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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品はオリジナルキャラクターを含みます。

この作品は執筆を終了しています。

最後の聖戦2

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  1. 1 : : 2015/08/01(土) 11:37:54









    人生の前半は親に台無しにされ、後半は子によって台無しにされる。

    ───クラレンス・ダロー











  2. 2 : : 2015/08/01(土) 11:40:21
    ✳︎このssは合作です。 (バレンタインなんてなかった)


    ✳︎このssは過度なリア充表現を含みます。非リアの方は心臓や脳、及び身体の重要器官に深刻なダメージを負う恐れがあります。閲覧の際はくれぐれもお気を付けください。


    ✳︎また、今回はあまりクリスマス関係ありませんが、悪しからず。


    ✳︎最後にこの作品はフィクションです。実際の実際の団体・人物等とは一切関係ありません。


    ✳︎前作はこちらhttp://www.ssnote.net/archives/29020
    投稿者を変えたのでお手数ですが。初めての方はこちらをどうぞ
  3. 3 : : 2015/08/01(土) 12:04:42







    ──12月25日。


    リア充と非リアが互いの想いをぶつけ合った『最後の聖戦(ラスト・クリスマス)』から時は流れた。


    彼らの間にあった巨大な壁は今や完全に取り払われ、街は多くの笑顔で溢れていた。


    研究職のリア充達が開発した『抗THD(サッド)剤』の定期投与により非リアの健康被害も改善。


    それにより外出が増えた非リア達は当然、リア充となる機会に多く触れる。結果としてリア充が増加していった。


    この現象は『復天(ライズアップ)』と呼ばれ、世界はこれを泣いて喜んだ。
  4. 4 : : 2015/08/01(土) 12:23:59





    それはフラ男達にとっても例外ではなかった。


    先日、『最後の聖戦』を共に勝ち抜いた戦友である。木須晃は遂にリア充となった。


    日々彼女と楽しい日々を送りながらも、影で行われている非リアに対する差別などと言った反社会的行動に対抗する活動も行っていた。



    もちろん、フラ男達との関係も続いていた。忙しい中時間を作り、いつもの5人で集まる時は必ず参加してくれている。



    しかし、今回の集会に彼の姿はない。



    一度も欠席などしたことのない彼が今ここにいないのには訳があった。








  5. 5 : : 2015/08/01(土) 12:30:02






    ──単刀直入に、言おう。













    (木須 晃)は、死んだ。











  6. 6 : : 2015/08/01(土) 13:08:55





    きっかけはほんの些細な事でしかなかった。彼は恋人である姫宮 芥夏(ひめみや かいか)と共に自宅で休日を過ごしていた。



    彼らはネスレのMILOを飲みながらのんびりと映画鑑賞をする。そんなごく平凡な日常のワンシーンだ。



    その時悲劇ははじまった。



    晃の携帯の着信音が鳴り響く。



    「ちょっと電話出てくるから見てて」



    「うん」



    何気ない会話。だが、彼への電話は『霧舞 夏品(きりまい かじな)』という女からのものだと芥夏は気づいていた。



    その事実に彼女は疑念を払いきれなかった。



    こっそりと影から聞き耳を立てていると、途切れ途切れながら声が聞こえてくる。


    「だから──を愛してる──」


    「──を手放して──君を──」



    彼女は確信した。彼の気持ちは何処かへ行ってしまったのだと。



    「私はこんなに愛しているのに。愛してるのに。愛してるのに。なんで……晃は私のなのに」



    彼女は小さなつぶやきと共に台所へと向かった。




    この後彼は身体中を包丁で滅多刺しにされた死体として見つかる。



    犯人である姫宮芥夏は霧舞夏品の五体を切り裂いて川に捨てているところを目撃され捕まった。



    彼女はその後、第1種少年院へ送られる事になった。









    こうして彼はこの世界から姿を消した





  7. 7 : : 2015/08/01(土) 13:52:41





    フラ男「……まさか、な」


    龍音「こんな事になるとか、想像も出来なかったな……」


    フラ男の部屋は、重々しい空気に包まれていた。


    健太「どうにか出来ねえの?ほら……フラ男の運命を切り開く者(フラグ・マネジメント)で、あいつに生存フラグを立てたりさ」


    フラ男「……残念ながら、無理なんだ。俺の能力はその名の通り『先を切り開く』力。既に起こっちまった事象をどうこうする事は、俺には……」


    玄氏「混ぜちまったサクヤが戻らないように、食わせちまったソニアが戻らないように……もう、晃は戻ってこない。そういう事か……」


    フラ男「……すまねえ……」


    フラ男は己の非力さを呪うように、家の床を睨みつけた。
  8. 8 : : 2015/08/01(土) 14:07:21






    重くのしかかるような空気に耐えかねたように、龍音がため息をつく。



    龍音「俺の墓ソニアやフラ男のサクヤは帰ってこないのと同様に晃も帰ってはこない。なら、俺たちは凹むより先にやる事があると思うんだが?」



    龍音の言葉は彼らに突き刺さった。この場でうじうじと大の男が4人揃って悩む事に意味などないのだ。



    フラ男「そうだな。せめてあいつの生き様を世界に知らせよう。あいつは非リアの為に戦った男だ」



    そう言うとフラ男はパソコンの電源を入れようと立ち上がる。



    しかし、直ぐに頭を抑えて膝をつく。



    健太「おい。フラ男どうした……ぐッ」



    フラ男に続き、その場の全員が脳を揺さぶられるような感覚にうなされ始める。



    必死に吐き気を抑え、助けを呼ぼうとフラ男は扉へと這うようにして進む。



    しかし、その途中で彼は地面に倒れ伏してしまった。





    玄氏「おい……フラ……男……みんな……」



    原因不明の症状に次々と彼らは倒れて行き、最後に残った玄氏さえも意識を失った。



  9. 9 : : 2015/08/01(土) 14:29:09















    フラ男「……ぅ……」


    フラ男「……ここ、は……?」


    健太「おいおい、やっと起きたかよ」


    目を覚ましたフラ男に、健太が呆れたような声で言った。


    フラ男「あれ……?俺は何して……!?」


    玄氏「どうやら俺たち、厄介ごとに巻き込まれたらしいぜ」


    龍音「俺ら三人、全く心当たりのない場所だ。お前は?」


    フラ男は急いで辺りを見回す。


    まず目を惹いたのは、何やら巨大な建物だった。多くの棟が渡り廊下で繋げられている様子は、彼に大学のキャンパスを連想させた。


    次に、地面。つい先ほどまでフラ男の家の床だった筈のそれは、今は若緑色をした芝生になっていた。


    フラ男「いや……俺も知らない。全く初めて見る場所だ」


    フラ男はわざとらしく肩をすくめた。
  10. 10 : : 2015/08/01(土) 15:01:41




    フラ男達は見覚えのない場所に取り残され、少々混乱していた。



    先ほどの脳を揺さぶられるような感覚は能力者の襲撃で、自分達は囚われているのか。


    しかし、それにしては拘束がないのはおかしい。



    そうでないとするならば、誰が何の目的の為に彼らをこの場所に運んだのか。



    様々な可能性を考慮してもこの事態は意味不明だった。


    玄氏「とりあえずじっとしていても仕方ない。探索しよう。人がいれば、ここがどこなのかわかるかもしれない」



    立ち上がり、草を払いながら告げる玄氏に、皆が賛同し、別れて周辺の探索をすることになった。



    フラ男は建物の一帯を歩き回っているが、かなり大きな敷地と建物のせいで探索に進展はあまりない。



    そろそろ歩くにも疲れ戻ろうかとおもった、その時フラ男は前方から人の声が聞こえてくることに気づく。



    フラ男「ラッキーこれで帰れるぞ」



    急いで走って建物の角を曲がるとそこには、1人の少年を囲って暴力を振るう男女(リア充)の姿があった。



    フラ男「おい。なんの真似だお前ら」



    怒気を込めたフラ男の声がリア充達は彼の方を振り向く。


    リア充「はあ?お前それ俺らにいってんの?誰だか知らないけど、女のいないお前に俺らが倒せるとでも?」



    下品な笑い声をあげる男女2組。



    昔見たリア充そのものだった。THDを無駄に振りまき、非リアを嘲笑う者達と同じ。



    怒りからフラ男の拳に力がこもる。



    少年「ダメだ!1人で勝てるわけない!逃げて!」



    いじめられていた少年の声も最早届かない。フラ男は《運命を切り開く者》を解放し、リア充に向けて駆け出した。



    それに対してリア充達は笑いながら、何もない空間に男は剣を、女は鞘を生み出す。


    女から鞘を受け取った男は、フラ男が以前戦った水野にも届くかという速度で斬りかかるが、フラ男にとって速さも力も関係ない。ただそこにフラグを生み出し、それを回収するのみ。



    刹那、フラ男と男達の身体が交差し、男達の体が宙を舞う。地に倒れた男達はすでに気を失っていた。



    フラ男「おい。お前らそいつらを連れてとっとと消えろ」



    そう言って睨むフラ男に、リア充の女子達は慌てて男達を引きずって逃げていった。



    フラ男「大丈夫か?」


    自分の顔を見たまま惚ける少年に、フラ男は困ったように頭を掻くことしかできない。


    少年「あなた何者ですか……?」



    ようやく少しショックから立ち直ったのか、少年が口を開く。


    彼はどう見てもフラ男と同じくらいの年頃だ。そんな少年に敬語を使われることに妙な違和感を覚えながらも、フラ男は彼の質問に答えを返す。



    フラ男「俺か?俺は小西フラ男だ。お前は?」


    少年「え、お、俺は神宮寺 燕(じんぐうじ つばめ)です」








    これがフラ男と神宮寺燕との出会いであり、この事件のすべての始まりだった。











  11. 11 : : 2015/08/01(土) 16:36:08



    その後フラ男は燕に同行を頼み、最初に彼らが目覚めた場所に戻った。



    すると既に彼以外の全員が戻ってきていた。



    適当に燕の紹介をすませると、早速とばかりに全員が食い入る様に燕を見つめる。



    フラ男「聞きたいことが山ほどあるんだけど。とりあえずここはどこなんだ?」



    フラ男の質問に燕はひどく驚いた様な顔をする。


    燕「あなた達この私立現充学園をしらないなんて。何者ですか?」


    何者と言われたところで彼らはただの非リアの一般人だ。彼らに大層な肩書きがあるわけでもないのに、どう答えていいのかもわからない。


    健太「何者っていうか突然気を失って、目覚めたらここにいたんだ。俺たちもよくわかってない」


    彼らの回答に困惑している様な燕を見て、先ほどから何か考え込んでいた龍音が、ようやくにして顔を上げる。



    龍音「今何年で、ここはなんという国だ?」


    龍音の質問に誰もが訝しげな表情になる。その場の人間が一様にそんなことを聞いてなんになるのかと思ったことだろう。


    燕「20XX年の日本ですけど」


    その言葉に燕と龍音以外の誰もが言葉を失った。その年は、フラ男達が集まった日から40年後。未来の年号だった。



    龍音「やはりか。現充学園ということは、おそらく現充広場の近くだろ。しかもこの人の話によると、相当有名みたいだ。それなのに俺たちが知らないなんてあり得ない。ならそこから導き出される可能性は一つだ。過去か未来か、異世界かそういったオカルト的な何かだ」


    玄氏「そんな非科学的な話があってたまるかよ……」



    玄氏の言うことも尤もだ。タイムスリップなんてあり得ない。しかし、龍音が言う様に他の可能性は無に等しい。



    否定したいが、否定できない。そんな状況だった。



    フラ男「まあ40年後ってわかっただけでも収穫だ。まだ聞きたいことはあるし、話を進めよう」




    非リアとリア充が手を取り合えると思っていた未来でさっきの様な事態を見て、彼の心中は穏やかではなかった。



    気になる気持ちを抑えて、必要なものに的を絞って質問しなれければならない



    フラ男「ひとつはさっきリア充どもが使ってた剣と鞘について、もうひとつは、燕があんな風になっていた理由だ」



    燕「少し長くなるけど、大丈夫ですか?」



    フラ男「ああ。かまわない」




    燕の話の内容を整理するとこうだった。



    5年ほど前に、聖魔装と名付けられる存在を生み出すことのできる能力者が、突如として世界に誕生した。この聖魔装は男なら剣を女なら鞘を顕現できるようになる。ただし、お互いに信頼を寄せた男女、つまり恋人に近しい関係にある男女がペアとならなければ真の力は発現しない。


    世界が困惑する中、その力は悪魔の力だと言う者達の集まりである、魔掃天(マジックリン)と名乗るグループが活動を始め、1人になった能力者を狩りだした。



    その時に燕は能力を発現したことで、魔掃天に襲われる。なんとか抵抗するが、1人では勝つことができず、剣を折られてしまう。


    死を覚悟した時、両親が命を賭して彼を逃したという。


    その後、魔掃天は国家的に消滅させられたものの、残党からの能力者の保護や、正しい力の扱いを教えるための学園ができた。そのひとつが現充学園だ。


    能力者は皆そういった学園に、入学することが法的に義務付けられた。



    そのことで燕はこの学園に入るが、トラウマから剣を生み出せなくなり、力があるのに両親を見捨てた臆病者としてのレッテルは彼を苦しめることとなった。ということだった。



    健太「知らないこと塗れじゃねぇか……しかもなんだこれ。40年後の俺ら何してんだよ」



    燕の言葉に、健太は憎々しげに悪態をつく。40年という月日の中でこの世界はあまりにも変質していた。


    全員揃って開いた口がふさがらないような状態だった。



    玄氏「とりあえず、こいつがいじめられるってのは納得いかねぇな。非リア叩きとなんら変わりやしない」


    龍音「そうだな。とりあえずこいつが被害を受けないような影で見守りながら、帰る方法でも探すか」



    1人、状況に流されてよくわかっていない燕を置き去りにしながら4人は今後の方針を固めた。
  12. 12 : : 2015/08/01(土) 17:33:44








    ──一方、その頃……


    「ひ、非常事態です!突然謎の人物が現れて、数名がやられました!」


    学園内の某所にて、つい先ほどフラ男に吹っ飛ばされた男女のうち女の方が、ある男に事態を報告していた。


    ??「へぇ……君の彼氏がやられたのかい?可哀想に……そいつの特徴は?」


    「余りにも一瞬の出来事で、殆ど覚えていなくて……で、でも!明らかにこの学園の制服とは違う服装でした!探せばすぐに見つかるかと!」


    ??「成る程……そうだね、まあもう少しだけ泳がせておこう……機が熟したら、僕の『裁判』に出廷して貰おうかな」


    「!あ、貴方様が直接手を下されるのですか!?」


    ??「僕は弱い者の味方なんだ、弱い者虐めは見逃せないしね。それに……学園序列で『7位』の座についてからは、僕に刃向かう者も少なくて。丁度退屈していた所なんだ」






    ??「スパイごっこの気分はどうなのかな。……ふふ……精々楽しませてくれよ、謎の侵入者?」


    『学園』の闇が、静かにその牙を剥き出した。
  13. 13 : : 2015/08/01(土) 18:25:21







    先日フラ男が燕に暴力を振るう者達のを撃退したことによって、燕を目の敵にする者は激増した。


    フラ男が返り討ちにしたり、健太が男の剣を極小サイズにしたりもしたが、その手の数は減るどころか、増えている。



    そして今フラ男達は囲まれていた。



    フラ男「こいつら本当にどうなってんだよ……こんだけのフラグ管理がどれだけ疲れると……」



    おそらく総勢100名50組はあろうかという巨大な集団がフラ男たちを囲み、下卑た笑みを浮かべている。


    龍音「しかたねぇな……面倒だが、俺が音ゲーで練り上げたリズム感によって生み出された新能力見せてやるよ……絶対恐怖(インヴィクタ・アムスト)セカンドステージ」










    龍音「波及する恐怖(ドラミング)










  14. 14 : : 2015/08/01(土) 19:00:28



    「「「「!!?」」」」


    フラ男たちを取り囲んでいた有象無象が、突如として動きを止めた。


    その顔からは徐々に下卑た笑みが消えていき、代わりに怯えきった表情が張り付いていった。


    フラ男「……!?こいつは……!?」


    龍音「……ほーら」


    ドンッ、と龍音が右腕で己の胸を叩いた。


    その瞬間。


    「い、嫌ああああァァァァァァァ!!!!!!!」

    「やめろ、やめて……!!!やめてぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」


    男は例外なく全身から汗を吹き出し、次々と膝を折っていく。その刀は皆、すべからくフニャフニャに曲がっていた。


    「なに、何なのよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」

    「うっ、あああああ〜……!!!!!あああああああ〜……!!!!!!!」


    女は例外なく目から涙を溢し、次々と倒れていく。その鞘はどれもバキバキに砕けていた。


    龍音「絶対恐怖セカンドステージ、『波及する恐怖(ドラミング)』……恐怖を音に乗せ、意のままに操り乱反射させる事で一定領域内全ての人間を恐怖に陥れる……」


    ドンッ、ドンッ、ドンッ。


    右、左、右、左、右。両腕を交互に使い、胸を叩く。


    その度に恐怖の音色が空気を伝わり、鼓膜を揺らし、絶望を刻み込む。


    もはや立つ人間はフラ男達以外には居らず、倒れた人間は皆己の汚い吐瀉物にその身を塗れさせていた。


    龍音「汚ねえなぁ……何?お前ら人間様としての最低限のプライド(笑)もねえの?」


    ドラミングしながら他を見下すその姿はまさに、ジャングルの暴君。


    ──支配者(ゴリラ)のそれだった。
  15. 15 : : 2015/08/01(土) 19:36:52







    龍音が手を止めるとようやく圧倒的恐怖の重圧から逃れ、まだ意識のある者は背を向けて逃げ出した。



    彼の能力は確実にワンランク上のものになっていた。



    フラ男「すげぇ。超便利だな。汚いけど」



    健太「ほんとそれ。汚いけど」



    玄氏「でもどうせ汚い以外にもデメリットあるんだろ?まあどっちにしろ汚いけど」


    別に龍音が汚れているわけではないのだが、確実に龍音以外の人間は一歩距離を取っていた。



    龍音「おまえらとりあえず1歩前へ出て話せ。デメリットだが、ほぼない。拡散すると威力は下がるが、必要とあれば収束も可能だからな」



    玄氏「へーそりゃ便利だな。まあとりあえず雑魚処理は済んだし、行くか」





    そしてフラ男達はその日も無事に燕の護衛を終えた。




  16. 16 : : 2015/08/01(土) 19:48:00













    その頃……



    「はぁっ……はぁっ……ずずずずみません……燕をし、ししし始末しそこねました」



    身体中からあらゆる体液を垂れ流した少女が全身を震わせながら、肩を抱くようにして、跪いている。


    ??「そうか……余程怖い思いをしたんだね。もう楽になるといい……」



    男は彼女に歩み寄ると頬をそっと撫でた。すると、彼女はその表情を絶望から、安心したかのように恍惚としたものに変える。



    ??「さあ。もう怖くない。すぐに楽にしてあげるからね……」



    そして男は背後に剣を顕現させると、彼女の喉元を切り裂いた。



    鮮血が視界を染め上げ、彼女は驚いたように目を見開く。



    しかし、喉を切り裂かれ叫び声すら出せず、ヒューヒューと風の抜ける音を鳴らすだけだった。



    ??「使えない奴ばかりだ……僕が行こう」



    部屋にはただカツカツと男がかかとを鳴らす音だけが響き渡っていた。






  17. 17 : : 2015/08/01(土) 20:23:02








    『それ』は唐突だった。



    いつものように、フラ男たちが燕を守りながら情報収集をしていた時の事。


    玄氏「ん……?何だ、これ?」


    玄氏が床を指差してそう言った。フラ男達が目を凝らして注視すると、そこには何やら白い粉末のようなものが付着していた。


    龍音「白い粉……って、犯罪臭しかしないんだけど。燕、もしかしてお前の学校ってこんなん取り扱ってんの?」


    燕「い、いやいやいや!無いです無いです無いですよ!そんな話聞いたことありません!!」


    物凄い勢いで否定する燕。


    まあ分かってたけど、という言葉は口には出さずに龍音は再び床に視線を落とした。


    龍音「……舐めてみる、ってわけには行かないよね流石に」


    フラ男「だな。……ん?おい見ろ、この粉……よく見たら向こう側の、廊下の曲がり角まで続いてやがる」


    フラ男の言う通り、謎の白い粉は少量ずつ、廊下の曲がり角にまで続いていた。


    健太「罠って臭いしかしねえな。死なねえもこたんならともかく、死ぬ俺たちが分かりきった罠に突っ込むのは流石に抵抗が……」


    フラ男「……つっても、これは見方を変えればチャンスじゃねえか?相手は明らかに俺らを狙って罠を仕掛けてる。なら逆にそれは、情報を搾り取る好機でもある」


    「「「……」」」


    僅かな間の沈黙。


    すぐに、フラ男が口を開いた。


    フラ男「俺が行く。自分で言うのも何だが、この中じゃ一番対応力があると思うしな。……お前らはここに残って燕を見ててくれ」


    こうして、フラ男は廊下の先へと進んで行った。
  18. 18 : : 2015/08/01(土) 20:29:56





    燕「……フラ男さん、大丈夫ですかね?たった1人で……」


    不安そうに問う燕に、玄氏は自信に溢れて言った。


    玄氏「あいつなら心配ねえよ!何故ならあいつは、非リアの救世主!英雄みたいなもんだからな!!こいしちゃんかわいい」


    燕「英雄……ですか?」


    健太「ああ。自慢するわけじゃねーが……あいつは俺らの時代では、世界規模で有名な奴だったんだぜ?当時リア充のトップだった小西夫妻を破り、非リアとリア充の壁を打ち破った男としてな!!」


    燕「へえー、凄い人なんですね……って、え?……もしかして、それって……!!」


    燕が何かを言いかけた、その時だった。


    ??「呑気に他人の心配かい?全く……お気楽なものだね」


    「「「!!?」」」


    突如、何者かの声が響いた。
  19. 19 : : 2015/08/01(土) 21:00:27










    そこにはかなり大柄で、鷹揚な話し方をする男の姿があった。


    ゆったりとした歩調で歩み寄ってくる彼から、肌に刺さるような威圧感が放出されていることをその場の全員が感じて燕をかばう。



    「おっと。傍聴人は横にいてほしいな。彼を裁けないじゃないか」



    かれの周囲にキメの細かい粉末が集まり始める、そして燕以外の3人の体にまとわりつき始めた。



    粉末を払おうとするが、次々とまとわりついてくる粉末に身動きを取れないように、拘束されてしまう。



    「では君たちそこで、この裁きを見届けてくれたまえ」



    健太「おい!玄氏《闇に刺す光(ライトアンドダークネス)》でなんとかできねぇのか!」



    玄氏「うるせぇ!俺の能力は威力は高いが、溜めが長えんだよ!お前こそ砂縮めろよ!」


    健太「もうやってるがキリがないんだよ」


    焦って口論するも、そこに活路が見いだせない。フラ男をおびき出されたのは失敗だった。


    フラ男ならこの粉末すらもフラグでどうにかしてしまうことだろう。



    龍音「こりゃあ、フラ男が気付いて戻ってくるのを祈るしかなさそうだな」



    龍音に至っては抵抗を諦める始末だった。



    「潔い人間というのはとても好感がもてるね。君のような人間に傍聴してもらえるとは嬉しい限りだよ」


    男が3人と悠長に会話していられるのも、燕が腰を抜かして逃げ出すことすらしないからだ。


    逃げ出してフラ男を呼んでくれれば、なんとかなるかもしれないのだが、恐怖だけが彼を支配しているように見えた。



    3人は彼のそんな様子に溜息をつくことしかできなかった。




  20. 20 : : 2015/08/02(日) 11:13:24



    「さて……燕くん」


    燕「は、はい!?」


    怯えきった燕の声は裏返っている。


    「君は無能力者であるにも関わらず、愚かにも分際を弁えず、能力者に逆らった。しかもそこの侵入者どもの手を借りて、だ。……それで間違いないね?」


    燕「あ、あの……!!」


    「あーあーあー、なんて嘆かわしい!!!言っておくけどね燕くん?僕だって君を信じていたんだよ?それがまさか、侵入者の手を借りるなんて小汚い真似まで……酷く裏切られた気分だ」


    燕「違っ」


    「親を見捨てたとは聞いていたが……この分じゃ本当みたいだね」


    燕「!!」


    親を見捨てた。


    その言葉を聞いた途端、燕が固まった。


    「もう見ていられないよ。……ねえ、卑怯で狡猾な燕くん。今の気分はどうだい?」


    燕「…あ……やめ、て……」


    許しを乞う燕の言葉に、男はニヤァと口角を上げた。そして右足をゆっくりと引き……


    「当然答えはノーだ」


    燕の腹部を、蹴り抜いた。
  21. 21 : : 2015/08/02(日) 16:32:17








    燕の肺から空気が吐き出され、激痛に腹を抑えながら咳き込む。


    燕「やめ……てくれ……」


    激痛に歪んだ瞳の端には涙がにじんでいる。燕は震えて力のこもらぬ足で尻餅をついたまま必死に後ずさって逃げ出そうとしていた。


    「まだまだこの程度では終わらないよ?君は彼らを利用してクレバーに生きていたつもりだろう。でも君のやったことは罪だ。さあ贖罪を続けよう」



    燕が恐怖し、逃げようとする。その事実が、男の嗜虐心をさらにくすぐる。



    恍惚とした表情で燕を嬲る彼を見ながら、三人はがっくりと項垂れる。



    健太「んでどうすんよ。このままだとあいつやばいぞ」


    玄氏「さっきからずっと力を溜めちゃいるが、《闇に刺す光》をつかうにしてもこれだけの粉を消し去るには時間がかかりすぎる」


    手を打とうにも、手がない。あまりに時間がなかった。フラ男を待つという選択肢が濃厚になってくる程度には。



    龍音「まったく、めんどくせぇ……玄氏、俺の手だけでも解放できないか?」



    玄氏「それくらいなら、できるにはできるけど……どうすんだよ」



    龍音「そろそろ悠長なこともいってられない。さっさとやれ一瞬で決めるぞ」


    そう言い放って龍音は集中を始める。


    一方玄氏はなんとも強引な物言いに戸惑いながら、準備をするのだった。


    玄氏「いくぞ……《闇に刺す光》セカンドステージ……《こいしちゃんの笑顔(シャイニング・レイ)》」


    玄氏の掛け声とともに空中に複数の光の球体が浮かぶ。


    その球体はまるで一筋の光線の様に、龍音にまとわりつく粉末に衝突し、それを抉り取っていく。


    そして遂には龍音の腕が露わになる。



    龍音「流石だ。いくぞ……届け!全開だ《波及する恐怖》」



    粉が霧散し、腕が自由になり粉の拘束が修復される一瞬。その間に龍音は右腕を思い切り自らの胸板に叩きつけた。



    鈍く大きな音が響きわたり、男の動きが止まる。


    龍音は胸を強く叩きすぎたせいかむせ返り、涙目になりながら男を睨めつけた。


    「ふっ……ふふふふ。うん。実に素晴らしいじゃないか。」



    しかし、男はまるで恐怖など感じる様子もなく、くつくつと笑い始める。


    健太「なんで《絶対恐怖》が効いてないんだ……!?」




    「狙いは良かったよ。だが僕は先の報告で君たちの能力を知っている。だから粉末で耳栓をしていた。それだけだ。分かったら諦めてそこでみていてくれ」



    そう言って男はもう一度燕に向き直る。



    今度こそ本当に万事休す。玄氏も健太もその表情には驚愕と、諦め以外の色はない。



    しかし龍音は違った。



    龍音「実に滑稽だな。あんたが耳栓をしている事など考慮の内だ。俺の真打ちはこれからだよ」


    そう言って大声で笑い始めた。



    「虚勢を張って時間を稼ごうという魂胆か。実に愚かだね」



    龍音「愚かなのはどっちかその目で確かめればいいさ。なあフラ男?」



    龍音は何もないはずの空に向かって声を放つ。



    空を覆う様に広げられた金色の翼を背にしたフラ男の姿がそこにはあった。




    フラ男「あとは任せろ。《運命を切り開く者》セカンドステージ……《授かりし翼(レッドブル)》」



    フラ男はその翼を羽ばたかせると、翼と男の間に降り立つ。



    「き、君は今頃敷地の裏側にいるはず……!」



    フラ男「ああそうだな。さっきの龍音が音を飛ばさなきゃ気づきすらしなかったさ」



    フラ男がからかう様に肩をすくめて笑ってみせる。


    それに男は慌てふためき、後ずさる。


    「お、おかしい。間に合うわけがない……!」


    フラ男「まあ親父からこの翼、《運命を切り裂く者(フラグ・クリーヴァー)》を受け継いでなければ間に合わなかっただろうな」



    フラ男「さあ。やろうか?」



    フラ男は自信の篭った瞳で男を睨みつけて言い放った。




  22. 22 : : 2015/08/02(日) 17:08:56



    「………!!」


    男は歯噛みし、フラ男の瞳を睨み返す。


    フラ男「来ないんなら……こっちから行くぞ?」


    ──『運命を切り開く者(フラグ・マネジメント)』と『運命を切り裂く者(フラグ・クリーヴァー)』。


    最後の聖戦(ラストクリスマス)では相対する力としてぶつかり合った2つの能力は、実は完全に逆位相にあるわけではない。


    つまり、共存が可能なのだ。『運命管理(マネジメント)』と『運命破壊(クリーヴァー)』は。


    フラ男「あんたは俺と相性最悪だ。……お決まりなんだよ。他人をなぶるような奴には無数の敗北フラグが立つってなぁ!!」


    フラ男が右手を前に突き出す。

    その能力は目には見えないが、男には背筋を走る確かな悪寒としてその存在を知らせる。


    「……っ面倒だなぁ!」


    男が吐き捨てた。

    それと同時に、フラ男の体積を優に超える量の粉末がフラ男を襲う。


    フラ男「は?こんなもん効くわけ……、いや違う、これは……」


    フラ男「目くらましか!!」


    「今回はここで閉廷だ。君らと一緒に学園まで潰してしまうのは賢くない……」


    「じゃあね。精々頑張るが良いさ。……野鼠の死もアルジャーノンの死も、僕らにとっては等しく『無価値な死』だ」


    フラ男「クソが、待てっ!!」


    フラ男が金色の翼で力任せに辺りを薙ぐ。


    だがしかし、その時にはもう既に男の姿はなかった。
  23. 23 : : 2015/08/02(日) 17:56:13






    フラ男「まあいい……燕無事か?」



    ボロボロの燕に声をかけると弱々しいながら返事が返ってきた。



    健太「結構ボコられてたからな。とりあえず保健室とかあるなら連れてくか」



    健太の言葉に燕が飛び起きる。



    燕「い、いや平気!平気ですから保健室だけは!」



    玄氏「なんだ。保健室に何かあるのか?」


    燕の言葉を怪しく思った玄氏が追求すると、彼は冷や汗を流しながら目をそらす。


    玄氏「なんだこいつ」


    龍音「まあいいさ。引きずってでも連れて行けばすむだろ」


    燕「ちょっ!ちょっと待って!待ってください!あそこには魔王がぁ!」



    辺りに燕の悲鳴が虚しく響き渡った。



  24. 24 : : 2015/08/02(日) 19:05:59



    燕の言うことを無視して保健室の前まで彼を引きずっていこうとすると、彼は意地でも行くまいとしてそこかしこにあるものにしがみついた。



    保健室は歯医者でもあるまいし、そこまで嫌がる理由も4人には理解できなかった。



    フラ男「なあ。なんでそんなに保健室に行きたくないんだよ」



    フラ男が尋ねると、燕は青い顔をして唾液を呑み下す。



    燕「あそこには魔王がいるんです」



    彼の言葉に4人全員が笑った。


    この世界は確かに未来だが、保健室にゾー◯やらオルゴデミー◯を配置する学校があるわけがない。


    そんなことでは保健室どころか死体安置室か、狩場か、はたまたお食事処の間違いだ。


    燕「本当です!保健室の養護教諭はこの学校のことを全て知り尽くしている。でも、気に入らない相手はそのグラマラスな肉体で骨抜きにして魂を喰らうとまで言われています。そのせいで消えた生徒も何人かいるとか」



    健太「いいじゃないか。それならおっぱい触らせてもらおう。おっぱい!おっぱい!」



    勿論そんな燕の説得は意味を成さず、4人は保健室まで引きずって連れて行った。



    龍音「すみません。怪我をしている奴がいたので、連れてきたんですが」



    中に入るとふわふわとした黒髪セミロングの女性と、腰の辺りまで伸びたストレートヘアの女性がいた。



    2人とも燕の言う通りグラマラスな美人だが、魔王と言われるような要素はない。


    4人とも彼女達のどこが魔王なのかと、顔を見合わせて笑った。


    「あら……龍くん?でもなんで私服?」


    龍音「え?なんですか……?その龍くんって」


    「くちたん!い、いやなんでもないわ。気にしないで!」


    くちたんと呼ばれた女性の口を、慌ててストレートの方が塞ぐ。



    「知らない顔ね。私はここの養護教諭の渡瀬 夏未(わたせ なつみ)、でこっちが甘江(あまえ)くち、あなた達は?」



    4人がはそれぞれ自己紹介をし終えて、燕が自己紹介をしようと、口を開くと、夏未がそれを止めた。


    夏未「あなたは知ってるからいいわ。神宮寺燕くんよね?なんならあなたのもうひとつの剣のサイズまで知ってるわよ?証明しましょうか?」


    燕「け、けけけ結構です!」


    顔を真っ赤にする燕を見て、悪戯っぽく笑い舌舐めずりをする夏未の様子は、さながら魔王そのものだ。



    くち「フラちゃん可愛いわねぇ。ぺろぺろしたいわぁ」



    フラ男「い、いや遠慮しときます」



    そんな彼女達に気圧された四人はこの時初めて燕の忠告を聞いておくのだったと後悔した。






  25. 25 : : 2015/08/02(日) 19:24:15



    健太「て、ていうか。ここには元々燕の治療のために来たんですよ。……な?お前ら?」


    フラ男達の方を向いて健太が言った。


    すぐにその真意を悟ったフラ男達は笑い、ただ1人燕だけは顔を一層青白くした。


    玄氏「そ、そ、そうだったそうだった!すっかり忘れてたぜ!」


    龍音「あー、じゃあすいませんけどこいつ任せて良いですか?見ての通り重症なんで」


    フラ男「んじゃ、お願いします夏未さんにくちさん!……あ!俺らは外出ときますね!治療の邪魔になっちゃいけないですし!!」


    流れるような勢い。1人1人がまるでラーメン屋で『ニンニクマシマシヤサイマシアブラカラメ』を注文(えいしょう)するかのような滑らかな口調でそう言うと、彼らは競い合うように保健室を出ようとする。


    燕「ちょっ、フラ男さん!?龍音さん!?玄氏さんに健太さんも!?この裏切り者!!人殺しぃ!!!」


    燕の呪詛も虚しく、フラ男達は1人また1人と保健室を後にしていく。


    燕「あ……あ、あ……」


    部屋にはもはや3人が残るのみ。


    夏未「さぁーてぇ……始めましょうか、『治療』♪」


    燕「…もう駄目だぁ……お終いだぁ………!!!」


    くち「レッツぷれいんぐ〜♪」















    保健室から、翼の悲鳴が響き渡った。
  26. 26 : : 2015/08/02(日) 22:25:54







    悲鳴が収まったのを機に、4人が部屋の中に入ると処置は完全に終わっていた。



    ただし、燕はやたらげっそりとしているのに対して、魔王ふたりはやたらツヤツヤしているようだ。


    燕を連れてさっさと逃げたいのは山々だが、さっき燕が言っていたこの学園のことを何でも知っているというのが本当ならここで情報を引き出しておく必要がある。



    玄氏「おふたりは学園のことならなんでも知っているとお聞きしたので、幾つか伺いたいことがあるんですが」



    やたらと前のめりなのは、剣が暴走しているわけではなく、ただ単にさっさと帰りたい一心なのだろう。



    夏未「別に構わないわよ。今日はいいお土産もいただいたしね」



    やはり彼女の舌舐めずりは、妖艶で魅力的な一方で獲物として見られているような悪寒を感じる。



    彼もそれを感じたのか、先ほどまで前のめりだった玄氏は慌てて体制を元に戻していた。


    そんなことをしている玄氏を一瞥して、健太がため息をつくと話を引き継ぐ。


    健太「それで聞きたいことなんですけど、幾つかあって、ひとつはここ最近燕を襲撃していた者たちのトップと思われる男。もうひとつは俺たちがここに突然現れた理由です」



    くち「燕ちゃんを襲ってた人は粉間 久弥(うるま ひさや)っていう序列7位の学園随一の厨二病で、変人なのよー。でも、あなた達がここに突然現れたっていうのはどういうこと?」



    流石にフラ男達4人の存在はイレギュラーなのか、その存在を把握しきれていないようだ。



    フラ男達が過去から来たことや、これまでの経緯を説明すると、ふたりは何やら考え込むような素振りを見せた。


    くち「私には思い当たることはないわねぇ。わたちゃんはどう?」



    夏未「ひとつだけ可能性はあるにはあるわね。最近燕くんと同じでパートナーのできなかった犬飼 遊楽(いぬかい ゆうら)という少年が失踪した事件があるの。それに関わってると思われる、姫宮 瑠奈(ひめみや るな)と言う人物が旧校舎に出入りしているという話があるわね。あそこは地下に巨大な実験施設があるから、もしあなた達のタイムスリップさせられた理由がこちらにあるとするならそこだと思う」



    フラ男「それはつまり、ついでに解決しろって事ですかね」


    夏未「そうは言わないけど、解決してくれたらお姉さん達、帰る前にサービスするわよ?」


    パチリとフラ男に向けてウインクする夏未。貞操の危機を感じながらも、フラ男は苦笑を浮かべる。


    龍音「まあサービスは別としても、ついでなら解決して消えてもバチは当たらないだろ」



    フラ男「まあそうだな。いっちょ暴れますか」



    フラ男達が意気込みを新たにしたところで、ふたりに礼を言って立ち去ろうとすると「ちょっとまって」と引き留められる。



    くち「さっきの姫宮瑠奈と粉間久弥は繋がっているって情報があるのよぉ。だから彼も旧校舎の方にいるかもねー」



    フラ男「そうですか。ありがとうございました。助かります」



    そう言って4人は死にかけの燕を引きずって保健室を出た。












    夏未「面白いものを見ちゃったわね。彼にも教えておこうかしら」


    くち「それは名案!絶対あの子驚くわね!」



    保健室に残されたふたりは顔を見合わせて口元を三日月型に歪ませた。






  27. 27 : : 2015/08/02(日) 22:39:23






    フラ男「ここが旧校舎か……なんだ、嫌に気味悪いな。薄暗いし」


    燕「使われなくなって大分経つって話ですからね。……だからこそ、本当に人がいるのかどうか疑わしいですけど……いやまあ、あの人たちが言うなら間違いはないんでしょうけど」


    フラ男達は燕の案内を受け、旧校舎へと足を踏み入れていた。


    幸いにも厳重な封鎖などはされておらず申し訳程度の看板が立ってある程度だったので、侵入は容易だった。


    健太「くちさんと夏未さんの話じゃ、地下に実験施設があるって事だったな。地下……というと何処かね」


    龍音「手当たり次第に回るしかないんじゃね?」


    地下への入り口を探すフラ男達。

  28. 28 : : 2015/08/02(日) 22:47:40





    玄氏「あったぞー多分これだろ。流石にここ入って学校なのにワインセラーとかいうフェイントはないよな」



    地下への入り口は意外にも簡単に見つかった。むしろ扉が開けっぱなしで隠す気すらないように見えた。



    真っ暗な階段を玄氏の生み出した光球で照らしながら下って行くと、5分ほど降りた頃に開けた場所に出た。


    軽く運動会ができそうな巨大空間に一同騒然としていると、巨大な空間に火が灯り始める。



    そして、奥からゆったりとした歩調で歩いている男が一人とその横に控える女が一人。



    その男を見紛う事はない。



    粉間久弥だった。



  29. 29 : : 2015/08/02(日) 23:02:01



    久弥「やあ、暫くぶりだね」


    フラ男「なーにが暫くぶりだ。ついさっき俺から逃げたばっかりだろうがよ」


    笑顔で言う久弥に悪態を吐くフラ男。


    久弥「僕はそこらに転がっているような、力に溺れた屑どもとは違うんだよ。常に自分の利益を考えて行動出来るのさ」


    ??「ひ、久弥くん……駄目だよ、屑なんて言っちゃ……」


    久弥「おっと、ごめんごめん。由美には少し言葉が強すぎたかな」


    由美と呼ばれた、久弥の隣に立つ気弱そうな女性はとてもではないが戦えるようには見えなかった。


    生来のお人好しであるフラ男はそれが気になった。


    フラ男「……おいおい、そんな子連れてやるつもりか?」


    その言葉を受け、久弥がわざとらしく由美に言う。


    久弥「由美……やってくれるね?」


    由美「……うん、久弥くんのためだもん……頑張る!」





    玄氏「……あー、あの頃のリア充思い出すな。やべえこれTHD濃いわ」


    その様子を見て、密かに玄氏は眉をしかめた。
  30. 30 : : 2015/08/02(日) 23:13:38



    特にイベントでTHDが引き上げられたわけではない。それでもおそらくこの場の空気だけでも18,000はTHDがある。



    その原因は由美にあった彼女はおそらく依存体質だ。久弥のくだらない戯言とも取れるような甘言は心の弱い彼女にとっては救いだったのだろう。



    その依存は急激にTHDの上昇を促していた。


    由美「ひ、久弥くん私の鞘使って……!」


    頬を赤らめ、顔を背ける彼女は恋する乙女そのものだ。


    久弥「ありがとう由美。君は僕の天使だ」


    そう言って彼女の額に口付けをして、鞘を受け取る。そして自らの剣をその鞘に収めた。


    それと同時に由美は恍惚とした表情でその場にへたり込んでしまう。



    龍音「あー甘ったるいな……胸焼けしてきた」



    健太「吐く前に終わらせるか」



    その言葉と共に、全員が臨戦態勢に入った。



  31. 31 : : 2015/08/02(日) 23:44:21



    龍音「『絶対恐怖(インヴィクタ・アムスト)』!!」



    龍音が能力を発動。久弥の思考が恐怖で一瞬だけ停止する。



    健太「喰らえ!!『最低限度(フォール・ディア・ミニマム)』ッ!!!」


    久弥「…ッ!!爆芽粉塵(マイロード・イルプット)


    その一瞬に健太が急接近、勢いそのままに能力を込めた拳を繰り出した。


    が、辛うじて久弥もこれに反応。能力により産み出した白色の粉塵を前方に展開、集合させる事で盾を作り出す。



    健太「……っ!!」


    2人の視線がぶつかり合った。


    久弥「ふっ……残念。どんな能力を持った拳だとしても触れなければ……」


    健太「……残念なのはあんただよ」




    凌ぎ切った事を確信し笑みを見せる久弥に、健太も意地の悪い笑みで返した。



    久弥「……!?まさか……!!」



    その笑みに良からぬものを感じ、久弥が振り返った……その時にはもう遅い。



    玄氏「闇に刺す光(ライトアンドダークネス)セカンド……『こいしちゃんの笑顔(シャイニング・レイ)』!!!!!」



    玄氏の光輝く拳が、無防備な久弥の腹を狙っていた。



    久弥「!!!点火(イグニ)……」



    フラ男「『運命を切り裂く者(フラグ・クリーヴァー)』!!土壇場での緊急回避なんて、テンプレフラグ過ぎて面白くねえんだよ」



    久弥「上手く爆発しない……!?クソ……ッ!!!」



    玄氏の光が、久弥の胴体を貫かん勢いで撃ち込まれた。
  32. 32 : : 2015/08/03(月) 00:15:42




    玄氏の攻撃で粉塵が舞い上がり、視界一面を真白に覆う。



    しかし、フラ男達の視線は一点に集中していた。



    玄氏「やったか……?」


    フラ男「バカ!それはフラグ────」



    フラ男が言い終える前に、空気中の粉塵が一斉に爆ぜた。



    久弥「惜しかったね。トドメが光でなければ僕はダメージを受けていたかもしれないね。僕の粉末は万能だ。だから、あの程度の収束光なら屈折させてずらすことができた」



    無傷の久弥に対して、フラ男達は健太の能力で軽減したものの後方に吹き飛ばされていた。



    久弥「ふふふ。君達は僕に勝てない。ことの本質を理解できない君達には到底理解できないことだろうがね」


    「それはどうかな?」



    その時だった。声と共に背後から玄氏が突如として現れる。



    玄氏「《こいしちゃんの笑顔》!!」



    背後から突如として現れた玄氏の攻撃を防ごうと、必死に粉末を集めようとする久弥だったが、もう既に遅かった。光の速度に粉末は追いつけない。


    玄氏の攻撃が久弥の四肢を貫いた。


    久弥「き、貴様ごときになぜ僕が……」



    玄氏「俺の能力は光一辺倒じゃない。もう一つのセカンドステージ《無意識の闇(ディパーシヴ・ダークネス)》でお前の意識の外に消えて奇襲をかけた。それだけだ」



    地に伏す、無様な久弥に対して玄氏は吐き捨てるように告げると、フラ男達の元にへと向かった。



  33. 33 : : 2015/08/04(火) 13:56:55


    フラ男「おう、お疲れー」


    龍音「台詞の長さと戦闘時間が明らかに噛み合ってなかったな」


    燕「能力名すら回収出来てませんでしたね。ただの我○羅の砂ですよあれ」


    健太「……」


    帰ってきた玄氏に対して思い思いの反応を返すフラ男達。が……


    明らかに不本意な顔をする男が一人いた。


    玄氏「?どうしたよ健太、変な顔して」


    健太「……セカンドステージ2つとか有りなの?ねえ?そういうの有り系なの???」


    玄氏「え、いやまあ……うん、出来ちまったもんはしょうがねえと言うか……な?」


    健太「な?じゃねーよ!てめえそれでセカンドステージ出し損ねた俺の気持ち分かんのか!?あぁ!?終いにゃ猿になんぞ!?ウキーwwwwwwwwww」


    玄氏「ぅわキチガイこゎぃ……」


    彼方へと吹き飛んだ健太の頭のネジが締め直されるのには、かなりの時間を要した。
  34. 34 : : 2015/08/04(火) 14:21:44




    気を取り直して5人はさらに地下へと下っていく。すると、巨大な研究施設のような空間に出る。



    あたりには大量の機械や、謎の液体の詰まったタンクが置かれており、漫画やアニメに出てくる悪役の研究所といった様相だ。



    その中で5人は異質な光景を目にすることとなる。



    手足を縛られ、目すら塞がれた少年が椅子に座らされていた。さらにそれを甲斐甲斐しく介護するように見せかけて、強引に流動食に近いような食事を口にねじ込み、強制的に嚥下させる少女。



    健太「これはさっきの俺よりクレイジーでサイコだぜ……クレイジーサイコメンヘラとか恐怖しかないぞ」



    健太同様その場の5人はあまりに異常な光景に息を呑んだ。



  35. 35 : : 2015/08/04(火) 14:58:52



    ??「……あれ、もう来ちゃったんですか?……遊楽君の食事時間くらいは稼げると思ってたのに、あの愚図案外弱かったんですね」


    フラ男「その言葉……あんたが姫宮 瑠奈で間違いないな?」


    瑠奈「ええ、間違いありませんよ。私が瑠奈です。それよりも……何の用ですか?見ての通り私たち、イチャラブ中なんですけど。邪魔しないで貰えます?」


    健太「イチャラブって……明らかに時代錯誤な拷問風景じゃねえか」


    玄氏「イチャラブって……THD微塵も出てないんですがそれは」


    瑠奈「っふふ……」


    健太や玄氏の言葉に、瑠奈は不敵な笑みと共に答えた。


    瑠奈「彼は鈍いタイプなんですよ、今はまだ早いんです。……時間が経てばきっと、私たちは世界一幸せなカップルになれるんです。世界一幸福で、世界一お互いの事を理解っていて。世界一愛し合う、世界一素敵な……」


    フラ男「……っ!!これは…やべえな」


    瑠奈「え〜?あ、フラ男さんもしかして私たちのラブラブ♡な様子に当てられちゃいました?それは可哀想に☆でもごめんなさい、私たちラブラブ過ぎて抑えようにも溢れ出ちゃうんですよぉ>_<」


    龍音「……関わり合いたくねえタイプだな……」


    瑠奈「酷いですねえ、まるで人を異常者みたいに!私は至って正常ですよ?だってそもそもヒトというものは愛し合って子を成して繁栄していくものですから!だから私は至って正常ですよ?それに見てくださいよ、彼もとっても幸せそうな顔してるでしょう?あ、目隠ししてるから表情見難いですか?でもよく見れば分かりますよ!ほら涎垂らしてこんなに嬉しそうな顔してる!だから私は至って正常ですよ?今もこうしてハッキリと受け答えしてます。だから私は正常ですよ?私は正常です。立ち入り禁止の旧校舎に入っちゃうような茶目っ気は溢れてますけど、それも好奇心の範疇ですもん。ただから私は正常ですよ?だから私は正常ですよ至って正常私は正常至って私は正常正常正常です!」



    燕「ひぃ……」


    その異様な様子に、暫し言葉を発するのも憚られる程であった。
  36. 36 : : 2015/08/04(火) 15:12:40



    なおも瑠奈は雄弁に語り続ける。まるで歌うように恍惚とした表情で、ただ言葉を紡ぎ続ける。



    その内容は聞くに堪えない、酷く悪趣味なものであったが、誰一人としてそれを止めることはできなかった。



    瑠奈「わかりましたか?私は遊楽君とこれから永遠の時間を生きるんです。そのためにここで実験を重ねてきた。お母さんを救えなかった今となっては、彼だけが私の生きる意味ですから」



    フラ男「なにをわけのわからねぇことを言ってるのかは知らないけどな。とっととそいつを解放して、俺たちを過去へと返してもらうぜ!」



    この時、誰もが確信していた。彼女がフラ男達を未来へ呼び寄せた犯人だと。



    それは意図せぬ事態かもしれない。しかし、これもまた運命(フラグ)だ。



    その運命を切り開き、抗い続けたフラ男達にとってはそれはもう日常茶飯事でしかない。


    ようやく、元の世界へと戻れる。最後の戦いを前にして、フラ男は握りしめた拳に一層力を篭めた。



  37. 37 : : 2015/08/04(火) 15:43:41



    フラ男「『授かりし翼(レッドブル)』!!勝利の運命(フラグ)を立て、敗北の運命(フラグ)を折り潰す!!!」


    フラ男が翼を展開、能力を発動する。


    が、彼は瞬時に違和感に気付いた。


    フラ男「……?」


    玄氏「どうしたフラ男、難しい顔して」


    フラ男「……おかしい。フラグを操作出来てる感覚がねえ。……いや違う、これは……!!まさか、『改変したそばからフラグを再改変されている』!?」


    瑠奈「はは、気付いちゃいました?」


    笑みをこぼす瑠奈を睨み付ける。


    良く見るとその両腕からは1本ずつ管のようなものが伸び、背後の巨大な機械へと繋がれていた。


    瑠奈「時間を固定する事は即ち、『その後に起こるはずだった運命(フラグ)を全て無かった事にする』事を意味するんです。だからこそ運命操作は私の最大の課題であり、そして最高の得意技になりました」


    瑠奈の言葉に合わせて巨大な機械が蠢き、轟音と共に空気を震わせる。


    瑠奈「『終戦宣言(ジ・エンドオブフォールト)』。……この学園の序列1位にして最強の男の能力です。彼自身は今海外に出ているので協力は仰げませんでしたが、その能力は無理やり再現して利用させて頂きました」


    フラ男「能力のコピーだぁ?ふざけやがって……!!」


    龍音「おいフラ男、もしかしないでもこれヤバいやつか!?」


    フラ男「こいつの能力『終戦宣言(ジ・エンドオブフォールト)』、これは恐らく『全ての運命(フラグ)を強制的に消し去りやがる』能力だ」


    健太「つまり、お前の『切り裂く者(クリーヴァー)』の上位互換って事か?」


    フラ男「規模が違う。こいつは今現在から未来へ向けて無限に連なるフラグを全て閉じてやがる……ここから先は運命が見えねえ、まさに出た所勝負の戦いになる」


    玄氏「……チート野郎……!!!」


    瑠奈「あはは、か弱い女性に5人がかりな人達がそれ言います?」
  38. 38 : : 2015/08/04(火) 15:59:27



    フラ男「うるせぇよバケモンが」


    フラグの再改変それはつまりフラ男の力を無効化するに等しい能力を持っていた。フラグを消すということはそういう事だ。



    しかし、フラグ管理を己の能力として非リアという称号を得た瞬間から過ごした彼にとってその能力は小さな違和感があった。




    《授かりし翼》や《運命を切り開く者》が発動しないわけではない。フラグも建たないわけではない。



    フラグを消し去るとフラ男は言ったが、そう表現する他ないだけで、実際はその言葉との乖離性や違和感をぬぐいきれずにいた。



    フラ男「俺が絶対にあの能力を超える。だから時間稼ぎを頼むぞ……!」



    玄氏「ああ。か弱い(笑)にどれだけ持つかはわからないが、やれる事はやってやるさ」


    フラ男に玄氏が答えると、それに呼応するように全員が頷く。




    瑠奈「天才美少女の私にはみなさんはどうあがいても勝てません!」



    彼女の言葉を皮切りに双方が飛び出した。



  39. 39 : : 2015/08/04(火) 16:25:47



    瑠奈「『花蝶風月(フライ・ハイ・バタフライ)』!!」


    瑠奈の身体から溢れ出すようにして無数の光蝶が現れる。その数、もはや視界を埋め尽くすほど。


    龍音「なんだこいつら……っつ!?」


    突っ込んで行った龍音の、右肩を蝶が掠めた。

    するとまるで鋭利な刃物で切り裂かれたように、彼の右肩から鮮血が噴き出した。


    健太「触れたら裂傷!?」


    玄氏「この密度じゃあ、ステルスは意味ねえな。…とはいえ光で掻っ消すにも溜めが要る……」


    龍音「おいクソめいめい!このうぜえ虫ども何分ありゃ消せる!」


    玄氏「5分……いや、3分は要る!!」


    龍音「3分……!!ちっ、絶対守れよ……」


    瑠奈「あーあー、戦法決めてらっしゃる所に悪いですが……まだ終わりません☆」


    瑠奈が右腕を突き出し、まるで操り人形を繰るかのような手捌きで指を奇っ怪に動かした。


    すると。


    玄氏「!!?」


    龍音「おい玄氏!?」


    蝶が皆、まるで訓練された軍隊のように統一された動きで、ユラユラと揺れた。


    それを見た玄氏が突如膝をつき、頭を抱える。


    瑠奈「『寝熊舞踏(チーズ・ダンス)』。見た者の意識を揺らし気絶を誘う踊りです。……まあ規則性がどうとかで1人にしか効かないのが玉に瑕ですけど、その分その1人に対する効果は絶大ですよ」


    玄氏「っぐ……!!頭が……」


    龍音「玄氏!……仕方ねえ、『波及する恐怖(ドラミング)』!!」


    龍音が激しく己の胸を連打する。


    玄氏「!!!」


    龍音「手荒だが気付けだ!!寝たら死ぬぞ、怖えなら起きてろ!!!」


    玄氏「へへ、サンキュー……な…!」






    瑠奈「うわ、キモッ。良い歳した男がドラミングはキモいですねー」


    言い、瑠奈は両手を胸の前に突き出す。


    龍音「まだ何かありやがんのか……!!?」
  40. 40 : : 2015/08/04(火) 16:40:23


    瑠奈「……『爆芽粉塵(マイロード・イルプット)』」


    玄氏「!?それはあいつの……!?」


    蝶が羽ばたき、大量の鱗粉を散らす。『白い』鱗粉を。


    瑠奈「任意で爆発する粉塵です。あいつはしくじったらしいですが……私はきっちり爆破しますよ?」


    龍音「玄氏!動け……ねえよなクソ!!!」


    玄氏を乱雑に抱え、蝶と鱗粉を躱す龍音。


    だがその密度は異常に高く、減っていく体力も合わさって回避が長続きしないのは明白だった。


    龍音「フラ男……!は何とか避けてやがるか。……そういや…………」


    「おい!!!龍音さっさとこっちに来い!!!」


    叫び声。その主は……


    龍音「!健太!!」


    健太「悪い!翼守んのと溜めで動けなかった!!……ってそれは今どうでも良いから、さっさと来い!!!」


    龍音「はぁ!?」


    言われるがままに龍音は健太の元へと走り抜けた。


    龍音「おいどうすんだ!?退いてもジリ貧になってやられるだけ……」


    健太「そう慌てんな!……見せてやるよ、溜めに溜めた俺のセカンドステージ!!!」


    健太は蝶や鱗粉と龍音たちの間に立つと、声を張り上げて叫んだ。


    健太「最低限度(フォール・ディア・ミニマム)セカンドステージ、『蓬莱肉壁(もこたんボディ)』!!!!!」
  41. 41 : : 2015/08/04(火) 16:52:07



    健太を中心として広がる空間。その空間には入った途端。誰もが圧倒的違和感を感じただろう。



    すべての運動エネルギー、位置エネルギー、あらゆる力が停滞する世界。



    その空間を犯して健太を傷つける事は何人たりとも出来ない。まさしく不死身の体現とも言える空間だった。



    それは鱗粉や蝶にとっても例外ではない。そのすべてが力を、速度を失い地面に虚しく落ちる。




    健太「殺れるもんなら殺ってみな!!」



    瑠奈「小賢しいですよ!!天才美少女の攻撃を防ぐなんて許せない!チャンスフラグも回収!おわり!さあ私の蝶圧倒的質量で潰してあげなさい!」



    瑠奈の言葉とともにさらに大量の蝶が健太達を襲った。





  42. 42 : : 2015/08/04(火) 17:03:30



    現れては落ち、落ちては現れる蝶の群れ。


    健太「……んー、確かにこのままだとジリ貧だな」


    龍音「あぁ゛!?だから言っただろうが……」


    健太「まあ待てよ。……俺のセカンドステージはまだ終わってねえ」


    健太「……俺の能力の範囲は、俺を中心とした同心円状に展開されるんだ。つまり俺が動けば効果範囲も動く」


    龍音「……まさか」


    健太「そのまさかだ。……俺があの気持ち悪い蝶どもに突っ込む。そうすりゃ効果があいつにも及び、あいつは完全に無力化されて倒れこむ。その隙にお前らでトドメを刺せ」


    龍音「なっ……正気かよ!?あの蝶どもは落ちてるだけで能力を失ったわけじゃねえ、触れればズタズタに裂かれるのは変わらねえんだぞ!!?……しかも!玄氏が倒れちまってる今、攻撃担当がいねえ!俺じゃ明らかな火力不足だ!!!」


    健太「分かってる。……大丈夫だ、死にゃしねえよ」


    玄氏「……俺もだ、やれる。……丁度『3分』だ」


    龍音「……!!!お前ら……」


    龍音「…悪かったな、変な事言って。……やってやろうじゃねえか!俺らの力で、あの野郎をぶっ飛ばしてやる!!」
  43. 43 : : 2015/08/04(火) 17:38:40







    健太「いくぞ!」



    健太が合図とともに走り出す彼らに向けて襲いかかるすべての蝶を床に落としながら進む。



    途中龍音のドラミングによる援護で瑠奈の動きを止める事に何度か成功した。



    その度地に落ちる蝶が、健太の体をかすめ切り傷が増える。血が滲み、身体中に走る痛みに顔を歪めながらも、彼は足を止めなかった。



    そしてついに瑠奈の目の前に到達する。


    健太「チェックメイトだ。やれ!玄氏!」



    健太の能力の反動で瑠奈は力が抜けたようにへたり込む。


    玄氏「いくぜ!出力60%……《こいしちゃんの笑顔》!!」




    玄氏の叫びとともに、今までにないほど巨大な球体が現れる。


    そしてそのすべてが蝶を蹴散らしながら、瑠奈に襲いかかった。



    地面が抉れ、轟音とともに光の奔流があたりのを飲み込んだ。



    光は収まったが、土煙が上がりあたりが見えない。



    こちらに歩いてくるひとつの影を見つけ安堵する。



    燕「健太さん……!」



    龍音「いや!まて違う!まだあいつ生きてやがった!」



    その影の正体は瑠奈だった。



    そして煙の中から姿を現した瑠奈は、血にまみれた健太を床に放り投げる。



    瑠奈「残念でした〜!1人無駄死にですね!」



    フラ男「バカ言え。そいつは死んでねえよ。そいつの運命(フラグ)はまだ消えてない。お前の能力でも人の運命は消せねぇよ」


    瑠奈「そうだったっけ。残念」



    瑠奈は少し驚いたような顔をして気絶し、地面に倒れている健太をみてわざとらしく笑った。



    健太が倒れた以上火力も耐久力も瑠奈を倒すには足りない。


    このままでは一瞬で終わる。その場の誰もがそのことを理解していた。



    しかし、そのことを最も理解し、自分の無力さを嘆いていたのは燕だろう。



    彼はここまで何もできていない。その事実が彼を苛んだ。



    ただ自分も戦いたい。自分を救ってくれたフラ男達に報いるために。



    この一瞬だけでもいい。瑠奈を倒すだけの力を。そう願った。



    父や母が魔掃天に殺されたのも自分のの無力さ故だ。



    そんなことはずっと昔からわかっていた。後悔をいくら重ねても、自身に力は戻らなかった。



    だが、もう二度と同じ後悔を繰り返したくはない。もう二度と自分の目の前で誰かの未来を奪わせたりはしたくない。



    そんな想いが込み上げてくる。



    たとえ世界中の女性が自分を拒絶したとしても、自分1人でも戦わなければ守ることはできないのだ。



    ならば答えはひとつだった。




    燕「立ち上がれ……折れるな……すべてを貫け……俺の剣。そして俺の能力(ちから)




    燕「こい!!自家発電(セルフ・ライトニング)!!!」



    天井に覆われた空に掌を掲げて燕は叫ぶ。それに呼応するかのように雷が天井を突き破り彼の掌に吸い込まれた。



  44. 44 : : 2015/08/04(火) 18:18:44



    かつて一度は折れた剣。



    魔掃天(マジックリン)によって砕かれ、冒され、使い物にならなくなってしまった剣。



    未だに収まる鞘を持たぬ剣。



    ……だがしかし。






    それは今確かに、『誰かを守れる剣』になったのだ。









  45. 45 : : 2015/08/04(火) 19:19:56




    手にしっくりと馴染む感覚。まるでもう既に何年何十年と使っているかのようだった。



    彼にとって剣は体の一部であり、彼自身の具象化に他ならない。



    燕「フラ男さん今なら俺も戦えます。やりましょう」


    フラ男「いいのか?鞘ないと能力使えないんじゃないのか?」



    心配そうな目を向けるフラ男に、燕はただ力強く頷く。



    フラ男「俺もやっとあの能力のカラクリが見えたとこだ。健太をたたき起こして形勢逆転といこうじゃないか」



    フラ男は不敵に笑うと、余裕の表情をしている瑠奈を睨みつけた。




  46. 46 : : 2015/08/04(火) 20:29:14



    フラ男「良いかお前ら、よく聞け。……時間がねえから詳しくは言えねえが、俺は絶対あいつの能力をぶち破る」


    フラ男「だがそれには一つ問題がある。あいつが『終戦宣言』に意識を割けねえ
    ほどに攻め立てるか、ダメージを与えるかする必要があるって事だ」


    健太「そこを俺らにやれって事ね。……良いぜ、やってやらぁ」


    龍音「玄氏、溜めは」


    玄氏「フルチャージ。いつでもめいめいパーティ」


    燕「皆さんはあいつを止めておいてさえ頂ければ、それで十分です。一撃まともに入れる隙さえあれば、何ならフラ男さんが手を下すまでもなくあいつを再起不能にしてみせます」


    フラ男「おーおー、頼もしくなりやがって。……よし!んじゃ行くぞっ!!!」


    フラ男の掛け声と共に、5人は一斉に駆け出した。







    瑠奈「『休息再生(レストアゲイン)』……大きな傷は大体治せましたかね。彼らも纏めて来るようですし……」




    瑠奈「これで決めます」

  47. 47 : : 2015/08/04(火) 21:45:59



    瑠奈の言葉と同時に燕は弾けるように走り出した。



    瑠奈は今までの数倍近い蝶を展開し、燕を襲わせるが、《自家発電》によって雷の力を纏った燕には蝶は届かずに燃え尽きる。



    瑠奈「こにゃくですね!これはどうですか!」



    上空に蝶を飛ばせて鱗粉を舞わせて爆発させようとするが、健太が割って入る。



    健太「それを言うなら小癪だろバカ。その攻撃止めさせてもらうぜ《蓬莱肉壁》!!」



    健太によって爆発は収束し効力を無くす。蝶による攻撃を完全に封殺された瑠奈は近づいてくる燕に焦りの表情を見せ始める。


    瑠奈「な、ならこれで────」


    龍音「もう大人しくしてろよ《波及する恐怖》!!」


    瑠奈が言い終えるより前に動いたのは龍音だった。守るものを失った彼女には直接的に《絶対恐怖》の効果は現れた。



    彼女も力の影響で耐性があるのか、片膝をつくに止まったが、完全に動きを止めてしまった。



    そして燕は彼女に剣を突きつけて言った。



    「今度こそ詰み(チェックメイト)です」




  48. 48 : : 2015/08/04(火) 22:32:00



    瑠奈「……ふふ」


    瑠奈「ふふふふふ、あははははは!」


    剣を突きつけられた瑠奈は、突然狂ったように笑い始めた。


    燕「……何がおかしいんですか」


    瑠奈「あーまいんですよぉ貴方は……剣を突きつけたから何です?説得すれば私が折れるとでも?」


    燕「何を……!!」


    瑠奈「所詮、貴方の意思()は折れたまま♡」




    健太「!?……不味いッ!!退け、燕ぇぇぇ!!!!!」


    背筋を走った悪寒に、健太が声を張り上げて叫んだ。


    燕「え……」


    瑠奈「おっそい……『浅刃等腐(スーン・デス)』」


    が、時は既に遅く……


    『瑠奈の手が、燕の腹部に触れた』。
  49. 49 : : 2015/08/04(火) 22:41:33


    燕「ッ!!?!?」


    湧き上がる違和感。噴き出す汗。逆立つ神経。


    事態を把握しようと目を見開いた燕を襲ったのは、酷い痛みだった。


    燕「あっ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?!!?」


    瑠奈「これが私本来の能力……『この手で触れた古傷を開く』力です。……残念でしたねえ。貴方みたいに傷が多い人には、相性サイアクなんですよこれ」


    瑠奈は嬉々として燕の傷跡に触れていく。その度に彼の口から絶叫が放たれた。


    龍音「燕ぇぇぇ!!!!!っく、『波及する(ドラミン)』……!!!」


    瑠奈「爆芽粉塵(マイロード・イルプット)


    龍音「!!?ぐああああっ!!!」


    瑠奈の合図と共に、地上に落ちて溜まっていた粉塵が次々と爆発していく。


    龍音や健太、玄氏はことごとく吹き飛ばされてしまった。


    瑠奈「さて……これで助けは来ませんよぉ?……最後に、開けちゃいましょうか。特大の……『心の古傷』ゥ!!!」


    瑠奈はその顔に狂気の笑みを張り付け、心底嬉しそうに言った。
  50. 50 : : 2015/08/04(火) 23:09:47




    瑠奈「どうですか?この能力は。これを使っている間は他の能力は使えませんが、一度発動すると離すまで延々と自動で効果を発揮してくれる優れものなんですよ」



    瑠奈の手が燕を撫でる。まるで心の中を犯し、嬲られ、ているような感覚に燕は逃れようと後ずさる。


    しかしその手は決して離れない。そしてある時、彼女の手が止まる。



    その瞬間父や母の死の光景が克明に脳内を駆け巡る。幾度となくリフレインされる光景に燕は言葉を失った。



    燕「あ……ああ……」


    フラ男「燕ぇぇぇ!!」



    フラ男の声も届くことはなく、燕はただその瞳から涙を流しつづけている。


    だがそれだけではなかった。燕は瑠奈の手首をしっかりと掴むと、涙を流したまま彼女を睨みつける。


    燕「……俺がいつ父さんや母さんの死を乗り越えたといいましたか?克服したといいましたか?そんなのできるはずもない。2人は俺のために死んだ。これは俺が一生背負うべき咎です。たとえ折れた剣だろうと俺は守るって決めたんです。これが俺が父さんや母さんに贖う唯一の方法だから。何度でも古傷を抉ればいい。俺はもうこんな事で諦めたりはしない!!!」



    先ほどの弱々しい手つきではない。今度はがっしりと両手で瑠奈の手を掴んではなさない。



    瑠奈「は、はなして!!」


    暴れる瑠奈の手を必死に握り締めて離すことはなかった。


    もう逃げないと、この膝を折って立ち止まることをしないと決意したのだから。



    燕「フラ男さん今です!!」


    フラ男「おう!!さあくれてやる最大の負けフラグだ。燕ぶっとばせ!《運命を切り開く者》!!」



    瑠奈は未だ燕に触れ続け心の傷を抉り続けている。そのせいで《終戦宣言》は発動できない。


    瑠奈「あ、ああ。ま、まって!待ってください!やめて!」


    燕「うるさいなぁ。父さんと母さんの記憶を弄んだ罪その身で償え!!!」



    燕はその手を離さぬまま瑠奈の鳩尾を蹴り抜いた。



  51. 51 : : 2015/08/04(火) 23:31:14
























    瑠奈「……」


    燕「これで良し、と……」


    蹴りで瑠奈を沈静化させた燕はすぐさまその剣で瑠奈と機械を繋ぐパイプを断ち切り、彼女を無力化した。


    フラ男「やるじゃねえか、燕。カッコよかったぜ」


    燕「いえ……フラ男さんのお陰です」


    健太「2人とも凄かったっつーの!」


    龍音「え、つーかお前らなんでそんな元気なんだよ……」


    玄氏「死ぬめいめい えーきさまが見えるめいめい」


    5人は明るく笑い、各々の気持ちを語り合っていく。







    全て終わったのだ。

    その開放感が彼らを笑顔にしていた。
  52. 52 : : 2015/08/05(水) 00:08:14



    その想いを共有し、誰もが終焉を喜んだ。




    彼が現れるまでは。




    晃「おい、これはどういうことだ。フラ男お前らが何故ここにいる」



    フラ男「あ、晃……お前こそなんで生きて……!」


    そこには死んだはずの晃の姿があった。しかもここは未来。彼が存在するはずなどないのだ。



    晃「俺は芥夏に殺された。そのせいで芥夏は少年院送りだ。だが、その未来で彼女には子供ができた。それがそこに寝てる瑠奈だ。彼女の母は俺を殺した罪による殺人犯の誹りに耐えられず自殺した。だから瑠奈はその罪を消すために俺をここに呼び寄せたんだとさ」


    つまり死ぬより以前の晃が過去から消えれば、そもそも芥夏と晃の交際の事実は消える。さらに言えば、死ぬこともない。そう考えたのだろう。



    だが、晃の話によれば事実は違ったという。彼を過去から切り離したところで、その時点で晃のいない未来つまり新たなる世界線が誕生し、そこで世界は分岐することとなる。


    だからこの未来が晃が死んだ未来であることは変わらない。 おそらく彼が死んだにも関わらず、ここにいることによる世界の歪みがフラ男たちを未来に連れてきたのだろうと彼は話した。


    晃「今度はおまえらがボロボロで、瑠奈が倒れている理由を聞こうか?」


    フラ男「そんなの決まってるだろ。あいつが遊楽を誘拐し監禁してるから解放しに来た。まあ俺たちが過去へ戻る為のついでだけどな」



    フラ男が当然のように言った言葉。


    だが、その言葉に晃の様子は一変した。



    晃「お前らはまだ彼女から奪おうというのか……この世界は彼女から母を。父をそして、彼女の人生を奪った。唯一縋れる存在である遊楽すら奪うというのか!!」



    激昂する晃にその場の全員が絶句した。彼の理論はあまりにも、無茶苦茶だ。瑠奈がどうであろうと、遊楽の自由を奪う権利などどこにも存在しない。



    晃「俺は決めたんだ。彼女が望むのならたとえ俺にその愛が向かなくとも彼女を支えようと。芥夏にしてやれなかったことを彼女にしてやろうと。ただ彼女に尽くす真実の愛を求めると」



    しかし、晃の言葉を龍音は鼻で笑った。



    龍音「自分の罪の意識を他人になすりつけてるだけだろ。しかもなんだそのブーメラン頭にぶっ刺したみたいな理論は。とっととブーメランの刺さりすぎで失血死しろよ」


    彼の言い方は至極酷いものではあったが、正論だった。晃のいうことには一分の正当性すら見いだすことはその場の誰もができなかった。



    晃「そうか……なら俺もお前らと戦うまでだ……」


    晃は俯き加減になりながら、小さく呟くと燕のように剣を取り出す。


    そして瑠奈を担ぐとフラ男達から距離をとった。


    晃「お前達ならわかってくれると思ったんだがな」


    健太「お前変わったな。そんなリア充のなりそこないだとは思わなかった」


    晃「なんとでも言うといいさ。俺はただ愛に生きる」



    そう言って晃は瑠奈を揺すり起こした。



    瑠奈「うっ……晃!助けに来てくれたの?大好き!」


    瑠奈に抱きつかれてデレデレと鼻の下を伸ばす晃の様子に一同呆れる以外の事を思いつかなかった。


    玄氏「俺たちこの茶番に付き合わないとだめなの?」


    燕「俺も帰りたいです」



    しかし、彼らの気の抜けた会話とは裏腹に瑠奈と晃は何かをしているように見えた。



    フラ男「やべぇな。また面倒な事になるぞ……!」



    フラ男は慌てて瑠奈や晃を倒す為に走りだす。


    しかし時既に遅かった。



    途端に揺れ始める地面にフラ男はその足を止める。



    瑠奈「残念でしたね!もう既に四節の交響曲(フォース・プレイ・シンフォニア)は始まった。あなた達はもうおしまい!」


    龍音「なんだそれは。また愛(笑)の話か?」


    からかうような口調で告げると、瑠奈はそれを嘲笑を含んだ笑みで返す。


    瑠奈「女は本来男の剣を受け入れる鞘を3本持っています。顕現できるのは天才美少女の私くらいでしょうね。それを利用した儀式が《四節の交響曲》もうあなた達はおわり」


    揺れは収まるところを知らず、遊楽や瑠奈、晃の足元に魔法陣のようなものが浮かび始める。



    瑠奈「粉間なんて使うのは嫌だけど仕方ないですよね」




    瑠奈「さあ!闇の炎に抱かれてヒヨコ!!」


  53. 53 : : 2015/08/05(水) 00:20:39



    (そら)に浮かび上がった魔法陣は重なり合い、連鎖的に光を放ちながら拡大していく。


    紅色の魔法陣の中心には粉間。


    蒼色の魔法陣の中心には遊楽。


    黄色の魔法陣の中心には晃。


    碧色の魔法陣の中心には瑠奈。


    4つの魔法陣が重なり合い、新たに純白の光を放つ魔法陣が形成されていく。


    それは空気を揺らすほどのエネルギーを放ちながら巨大化し、その紋様は複雑化していく。


    瑠奈「さあ……私の元へ下りてきて」


    瑠奈「古の世より、永らく非リアの無念と魂を喰らい続けその力を増してきた伝説の竜……!!!」









    瑠奈『喪竜、ガルマラシャ!!!!!』







  54. 54 : : 2015/08/05(水) 00:41:00





    魔法陣から徐々に姿をあらわすその巨体は白い竜鱗が魔法陣の光に反射してギラギラと光り、圧倒的な存在感を放っている。



    しかしその白い竜という様相とは裏腹に口元からはどす黒い炎のようなものが漏れ出している。



    その場にいる。それだけで萎縮してしまうほどに強大な力を感じさせるそれは、ただ命令されるのを待つかの様にじっとして動かない。



    瑠奈「くふふふ。これで終わり。私の勝ち。遊楽くんも全部私のもの!!」


    純白の竜のそんな様子に瑠奈は歓喜の声をあげた。





  55. 55 : : 2015/08/05(水) 14:09:05

    一方、その様子に戦慄する者たちもいた。



    フラ男「……なんだよ、ありゃあ……」


    健太「THDが、無え。仮にも粉間みてえなリア充がいるってのに…。…喰らってやがるんだ、非リアの無念の集合体でありながら……その怨念のみで、羨望のみでリア充のオーラを喰らってやがるんだ」


    非リアの代表とまで呼ばれる彼らだからこそ、分かったのだ。

    ガルマラシャが発する、その余りにも濃すぎる非リアのオーラに。そしてリア充への羨望に。


    玄氏「非リアでありながらTHDを喰い潰すほどの力……化け物じみてる……」


    龍音「……でも妙だな。あの野郎動きやがらねえ」


    燕「命令を待ってる、のか……?」





    そんな彼らには目もくれずに、瑠奈は恍惚とした表情でガルマラシャを見つめ続けている。
  56. 56 : : 2015/08/05(水) 14:48:57



    晃「見たかフラ男!これが愛の力だ!!おまえ達にこれが超えられるか?」


    そんな中晃は瑠奈の横で大声で高笑いする。勝利を確信し、自らの正当性を証明したとばかりに声を上げ続けた。



    彼の愛は彼にとって真実であり不変なのだろう。



    これほどに虚しい愛はない。そんな事を言ったところで彼はそれを解しようとはしないだろう。



    そんな時だった恍惚としていた瑠奈の表情が苛立ちに歪む。



    瑠奈「うるさいなぁ……邪魔しないで!!!」


    瑠奈は突如激昂し、晃の背中を蹴った。


    不意を突かれて体勢を崩した晃は前のめりに倒れこむ。



    晃「る、瑠奈!何を……!」


    瑠奈「ちょっと優しくしたら、何が愛よ。気持ち悪い。とっとと死んで」



    瑠奈が冷徹に告げた瞬間だった。



    ガルマラシャがゆったりと動き出す。まるで彼女の殺意に反応したかのように晃をその鋭い瞳が追いかける。



    晃「お、落ち着けよ瑠奈。俺はいつもおまえのためになんでもしたじゃないか」



    瑠奈「うるさい。ガルマラシャ早くそのゴミ食べちゃって」



    瑠奈の言葉にガルマラシャはその緩慢な動きを、突如として速いものに変える。



    晃「や、やめろ!やめろおおおおお!とろろおおおおおおおお」




    逃げ惑う晃をガルマラシャは素早い動きですぐに捉える。すると、一気に彼の身体を頭から丸呑みにした。





  57. 58 : : 2015/08/05(水) 15:21:12



    玄氏「なっ……あの野郎、ハゲを喰いやがった……!?」


    龍音「所詮は真実の愛(笑)だったって事だろ。……残念だ、これならせめてただの死別の方が良かったよ」


    玄氏や龍音は少しだね悲しそうに顔を伏せながら、言った。


    燕「!!見てください、あいつ……!!」


    だがしかし、ガルマラシャは彼らに想いを馳せる時間すら与えない。


    先ほどまでの静止が嘘だったかのように暴れまわり、その巨体で施設を揺らしながらガルマラシャは巨大な口を再び開いた。


    そして、未だ気絶したままの久弥の身体を飲み込んだ。


    健太「あいつまで……!!あのイカれ野郎共、自分達以外は全部消しちまうつもりか!?」


    瑠奈「あは。心配しなくてもさっさと殺してあげますから。……もう一頑張りですよ、ガルマラシャ♡」


    瑠奈のわざとらしい声に反応し、ガルマラシャは咆哮をあげる。

    そして気の所為か興奮したように蒸気をあげながら、大口を開いてフラ男達へと迫り来る。


    燕「やばいっ!!せ、『自家発電(セルフライトニング)』!!!」


    健太「『蓬莱肉壁(もこたんボディ)』っ!!」


    龍音「一方収束、『波及する恐怖(ドラミング)』!!!」


    玄氏「『こいしちゃんの笑顔(シャイニング・レイ)』ッ!!!」


    フラ男「『授かりし翼(レッドブル)』!!!」


    一斉に能力で迎撃する。


    が……


    健太「!?効いてねえ!!?」


    ガルマラシャは一切意に介さず、突っ込んでくる。


    燕「攻撃が効いていない!?……いや違う、というよりもこの感覚は……!!!」


    フラ男「ああ、運命(フラグ)だ!……信じられねえがこいつ、運命を捻じ曲げてやがる!!未来に決められた法則を捻じ曲げ、強引に自らの望む結果を引き寄せて……!!!」


    玄氏「なんだよそれ!?運命ってそもそも不変じゃねえのかよ!!!?」


    フラ男「巫山戯やがってぇぇぇ!!!!!!!!!」


    フラ男が全力で能力を発揮する。


    運命を切り開く者(フラグ・マネジメント)』で勝利フラグを立て、『運命を切り裂く者(フラグ・クリーヴァー)』で敗北フラグをへし折り、『授かりし翼(レッドブル)』の光翼でそれらの能力を最大限に出力する。


    だがしかし、ガルマラシャはそれら一切のフラグ操作を強引に捻じ曲げ、ただ自らの『勝利』という未来へと無理やりに進んでくる。




    フラ男「クソったれ、クソったれ、クソったれぇ……!!!!!」






    フラ男「クソったれがぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」


  58. 59 : : 2015/08/05(水) 15:25:01









    「おいおい。お前ってそんなに諦め良かったっけか?」









  59. 60 : : 2015/08/05(水) 21:16:23







    穴の空いた天井のあたりから聞こえる声にフラ男達が振り返ると、そこには1人の男の姿があった。



    正確には逆光でその人間の姿をはっきりと認識できたわけではない。だが、声や




    身長。そしてなによりそのガタイの良さから見て、どう考えても男だ。



    フラ男「だ、だれだ!」


    「俺が誰かなんてどうだっていいだろ。そんなことより目の前のデカ物をどうするか考えたらどうだ?」



    まるで動物園の猿山でも眺めているように、ケラケラと笑う男。まるで目の前の事象をなんとも思っていない。そんな様子だった。



    「フラ男。手伝ってやる。とっとと《運命を切り開く者》を使え」



    フラ男「なんで見ず知らずのおまえにそんなこと!!」



    ガルマラシャの攻撃をなんとかかわしながら応戦するが、既にジリ貧といった様子であり、体力の限界も近づいてきている。



    さらに攻撃すら通用しない始末。もう打つ手がない。



    「まったく諦めが良いのか悪いのか。こんなわけのわからん奴だったかねぇ」



    そう言って男はわざとらしく肩をすくめる。


    龍音「この際一か八かだ!やれ!フラ男!」



    「お、流石龍音。話が早くて助かるな」


    随分と余裕な様子の男に苛立ちを覚えながら、フラ男は叫ぶ。



    フラ男「くそ!どうとでもなれ!《運命を切り開く者》」



    「ようやくか……じゃ俺も」


    男がフラ男やガルマラシャのいるあたりに手を向けて何やら小さく呟く。



    するとフラ男の顔が驚きに染まる。



    フラ男「なんだこれ……あいつの運命が見える……いや運命なんて概念なのか」



    2人もの人間を喰らうことで、ガルマラシャは物理的な力だけではなく圧倒的な運命力とも呼べる力を手に入れた。



    周囲のフラグなど関係はない。ただそれを自らに引き寄せる力。



    しかし、その全てが今のフラ男には見えていた。何をすればガルマラシャを止められるか、そのフラグを切り裂き、建築すれば良いのか、その全てが彼の脳に流れ込んでくる。



    フラ男「みんな!!総攻撃だ!!《運命を超越する者(フラグ・マネジメント・トランス)》!!」



    頭上高くに掲げた手を振り下ろす。



    運命を振り切るガルマラシャの四肢に楔を打つかのように、世界の法則を打ち込んで行くような感覚。



    徐々にガルマラシャの力をそぎ落としていく。


    そしてついに完全にその足を止めたガルマラシャに向けて最後のフラグを用意したフラ男は宣言する。



    フラ男「既におまえの敗北は不変の真理だ」






  60. 61 : : 2015/08/05(水) 22:29:33



    瑠奈「〜〜〜ッ!!!気にしないでガルマラシャッ!!!どうせ強がりよ、貴方が負ける筈なんてないわ!!!」


    瑠奈の甲高い叫び声を受け、ガルマラシャはその首を曲げて天を仰ぎ、口をパックリと開いた。


    空気を吸い込む轟音と共に、恐らくガルマラシャに残されていたのであろう力が全て一点に集約されていく。




    「最後の最後で悪足搔きってか。だが……残念だったな、相手が悪い」




    フラ男「怯むな、これが最後だ……行くぞ!!!」


    「「「「「おおおおおおお!!!!!!!!」」」」」


    健太が、龍音が、玄氏が、燕が、そしてフラ男が。



    叫び、そして全ての力をガルマラシャにぶつける。





























    眩い光が、地下施設を埋め尽くした。
  61. 62 : : 2015/08/05(水) 22:59:04







    閃光と轟音に包まれた空間が少しずつ静寂を取り戻していく。



    先ほどまでの激闘が嘘であるかのように、ただその場所は一時の沈黙を受け入れていた。



    フラ男「やったか……?」


    玄氏「お前それ生存フラグだぞ」



    普段のフラ男なら決して口にしないような言葉。そのことからも、フラ男の焦りがひしひしと感じとれる。



    あたりの煙が晴れていき、そしてそれが晴れ切った時。そこには白い光の粒に少しずつ分解され、空気に溶けていくガルマラシャの姿があった。



    フラ男「いったろ?不変の真理だって」


    それに気づいたのか瑠奈はガルマラシャに縋り付いて泣き叫んでいる。



    燕「本当におわったんですね」



    健太「ああ。これでようやく帰れるってもんよ」



    もはや皆満身創痍と言った様子で歓喜する元気もないと言った様子でしみじみとしているようだった。



    龍音「おい。さっきの奴はどうしたんだ」



    龍音の言葉で謎の男のことを思い出して、フラ男は天井を見上げるがそこには既に誰もいない。




    確実に彼らが勝てたのはあの男のおかげだ。名前のひとつも聞きたいところだが、そうもいかない。



    フラ男「なんだったんだあいつ……」



    男のことはひとまず仕方ないと割り切って、5人は戦いの疲れを癒すのだった。





  62. 63 : : 2015/08/05(水) 23:14:59






    と。


    異変に最初に気付いたのはフラ男だった。


    フラ男「ん……?なんだこれ」


    消えていくガルマラシャと同じように、フラ男たちの身体も少しずつ白い粒子となり、消失しているのだ。


    健太「身体が消えてる……が、不思議と悪い感じはしねえ。……これは……」


    玄氏「!なるほど、あのでっけえ機械が壊れてガルマラシャも倒したから……!」


    龍音「だろうな。……どうやら帰る時間らしい」


    燕「……戻られるんですね、貴方たちの時間に」


    消えていく4人に、燕は名残惜しそうに、しかし強い意志を感じられる様子で言った。




    燕「フラ男さん、健太さん、龍音さん、玄氏さん……僕は貴方たちのお陰で立ち直る事が出来ました。貴方たちがいなかったら、きっと今も僕は……。……本当に、本当にありがとうございました!」





    燕「僕、変えてみせます。そこにいる遊楽も、それ以外の剣を持たない人も。どんな人でも差別される事なく過ごせるように、この学園を変えてみせます。……絶対に!!!」





    フラ男「はは、楽しみにしてるよ。……そうか、未来かぁ」




    既に大部分が消えた身体で、フラ男は最後に残すように呟いた。












    フラ男「俺は、どうなってんだろうなぁ……」










    最後の一粒がフワリと空にのぼり、そして消えた。




  63. 64 : : 2015/08/05(水) 23:26:41









    そしてその様子を天井の上から覗き込んでいる者がいた。








    「夏未に呼ばれて飛んできてみれば……未来の自分はどうなってるかねぇ。なんとも皮肉な話だな」






    男は薄く笑うと、その場から姿を消した。






  64. 65 : : 2015/08/05(水) 23:37:46




    フラ男達が目を覚ますとそこはいつも通りのフラ男の部屋だった。



    フラ男「俺たち帰ってきたのか……?」



    龍音「みたいだな。にしても服も怪我もまんまとかありえねぇって」



    玄氏「そんなことより、あんなのが未来だとはな……」



    健太「ほんとそれ。燕も遊楽も俺たちがなんとかしてやれたかもしれないんだよな」



    なんとなく沈んだ様な雰囲気になったが、最初にフラ男が顔を上げる。



    フラ男「沈んでも仕方ない。俺たちで変えようぜ!あんな未来じゃなく、非リアが悲しまずに済む世界を作ろう!」


    フラ男の言葉に皆笑い出す。


    龍音「まったく……おまえらしいな」


    健太「よし!とりあえず手当と服なんとかするか!」



    彼らはまた歩み出した。



    現在から最善の未来を掴み取るために。



    非リアの自由をもう二度と奪わせぬために。







  65. 66 : : 2015/08/05(水) 23:42:13














    END
  66. 67 : : 2015/08/05(水) 23:43:02










    えー、はい。お疲れ様でした。



    これにてラスクリ2はお終いです。
    さいごに、私から後書き擬きを1つ。
    問題です。
    さあ、謎の人物は一体誰でしょう?




    もちろん、作中には登場していますよ?
  67. 68 : : 2015/08/05(水) 23:43:35
    乙です
  68. 69 : : 2015/08/05(水) 23:46:18


    お疲れ様でした〜

    今回も誤字連発パワー全開でやって参りました!



    まあうえでせさみがなんかほざいてますけど、みんなわかってますよね!



    バレンタインサボってはや数ヶ月。ちゃんと帰ってきましたよラスクリ!!


    みなさん楽しんでいただけたでしょうか?ではまたいつか会うかもしれません。もう約束はしません。守れる自信ないのでw



    というわけで、さよなら!
  69. 70 : : 2015/08/05(水) 23:56:49
    >>68
    おつありです
  70. 71 : : 2015/08/05(水) 23:59:42
    おつかり~の

    蓬莱肉壁は最強
  71. 72 : : 2015/08/06(木) 00:05:34
    おつおつ!
    フラちゃんかわいいぺろー!
  72. 73 : : 2015/08/06(木) 16:47:26
    >>71>>72
    おつありですー
  73. 74 : : 2016/08/21(日) 18:32:50
    ちょくちょく読んでますが面白いですね!
    お疲れさまでした!
  74. 75 : : 2016/10/30(日) 16:13:26
    >>74
    コメントありがとうございます。そう言っていただけるととても嬉しいです
  75. 76 : : 2020/10/27(火) 10:19:18
    http://www.ssnote.net/users/homo
    ↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️

    http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
    ↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
    ⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️

    ⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
    10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
    みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
    今回は誠にすみませんでした。


    13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
    >>12
    みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
    現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました

    私自身の謝罪を忘れていました。すいません

    改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
    今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
    あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
    SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
    本当に今回はすみませんでした。




    ⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️

    http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi

    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️

    56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ごめんなさい。


    58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ずっとここ見てました。
    怖くて怖くてたまらないんです。


    61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
    お願いです、やめてください。


    65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    元はといえば私の責任なんです。
    お願いです、許してください


    67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    アカウントは消します。サブ垢もです。
    もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
    どうかお許しください…


    68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    これは嘘じゃないです。
    本当にお願いします…



    79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ホントにやめてください…お願いします…


    85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    それに関しては本当に申し訳ありません。
    若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
    お願いですから今回だけはお慈悲をください


    89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    もう二度としませんから…
    お願いです、許してください…

    5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
    ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
    本当に申し訳ございませんでした。
    元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
    私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
    今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。

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