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エレン「旅の仲間」 ⑤ 進撃×ロード・オブ・ザ・リング
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- 1 : 2015/05/14(木) 23:37:44 :
- 進撃×ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間の第5話です。
http://www.ssnote.net/series/2230
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- 2 : 2015/05/15(金) 00:43:04 :
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じゃあエレン、今日はゴンドリンの陥落についてのお話をするね。
エルフのノルドール族の上級王だったトゥアゴンは、ヴァラールの神々の一員、偉大なるウルモに導かれ、トゥムラデンの谷間にエルフの隠れ王国、ゴンドリンを作ったんだ。
白い大理石で作られたゴンドリンの都は、エルフの作った王国の中で、最も長く栄えた王国だった。
でも、トゥアゴンの甥だったマイグリンの裏切りによって、その王国の位置は大魔王モルゴスの知るところとなったんだ。
大魔王モルゴスはオーク、ドラゴン、そして・・・・・・・・・・・・灼熱と漆黒を司る悪鬼、バルログの大部隊を大要塞アングバンドからゴンドリンに派遣した。
伝説に残る熾烈な戦闘がここで行われた・・・・・・エクセリオンというエルフの英雄が、バルログの首領、ゴスモグと相打ちになったり、幾多の武勇伝が、そこで生まれた。
でも、壮絶な戦いの末、トゥアゴンは討死して、ゴンドリンは滅びたんだ。
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- 3 : 2015/05/15(金) 00:44:42 :
エレン「何だか・・・・・・切ない話だな。」
アニ「私たち、エルフにとっては忘れられない話だね。」
―――――俺たちは今、旅の途中で休息をとっていた。
ジャンとマルコはベルトルトとリヴァイから剣のレッスンを受けている。
俺たちは何をしていたのかというと、いつものようにアルミンから古の物語を、アニと一緒に聞いていたってわけだ。
アニ「エレン。あんたが使っているつらぬき丸は、もともとはゴンドリンで作られたものだ。」
エレン「え!? ほ、ほんとか!?」
アルミン「ホントなの? アニ?」
アニ「そうだ。それに、ガンダルフが使っているグラムドリングの剣――――あれはゴンドリンの王だったトゥアゴンが差していたものだからね。」
エレアル「「!!!」」
―――――因縁というものが、この世の中には存在する。
この時、僕がゴンドリンの話をしたのも、もしかしたら、偶然ではなかったのかもしれない。
第5話
モリア坑道 ~カザド=ドゥムの橋~
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- 4 : 2015/05/15(金) 02:55:00 :
ライナーはガンダルフに、モルドールへ行くルートについて、自分の考えを述べていた。
ライナー「なぁガンダルフ、どうしてカラズラスの峠を越えるんだ?」
ガンダルフは大河アンドゥインを下り、ラウロスの大瀑布から東へ進路を取ってモルドールへと入る道を考えていた。
ただ、その場合、どうしても高峰連なる霧降山脈を超えなくてはならない。カラズラスの峠は間違いなく危険な道だった。
ライナー「モリアを通る道があるだろ?」
―――――ただし、モリア坑道という最も危険な道を除けば。
ガンダルフ「あの道はよほどのことがない限り行かないほうがいい。」
ライナー「何でだ? モリアには俺の親戚がいる。歓迎してくれるはずだ。」
ガンダルフの脳裏には、ダリスと一緒に冒険をした60年前のドワーフたちの姿が蘇っていた――――――その中でも最年長であり、白いひげを蓄えたドワーフであったバーリンは、このモリアに入植して以来、消息を絶ったままだ。
彼の生死を案じてはいたが、確かめることは出来ない。私情を挟んで全員を危険には晒せない。
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- 5 : 2015/05/15(金) 02:56:23 :
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ジャン「おらッ!」
マルコ「はぁッ!」
練習としてジャンとマルコがベルトルト相手に剣で攻撃。
ベルトルトは片手でこれをうまく捌いていた。
リヴァイ「腕だけで剣を振るうな。足のステップが弱い。」
ベルトルト「ほらほら、どうしたの? このままじゃ君たちの負けだよ?」
ジャン「くそ、でっけえ図体しやがってッ!」
マルコ「別にそれ関係ないよね?」
ホビットは大柄でも120cmほどしかないのに対して、ベルトルトは192cmもあり、旅の仲間でもひときわ恵まれた体格をしていた。
次に身長の高いのがガンダルフで、180cm。ついでリヴァイが160cmだった。
アニ「3番目に背が高いのが、リヴァイだとはね。」(153cm)
ライナー「それは俺に対する嫌味か、アニ?」(130cm)
―――――ドワーフはホビットに次いで身長の低い種族である。
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- 6 : 2015/05/15(金) 09:30:44 :
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ジャン「おりゃッ!」 マルコ「うりゃッ!」
ベルトルト「うわ!? ひ、卑怯だよ!」
ジャンとマルコが一斉にベルトルトの足をひっかけて転ばせた。
ジャン「勝てばいいんだよ!」 マルコ「そういうことさ!」
ベルトルト「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!! やめ、くすぐら、はひひひひひ!!!」
アニ「やれやれ・・・・・・。」
ライナー「全くこいつらはイタズラ坊主だな。」
―――――アニは呆れつつ、ライナーは微笑ましいといった様子で、二人のホビットと戯れるベルトルトを見ていた。
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- 7 : 2015/05/15(金) 09:32:39 :
アニ「!!!」
リヴァイ「何だ、アニ? 何が見える?」
―――――アニには鷹の目のような千里眼が備わっている。旅の仲間の誰よりも遠くを見通すことのできるアニは、それ故に弓の名手でもあった。
アニ「・・・・・・クレバインが来る。隠れるんだ。」
一同「「「!!!」」」
旅の仲間が休息をとっていた岩の陰に隠れてから数分後。
大きなカラス――――クレバインの群れが飛来した。
エレン「くそ、何なんだよ、こいつら。」
ガンダルフ「恐らくスパイじゃ。何もしゃべるな。」
クレバインは旅の仲間の周りを何週も旋回した後、元来た方向へ飛び去って行った。
アルミン「ガンダルフ、急ぎましょう! 敵は僕らの位置を掴んでます!」
―――――危機的な状況をいち早く察したのは、アルミンだった。
ガンダルフ「・・・・・・一刻の猶予もあるまい。急いでカラズラスの峠を越えよう。」
旅の仲間の一行は、カラズラスの峠への道を急いだ。
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- 8 : 2015/05/15(金) 09:33:22 :
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カラズラスの峠へと続く道は、厚い雪に覆われた霧降山脈の尾根。
足を取られて思うように進めない。
エレン「うわあぁあぁぁッ!」
エレンが転倒し、雪の斜面を滑り落ちた。
リヴァイ「無事か? エレン?」
エレン「な、なんとか・・・・・・。」
リヴァイに受け止められ、何とか体勢を立て直すエレン。
・・・・・・・・・・・・あれ、指輪が・・・・・・。
エレン「指輪が・・・・・・・・・・・・ない!?」
転がり落ちる途中、指輪を通した鎖がエレンの首から外れた。
雪の上に落ちた指輪を――――ベルトルトが拾い上げた。
ベルトルト「こんな指輪のために・・・・・・僕らは・・・・・・。」
リヴァイ「おい、指輪をエレンに返せ。」
リヴァイの言葉にハッとして、ベルトルトは我に返った。
ベルトルト「はは・・・・・・返すよ、エレン。こんな指輪・・・・・・・・・・・・。」
鎖を持ってエレンの目の前に指輪を差し出す―――――ひったくるようにエレンは指輪を握ると、再びその鎖を首にかけた。
リヴァイ「」
リヴァイはゆっくりと、剣の柄にかけた手から力を抜いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
飛び去ったクレバインはやがて―――――アイゼンガルドに到着した。
地面に掘られた巨大な穴の中に入っていったクレバインは、広い空間に出ると旋回を始めた。
その旋回の中央にいる人物は、クレバインの報告を受け取った。
サルマン「そうか・・・・・・ガンダルフはカラズラスの峠へ行くつもりか。」
サルマンは一計を案じた・・・・・・堕落してひん曲がった彼は、底意地の悪い笑みを浮かべた。
サルマン「峠が超えられないのなら、次はどこへ、行くのかな?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 9 : 2015/05/15(金) 14:10:34 :
雪吹きすさぶカラズラスの峠は、崖を切り通してつくった非常に危険な道だった。
ただでさえ危険な道なのに、吹雪という悪天候まで重なって、視界が全く効かなかった。
雪をかき分け、皆が苦労する中、一人だけ雪をものともしないものがいた。
アニは雪の上を足跡もつけずに、自在に歩き回った―――――エルフは雪に対しても耐性があるのである。
アニ「何だろうね・・・・・・・・・・・・あの暗雲の奥から・・・・・・・・・・・・不気味な声が聞こえる・・・・・・。」
激しい吹雪にもかき消されないその声は・・・・・・呪いの声。霧降山脈に嵐を呼び寄せる強大な呪文。
ガンダルフ「サルマンだッ!!!」
リヴァイ「ちっ、この山を崩す気か、笑えねえッ!」
遥か遠く・・・・・・霧降山脈の尽きるところにあるアイゼンガルドから、呪詛の声は響き渡った。
ライナー「このままじゃ俺たちは全滅だ。引き返してモリアへ行こう!」
ガンダルフ「だめじゃッ!!!」
対抗呪文を唱え始めるガンダルフ―――――だが、勝負は初めから見えていた。
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- 10 : 2015/05/15(金) 14:14:45 :
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ゴロゴロ・・・
ガッ!!!
カラズラスの山頂に落雷。
山全体が咆哮し、引き起こされた雪崩が襲い掛かった。
アニ「ガンダルフッ!!!」
咄嗟にアニがガンダルフを道の奥に引き込むも、切り通しにいた旅の仲間全員が雪に埋もれてしまった。
アニ「ぷはぁッ!」
ライナー「くそっ、このまんまじゃ俺たちは全滅だ。」
アルミン「危険すぎる・・・・・・もうこれ以上は無理だよ。」
雪の中に埋もれていた仲間たちが顔を出す・・・・・・・・・・・・とりあえず死は免れたものの、アルミンの言う通り、これ以上カラズラスの峠を行くのは危険だった。それに・・・・・・
ベルトルト「引き返そう、ガンダルフ! ホビットたちが死んじゃうよ!」
体の小さいホビットたち―――――特にジャンとマルコが低体温症を発症していた。もう万に一つもこの峠を抜けられる可能性はない。
エレン「・・・・・・・・・・・・ライナーの言う、モリア坑道に行くしかねえか。」
エレンは呟いた―――――ガンダルフが斯様まで怖れる道を、進んでいく気にはなれなかったのだが、仕方がなかった。
ガンダルフ「・・・・・・・・・・・・決まりじゃな。」
サルマン「モリアの坑道を行くつもりか。強欲なドワーフたちが巣食ったあの場所へ・・・・・・・・・・・・。あまりにも地下深く掘りすぎた彼らは目覚めさせた――――漆黒と、灼熱の怪物を―――――・・・・・・・・・・・・
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 11 : 2015/05/15(金) 15:35:18 :
霧降山脈の麓まで、エレンたち旅の仲間は降りてきた。
ライナー「モリアの入り口は隠されてるからな。もし見つけられなきゃ領主ですら入れねぇ。」
――――第一紀の末、怒りの戦いで大魔王モルゴスがこの世界から駆逐された時、中つ国のベレリアンドと呼ばれたエリアは切り裂かれて海に没した。
その破滅的な戦いから逃げてきたドワーフが、霧降山脈の地下に築いた王国・・・・・・・・・・・・それがモリアだった。
モリアのドワーフは、ノルドール族のエルフと例外的に親しく、彼らが作った国であるエレギオンと交流があった。
だが、エレギオンがサウロンに滅ぼされると、ドワーフたちはモリアの門を固く閉ざし、それ以降彼らのうわさはほとんど聞かれなかった――――あまりに深く地下を掘りすぎて、ドゥーリンの災いと呼ばれる災厄を招いたということ以外は―――・・・・・・・・・・・・
ライナー「見ろ、モリアの壁だ。」
エレンたちの目の前に、巨大な絶壁が現れた。
目の前には湖があり、不気味で黒々とした水を湛えている・・・・・・・・・・・・この絶壁のどこかに、隠された入り口が存在する。
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- 12 : 2015/05/15(金) 16:36:13 :
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ガンダルフ「・・・・・・・・・・・・イシルディンじゃ。」
壁を調べていたガンダルフが声を漏らす。
アルミン「イシルディンって・・・・・・月と星の光に反応して光を放つ、あのイシルディンですか?」
ガンダルフ「ほう、良く知っておるのう、アルミン。」
エレン「流石は俺の相棒だな。」
アルミン「えへへ。」
空を覆っていた雲が途切れ、月の光が差し込んだ―――――――果たして月の光を受けたイシルディンが光を放ち、二本の柊に挟まれたモリアの秘密の入り口が浮かび上がった。
ノルドール族のエルフが作ったこの門には両者の友好を示す証として、それぞれの紋章がイシルディンで描かれていた――――モリアのドワーフの王冠と、ノルドール族のエルフを示す星々の紋章がそれである。
エレン「すっげえな・・・・・・どうやったらこんなもん作れんだよ?」
アルミン「世界は本当に広いね・・・・・・。」
ジャン「まぁ、こんなもん見れんだから、旅も悪くはねえな。」
マルコ「そうだね、ジャン。ここまで来て正解だったよ。」
―――――一様に感嘆の声を上げるホビットたち。
アニ「何だか、癒されるね。」
ライナー「ああ、俺たちがきっちり守ってやらねえとな。」
ベルトルト「ふふ、やっぱりそう思うかい。」
リヴァイ「・・・・・・・・・・・・悪くねぇ。」
―――――人間二人とドワーフ、エルフは、ホビットたちのそんなやり取りを聞いて、彼らを守る決意を新たにした。
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- 13 : 2015/05/15(金) 21:13:57 :
- ライナーか小さいと何か面白いww
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- 14 : 2015/05/15(金) 21:50:13 :
- リヴァイとアニはともかく、身長をバカにされるライナーってあまり例がないですよねw
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- 15 : 2015/05/15(金) 22:04:30 :
ガンダルフ「さて、扉にはこう書いてある――――”モリアの領主、ドゥリンの扉、唱えよ、友と、そして入れ。”」
一息つくと、ガンダルフは呪文を唱え始めた。
目の前の扉はピクリとも動かない。
いや、まさかね・・・・・・・・・・・・。
今度は別の呪文を唱え始めるガンダルフ。
それでも開かないので、今度は手で押し始めていた・・・・・・・・・・・・これは・・・・・・・・・・・・。
ガンダルフ「やれやれ、昔はエルフや人間、オークの暗号を全て暗記しておった・・・・・・・・・・・・。」
ジャン「今は忘れてんじゃねえか!」
ガンダルフ「お前の頭でこの扉をかち割って見せろッ! さもなくばその余計な口を閉じんかッ!!!」
ジャン「うおっ!? 逆ギレかよ!?」
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- 16 : 2015/05/15(金) 22:05:11 :
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イライラして帽子を放り出したガンダルフと対照的に、アルミンは冷静になってこの扉の暗号を考えていた。
アルミン「あ、分かりましたよ、ガンダルフ!」
流石は旅の仲間の知恵袋・・・・・・・・・・・・アルミンはこの扉の謎をすぐに解いてみせた。
アルミン「エルフ語で友ってなんていうんですか?」
ガンダルフ「・・・・・・メルロン。」
大きな音が響く―――――モリアの秘密の入り口が、大きな音を立てて開いた。
ベルトルト「流石だね! アルミン!」
ライナー「全く大した奴だな。」
二人の兄貴分に頭をくしゃくしゃに撫でられ、アルミンはまんざらでもなさそうに言った。
アルミン「うん、単純な仕掛けだったからね。」
ガンダルフ「全く・・・・・・・・・・・・お前にはいつも驚かされる。」
エレン「だろ? こいつはやべえ時ほど力を発揮するんだ。」
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- 17 : 2015/05/15(金) 22:17:07 :
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坑道の入り口に入ると、ライナーは語りだした。
ライナー「ここがモリアの王国だ。今にもてなし好きなドワーフたちが現れるぞ。ドワーフのモルトビールは最高だぜ? 坑道とは思えねえだろ?」
ライナーの問いに、ベルトルトは真っ青になって答えた。
ベルトルト「うん、ここは・・・・・・・・・・・・坑道じゃない・・・・・・・・・・・・」
ベルトルト「まるで墓場だ!!!」
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- 18 : 2015/05/15(金) 22:26:13 :
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―――――モリアの入り口には、朽ち果てて白骨化したドワーフたちの亡骸がそこかしこに転がっていた。
ライナー「お、おい・・・・・・・・・・・・何だよ、こりゃ・・・・・・。」
自分の想像していた場面とあまりにも違う惨状に、ライナーは言葉を失った。
リヴァイ「これは・・・・・・・・・・・・オークどもがやったんだな。死体にオークの弓矢が刺さってやがる。」
――――ここを通るのは、どう考えても危険すぎる。
アニ「これはマズいね・・・・・・・・・・・・引き返そう!」
エレンたちが引き返そうとしたその時だった。
ガシッ! エレン「うわっ!!!」
エレンが突然視界から消えた――――と思うと、いきなり後ろへと滑り出した。
ジャン「!!! エレン!!!」
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- 19 : 2015/05/15(金) 22:27:14 :
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湖から伸びた触手に、エレンは左足を掴まれたのだ――――エレンを水中に引きずり込もうとするその触手は、太古から生きるおぞましき生き物だった。
マルコ「エレンが・・・・・・引きずり込まれる!!!」
ジャン「うおおぉおおぉッ!」
ジャンが剣を抜き、何とか触手を斬ってエレンを湖から守った。
エレン「す、すまねえ、ジャン。」
すると、逆上したおぞましき触手が、大量に襲い掛かった。
ジャン「ぐあッ!」
マルコ「うぐッ!」
二人が触手で吹き飛ばされ、リヴァイとベルトルトが助けに入った。
リヴァイ「はぁッ!」
ベルトルト「おりゃあッ!」
屈強な戦士二人が次から次へと触手を切るも、新たな触手が湖から出てくる。
エレン「ちっ! キリがねえ!」
エレンも何とか剣で応戦、触手を何本か切り落とした。
アルミン「皆! こっちに来るんだ!!!」
アニが弓を構え、正確な一撃を放つ――――触手が射抜かれた隙にエレンたちは走り出した。
旅の仲間はモリア坑道の中に逃げ込み、追ってきた触手が入り口を壊し、落石は入り口を闇に閉ざした・・・・・・・・・・・・。
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- 20 : 2015/05/15(金) 22:36:20 :
「最早・・・・・・・・・・・・選択肢はない・・・・・・・・・・・・。」
ガンダルフが杖を突くと、杖の先に明かりがともった。
ガンダルフ「この暗い暗い、モリアの坑道を行かねばならぬ・・・・・・・・・・・・ここを抜けるのに四日はかかる。音を立てて気付かれるな。」
極めて狭い道の上を俺たちは歩き始めた。
下は怖くて覗けない・・・・・・・・・・・・どこまで続いているか、見当がつかなかったから。
――――暗きところはどこまでも暗く・・・・・・・・・・・・
深きところは見えるところよりもさらに深く・・・・・・・・・・・・
底いなき闇に閉ざされた坑道―――――――モリアの中を、俺たちは進み始めた。
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- 21 : 2015/05/16(土) 13:58:47 :
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モリアの坑道は広く、しかも、進むところ進むところ、ドワーフたちの死体で満ちていた。
進みだして数時間もすると、壁の中に銀色の筋が入っている空間に辿り着いた。
ライナー「おい見ろよ、エレン。この銀の筋は―――ミスリルだ。」
エレン「ミスリル?」
アルミン「モリア坑道で取れる貴重な金属だよ。羽のように軽いのに、ドラゴンの鱗のように丈夫――――まさに理想の金属なんだ。」
エレン「そうなのか?」
ガンダルフ「うむ、ダリスはトーリンからミスリルの胴着を贈られておる。」
ライナー「!!! マジかよ・・・・・・王者の贈り物だ。」
ガンダルフ「ああ、ダリスは気付いておらんが、あの胴着にはホビット庄全体よりも価値がある。」
エレンは思った――――――その胴着を今着てるなんて・・・・・・言えない。
ガンダルフ「モリアはこのミスリルによって発展してきた―――――横の崖の下を少し覗いてみるといい。」
そういうと、ガンダルフは杖の光を崖の外へと当てた―――――照らし出されたのは、どこまでも続く深い穴に、複雑に組まれた足場。
ドワーフたちの採掘場の跡だった。
暗闇の中を行くこと数日、エレンたちは番人のドワーフたちの居住区へと入った。
斜面の上に、ドワーフたちの住まいがたくさん築かれている――――ここにある銀の食器や調度品が、かつてのモリアの繁栄を偲ばせていた。
居住区にある階段を昇り切ると、三つの分かれ道に出た。
ガンダルフはそこで足を止め、三つの入り口をなぞるように見渡してから呟いた。
ガンダルフ「この場所は・・・・・・・・・・・・記憶にない。」
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- 22 : 2015/05/16(土) 13:59:47 :
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ガンダルフはそのまま座り込み、ああでもないこうでもないと記憶をたどり始めた。
ジャン「ありゃ絶対に忘れたな。」
聞こえないようにマルコとアルミン、エレンに話すジャン。
マルコ「また怒られるよ?」
アルミン「でも、思い出せなきゃ先に進めないんだよね。」
エレン「そうなんだよなぁ・・・・・・ん?」
下の階段を覗いていたエレンの視界が、一匹の生物を捉えた―――――――裸同然の格好をしてをり、腰は曲がって、まるで蛙のように飛び跳ねて移動する小さな生物。
エレンは急いでガンダルフの元に報せに行った。
エレン「ガンダルフ、何かにつけられている。」
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- 23 : 2015/05/16(土) 14:00:23 :
すると、ガンダルフは既に知っているという風に、落ち着き払って答えた。
ガンダルフ「ゴラムじゃ・・・・・・3日前からつけてきておる。指輪の魔力に引き寄せられたのじゃろう。」
エレン「ゴラム? あいつが?」
ガンダルフ「うむ、指輪の魔力に捕えられ、心を蝕まれた男―――――――哀れなスメアゴル。惨めな人生じゃ。」
エレン「スメアゴル?」
ガンダルフ「奴は昔、そう呼ばれておった。」
――――――耳をすますと、奴の鼻息が聞こえてくる。
影の世界に僅かながら引き込まれているエレンの聴覚は、他の仲間たちよりも鋭くなっていた。
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- 24 : 2015/05/16(土) 14:01:09 :
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エレン「あいつ、モルドールから逃げ出してきたのか!?」
ガンダルフ「或は・・・・・・・・・・・・わざと放たれたか・・・・・・。」
気味の悪い話だ――――――ただでさえ大変な旅なのに、その上変な・・・・・・けだものに追われているなんて、考えただけで腹が立った。
エレン「どうしてダリスは殺さなかったんだよ。あんなけだもの、一突きで殺せるのに。」
ガンダルフ「情け じゃよ。情けがダリスの手を止めたのじゃ。」
エレン「・・・・・・・・・・・・情け?」
ガンダルフ「生あるものには、善か悪かには関わらず、何らかの役割がある――――あのゴラムとてそうじゃ。そしてその役割がどうかかわってくるかは、賢者とて予言は出来ん。」
エレン「そんなもんなのか?」
ガンダルフ「生きてほしいものが死に、邪悪なものが生き永らえる―――――この残酷な世界で、お前は死者を甦らせることが出来るのか?」
エレン「!!!」
―――――――そんなことは出来ない。どれだけ願っても、父さんや母さんは帰ってこない。
ガンダルフ「生死の判断を軽率にくだすでない。ダリスの情けは、他の人の運命を変えるかもしれん。」
一通り話が終わると、ガンダルフは立ち上がった。
ガンダルフ「さて、この右の道を行くとしよう。」
アルミン「思い出したんですね?」
ガンダルフ「いや、恐らく以前は二つの道を閉ざしてあった。塗り固めた壁がはがれてしもうたのじゃろう――――――右の道のほうが空気が新鮮じゃ。迷ったときは鼻を利かせることも大切なのじゃよ。」
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- 25 : 2015/05/16(土) 16:24:51 :
ガンダルフの選んだ狭いくだり道を抜けると、広大な空間へと出た。
ガンダルフ「ふむ・・・・・・・・・・・・少し危険じゃが、明かりを強めるとしよう。」
照らし出された空間は――――――巨大な大木を思わせる深緑の石柱が、何本も何本も連なって、モリアの繁栄を誇示する壮大な地下宮殿。
アルミン「凄いよ・・・・・・凄いよこれッ!!!」
エレン「あぁ・・・・・・こんな空間がモリアにあったなんてな・・・・・・・・・・・・。」
リヴァイ「・・・・・・・・・・・・悪くねぇ。」
ガンダルフ「ドワローデルフ・・・・・・・・・・・・ドワーフたちの築いた地下宮殿じゃ。」
――――――地下宮殿の第二広間は、ドワーフたちの王の威厳を示す、壮麗な広間であった。
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- 26 : 2015/05/16(土) 17:06:18 :
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ライナー「!!! おい、まさかッ!?」
いきなり走り出すライナー。
向かった先はマザルブルの間――――――モリアの領主の玉座がある広間。
外の日の光が、狭い採光用の窓から照らすのは・・・・・・・・・・・・部屋の中央に置かれた白くて小さな、棺だった。
ガンダルフ「故バーリン、フンディンの息子・・・・・・・・・・・・没していたか・・・・・・。」
ガンダルフも内心打ちのめされていた―――――かつての愉快なドワーフたち、その仲間の一人が、かくも無残な最期を遂げていたことに・・・・・・・・・・・・
ライナーはさらに、棺にもたれかかった死体に目をやる―――その装備に、ライナーは見覚えがあった。
ライナー「まさか・・・・・・・・・・・・お前、マルセルか!?」
―――――その遺体は、ライナーの幼馴染み、マルセル。その無残な亡骸であった。
がっくりと膝をつき、ライナーは雄たけびをあげた―――――悲鳴の混じった、哀しい咆哮だった。
ライナー「ぐおおおぉぉおぉぉおぉぉぉおおぉぉおおぉぉぉッ!!!」
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- 27 : 2015/05/16(土) 17:57:13 :
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ガンダルフは、息絶えたマルセルが懐に抱えている本を手に取った。
―――――その本は傷ついて持ち上げるとページが何枚か抜け落ちた。血が滲み、刃物で鋭く傷つけられていた。
ガンダルフ「・・・・・・・・・・・・マルセルはどうやら日記をつけていたようじゃな。」
後世、マザルブルの書として知られることとなる本を、ガンダルフは読み始めた。
―――――バーリンと一緒にモリアへ入植を始めたこと。
ライナーとまたいつか再会したいということ。
モリア入植は軌道に乗り始めているということ。
・・・・・・・・・・・・バーリンが突如、オークに襲われ、非業の死を遂げたこと。
そして―――――・・・・・・・・・・・・
ガンダルフ「オークたちは第二広間を占領した・・・・・・俺たちは堅く門を閉ざしたが、それでも奴らの侵攻を止められなかった・・・・・・・・・・・・。」
最後の文字は、激しく歪み、不正確だった・・・・・・・・・・・・今わの際に、書いたのだろう。
ガンダルフ「もう終わりだ・・・・・・・・・・・・逃げ道は・・・・・・ない・・・・・・奴らが来るッ!!!」
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- 28 : 2015/05/16(土) 19:23:31 :
ガコンッ!!!
ガンダルフ「!!!」
音のした方を振り返ってみるガンダルフ・・・・・・・・・・・・ジャンが井戸の上に座っていたドワーフ死体を不用意に触り、井戸の中に死体が落ちていった音だった。
大きな音を立てて死体は落下していった・・・・・・・・・・・・。
ガンダルフは顔から火が噴き出さんばかりの怒りの形相で、ジャンを睨みつけた。
リヴァイもイライラした目でジャンを見つめる。
全員に冷ややかな目線を浴びせられ、ジャンはいたたまれない表情になった。
ガンダルフ「何というマヌケめッ!!! 次は貴様を叩き落としてやるッ!!!」
ガンダルフは毒づくと、ジャンのお尻を杖で引っ叩いた。
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- 29 : 2015/05/16(土) 19:25:33 :
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地の底から・・・・・・・・・・・・太鼓の音が響き渡る。
全員の顔が、一斉にこわばった。
アルミン「エレン! 剣を抜いて!」
エレン「お、おう!」
アルミンの言われるままに剣を抜くと、刃が青く光っている。ガンダルフの剣も同様に光り始めた。
マルコ「オークが・・・・・・オークが来る!!!」
ベルトルトが扉を閉めようとすると、黒いオークの矢が飛んできた。
ベルトルト「うわっ!」
顔面めがけて飛んできた矢を間一髪躱すベルトルト。
リヴァイ「ちっ、気付かれたみてえだな。」
アニ「やるしかないね・・・・・・・・・・・・立てるかい、ライナー?」
リヴァイとアニが、ベルトルトと扉を閉じ、落ちているドワーフの斧で閂をかける。
ライナーはバーリンの墓によじ登り、勇ましく名乗りを上げた。
ライナー「ドワーフの戦士はまだ死んでねえ! いつでも来やがれってんだ!」
ドワーフの誇りを胸に、斧を構え、臨戦態勢に入るライナー。
ガンダルフも杖と剣を構え、ホビットたちの前に出る。
リヴァイ「おい、チビども。自分の身は自分で守れ・・・・・・・・・・・・来るぞ。」
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- 30 : 2015/05/16(土) 19:42:17 :
凄まじい地鳴りの音が響き、木製の扉に刃が突き刺さる。
扉に穴を、開けられていく。
ヒュン!
ドスッ! オーク「ギャアウウウ・・・・・・。」
アニの放った矢が、扉の向こうのオークを仕留めた。
バァン!!!
扉が蹴破られ、部屋の中にオークたちが殺到した。
リヴァベル「「うおぉおぉぉッ!!!」」
人間二人がまず突っ込み、オークたちと刃を交える。
ベルトルトがオークの胴体を薙ぎ払い、リヴァイもオークの首を刎ねる。
―――――人間二人は、息の合った連携を見せた。
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- 31 : 2015/05/16(土) 19:42:47 :
アニ「ふんッ!」
アニは遠くの敵には弓を射かける――――正確な一撃をもたらすアニ。
そして、近づく敵には・・・・・・・・・・・・
アニ「はぁッ!!!」
バキィッ!!! オーク「ギャアウゥウゥゥ!!!」
強烈なキックをお見舞いした。
ライナーも斧で応戦。パワフルな動きでオークを圧倒。
ライナー「おらぁッ!」
強烈なタックルと斧を組み合わせ、どんどん敵を吹き飛ばした。
-
- 32 : 2015/05/16(土) 19:43:15 :
ホビットたちはガンダルフに守られながらも、勇敢に戦った。
―――――エレンとジャンとマルコは一緒になって、向かってくるオークたちに短剣で抵抗した。
一方のアルミンは・・・・・・・・・・・・
アルミン「やッ!!!」 ベコンッ!
―――――料理用のフライパンと短剣で応戦していた。
アルミン「あれ? 僕って強い?」
ベコンッ! オーク「ギャアウッ!!!」
-
- 33 : 2015/05/16(土) 21:20:48 :
- アルミンw何でフライパン!?ww期待!
-
- 34 : 2015/05/16(土) 22:07:59 :
- いつも期待ありがとうございます!
アルミン、さりげなくお食事担当でしたので。風見が丘でソーセージ焼いてたのアルミンですしw
-
- 35 : 2015/05/16(土) 22:09:04 :
ドシン・・・ドシンッ!!!
ドゴオォォォンッ!!!
部屋の入り口の石のアーチを破壊し、部屋の中に大型のトロルが入ってきた。
―――――手には大きな棍棒を持ち、首には鎖のついた首輪が付いている。
トロル「グオオォォオオォォオオォォッ!!!」
大きく振り上げた棍棒は、アルミンめがけて振り下ろされた。
アルミン「うわあぁあぁぁッ!!!」
ドォンッ!!!
エレン「アルミンッ!!!」
アルミンは前に飛び込み、トロルの股の下に滑り込んだ。
-
- 36 : 2015/05/16(土) 22:09:58 :
リヴァイ「はぁッ!!!」 ベルトルト「おりゃあッ!!!」
トロルへ一斉に斬りかかる―――――リヴァイの刃がトロルの右手を切りつけ、ベルトルトの刃は左腕に傷を負わせた。
トロル「グアアァァアァァッ!!!」
バキッ! リヴァイ「ぐッ!!!」
バキャッ! ベルトルト「うわぁッ!!!」
逆上したトロルが二人を左手で殴っていっぺんに吹き飛ばした。
ライナー「おおぉおぉおぉぉッ!!!」
ライナーが斧で斬りかかる―――――胸に刺さったものの、傷は浅い。
ライナー「おわッ!!!」
ドゴォン!!!
棍棒を何とか躱すライナー――――トロルは次の標的に狙いを定めた。
-
- 37 : 2015/05/16(土) 22:14:34 :
-
エレン「くっ、俺かよ!!!」
真っ直ぐやってくるトロルの棍棒の一撃を躱し、エレンは右手に一太刀入れた。
トロル「グオオォオォォッ!!!」
刺された拍子に棍棒を取り落すトロル。
―――――今だ!!!
一気に近づいて斬りかかるエレン。
アルミン「駄目だエレンッ!!!」
バキッ! エレン「ぐはぁッ!!!」
右ストレートを腹部に喰らい、吹き飛ばされて壁に打ち付けられた。
エレン「がは・・・・・・・・・・・・あぐ・・・・・・・・・・・・」
-
- 38 : 2015/05/16(土) 22:33:19 :
-
ジャン「くそ、この死に急ぎ野郎が!!!」
マルコ「エレン!!!」
苦痛に悶えるエレンに近づくトロル―――――その目の前にリヴァイが立ちふさがった。
リヴァイ「こいつはどうだ!?」
リヴァイは落ちていたドワーフの槍を突き立てた。
トロル「ギャアウゥウゥゥ!!!」
左胸をわずかに外したものの、槍はトロルに突き刺さった。
だが・・・・・・・・・・・・
ガシッ! リヴァイ「!!!」
トロルは槍を掴み、引き抜いた。
そのままトロルは槍を大きく振り回し、リヴァイを吹き飛ばした。
リヴァイ「がはぁッ!」
ベルトルト「リヴァイ!!!」
-
- 39 : 2015/05/17(日) 12:59:44 :
-
引き抜いた槍をそのまま構え、トロルはエレンに近づく。
アルミン「エレンッ! 危ないッ!!!」
トロル「グオオォオォォッ!!!」
ドスッ!!!
エレン「かはッ!」
槍を左胸に突き立てられ、エレンは―――――倒れた。
アルミン「うわあぁあぁぁあぁぁぁああぁぁぁぁぁぁッ!!!」
アルミンの絶叫が・・・・・・・・・・・・虚しく谺した・・・・・・
-
- 40 : 2015/05/17(日) 14:48:50 :
ジャン「ぐ、テメェッ!!!」
マルコ「よくも・・・・・・よくもエレンをッ!!!」
二人のホビットが壁の足場からトロルの後頭部に飛び乗った。
ジャン「うぉおぉぉッ!!!」
マルコ「あぁあぁぁッ!!!」
交互に刃を突き立て、トロルは痛みに絶叫し、槍を手放した。
ガシッ! マルコ「うわぁッ!」
右足を右手で掴まれ、宙づり状態になるマルコ。
ガンダルフ「はぁッ!!!」
ガンダルフの一太刀がトロルの右腕を切りつけ、マルコは放り投げられた。
ドカッ! マルコ「痛いッ!」
マルコは運よくお尻から落下した。
ジャン「おらぁッ!!!」
ジャンの一撃がトロルの首筋を切り裂く。
トロル「グオオォォオオォォオオォォッ!!!」
ヒュンッ!
ドスッ! トロル「オオォオォ・・・・・・」
ジャンの一撃で口を開けたトロル―――――その口の中にアニが矢を射かけ、矢は頭を貫通。
二、三歩ぐらついたかと思うと、前のめりに倒れてそのまま絶命した。
-
- 41 : 2015/05/17(日) 15:01:58 :
アルミンはゆっくりと、倒れたエレンに近づいた。
―――――嘘だと思いたかった。
一緒に育ち、一緒に旅を夢見てきた親友が、今、目の前で殺された―――――左胸を、槍で貫かれて・・・・・・。
エレンのそばに座り込み、その背中にそっと触れた。
僕の目の錯覚でなければ、エレンはもう―――――・・・・・・・・・・・・
-
- 42 : 2015/05/17(日) 15:02:21 :
-
・・・・・・・・・・・・まだ、死んでねえよ・・・・・・・・・・・・
アルミン「・・・・・・・・・・・・えっ?」
致命傷を負ったはずのエレンが起き上がった―――――痛そうにしているけれど、重傷を負っている感じじゃない。
周りを見渡すと、一様にポカンとしている。
てっきり僕は・・・・・・・・・・・・死んだかと・・・・・・・・・・・・
そう思うと、また涙が溢れてきた。
ガンダルフ「お前は・・・・・・・・・・・・見かけ以上に頑丈じゃな。」
リヴァイ「おいガキ。右ストレートから槍の一突き――――どう考えても致命傷だ。なぜ無事でいられる?」
エレンはシャツのボタンを少し外した―――――シャツの下に、怜悧として輝く銀色のミスリルの胴着。
エレン「じいちゃんの・・・・・・・・・・・・おかげだな。」
それを見たライナーが、思わず苦笑いした。
ライナー「全く、お前にも驚かされるな。」
アルミン「もうッ! 心配させないでよッ! バカエレンッ!!!」
エレン「あででででッ!!!」
―――――アルミンはまたエレンに思いっきり抱き付いた。
-
- 43 : 2015/05/17(日) 15:27:54 :
ガンダルフ「よし・・・・・・・・・・・・カザド=ドゥムの橋まで走れッ!」
旅の仲間はマザルブルの間から出て、第二広間と第一広間を結カザド=ドゥムの橋へと走り出した。
背後から、天井から―――――オークの群れが這い出して来る。
マルコ「く、追いつかれちゃうよ!」
モリアに住み着くオークの群れの足は速く、エレンたちを包囲しようとする。
遂にオークたちの群れに囲まれてしまった。
エレン「ちっ、けだものどもめ、駆逐してやるッ!」
アルミン「いよいよ覚悟を、決めなきゃね!」
リヴァイ「テメェら、覚悟はいいな!?」
ライナー「当たり前だッ!」
ベルトルト「生き残るよ!」
ジャン「ああ、死に急ぎ野郎と一緒に死ぬのはごめんだからなッ!」
マルコ「確かに死ぬのはごめんだ!」
アニ「仕方ない、勝つよ!」
ガンダルフ「武器を構えろッ!」
―――――――――全員が覚悟を決め、武器を構えた。
-
- 44 : 2015/05/17(日) 15:36:30 :
遠くから・・・・・・・・・・・・重く引き摺るような咆哮が谺する・・・・・・・・・・・・。
オーク「ギャアウゥウゥゥ!!!」
――――――恐怖に駆られてパニックになったオークの群れが一目散に逃げ出した。
徐々にその咆哮が近づいてくる―――――――ドワローデルフの柱の間を、暗くて赤い炎が照らし出す。
全員がその谺するほうへ目を向けると、ガンダルフは諦観と決意の入り混じった表情を浮かべた。
ベルトルト「・・・・・・トロルの次は何なんだ。」
-
- 45 : 2015/05/17(日) 15:41:36 :
ガンダルフは目を閉じ、それからゆっくり目を開けて答えた。
ガンダルフ「・・・・・・・・・・・・バルログじゃ。」
その名前に、恐怖した仲間が三人いた。
アルミン「バルログって・・・・・・あのモルゴスのバルログ!?」
アニ「ゴンドリンを滅ぼした・・・・・・・・・・・・漆黒の闇と、灼熱の炎の悪鬼。」
ライナー「ドゥーリンの災いが・・・・・・・・・・・・ここに!?」
ガンダルフ「・・・・・・・・・・・・お前たちでは相手にならん・・・・・・・・・・・・逃げろッ!!!」
近づく炎の影の咆哮――――――バルログからの逃走劇が、始まった。
-
- 46 : 2015/05/17(日) 17:54:58 :
-
広間から狭い通路へと急ぐエレンたち。
ガンダルフ「早く行けッ!!!」
――――――ガンダルフが仲間たちを先に進ませる・・・・・・自分は一番後ろから追いかけた。
後ろを気にしながら狭い通路を抜け、階段を降って行くベルトルト。
ベルトルト「!!! うわぁッ!!!」
目の前の崖から落ちそうになるベルトルト――――――間一髪でリヴァイが服を掴み、後ろへと引っ張った。
通路を抜けると、広大な空間へと出た。
目の前には石で出来た巨大な下り階段―――――巨大で四角い石柱の上部にアーチを作って出来た階段が、下へ下へと続いている。
-
- 47 : 2015/05/17(日) 17:55:38 :
-
ガンダルフ「リヴァイ、お前が仲間を導けッ! 橋はあそこだッ!」
リヴァイの右肩を叩き、ガンダルフは旅の仲間をリヴァイに託した。
階段を下って行ったところ―――第二広間と第一広間の間に横たわる底いなき暗闇、幅約15mの断崖の上にかかるアーチ状の石橋――――――カザド=ドゥムの橋。
ガンダルフ「早く行けッ!!! 剣はもう役に立たんッ!」
エレンたち旅の仲間はリヴァイを先頭に、アーチ状の下り階段を急ぎ足で降り始めた。
-
- 48 : 2015/05/17(日) 20:00:32 :
-
しばらく降っていくと、階段のアーチ部分が崩れて隙間が出来ている個所に差し掛かった。
まずは身軽なアニが隙間を飛び越える。
ゴオオォオォオォォッ!!!
――――――階段の上にある狭い通路を突破しようと、追いかけてきたバルログが壁の向こうで炎を吹きだす。
アニ「ガンダルフ!」
次にガンダルフが飛び越えた。
ヒュンッ!
いきなり飛んできた矢は、アニの足元の階段に当たって奈落の底へ落ちていった。
アニ「オークが、射かけてきてるね。」
遠くにある足場の上から、オークたちが階段めがけて矢を浴びせかけてくる。
すぐさま弓を構えたアニが応戦。
ドスッ! オーク「ギィイィィイィィィッ!!!」
額を射られたオークが闇へと落下していく。
-
- 49 : 2015/05/17(日) 20:01:13 :
ベルトルト「ジャン! マルコ! うあぁぁあぁぁッ!」
両手で二人を掴んだベルトルトが踏ん張って隙間を超えた。
バキバキバキッ!!!
エレン「うおッ!」
アルミン「うわぁッ!」
階段の一部が崩れ、隙間はさらに大きくなる―――――体の小さいホビットはもう超えられないくらいに。
リヴァイ「アルミン。」
ガシッ! アルミン「うわあぁあぁぁッ!」
リヴァイが放り投げたアルミンを、ベルトルトがキャッチした。
次にリヴァイがライナーを見ると、ライナーは右手のひらをリヴァイに向けた。
ライナー「俺はなげなくていい! 飛べるからな! おらぁッ!!!」
カッコつけてジャンプしたライナーは、ギリギリで足が届くも、バランスを崩して後ろへ落ちかかった。
アニ「ライナー!!!」
思わず手を伸ばしたアニは、ライナーの髪の毛を掴んだ。
ライナー「ぐおおぉおぉぉッ! 髪はよせぇッ!」
何とかアニは、ライナーを引っ張り上げた。
-
- 50 : 2015/05/17(日) 20:02:15 :
バキバキバキッ!!!
リヴァイ「!!! エレンッ! 上に逃げろ!!!」
更に階段は崩れ、隙間は大きくなり、もはや飛べないほど大きくなってしまった。
アルミン「動かないで、二人とも! 僕が何とか考えるからッ!!!」
ゴオオォオォオォォッ!!! ゴアァアアァアァァアアッ!!!
壁の向こうでバルログが壁に突進。
その衝撃で階段のある空間にて、天井や壁の石が剥がれ落ちた―――――・・・・・・・・・・・・
ドゴォンッ!!!
エレン「なッ!?」
エレンとリヴァイの背後に岩が落下―――――階段のアーチ状になっている部分を破壊。
-
- 51 : 2015/05/17(日) 20:02:54 :
パラパラパラ・・・・・・
―――――エレンの乗っている階段の柱の根元に亀裂が走った。
ぐらつき始める階段。
リヴァイ「階段の前に出ろッ! エレン!」
ゴオオオオオッ!!!
柱が前のめりに倒れ始める・・・・・・・・・
アニ「来なッ!」
アルミン「エレンッ!」
ドゴォン!!!
エレンとリヴァイの乗った階段の柱が、他の仲間たちの乗った階段に衝突。
アニがリヴァイを、アルミンがエレンをそれぞれ受け止めた。
再び階段を降りはじめる仲間たち。
―――――崩れた階段の柱はそのまま横に傾き、壁に激突していくつかに砕け、そのまま落下していった。
-
- 52 : 2015/05/17(日) 20:13:15 :
-
ガンダルフ「早く行けッ!!! 早くッ!!!」
階段を降り切ったところでは、床に割れ目ができており、そこから炎が噴き出していた。
ボオォウッ!!!
割れ目から姿を現したもの―――――体内に炎を宿し、その暗黒の体から噴き出す炎を纏った上古の怪物、バルログ。
バルログ「ゴォオオォォォオオォォォオォォォッ!!!」
二本の垂れ下がった角と、大きな黒い翼を持つバルログの咆哮は、さながら爆風がそのまま声を持ったかのような灼熱の咆哮。
ゆっくりと追いかけてくるバルログから逃げるようにエレンたちは走っていく―――――人が一人、やっと通れるほどの幅しかないカザド=ドゥムの橋の橋を渡っていく。
最初にリヴァイ。次にベルトルト。ライナーとホビット四人組。アニが橋を渡り切った。
最後にガンダルフが橋を渡り始め――――・・・・・・・・・・・・
橋の中腹で振り返ってバルログと対峙した。
-
- 53 : 2015/05/17(日) 22:54:39 :
ガンダルフ「ここは通さんッ!!!」
驚いて振り返ったエレンが叫んだ。
エレン「おいガンダルフッ!!! 何やってんだよッ!?」
バルログの体から、激しい炎が噴き出す―――――悪しきその炎は、何物をも焼き尽くさずにはいられないような灼熱。
ガンダルフが左手に杖を構える―――――杖の先から放たれる光は一層強くなり、ガンダルフを包み込んだ。
ガンダルフ「わしは神秘の炎に使える者。アノールの焔の使い手じゃ。貴様の悪しきウドゥンの炎に負けはせぬッ!!!」
纏った炎が右手に集まり、剣の形を作り出す。
バルログは炎の剣を、ガンダルフに振り下ろした。
バルログ「グオオォオオォォオオオォォォッ!!!」
バキャァッ!!! ガンダルフ「はぁああぁあぁぁぁッ!!!」
激しき光の接触、刹那の一瞬に火花飛び散り、バルログの剣が砕かれた。
-
- 54 : 2015/05/17(日) 23:16:56 :
エレン「ガンダルフ。」
―――――今までよく知っていたはずのガンダルフが、見たこともないほどの強大な力を使って戦っている。
バルログ「ゴオオォオオォォォオオオォォォッ!!!」
負けじとバルログも咆哮する―――――その暗黒に包まれた灼熱は、底いなき地底を揺るがした。
ガンダルフ「生まれ出た闇に戻るがいい!!!」
バルログはカザド=ドゥムの橋に右足を踏み出し、右手に炎を集めた――――今度はしなる鞭の形をとり始める。
ガンダルフは杖を両手で持って掲げた。
ガンダルフ「ここは・・・・・・・・・・・・断じて・・・・・・・・・・・・通さんッ!!!」
ドゴォンッ!!!
勢いよく橋に杖を突くガンダルフ。
バルログ「グウゥゥ・・・・・・・・・・・・ゴオオォォオオォォォオオォォォッ!!!」
鞭を振り上げ、橋へ踏み出すバルログ。
ドゴォォォンッ!!!
――――――――――刹那、橋はガンダルフの目の前で砕け、バルログはそのまま闇へと落下していった。
-
- 55 : 2015/05/17(日) 23:17:42 :
アルミン「し、信じられない・・・・・・・・・・・・モルゴスのバルログを・・・・・・。」
エレン「すげぇよ、ガンダルフッ!!!」
――――――――ガンダルフが勝ったッ!!! バルログは闇へと落ちていったんだッ!!!
ガンダルフ「ふぅ・・・・・・・・・・・・。」
ヒュルルルルル・・・・・・・・・
パァンッ!!! ガンダルフ「ぐあッ!!!」
―――――――落下しながらふるった鞭が・・・・・・・・・・・・ガンダルフの右足を捉えた。
何とかたたき折った橋に掴まるガンダルフ。
-
- 56 : 2015/05/17(日) 23:18:11 :
-
エレン「!!! ガンダルフッ!!!」
ベルトルト「!!! 危険だッ!!! 行っちゃダメだッ!!!」
右腕でエレンを押しとどめるベルトルト。
ガンダルフ「行け、バカものッ!!!」
鞭に引っ張られ、捕まった手が・・・・・・・・・・・・離れた・・・・・・・・・・・・・・・・・・
エレン「うわあぁあぁぁあぁぁぁああぁぁぁぁぁぁッ!!! ガンダルフゥゥゥゥッ!!!」
橋の向こうから、バルログがいなくなったのを見たオークたちが矢を射かけてくる。
泣き叫ぶエレンを抱きかかえ、ベルトルトは走った。
-
- 57 : 2015/05/17(日) 23:20:09 :
-
よくやく出口を抜け、日の光の下へと僕らは出てきた。
どこかで覚悟はしていた―――――――何かを犠牲にしなければ、この旅は続けられないと・・・・・・・・・・・・。
でも、その最初の犠牲は・・・・・・・・・・・・よく笑い、よく怒る。あのガンダルフだなんて――――・・・・・・
アルミン「ああぁぁぁあぁぁああぁああぁぁぁぁぁッ!!!」
膝をつき、次に手をついた・・・・・・・・・・・・やっぱり僕は・・・・・・・・・・・・弱い・・・・・・・・・・・・
ジャン「何でだよ・・・・・・ガンダルフ・・・・・・・・・・・・。」
マルコ「ううぅ・・・・・・・・・・・・うぐっ。」
―――――――皆が悲しんでる・・・・・・僕らの心の支えを・・・・・・失って・・・・・・
ライナー「くそ、もう一度モリアの中に入り込んで助けてやるッ!!! ベルトルト!!! 俺を止めんじゃねえッ!!!」
ベルトルト「止めろッ!!! もう・・・・・・・・・・・・無駄なんだ・・・・・・。」
右腕でライナーを押しとどめるベルトルト。その目にも涙は浮かんでいた。
-
- 58 : 2015/05/17(日) 23:28:28 :
-
リヴァイ「・・・・・・・・・・・・アニ、全員を立たせろ。」
アニ「はッ?」
ベルトルト「休ませてやってよッ!!! 皆悲しんでるんだよッ!!??」
リヴァイ「日が沈めばオークどもが坑道から這い出てくる!!! テメエらは自分の身を自分で守れるのかッ!!??」
――――――正論だった。あまりに非情な正論・・・・・・・・・・・・嘆く暇すら、与えられない。
リヴァイ「さぁ立て、アルミン。」
涙を流すアルミンを立たせるリヴァイ―――――――アルミンも状況を理解し、悲しみを押し殺す。
リヴァイ「エレンは・・・・・・・・・・・・おい、エレンッ!!!」
エレンは一人・・・・・・・・・・・・ふらふらと歩いていた。
振り返るとエレンは涙を流した。
エレン「・・・・・・・・・・・・俺のせいで・・・・・・・・・・・・俺のせいで・・・・・・・・・・・・ガンダルフは・・・・・・・・・・・・。」
――――――――日暮れとともに、オークの大軍がやってくる。
オークを避けるため、悲しむ間もなく、僕らは次の目的地へと向かった。
もう一つのエルフの都――――――――ロスロリアンに・・・・・・・・・・・・。
-
- 59 : 2015/05/18(月) 11:30:06 :
- 以上でモリア坑道編は終了です。
ガンダルフが死ぬというのは、映画で見ていた私にも衝撃的な展開だったのを覚えています。
次回はロスロリアン編になります。
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