦闘で生かせない。
――――ならば、今は少しでも遮蔽物の少ない広い場所で、
迎え討たなければ。
エレン「はぁ、は―――――!」タッタッタッ
屋上から校庭まで、6、7秒。
一般人からすりゃ、残像を見ているようなもんだろう。
この速度で逃げれば、流石に―――――
ランサー「遅ェよ」バッ!
エレン「なッ―――――ごフッッ!?」
キツいのを脇腹に貰っちまった。
この程度のスピード...この野郎には何の意味も無かった。
俺の体は宙を舞い、校舎の壁へと叩き付けられる。
想像以上に痛みが響く。
思わず、手にしていたブレードを片方、取り落してしまった。
エレン「ぐ、ふぅ......」ゼェゼェ
ランサー「詰めだ、ガキ」チャキッ
男の声に気が付き、顔を上げた頃には既に、
俺の首元には鋭利な槍先が突き付けられていた。
男は、口元を不気味に歪める。
ランサー「中々いい目をしてるじゃねぇか小僧。ソイツは、幾多の死線を掻い潜って来た奴にしか出来ないものだ」ニッ
エレン「―――――――――は、――――――はぁ」ジロッ
ランサー「お前みたいな野郎は嫌いじゃない。だが、今回は状況が状況だ。あの嬢ちゃんはオレのマスターだ。マスターに手を出す奴は、俺が許さねぇ」
エレン「――――――――――――――ねぇよ」ガシッ
咄嗟に、両手で首元の凶器をがっしりと掴む。
ランサー「あ?」
エレン「この程度で、勝った気になってんじゃねェよ!!!」
ごう、という旋風。
血液は湧き上がり、濁流と化して全身を瞬く間に駆け巡る。
体中の血管が表面に浮き上がり、灼熱に灯った
この身から蒸気が噴き出す。
エレン「オ”ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ッッッ―――!!!!!」ビリビリビリ
雄叫び、手にしていた槍を投げ飛ばす。
ランサー「この力...さては、<狂化>のスキルか!それも、かなりの代物の――――!」シュタッ!
空中に煽られても尚、微塵も姿勢が揺るがないランサー。
かなりの武人と見える。だが、そんなコトを知ったところで、
俺がコイツを始末する事に、何の変わりも支障も無い――――!!
エレン「ハッ――――――――!!!」ダンッ!
落ちていたブレードを拾い上げ、疾走する。
渦巻く旋風。
二本の長剣を手に、疾 る。
ランサー「――――――バカが!」
迎え撃つは青い槍突。
疾駆する俺が突風ならば、迎撃する穂先は神風であっただろう。
奔る刃、流す一撃。
高速で突き出される槍の一撃を、すんでにブレードで受け流す。
エレン「ぬぉッ――――――――――!」ビリッ
その槍撃の想像以上の重さに、思わず剣が止まりかける。
敵は、こちらの疾走を許さなかった。
槍の間合いまで、僅か二メートルの接近すらさせない。
長柄の武器にとって、距離は常に離すもの。
二メートル近い武器を持つランサーは、自らの射程範囲に入ってくる敵を迎撃するだけでいい。
踏み込んでくる外敵を貫く事は、自ら打って出る事より容易いのだから。
にも関わらず。
ランサーは自らの距離を詰め、俺に全身さえ許さなかった。
ランサー「たわけ、"そんな脆い刃"で俺に接近戦を挑んだな――――――!」ゴオッ!
その気性、烈火の如く。
ランサーは一撃ごとに間合いを詰め、停止する事を知らない。
...長柄の武器にとって、間合いを詰める事は自殺行為に過ぎない。
長大な間合いをもって敵を制し、戦いを制するのが槍兵の戦いであるはずだ。
故に、全身を止めないランサーに勝機はない。
だが、これらはただの理論にすぎない。
喉を、肩を、眉間を、心臓を、間隙なく貫こうとする
ランサーの槍に、戻りの隙などなかった。
残像さえ霞む高速の打突。
一撃ごとに俺を弾き、押し留め、刃を叩き折り、後退させるランサーの槍は、一刺しでさえ必殺と称されるだろう。
だが、それでも今の俺は仮にもサーヴァント。
通常の攻め手など、必殺になど成り得ない......!
エレン「ふっ――――――!」ザンッ!
眉間に迫る穂先を弾き、ほんの数秒出来た隙をついて
後退し、折れた刃の補充。
再度、ランサーの槍に、出せる全速をもって踏み込み、喰らい付く。
-
- 19 : 2016/09/20(火) 23:26:41 :
――――――その形容から打突こそ主体と思われるが、
槍の基本戦術は払いにある。
長さに物を言わせた広範囲の薙ぎ払いは、もとより身を引いて躱す、などという防御を許さないからだ。
半端な後退では槍の間合いから逃れられず、反撃を試みるような見切りでは腹を裂かれるのみ。
かといって無造作に前に出れば、槍の長い柄に弾かれ、
容易く肋骨を粉砕される。
戦闘技術だけでなく、体格でも俺はランサーに劣っている。
そんな俺にとって槍の間合い――――旋風のように振り回される攻撃範囲に踏み込むのは正直難しい。
―――――だが、それが打突なら話は別だ。
高速の一刺し、確実に急所を貫く突きは確かに恐ろしい。
しかし軌跡が点である以上、見切ってしまえば躱す手段はいくらでもある。
急所を貫きに来た槍の柄を打ち、
僅かに軌道を逸らせばそれだけで隙になる。
俺をガキだと甘く見た油断だろう。
長柄の利点は自由度の高い射程と間合いだ。
それを自ら狭めた時点で、ランサーの敗北は――――――
ランサー「―――――――――」ニヤリ
エレン「ぬっ―――――――!?」
俺の剣撃が停止する。
――――――時間が逆行したかのような悪夢。
繰り出された一撃は、先の打突より更に高速......!
エレン「ぐ、おっ――――!」
軌道を逸らそうといなしにかかるが、ブレードごと弾かれる。
ランサーの槍に戻りの隙などない。
いや、そればかりか鋭さも威力も際限なく上がっていく打突は、もはやサーヴァントをしても必殺の域......!
エレン「クソォッ......!」ギリ,,
甘く見たのは俺の方だ。
あのサーヴァント―――――ランサーの槍に、槍兵の定石など存在しない。
折れた片刃の補給は愚か、息継ぎすら許さぬ連撃を捌く事など誰にできよう。
辛うじて後退しつつ弾き、結果として、俺達の距離は僅かに開く。
その間隙。
離れた間合いを更に助走とし、更なる強撃を放つランサー。
嵐のような連撃はその繰り返しにすぎない。
が、それも際だてば神域の技。
すでに十合 。
否、実際はその数倍か。
直線的な槍の豪雨は、なお勢いを増して俺を千殺せんと降り続ける。
......アレは迅いのではなく、ただ、巧い。
ランサーの槍には暖急などなく、瀑布 のように繰り出される。
ただ、ひたすら守りに入る俺に何の手段があるだろう。
俺のこの剣では、あいつの槍を受け流すだけで精一杯だ。
このままではいずれ、もう片方の刃も折られる。
それを補充する隙も、当然与えられる筈がない。
ランサーに接近する隙は、ない。
ランサー「――――!」
一際高い剣戟。
ランサーの槍を弾いた刃が、そのまま破片と化し、消える。
直線だけの打突から、一転して俺の手首を払う薙ぎ払い。
何とか手をやられる事だけは凌げたが、流石に刃の粉砕は避けられなかった。
剣で槍を受け流す有効手はない。
強く弾けば弾いた以上の鋭さで斬り返され、かといって
最小の力で受け流しても隙は一向に生まれない。
剣と槍の戦いは、如何に間合い外から敵を倒すか、
という点に集約される―――――――
ランサー「―――――間抜け」
罵倒するランサーに躊躇はない。
俺を追い詰めようと踏み込んでいた足が止まる。
――――――――一瞬で勝敗を決するつもりか。
がっしりと地面に根を下ろしたランサーと、
刃を補充し終えた俺の視線がぶつかり合う。
瞬間。
ランサー『槍術・初の槌 』ゴオッ!
一息のうちに放たれたランサーの槍は、まさに閃光だった。
視認すらままならぬ一撃が、補充したばかりの刃を
瞬く間に粉砕する。
エレン「ッッ―――――――!!」
ランサー「隙ありだ――――――ッ!」ダンッ!
眉間、首筋、そして心臓。
その槍で穿つは三連、全弾急所――――――――!!
エレン『奥義・体質硬化ッッ!!』カッ!
視界を覆いつくす程の蒸気と熱風。
それでも尚怯む事なき閃光を、結晶と化した身体で受け止める。
ランサー「――――――!?」
エレン「が、ぁぁッッッ......!!」
【奥義・体質硬化】
かつて、"生前"の俺が持ち合わせていた<硬質化>の力を
対人戦向けに調整した補助スキル――――
そんな、俺の持つ最大の防衛手段をもってしても、その一撃は容赦なくこの身を抉る。
ランサー「チッ、これでも決定打とはならないか...!」
エレン(駄目だ..."人間の姿"では大した硬度に成り得ない!いや―――――)
違う。
硬度は充分だった筈だ。ただ―――――――
ランサー「ハッ、久々に貫き甲斐のありそうな獲物に巡り合えたぜ―――――!」
-
- 20 : 2016/09/20(火) 23:27:22 :
ただ、あの男が―――――――――
-
- 21 : 2016/09/20(火) 23:27:46 :
ただ、あの槍術が――――――――――
-
- 22 : 2016/09/20(火) 23:28:55 :
-
ただ、"規格外過ぎる"だけなんだ――――――――
-
- 23 : 2016/09/20(火) 23:42:03 :
再び、ランサーの槍が奔る。
もはや生かさんとばかりに槍の制度は上がっていく。
耳を打つ剣戟は、戦っている俺が言うのもなんだが、よく出来た音楽のようだった。
響きあう二つの鋼。
火花を散らす剣合は絶え間なく、際限なくリズムを上げていく。
懐に入れまいとするランサーと、
刃を盾に喰らいつくのが精一杯の俺。
何度撃ち合ったか、とうに忘れた。
撃ち合っては刃を折られ、その度に俺は死に物狂いで
見出した隙を見て、補充する。
そしてその度に、ランサーはすかさず詰め寄り、
必殺の如き一撃を急所に放つ。
事此処に至り、ランサーは自らの油断を認めたのだ。
目の前の相手が何者かは知らぬ。
だが、これ以上侮っては、敗北するのは己なのだと。
-
- 24 : 2016/09/21(水) 00:29:10 :
>>19についてですが、
作中でランサーが
「槍術・初の槌 」
という技を使っていますが、これを
「槍術・中つ槍 」
に変更します。
原作的に、【槍術・初の槌】の所見のお披露目が戦闘終盤付近というのはどうなのか、と考えたうえでの配慮です。
私のssを読んでくださっている酔狂な読者の皆様。
今回の件でお詫びを申し上げるとともに、
引き続き楽しんで読んで頂けるように尽力していく所存です。
どうぞ、よろしくお願いします。
-
- 25 : 2016/09/21(水) 20:43:13 :
- あと、こちらの作品もいつの間にか閲覧数が100を超えてました。
読んでくださった方、ありがとう^^
-
- 26 : 2016/09/21(水) 21:19:33 :
間合いが離れる。
仕切り直しをする為か、ランサーは大きく間合いを離した。
―――――その速さは尋常じゃない。
恐らく、俺の立体起動と同等か、あるいは。
咄嗟に間合いを外したランサーの動きは、人間離れした速さとしなやかさを持っていた。
ランサー「...数にして、ざっと四十はそのナマクラを叩き折った筈なんだが、ホルダーの替え刃はまだ残っていやがるのか」
苛立ち、呟くランサー。
いや、アレは苛立ちというより困惑だろう。まぁ、無理もないか。
エレン「まぁな。"生前の俺"なら10本も折られりゃもう詰みだったが、今は違う。ちゃんとした"補給手段"があるからな」
ランサー「―――――補給手段?」ピクッ
エレン「あぁ、俺の刃は今は魔力で編まれた物だからな。魔術回路が繋がってる以上、残数は無限大だ」
ランサー「............」
エレン「例え何本折られたとしても、ホルダーの替え刃はすぐに満タンになるよう再生される。例え実力で及ばなかったとしても、数でお前を圧倒してみせる!!」
ランサー「――――――そうか」タメイキ
ランサー「なぁ小僧。お前、なんて名だ?」
エレン「あ?そんな事テメェには関係n... ランサー「もう一度聞く。なんて名だ!?ギロッ
エレン「えっ......エレン、だ...」ビクッ
-
- 27 : 2016/09/21(水) 21:37:19 :
ランサー「――――――そうか。ならば、エレン」スッ
エレン「ッ――――――――!?」
途端。
余りの殺気に、我を失いかけた。
ランサーの腕が動く。
今までとは違う、一分の侮りもないその構え。
槍の穂先は地上を穿つかのように下がり、ただ、ランサーの
双眸だけが俺を貫いている――――――
ランサー「お前が何処の英雄かは知らん。だが、これだけはハッキリと言える」
クッ、とランサーの体が沈む。
同時に。
茨のような悪寒が、校庭を蹂躙した。
......空気が震える。
今この場、呼吸を許されるのはランサーという戦士だけ。
ランサーの手に持つ槍は、紛れもなく魔槍の類だ。
それが今、本当の姿で迸る瞬間を待っている―――――
-
- 28 : 2016/09/21(水) 21:44:22 :
――――――――まずい
やられる。
恐らくアレは敵の切り札―――"宝具"と呼べる類のモノだ。
アレがどんな宝具かは知らない、けど、アレを撃たせれば、
俺は間違いなく殺される。
ヤバい。
ヤバい...。
ヤバい............!!!
こんなところで死んでたまるか!
アレを撃たれる前に、俺の全霊をもってその発動を阻止する―――!
-
- 29 : 2016/09/21(水) 22:03:25 :
――――――と。
ぐらり、と。
周囲の視界が、歪んで見えた。
槍を中心に渦巻く魔力が、さらに強く、深く、鳴動している――――
これはもう、手遅れだ。
宝具の発動を事前に防ぐ事はもはや叶わない。
こうなったら、再度硬質化して宝具の威力を少しでも――――――!
ランサー「...お前に、英雄の座に就く資格なんかねェ」
エレン『奥義・体質硬化――――――』
ランサー「......じゃあな。その心臓、貰い受ける――――――!!」
-
- 30 : 2016/09/21(水) 22:08:44 :
獣が地を蹴る。
まるでコマ飛び、ランサーはそれこそ瞬間移動のように
俺の眼前に現れ、
その槍を、俺めがけて繰り出した。
エレン(間に合え...間に合え―――――ッ!!)パキパキパキパキ
-
- 31 : 2016/09/21(水) 22:13:32 :
-
ランサー【"―――――――刺し穿つ "】
それ自体が強力な魔力を帯びる言葉と共に、
ランサー【"―――――――死棘の槍 ―――――――!!"】カッ!
あの男から放たれた槍は、俺の心臓に迸っていた。
-
- 32 : 2016/10/12(水) 20:59:04 :
【Hakuno side】
-
- 33 : 2016/10/12(水) 21:01:44 :
「痛い」
-
- 34 : 2016/10/12(水) 21:20:43 :
白野「は―――――ぐっ......!」
強化された彼女の拳が唸りを上げる。
傷つけられた痛みで意識が飛ぶなど、生まれてこの方経験した事の無いものだった。
一体どれほど飛ばされただろうか。
お腹にすっぽり穴が開いてもおかしくない衝撃。
いや、寧ろ穴が空かなかった自分の頑丈さに敬服の意を示したいぐらいだ。
凜「......」ダンッ!
白野「っ............!」
追撃が来る。
飛ばされ、壁に叩き付けられた身体を力ずくで起こす。
次に同じ一撃を喰らえば、その時点で、もう私は―――――――
凜「まさか、初めから私を殺すつもりで近付いてきたなんてね...」キッ
―――――――――敵が迫る。
サーヴァントはともかく、マスターとしての腕も、生身における戦術も、遠坂凜は私を遥かに上回っている。
彼女の攻撃は捌けまい。
-
- 35 : 2016/10/12(水) 21:51:20 :
彼女の勢いと、この先に訪れる結末に恐怖し、咄嗟に目を瞑る。
だが。
それは、私の予想していた事とは異なるものだった。
白野「あ、え......?」
恐る恐る目を開ける。
そこには、再び繰り出されるであろう彼女の拳は
存在しなかった。
その代わり――――
遠坂凜の美麗な顔が、私のすぐ目の前にあったのだ。
突然の事に驚き、慌てて凜から離れようとして気が付いた。
...私を挟むように後ろの壁に彼女の腕が伸びている。
私を逃がさない為だろうか?なら、いっそ人思いに
腹パンでもしておいた方が確実なのではないか!?
というかコレってもしかして...形式的には巷で流行りの【壁ドン】という奴ではないか!!!?
腹部の痛みに溶け込むかのように、ほのかにいい香りが漂ってくる。
彼女がシャンプーの香りだろうか。
心臓が大きく鼓動を打つ。冷静に考えると、そんな匂いさえ分かるほど、遠坂凜と岸波白野は近い位置にいるのだ。
予選における仮初の学園生活では、遠坂凜は学園一の美女としてその名がよく知られていた。
今なら自信を持って言える。
それは仮初でも作り話でもない、れっきとした事実なのだと!
―――――――――――――――
――――――――――
――――――
――
-
- 36 : 2016/10/12(水) 22:05:19 :
凜「......ぇ!ねぇったら!」
白野「............////」ポー
凜「ねェ!ちょっと、聞いてる!?」
白野「ふぁ......!?」ビクッ
凜「【ふぁ】...じゃないわよ!いい加減答えてもらおうじゃないの!」
白野「え――――――ぐっ!?」ズキッ!
凜「はぁ...死なない程度に打ち込んだつもりだったけど動かなくなっちゃったから、本当に死んだかと思ったじゃない!」プンスカ
白野「え...?もしかして、私のことを心配してk 凜「勘違いしないで!私が気にしたのは、この場であなたを死なせてしまえば、聞きたかった事が聞き出せなくなってしまう事に関してよ」キリッ
白野「......」
凜「あなた、名前は?」
白野「......」
凜「痛くて口も利けない、なんて言わせないわよ。現にさっき喋ってたしね」ジロッ
白野「...岸波白野です」
凜「そう。じゃあ岸波さん?今から私が聞くことに、噓偽りなく答えて頂戴ね」
白野「......」コクッ
-
- 37 : 2018/03/29(木) 00:19:18 :
- 魔術師←呼び方は「ウィザード」 ではなく「まじゅつし」では?
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