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頭部の傷
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- 1 : 2016/09/13(火) 00:04:17 :
- シリーズ四作目、ベルトルト編です。
シリーズ物と銘打っていますが、短編集なので前作などは読まなくても大丈夫です。
それでは次のレスから始めます。楽しんでいただけたら幸いです。
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- 2 : 2016/09/13(火) 00:05:40 :
- 夕飯も食べ終わり、風呂も済ませた。そうなると後はもう消灯まで自由時間だ。と言っても、そこまで時間がないからあんまり派手なことはできないんだけどな。それでも同室の奴と遊んだりはできるわけだし、限られた自由時間で何をするのかはいつも楽しみだ。
人数の多いときはトランプをしたり、チェスやバックギャモンをしているのを観戦したりしている。因みにこのとき、どちらが勝つか軽い賭けのようなものがよく行われる。
アルミンやマルコはそういうのにやたら強い。逆にエレンと俺はあんまり。ジャンはチェスは強いけどバックギャモンはこっちが泣きたくなるくらい弱い。というかダイスに嫌われ過ぎているのだ。八回連続動かせなかったのは今でも語り草である。
ベルトルトとライナーは最初、全然それらを知らなかったから弱かったけれど、近頃はだいぶ強い。結構博打打ちなライナーと地味に嫌な手を打ってくるベルトルト。二人ともアルミンから強くなると太鼓判を押されている。
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- 3 : 2016/09/13(火) 20:22:20 :
- そんな俺らが今夜興じているのはそのどれでもない。そもそもゲームでもない。目に飛び込んでくるいつもより高い視界に俺は歓声を上げた。
「うっわ!たっけー!」
「コニー、あんまり暴れないでよ?危ない…」
俺の真下からベルトルトの声が聞こえる。そう、下から。今俺は、ベルトルトの肩に跨っている。所謂、肩車ってやつだ。どうしてこうなったかというと、まあ簡単な話で背の高いやつの視界はどれくらい違うのか、という好奇心からだ。
「視線めっちゃ高い!すげえ!」
「おーい。そろそろ降りてこーい。もう少しで消灯だぞ?」
「りょーかい!」
「わ、ちょっと、飛び降りようとしないで。しゃがむから少しじっとしてて?」
フッと視線が下がり床に足が着いたので降りようとすると、ベルトルトの側頭部に傷跡のようなものがあるのが見えた。近づいてよく見てみるとやはり、傷跡だ。
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- 4 : 2016/09/13(火) 20:23:02 :
- 「コニー。どうしたんだ?」
中々離れない俺を不審に思ったのかライナーが覗き込んでくる。
「お?いやさー、こんなところに傷があるなーって思って」
「本当だな。どうかしたのか?」
ライナーがベルトルトに尋ねる。
「…別に、痛くないから大丈夫だよ」
「訓練の時にでも打ったのか?」
本気で心配しているような声音で、本当に仲がいいんだなぁ、と思う。
「ごめん、ちょっと分からないや」
「そうか」
いつもと同じように進んでいく二人の会話。同じのはずなのに、何故か違和感を感じて首を傾げる。それは致命的なヒビのような、ほんの些細なズレのような、そんな違和感。それがどうも気持ち悪くて声を上げる。
「そろそろ消灯時間なんだよな!ならとっとと寝ねえと!ほら、ライナーもベルトルトも寝るぞ?」
「お、そうだな。じゃあおやすみ」
「おやすみー!」
「おやすみなさい」
挨拶を交わし、布団に潜り込む。難しいことはよく分からないが、勘はよく働く方だ。あのまま会話を続けていたら危ない、そんな勘が働いたのだ。明日になったら元通りになっているといいなぁ、と思いながら目を閉じた。
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- 5 : 2016/09/14(水) 04:03:27 :
- ◆ ◆ ◆
走る、走る。息が切れて、足が重く動かなくなってきても走り続ける。目の前に黒い髪の少年が同じように走っている。草に足を取られて転びそうになった。速く走れ、一秒でも速く。そんな思いだけを胸に走っていた。
ふと、何かに気づいて叫ぶ。目の前を走っていた少年がそれに気づいて振り向こうとするが、その体はガクンと沈み込むように崩れた。その体を掴もうと伸ばした手はただ虚しく空を切って、彼は為す術もなく落ちていく…。
バッと起き上がる。思い出した、思い出した。どうして忘れていた?あんなこと、忘れられるわけがなかったのに。
一人、暗闇の中で頭を抱える。夢で見たのは、幼い頃の思い出。戦士になるための訓練中のことだった。かつては遊び場だった森で、ゴールを目指して走るというただそれだけの訓練。しかし、その森はかなり入り組んでいたし、岩や小さい崖など障害物も沢山あったから、本当にきつかった。
戦士になれるのはほんの一握りの子供達だけ。だからこそ、皆必死に訓練に励んでいた。勿論、俺らも必死で訓練に取り組んでいたのだ。あの日も同じで、ただひたすら走っていた。あんまりにも必死だったから、ベルトルトは気づけなかったんだ。自分の行く先に崖があることに。
崖の上から覗き込んだ俺が見たのは地に伏したベルトルトだった。横向きに倒れいる頭から赤い血が広がっていて、心がすうっと冷たくなった。結局ベルトルトはフラフラになりながらも、ゴールまで無理矢理持ち込んでその後ぶっ倒れた。大した執念だと思うが、それほどまでにこの村の子供達は戦士と言うものに強い憧れと畏敬の念を抱いていたのだ。
隣で寝息を立てているベルトルトを見る。全く変わってないようで変わってしまった幼馴染。共に使命を全うするための、仲間。明日、起きたら真っ先に謝ろう。謝って、改めて誓おう。必ず故郷に帰るということを。
◆ ◆ ◆
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- 6 : 2016/09/14(水) 04:05:08 :
- 眩しい太陽の光が射し込んできて目が覚める。人目を憚ることなく大きな欠伸を漏らして起き上がる。珍しいことに結構早く起きたらしい。起きているのは、俺とライナーとベルトルトだけだ。
「お、コニー。随分早いじゃないか」
「おはよう、コニー」
起きたことに気づいた二人が揃って挨拶をしてくる。それは完全にいつも通り、で昨晩の違和感なんてなかったかのようだった。
「おう!おはよ!」
それがなんだか無性に嬉しくて元気よく返事をする。今日はいつもよりいい日になるような予感がしてベッドから飛び降りた。
fin.
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- 7 : 2016/09/14(水) 04:13:13 :
- こんにちは、弥生です。今回はベルトルト編でした。
ゲームの強さとかは完全に私の妄想です。なんとなくジャンは運が悪そうなイメージがあります笑。因みに八回連続云々の下りは私の実話です…。
さて、次はとうとう最終話、エレン編です。最後まで読んで下さりありがとうございました。また次でお会いしましょう。
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彼らが人間だった証を シリーズ
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