このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品は執筆を終了しています。
リヴァイ「王の帰還」 ⑦ 進撃×ロード・オブ・ザ・リング
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- 1 : 2015/07/11(土) 22:24:55 :
- 進撃×ロード・オブ・ザ・リング、王の帰還、第13話です。
よろしくお願いします<m(__)m>
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- 2 : 2015/07/11(土) 22:26:21 :
およそ70年前のこと。
ゴンドールに二人の有能な武将がいた。
一人は執政の息子であり、もう一人は素性の分からぬ男。
二人はゴンドールのため、精力的に務めを果たし、彼らの活躍でモルドールの進撃は食い止められた。
だが、執政の息子の心は晴れなかった。
周りから見ても、父の評価でさえ、執政の息子は常に二番手。
その為に、彼は鬱屈とした気性を持つようになった。
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- 3 : 2015/07/11(土) 22:27:49 :
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執政の息子に先んじる、鋭い三白眼をもつ男は自らゴンドールを去り、息子は執政になった。
執政には美しい妻がいた。
鬱屈とした気性を持つ執政も、彼女の前では素直になれた。
彼女との間に、二人の男の子を儲け、執政は幸せを感じていた。
不幸は突然、やってきた。
体の弱かった妻が病死。
それに合わせるかのごとく、モルドールの影は次第に濃くなってきた。
こうして、執政の心はますます頑迷になり、更には未来を見た ことによって、ますます絶望を深めた。
二人の息子さえも失った。
全てを奪われた執政は遂に発狂し、今に至る。
第13話
ロッド・レイスの火葬
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- 4 : 2015/07/12(日) 01:21:51 :
ラス・ディネンにある王侯貴族の霊廟。
その中央にある台に薪を積み、息子のエルドを横たえたロッド候は、息子の額に手を当てた。
ロッド「魂の住処が崩れていく・・・・・・熱で、熱で既に燃えている。」
すると、霊廟にマルコが入ってきた。
マルコ「まだ生きていますッ!!!」
必死に薪をどかそうとするマルコ。
執政は、しかし、マルコを掴むと、引き摺り始めた。
マルコ「止めてくださいッ! 執政殿ッ!! エルドさんはまだ生きてますッ!!!」
ロッド「さらばだ、マルコ・ボット。そなたの私に対する奉公を解く!」
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- 5 : 2015/07/12(日) 01:22:33 :
ロッドは霊廟からマルコを放り投げると、呟いた。
ロッド「後は好きなところへ何なりと行き、望むような死を遂げるがいい。」
ギイイイイ・・・ バタンッ!
扉が閉じられると、中から声が響いた。
ロッド「油を注げッ!!!」
―――――――――このままじゃ、エルドさんが本当に生きたまま燃やされてしまう!
マルコは走り出した。
けが人や死体で混乱する戦場を駆け巡り、声を上げた。
マルコ「ガンダルフッ!!! 何処にいるのッ!!! ガンダルフッ!!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 6 : 2015/07/12(日) 01:23:57 :
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辺りの暗さが和らぎ始め、白み始めた空からは、炎にくるまれた投石の降り注ぐ。
夜通し攻撃を受け続けたミナス・ティリスの第一環状区は炎上。夥しい死体で埋め尽くさた。
サシャが奮迅して弓を取り戦うも、城門を破られ、大軍に攻め立てられ、進退窮まる状況に置かれていた。
ナック「部隊長! ナナバさんとゲルガーさんが討死!」
ミーナ「ケイジさんもあえなく最期を遂げました!」
死傷者もすでにかなりの数に達している。
――――――――もう、ここは、もたない。
サシャ「撤退や。ここはもうあかん・・・・・・。」
指揮官は、撤退を決断した。
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- 7 : 2015/07/12(日) 01:26:11 :
飛蔭に跨ったガンダルフが叫んだ。
ガンダルフ「撤退じゃッ!!! 城門が破られた!!! 第二環状区まで撤退せよッ!!!」
ナイル「女子供を早く逃がすんだッ!!!」
ハンジ「命を無駄にするなッ! 撤退だッ!!!」
―――――――――ゴンドールの兵士たちは、第一環状区を放棄し、第二環状区へと撤退を始めた。
敵の副総大将ゴスモグは戦況を見て、命令を下した。
ゴスモグ「都へと進撃せよ。出会う敵は皆殺しだ。」
外で待機していたオークたちが次から次へと進撃していく。
陥落した第一環状区では、まさしく地獄絵図のように、恐怖と混乱が渦巻いた。
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- 8 : 2015/07/12(日) 16:55:45 :
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殿を務めるゴンドールの兵士たちは勇敢に戦ったが、暴虐な敵の前に散っていった。
兵士たちの断末魔の声が聞こえ、
逃げ惑う女子供の悲鳴が聞こえ、
蹂躙する敵たちの怒号が聞こえ、
都に満ちた混沌と恐怖の協奏曲は、鳴り止むこともなく続いた。
ガンダルフ「戦えッ! 最後の一兵になっても戦うのじゃッ!!!」
馬上から杖を振るって戦うガンダルフにも、疲労の色は隠せない。
ガンダルフ「!!!」
するとそこへ、マルコが走ってきた。
マルコ「ガンダルフッ!!!」
ガンダルフ「どうしたのじゃッ!? マルコ!?」
マルコ「ロッド候が発狂しましたッ!!! エルドさんを生きたまま焼こうとしていますッ!!!」
ガンダルフ「なんと!? 乗れッ!!!」
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- 9 : 2015/07/12(日) 16:57:00 :
ガンダルフはマルコを引っ張り上げ、自分の後ろに乗せると、王宮へ向かって走り出した。
バサァッ!!!
ガンダルフマルコ「「!!!」」
王宮へ急ごうと駆けだした矢先、
ガンダルフたちの前に、おぞましい獣が飛来。
上に乗っているのはナズグルたちの首領。
黒の総大将―――――――アングマールの魔王。
馬上で杖を構えるガンダルフ。
ガンダルフ「闇へと戻るがいい! 主人共々地獄へと落ちろッ!」
すると、あざ笑うかのように魔王が言葉を発した。
魔王「死を前にしてそれが分からぬとは愚かな奴め。わが時が来たのだッ!!!」
剣を抜く魔王。
その剣に冷気が集中し始める。
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- 10 : 2015/07/12(日) 16:59:02 :
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バアァンッ!!!
ガンダルフ「ぐあッ!」
マルコ「うわぁッ!」
突如として杖が破壊され、弾けた勢いでガンダルフとマルコが落馬した。
グオオォオォォッ!!!
杖を砕かれ、おぞましい獣に気圧され、立ち上がることもままならないガンダルフ。
冷気を思うままに操る魔王が剣に冷気を集中させ、
ガンダルフの杖を砕いたのである。
魔王「お前の負けだ。人間の世界は終焉を迎える。」
魔王は剣を振り上げ、おぞましい獣に襲撃の合図を出そうとした。
丁度その時だった。
夜明けを迎えたペレンノール野に、角笛が暁角を告げるがごとく、鳴り響いた。
角笛の音を聞いた魔王は、音のした方を見やり、もう一度ガンダルフを見下ろすと、そのまま飛び去っていった。
――――――――ローハンの援軍、到着。
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- 11 : 2015/07/12(日) 17:00:19 :
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愛馬、雪の鬣に跨ったピクシスがペレンノール野から白い都を眺めた。
―――――――第一環状区が炎上し、周りは20万もの大軍に囲まれている。
ジャン「マジかよ・・・・・・笑えねぇ。」
あまりの大軍に、かすかに声の震えるジャン。
あの中に、マルコはいやがるのか。
ゴスモグ「とっとと列を整えねぇか、このグズどもめ!
槍部隊は前衛、弓箭部隊は後ろへ展開しろッ!」
オークたちが陣形を変え、ローハンへの迎撃態勢を取り始める。
すると、ピクシスは先陣を馬で駆け始め、指示を出し始めた。
ピクシス「イアンッ! お前は右翼へ展開じゃッ!
ハンネスッ! お前はわしと共に中央じゃッ! 我らの王旗を掲げよッ!
コニーッ! お前は左翼じゃッ! 敵を側面から討てッ!」
その声は、今まで聞いたことがないほど澄み渡り、王の決意を感じさせるものであった。
ピクシス「さぁ行けッ! 闇を恐れるなッ!
行くのじゃッ! ピクシスの騎士たちよッ!
槍を大いに振るえッ! 敵の盾を砕くのだッ!
剣の日だッ!
赤き日だッ!
そして日は昇るのだッ!!!」
日の出の光が、差し込み始めた。
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- 12 : 2015/07/12(日) 17:01:01 :
斜めから差し込む朝日に煌めく槍を構えるローハンの騎兵たち。
対抗するかのように、モルドールの軍団も槍を構える。
デルンヘルム「大丈夫だ、私が付いている。」
ジャンの後ろに乗るデルンヘルムが声をかける。
置いていかれそうになったジャンを馬に乗せ、戦いへと導いてくれた恩人。
デルンヘルム「友人のためだろ? 勇気を持て。」
ジャン「言われなくても分かってんだよ。」
デルンヘルム「ふっ、そうだったな。」
遠くから剣がぶつかる音がする。
ピクシスが最前列を駆け抜け、兵士たちが構えた槍に剣をぶつけて鼓舞する。
ピクシス「時は今ッ! 時は今ッ!!
破滅を目指し、世界の終わりへと進撃せよッ!!!」
ピクシスは剣を天に突き上げて吼えた。
ピクシス「死だぁあぁぁぁッ!!!」
死だぁあぁぁぁッ!!!
呼びかけに答え、叫び声をあげるローハンの兵士たち。
ピクシス「死だぁあぁぁぁッ!!!」
死だぁあぁぁぁッ!!!
ジャンは静かに、目を瞑った。
―――――――仲間のため、マルコのため、俺は最後まで戦い抜いてやる!
ピクシス「死だああぁああぁぁぁぁッ!!!」
目を開けて、ジャンは目一杯吼えた。
ジャン「死だああぁああぁぁぁぁッ!!!!」
デルンヘルム「死だぁああぁぁぁぁッ!!!」
大地を揺るがすばかりに、ローハンの騎兵およそ六千が死を叫んだ。
ピクシス「エオルの子らよッ! 前進せよッ!!!」
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- 13 : 2015/07/12(日) 17:01:48 :
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角笛が吹き鳴らされ、六千の騎兵が進撃を開始。
先陣を切るピクシスは、まるでヴァラールの神の一人である狩人オロメにも見まがうほどだった。
ゴスモグ「撃てッ!!!」
ゴスモグの号令で、矢が雨の如く降り注いだ。
矢に撃たれ、地に臥した兵士は少なくなかったが、それでも勢いは止まらなかった。
ハンネス「うおおぉおおおぉッ!!!」
イアン「行くぞおおぉおぉぉッ!!!」
コニー「おおぉおぉぉぉッ!!!」
ゴスモグ「撃てッ! 撃てッ!!!」
慌てた副総大将の命で次々に矢が放たれるも、走り出したら止まらないローハンの進撃を止められない。
ジャン「うおぉおおぉぉぉぉッ!!!」
叫び声に気圧され、モルドール軍は動揺し始めた。
ピクシス「突撃ッ!!!」
勢いよく進撃してきたローハンの騎兵が、モルドールの大軍へと衝突。
蹄が大地を揺るがし、剣や槍がオークを血祭りにあげ、
ローハンの六千の騎兵は、オークの20万の大軍を、まさに破竹の勢いで切り裂き始めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 14 : 2015/07/13(月) 16:57:57 :
ボタタタタ・・・・・・
ロッド「・・・・・・油は・・・・・・目に染みるな・・・・・・。」
薪の積まれた台の上、横たえられたエルドのそばに立って頭から油を被った執政は、静かに部下に命じた。
ロッド「我ら二人に火をかけろ。」
そのままロッドは両手を拡げた。
四方に取り囲んだ部下たちが、ゆっくりと松明を薪に近づけていく。
バァンッ!
飛蔭が霊廟の扉を蹴り開け、上に乗ったガンダルフが叫んだ。
ガンダルフ「そなたは正気を失われたのかッ!!!」
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- 15 : 2015/07/13(月) 16:58:26 :
ロッドは部下の一人から松明を左手でひったくった。
ロッド「お前に何が分かるのだ、ミスランディア。例え今日このいくさに勝利できたとしても、東に勃興せしかの力を前に、決して勝利は訪れんッ!!!」
すると、ロッドは懐から石を取り出した。
右手にわしづかみにしているのは、黒瞑々とした、丸い石。
ガンダルフ「それは・・・・・・パランティアの石ッ!?」
視る石、パランティアには、互いに通信機能を持っている。
執政のもつミナス・アノールの石は、元々弟王アナリオンの持つ石であった。
そしてそれは、兄王イシルドゥアの石、ミナス・イシルの石に最もよく繋がるよう調整されていた。
つまり、今現在ミナス・イシルの石を持つサウロンに、この石の通信は繋がった。
ロッドの精神はサウロンに侵され、次第に疲弊していった。
石はサウロンの勢力を、実際よりも大きく映し出し、執政を狂気へと駆り立てた。
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- 16 : 2015/07/13(月) 17:00:26 :
ロッド「フンッ!」
ロッドが薪の上に松明を投げつけ、火葬台に炎が燃え上がった。
マルコ「!!! エルドさんッ!!!」
ガンダルフの後ろに乗ったマルコが叫んだ。
ガンダルフは入り口に立っている衛兵の槍をひったくると、火葬台へと駈け出した。
ガンダルフ「はぁッ!」
バキッ! ロッド「がはぁッ!」
槍の柄の部分でロッドを火葬台から叩き落とす。
マルコは馬上から火葬台に飛び移り、渾身の力を込めてエルドを押した。
マルコ「うおおぉぉおおぉぉッ!!!」
火葬台から二人は転げ落ち、マルコは何とかエルドを救出した。
マルコ「良かった、エルドさん・・・・・・まだ、生きてる・・・・・・。」
涙を流しながら、マルコが呟いた。
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- 17 : 2015/07/13(月) 17:01:14 :
ロッド「はっはっはっはっはっ・・・・・・あはははははッ!!!」
横になったまま高笑いを始めるロッド。
ゆっくりとロッドは立ち上がり、狂気の表情で言った。
ロッド「そうか・・・・・・私は息子までも奪われるのかッ! いいだろう、息子を連れていくがいいッ!! 私はかく、最期を遂げるッ!!!」
混濁する意識の中で、エルドはうっすらと目を開けた。
エルドの目が捉えたのは、火葬台の中に、自ら飛び込む父の姿だった。
エルド「とう・・・・・・さん・・・・・・。」
あははははははははッ!!! ああッ!!! ぐあああぁぁああぁぁぁぁッ!!!
火だるまになった執政はそのまま外へと走り出した。
ガンダルフ「エクセリオン・レイスの息子、ロッド・レイスが逝く・・・・・・。」
ロッド候はそのまま庭園を駆け抜け、ミナス・ティリスの中央にせり出した丘の先から身を投げ出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 18 : 2015/07/13(月) 19:49:20 :
- 今更だけどサシャの故郷の言葉可愛いw
期待です!
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- 19 : 2015/07/14(火) 11:14:30 :
- いつも期待ありがとうございます!
どこでサシャを出そうか迷っていましたが、ここで出せてよかったです。
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- 20 : 2015/07/14(火) 11:15:04 :
ローハンの騎兵は、オークの大軍をものともせずに突き進んでいく。
ジャン「はあぁあぁッ!!!」
デルンヘルム「うおおぉおおぉぉッ!!!」
二人の騎士は息を合わせて近づくオークたちを駆逐。
先陣を切って駆けていくピクシスは名剣ヘルグリムを縦横無尽に振り回し、立ちふさがるオークをたちどころに切って捨てた。
イアン「大河へと追い込めッ!」
後退を始めたオークの大軍を見て、イアンが指示を出す。
ピクシス「都を救うのじゃッ!!!」
声をあげ、敵を追い立てるローハンの王。
このまま上手く追い立ててれば、あるいは勝機があるかもしれん。
そう思った矢先だった。
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- 21 : 2015/07/14(火) 11:15:30 :
ドシンッ! ドシンッ!
オークの大軍が逃げていくその先に見たのは、
いつかエレンとアルミンがイシリアンで目撃した巨象、ムマキル。
その牙には刃が取り付けられ、その背中にはやぐらが付けられ、ハラドリムの人間たちが弓を抱えている。
ドンッ! ドンッ! ドンッ!! ドンッ!!!
およそ三十頭のムマキルが、ローハンの騎兵めがけて走り出し、背中に乗ったハラドリムが雄叫びを上げる。
ピクシス「隊を整えろッ! 整えるのじゃッ!!!」
ピクシスの号令に合わせ、列を整えるローハンの騎馬軍。
ピクシス「角笛を吹き鳴らせッ! 突撃じゃッ!!!」
ハンネスが角笛を吹き鳴らし、騎兵が一斉に駈け出す。
ムマキルの群れが雄叫びを上げ、刃のぎらつく牙を振り上げた。
第14話
ペレンノール野の合戦
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- 22 : 2015/07/14(火) 11:16:15 :
グシャアッ!!!
そこから先は、まさに血の雨が降り注いだという表現が相応しい。
振り下ろされる牙に潰され、取り付けられた刃に串刺しにされ、或はその巨大な踏みつぶされていくローハンの騎馬軍。
そして、やぐらの上からは、ハラドリムたちの矢がこれでもかというほど降り注ぎ、大地を血で染め上げた。
騎兵たちは散開。
側面に回り込んではムマキルに矢を浴びせていく。
コニー「あの象の下に潜り込め!」
コニーが先陣を切り、ムマキルの下に潜り込む。
何人かの部下がコニーと一緒に下から矢を浴びせる。
やぐらの先頭、ムマキルの頭上に立つハラドリムの族長がこれに気が付いた。
ムマキルの両耳に取り付けた縄を引っ張り、ムマキルの動きを巧みに操る族長が、真下にいるコニーたちに襲い掛かった。
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- 23 : 2015/07/14(火) 11:16:38 :
グシャッ!!!
グシャッ!!!
コニーの両隣にいた騎兵たちがムマキルの後ろ足に踏みつぶされる。
踏みつぶす度、族長は残虐な雄叫びを上げた。
コニー「く、クソォ・・・・・・。」
一人になりながらも必死に矢を放つコニー。
そんなコニーを踏み潰そうと、族長が縄を引っ張った刹那。
ドスッ! 族長「ぐあああぁぁああぁぁぁぁッ!!!」
イアンが投げた槍が族長の胸を貫通。
族長はムマキルから見て左側へ落下し、宙づりになった。
グオオォオォォッ!!!
族長の遺体に左耳を引っ張られ、ムマキルは左折し、隣のムマキルと衝突。
二匹とも横転し、そのまま息絶えた。
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- 24 : 2015/07/14(火) 11:17:08 :
血しぶき舞う戦場の中を、ジャンとデルンヘルムが駆け抜けていく。
デルンヘルム「ジャンッ! 左だッ!」
ジャン「分かってるッ!」
懸命に手綱を引き、敵の間を駆け抜けるジャン。
デルンヘルムは敵の剣を奪い取り、両手に剣を持った状態ですれ違いざまに敵を斬り倒していく。
すると、目の前にムマキルの一頭が現れ、その巨大な牙を振り下ろす。
ジャン「一気に駆け抜けるぞッ!!!」
何とかその牙を躱し、ムマキルの下を走るジャン。
デルンヘルム「はぁッ!」
デルンヘルムは両手の剣でムマキルの前足を切りつけ、次に後ろ足を切り裂いた。
足を切りつけられたムマキルは、大きな地響きを立てて倒れ込んだ。
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- 25 : 2015/07/14(火) 11:17:29 :
イアン「頭を狙えッ!!!」
イアンの指示でムマキルの頭に矢が集中。
ムマキルは悲鳴を上げて前足を上げた。
ピクシス「引き倒すのじゃッ!!!」
浮足立ったムマキルを仕留めるようにピクシスが命じる。
丁度そこへ駆けてきたデルンヘルムが槍をムマキルの後ろ足に投げた。
後ろ足を貫かれたムマキルはバランスを崩し、地面へと倒れる。
ジャン「なッ!?」
デルンヘルム「うわッ!!!」
ムマキルはジャンたちの目の前に倒れ、その衝撃で二人は落馬。
凄まじい土煙に、ジャンとデルンヘルムは、互いを見失ってしまった。
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- 26 : 2015/07/14(火) 11:18:08 :
ふとデルンヘルムが見ると、オークたちがピクシスを包囲しているのが見えた。
ピクシスは71歳と高齢にもかかわらず、馬上から懸命に剣を振るって応戦している。
デルンヘルム「そこをどけぇえぇぇぇッ!!!」
デルンヘルムは剣を拾うと、王を包囲するオークたちに斬りかかった。
ピクシスは、デルンヘルムが剣を振るって戦う姿をちらと見、それから再び自身も剣を振るった。
ジャン「ゲホッ! ゲホッ!」
ジャンが何とか立ちあがると、倒されたムマキルに乗っていたハラドリムの人間たちがジャンに襲い掛かった。
ジャン「おらぁッ!!!」
ジャンも剣で応戦。
ガラドリエルから貰ったノルドールの短剣で敵を斬り裂き、力の限りを尽くす。
ガシッ! ジャン「!!!」
小さい体躯を敵に持ち上げられるジャン。
ジャンはその敵の喉を切り裂き、心臓に刃を突き立てた。
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- 27 : 2015/07/14(火) 11:18:52 :
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王を守るため、次から次へと敵を斬り倒すデルンヘルム。
ゴスモグ「グオオォオォォッ!!!」
そこへ、敵の副総大将が斬りかかった。
バキィン! バキィン!
殺気を漲らせ、剣を交えること数回。
剣を受け止め、地面へと刃を付けると、咄嗟に右手でゴスモグを殴った。
少しよろけたゴスモグを突き放し、剣を再び突き立てると、これは躱され、ゴスモグが反撃に転じた。
バキィッ!
何とか受け止めたデルンヘルムがゴスモグの剣をはじき、そのままゴスモグの足を切りつけた。
スパァッ! ゴスモグ「グアアァアァァッ!!!」
足を切りつけられ、ゴスモグはその場に倒れこんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 28 : 2015/07/14(火) 11:19:22 :
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ドゴォンッ!!! ドゴォンッ!!!
ゴンドールの兵士たちは、第一環状区からの撤退を終え、第二環状区の扉の前に集合していた。
その扉はトロルの持つ巨大なハンマーに何度もうたれ、間もなく突破される。
扉から少し離れたところに、マルコとサシャ、ガンダルフが座り、静かにその時を待っていた。
サシャ「ミスランディア・・・・・・私たちはもう・・・・・・ここでおしまいなんでしょうか?」
暗い表情でガンダルフに尋ねるサシャ。
自分の率いていた部隊の大部分を壊滅させられ、防衛していた第一環状区を落とされ、サシャは深く絶望していた。
マルコ「これが最後だなんて・・・・・・。」
思わずマルコも呟いた。
周りにいるナイルやハンジ、ナックやミリウス、トーマス、ミーナも、一様に暗い表情をしていた。
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- 29 : 2015/07/14(火) 11:20:46 :
ガンダルフ「最後?」
少し微笑んで、ガンダルフは穏やかに語り始めた。
ガンダルフ「死は次の大いなる旅の始まりにすぎんのじゃ・・・・・・。」
彼岸を語るガンダルフの目は不思議なくらい透き通り、その声はいつにも似ずに穏やかだった。
ガンダルフ「灰色の雨の帳が銀色のガラスに変わり、そして、見るじゃろう・・・・・・。」
マルコ「何を見るのです?」
ガンダルフ「白い岸辺に・・・・・・その遥か先にひろがる緑の地を・・・・・・。」
サシャ「それは・・・・・・悪くない世界ですね。」
ガンダルフ「左様・・・・・・悪くない。」
サシャもガンダルフと同じように静かにほほ笑む。
終焉を前にして、ゴンドールの兵士たちの心に、静かな安らぎが広がっていく。
ドゴオンッ!!!
第二環状区の扉にひびが入った。
ガンダルフが小さく頷き、剣の柄に力を込める。
その場に居合わせた兵士たちも覚悟を固め、サシャは弓を持ってゆっくりと立ちあがった。
マルコ「さぁ、戦おう。」
その小さな体に勇気を込めて、マルコは第二環状区の扉へと進み始めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 30 : 2015/07/14(火) 16:34:26 :
ムマキルの群れに蹂躙されたローハンの軍は、今や散り散りになっていた。
ピクシスは状況を打開するため、隊列を立て直そうと大声を上げた。
ピクシス「我が騎士たちよッ! わしの元へと集うのじゃッ!!!」
すると、上空から絶望的な金切り声が谺した。
ピクシスが見上げると、そこへおぞましい獣が襲い掛かった。
ピクシス「ぐあああぁぁああぁぁぁぁッ!!!」
そのままピクシスは馬ごとおぞましい獣に噛みつかれ、思いっきり投げ出され、息絶えた雪の鬣の下敷きになって地面に臥した。
飛来したものの恐怖に馬が耐えられず、集った騎士たちは散開していく。
希望を絶望に変えるべく、黒いフードに王冠のような兜をかぶった黒の総大将、アングマールの魔王はおぞましい獣に命じた。
魔王「さぁ、奴の肉を喰らうがいい。」
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- 31 : 2015/07/14(火) 16:35:31 :
ピクシス「ゴフッ・・・・・・。」
吐血するピクシスにおぞましい魔物が近づいてくる。
するとそこへ、兜をかぶった一人の兵士が立ちふさがった。
デルンヘルム「王に指一本触れてみろ! 私がお前を殺すッ!」
魔王「ナズグルと獲物の間に入り、邪魔立てをするでない。」
一瞬のにらみ合いの後、おぞましい獣が首を伸ばして噛みついてくる。
デルンヘルムはそれを躱すと、持っていた剣を一閃。
スパァッ!!!
振り下ろされた刃が、おぞましい獣の首を切断した。
首を無くしたおぞましい獣がその巨体を揺らし、横に倒れた後もぴくぴくと痙攣したように動く。
その隙にデルンヘルムは盾を拾い、右手に剣を持って戦闘の構えを取った。
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- 32 : 2015/07/14(火) 16:37:14 :
おぞましい獣から振り落とされた魔王がゆっくりと立ちあがった。
魔王は右手に剣を持ち、
左手には・・・・・・巨大なモーニングスターが握られていた。
鋭い金切り声と共にモーニングスターを振り下ろす。
ドスッ!
まるで地面に突き刺さるかのように棘のついた鉄球が落下。
そのまま魔王は体を回転させてモーニングスターを横に振り回す。
しゃがんで避けるデルンヘルム。
と、今度はしゃがんだところに上から鉄球を振り落とす。
ドスッ!
何とか躱したが、バランスを崩すデルンヘルム。
この隙を逃さず魔王は次の一撃を加えてきた。
バキャアッ!!!
デルンヘルム「ぐあッ!!! あ・・・・・・。」
魔王の力は圧倒的だった。
身体を素早く回転させ、勢いをつけたモーニングスターは、回避が間に合わずに構えた盾を粉々にし、デルンヘルムは後ろへと吹き飛ばされてしまった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 33 : 2015/07/14(火) 17:09:00 :
ゴンドールの軍がミナス・ティリスの第二環状区で、ローハンの軍がペレンノール野で死闘を繰り広げている最中。
大河アンドゥインにて不穏な動きがみられた。
サウロンが密かに同盟を結んでいたウンバールの海賊の一団が遂に到着したのである。
オーク「いつも遅いなお前らはッ! 切り刻む仕事が残ってるぞッ!!」
出迎えのオークたちが意気揚々と近づいていく。
海賊の大船団がようやく港に到着し、彼らは勝利を確信したのである。
オーク「とっとと降りて来いッ!!! ゴロツキどもめッ!!!」
リヴァイ「はあッ!!!」
アニ「よっとッ!」
ライナー「うおぉおぉぉッ!!!」
降りてきたのは、しかし、人間にエルフに、ドワーフだった。
ライナー「敵の数に不足はねぇなッ! 手柄はこのライナーがいただくぞッ!!!」
リヴァイが燃えるような剣を抜き、アニが弓を構え、ライナーが斧を振り上げて突進してくる。
その背後から、無数の幽霊軍団が船の中から次々に現れた。
オーク「なッ!!! グアアァァアァァァッ!!!」
幽霊の一撃になすすべもなく駆逐されるオークたち。
幽霊を従えたリヴァイは海賊どもを駆逐。
そのままリヴァイたちは海賊船に乗って、戦場まで馳せ参じたのである。
ライナーとアニが、またしても駆逐数競争を始め、
リヴァイが煌めくアンドゥリルの剣を振るい始めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 34 : 2015/07/14(火) 17:09:42 :
デルンヘルム「がはぁッ・・・・・・ああぁッ・・・・・・。」
モーニングスターに腕を傷つけられ、身動きが取れないでいたデルンヘルムの首を、魔王は掴んで持ち上げた。
―――――――い、息が・・・・・・。
魔王「愚か者め・・・・・・人間の男にこのわしは殺せぬ。」
魔王は自身に関する予言を知っていた。
魔王はデルンヘルムをあざ笑い、手に力を込めて言い放った。
魔王「死ぬがいい・・・・・・人間。」
ジャン「うおおぉおおおぉッ!!!」
ドスッ!!! 魔王「ギィイアアァァァアァァァァッ!!!」
背後からジャンがノルドールの短剣を突き立てた。
ジャン「ぐああぁああぁぁッ!!!」
ジャンの腕に鋭い痛みが走り、剣は見る影もなく焼け縮れたが、
その一撃は魔王の呪われた肉体を切り裂き、彼をデルンヘルムの前に跪かせた。
魔王の手から逃れたデルンヘルムは右手に剣を取って、その兜を外した。
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- 35 : 2015/07/14(火) 17:11:00 :
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リコ「私は・・・・・・女だッ! うおおぉおおおぉッ!!!」
ドスッ!!! 魔王「グオオォオォォッ!!!」
リコは剣を魔王の暗いフードの中に突き立てた。
ギイイィイィィィイィイィィイィィィッ!!!
剣がひとりでに弾き飛ばされ、次の瞬間には魔王の被っていた兜や、纏っていた鎧がグシャグシャに潰れ始めた。
悲鳴に近い金切り声が上がった後、鎧や兜、黒い衣服が音を立てて地面に転がった。
――――――――人間の男には殺せない。
魔王にまつわるこの予言は、ジャン とリコ の手によって遂に成就した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 36 : 2015/07/14(火) 17:21:34 :
元ネタ知ってるけどこれすごいや
期待です
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- 37 : 2015/07/14(火) 18:14:54 :
- 期待&お気に入り登録ありがとうございます!
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- 38 : 2015/07/14(火) 18:15:29 :
アニ「17ッ! 18ッ!」
ライナー「19ッ! 20ッ!」
アニが弓矢で、ライナーが斧で敵を駆逐し、互いに駆逐数を競い合う。
戦況は完全に逆転した。
リヴァイが幽霊軍団を引き連れ、総大将を討たれたオークとハラドリムの連合軍は総崩れになり始めた。
リコ「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・ジャン・・・・・・。」
魔王を討ったリコは、しかし、魔王の放つ黒の息に冒され、自力で立つこともままならなかった。
ゴスモグ「グオォォ・・・・・・この小娘が・・・・・・。」
するとそこに、先ほど足を切りつけたゴスモグが棍棒を持って現れた。
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- 39 : 2015/07/14(火) 18:16:03 :
リコ「ぐ・・・・・・。」
必死に這って移動し、剣を掴もうとするリコ。
ゆっくりと近づいてくるゴスモグ。
必死に手を伸ばすが、剣に手の届かないリコ。
そんなことはお構いなしに、ゴスモグは棍棒を振り上げた。
リヴァイ「はぁッ!!!」
スパァッ! ゴスモグ「グアッ!!!」
リヴァイの剣がゴスモグの振り上げた右腕を切断。
そのままライナーが胴体に斧を突き立て、加えてリヴァイが剣を後ろから突き立てた。
ゴスモグ「グアアァァアァァァ・・・・・・。」
副総大将も討死し、戦局は一気に有利になった。
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- 40 : 2015/07/14(火) 18:16:44 :
リヴァイ「!!! アニッ!!!」
アニが振り返ると、巨大なムマキルが近づいてきた。
弓矢とナイフしか持たないアニに刃のついた牙を振り上げる。
するとアニはムマキルめがけてまっすぐに走り出した。
ライナー「!!! 止めろッ!!! アニッ!!!」
振り下ろされる巨大な牙。
アニは、しかし、その牙に掴まり、そこから右前脚へ、次に右後ろ脚へと飛び移った。
ムマキルの体に生えている毛に掴まり、ゆっくりとアニはやぐらの後ろに立った。
アニに気が付いたハラドリムたちが矢を向けるも、矢を放つ速度においてアニに勝てない。
アニ「33ッ! 34ッ!」
こんな時さえ競争を忘れないアニ。
次から次へとアニの矢に討たれていくハラドリムたち。
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- 41 : 2015/07/14(火) 18:17:22 :
矢では勝てないと思ったのか、槍を持ってやぐらから次々と、今度はアニに飛び掛かるハラドリムたち。
だが、アニに接近戦を挑んだのは自殺行為だった。
アニ「39ッ! 40ッ!!!」
強烈な蹴りを喰らい、不幸なハラドリムたちは次から次へと地面へ落ちていった。
そのままアニはやぐらから垂れ下がったロープにつかまり、ムマキルの胴体へ垂れ下がる。
ナイフを抜き、やぐらを支えている縄を切った。
ハラドリムたち「「「うわああぁああぁぁッ!!!」」」
やぐらが総崩れになり、地面へとずり落ちた。
やぐらに引きずられるようにムマキルの背中に移動したアニは一気に三本の矢をつがえ、ムマキルの頭に向けた。
ドスッ!
グオオォオオォッ!!!
頭を貫かれたムマキルは前のめりに倒れた。
アニはその鼻筋を滑って悠々と着地し、ライナーに向かってこれ以上ないくらいのドヤ顔を見せた。
ライナー「い、今のはまとめて一人分だッ!!!」
負け惜しみを言うも、既に勝負はついた。
今回の駆逐数競争は、アニに軍配が上がった。
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- 42 : 2015/07/14(火) 18:18:23 :
幽霊の軍はペレンノール野のムマキルやオークを悉く駆逐し、ミナス・ティリスの中に音もなく侵入していく。
20万もの大軍は、幽霊の軍に悉く討たれ、総大将であるアングマールの魔王、副総大将ゴスモグも駆逐された。
ゴンドールとローハンの軍は辛くも勝利を収めたものの、犠牲者の数は夥しく、払った代償はあまりにも大きかった。
リコはゆっくりと、馬の下敷きになったピクシスの元へと這って進んだ。
ピクシスは焦点の合わない目で呟き始めた。
ピクシス「お前が・・・・・・分かるぞ・・・・・・リコ・・・・・・」
リコ「伯父上・・・・・・。」
ピクシスの頭を優しくなでるリコ。
ピクシス「もう目が見えぬ・・・・・・わしは・・・・・・先祖の元へと逝く・・・・・・
これで・・・・・・恥じることなく・・・・・・先祖の仲間入りが出来る・・・・・・」
ピクシスは微笑み、リコの名前を呼んだ。
ピクシス「リコ・・・・・・リ・・・・・・・・・・・・」
リコ「・・・・・・うぅ・・・・・・うううぅぅぅ・・・・・・。」
リコはピクシスの胸にしがみつき、声を上げて泣いた。
ローハンの王、ピクシスは、彼が誇りとする先祖の元へと、旅立っていった。
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- 43 : 2015/07/14(火) 21:16:35 :
- 期待です!
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- 44 : 2015/07/15(水) 10:13:24 :
- いつも期待ありがとうございます!
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- 45 : 2015/07/15(水) 10:13:33 :
やがて、ミナス・ティリスの上空を覆っていた噴煙が途切れ始め、地上に光が差し込み始めた。
ゴンドールとローハンに勝利をもたらした幽霊の軍団は、リヴァイに迫っていた。
山の民の王『我らは共に戦った。』
ライナー「まだ駄目だ。戦いはまだ終わっちゃいない。お前たちの力が必要だ。」
ライナーは山の民の王に反論するも、山の民の王はその言葉に怒って言った。
山の民の王『戦えば誓いは果たされたと見なすと約束したはずだ!』
すると、リヴァイは極めて冷静に言った。
リヴァイ「そうだな、お前たちはよく戦った。逝け。」
リヴァイの言葉を聞いた山の民の霊は安らかな表情でゆっくりと目を閉じた。
一陣の風が吹いたかと思うと、その風に吹かれるように霊体は消えていった。
ガンダルフ「リヴァイ。」
ややあってガンダルフが、ゴンドールの諸将を引き連れてミナス・ティリスから出てきた。
ハンジやサシャ、ナイル以下ゴンドールの兵士たちとガンダルフは、都の窮地を救ったリヴァイたちに、ゆっくりと頭を下げた。
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- 46 : 2015/07/15(水) 10:14:31 :
―――――――戦いの後に残されたのは、癒しがたい傷跡だった。
ゴンドールとローハンはそれぞれの指導者を失い、夥しい死体が都の内外に横たわっている。
大切な人たちを奪われて、あちこちで悲鳴が聞こえ、嗚咽が漏れ、涙が流された。
イアン「伯父上ッ!!! リコォォォッ!!!」
亡くなったピクシス王と、氷のように冷たくなったリコを見つけ、イアンは泣き崩れた。
マルコ「ジャン! しっかりするんだッ!!!」
ジャンもリコと同様、氷のように冷たくなっている。
顔に生気が感じられない。
マルコは咄嗟に、風見が丘で魔王の必殺の短剣に刺されたエレンのようだと思った。
マルコ「ジャン!!! 俺を迎えに来てくれるんじゃなかったのッ!!! ジャン!!! ジャン!!!」
溢れる涙が止まらない。
まるで死んでしまったかのようなジャンを強く抱きしめ、マルコはうなだれた。
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- 47 : 2015/07/15(水) 10:15:45 :
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第六環状区、療病院。
先の合戦で傷ついたけが人は、この病院の中に運ばれた。
けが人の中には、リコやジャンと同じように、氷のように冷たくなった人間がたくさんいた。
ハンジ「・・・・・・これは、ナズグルの黒の息にやられたんだ。」
ハンジの分析によると、ナズグルたちは呪いのような黒い息を発しており、それに長時間晒されると、まるで死んだように冷たくなってしまうとのことだった。
特にアングマールの魔王に直接刃を刺したリコとジャンが重体で、二人は最早意識を失っていた。
するとそこへ、リヴァイがアセラス―――――――王の葉を持ってやってきた。
風見が丘でエレンが刺された後、呪いの進行を遅らせた時のように、リヴァイはアセラスを湯煎した。
まるでそこにすがすがしい朝が解放されたかのように芳しい香りが拡がる。
その場に居合わせたマルコやイアン、ハンジやナイルも、その香りに驚いていた。
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- 48 : 2015/07/15(水) 10:17:29 :
リヴァイがアセラスを湯煎した湯を布に染み込ませ、ゆっくりとリコやジャンの顔を拭った。
リコ「・・・・・・・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・。」
ジャン「・・・・・・・・・・・・お、俺は・・・・・・一体・・・・・・。」
驚くことに、二人の顔はみるみる生気を取り戻し、ジャンに至ってはすぐに意識を取り戻した。
リヴァイ「まったく、ホビットの頑健さにはあきれるばかりだな。」
ジャン「・・・・・・リヴァイ?」
リヴァイ「礼ならお前の片割れに言うんだな。」
マルコ「ジャンッ!!!」
嬉しさのあまり、しっかりとジャンを抱きしめるマルコ。
ジャン「!!! マルコ・・・・・・お前・・・・・・。」
ジャンはそれ以上何も言わず、ただただ抱き付いて、大声を上げて泣くマルコの背中をさすった。
イアン「リコ・・・・・・本当によかった。」
まだ意識は戻らないものの、安らかな表情になったリコを見て、イアンはそっと妹の手を取り、額に押し当てて涙を流した。
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- 49 : 2015/07/15(水) 10:18:40 :
ハンジ「驚いたね・・・・・・こんなことがあるなんて・・・・・・。」
ハンジは驚愕していた。
アセラスにこんな効用があることは、彼女の知識の範疇を超えていた。
だが、彼女にもまして驚いていたのは、ナイルだった。
ナイル「王の手は・・・・・・癒しの手。」
独り言のように呟くナイル。
ナイルはゴンドールの歴史や伝承に詳しい。それ故、ナイルは察したのである。
ナイル「ゴンドールの王が・・・・・・ご帰還なされた!」
ナイルはリヴァイの前に進み、膝を折ってこうべを垂れた。
実におよそ千年ぶりの王の帰還。
噂は瞬く間に都に広がり、戦いの傷が癒えない人々の間に希望をもたらした。
およそ70年前、若き武将として執政に仕えた男が今、都に王として戻ってきたのである。
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- 50 : 2015/07/15(水) 10:22:32 :
- 以上で第13話と第14話が終了になります。
次回は敵に捕らわれてしまったエレンと、救い出そうとするアルミンの話から始めます。
よろしくお願いします<m(__)m>
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- 51 : 2015/07/22(水) 00:57:43 :
- ハンジはイムラヒル大公?
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