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エレン「旅の仲間」 ③ 進撃×ロード・オブ・ザ・リング
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- 1 : 2015/05/10(日) 17:51:13 :
- 進撃×ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間の第3話です。
http://www.ssnote.net/series/2230
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- 2 : 2015/05/10(日) 18:10:32 :
第3話馳夫
大雨の降りしきる中、四人の子供―――――のように見える四人のホビットが、ブリ―村の入り口へと辿り着いた。
エレン「ごめん下さい。」
入り口の門番がドアについた上のほうの窓を開け、次に下のほうの窓を開けた―――――この村にはホビットが来ることも想定して、低い位置にも窓が付いている。
門番「おやおや、ホビットの旦那方、いったい何の用ですかな?」
エレン「入れてもらえませんか? 宿を探しているんです。」
門番「勿論いいですとも。ようこそブリ―村へ・・・・・・。」
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- 3 : 2015/05/10(日) 18:11:23 :
―――――ブリ―村は一言で言うなら、飲んだくれの集まる村だ。
町中にどこからともなく集まった浮浪者が集い、一様に汚らしい格好をしている。
マルコ「こんなところに、ホントにガンダルフがいるのかなぁ?」
アルミン「こっそり会うにはおあつらえ向きだと思うな。」
エレン「灰色の浮浪者みてえなカッコしてるし。」
ジャン「言えてるな。」
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- 4 : 2015/05/10(日) 18:12:04 :
村の中心部まで歩いていくと、目的の店をエレンたちは見つけ出した。
エレン「ここが踊る子馬亭か。」
アルミン「ジャン・・・・・・。」
ジャン「やめろ・・・・・・俺を気の毒そうな目で見るな!」
マルコ「やっぱり気にしてたんだね。」
踊る子馬亭の中は人でごった返していた。
バタバー一族によって代々経営されてきたこの踊る子馬亭は、大勢の人間やホビット、ドワーフ、そして密かに魔法使いのガンダルフも愛用する古旅籠だった――――もちろんジャンの顔が馬面だという事実とは何の関係もない。
ジャン「強調すんじゃねえよ!」
アルミン「仕方ないよ、ジャン・・・・・・。」
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- 5 : 2015/05/10(日) 18:31:52 :
エレン「あの、すいません。」
店に入るなり、エレンは亭主のバタバーに話しかけた――――この旅籠屋は一階部分が飲食店になっていた。
バタバー「ん? 何ですかな?」
エレン「ここに、ガンダルフは来ませんでしたか?」
バタバー「ん?・・・・・・ガンダルフ・・・・・・ガンダルフ・・・・・・おお~~~、あの灰色髭の?」
エレン「え、ええ。」(なんだこいつ・・・・・・忘れっぽいのか?)
バタバー「ここ数年見かけていませんが?」
エレアル「「えっ!?」」
――――ガンダルフを遅いと思ったことはあったけれど、約束は基本的に守る人だ。ここに来ていないということを、俺たちは毛頭考えてもいなかった。
アルミン「何か・・・・・・あったのかもしれない。」
エレン「くそ、どうすりゃいいんだよ。」
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- 6 : 2015/05/10(日) 18:32:20 :
目的を見失った俺たちは、とりあえずこの旅籠で一服することにした。
マルコ「あれ、ジャン? それは?」
ジャン「へへへ、見りゃわかんだろ? ビールだよ、ビール!」
マルコ「お、俺ももらってこよ!」
ジャンとマルコが席を立った。
大勢の人間、ドワーフ、ホビットが酒を飲み、おつまみを食べ――――おもいおもいの時を過ごすその中で、
アルミンはふと・・・・・・・・・・・・自分たちを見つめるとある人物に気が付いた。
パイプを片手に煙をくゆらすその男はフードを被り、顔がよく見えない。
よく見ると剣と弓矢を装備しており、何か近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。
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- 7 : 2015/05/10(日) 18:34:36 :
アルミン「ちょっとごめんなさい。」
バタバーを呼び止めるアルミン。
アルミン「あの人・・・・・・さっきから僕らのことを見てるんですけど、一体誰なんですか?」
エレン「!!!」
聞こえないようにひそひそ話すアルミン。
バタバー「・・・・・・あの人はよく分からんですたい。どうやら野伏をしていて、その名を―――――馳夫 ということぐらしか。」
アルミン「・・・・・・・・・・・・そうですか。」
―――――この人、何か変だ。絶対何かある。
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- 8 : 2015/05/10(日) 21:40:29 :
- 続きが気になる|ω・)
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- 9 : 2015/05/11(月) 16:05:18 :
- コメントありがとうございます!
続きを投下します。
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- 10 : 2015/05/11(月) 16:05:54 :
・・・・・・・・・・・・イェーガー・・・・・・
・・・・・・イェーガー・・・・・・
―――――どこからともなく呼びかけてくる声に、エレンは耳を傾けていた。
胸ポケットから指輪を取り出し、無意識のうちにエレンは指輪をその手で弄りまわしていた。
「・・・・・・――――イェーガー? あいつだよ。あいつがエレン・イェーガーだ。」
エレン「!!!」
おい、馬面・・・・・・テメエなんで俺の名前を話してんだよ!? 俺たちは・・・・・・・・・・・・追われてんだぞッ!!!
頭の中を、猛烈な怒りが駆け巡り、エレンはジャンに掴みかかった。
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- 11 : 2015/05/11(月) 16:06:34 :
エレン「ジャン!!! なんで俺の名前を―――・・・・・・」
ジャン「テメッ、いきなり服掴むな! 破れちゃうだろうがッ!!」
エレンを突き飛ばすジャン。
そのまま仰向けに転倒したエレンの右手から、持っていた指輪が宙を舞い―――――・・・・・・・・・
次の瞬間には大騒ぎを引き起こした。
ジャン「!!! エレンが・・・・・・消えた!?」
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- 12 : 2015/05/11(月) 16:06:59 :
転倒した拍子に、エレンの右人差し指に指輪が嵌った。
―――――エレンは指輪を嵌めたことで透明になり、影の世界へと引きずり込まれた。
<・・・・・・・・・・・・お前が見えるぞ。>
エレン「!!!」
ふと振り返ると・・・・・・・・・・・・巨大な炎の目――――指輪に込められたサウロンの悪意そのものが具現化して迫ってきた。
<影の世界に生命は存在せぬ・・・・・・・・・・・・あるのは・・・・・・・・・・・・死だけだ・・・・・・。>
慌てて指輪を引き抜き、エレンは影の世界から生還する。
―――――店の中は引き続き大混乱に陥っていた。
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- 13 : 2015/05/11(月) 16:07:27 :
「おいッ!」
エレン「!!!」
いきなり肩を掴まれる―――――さっきまで座っていた馳夫 がこちらを睨んでいる。馳夫 「テメエの持ってる指輪は、玩具じゃねえんだぞ、クソガキ。」
エレン「!!! どうしてそのことを!?」馳夫 「話は後だ・・・・・・来い。」馳夫 に引きずられるまま、エレンは二階の宿泊部屋へと連れていかれた。
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- 14 : 2015/05/11(月) 16:27:35 :
エレン「ぐあっ!!!」
無理やり椅子に座らされるエレン。馳夫 「その指輪は身に着けりゃ人からは見えなくなるが、闇からは隠れられねえぞ。」
エレン「あなたは・・・・・・いったい何者なんですかッ!?」馳夫 はフードを取った―――――鋭い三白眼がこちらを睨みつけてくる。馳夫 「俺が怖いのか? エレン?」
エレン「!!! どうして俺の名前を!?」馳夫 「・・・・・・ガンダルフから話は聞いてる。俺は・・・・・・・・・・・・リヴァイだ。」
エレン「リヴァイ?」
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- 15 : 2015/05/11(月) 16:28:31 :
リヴァイ「!!!」
目にもとまらぬ速さで抜刀――――背後からの襲撃者に対して構える。
アルミン「僕は怖くないぞッ! エレンを放せッ!!!」
リヴァイの後ろには、アルミンとジャンとマルコが―――アルミンが丸腰で、ジャンが銀の燭台、マルコが椅子をもって構えていた。
リヴァイ「・・・・・・・・・・・・命知らずも大概にするんだな、ガキども。」
アルミン「ば、ばかにするな、僕だってやる時はやるんだ!」
リヴァイ「俺はテメエらに危害を加えるつもりはねぇ――――ガンダルフに替わって俺がお前らを『裂け谷』へ連れて行ってやる。」
アルミン「えっ・・・・・・・・・・・・『裂け谷』って、実在するんですか!?」
エレジャンマル「「「おいっ!!!」」」
さっきまでの殺意はどこへやら、あっさりアルミンが目を輝かせ始めたのを見て、一同は心底呆れていた。
エレン「流石は好奇心の塊だよ・・・・・・・・・・・・はぁ。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 16 : 2015/05/11(月) 20:41:06 :
パランティアの石の力は、遠くのものを覗くだけでなく、石を持つ者同士通信を取る機能がある。
サルマンはオルサンクの石を覗き、その通信はミナス・イシルの石を持つサウロンと繋がった―――――元々ガンダルフに対する嫉妬心を持っていた彼は、サウロンの手管を研究するうちに、自ら力の指輪を手に入れて、世界を支配しようと望むようになった。
石を通じて、サルマンは語り掛ける。
サルマン<この私の力をお役立て下さい。>
黒々としたパランティアの石の中から、サウロンの瞼のない炎の目が浮かび上がる―――――それは、次のような言葉を発した。
サウロン<モルドールにふさわしい軍を仕立てあげよ。>
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- 17 : 2015/05/11(月) 21:52:18 :
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一人、玉座にサルマンが佇んでいると、オークたちがここを訪れた。
オーク「偉大なる御目様は何と?」
――――――自らの権力欲の虜となったサルマンは、部下となったオークに言葉をかけた。
サルマン「・・・・・・・・・・・・仕事が出来たぞ。」
幽閉されたオルサンクの塔の屋上から、ガンダルフは下の様子を覗いていた―――――美しかった庭園の木が、醜いオークどもに切り倒されていく、無残な光景を・・・・・・。
オーク「地中深くまで根を張っており、苦戦しております。」
サルマン「一本残らず切り倒せ。」
サルマンはこのアイゼンガルドを、新たな闇の勢力の要塞へと変えつつあった。
あたりは黒い雲に覆われ、放つ大気は腐臭に満ちた不快なものへと変わっていく。
―――――モルドールに次ぐ、第二の闇の勢力の胎動を目の当たりにし、ガンダルフは言葉を失っていた。
しかも、その闇の主が、かつての偉大な賢者、白のサルマンだとは・・・・・・。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 18 : 2015/05/11(月) 22:35:02 :
彼らは・・・・・・その魔力に引き寄せられ、恐怖をまき散らしながらやってくる。
深夜、静まりかえったブリ―村―――――その入り口にいる門番が、近づいてくる馬の蹄の音に気が付いた。
ドアの窓を開けて覗いてみる――――・・・・・・・・・・・・
門番「!!! うわあぁあぁぁッ!!!」
ドアが蹴破られ、その下敷きになる門番。その上を、指輪の力を感じ取ったナズグルたちが馬に乗って駆け抜ける。
村中の馬が恐怖に駆られ、一目散に逃げ出し始める――――絶望。彼らがまき散らすのは冷気にも似た、根源的な恐怖だった。
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- 19 : 2015/05/11(月) 22:36:04 :
馬を下りて剣を抜き、人の気配のない踊る子馬亭へとなだれ込む。
――――――二階の宿泊スペースへ、彼らは息を殺して歩みを進める。
剣を地面に対して垂直に構え、並べられている五つのベットの脇に、それぞれが並んだ。
部屋の一室では、ホビットたちが仮眠を取っていた。
勿論・・・・・・・・・・・・これから起こることなど、知る由もなく。
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- 20 : 2015/05/11(月) 22:36:31 :
ザクッ!
アルミン「!!!」
――――――ナズグルたちが刃を突き立てる・・・・・・ベットに対して、容赦なく。
突き刺さる刃の音は・・・・・・・・・・・・隣の旅籠屋の部屋にまで届き、ホビットたちを恐怖させた。
怒りの金切り声が突然上がった―――――斬り裂いたベットの中には、クッションしかなかったことに彼らが腹を立てたのだ。
その金切り声、まさにナズグル特有の、聞くものを絶えず恐怖に陥れる絶望の声だった。
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- 21 : 2015/05/11(月) 22:37:42 :
エレン「あいつらは・・・・・・いったい何なんだよ・・・・・・。」
隣の旅籠屋の部屋で、恐怖に眠れず、仮眠をとっていなかったエレンがリヴァイに尋ねた。
リヴァイは外を見ながら、彼らの正体について話始めた。
リヴァイ「・・・・・・・・・・・・指輪の幽鬼 だ。」
アルミン「ナズグル?」
刃の音で目を覚ましたアルミンが畳みかけるように質問する。
―――――リヴァイを含め、ナズグルの恐怖は全員に感染していた。
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- 22 : 2015/05/11(月) 22:38:53 :
リヴァイ「かつては九人の偉大な人間の王だった。だが、サウロンに九つの力の指輪を与えられ、影の世界へと引きずり込まれ、その僕となり下がった豚どもだ。奴らは指輪のあるところ、どこまでも追って来る・・・・・・気に入らねぇ。」
ジャン「おい冗談だろ? あんなのが9人もいるのかよ?」
マルコ「・・・・・・・・・・・・どうするの、エレン?」
エレン「・・・・・・逃げるしかねえだろ。とりあえず裂け谷へ行けば安全なんだろ?」
リヴァイ「ああ、エルヴィンの力で結界が張られている裂け谷ならな。」
エルフの結界に守られたエルフ最後の憩いの場、裂け谷。
―――――早朝、エレンたち一行は裂け谷を目指し、早々にブリ―村を立ち去った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 23 : 2015/05/11(月) 23:52:17 :
風見が丘―――――・・・・・・・・・・・・
かつてここにはアモン・スール――――物見の塔が建てられ、中つ国の北方で最も高い塔だった。丈高きエレンディルはこの塔で同盟者であるエルフ、ギル=ガラドの到着を待ち、サウロンとの戦いに赴いたという。
ここにはかつて存在したアルノール王国最大のパランティア―――アモン・スールのパランティアが置かれていたが、戦火によって失われ、この塔も今はこぼたれて土台を残すのみとなってしまった。
塔の上に上り、エレンたち一行はここで休息をとることにした。
見晴らしの良い丘の上にあるこの廃墟は、あたりをくまなく見渡すのに最適な場所だった。
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- 24 : 2015/05/12(火) 00:53:14 :
すっかり日も暮れた廃墟の上で、リヴァイから与えられた短剣を振り回しながら、ジャンは呟いた。
ジャン「おい、あの男・・・・・・信用できると思うか?」
アルミン「・・・・・・どうだろうね?」
―――――リヴァイは見回りの為、アモン・スールの廃墟から離れていた。
エレン「どうだろうねってお前・・・・・・裂け谷に行くってことになった時、一番喜んだのはお前じゃねえかよ?」
アルミン「勿論嬉しかったよ・・・・・・本でしか読んだことのない世界が実在してるってわかって、しかもそこに行こうっていうんだから。でも、それだけじゃない。」
マルコ「どういうこと?」
アルミン「リヴァイはガンダルフを知ってるし、裂け谷を知っていた―――――エルフの関係者で悪い人間は少ないと踏んだんだ。まぁ打算的に考えるとそうなるかな。おっと、そろそろソーセージも焼けるよ。一緒に食べよっか?」
エレン「まぁアルミンがそういうなら大丈夫だな・・・・・・腹も減ったし、食うとするか。」
エレアルジャンマル「「「いっただっきま~す!!!」」」
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- 25 : 2015/05/12(火) 01:25:46 :
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・・・・・・・・・・・・遠くから聞こえるのは、絶望をもたらす・・・・・・冷気の声。
エレアルジャンマル「「「!!!」」」
アルミン「しまった・・・・・・・・・・・・火を起こして料理しちゃいけなかった・・・・・・迂闊だったッ!!!」
―――――重大なミスだった。
ホビットである彼らは、自分たちの習慣である豊かな食事に、いささかの疑問も抱いていなかった。そしてそれが仇になってしまった。
エレン「剣を抜け! あいつらが来るぞ!!!」
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- 26 : 2015/05/12(火) 01:27:32 :
急激に周りの気温が低下していく―――――包み込む絶望は、あいつらが近づいてくる予兆だ。
柱と柱の間から、黒い衣を纏ったものが、剣を抜いて現れる―――――五人いるそれは、一様に地面から垂直に剣を構えて近づいてくる。
ゆっくりと近づき、ゆっくりと剣を四人に向ける。
エレン「う、おおおぉおぉぉおぉぉッ!!!」
エレンが真っ先に斬りかかる。
ナズグルの一人が冷静に受け止め、エレンに蹴りを喰らわした。
エレン「ぐあぁッ!」
アルミン「エレェンッ!!!」
アルミンの叫びと同時に別のナズグル二人が動く。
ジャン「ぐぁッ!」 マルコ「うわぁッ!」
それぞれ殴られ、地面にふすジャンとマルコ。
アルミン「ああ・・・・・・あああ・・・・・・。」
恐怖のあまり、アルミンは剣を取り落とし、地面に座り込んでしまった。
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- 27 : 2015/05/12(火) 01:29:12 :
エレン「ぐ・・・・・・テメエら、この俺が・・・・・・駆逐してやるッ!!!」
何とか立ちあがり、ナズグルを睨みつけるエレン―――――その手には指輪を持っていた。
アルミン「!!! 駄目だッ!!! エレェンッ!!!」
アルミンは理解した――――――――エレンはわざと指輪を見せつけ、皆を守ろうとしていると。
そんなエレンの様子に、一番奥で待機していたナズグルの首領―――――アングマールの魔王が必殺の短剣を抜いた。
その短剣からは・・・・・・・・・・・・これまで感じたことのないほどの冷気が放たれている。
ゆっくりとエレンに詰め寄る魔王―――――恐怖からエレンは気が動転し、仰向けに転倒する。
エレン「ぐ・・・・・・くそ・・・・・・・・・・・・。」
咄嗟にエレンは・・・・・・・・・・・・指輪を嵌めた。
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- 28 : 2015/05/12(火) 01:46:27 :
影の世界の中で、エレンは目撃した。
―――――指輪の幽鬼たちの正体。かつての人間たちの王の、その痩せさらばえた姿を。
全員が一様に王冠を被り、青白い光を発している・・・・・・・・・・・・影の世界に引きずり込まれた、ナズグルの本体。
エレン「ぐ、何だこれ・・・・・・手が・・・・・・。」
指輪を嵌めた左手が、魔王の差し出す左手に吸い寄せられていく。
―――――負けて・・・・・・たまるか・・・・・・・・・・・・。
俺が・・・・・・あいつらを・・・・・・守るんだッ!
エレン「うおおぉぉおぉぉおおおぉぉッ!!!」
強引に左手を動かし、魔王の力をエレンは振り切った。
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- 29 : 2015/05/12(火) 01:47:38 :
ザクッ!!!
エレン「ぐああぁぁあぁぁあぁぁぁッ!!!」
必殺の短剣が、エレンの左肩を・・・・・・・・・・・・貫いた。
リヴァイ「おおおぉおぉぉおぉぉッ!!!」
魔王「!!!」
エレンを刺した直後、リヴァイが剣と松明をもってナズグルたちに襲い掛かった。
残った力を振り絞り、エレンは指から、指輪を抜いた。
エレン「ああぁぁあぁぁぁぁッ!!!」
アルミン「!!! エレェンッ!!!」
再び姿を現したエレンの異変を感じ取り、すぐさま駆け寄るアルミン。
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- 30 : 2015/05/12(火) 01:55:27 :
リヴァイの目にもとまらぬ斬撃に、まだ力を十分に取り戻していないナズグルたちは圧倒されていた。
リヴァイ「はぁぁッ!!!」
松明の炎を付けられて燃え上がるナズグルたち――――三人が悲鳴を上げて塔の廃墟から落下。
そのままリヴァイは別のナズグルを追い詰め、廃墟から放り出す。
最後に残った魔王に、リヴァイは松明を投げつけた。
松明は魔王の顔面に刺さり、黒の衣服が燃え上がる―――――やむなく魔王は撤退した。
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- 31 : 2015/05/12(火) 02:08:46 :
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アルミン「どうしよう・・・・・・リヴァイ・・・・・・エレンが・・・・・・エレンがッ!!!」
エレンの顔は血の気が引いて蒼白になっていた―――――意識がはっきりしておらず、呻き声を漏らしている。
左肩の傷口から、まるで氷の刃で刺されたかのような冷気を、エレンは感じていた。
リヴァイは魔王の落とした短剣を拾い上げた。
リヴァイ「モルグルの刃で刺されたのか!? ちっ、俺でもこれは治療出来ねぇぞ。」
マルコ「モルグルの刃?」
リヴァイ「この刃で刺された奴は・・・・・・影の世界に引きずり込まれて、いずれ指輪の幽鬼の仲間入りだ。」
アルジャンマル「「「!!!」」」
アルミン「そんな・・・・・・・・・・・・エレン・・・・・・僕を・・・・・・庇って・・・・・・。」
エレン「あ・・・・・・ある・・・・・・みん・・・・・・・・・・・・あぁあぁぁぁ・・・・・・・・・・・・」
冷気に悶えるエレンを抱きしめ、アルミンは涙を流した。
ジャン「おい、何とかならねえのかよ!?」
リヴァイ「・・・・・・アセラスがあれば何とか遅らせることが出来るかもしれねぇ。だが、癒せるのは裂け谷のエルヴィンだけだ。」
アルジャンマル「「「!!!」」」
―――――まだ、希望はある。
アルミン「・・・・・・・・・・・・行こう、皆。」
マルコ「うん、エレンを・・・・・・・・・・・・助けなくちゃ。」
リヴァイ「・・・・・・・・・・・・エレンは俺が運ぶ、お前らは見張りながら俺についてこい。」
―――――一刻も早く裂け谷につかなければ、エレンが危ない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 32 : 2015/05/13(水) 00:30:17 :
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朦々とした黒い煙・・・・・・・・・・・・アイゼンガルドを環状に囲む城壁の中にある巨大な穴から、不快で淀んだ瘴気が漏れ始めるようになった。
その中では木の足場が複雑に組まれ、切り倒された木が燃やされ、赤々とした鉄が製錬されて、黒い武器へと変貌を遂げていく。
穴の中の最下層では、サルマンが恐ろしい妖術を行使していた―――――人間とオークを掛け合わせ、新たなる怪物としてウルク=ハイを誕生させる。
かつて大魔王モルゴスがエルフを拷問してオークを生み出したように、サルマンもまた堕落し、もはや良きものを捻じ曲げることしかできなくなりつつあった―――――勿論本人は気付いていないのであるが。
長い間屋上に幽閉されていたガンダルフに、使者が現れた――――一匹の蛾は、大鷲の一族のメッセンジャー。ガンダルフはこの蛾を通して大鷲の王、グワイヒアに救援のメッセージを送った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 33 : 2015/05/13(水) 06:43:14 :
石化したトロルたちの群れ―――――かつてダリスが仲間のドワーフたちと共にトロルに食べられそうになったところまで、エレンたちは辿り着いた。
アルミン「エレン・・・・・・・・・・・・ほら、ダリスじいちゃんが言ってたトロルの石だよ。」
エレン「あぁ・・・・・・うぅうぅぅぅ・・・・・・」
左肩の冷気はますます冷たさを増し、心臓に近づきつつあった。この冷気が心臓に達したとき、エレンは影の世界に引きずり込まれ、ナズグルへと変貌を遂げる。
エレン「ぐあぁあぁあぁぁぁ・・・・・・あぁぁ・・・・・・・・・・・・」
リヴァイ「・・・・・・この様子じゃ長くねえな。お前ら、この森の当りにはアセラスの葉があるはずだ。探し出せ。」
マルコ「分かったよ。」
ジャン「仕方ねえなあ。」
ジャンは悪態をつきつつも、必死になってアセラス―――王の葉と呼ばれる薬草を探し出した。
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- 34 : 2015/05/13(水) 07:09:02 :
ジャンやマルコが集めたアセラスをリヴァイが湯煎すると、まるでそこにすがすがしい朝が解放されたように、かぐわしい香りが拡がった。
リヴァイはその湯をエレンの左肩の傷口にかけた。
体を覆いつつあった冷気が少しばかり軽減され、僅かながらエレンの顔に生気が戻った。
アルミン「・・・・・・・・・・・・すごい。エレンの顔に、生気が・・・・・・。」
マルコ「でも、アセラスにこんな効果があったなんて、知らなかった。」
ジャン「一体何をしたんだ?」
アルミン「!!! 誰か来る!」
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- 35 : 2015/05/13(水) 07:11:21 :
森の茂みの向こうから、馬に乗った女性が現れた。
宵の明星のような、儚くも力強くも見える光を纏ったエルフの女性―――――ペトラが裂け谷から、エレンたちを迎えにやってきた。
ジャン(・・・・・・天使。)
アルミン(・・・・・・女神。)
マルコ(・・・・・・結婚しよ。)
その美しさに、三人のホビットは一様に見とれていた。
リヴァイ<・・・・・・ペトラ。>
リヴァイがエルフ語でペトラに話しかけた。
ペトラ<この子・・・・・・様子が普通じゃない。>
リヴァイ<モルグルの刃に刺された。もう長くない。>
ペトラ<!!! 急がなければ。父ならこの子を助けられる。>
リヴァイ<指輪もこの子が持っている。>
ペトラ<私がこの子を乗せて連れていく。>
リヴァイ<!!! 駄目だ、今のところ俺が見たナズグルは五人、残る四人は行方がしれねぇ。>
ペトラ<ブルネインの浅瀬まで走れば何とかなる。それに・・・・・・馬で移動しなければこの子は間に合わない。そうでしょ?>
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- 36 : 2015/05/13(水) 07:12:18 :
―――――しばらく逡巡したあと、リヴァイはエレンをペトラに託した。
リヴァイ<こっちを振り返るな。前を見ろ。>
ペトラ<アスファロス・・・・・・あなたの瞬足、今こそ見せて。>
エレンを自分の前に乗せ、ペトラは手綱を引いて走り出した。
ジャン「おい、ふざけんじゃねえぞ、リヴァイ!」
マルコ「危険すぎるよ! なんで止めなかったんだ!」
アルミン「止めるんだ、二人とも!」
ジャンマル「「!!」」
アルミン「歩いて行ったら、エレンは間に合わなかった。もう、賭けるしかないんだ―――――・・・・・・・・・・・・
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 37 : 2015/05/13(水) 07:40:33 :
草原を駆け抜ける一陣の風――――アスファロスはエレンを救うため、風となって平原を疾走していた。
奥のほうから耳を切り裂く冷気の金切り声。
ペトラ<・・・・・・ナズグル。>
走り去る風の後ろを、九つの影が追いかける。
九人のナズグルが揃ってペトラとエレンを追跡――――ペトラは迫る死の恐怖との戦いを強いられた。
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- 38 : 2015/05/13(水) 07:41:09 :
追跡を巻くため、ペトラは森の中へと馬を進める。
ペトラ「くっ。」
小枝がペトラの右頬を切り裂く。
ペトラ<頑張って、アスファロス。>
ナズグルは森の中でも正確に追跡してきた・・・・・・もう浅瀬に逃げるしか方法がない。
必死に手綱を引き、追跡をかわし・・・・・・
ペトラとエレンはブルネインの浅瀬を渡り切った。
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- 39 : 2015/05/13(水) 07:43:35 :
浅瀬を挟んでナズグルたちと対峙するペトラ。
魔王「そのガキをよこすがいい・・・・・・エルフの小娘。」
魔王がその呪いの言葉を投げかける。
するとペトラは、その言葉を跳ね返すかのごとく、剣を抜いた。
ペトラ「力づくで奪いに来るといいわ!」
ナズグルたちが一斉に剣を抜く――――一斉に手綱を引いてブルネインの浅瀬を渡り始めた。
ペトラがエルフ語で呪文を唱え始める――――力のこもったその声に反応し、ブルネインの浅瀬は急激に水嵩を増し・・・・・・・・・・・・鉄砲水となってナズグルたちに襲い掛かった。
魔王「く、何をした!? 小娘!!!」
エルヴィンの魔力が解放され、大洪水はまず魔王を飲み込み、他のナズグルたちをも押し流した。
魔王「グオオオオオオオオオッ!!!」
金切り声をあげるナズグルたちを水流が遠くまで押し流し、やがて、その姿が見えなくなった・・・・・・・・・・・・
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- 40 : 2015/05/13(水) 07:49:18 :
エレン「あがあぁあぁあぁぁ・・・・・・ぐああぁぁあぁぁあぁぁぁ・・・・・・・・・・・・」
ペトラ「!!! エレンッ!!!」
俄かに苦しみ始めたエレン――――白目をむき、いよいよエレンは今わの際まで来てしまった。
もう少しで、もう少しで裂け谷につく・・・・・・・・・・・・
ヴァラールの神々よ。どうか、どうかこの子に、恩寵を・・・・・・・・・・・・
ペトラは懸命に祈りを捧げつつ、裂け谷へと馬を走らせた。
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- 41 : 2015/05/13(水) 07:51:11 :
- 以上で第3話は終了です。
次回はやっと主要人物が勢ぞろいします。先は長いのですが、よろしくお願いします。
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