このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品は執筆を終了しています。
リヴァイ「王の帰還」 ⑧ 進撃×ロード・オブ・ザ・リング
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- 1 : 2015/07/15(水) 18:16:48 :
- 進撃×ロード・オブ・ザ・リング、王の帰還、第15話です。
いよいよこの物語も終盤になります。
頑張って執筆していきますので、よろしくお願いします<m(__)m>
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- 2 : 2015/07/15(水) 18:18:01 :
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キリス・ウンゴルの見張りの塔。
その最上階においてエレンは、上半身を裸にされ、手を縛られた状態で横になっていた。
エレン「ん・・・・・・。」
シェロブの毒が切れ、漸く目を覚ましたエレン。
―――――――最低の気分だった。
俺はアルミンが指輪に誘惑されるのが怖くて、殴って気絶させた挙句、置き去りにしてきた。
そうまでして俺は自分の使命を果たそうとしたのに・・・・・・。
それに後ろから何か話す声が聞こえる。
如何やら二匹のオークが俺の荷物を手当たり次第に探ってるみてぇだ。
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- 3 : 2015/07/15(水) 18:19:11 :
ゴルバク「ほう、こりゃ見事な鎖帷子だな。」
―――――――くそッ! ダリスじいちゃんに貰った鎖帷子を触りやがってッ!
すると、シャグラトがゴルバクに突っかかった。
シャグラト「おいッ! モルグルのオーク如きが気安く触んじゃねぇッ!」
ゴルバク「何だとッ!? テメェッ!!!」
モルドールのオークとミナス・モルグルのオークは仲がとても悪かった。
それ故、両軍入り乱れるこのキリス・ウンゴルの見張りの塔では喧嘩が絶えなかった。
今宵もまた、意地の張り合いから喧嘩が勃発し、シャグラトとゴルバクが取っ組み合いを始めた。
お互い殺す気満々で殴り合い、蹴飛ばしあった。
ゴルバク「グオォオォッ!!!」
すると、ゴルバクが井戸のようになっている場所へ四つん這いに倒れた。
シャグラトはしめたとばかりにゴルバクの腹を蹴飛ばした。
ゴルバク「グハァッ!」
そのままゴルバクは梯子がかかっている井戸を落下していき、下の螺旋階段へと落ちた。
そこには多くのオークがたむろしており、突然上から落ちてきたゴルバクに困惑が広がった。
シャグラト「こいつ、俺を殺そうとしやがったッ! 殺せッ!!!」
たちまち下の階層にいたオークたちが取っ組み合い、モルドール派とミナス・モルグル派に分かれての殺し合いに発展した。
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- 4 : 2015/07/15(水) 18:20:25 :
殺し合うオークの怒号は、見張りの塔の外までも聞こえてきた。
アルミン「・・・・・・入り込むなら、今しかないッ!」
そっとアルミンは見張りの塔に入り込んだ。
自分の判断ミスで攫われてしまったエレンを、助け出すために。
塔の中は吹き抜けになっており、壁に沿って螺旋階段が上へと続いていた。
よく見ると、喧嘩に負けたのだろう、オークの死体が何体か転がっている。
アルミンはゆっくり慎重に、階段を昇り始めた。
喧嘩はよほど激しかったと見え、階段の上も死体だらけ。正直鼻が曲がりそうだとアルミンは思った。
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- 5 : 2015/07/15(水) 18:21:18 :
アルミン「!!!」
―――――――上からオークが降りてくる。
数は・・・・・・3人。
やるしかない。
オークたちが階段を降りていくと、曲がり角のところに松明に照らされた人影が見えた。
オォォォオオォォォォッ!!!
雄叫びを上げて剣を抜く影に威圧され、思わず後ずさりするオークたち。
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- 6 : 2015/07/15(水) 18:22:11 :
アルミン「行くぞおおぉおぉッ!!!」
曲がり角から現れたのはしかし、女顔でしかもチビのホビットだった。
両手には剣が握られており、右手の剣は青い光を発していた。
オークたち「「「グオオォオォォッ!!!」」」
オークたちは恐れが消えたのか、雄叫びを上げながらアルミンに斬りかかった。
ドスッ! オーク「ギャウッ!」
アルミン「これはホビット庄の分ッ!」
ドスッ! オーク「グアァッ!」
アルミン「これはじいちゃんの分ッ!!」
あっという間に二人を斬り捨てたアルミン。
最後の一人が斬りかかるも、簡単に刃を躱され、
アルミン「そしてこれは・・・・・・エレンの分だッ!!!」
ゲシッ! オーク「ギャアウゥウゥ・・・・・・。」
蹴り飛ばされて吹き抜けへと落下していった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 7 : 2015/07/15(水) 18:23:08 :
シャグラトがじいちゃんから貰った鎖帷子を持って塔を出ていき、エレンが幽閉されている部屋にはエレンのほかに誰もいなくなった。
エレン「くそ、この!」
エレンは手を縛っている縄を何とか解こうと身をよじった。
ゴルバク「おい、気が付いたようだな?」
エレン「!!!」
エレンが寝返りを打つとそこには、殺し合いを生き残ったゴルバクが剣を握って立っているのが見えた。
ゴルバクは殺気立ち、自身が屈辱を受けるきっかけとなったエレンを見下ろしていた。
ゴルバク「覚悟するんだなッ! テメェのそのはらわた引きずり出してやる――――――グアッ!?
突然の苦痛に悶えるゴルバク。
ドスッ! ゴルバク「ガハァッ!!!」
次の瞬間、ゴルバクの胸から青く光る刃が飛び出した。
すると、ゴルバクの後ろから、冷たい声が聞こえた。
アルミン「死ぬのは君だよ。」
エレン「!!! アルミンッ!!!」
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- 8 : 2015/07/15(水) 18:24:56 :
アルミンはゴルバクから剣を抜くと、しゃがみこんで手早くエレンの手を縛る縄を切った。
エレン「何で・・・・・・何で来たんだよッ! 俺は、お前を・・・・・・置き去りにしたのにッ!!!」
目に涙をため、思わず声を上げるエレン。
アルミン「・・・・・・相変わらず君はずるいなぁ。」
アルミンはエレンを優しく抱きしめた。
アルミン「言ったじゃないか・・・・・・僕は、君の後をついていくって。」
エレン「・・・・・・アルミン、ごめん・・・・・・俺・・・・・・指輪を・・・・・・取られた・・・・・・。」
しゃくりあげるような声で、言葉をつなぐエレン。
すると、アルミンが立ちあがった。
アルミン「いや、指輪は取られていない。ここにあるんだ。」
アルミンが胸ポケットから、鎖につながれた指輪を取り出した。
アルミン「てっきり僕は君が死んだと思って、指輪を君の首から取ったんだよ。」
エレンは指輪を見ると、人が変わったように低い声で呟いた。
エレン「アルミン・・・・・・俺に指輪を返すんだ。」
アルミン「えッ?」
エレン「これは俺の重荷だ・・・・・・お前には背負えない。」
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- 9 : 2015/07/15(水) 18:25:55 :
―――――――僕は・・・・・・エレンに指輪を返すことをためらった。
何故なら・・・・・・・・・・・・
この指輪があれば、僕はこの世の知識という知識をすべて独占できるから。
――――――――!?
僕はゆっくりと、指輪が繋がれた鎖をエレンに差し出した。
パシッ!
エレンはアルミンからひったくるようにそれを受け取ると、すぐにその鎖を首にかけた。
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- 10 : 2015/07/15(水) 18:31:33 :
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―――――僕は今、何を考えたのだろう?
僕は・・・・・・知識欲のために、指輪を欲した。
誘惑されたんだ。
ねぇエレン。
君はどうしてこんなものを持って、まだ耐えていられるの?
僕にこの指輪は・・・・・・・・・・・・重すぎる。
とてもとても、耐えられない。
エレン「分かってくれ、アルミン。これは・・・・・・俺に課せられた使命なんだ。」
アルミン「・・・・・・分かったよ、エレン。でも、僕は出来るだけのサポートはするよ。」
アルミンは粛然として恐れた。
そして、この指輪の真の恐ろしさを、本当の意味で理解したのも、この時だった。
話題を変えるように、アルミンが提案した。
アルミン「ここから先はモルドール・・・・・・敵の本拠地だ。オークに変装して行こう。その方が安全だ。」
エレンとアルミンは比較的小柄なオークの遺体から鎧を剥ぎ取ると、服の上からそれを着込んだ。
エレン「どっからどう見てもちびっこオークだな。」
アルミン「ふふ、よし、いよいよだ。」
二人は見張りの塔を抜け、いよいよモルドールへと足を踏み入れた。
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- 11 : 2015/07/15(水) 20:12:36 :
凄惨を極めたペレンノール野の合戦が集結した日の午後。
ミナス・ティリスの王宮で、最後の会議が開かれた。
出席したのは、リヴァイ、ライナー、アニ、ガンダルフら旅の仲間。
ローハンからはイアンとハンネス。
ゴンドールからはナイル、ハンジ、サシャ。
それは、これからの行く末を決める、最終戦略会議であった。
ガンダルフ「エレンとアルミンはわしの目の届かぬところへといってしまった。」
ガンダルフが沈痛な面持ちで語る。
ガンダルフ「このわしが、二人を死地へと導いたのじゃ・・・・・・。」
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- 12 : 2015/07/15(水) 20:13:29 :
リヴァイ「そうだな、ガンダルフ。お前は最初から分かっていた。」
ナイル「リヴァイ様!?」
ガンダルフ「・・・・・・。」
リヴァイ「あいつらは、今も滅びの山に近づいて、自分たちの使命を果たす。そうだろ?」
しばらくの沈黙。
ややあって、ガンダルフが尋ねた。
ガンダルフ「エレンと滅びの山の間に、オークの大軍がいてもか?」
ライナー「う~む。難儀な話だな。」
パイプを咥えて執政の黒い椅子に座り、考え込むライナー。
ガンダルフ「サウロンは此度の戦いで苦杯をなめたが、影の山脈の向こうで軍を立て直しておる。成功の見込みは薄い・・・・・・。」
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- 13 : 2015/07/15(水) 20:16:16 :
すると、リヴァイはある提案をした。
後にも先にも、彼がこんな無謀な提案をしたのはこの時だけであった。
リヴァイ「要するに、あの目ん玉野郎をくぎ付けにして、モルドールの中を空っぽにすりゃいいって話だろ?
その為に俺たちはモルドールの黒門へと進撃する。」
会議に出ていた全員がこの突拍子もない提案に目を丸くした。
サシャ「そんなの・・・・・・自殺行為ですよ!」
ハンジ「一体何のためにそんなことを!? 王様は気が狂ったのかい!?」
リヴァイは、しかし、前言を撤回する気など毛頭なかった。
リヴァイ「俺は本気だ。あいつらが使命を果たせば、敵の勢力は瓦解する。」
アニ「つまり、私たちはエレンとアルミンのために、囮になるということかい?」
ハンネス「おいおい、そりゃいくらなんでも無謀だろ!?」
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- 14 : 2015/07/15(水) 20:17:39 :
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すると、ライナーが笑い始めた。
気が付くとアニも少し微笑んでいる。
ライナー「リスクは大きく、成功の見込みはちょっぴりだ・・・・・・・・・・・・早く行こう。」
アニ「まったく・・・・・・あんたも私も大した死に急ぎ野郎だよ。」
二人は覚悟を決めていた。
どうせこのまま待っていても破滅はやってくるのだ。
ならば少しでも可能性のある方に賭ける。
ガンダルフ「・・・・・・サウロンはその手には乗らんよ。」
リヴァイ「いや、あいつは必ず乗ってくる。必ずな。」
かくして明朝、持てる限りの手勢を率いて、モルドールへと進撃することが決まった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 15 : 2015/07/15(水) 21:47:06 :
- エレンとアルミン会えて良かったですよね~!
期待です!
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- 16 : 2015/07/15(水) 23:21:41 :
- 漸くの再会に書いていてほっとした次第ですw
期待ありがとうございます!
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- 17 : 2015/07/15(水) 23:22:03 :
深夜、誰もいない王宮の中へ、リヴァイは静かに入ってきた。
その手には布で包まれたものが握られている。
リヴァイは執政の椅子の上にそれを置くと、ゆっくりと布の包みを解いた。
布の中には、アイゼンガルドのパランティアの石。
リヴァイはゆっくりとこれを覗くと、右手でこれをわしづかみにして、自分の顔の前に持ってきた。
オルサンクの石はミナス・イシルの石に繋がり、リヴァイの目の前に、サウロンの瞼のない、炎に縁取られた目が映し出された。
リヴァイ「テメェは俺を追い続け、俺はテメェから逃げ続けてきた。だが、それももう終わりだ。」
リヴァイは研ぎ直されたナルシル――――――――アンドゥリルの剣をサウロンに見せつけた。
リヴァイ「かつてテメェを駆逐したこの剣で、今一度、テメェを駆逐するッ!!!」
すると、パランティアの石は別の映像を映し出した。
映し出されたのは、裂け谷において息絶えた・・・・・・ペトラの眠る姿。
リヴァイ「!!!」
思わず身じろぎ、パランティアを手放すリヴァイ。
その拍子にペトラのネックレスが首から滑り落ち・・・・・・
床に当たって粉々に砕け散った・・・・・・・・・。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 18 : 2015/07/15(水) 23:22:52 :
翌朝。
ゴンドールとローハン。
合わせて7千の軍がミナス・ティリスを発し、モルドールの黒門を目指して進軍を開始した。
先頭を馬に乗って進むリヴァイは、昨日までの野伏の格好ではなく、胸に白の木の紋章が入った、ゴンドールの鎧を身に纏っていた。
アニとライナーが一緒の馬に乗り、マルコはガンダルフの前に座り、ジャンはイアンの後ろに座った。
他にもナイル、ハンジ、サシャをはじめとしたゴンドールの兵士。
ハンネス、コニーをはじめとしたローハンの兵士も加わっていた。
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- 19 : 2015/07/15(水) 23:23:46 :
第六環状区、療病院。
リコ「・・・・・・歯痒いものだな、最後の戦いが始まるというのに、何もできないなんて。」
今朝意識を取り戻したばかりのリコは、さすがに今回の合戦には間に合わず、安静に過ごすこととなった。
進撃していく7千の兵を、リコは心細い気持ちで療病院から見下ろしていると、後ろから声をかけられた。
エルド「こんなところにいると風邪を引くぞ?」
エルドもまた、今朝になってようやく傷が癒え、何とか歩けるまで回復した。
それ故、今回の戦いには参加できなかった。
リコ「確かに、今は少し、肌寒いな。」
エルド「あぁ、けれど、もうすぐ春がやってくる。」
ふと、エルドの右手が、リコの左手に触れた。
リコが驚いて見上げると、優しく微笑むエルドの顔がそこにはあった。
リコ「私は今まで・・・・・・ずっと盾を持って戦ってきた。でも、それも今日で終わりにしようと思う。
これからは、誰かを慈しむ・・・・・・そう、ありたいんだ。」
そのままリコは、エルドの胸に顔をうずめた。
今まで盾を持って戦うことしか知らなかったリコは、エルドを通して、自身に慈しみの心を見出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 20 : 2015/07/15(水) 23:24:26 :
アルミン「着いたよ、エレン。」
エレン「あぁ。」
影の山脈の上からモルドールを見下ろす二人。
奥のほうには暗黒の塔、バラド=ドゥアが見え、その頂上にはあの燃える目が地上を見下ろしている。
そして、その手前には、エレンとアルミンの旅の終着点――――――――滅びの山が見えた。
アルミン「でも、どうやってあの滅びの山まで行く?」
エレン「くそ、ここまで来て、進めねえのかよ。」
ガンダルフが危惧した通り、滅びの山までの道のりは、モルドールの本隊、およそ20万の大軍で埋め尽くされていた。
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- 21 : 2015/07/16(木) 13:49:57 :
アルミン「!!! 見てッ!」
どうしたことだろう?
吹き鳴らされる進撃の合図。エレンとアルミンの行方を阻むオークの大軍が移動し始めたのだ。
アルミン「どうやらやっと僕らにも運が回ってきたみたいだ。」
すると、後ろのほうからオークどもの声が聞こえてきた。
オークの中隊が、招集をかけられて黒門へと移動している、まさにその時に居合わせてしまったのだ。
アルミン「前言撤回だ。とにかくやり過ごそう。」
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- 22 : 2015/07/16(木) 13:50:55 :
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道端に座り込み、中隊が目の前を通過するのを待つエレンとアルミン。
オーク「おいッ! お前らッ!!!」
エレン(ヤバイ!)
アルミン(気付かれたかッ!?)
冷や汗をかくエレンとアルミン。
オークは、しかし、彼ら二人を鞭打った。
オーク「休んでねぇでとっとと進まねぇか! このチビどもめ! テメェらは先頭だッ!」
パンッ! エレン「ぐッ!」
パンッ! アルミン「あッ!」
着ていた兜と鎧のおかげでオークに勘違いされたのはよかったが、あまつさえ傷ついた体に鞭うたれ、中隊の先頭を走らされた。
しばらく走らされたあと、オークの中隊は進軍を止め、点呼を取り始めた。
エレン「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・アル・・・・・・ミン・・・・・・助けて・・・・・・。」
小声でアルミンに耳打つエレン。
驚いたアルミンがエレンの様子を見ると、首筋に思わず寒気が走った。
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- 23 : 2015/07/16(木) 13:52:02 :
エレン「指輪が・・・・・・重いんだ・・・・・・。」
首にかかっている鎖は指輪の重みのせいでエレンの首筋にめり込み、酷く出血していた。
何とかここから抜け出さなければ。
そう思ったアルミンが、エレンに耳打ちした。
アルミン「ごめん・・・・・・エレン・・・・・・歯を・・・・・・食いしばってくれ。」
次の瞬間、アルミンは腕にうなりをつけてエレンを殴った。
バキィッ! エレン「ぐあッ!」
アルミンは狂言を演じた。
喧嘩っ早いオークたちがたちまち殴り合いに参戦し、中隊は騒然となった。
オーク「おい、テメェらッ! はらわた引きずり出されてぇのかッ!?」
指揮官役のオークが必死に収集に努めている間に、エレンとアルミンは喧嘩に紛れてこっそりと中隊から抜け出した。
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- 24 : 2015/07/16(木) 13:54:04 :
アルミン「大丈夫だったかい?」
エレン「口の中がスース―する。」
再び滅びの山に向かい始めた二人は、オークの鎧を脱ぎ捨て、いらないものをすべて捨て去った。
バックも。
調理器具も。
エルフのマントも。
ただ服と、剣のみを身に纏っていくことに決めた。
すべてを捨て去る直前、エレンが水を飲もうと水革を絞り出す。
だが、それはもう空っぽになってしまっていた。
アルミン「エレン・・・・・・僕のを飲んで・・・・・・あと一口分あるから。」
縋るようにアルミンから水革を受け取ると、必死にそれを上に向けた。
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- 25 : 2015/07/16(木) 13:54:44 :
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・・・・・・・・・・・・チョロロロロ
ほんのわずかな量の水を口に含み、ゆっくりと飲み干した。
エレン「これで・・・・・・帰りの分が無くなっちまったな。」
虚ろな表情でエレンが呟く。
すると、アルミンが優しい表情で微笑みながら言った。
アルミン「もう・・・・・・帰りはないよ、エレン。」
エレン「アルミン・・・・・・。」
すっと手を差し出すアルミン。
アルミン「何も捨てることのできないものには、何も変えることは出来ない。さぁ、エレン、行こう。」
エレン「・・・・・・・・・・・・あぁ。」
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- 26 : 2015/07/16(木) 13:56:26 :
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それから二人は、モルドールの不毛な大地、ゴルゴロス高原を歩いていった。
火山性のこの土地は、異常なほどに暑く、しかも起伏に富んだ危険極まりない場所であった。
エレンは焦点の合わない目で、何か目の前の闇を振り払うかのように進んでいる。
―――――恐らく、指輪の魔力と戦っているんだ。
滅びの山に近づいていくごとに、指輪はエレンに圧し掛かっていくに違いない。
アルミン「!!! エレンッ!!! 伏せてッ!!!」
後ろをついて来るアルミンが突然叫んだと思うと、すぐにアルミンは岩の影に伏せた。
何か燃えるような視線を感じたエレンはその方向を向いてしまった。
暗黒の塔、バラド=ドゥア、その頂上にある瞼無き目と、視線を合わせてしまったのだ。
エレン「あっ・・・・・・。」
まるで糸の切れた操り人形のようにエレンの体から力が抜け、エレンは冥王に背を向けるように、その場に倒れ込んだ。
アルミン「エレェン!!!」
冥王サウロンに射すくめられ、エレンはその場から動けなくなってしまった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 27 : 2015/07/16(木) 17:13:04 :
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リヴァイ「見えてきたぞ。」
ゴンドールとローハンの連合軍が、その視界にモルドールの黒門を捉えた。
ジャン「くそ・・・・・・禍々しいところだな。」
マルコ「エレン・・・・・・アルミン・・・・・・。」
ジャンが毒づき、マルコが二人の友人を心配する。
ゴンドールとローハンの軍は整然と黒門から少し離れたところに整列した。
マルコ「敵は・・・・・・どこにいるの?」
マルコが尋ねると、リヴァイは馬を黒門の前へと走らせた。
王の後にはジャンとイアン、マルコとガンダルフ、アニとライナー、ハンジ、サシャ、ナイルが続いた。
鋭い牙の如きモルドールの門の前に出たリヴァイは、門の向こうに向かい、大声で言った。
リヴァイ「さぁ出て来い闇の帝王ッ!!! 俺たちが裁きを下してやるッ!!!」
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- 28 : 2015/07/16(木) 17:15:26 :
ガコンッ・・・・・・
ギギギギギギギギ・・・・・・
モルドールの大きな門が軋みを上げて僅かに開いた。
その隙間から出てきたのは、一人の痩せ細った男であった。
乗っている馬までも不気味にやせ細っており、被っている兜が目を覆っているところを見ると、この男は盲目らしかった。
サウロンの副官である、サウロンの口と呼ばれるこの男は、リヴァイたちに不躾な挨拶をした。
サウロン「我がご主人様はお前たちを歓迎する。」
サウロンの口はその汚い口を見せつけるように笑うと、リヴァイが冷ややかに眉をひそめてこれに応じた。
サウロンの口「俺と交渉する権限を持つ者は誰だ?」
ガンダルフ「不実で呪わしいサウロンと交渉する気はない。モルドールの軍を即刻解体し、この地を去れ、二度と戻るなと伝えろ!」
まくしたてるように言うガンダルフに、サウロンの口は馬鹿にした口調で応じた。
サウロンの口「灰色髭のじじい・・・・・・これを見せつけるようご主人様に仰せつかった。」
そういうと、サウロンの口は懐からミスリルの鎖帷子を取り出した。
その鎖帷子を見たガンダルフは、何か鉄の棒で殴られたかのような衝撃を受けた。
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- 29 : 2015/07/16(木) 17:15:57 :
それは、エレンが身に着けていた鎖帷子だった。
祖父であるダリスから譲り受けた、ホビット庄全体よりも価値のある鎖帷子。
マルコ「そんな・・・・・・。」
サウロンの口はガンダルフにその鎖帷子を投げつけた。
マルコ「エレン。」
ガンダルフ「静まれッ!」
ジャン「嘘だろ・・・・・・。」
ガンダルフ「静まれッ!!!」
ガンダルフは静かに、自分の前に座っているマルコに鎖帷子を渡してうなだれた。
鎖帷子を受け取ったマルコはそれを握りしめ、涙を浮かべてサウロンの口を睨みつけた。
ジャンやアニ、ライナーもサウロンの口を睨みつける。
サウロンの口「大切な仲間だったらしいな。だが、奴は酷く痛めつけられた。でも、耐えたのだ。立派なものだ。」
ガンダルフの目にも、涙が浮かんでいた。
後ろからマルコを抱きしめ、エレンの行く末に心を痛めたガンダルフは、深く意気消沈した。
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- 30 : 2015/07/16(木) 17:16:44 :
すると、リヴァイが前に進みだした。
サウロンの口「ん? お前は誰だ? イシルドゥアの末裔か? 折れた剣で王にはなれぬ。」
リヴァイ「はあぁあぁッ!」
サウロンの口に並んだかと思うと、リヴァイは剣を抜き、サウロンの口の首を刎ねた。
首を無くしたサウロンの口の胴体は、そのまま地面にずり落ちた。
驚くガンダルフにリヴァイは決然としていった。
リヴァイ「俺は信じない! 決してな!」
アニ「やれやれ、これで交渉はおしまいだね。」
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- 31 : 2015/07/16(木) 17:17:26 :
その時だった。
エレンに向けられていたサウロンの視線が黒門へと向けられた。
アルミン「エレン! 助かったよ、あいつの視線は北の何かに向けられた! 行こうッ!!!」
エレンとアルミンがゆっくりと立ちあがり、再び滅びの山へと向かい始める。
ギギギギギギギギ・・・・・・
少しだけ開いていた黒門が開き始める。
その奥からは待機していたオークの大軍が進軍し始め、その奥にはサウロンの燃える目が見えた。
リヴァイ「ちっ、戻るぞッ!!!」
黒門のすぐ前のリヴァイたちがゴンドールとローハンの軍へと戻り始めた。
兵士たちはモルドールの軍とサウロンの視線に気圧され、後ずさっていく。
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- 32 : 2015/07/16(木) 17:18:01 :
リヴァイ「踏みとどまれッ! これ以上退くなッ!!!
ゴンドール! ローハン! 兄弟たちよッ!」
王が呼びかけ、戦士たちが踏みとどまる。
リヴァイ「お前たちの中に、俺をも襲うだろう恐怖が見える!
人間の勇気が挫け、友を見捨てる日が来るかもしれねぇ。
だが、それは今日ではない!
魔狼の時代が訪れ、人間の盾が砕けるかもしれねぇ!
だが、それは今日ではないッ!!
今日、俺たちは戦うッ!!!」
そうだ、今日俺たちは、戦うッ!
戦わなければ・・・・・・・・・・・・勝てないッ!
勝てば生きる! 生き残って見せる!
―――――戦士たちの顔に、希望が宿る。
リヴァイ「お前らの守る、すべてのものに懸けて、踏みとどまって戦えッ! 西方の強者どもッ!!!」
七千の兵が一斉に剣を抜く。
リヴァイは正面を向き、剣を天に向かってかざした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 33 : 2015/07/16(木) 17:19:31 :
やっとの思いで滅びの山の山裾にまで辿り着いたエレンとアルミン。
ふらつく足に鞭打ち、何とかここまで来たものの、エレンはもうとっくに限界をむかえていた。
ドサッ!
前のめりに倒れ込んだエレンは、それでも、這って前に進んでいく。
だが、遂にエレンは仰向けになり、そこから動けなくなってしまった。
アルミン「ねぇ、覚えてる? ホビット庄のこと・・・・・・。」
エレンのそばに座り、アルミンは空を見上げて尋ねた。
アルミン「ホビット庄ではね、もうすぐ春がやってくるんだ・・・・・・野には花が咲き誇って、初摘みのいちごが可愛らしく顔を出す。焼きたてのパンのあの味を、覚えてる?」
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- 34 : 2015/07/16(木) 17:19:57 :
倒れ込んだエレンが悶え始めた。
エレン「俺、何にも思い出せねえんだ・・・・・・いちごの味も、パンの味も、そよ風の感触も、川のせせらぎも・・・・・・・・・・・・。
俺は闇の中に丸裸で、俺の目の前には、あの燃える目が・・・・・・。
止めろ、闇が、闇がッ・・・・・・うわあぁああぁぁぁッ!」
首筋を見ると、指輪をぶら下げた鎖がめり込み、ますます酷く出血している―――――――力を増す指輪にますます冒されていくエレン。
アルミンはそんなエレンを守るように、後ろから抱きかかえた。
アルミン「僕が・・・・・・ここにいるから・・・・・・エレン。」
エレン「あぁあぁぁ・・・・・・うぅ・・・・・・。」
体から力が抜けていくエレン・・・・・・誰がどう見ても、エレンはとっくに正気を失っていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 35 : 2015/07/16(木) 17:20:28 :
進軍してきたオークの軍勢は左右に別れ、遠巻きにゴンドールとローハンの軍を包囲し始めた。
リヴァイたちは馬から降り、自分たちを包囲している敵の様子を窺っていた。
ライナー「はぁ、まさかエルフなんぞと枕を並べて討死とはな・・・・・・。」
ライナーがため息をつくと、アニが鼻で笑って言った。
アニ「あんたを愛する者となら?」
ゆっくりとライナーがアニを見上げ、アニの問いに答えた。
ライナー「それは・・・・・・本望だな。」
ジャン「なぁマルコ、俺たちは、いいパートナーだったな。」
マルコ「今更何を言ってるんだい? これからもそうだろ? ジャン。」
ジャン「違いないな。」
ジャンとマルコも覚悟を固め、ゆっくりと剣を抜いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 36 : 2015/07/16(木) 17:21:08 :
アルミン「指輪を葬るんだ! 永遠に!!!」
エレンを抱きかかえたアルミンが、力いっぱい叫んだ。
アルミン「・・・・・・僕は、君の重荷は背負えない。でも、君なら背負えるッ!」
傷ついた体に鞭うって、エレンの体を肩で担ぎあげ、
アルミン「さぁ行こう、エレンッ!! うあぁぁぁああぁぁぁッ!!!」
力いっぱい叫んで、アルミンは立ち上がった。
アルミンは歯を食いしばり、震える足で一歩一歩進み始めた。
アルミン「はぁ、はぁ、うぐぅ・・・・・・うおぉぉおぉぉッ!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 37 : 2015/07/16(木) 17:22:51 :
ゴンドールとローハンの軍は、モルドールの軍に前後左右を完全に包囲された。
リヴァイが暗黒の塔に目を向けると、かの瞼のない炎に縁取られた目と目線が合った。
バラド=ドゥアの塔の頂上にて燃える目が、リヴァイに語り掛ける。
・・・・・・・・・・・・リヴァイ・アッカーマン。
その言葉に反応し、前に進み出るリヴァイ。
・・・・・・・・・・・・エレスサール。
王としての御名を語り掛けるサウロン。
ややあって、リヴァイは後ろを振り返る。
穏やかな表情を浮かべ、リヴァイは一言、呟いた。
第15話
・・・・・・・・・・・・エレンのために。
-
- 38 : 2015/07/16(木) 17:23:53 :
前を向き、剣を構えて走り出すリヴァイ。
ジャン「うおおぉぉぉおおぉぉぉッ!!!」
マルコ「あああぁぁぁああぁぁぁッ!!!」
王の後を追って走り出す二人。
ライナー・アニ・ガンダルフ・コニー・サシャ・イアン・ハンネス・ハンジ・ナイル・モブリット・ニファ・ミーナ・ミリウス・ナック・トーマス「「「おおぉおぉおおぉおぉぉおぉぉぉおおおぉぉぉッ!!!」」」
彼らを追って、仲間たち、ゴンドールやローハンの兵士たち、七千の軍団が一斉に走り出す。
リヴァイ「はあぁあぁぁッ!!!」
王の一撃を皮切りに、全員が一斉にオークの軍団へ斬りかかり、軍と軍が全面衝突――――――戦いが始まった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 39 : 2015/07/16(木) 17:25:32 :
アルミン「はぁ、はぁ、もう、少しだ・・・・・・。」
アルミンの視線の先に、滅びの山への入り口、サンマス・ナウアが姿を現した。
冥王サウロンが一つの指輪を鍛えし場所。
そして、それを唯一葬ることのできる場所。
―――――――ようやく僕らは、辿り着いた。
最後の力を振り絞り、一歩ずつ歩みだすアルミン。
・・・・・・・・・・・・スー・・・・・・ハー・・・・・・・・・・・・
アルミン「!!! お前はッ!!!」
スメアゴル「ずる賢いホビットめ、ここまで来やがってッ!!!」
岩の上から飛び上ったスメアゴルは、エレンを担いだアルミンに襲い掛かった。
ガシッ! アルミン「ぐああぁああぁぁぁッ!!!」
アルミンの髪の毛を鷲掴みにして引っ張り、アルミンは仰向けに転倒。
エレンはそのまま地面に投げ出された。
-
- 40 : 2015/07/16(木) 17:26:02 :
スメアゴルはエレンに飛び掛かり、その首を締め上げる。
エレン「がはッ・・・・・・・・・・・・あぁあぁぁッ・・・・・・・・・・・・。」
ブンッ!
ゴッ! スメアゴル「ぐああぁッ!!!」
倒れ込んだアルミンが、スメアゴルに石を投げつけた。
石に吹き飛ばされて、スメアゴルの手はエレンの首から離れた。
エレン「ゲホッ! ゲホッ!」
石はスメアゴルの額を割り、赤い血が額から流れ始める。
それでもなおスメアゴルは、咳き込むエレンに飛び掛かった。
アルミン「止めろぉおおぉぉッ!!!」
エレンに掴みかかる前にアルミンがゴラムに飛び掛かる。
二人はもんどりうって滅びの山の斜面を転がり落ちた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 41 : 2015/07/16(木) 17:26:41 :
イアンの盾の一撃が敵の顔面を粉砕し、
ハンネスの剣の一撃は敵の顔面を両断する。
ナイルが敵を横に薙ぎ払い、
ハンジが敵を突きさして仕留める。
コニーが剣で敵を切り裂くと、
サシャが弓矢で敵を仕留める。
ライナーが敵にタックルし、
アニが敵にキックをかます。
ジャンとマルコがお互いの背中を預け、
交互に入れ替わり立ち替わり、敵を次々斬っていく。
グラムドリングの怜悧な一閃。
燃えるようなアンドゥリルの一撃。
ガンダルフとリヴァイが次々敵を斬り伏せる。
20万もの大軍に再び包囲され、中つ国の戦士たちは追い詰められながらも、死力を尽くして戦った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 42 : 2015/07/16(木) 21:38:26 :
- アニキックは痛いでしょww
期待!
-
- 43 : 2015/07/17(金) 01:13:05 :
- オークを一撃で葬る殺人キックですw
期待ありがとうございます!
-
- 44 : 2015/07/17(金) 01:13:57 :
-
バキッ! アルミン「ぐはッ!」
顔面を殴られたアルミンは岩に打ち付けられ、
ガブッ! アルミン「ぐあぁああぁぁぁッ!!!」
左首筋を噛みつかれた。
アルミン「ぐッ!」
噛みついてきたスメアゴルの後頭部を掴み、引き剥がして背後の岩に打ち付けるアルミン。
スメアゴル「がッ!」
予想外の反撃を喰らい、後ろにのけ反って転倒するものの、すぐに立て直した。
スメアゴル「グオォオォォッ!!!」
再びアルミンに飛び掛かるスメアゴル。
その時咄嗟に、アルミンは剣を抜いた。
スパァッ! スメアゴル「ぐあぁああぁぁぁ・・・・・・。」
アルミンの一閃がスメアゴルの左わき腹を切りつけた。
浅い一撃であったが、痛みに悶絶するスメアゴル。
そのままとどめを刺そうとするアルミン。
-
- 45 : 2015/07/17(金) 01:15:11 :
ふと、アルミンの脳裏に、あの恐ろしい指輪の魔力がよぎった。
アルミン「・・・・・・くそッ!」
あの時指輪を所持したことで、漸くその恐ろしさを体感したアルミンは、スメアゴルをどうしても斬れなかった。
早い話が、エレンと同じく情けが彼の手を止めたのだ。
スメアゴルを捨て置き、振り返ったアルミンは叫んだ。
アルミン「エレェェンッ!!!」
限界はとっくに超えていた。
それでもなけなしの精神力を振り絞り、
ありったけの力を込めてエレンはサンマス・ナウア――――火の室の中へと走り出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 46 : 2015/07/17(金) 01:17:36 :
黒門前における戦いは、まさしく熾烈を極めていた。
すると、遥か遠くの上空から、冷気を伴う絶望の金切り声が響き渡った。
グオオォオォォッ!!!
8人となったナズグルが、おぞましい翼に乗って襲来。
戦場は再び恐怖と絶望に包まれるかと思われた。
ガンダルフ「!!!」
ガンダルフの目の前を、一匹の蛾が飛んでいく。
この蛾はメッセンジャー―――――――・・・・・・・・・・・・
キィイィィィッ!!!
急降下するおぞましい獣。
そこに風よりも速く飛ぶ翼が襲来。
マルコ「大鷲だッ! 大鷲が来たぞッ!!!」
グワイヒアを中心とする大鷲がナズグルたちを襲撃。
いつぞやガンダルフがアイゼンガルドを脱出したときのように、大鷲たちが救援に馳せ参じた。
黒門の前、地上と空中で、繰り広げられる凄惨な死闘。
その全てが・・・・・・エレンのために。
戦士たちの心は、一つになった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 47 : 2015/07/17(金) 01:43:37 :
アルミン「エレェェンッ!!!」
エレンとアルミンは遂にサンマス・ナウアに入った。
サウロンの王国の心臓部。
中つ国最大の溶鉱炉。
そして・・・・・・
世界で唯一、一つの指輪を破壊できる場所。
エレン「俺はここだ・・・・・・アルミン。」
エレンが立つ場所のはるか下には滅びの罅裂があり、世界中のどこよりも高温の溶岩が脈打っていた。
エレンは指輪をぶら下げた鎖を首から外し、右手に鎖を握って滅びの罅裂の上に差し出した。
-
- 48 : 2015/07/17(金) 01:44:02 :
やっとここまで来た。
後は指輪をここに投げ入れればすべては終わる。
アルミンは思わず力を込めて目一杯叫んだ。
アルミン「いっけええぇぇぇぇッ!!! エレェェンッッ!!!」
-
- 49 : 2015/07/17(金) 01:44:31 :
エレン「・・・・・・・・・・・・指輪は、俺のもんだ。」
-
- 50 : 2015/07/17(金) 01:45:08 :
――――――――えッ!!??
エレンは一体何て言ったッ!?
ここまで来て!
ここまで来て!!
エレンが誘惑に・・・・・・負けたっていうのかッ!!!
アルミン「・・・・・・ダメだ・・・・・・エレン! ダメだよ・・・・・・。」
振り返ったエレンは鎖を引きちぎり、右手の親指と人差し指で指輪を摘まんだ。
エレン「・・・・・・・・・・・・ははッ。」
笑みを浮かべると、そのままエレンは左手の人差指に指輪を嵌めた。
刹那、エレンの姿が消えた。
アルミン「ダメだぁああぁぁああぁぁぁぁッ!!!」
虚しい絶叫が、サンマス・ナウアに響き渡った。
-
- 51 : 2015/07/17(金) 13:22:11 :
その瞬間、暗黒の塔バラド=ドゥアに大きな衝撃が走った。
指輪の力を感じ取ったサウロンが、自らの命を繋ぎ止めている累卵の危うきをようやく悟ったのである。
サウロンの意識は一切の策略から脱し、圧倒的な勢いで滅びの山に向けられた。
これまで戦ってきたオークたちは完全に忘れ去られたのだ。
忘れ去られたオークたちには巨大な混乱が転がり込んだ。
あるものは浮足立ち、あるものは逃げ出し、あるものはわが身を刺した。
サウロンの召し出しに風よりも早く応じたのはナズグル――――――指輪の幽鬼であった。
大鷲たちとの戦いを投げ出し、おぞましい獣に鞭打って、滅びの山へと向かい始めた。
-
- 52 : 2015/07/17(金) 13:22:54 :
―――――ダメだ!
ダメだダメだ!!
ダメだダメだダメだ!!!
ペタッ
ペタッ
近づいてくる足跡を見ながら、アルミンは動揺していた。
頭が真っ白になり、目の前の出来事についていけなかった。
ドカッ! アルミン「あ”ッ!」
後頭部に重量のある一撃を喰らい、昏倒するアルミン。
背後からスメアゴルが手に持った石でアルミンを強打したのだ。
そのままスメアゴルは足跡を見つけ、その足跡のほうへと飛び掛かった。
エレン「うあッ! このッ!」
はたから見ると、まるでスメアゴルが浮いているように見えた。
目に見えない相手と格闘するスメアゴル。
と、次の瞬間、スメアゴルが何かを掴んだ。
スメアゴルがその何かに噛みつき、強引に引き千切った。
エレン「ぐあああぁぁああぁぁぁぁッ!!!」
姿を再び現したエレン。
指輪を嵌めていた左人差し指を噛み千切られ、エレンはその場に倒れた。
そして、スメアゴルは噛み千切ったエレンの指から一つの指輪を抜き取って、上へとかざした。
-
- 53 : 2015/07/17(金) 13:23:53 :
-
スメアゴル「ああぁあぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・。」
―――――――遂に、わしらの手に戻ってきた。
もう二度と離さない・・・・・・・・・・・・愛しいしと!
スメアゴル「・・・・・・やった・・・・・・やったよぉッ! 愛しい! 愛しい!! 愛しいしとぉ!!!」
その場で飛び上がって喜びを表現するスメアゴル。
エレン「ぐぅ・・・・・・うおおぉおおおぉッ!!!」
再び立ち上がったエレンが指輪を取り戻そうとスメアゴルの手を掴んだ。
滅びの罅裂のはるか真上にある崖の上で、二人はもみ合った。
指輪を求め、お互いの敵意をむき出しにして、
そして・・・・・・・・・・・・
-
- 54 : 2015/07/17(金) 13:24:47 :
-
二人の姿が、崖の上から消えた。
落下しながら、スメアゴルは指輪を胸に抱いた。
―――――――これで永遠にわしらのもの・・・・・・愛しいしと。
スメアゴルは、指輪と共に、溶岩の中へと落下していった。
意識を取り戻したアルミンが滅びの罅裂を覗いた。
アルミン「エレェンッ!!!」
何とかエレンは、崖に掴まっていた。
アルミン「手を伸ばしてッ! 僕の手を取ってッ!!!」
左手を伸ばすエレン。
だがその手は、血で滑って受け取れなかった。
アルミン「ダメだッ!」
エレン「!!!」
アルミンが涙を流し、エレンに懇願した。
アルミン「先に逝かないで。
お願いだ・・・・・・僕を置いて、逝かないで・・・・・・。」
エレン「アルミン・・・・・・。」
アルミン「手を伸ばしてッ!!!」
エレンが大きく左手を伸ばし、アルミンがしっかりとエレンの左腕を掴んだ。
-
- 55 : 2015/07/17(金) 13:26:22 :
モルドールに大きな衝撃が走った。
ゴンドールとローハンの戦士たちが見たのは、広大な裁きの館。
底いなき牢獄の数々。
牙をむき出しにする黒門。
そして、暗黒の塔バラド=ドゥア。
これらのものが次の瞬間には、大きな音を立てて瓦解し始めた。
一つの指輪が永遠に葬り去られ、力の根源を失ったモルドールは、破滅的なカタストロフを起こし、すべてが崩壊し始めたのだ。
ジャン「あの野郎! やりやがったッ!!!」
マルコ「エレェェンッ!!! アルミィィンッ!!!」
ライナー「でかしたぞッ!!! あいつらッ!!!」
-
- 56 : 2015/07/17(金) 13:27:08 :
旅の仲間たちも歓喜に沸いた。
リヴァイとアニも瞳に涙をため、
ガンダルフは堪え切れずに涙を流した。
戦士たちが歓喜に沸く中、崩れゆくバラド=ドゥアの塔の頂上で燃えていた目が弾けた。
サウロンが遂にこの世から駆逐され、モルドールは地殻変動を起こして地面が割れ、生き残ったオークたちを悉く飲み込んでいった。
そして、滅びの山が・・・・・・・・・・・・大噴火を起こした。
ナズグルが飛来するや、その激しい噴火に巻き込まれて、散り散りになって燃え尽きていった。
マルコ「・・・・・・・・・・・・そんな、エレン。アルミン。」
-
- 57 : 2015/07/17(金) 13:27:51 :
-
滅びの罅裂よりせり上がってくる溶岩から逃げるエレンとアルミン。
サンマス・ナウアから走って抜け出し、間一髪、二人は岩の上へとのがれた。
岩の上に座ったエレンは、大きく息を吐いて、呟いた。
エレン「やっと・・・・・・終わったんだな・・・・・・アルミン。」
アルミン「うん・・・・・・僕たち、やったんだね。」
激しく岩の周りを流れる溶岩を見つめながら、アルミンも呟く。
エレン「俺・・・・・・・・・・・・思い出したんだ。いちごの味も、パンの味も、そよ風の感触も、川のせせらぎも・・・・・・・・・・・・。」
アルミン「エレン?」
エレンはアルミンを見つめると、久しぶりに屈託なく笑った。
重荷は永遠に取り除かれ、快活なあのエレンが戻ってきたのである。
エレン「それに、あのガンダルフの花火・・・・・・じいちゃんの誕生会のことも、思い出したんだ。」
アルミン「君は僕を無理やりクリスタのところに押し出したよね?」
エレン「はは、そうだったな。いつまでも遠巻きで顔を赤くしてやがったから、ついからかいたくなったんだよ。」
アルミン「ふふ、いい思い出になったよ、エレン。」
-
- 58 : 2015/07/17(金) 13:28:55 :
アルミンは涙ぐみながら、言葉を継いだ。
アルミン「もし僕が結婚するなら・・・・・・クリスタだって決めてたんだ・・・・・・。」
エレン「アルミン・・・・・・。」
アルミン「ふふ・・・・・・・・・・・・さて、エレン。僕らはもう・・・・・・眠るとしようか?」
エレン「・・・・・・あぁ、そうだな。」
エレンはアルミンの頭に右手を回し、抱き寄せてから呟いた。
エレン「この最後の時に、お前がいてよかったよ。」
二人は途端に眠くなり、そのまま並んで横になった。
アルミン「おやすみ、エレン・・・・・・・・・・・・。」
エレン「あぁ、おやすみ、アルミン・・・・・・・・・・・・。」
-
- 59 : 2015/07/17(金) 13:29:32 :
二人はそのまま、意識を手放した。
薄れゆく意識の中で二人は、飛んできた大鷲に優しく掴まれて、天へと運び去られていった―――――――・・・・・・。
-
- 60 : 2015/07/17(金) 13:34:03 :
- 以上で第15話は終了です。
次回が最終話になります。
あと一スレで終わってしまうのは嬉しいような、寂しいような気持ちですが、頑張って最後まで執筆していきますので、よろしくお願いします<m(__)m>
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