このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
名無き暗殺者たち
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- 1 : 2017/10/18(水) 18:22:58 :
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これは、歴史の陰に隠れた『名無き暗殺者』たちの物語。
自らを悪しき者と謳いながら、己の持つ絶対悪を持ってして悪を裁く罪人たちの物語──。
『名無き暗殺者たち』
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- 2 : 2017/10/18(水) 18:39:07 :
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犯せ。冒せ。侵せ。
この世界の理は弱肉強食。
強者は生き、弱者は死ぬ。
敗者に訪れるのは圧倒的な殺戮と絶望的な蹂躙。そして死。
希望を失い、絶望の淵に立たされ、這いつくばった力なき者に手を差し伸べる優しい世界など存在しない。
何せ、己の不幸は全て己の能力の無さがもたらす自業自得の人災なのだから。
────というのを、この世界を牛耳る大帝国の皇帝が唱えるのだから、世も末というものだ。
力と富、そして全ての権力を我が物顔で振り下ろす皇帝。あまりの理不尽さ、そして不条理なその思考を全面に押し出し、自分さえよければそれでいいという自己中心的な性格の持ち主ゆえ、帝国外の地方の人間たちは圧政を強いる皇帝を打ち倒そうと反旗を翻す。革命の狼煙が上がった。
しかし強大な戦力を誇る大帝国軍になす術なく蹂躙され、ものの見事に大敗。
それは約十年前の話。
物語は、革命軍の帝国転覆作戦失敗から十年後から始まる。
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- 3 : 2017/10/22(日) 15:02:24 :
#1
「まずいな……シン、どうする?」
シン、と呼ばれた少年はしばし考える。
「…追っ手はおそらく『天撃』だろう」
「だろうな──っと!」
太陽に代わって月が世界を淡く照らす。
美しい満月だ。
帝都『ミッドラス』近郊の森林地帯。
少年2人は長剣の鞘を握りしめ、薄明かりの獣道を疾走する。
背後から降り注ぐ斬撃の雨をよけながら。
「帝国騎士屈指の機動力を持つ天撃からは逃げられそうにねぇな。反転して戦うか?」
シンはかぶりを振った。
「だめだ。アヌーンを暗殺してからかなり時間が経っている。恐らくアヌーンは俺たちをおびき寄せるための罠だ。」
「援軍が来るってか」
「ああ」
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- 4 : 2017/10/22(日) 16:43:21 :
数十分前、帝都に潜入したシン達は、暗殺対象だった皇帝腹心のアヌーンの暗殺に成功。
しかし、直後に帝国を守る『帝国騎士』の襲撃を受ける。
標的が罠だったというわけだ。
一騎当千の力を持つ帝国騎士が束になって襲って来るものだから、逃走を図しかない。
逃げ際に6名いた仲間を3つに分けて逃走。
今に至る。
「……なあ、シン」
「どうしたの」
「俺が時間を稼ぐ。先に行け」
「……君、死ぬことになるけど」
「約束……覚えてるよな」
「…………ああ」
「俺たちは悪しき者。悪を斬るとは言っても所詮ただの人殺し。そこに正義はない。ならば己の持つ絶対悪で悪を斬る。悪に勝てるのは絶対悪だ」
「……」
「約束覚えてくれてるなら、いい。革命軍にはお前が必要だ。シン無くして革命は訪れない」
「……じゃ、後でな」
「ああ。また後で」
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