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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

進撃のウォーキングデッド season4 ep1 いくつ願いを犠牲にしても(ルートA)

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  1. 1 : : 2015/08/23(日) 17:43:07

    前回の続きです。
    http://www.ssnote.net/archives/36783
  2. 2 : : 2015/08/28(金) 15:46:00

    歩き続ける。
    行く宛などない、ただひたすら真っ直ぐ進む。

    「エレン、ちょっと…休ませてください。」

    後ろに続く少女が息を切らして言う。

    エレン「…」

    聞こえていないのか、聞こうとしていないのか、エレンは振り返ることはない。
    この一週間ずっとそうだった。

    サシャ「…ッ。」

    とうとう膝から崩れ落ちた。
    立ち上がろうとするが、視界が徐々に暗くなっていく。




    ザッ、ザッ、ザッ。
    倒れているサシャを見下す。

    エレンには最早どうでも良かった。
    全てを失ったこの世界で生きていける気がしない。

    エレン「くそっ。」

    しかしサシャは最愛の妻の命と引き換えた存在。
    忘形見と言ってもいい。

    小さいその体を持ち上げた。




    道端で見つけた一軒家に取り敢えず脅威が無いことを確認すると、サシャをソファに寝かせた。
    自分もその近くに腰掛ける。

    エレン「コニー、見張りを…」

    言いかけてすぐに自分の頬を殴った。
    そのような人間はもういないのだ。

    (ああ、もうどうでもいいや…)

    沈み込んでいく意識に身を任せた。











    「ヘイ、どうしたエレン!酔っ払ってんのか?!」

    放ったボールがボードの隅に当たり、気さくな兄貴分が罵声を浴びせる。

    「言ってやるなよライナー、まだ何かに当たっただけマシってもんだ。」

    コートサイドの娘が茶化しを入れる。

    エレン「うるせぇ、早くボールを回せよ!」

    次こそ決めてやる、と息巻いたが
    今度のシュートはリムにもボードにも当たることなく落ちた。

    「こりゃ絶望的だぞ…あんなに下手くそと知ってりゃ、エレンなんかに賭けなかったのに…」

    「そんな事はない、エレンはやればできる子。」

    「おっと、ミカサはもうダメだぞ。圧倒的すぎて勝負にならん。」

    坊主頭の小男と黒髪の女性の会話に、ガタイのいい金髪の男が入ってくる。

    「ゴール下でユミルからスティール。俺、エレンとゴボウ抜きにされて、ライナーの上からダンク決められちゃあな。」


    「さあ打った打った!一番の組には肉だ、肉!!」

    「有難く思いなよ、かなり遠出して手に入れたんだから。」

    BBQセットからいい匂いを上げているのは、初老の男性とショートカットの女性。

    誰もが笑みを浮かべ、とても穏やかな一息だった。


    エレン「くそ、次こそは…」

    そうしてボールを振りかぶると、”何か”が放物線を描いてこちらに飛んでくるのが見えた。
    考えなくてもわかる、砲弾だ。

    エレン「〜〜〜!!」

    皆に向かって大声で叫ぶが誰にも届かない。
    しまいには笑顔でハイタッチを交わしている始末だ。

    そうしている間にも、弾は迫り来る。

    大声を上げながら駆けたが、動きが全てスローモーションになっていく。




    「逃げろ!!」

    ようやく声が通った瞬間に、辺りが閃光で包まれた。





    「うっ…」

    燃え盛る火炎の中、周りを見渡す。
    すると先程まで談笑していた面々が、見るも絶えない姿になっていた。

    ある者は皮膚がただれ落ち、ある者は頭部の半分を失っていた。

    「違う、こんなのは違う!」

    夢だ、早く覚めてくれと必死に首を横に降る。





    「違わないよ。」

    「見捨てたのは、エレン。」

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    「うぅ…あ、あぁ…」

    サシャ「エレン…?」

    魘される声で目を覚ましたサシャは、自分が倒れてしまった事を認識した。

    サシャ(結局、エレンに運ばれたんですか…)

    しかしすごい汗だ。
    せめて顔だけでも、とタオルで拭っていくうちに、エレンの額がかなり熱を帯びている事に気付いた。

    サシャ「どうしよう…抗生物質なんてないよ。」

    仕方なく家内を探して回ろうとしたが、ある考えに苛まれ足を止めた。



    (エレンはあれから口を利いてくれない。今回だって倒れるまで…)

    そんなエレンの為に自分が動いて回る義理があるのか?
    ここで助けたとして、また同じ事の繰り返しでは?

    いや違う。
    エレンには命を救われた、ミカサを切り捨ててまで。

    それに…エレンまで失ったら本当に一人になってしまう。
    一瞬魔がさしただけだ。

    サシャ「待ってて、エレン。」

  3. 3 : : 2015/09/03(木) 16:42:14



    アァァァ…
    ギィィィ…

    「…」

    燃え盛る刑務所を、フェンスの外から見つめる一つの影。
    もうその中に息を知る者はいない。

    何かのわだかまりがあるのか、わかっていても足が動こうとはしないのだ。

    「ギィヤァァッ」

    足元で喚く異形の声。
    その主は、かつての仲間だった。

    そう、あの口が悪い娘の父親。

    「ごめん。」

    ナナバはそう言うと
    かつてハンネスだった屍に刀を突き刺した。




    彼らには本当に世話になったと思う。
    本来なら自分はあっち側の人間であり、ここにいるべきではないと何度も思った。
    しかし結果的に自分を受け入れ必要としてくれた。

    そこだ、そこに自分は酷く自己嫌悪をする。

    本当なら死ぬべきは私だったはずだ。
    こんな、善良で正義のある男が死んでいいものか。

    だから自分はつくづく罪人だと思う。
    ここに来なければベルトルトは死なずに済み、クリスタは去ることもなかっただろう。

    少なくとも自分が関わることで、多くの人の運命を変えてしまっている。



    だからこそ報いたいと思った。彼らに。
    しかし現状はどうだ?誰も見当たらない。
    自分に優しくしてくれた人達は、どこに行ったと言うのだ?

    その中でもハンネスは特に気にかけてくれた。
    来たばかりの頃、孤立する自分を少しでも輪に加えようと動いてくれたのだ。

    笑いながら自分の肩を叩き、「気にすんな」と声を掛けてくるハンネスが鬱陶しかったのだが
    今となってはそれも愛おしい。

    ナナバ(あいつの生死なんて、どうでもいい。)

    かつての拠点を背に、どこかへ歩き出した。


    ナナバ(また振り出しに戻っただけ、ただそれだけだ。)





    都合の良いことに、この世界はどこまでも道が続いている。
    人生だってそうだ、仲間とよりも一人で歩く時間の方が多い。

    このまま歩いていけば、またいつかは誰かに会えるだろう。

    ナナバ(でも会ってどうするの?仲間にでも加えてもらう?)

    わからない。愛着があったのか、彼ら以上の人間とはこの先も出会えないと思う。

    ナナバ(居心地が良かったのか?少なくともエレン達と一緒にいる間は、私は確かに”人間”に戻れたんだ。)


    そう、あの日から私は人間をやめた。





    2、3時間もすれば悲鳴が止んで
    2、3日後には異臭に慣れた
    2、3週間経てば今まで何も変わらないようで
    2、3ヶ月後には何かが壊れていた


    ハエが集る黒い”それ”に話しかけ続け
    やっと自分が壊れていることはわかった。

    ナナバ(何がおかしいの?ちゃんと会話は成り立ってた。)

    ナナバ(でもだから何だというの?”自覚”をした事で”空白”が埋まる?)




    外に出たのは気まぐれ。
    ウォーカーを連れて歩くなんて行為も
    危険を避けるためではなく、それが”普通”だと思ったから。

    こうしてただひたすら歩くのも、ただの気まぐれなんだろう。



    そう一人、思う。
  4. 4 : : 2015/09/22(火) 20:55:10
    期待!!!!!
    更新待ってます!
  5. 5 : : 2015/09/27(日) 21:26:36
    すみません、仕事で忙しくて更新サボってました。
    これから頑張ります。
  6. 6 : : 2015/09/27(日) 22:12:00

    結局家内には薬がなかった。
    常備薬がある家などたかが知れている。だが見つけなければいけない。

    エレンの為に。

    サシャは拳銃を握りしめると外へ出た。




    (前方より後方と死角を常にチェックしろ。ウォーカーを見つけても焦るな、対処せずに済むなら無視だ。)

    エレンに教わった教訓をもう一度呟く。

    道路の脇に一軒家が立ち並ぶ、なんて事のない住宅街だ。
    視覚を大きく遮るものもない。

    (万が一対処しなければならない時は極力発砲を避けろ。ナイフでも充分頭部を破壊できる。)

    ナイフ良し。腰に巻いたベルトに挿してある。

    (発砲する場合は、出来るだけ距離を詰めて。2発で仕留められなければ、すぐにその場を離れろ。銃は攻撃の手段ではなく、あくまでも防衛の為だ。)

    マガジンの残弾は14発。
    一発は…





    あれで良かったのだ。
    あの時のガバナーの中にいるエルヴィンは、救いを求めていた。

    サシャ(私はエルヴィンに救われた、ガバナーじゃない。だから最後はエルヴィンでいた欲しかった。)


    エルヴィン、ユミル、エルド、エレン。
    自分はどれだけの人に守られてきたのかと今更になって思う。

    サシャ(だからこそ、今度は私の力で助けてみせる。きっとみんなどこかで生きている。だから…)

    目星をつけた家のドアを強めに叩く。
    これで大よその危険は察知できるだろう。

    サシャ「…」

    中からは声も足音もしない。
    念には念を入れて、銃口を向けつつドアを開けた。

    まずするべきは一階の安全確保だろう。
    しかし外に物資探索に出た事がない。サシャはその辺りの要領を知らなかった。

    サシャ(カロナールか、ロキソニン…!)

    薬の名前を頭に浮かべ、必死に薬箱を探す。

  7. 7 : : 2015/09/30(水) 19:23:26

    しかしサシャは大きな思い違いをしていた。
    最初のノックのみで脅威が確認できたと思い込んでいる。

    サシャ(薬箱…薬箱は…)

    キッチンの棚を片っ端から漁るが、出てくるのは空き缶のみで成果はない。

    サシャ(多分ここは荒らされた後だ、隣の家に…)

    そう思って振り向いた瞬間、目の前のものに思わず腰を抜かした。



    ガァッ!

    サシャ「ヒィッ!!」

    どうしてここまで接近を許してしまったのか、今にも噛みつかれそうだ。

    サシャ「こっちにこないで!」

    銃を構えるが緊張で手が滑り、向こう側に落としてしまう。

    サシャ(そんな…)

    必死の思いで下がるが、腰が棚にぶつかりもう逃げられない。

    ギィアアアア!!

    サシャ「嫌ァッ!」


    本能か予備行動か、ウォーカーに足を掛けるとそのまま這って横に避けた。
    ウォーカーは勢いよく顔から棚に突っ込んだ。

    サシャ「あああああ!!!」

    咄嗟に手にした大き目のフォークで背後から頭を殴るようにして刺す。

    グシャアア

    当然切れ味はなくしかし奥に入り込む一方で、血や脳漿が飛び散るのも御構い無しに
    ただただウォーカーの頭を掻き回す。

    サシャ「ああっ!」」

    フォークが抜けた反動でつまずく。
    もう一度刺そうかと思えば、既にウォーカーは動きは止めていた。

    サシャ「フーッ、フーッ…!」



    やっと脅威を退けた事を認識すると、サシャは膝から崩れ落ちた。

    サシャ「嫌だ…こんなの嫌だよぉ…」

    戦えているつもりでも、実際は何もできなかったという虚無感。
    しばらく膝を抱え泣いた

    ーーーーーーーーーーー

    三軒先の家でカロナールは見つかった。
    それまでの過程でウォーカーは出なかったが、家内の探索には細心の注意を払った。

    心臓は落ち着きを取り戻していた。

    サシャ(皆、こんな大変な思いをして…)


    来た道を注意して戻ると、視界の端にウォーカーが。
    こちらに気付いている訳でも、道を塞いでいる訳でもない。何てことなくやり過ごせる相手だ。




    私は無力ではないーー
    エレンがいなくても、エルドがいなくたってーー

    銃を高く構えながらウォーカーに近づいていった。
    3mまで近付くとこっちに気付いたようだ。

    サシャ(大丈夫、あいつは鈍いし一人だ。)

    ウォーカーを中心に円を描くようにして、徐々に距離を詰めていく。’時には方向を変え、左右に振るようにして。

    サシャの目論見は当たっていた。
    動きの遅いウォーカーは体幹がついてこれない。


    ガッ!

    そして一瞬の隙をついて足を蹴り上げると、ウォーカーは簡単に転倒した。

    後はシンプルだ。
    足で胸を抑えつけ、銃口を眉間に向け引き金を引く。






    家まで戻ると、まだうわ言を言っているエレンに膝枕をして錠剤を口元に当てる。

    サシャ「飲んで、エレン。」

    そのままペットボトルの水を飲ませると、5分もすれば大人しくなった。



    エレンの顔は思ったよりも生傷だらけだった。
    その一つ一つに指を沿わせる。

    サシャ「私、ずっと一人でも大丈夫だって思ってた。子供扱いをやめて欲しかった。」

    「…でも私は、自分で思ってるよりもずっと子供で。」

    「何もできなかった…一人でウォーカーを倒せても、何も嬉しくなかった…!」

    「一人にしないで、一人は嫌です…エレン…」

    一人にしないで。
    サシャは呪文のように繰り返しながら、エレンの頭を抱いた。


  8. 8 : : 2015/10/01(木) 07:01:07



    ジャン、お前の言う通りだったよ。
    俺が両手で救えるものなんてたかが知れていたんだ。
    あれもこれもと欲張る内に、何もかもが無くなっていた。

    もしお前だったら、もっとうまくやっていたのかな。





    「それは何とも情けない結果論だな。」

    「訂正して。エレンはやればできる子。」

    「あー、へいへい。」

    いつか見た風景だった。
    確かこれは、いつものバーで酒が回ってきたところで。

    エレン「何だよ、俺結構頑張ったろ?」

    あれ、こんな事言ったか?


    「何が頑張っただ、まだ終わってなぇだろ。」

    「あなたはこっち側に来てはいけない。」

    もう俺には何も残ってないんだ!


    「足掻いて、最後の最後まで。」

    「お前は泥臭いくらいがお似合いだ、エレン。」





    ふいに風景が遠くなった。











    エレン「う…」

    何か夢を見ていたのか、まぶたが大分重たい。

    「スー…スー…」

    自分の側に気配を感じ一瞬たじろいたが、それがサシャだとわかるとすぐにまた目を閉じた。


    エレン(そうだな、俺は一人じゃなかった。)

    ーーーーーーーーーーーーーーーー




  9. 9 : : 2015/10/31(土) 16:51:11
    再び目を覚ますと、大分体が軽くなっていた。
    サシャが近くにいない事に気付き、足を引きずりながらリビングへ向かう。

    エレン「サシャ?」

    サシャ「エレン?!良かった、体は大丈夫ですか?」

    どこから見つけてきたのか、テーブルの上には幾つかの缶詰があった。

    エレン「一人で外へ出たのか?」

    サシャ「はい、この周辺はあらかた…」

    危険だ、と言いそうになったが
    今の自分にはその資格はない。

    サシャ「エレン?」

    エレン「…いや、何でもない。苦労をかけたな。」

    ーーーーーーーーーーーーーーーー

    鮮血と共に首が飛ぶ。
    刀の切れ味は良かった、また目の前に道ができる。

    自分にはこういう生き方が合っているのだろう。
    もし、もしも再び彼等と出会えたならこんな自分をどう思うか?

    何もない虚空に話し掛け、ウォーカーを生者のように連れ回した自分を。

    それがかつての夫と弟だと知ったら?





    森の中をウォーカーに混じって歩く。
    彼女が巻いているストールには、夥しい程の血肉がこびりついているので襲われる心配はない。

    傍目から見ると自分もウォーカーに見えるだろう。
    生気がないという点ではそう変わりない。



    ナナバ「それは賛成できないね、ここは頑丈だし何よりこの子がいるんだ。」

    ナナバ「そんなに心配?今のこの状況が?…大丈夫さ、成るようになるよ。」

    誰かが見ていたら可笑しな光景に見えるだろうか。
    自らが首を斬ったウォーカーにひたすら話し掛ける様を。

    それでも彼女には聞こえているのだ、はっきりと過去の幻聴が。
    小一時間繰り返せば現実に気付き、自己嫌悪して先へ進みの繰り返し。

    果たしてこれが生きていると言えるのか?

    ーーーーーーーーーーーーーー

    サシャ「まだ全身傷だらけなんだから無理しちゃ駄目です。」

    刑務所で負った傷は大層なものだった。
    致命傷こそないものの、かなりの箇所を撃ち抜かれている。

    エレン「意識がようやく追いついてきたよ。自分自身こんな状態だとはわからなかった。」

    サシャ「あと2・3日は絶対安静ですよ!」

    エレン「…まぁ動けるようになった所でどうしようもないがな。」

    しまったと思って思わずサシャの顔色を伺った。
    せっかく気遣ってくれたのに皮肉で返しては申し訳ない。



    サシャ「何言ってるんですか?みんなを探すに決まってますよ。」

    エレン「探すってお前、みんなもう…」


    「生きています。」

    サシャ「死んだ瞬間を見届けた訳じゃない。ライナーもナナバも、コニーもユミルもエルドだって…きっと生きています。」

    ミカサの名を敢えて出さなかったのはサシャなりの気遣いだろう。
    しかし彼女はキッパリ言い切って見せた。

    エレン「万が一だ、仮に生きていても連絡をとる手段もない。そんなものは非現実的だ。」

    サシャ「この世界で生きる目的を失ったら終わりです。そんなにエレンは自己逃避がしたいんですか?!」

    エレン「受け入れる事と逃避は違う。俺が言いたいのは現実を見ろってことだ!」

    我ながらジャンみたいな事を言う、と思っても止められなかった。

    サシャ「分からず屋!エレンの一人善がりです!!そんな根暗野郎はいつまでもイジイジしてれば…」


    「うるさい!!もうあいつらが俺たちの前に現れる事は…!」

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    「現れる事はないんだ!」



    幻聴だろうか。
    エレンの声が聞こえた気がする。

    これはいよいよ自分もおかしくなっているのだろうか。

    ああ、でも過去の思い出に浸りながら最後を迎えるのもいい。
    その内歩く死人共が処理をしてくれるだろう。

    エレン達との思い出なら本望だ。


    ナナバ「全く相変わらず通る声だね。」

    自分も混ざろうと家に近づく。

    ナナバ「この声は…サシャかい?随分と物を言うようになったもんだ。」

    いる訳がない。
    きっとウォーカーの呻き声を脳が誤認しているのだ。



    「いい加減目を覚ませ!」

    「それはアンタの方ですよ!」


    「え…」



    頰をつねる、頭を揺すってみる。
    しかし、彼女が窓越しに見た物はとても幻には見えなかった。

    剥き出しの上半身にグルグル包帯を巻きつけているエレン。
    必死の表情で掴みかかるサシャ。



    これは幻ではない。
    そう本能が告げると、ナナバはその場に崩れ落ちた涙を流した。


    「エレン、アンタやっぱり嘘つきだよ。」

  10. 10 : : 2015/10/31(土) 17:05:02



    「久々にさっぱりしたよ。」

    体を拭き、綺麗な服に着替えてきたナナバ。
    あの後程なくして、気配に気づいたエレンが玄関でうずくまるナナバを発見した。
    涙を探しナナバに駆け寄るエレンを尻目に、ほれ見たことかとサシャも続いた。

    エレン「見違えたな、若返ったんじゃないか?」

    ナナバ「下手くそなお世辞だね、そんなんじゃ誰も口説けやしないよ。」

    エレン「あの、落ち着いたばかりですまんが…」

    ナナバ「…私はガバナーとやり合ってたんだ。だから乱戦に巻き込まれずに脱出する事が出来て…」

    エレン「ってことは…」

    ナナバ「ああ、すまないがみんなの安否はわからない。」

    エレン「いやいいんだ、生きていてくれてありがとう。少なくとも希望は出てきた。」

    キッチンでは早速サシャが何か拵えているのか、いい匂いが漂ってきた。


    ナナバ「で、これからどうするの?」

    エレン「それを俺に聞くのか?」

    「当たり前だろ、アンタがリーダーなんだから。」

    そう言い肘で小突くと、エレンは頭を上げた。


    「ああ、わかってる。」

    「ここからまた、全て始めよう。」

  11. 11 : : 2015/11/02(月) 23:05:04
    久しぶりの更新嬉しいです
    ウォーキングデッドシーズン6と共に楽しみにしてます
  12. 12 : : 2015/12/15(火) 23:14:53
    気長に更新待ってます!
  13. 13 : : 2015/12/23(水) 15:48:39

    ああ、何だよ暑いな。
    それにギャーギャーうるせぇ…

    視界が揺れる、徐々に目を開けるとはっきりとした青空。


    「あ?」

    コニー「あぁ?!」

    下から伸びる無数の亡者の手に思わず叫び声を上げる。

    コニー(俺、何でこんな所に寝そべってるんだ?)

    思い出そうとするも、完全に記憶が途切れてしまっている。

    コニー「あ。」

    コニー(そうか、通路が吹っ飛ばされて…)

    粉々に破壊された橋を見て、コニーはやっと事の次第を思い出した。


    コニー「みんなは…」

    立ち上がり辺りを見渡したが、目を覆いたくなるほどの惨劇だった。

    「誰か!おーーーい!!」

    叫んでみる。
    しかしいたずらにウォーカーを刺激するのみで、返答は一切ない。

    コニー「くそ、なんだってこんな目に…」







    それが二時間前の出来事。

    今は林道に沿ってひたすら歩いている。
    腹部を撃たれたようで、あまり長時間の移動は難しそうだ。

    出血は止まっているが、歩く度に鈍痛を伴う。

    コニー(どこかで一旦休まねぇと…)

    治療のしようがない。あるのは重たいライフルだけだ。
    自らの身を守ってくれる物が、今は非常に恨めしく思った。

    コニー「ん…」

    しばらく歩くと大型のトラックが見えてきた。
    体力的にも限界で、コニーは荷台の上に登ると体を横たえた。




    「…」

    頭に浮かぶのは恋人の安否。
    そして無惨に殺された義父の姿。

    コニー(最後にはハンネスもミカサを庇って死んだ。大事なものを守ったんだ。)

    (でも俺にはわからない。死んでしまったら、何もかも終わりじゃないのか?)

    (少なくとも楽には慣れるのかな…)

    そして意識が沈んでいった。






    「オイ、何だコイツは。」

    「俺の愛車の上で寝るとは太ぇ野郎だ。」

    「アンタの車じゃないでしょうが。」

    銃先で頭を突く。

    「生きてやがるよな…?」

    「この状況でイビキをかくとは…」



    何だよ、うるせぇな。
    こっちは気持ち良く…


    気持ち良く?






    「うわぁぁぁぁぁ!!」

    「うおっ!」

    状況を理解したのか、コニーはライフルを横薙ぎに振り回した。

    「何事だ?」

    「オルオが落ちました!」


    コニー「う、うわぁ!こっちに来るなぁ!!」

    立ち上がり銃を構えたが、小柄な男はそれに構わず寄ってくる。

    「落ち着け、奴らが集まってくるぞ。」

    コニー「く、来るなって!」

    「…チッ。」

    スッ

    コニー「?!」

    瞬きする間に男は背後に回り込み、左腕をねじ上げ口を塞いだ。


    「奴らが集まってくるから黙れ。わかるな?」

    コニーはコクコクと頷いた。

    「よし先ずは状況を理解しろ。お前が気持ち良さそうに寝そべっていたのは俺たちの車だ。従って、起こすのは当然の事だ。」

    コニー「…」コクコク

    「そして俺たちはお前に危害を加えるつもりは無い。わかったか?」

    コニー「ふぁい。」

    そう答えると男は束縛を解いた。

    「理解してもらえて何よりだ。俺はリヴァイ。転げ落ちたのが部下のオルオ、それとペトラだ。」

    良く見ると三人とも軍服を着ている。行動や言動からしてもこの三人は安全な気がした。

    コニー「俺はコニーだ、悪かったなアンタ達の車とは知らなくて…」

    そう言って手を差し出したが、リヴァイはそれを見つめると舌打ちをした。

    リヴァイ「汚ぇ、よく見りゃ血まみれじゃねぇか。血くらい拭ったどうだ。」

    コニー「あ、すまない…」

    そう言ってハンカチを受け取ろうとした瞬間、視界がぐらついた。


    コニー「あ…?」

    リヴァイ「おい。」




    リヴァイ「ペトラ、こいつを頼む。アホ面してやがったが、結構な傷と出血だ。」

    オルオ「待てペトラ、俺の介抱はどうした?いつもより血が出てやがるぜ…」

    ペトラ「これでも噛んでなさい!」

    コニーが落としたハンカチを咥えさせる。



    リヴァイ「…どいつもこいつも汚ぇ。」
  14. 14 : : 2015/12/23(水) 23:43:15
    お待たせしてすみません!!
    年末年始で取り返します
  15. 15 : : 2015/12/27(日) 23:22:44
    期待!!
    更新待ってましたーー!!
    自分のペースで頑張ってください!!
  16. 16 : : 2015/12/30(水) 18:37:26
    皆さん

    コメント有難うございます!
  17. 17 : : 2015/12/30(水) 19:09:13

    オルオ「しかしいい気なもんだ、終始女の名前を呼んでやがる。」

    ペトラ「身体中傷だらけだったし、事情もわからないわね。…で、あと何km?」

    オルオ「聞くな、気が遠くなるぞ。」

    地図上の”アラスカ”と書かれた部位をペンで何度も突く。

    オルオ「しかしこの辺鄙で極寒の地に何があるってんだ?いくらあの人からの通信とはいえ…」




    『聞こえるか? 』

    手元のトランシーバーから声が漏れる。

    オルオ「はいっ、隊長。」

    オルオはフロントガラスに投げていた足を戻し、背筋を伸ばすとトランシーバーに返答した。

    『この道はヤメだ。10km先に奴らがウジャウジャいやがる。』

    『その林道を抜けたら直ぐの角を右折しろ。御誂え向きの民家がある。』

    オルオ「今日はそこで休息ですね?」

    『ああ、30分で追いつく。以上だ』


    通信が切れると、オルオはまた元の姿勢に戻った。

    オルオ「聞いたなペトラ、今夜のドライブは終いだ。」

    ペトラ「明日はあんたが運転しなさいよね。全くこの変わり身の速さ、隊長に見せたやりたいわ。」

    後部座席で魘されるコニーをよそに、トラックは林道を走っていった。

    ーーーーーーーーーーーーーーー

    「う…?」

    目を覚ました瞬間、コニーの目に入ってきたのはリヴァイがコーヒーを啜る姿だった。

    リヴァイ「まだ動くな、傷口を縫ったばかりだ。」

    具合を確かめようと腹筋に力を入れたが、激痛でそれも叶わなかった。

    コニー「手当してくれたのか。」

    リヴァイ「オルオが見張りをしている。ここは安全だ。」

    ふと横を見やると、ペトラが寝息を立てていた。

    コニー「ここはどこなんだ?」

    リヴァイ「20km程移動した。かなり埃っぽいが今夜はここで我慢しろ。」



    コニー「…何だって?!」

    激痛も何のその、起き上がりリヴァイに迫る。

    リヴァイ「俺たちは”ある地”を目指して移動している。いつまでもこんな南東部に留まってる訳にはいかん。」

    コニー「そんな、俺はみんなを探さないと!!」

    腹を抑え、ライフルを掴むと玄関に向かった。

    リヴァイ「その傷でどうするつもりだ。お前死ぬぞ。」

    コニー「知るかっ!放っておいてくれ!!」




    コニー「…でも助けてもらった事は感謝している。有難うな。」

    そう言い闇に消えていったコニーに、リヴァイは舌打ちした。


    『隊長、あのガキが…!』

    『どうします?足を撃ちますか?』

    リヴァイ「見逃してやれと言いたい所だが…」

    ーーーーーーーーーーーーーーー

    数m先も見えない中、コニーは必死に走った。
    方向もわからず自分の現在地も知れず。

    ただ走った。

    コニー(エレン、ライナー…ユミル…!)

    ドッ!

    コニー「ぐわっ!」

    目の前の何かに当たり尻餅をつく。
    ウォーカーか、すぐ銃を向ける。




    「落ち着け、俺だ。」

    コニー「アンタ、何で…」

    その男は紛れもなくリヴァイ本人であった。

    先回りしたのか?
    いや不可能だ。それにこの男は息ひとつ切らさず、すました顔をしている。

    リヴァイ「まず進行方向が逆だ。この先には奴らしかいない。」

    リヴァイ「そしてお前が進んだ距離はほんの100mに満たない。しかも平衡感覚がズレて、真っ直ぐ走れないときた。」

    コニー「…」

    リヴァイ「自分の今の状況がわかったか?」

    この男が何を言っているのか理解ができなかった。

    コニー「…ご忠告どうも。」

    ガッ

    リヴァイ「これは忠告じゃない、れっきとした事実だ。」

    リヴァイ「はっきり言ってやる。無駄死にするだけだ。」

    コニー「そんなの関係ないんだ、俺は…」

    頑として首を縦に振らないコニーにため息をつくと、リヴァイはある提案を切り出した。


    リヴァイ「いいだろう。今からちょっとした賭けをしよう。」

    リヴァイ「もしお前が勝てば、、周辺の地図と車をやる。食料と弾丸のおまけ付きだ。」

    コニー「何だって?」

    車…

    今の自分に一番必要なものだ。
    思えばあれは軍用トラックで、ウォーカーを轢いてもビクともしないだろう。
    それに”おまけ”付きとは願ったり叶ったりだ。

    コニー「賭けの内容は?」


  18. 18 : : 2016/01/19(火) 04:09:11
    楽しみにしてますね
  19. 19 : : 2016/02/20(土) 18:43:16
    リヴァイ「俺を地面に転がしてみろ、何をしても構わん。両腕を使わないというハンデもつけてやる。」

    いくら相手が軍人とはいえ、腕を使わずに何ができるというのか。
    しかしコニーは良からぬ笑みを浮かべた。”何をしてもいい”という一言を聞き逃さなかったのだ。


    リヴァイ「さっさとしろ。」

    コニー「うおぉぉっ!」

    アメフトのタックルの要領で身を低くすると、ライフルを横にしてリヴァイに当たっていった。

    ガッ!

    リヴァイ「馬鹿なりに考えたな。」

    コニー「へっ、俺の勝ちだ・・・っ?!」

    言い終わった瞬間、コニーは宙に舞った。


    コニー(は・・・?!)

    ドサッ

    コニー(何でだ、今何が起きたんだ…)

    リヴァイ「賭けは俺の勝ちだ、大人しくついてこい。…まぁそのザマじゃ無理か。」

    ーーーーーーーーーーーー

    「じゃあ一回バラすぞ。ここからやり直しだ。」

    細かく分解された銃のパーツをサシャは手に取っていく。

    サシャ「えっと…これがここで…」

    エレンはその姿を見て少し複雑な気持ちになった。
    致し方ない事だと思うが、やはり年端もいかない子供が銃を手にするというのは抵抗がある。


    ガサッ

    エレン「!!」

    「私だ。」

    ナナバ「取り敢えず数km先までは問題ない。ただどこまでも森が続いている…覚悟を決めていかないと。」

    エレン「 可能性に賭けるしかない。…進もう。」



    皆を探索するにあたって、最も可能性が高いと判断したのが
    線路に沿っての移動だった。

    物資も求めて移動したり、体を休める場所を探したり…ようは民家などを探すのに、闇雲に移動するよりも
    との事で一つの可能性に賭けた。

    以前クリスタが逸れた時もそう動いた事を思い出しての行動だった。



    サシャ「じゃあ…秘密を一つ教えてください!」

    後方では何やら二人がゲームに興じている。
    どうやら勝ったほうがなんらかの命令をできるようだ。

    ナナバ「そうだね…実は、子供がいたんだ。」

    サシャ「え、それは知らなかったです!男の子ですか、女の子ですか?!」

    ナナバ「はい、質問は一つまでだろ?知りたければまた勝ってみせるんだね。」


    子供ーーー

    (エレン、ごめんなさい。私はあなたの…)


    思わず幻影を振り払った。

    エレン(くそ、何だってこんな時に…)

    エレン「ん?」


    サシャ「これでリーチです!…痛っ!!」

    サシャ「もう!いきなり立ち止まらないでくださいよ!」

    ナナバ「エレン?どうしたの?」





    全ての人類に救いの手を。
    全てが許される、安息の地です。


    何て事のない走り書き。
    そのどこにでもある酔狂な文章だけなら。
    しかし、その下を見て彼らは目を丸くした。






    「先に進むーーーーエルド、ユミル」

    season4 ep1 end








  20. 20 : : 2016/02/20(土) 18:49:09

    次回予告

    「お前とは一度腹を据えて話してみたかったんだ。」

    「それだけが幸せとは限らないだろ?」

    「やめてくれよ、独り言みたいじゃねーか。」


    season4 ep2 一人と一人
  21. 21 : : 2016/02/20(土) 18:50:31
    お待たせいたしました。
    私事ですが、就職が決まり中々更新できずすみませんでした。

    週1ペースを目処に頑張っていきたいと思います。
  22. 22 : : 2016/02/21(日) 03:52:02
    うおおおおー!!
    エルドとユミル生きてた!
    更新待ってました!
    期待です!
  23. 23 : : 2016/04/20(水) 22:25:08
    待ってますよ期待★
  24. 24 : : 2016/05/15(日) 12:16:05
    次作です。

    http://www.ssnote.net/archives/45877
  25. 25 : : 2023/07/20(木) 12:38:41
    http://www.ssnote.net/archives/90995
    ●トロのフリーアカウント(^ω^)●
    http://www.ssnote.net/archives/90991
    http://www.ssnote.net/groups/633/archives/3655
    http://www.ssnote.net/users/mikasaanti
    2 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 16:43:56 このユーザーのレスのみ表示する
    sex_shitai
    toyama3190

    oppai_jirou
    catlinlove

    sukebe_erotarou
    errenlove

    cherryboy
    momoyamanaoki
    16 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 19:01:59 このユーザーのレスのみ表示する
    ちょっと時間あったから3つだけ作った

    unko_chinchin
    shoheikingdom

    mikasatosex
    unko

    pantie_ero_sex
    unko

    http://www.ssnote.net/archives/90992
    アカウントの譲渡について
    http://www.ssnote.net/groups/633/archives/3654

    36 : 2021年11月6日 : 2021/10/13(水) 19:43:59 このユーザーのレスのみ表示する
    理想は登録ユーザーが20人ぐらい増えて、noteをカオスにしてくれて、管理人の手に負えなくなって最悪閉鎖に追い込まれたら嬉しいな

    22 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:37:51 このユーザーのレスのみ表示する
    以前未登録に垢あげた時は複数の他のユーザーに乗っ取られたりで面倒だったからね。

    46 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:45:59 このユーザーのレスのみ表示する
    ぶっちゃけグループ二個ぐらい潰した事あるからね

    52 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:48:34 このユーザーのレスのみ表示する
    一応、自分で名前つけてる未登録で、かつ「あ、コイツならもしかしたらnoteぶっ壊せるかも」て思った奴笑

    89 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 21:17:27 このユーザーのレスのみ表示する
    noteがよりカオスにって運営側の手に負えなくなって閉鎖されたら万々歳だからな、俺のning依存症を終わらせてくれ

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