このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
エレン「死体が歩いた…?」
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- 1 : 2015/03/26(木) 16:58:44 :
- ゾンビが進撃の世界で発生したらのお話。
ホラー系かサバイバル系になるかは決めてません。
予備知識は特に必要ありません。
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- 2 : 2015/03/26(木) 17:12:35 :
- ~First day~
エレン「何言ってんだアルミン?んな馬鹿な話ある訳ねえだろ」
エレンの反応にも無理は無いだろう。突然談話室に飛び込んで来た親友にそんな非常識な話をされても信じられる訳が無い。しかしアルミンの表情は真剣そのものだった。
アルミン「いや、僕もそう思って流したんだけど…ほら、これ見なよ」
そう告げるとアルミンはその日に発行された新聞を机の上に出した。が、その新聞はいつもの朝刊とは少し仕様が違う。号外、つまり何かの速報を伝える物だった。
エレン「……確かにそう書いてあんな。新聞社もホラ吹くためにわざわざ号外出す訳無いだろうし…本当なのか?」
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- 3 : 2015/03/26(木) 17:27:05 :
- エレン「どう思うミカサ?これ本当だと思うか?」
ミカサ「…にわかには信じられない。でも新聞社が号外まで出すなんて相当。アルミンは信じてるようだし。」
アルミン「うん…実はこれ本当なんじゃないかって、僕は思う。僕の考えだと、人の身体は死んだ後も損傷が少ない場合は活動する事くらい出来る。」
エレン「うーん…アルミンか言うとなんか一気に本当に思えて来たな。」
ミカサ「同感。」
他ならぬアルミンの知恵と知識。本人に自覚は無くとも、二人の親友はそれによって救われたことがある。
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- 4 : 2015/03/26(木) 17:37:59 :
- ライナー「なんか面白そうな話してんな。なんかあったのか?」
ジャン「珍しくアルミンが慌ててんな。死に急ぎ野郎がまたなんかやらかしたか?」
エレン「あ?何しに来やがった馬面野郎。」
マルコ「ははは…まあまあ二人共落ち着いて。」
どこから湧いてきたのか、男子数人が話に入って来る。一部では既に冷戦状態。いつもの光景と言えばいつもの光景。しかし一つだけ異質なのがその話題の中心だった。
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- 5 : 2015/03/26(木) 17:51:21 :
- アルミン「ああ、今日の号外について話してたんだ。面白い話では無いんだけど。」
ライナー「号外?そんな物あったのか?」
アルミン「知らないのも無理ないよ、ついさっき出たものだからね。」
ライナー「この夕食時にか、何があったんだ?」
エレン「そういや俺も見出し見ただけで詳細は読んでねえな。」
それからアルミンは記事にある事と皆に伝えた。
トロスト区の教会でそれが起こったこと。
蓋の空いた棺桶から死体が出てきたこと。
歩く死体は裏口から裏路地に消え、その後目撃情報は一切ないこと。
そして、その教会周辺で数人が行方不明になったこと。
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- 6 : 2015/03/26(木) 18:03:10 :
- ジャン「おいおい、そんな馬鹿げた話があるかよ。アルミンお前、それ信じてんのか?有り得ねえだろ。」
ミカサ「私達はこの話を信じてる。ジャンがそう思うなら何処かに行けばいい。」
ジャン「」
ライナー「だが信じる根拠は有るのか?」
エレン「アルミンが言うには理論上可能らしい。」
ミカサ「そういうこと。」
マルコ「理論上可能って言っても、原因は何なんだろうね、魔法とか?」
アルミン「完全に否定は出来ないけど、違う気がするんだ。根拠にはならないけど、その“教会”ってのがウォール教のものなんだよ。」
エレン「胡散臭さ割り増しだなおい。」
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- 7 : 2015/03/26(木) 18:14:06 :
- ライナー「そういやこの話他に知ってるやついんのか?」
アルミン「ああ、クリスタが知ってるよ。『ユミルに教えてあげよう!』って息巻いてたけど、『んな訳ねえだろ』って一蹴されるのが予想出来るね…」
エレン「ははは、確かにな。」
ライナー「おいちょっと待てアルミン。何故お前はクリスタが“知ってる”のを知ってるんだ…?」
アルミン「え?いや、あれだよ本屋に買い物に行ったら帰りに偶々会ってそれで…ライナー?ホントだよ?ホントだからハンカチ噛み締めるのやめてくれない?ビジュアル的に相当キツイ。」
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- 8 : 2015/03/26(木) 18:31:23 :
- 一方、少し離れた所で数人の女子が机を囲んでいた。話題はエレン達と同様、号外のことに関してだった。ついでに言うとアルミンの予想はクリティカルヒットしていた。
ユミル「んな訳ねえだろ」
クリスタ「んなっ、待ってよユミル!号外まで出てるんだよ⁉︎」
ユミル「いやいや、まずその号外の情報もあやふやじゃねえか。なんだよ目撃者一人って。舐めてんの?」
ミーナ「でも面白そうじゃない?もし本当なら物凄い怪事件だよ。」
アニ「それこそやめて欲しいね。事件の調査とか言って私達まで駆り出されたくない。」
クリスタ「でもでも、アルミンは有り得るかもって言ってたよ!理論上可能?だったかな、そんな事言ってた。」
ユミル「アイツがいつも正解とは限んねえだろ。もういいだろこの話は。飯食おうぜ、飯。」
クリスタ「あっ、待ってよユミル〜」
そんなこんなで不可解な出来事が有りつつもいつもと同じ休日が終わりを迎えようとしていた。明日からはまた楽しい楽しい訓練生活が再開する……はずだった。
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- 9 : 2015/03/26(木) 19:03:31 :
- 深夜、トロスト区には夕方の号外の影響が未だ残っていた。とは言っても次の日には忘れ去られているようなものだが。
だが、この片手に酒瓶がデフォルトな駐屯兵の男にとっては案外重要な問題だったりする。
本来、人間にとっては本能的に受けつけない“自分しかいない暗闇”。それに加えて夕方の噂。
いくら慣れた仕事と言っても意識せざるを得ない環境である。
駐屯兵A「はぁ…どうしてこう、こういう時に限って夜ってのは長えんだ」
駐屯兵A「酒も飲む気分じゃねえし…」
-
- 10 : 2015/03/26(木) 19:08:26 :
- 出てくるのは愚痴ばかり。元から爽やかな人格な訳ではないが無理もないだろう。
そして。
考え事は自然と行動に表れてしまうのか、それとも何かに引き寄せられたのか。
その足は、例の教会へと向かって行った。
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- 11 : 2015/03/26(木) 19:20:15 :
- 面白そう!
支援!
-
- 12 : 2015/03/26(木) 19:21:01 :
- 駐屯兵A「んぁ?巡回ルートから外れてんな。考え事し過ぎたか…ってこれあの教会か。」
駐屯兵A「なんだかなぁ〜不気味というか何というか…」
駐屯兵の男は気付けば教会の前に立っていた。
見れば、この教会は普通にブラついて辿り着ける様な立地では無い。本当に地図上に存在しているのかも怪しい。
駐屯兵の男は不気味に思う。
そして、湧いてくる感情。
それは持ってはいけない感情。
駐屯兵A「……試しに入って、みるか…?」
興味。時としてそれは己の身を滅ぼす。
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- 13 : 2015/03/26(木) 19:23:18 :
- >>11ありがとうございます!!
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- 14 : 2015/03/26(木) 19:34:56 :
- ギィィ…と明らかに建て付けの悪さが滲み出ている不快音を発しながら、駐屯兵の男はその扉を開いた。
中は案の定暗闇で、光源は手元のランタンのみ。眼に映るのは胡散臭さ10割の女神像と絵画。ここは流石ウォール教と言ったところか。
ウォール教は胡散臭いのが当たり前。ここはまだ自分の知っている世界だ。
男は孤独の暗闇の中で縋れるものを見つけ、安堵する。奇しくもそれは不安を生み出す要因の一つだったが。
-
- 15 : 2015/03/26(木) 20:00:38 :
- 駐屯兵A「……」
震えていた。
生理的に受けつけないこの教会の空気でも、暗闇の生み出す孤独感にでもない。
夕方に聞いた信憑性の欠けた噂が頭をよぎっていた。
駐屯兵A「…」(冗談じゃねぇ…んなもん居てたまるかよ…)
必死に自分の考えを振り払おうしていた、その時。
ピチャッ
何かを踏んだ、液体状の何かを。
見なくても分かる。この生理的に受けつけない空気を作り出す独特な臭い。兵士なら誰でも嗅いだことのある臭い。
駐屯兵A「…………血?」
-
- 16 : 2015/03/26(木) 20:17:37 :
- 駐屯兵A「ッ‼︎」
顔を上げた。床に溜まった血の源を探す為じゃない。寧ろ目を背ける様に。
だが、それが災いした。
移したその視線の先にそれは転がっていた。
いや、“それ”ではない。“それら”と呼ぶに相応しい。
確認出来たのは右手首、左脚、右足首、あとは胴体程の赤黒い塊。
我慢出来なかった。胃の中の物を全て吐き出した。
慣れていたはずだ、数年前にもあったじゃないか。巨人が人を喰らう場面が。
だが違う、明らかに。
巨人ではないナニカが人を喰らったのか?
そう考えた瞬間だった。
-
- 17 : 2015/03/26(木) 20:27:09 :
- ガタッ
駐屯兵A「ッ…⁉︎」
音がした。この礼拝堂ではない。奥の部屋からした。
ナニカがいる。人間を自分の目の前にある肉塊へと変えたナニカが。
いや、獣だ。そうだ、きっとそうだ。熊か狼が山から下りてきたんだ。それ以外に何がある。この呻き声もきっと…
………?
熊や狼はこんな呻き声を上げるか?こんな…人の喉から出るような呻き声を。
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- 18 : 2015/03/26(木) 20:46:48 :
- 男は確かに恐怖していたがこのヒトのような呻き声がどうしても、気になった。
まだ引き返せただろう。しかし、また持ってしまったのだ、興味を。
駐屯兵A「…」(何がいる…⁉︎これをやった犯人か…?)
礼拝堂に響くほど枯れ上がった喉を鳴らし、そしてまた扉を開いた。
ギィィィィ…
先程よりも更に不気味な音を立てて男は部屋に入った。ナニカが動いた。今度は見える。
遂に男はソレを視界に捉えた。
しかし、理解が出来なかった。目に映ったソレが何だったのかを。
そしてソレはまた呻く、低く、重く。
アアァァァァ………
-
- 19 : 2015/03/26(木) 21:04:48 :
- 駐屯兵A「ッ⁉︎」(何だこいつは…⁉︎人か…⁉︎)
確かにソレは人の形をしていた。だが明らかに人ではない。人の形をしたナニカ、または人であったナニカ。
肉体は腐敗していた。とても理性があるとは思えない。間違いない、あの肉塊の犯人はコイツだ。
しかし、どうやって…?ヒトの身体であんな肉塊を作り出せるものなのか?
そう思考する間にもソレは近づいてくる。こんな時に身体は全く動かない。
ゆっくりとこちらに足を運び、口を開けて寄って来る。
ああ、ヤバい…逃げないと、早く。ヤバい…ニゲ
男の疑問は解消された。
その身をもって。
-
- 20 : 2015/03/26(木) 21:20:57 :
- ~Second day~
「……ン!エレン!起きてエレン!」
今朝は一段と宿舎が騒がしい。親友も大声を出している。何かあったのだろうか…
重たい瞼を無理矢理開けて親友に問う。
エレン「ふぁあ…何だアルミン、何かあったのか?」
アルミン「やっと起きた…あ、それより!緊急招集だってさ。訓練は休みで何か連絡あるらしいよ。」
エレン「緊急招集?それこそ何かあったのかよ?」
アルミン「さあ?そこは伏せられてるし…皆何だろうって予想してるよ。」
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- 21 : 2015/03/26(木) 21:38:41 :
- ライナー「俺の予想はだな…」
アルミン「うわっ!」
エレン「ちょっ!」
エレン「いきなり出てくんじゃねえよ!びっくりしただろうが!」
アルミン「はぁ…で?ライナーの予想は?」
ライナー「お、おう。それでだな…俺の予想では昨日の号外についてだと思う。」
アルミン「号外ってあの死体が歩いたっていう?」
エレン「いやいやいや、その予想にゃ無理があるだろ。流石に兵団は動かねえんじゃねえの?」
-
- 22 : 2015/03/26(木) 23:08:34 :
- ライナー「そうか?間違い無いと思うんだが…」
アルミン「まあ行けば分かるさ。早く食堂に行こう。」
エレン「それもそうか。行こうぜライナー。」
ライナー「おう」
食堂には既に訓練生が殆ど集まっていた。皆思い思いの事を口に出している。
緊急招集の事について話している者、
クリスタ「絶対昨日の事だって!絶対そうだって!」
ユミル「あーはいはい、そうだと良いですねー
ー」
いつも通りの事を話している者、
フランツ「愛しているよ、ハンナ」
ハンナ「もう、フランツったら//」
何も考えてない者、
コニー「なんで皆そわそわしてんだ?」
サシャ「飯は!飯はまだですか⁉︎」
それらは全て、食堂に入って来たキースの言葉によって一つに纏まる。この辺りは流石兵士と言うべきだろうか。
-
- 23 : 2015/03/26(木) 23:22:34 :
- キースは皆の注目が集まったのを確認すると、教官特有の大きく聞き取りやすい声で連絡事項を告げた。
キース「既に知っている者も居るだろうが、本日は我々訓練兵団に駐屯兵団から緊急招集がかかった」
「駐屯兵団から?」「なんでだ?」
キース「私語は慎め。よいか、我々はこれよりトロスト区の本部へ向かう。朝食を終え次第、装備を整え正門に7時に整列しろ。いいな!」
「「「「ハッ!」」」」
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- 24 : 2015/03/27(金) 09:58:24 :
- キース「よし、全員揃ったな!ではトロスト区へ向かう。せいぜい馬に振り落とされんよう、気をつけることだな。」
いつもの如く一言多い指示を出したキースから、トロスト区に向かう道中に詳細を伝えられた。
今朝、トロスト区の教会で変死体が見つかったこと。
それは明らかに猟奇的な犯行であり、迅速に解決しなければならないこと。
しかし調査は難航している、つまり104期生は手伝いに駆り出されたということ。
結論。ライナーやクリスタの予想は的中し、アニの予感もまた的中していた。
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- 25 : 2015/03/27(金) 10:35:40 :
- 「おいおいマジか…」「雑用の為に出張かよ」
クリスタ「やっぱり当たってたよユミル!」
ユミル「ああそうだな。だが愉快な事じゃねえよな…何せ、不気味な噂が立った矢先に現場で猟奇殺人ってんだからよ。」
エレン「何だ、クリスタも昨日の事だと思ってたのか。」
クリスタ「ん?ああ、うん。エレンも?」
エレン「いや、ライナーが絶対そうだ!って言っててな。」
ユミル「けっ…うちの天使のご機嫌とりしたいだけだろ。」
クリスタ「そんな事言わないの!それにしても私だけじゃなかったんだね、うんうん!」
このエレンという男、女だけの場に平気な顔で入り込めるというスキルを持つ。一部の男子(主にライナーとか)にとってはとても羨ましいものである。
ちなみに発動頻度は1日1回以上。本日も好調の模様。
ライナー「…ッ」(なんでだ⁉︎話題は俺のはずなのに輪に入れない…‼︎)
アルミン「ライナー?どうかし…血の涙⁉︎」
このライナーという男、とにかく残念な男である。
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- 26 : 2015/03/27(金) 10:48:55 :
- 104期生が気だるそうにトロスト区の内門をくぐった頃、件の教会では事態が進んでいた。
もっとも、それは調査が進行した訳でも、迷宮入りし始めた訳でも無い。
駐屯兵B「隊長、遺体調査が終了したようです。」
ハンネス「そうか、そんじゃ結果聞きに行くか…。ん、Aはどうした?二日酔いでもしてんのか?」
駐屯兵B「ああ、そういや見ないですね。まあどうせ巡回中に酒でも飲んじまったんでしょうね。」
ハンネス「はぁ…俺も似た様な事してたから何も言えねな…まあいい、行くぞ。」
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- 27 : 2015/03/27(金) 11:19:33 :
- ハンネス「どうだ?仏さんはなんか情報残してくれてたか?」
駐屯兵C「ああ、はい…。礼拝堂のバラバラ死体に関してですが、側にあったボロ布が修道服でした。身元は不明ですが、ここの宣教師かなんかでしょうね。」
ハンネス「そうか、まあ妥当っちゃ妥当な結果だな。…にしても奥の部屋でなんかあったのか?」
駐屯兵C「それが…左腕が見つかったんですよ、一本だけ。」
ハンネス「妙だなおい。身元は?」
駐屯兵C「………Aです。」
ハンネス「…は?」
駐屯兵B「え?」
…………………………?
訳が分からなかった。分からないままハンネスは問いただす。
ハンネス「…A?あの陽気な飲んだくれが…?」
駐屯兵B「嘘だろ…おい…」
……待て、人は腕一本失った所で死にはしない。生きてるはず、きっとそうだ。まだ、そう。
駐屯兵C「あの血の量では、もう…絶望的かと」
ハンネスの思考は今度こそ止まった。
-
- 28 : 2015/03/27(金) 11:34:26 :
- ハンネス「ッ…感傷に浸ってる場合じゃねえ。奥の部屋も調査すんぞ。」
その声はどこか暗かった。無理もない、自分の部下が殺された事実を唐突に告げられたのだから。
ハンネスと部下の三人は奥の部屋へと入って行った。
現在、部屋にいるのはハンネス含め駐屯兵五人のみ。
これ程に極端に人員が少ないのには理由がある。
内地で貴族殺人事件が起き、調査兵団が壁外に出張っていて応援要請ができないからだ。
だから今回は訓練兵団を頼らざるを得なかった。
今回の緊急招集にはそういった偶然の重なりが起因していた。
-
- 29 : 2015/03/27(金) 11:44:11 :
- 駐屯兵D「A……」
駐屯兵E「クソッ…」
現場を重い空気が支配する。
皆同僚の死を未だに受け容れられない。
ハンネスもまた例外では無いが、隊長としての義務がある。
数年前から少なからず彼は変わっていた。ある少年の心と母親を救えなかったあの日から。
もう彼はただの腰抜けなどではない。
冷静に現場を分析する。惨状の中で微かな情報を見逃さぬ様。そして気付く。
ハンネス「おいお前ら、この血痕…変に思わねえか?」
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- 30 : 2015/03/27(金) 12:26:44 :
- 駐屯兵B「ん…?確かに…」
駐屯兵C「なんかこう、引きずったような…」
駐屯兵D「ああ、向かってんのは……下水道…?」
駐屯兵E「地下に向かったのか?」
ハンネス「何にせよ、Aの遺体の本体がある可能性が高い。どうするお前ら、ついてくるか?」
言葉は無かった、だが男たちは分かっていた。互いに何を思い、何をすべきかを。
いつぞや、ある少年に“壁工事団”と罵られた男たちには、もはやその面影は無い。
仲間の死を受け容れる為、この不条理を正す為。男たちは動き出す。
昨夜、駐屯兵の男がその身を滅ぼす事になったのは何故か。
何が間違いだったか。
持ってしまった事だった、興味という感情を。
そして彼等もまた、間違いを犯した。
正義感。
それもまた時として牙を剥き、己が身を滅ぼす。
彼等はまだ気付かない。
その足の向かう先にある、この世の地獄に。
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- 31 : 2015/03/27(金) 12:46:28 :
- 期待♪期待♪
-
- 32 : 2015/03/27(金) 13:09:11 :
- 男たちが地獄へ赴いたその頃、104期生はトロスト区の本部に到着していた。
彼等の顔に浮かぶのは辟易とした表情ばかり。
やる気など出る訳が無い。
朝から訳の分からない事件の雑用に駆り出されて嬉しい者などいる筈が無い。
コニー「今日ここに来たから訓練無えのか!よっしゃあ!」
居た。馬鹿だが。
キース「私は一度本部に寄るが、半分は私について来て貰う。もう半分は現場に急行しろ。それと、ここにいる多くの者が憲兵団や駐屯兵団を志願している事だろう。これは貴重な経験だ。心してかかれ!」
「「「「ハッ!」」」」
-
- 33 : 2015/03/27(金) 13:31:07 :
- ※主要キャラは全員現場班でいきます
エレン「なあ、昨日の号外と関係あると思うか?」
アルミン「うん…やっぱり場所が同じってのは偶然じゃないような気がする。これはただの怪事件じゃないと思う。」
ジャン「お、俺もそう思うぞ。昨日の事と言い、なんかある!」
ベルトルト「ジャン…」(昨日ミカサに拒絶されたのがショックだったんだね…)
ミカサ「どんな犯人だろうとエレンには指一本触れさせない。指一本残さない。」
ユミル「おいおい怖えよ…覚悟の具合がスプラッタ過ぎるよ。」
クリスタ「さっきまではしゃいでたけど、なんか怖くなってきた…」
ユミル「大丈夫だってクリスタ!私の天使に近づく奴は微塵切りにしてやるよ。」
アニ「…あんたも大概だけどね。」
教会に向かう道中、実感が湧いてきたのだろう。不安を口にしたり、事件について考え始めたりしている。
教会はもう近い。
本物の地獄が世界を呑み込もうとしている。
-
- 34 : 2015/03/27(金) 13:36:51 :
- >>31ありがとうございます!!
-
- 35 : 2015/03/27(金) 13:51:47 :
- エレン「ここか…不気味だな、想像以上に。」
六人もの駐屯兵を呑み込んだ教会が、エレン達の目の前に建っている。
表の大通りとそう遠くないはずなのに、空気が重い。
任務で無ければ絶対に近寄らなかっただろう。
誰かの唾を飲み込む音がハッキリ聞こえる。
味わった事の無い緊張感がエレン達を襲う。
そして覚悟を決め、扉を開く。
エレン「あ、開けるぞ…」
-
- 36 : 2015/03/27(金) 14:19:07 :
- ギィィ
相変わらず不気味な音を立てる扉。
胡散臭い女神像と絵画。
まだ日中の筈なのに薄暗い礼拝堂。
そして、検視された跡のある妙な肉塊。
異質だった。外の世界から切り離されたと錯覚するようなこの礼拝堂の中でも。
……なんだ、あれは…………?
その場にいた全員の思考が一致した。
その後の反応は様々だった。
エレン「………あれが、死体…?」
思考が停止する者。
アルミン「…ッ」(どうすればあんなに…?いや、重要なのはそこじゃ…)
只々、混乱する者。
ライナー「ッ⁉︎」
戦慄する者。
クリスタ「うっ…‼︎」
目の前の光景に耐え切れない者。
ミカサ「ッ…」
驚きを隠せずともすぐ冷静さを取り戻す者。
まさに三者三様だった。
-
- 37 : 2015/03/27(金) 14:35:05 :
- クリスタ「はぁ…はぁ…」
ユミル「おいクリスタ、もう大丈夫か?」
ジャン「何なんだよコレ、冗談じゃねえぞ…」
ミカサ「……そう言えば、上官が居ない。」
エレン「確かに…これじゃ雑用も出来ねえな。」
ライナー「気分的にはそれどころじゃないがな。」
アルミン「……?皆、少し静かに。何か聞こえない?」
エレン「ん…?」
バンッバンバンッ
エレン「銃声?どこから…」
ミカサ「向こうに部屋がある。あそこから聞こえた。」
ライナー「…行くか?」
エレン「ああ、行くぞ。」
-
- 38 : 2015/03/27(金) 16:25:58 :
- エレン「皆、覚悟は良いな…?」
エレンが皆に問いかける。
今目の前に有るのは、血痕を見る限り明らかに何かが這って行ったと思われる穴。
地下に繋がっているあたり、下水道かなんかだろうと予想はつく。
礼拝堂での光景がフラッシュバックする。ここから先にはアレを作り出した殺人鬼がいる。
余りの緊張感に昨日の号外との関係性を気にする事さえ忘れていた。
それが命取りである事も知らずに、周りは頷く。
そして一筋の光も差さない深い暗闇の中へ、彼等は進んで行く。
-
- 39 : 2015/03/27(金) 16:46:01 :
- ピチャ…ピチャ…
下水道の中はまさに迷路のようで、少し歩くだけで分岐点にぶつかる。
吸うだけで気分が悪くなるこの空気の原因は、ここが下水道だからという訳では無いようだ。
誰も言葉を発さない。緊張感は既に限界値を振り切っている。
クリスタに至っては、ユミルが手を引いていなければ今にでもその場に崩れそうにしている。
その顔に浮かぶのは恐怖、後悔。
そしてそれはクリスタだけでは無い。ミカサやライナーでさえ例外では無い。
エレン「……」(気が狂いそうだ…どれ位歩いた?此処はどこだ?)
アルミン「……」(駄目だ…皆恐怖に支配されてる。ミカサも…。この状況はマズい…)
雑念の中、アルミンは現状の打開策を練っていた。
アルミンのそんな思考は場違いな音によって遮断された。
-
- 40 : 2015/03/27(金) 17:31:15 :
- 期待です!
-
- 41 : 2015/03/27(金) 18:06:29 :
- >>40ありがとうございます!!
-
- 42 : 2015/03/27(金) 18:29:37 :
- タッタッタッタッ…
音がした。
はっきりと、鮮明に、確かにこの耳で捉えた。
音源は向かって右へ曲った通路の方だ。
何かが走っている。
ライナー「今の…聞こえたよな?」
アルミン「う、うん…」
ライナー「確かめて来るッ!」
ジャン「お、おい待てライナー!」
仲間達の制止の声などライナーの耳には届いていなかった。
一見、勇敢に見える行動だが、実際は仲間の声が聞こえなくなる程にライナーの心に余裕が無かっただけだった。
音のした方へと彼等は走り出していた。
そしてエレン達は見た。
曲がり角の向こう側を向き、目を見開いて絶句するライナーの横顔を。
ライナーに追いつくと、自然と彼の視線を追っていた。
その場にいた全員がその光景に絶句した。
……人が……人を喰って、いる…………?
-
- 43 : 2015/03/27(金) 19:11:44 :
- ヤバい…危険だ、こいつは狂っている。人間を食べるなんて有り得ない。こいつは人間としてどこか欠落している。しかも、こんな所で平然と、こんな事を…人間として…
……………………人間?コレが?
肌は腐敗し、所々筋肉や骨が見える。
眼は色素が抜け、常人のそれとは全く違う。
頬は破け、奥歯まで剥き出している。
コレを人間と呼んで良いのか?
ヒトの形をしているだけじゃないのか…?
全員が似たような事を考えていた。
故に、答えなど出ない。
故に、誰も動けない。
目の前の生き物とも呼べないナニカに圧倒されるばかり。
-
- 44 : 2015/03/27(金) 19:34:05 :
- 期待!
-
- 45 : 2015/03/28(土) 10:26:27 :
- >>44ありがとうございます!!
-
- 46 : 2015/03/28(土) 15:03:37 :
- コレと自分達の力量差など、関係無い。
生理的に受け容れられない嫌悪感がどうしようも無く、恐怖の対象となる。
目の前で死体を喰らうコレから目が離せない。
目を離したら、その瞬間に全てが終わってしまいそうな気がしてならなかった。
全身から嫌な汗が滲み出てくる。
獣とは全く違う、巨人とも違う。
本能が警報を鳴らしている。
早く…この化け物から離れなければ…
絶対にコイツを刺激してはいけない…
アルミン「…」(こいつは今死体に夢中だ…お、音さえ立てなければ……)
クリスタ「ッ…ッ…」(に…逃げなきゃ…逃げなきゃ……‼︎)
-
- 47 : 2015/03/28(土) 15:14:16 :
- ハンネスさん死んでないよね?死んでないよね?
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- 48 : 2015/03/28(土) 18:37:27 :
- >>47
続きを見れば分かります(宣伝)
-
- 49 : 2015/03/28(土) 19:08:59 :
- 宣伝w
-
- 50 : 2015/03/28(土) 22:14:50 :
- カンッ…
鳴り響く金属音。恐らく立体起動装置がぶつかり合ったのだろう。
事態は悪い方へと転ぶ。
アルミン「…ッ」(マズい…‼︎)
ガブ…ミチッ…ブチッ
グチャ…ピチャッ…クチャ……………
化け物がその口を止める。
その頭を上げ、顎を死体から引き離す。
その行動が意味するのは食事の中止ではない。
新たな獲物に対する反応。
膝をついた低い姿勢から、身体を起こす。
ゆっくり、確実に、こちらを振り向く。
色素の無い淀んだ眼球がエレン達を正面に捉える。
遂に、対峙した。
戦いたくない、戦うという兵士としての選択は頭に無い。勝てるかどうかの問題ではない。
その本能にひたすらに忠実な者がいた。
-
- 51 : 2015/03/28(土) 23:00:05 :
- 恐怖による精神的な限界が来たのか、クリスタが背を向ける。
クリスタ「ひっ…‼︎」
ユミル「待てクリスタ…、くっ…‼︎」
ライナー「ッ…‼︎クソッ‼︎」
咄嗟に逃げ出す少女と、ライナーとユミルが彼女を守る為に走り出す。
エレン「おい、お前ら!」
三人の突然な行動に驚き振り返るエレン。
彼はその瞬間忘れていた。
自分が今、最も注意を払うべき対象は何なのかを。
そして彼の親友は見た。
呻き声を上げる化け物が、背後から彼に喰らいつかんとする瞬間を。
アルミン「エレンッ‼︎ 危ないッ‼︎」
エレン「……ッ⁉︎」
その化け物は大きく顎を開いた。
血に塗れた、その顎を。
-
- 52 : 2015/03/29(日) 17:45:07 :
- ミカサ「フンッ‼︎」
ドスッドス!!
化け物の腐敗し脆くなった腹と胸に、二本のブレードが深く突き刺さる。
人体の活動を停止させるには充分な致命傷である。
……危なかった。
化け物の顎はエレンの顔から僅か数センチほど。
ミカサはトリガーからブレードを切り離すと同時に、化け物を蹴り飛ばす。
エレン「……ハァ…ハァ…助けられちまったな、ミカサ。」
ミカサ「エレンを助けるのは当たり前。……というか、反応の速さに自分でも驚いている。」
アルミン「間一髪だったね…エレン。」
エレン「ああ、こればっかりはミカサに感謝だ…。」
ミカサ「あまり褒められると照れる。」
アルミンが微妙な苦笑いを漏らす。
緊張の糸が切れた。これで脅威は去ったのだ。
ジャン「何だったんだ……結局…」
アニ「何でもいいよ…死んだんだから。」(何も出来なかった……身体が動かなかった……)
この地獄が呑み込んだ者達は、皆間違いを犯している。
興味。正義感。
全てこの地獄の餌となっている。
他にも己が身を滅ぼすものは山ほどある。
エレン達はそういった間違いをおかしてはいないだろうか。
そして時に、人々は戒めの意を込めて、こう言う。
油断は禁物だと。
-
- 53 : 2015/03/29(日) 18:16:12 :
- 目先の脅威を排除したことに安堵したエレン達。
しかし現実は違った。
地獄に束の間の安息など、そうそう訪れるものではない。
ミカサ「…?」
アアァァァァ……
死んだはずの化け物がゆっくりと、ゆっくりと立ち上がる。
……まさか。明らかにおかしい。ブレードは心臓を貫通したはず。いくらなんでも有り得ない。
……いや、そんな事は関係無い。仕留め損ねたのなら、また仕掛ければいい。
ミカサはトリガーにブレードをはめ直す。
彼女に続いてエレン達もトリガーに手を伸ばす。
今度こそ仕留めると覚悟する。
-
- 54 : 2015/03/29(日) 18:21:35 :
- こ……これは\(^o^)/
-
- 55 : 2015/03/29(日) 18:51:51 :
- カチャッ………バァン!!
突然聞こえた小さな金属音の直後、強烈な破裂音が鳴り響く。
それと同時に、化け物の首がガクンと前に折れる。
そして化け物は脱力した様に、その場に崩れる。
ミカサ「ッ‼︎」
エレン「何だッ⁉︎」
倒れた。ミカサでさえ恐怖する化け物が、一瞬で。
動かなくなった化け物から目を離し、顔を上げる。
そこにいたのは、駐屯兵団の制服を身に付けた、金髪の中年男性だった。
アルミン「……‼︎ ハ、ハンネスさん‼︎」
ハンネス「お前ら…来ちまったか…。まあ良い、無事で良かった……」
エレン「…ハンネスさん……」
-
- 56 : 2015/03/29(日) 20:28:07 :
- 期待!
-
- 57 : 2015/03/29(日) 21:06:37 :
- 煙を吐くライフルを片手に、ハンネスが寄って来る。
こんな状況の中で負の念に押し潰されず、ただ自分達が無事だった事に安堵している。
彼とは長い付き合いであるエレンだが、彼のそんな頼り甲斐のある姿は初めて見た。
自分の可愛がっていた子供達が、こんな地獄へ足を踏み込んでしまっていた。
だが幸い、怪我もなく無事で何よりだ。
他の子達は恐らく訓練生の仲間だろう。
この子達は何が何でも自分が守り通さなければ。
エレン「そういや、なんでハンネスさんがここに?」
ハンネス「ああ…それはだな……」
-
- 58 : 2015/03/29(日) 21:09:17 :
- >>56ありがとうございます!!
-
- 59 : 2015/03/31(火) 09:56:00 :
- 更新待ってます!
-
- 60 : 2015/03/31(火) 15:18:09 :
- ハンネスは語り出す。
1時間程前に部下を引き連れ、ここへ侵入してから自分達の身に起こった事を。
駐屯兵の五人は地下をしばらく進んだ。途中までは何事も無かった。
だが、そんな沈黙も一人の発言によって破られた。
駐屯兵B「隊長…あそこの鉄格子の方、声がしません?」
駐屯兵C「俺も聞こえるぞ…誰なんだ……?」
ハンネス「憶測ばっか立てても答えなんか出やしねえ。とにかく調べるぞ…」
駐屯兵D「ですね」
駐屯兵E「了解」
ハンネス「…」(A…絶対にお前を見つけてやるからな…)
男達は鉄格子の方へ歩いて行った。
同時に男達は地獄の深淵へと向かっていた。
その時はまだ、地獄はその牙を見せていなかった。
-
- 61 : 2015/03/31(火) 15:22:32 :
- 駐屯兵D「……? 鉄格子の向こう、人影があるぞ…?」
駐屯兵E「確かに…。あの服、ウチの制服か?」
ハンネス「まさかAか…?左腕が無い…」
降って湧いたかの様な希望。期待せざるを得なかった。
重傷ではあるものの、死んだと思っていた仲間が目の前にいたのだから。
五人は人影の方へ駆け寄り、鉄格子に掴みかかった。
すると、こちらに気付いたのか、人影が振り向いた。
瞬間、戦慄した。
彼の筈なのに、彼ではない。
彼であった筈のソレは、鉄格子越しに居る五人に襲いかかった。
-
- 62 : 2015/03/31(火) 16:05:57 :
- ガシャンッ!!ガン!ガン!
ウァァアア……
グァアアアア!!
いつの間にか、Aだったソレの周りには似たようなヤツらが集まっていた。
ヤツらは必死に錆び付いた鉄格子を揺すってきた。
咄嗟の出来事に鉄格子を抑える事しか出来ない。
駐屯兵B「なっ⁉︎ コイツAじゃねえのか⁉︎」
ハンネス「いや、確実にコイツはAだ‼︎ だが他の奴も含めて様子がおかしい‼︎」
駐屯兵C「コイツらもう全然普通じゃねえ‼︎ 狂ってやがる‼︎」
駐屯兵D「クソったれがッ……‼︎」
駐屯兵E「ッ⁉︎ おいお前…」
カチャッ…
バァン!バンバァン!!
我慢しきれず、一人が肩に掛けたライフルを構え、発砲した。
しかし、相手は少し怯むだけで効果は全く見えない。確かに三発とも胴体に命中した筈なのに。
-
- 63 : 2015/03/31(火) 16:38:07 :
- ハンネス「何故倒れない……これ以上は格子が保たねえぞ‼︎」
駐屯兵B「隊長……あんたは先に行ってくれ…」
ハンネス「な、てめえ何言ってやがる‼︎」
駐屯兵B「あんたには家族がいるだろうが‼︎ こんな数の化け物相手にしてたら全員死ぬ‼︎」
ハンネス「そんなの出来る訳……」
駐屯兵C「どうせ全員は助からねえんだ‼︎ だったら生きるべきなのは隊長だ‼︎」
ハンネス「くっ…」
駐屯兵D「行ってくれ…全員仲良くあの世行きなんざ、それこそ駄目だ。」
駐屯兵E「早く‼︎」
ハンネス「……分かった。だが忘れるな、お前らは俺の部下だ!何があってもそれだけは変わらない。……最期を見届けてやれなくて、済まない…!」
「「「「ハッ‼︎」」」」
ハンネスは全力で走った。生き抜く為に。
自分は生きねばならない。仲間がそう望んだのだから。
男達は全力で立ち向かった。誇りを守る為に。
誇りなんて意識した事など無かったが、一度決めた覚悟が彼らに誇りを持たせた。
彼らの最期は間違い無く、兵士そのものだった。
-
- 64 : 2015/03/31(火) 16:44:00 :
- 隊長オオオオオオオオオオオオオ!!!!!!((敬礼
-
- 65 : 2015/04/03(金) 00:13:24 :
- ハンネス「ヤツらは一人たりとも追ってこなかった……俺の部下共は最後の最後に優秀だった…」
ジャン「なぁ待ってくれ、今の話じゃ…そこに転がってる死体の同類がウジャウジャ居るって事になるぞ?」
ハンネス「その通りだ。…ああ、驚いたって顔だな。だが連中を一人相手にするのに腰抜かしてると……死ぬぞ。」
アニ「……」
エレン「そんなに数が多いのか?」
ハンネス「信じられない程にな。お前らと会うまでにも何人か遭遇した。…行方不明の件は知っているか?」
ミカサ「?」
アルミン「確か、ここ周辺で多発してる事件…」
ハンネス「そうだ…あくまで俺の予想だが、行方不明の事件と連中は何か関係してる。」
連中の殆どは行方不明事件の被害者である
そうハンネスは予想していた。
-
- 66 : 2015/04/03(金) 00:15:01 :
- 最期まで戦った人たちに敬意を!!!バッ((敬礼
-
- 67 : 2015/04/03(金) 00:56:53 :
- ジャン「ハンネスさん…だったな、何故そう思う?」
ハンネス「お前さんは…」
ジャン「ジャン・キルシュタイン」
ハンネス「……ジャン…連中を、“人間じゃない”と感じたか?」
ジャン「…?当然だ、あんなの形が人と同じなだけだろ。巨人と一緒だ」
ハンネス「俺の話ちゃんと聞いてたか?連中はただの人型モンスターじゃねえ。」
エレン「どういう…」
連中の正体について考察する。だが状況も状況。上手く頭が回転しない。
しかし、アルミンは聡明だった。
アルミン「ヤツらの中に、そのAさんって人がいた。それが問題なんだ…でしょ?」
ハンネス「流石だ。アルミンの言う通り、生きてた筈の人間が連中の仲間入りしている。…市民の格好のヤツもいりゃ、修道服を着たヤツだっていた。」
エレン「…じゃあ何か?さっきハンネスさんが撃ち殺したのは少し怪我した、ただの人間だったってのか⁉︎」
アニ「……いいや違う。だけどまだそっち方がマシかもね…」
アルミン「全く同意だ。いいかいエレン…信じられないけど、可能性は高い。」
そして彼らは一つの結論へと辿り着く。
彼らは確証する。
ここは地獄であると。
エレン「死体が歩いた…?」
-
- 68 : 2015/04/05(日) 22:13:17 :
- エレン達がハンネスと話をしていた頃、怯え逃げ惑う一人の少女と、その後を追う2人の男女がいた。
三人は、エレン達の元にハンネスが現れる前にその場を離れてしまった為、一時的に脅威が去った事を知らない。
地下であるせいか、所々天井が低く、ユミルやライナーでは走り抜けるのは一苦労だった。
それでもクリスタの足ではユミルを引き離す事など出来る筈もなく、やはりユミルがクリスタの手を掴む。
ユミル「ハッ…ハッ…ッ、待てってクリスタ!」
クリスタ「ッ⁉︎ 嫌ぁ!離してっ、離してえ!」
ユミル「クソッ…」(混乱してやがる…まともに話聞いてくれねえなこりゃ…)
ユミル「おいゴリラ手ぇ貸せ!!一旦落ち着かせねえと!」
ライナー「おまっゴリラて…いいか落ち着けクリスタ、俺らの顔を見ろ。落ち着くんだ。安心しろ。」
クリスタ「ハァ…ハァ…ら、ライナー?ユミル?」
ユミル「やっと落ち着いたか…しっかし、結構走らされたな。ココどこだ?」
ライナー「どうせ下水道ん中じゃ正確な位置なんざ分からないからな。一回地上に出よう。」
ユミル「エレン達はどうする?」
ライナー「対策は取ってある。とにかく急ぐぞ!」
クリスタ「う、うんっ」
-
- 69 : 2015/04/05(日) 22:29:10 :
- 期待
-
- 70 : 2015/04/05(日) 22:37:33 :
- みんな生きるよね?ね?ねえ?
-
- 72 : 2015/04/05(日) 23:27:58 :
- 取り敢えず付近の梯子を登った。殆ど計算など無かったが、地下に居るよりは安全だと判断した結果だ。
クリスタは落ち着いたが、まだ足がおぼつかない。
早急に安全の確保とエレン達との合流をしなければ。
ガラ…ガコンッ
重みのある金属製の蓋をずらし、隙間から頭を覗かせる。
ライナー「日は…まだ沈んでないな。だが妙に薄暗いな、壁の外門付近ってところか…」
ユミル「おいおいマジかよ…本部からも教会からも相当遠いじゃねえか。尤もあの教会には二度と近寄りたくねえがな…薄気味悪い。」
ライナー「………おいユミル、あの教会が薄気味悪いって言ったか?」
ユミル「ああそうだが?問題でもあるのか?」
ライナー「ある意味な…外の状況見りゃ一発で納得できるぞ。あの教会以上だ…」
ユミル「どういう意味だそれ?つーか外の空気独り占めしてんじゃねえよ、さっさと上がれ。」
ライナー「…まあ、驚くことなかれ、だな。」
ユミル「いいからさっさとどけ。一体何がそんな………なん、だ…これ?」
クリスタ「二人共どうしたの?ユミル、早く上がってくれないと出れないよー。」
ユミルの耳にクリスタの声が届かないのも無理は無い。
ライナーが教会の話を持ち出したのも無理は無い。
クリスタはまだ知らない。まだ見ぬ、自分達の前に立ちはだかる果てしない絶望を。
ゴーストタウン。
それは的確な表現だった。
陽が昇っている時間帯にも関わらず、人の存在しない街。
地獄はまだその姿の全てを見せてはいない。
-
- 73 : 2015/04/05(日) 23:32:41 :
- 呼び方をゾンビか感染者、どちらにするか迷う
連中&ヤツらでゴリ押しもあるな…
-
- 74 : 2015/04/09(木) 00:23:29 :
- ゾンビ×進撃は結構好きだけど、このssは今まで読んだ中で一番面白いかも!
期待!
-
- 75 : 2015/04/10(金) 20:25:52 :
- エレン「はあ…状況整理しとくか。つまりこういう事だな?原因は不明だが死んだ人間が蘇って、生きてる人間を襲ってる。んでまた原因不明で、それは感染病のように広がってる。」
アルミン「そうだけど、問題は山積みだ。蘇る原因が分からないし、僕らはヤツらの扱い方をまだ理解していない。」
アニ「扱い方って何よ?あの連中の正しい扱い方でもあるっての?」
ハンネス「確実に仕留める方法なら経験則だが、一応分かる。何回か襲われかけたからな。」
ジャン「確実な方法なんてあんのかよ?」
ハンネス「ある…頭部の破壊だ。要は身体じゃなく頭をぶち抜けばいい。相手が元は人間だから躊躇いはあると思うが、やらなきゃ喰われるだけだ。」
エレン「取り敢えず一つは解消で、あとは蘇る原因だな。死んだら勝手に蘇るのか、原因はあるのか。」
アルミン「違う…勝手に蘇るんじゃない。原因がある筈だ。じゃなきゃ前例がある筈だし、騒ぎが起こってた筈だ。」
エレン「じゃあこの現象は感染病のようなもの、って事でいいな?にしても、なんで頭をぶち抜かなきゃいけねえんだよ。ホント気分の悪い話だよ。」
-
- 76 : 2015/04/10(金) 20:37:38 :
- アニ「あ、クリスタは?他の二人も、何処行った?」
エレン「そうだ!忘れてた…あいつら襲われてなきゃいいけど…」
ハンネス「仲間とはぐれたのか…だったら急がねえとな。ここは危険だぞ。」
アルミン「待って、ただ闇雲に捜すだけじゃ僕らまで危ない。それにライナーは馬鹿じゃない。彼は冷静な判断が出来る人間だ。」
ジャン「って言ってもよ、手がかりなんてあんのか?」
ジャンが急かすように質問してくるのは、やはりここに少しでも長く居たくないからだろう。
先程エレンを襲おうとしたヤツを見て、ハンネスの話を聞けば誰だって嫌になるものだ。
しかし、彼らは伊達に厳しい訓練を受けてない。
ジャンの様子もエレン達に比べたらの話である。
一般人の精神力では、こんな状況にいては錯乱状態になってもおかしくない。
彼らの精神の強さは、彼らが兵士であることの証明だった。
その点、クリスタは兵士としてはまだ至らなかった。
-
- 77 : 2015/04/12(日) 09:31:07 :
- 超期待してます!
-
- 78 : 2015/04/20(月) 00:24:16 :
- 来ました。大分時間空けてすいません。
明日には投下します。
-
- 79 : 2015/04/20(月) 01:10:49 :
- 初めはライナーがどんな手掛かりを残して行ったか考察していた彼らだったが、ものの数分で手掛かりは見つかった。
ジャン「おう…こりゃまた豪快な合図だな…」
エレン「いやまぁ、あの状況で手が浮かんだだけでも充分以上だろ。」
アルミン「正確かつ必要最低限な情報が記されている。流石だよライナー。」
アニ「こんな印、サルでも付けられるよ。ゴリラでも出来たみたいだし。」
アルミン「あはは…」
クリスタ達が向かった通路にある最初の分岐点。
石壁を荒々しく削った痕跡が大きく右を指していた。
案の定、その先の分岐点にも似たような痕跡が残されていた。
エレン達は順調過ぎると言えるほど、クリスタ達の後を正確に追えていた。
まるで先の化け物による襲撃を忘れてしまう程に。
-
- 80 : 2015/04/20(月) 01:21:25 :
- その中、アルミンは常に思考を止めなかった。
今も、全く問題の無さそうなこの現状を、素直に受け容れない。
誰にも聞こえなさそうな声でひとり呟く。
アルミン「…嵐の前の静けさ、か…」
エレン「あ?なんか言ったかアルミン?」
アルミン「あっ…ううん、何も。」
エレン「?」
第六感、直感、予知、恐らくはそのどれでもないのだろうか。
要するに嫌な予感がした。
アルミンも何故そう感じたのか、理解出来ずにいた。
だから、エレンや他の皆は何も知らないまま。
アルミンですら、これから彼らの身に起こる事など知る由も無い。
知った所でどうにもならない。
これより彼らを襲うのは、人の身に余るこの世の地獄。
退路など、気付いた頃には既に無い。
-
- 81 : 2015/04/20(月) 08:58:28 :
- 最後に刻まれた印が指し示すのは、地上に繋がる一つの梯子。
梯子の先にある蓋も、人が通れるほどにズラされている。
アルミン「これだ…きっとこの梯子で地上に出たんだ!」
ミカサ「早速出よう、ここは危な過ぎる。」
ハンネス「まあお前らは一旦ここで待て、周囲に危険が無いか確かめて来る。」
エレン「早めにお願いな。」
ハンネスは呼吸を深くし、蓋の隙間から顔を覗かせる。
その眼に映る景色は、数十分前にライナー達が見たのと同じもの。
その顔に浮かぶ表情は、数十分前にライナー達が浮かべたものとも同じもの。
-
- 82 : 2015/04/21(火) 08:27:36 :
- ハンネス「上がって来い。危険は…無さそうだ。」
エレン「ふぁああ…やっと外の空気だ。待ちくたびれたぜ。」
アニ「ヤツらは…あの化け物共は居ないの?」
ハンネス「ああ居ねえな…何にも居ねえ。」
アルミン「よい…しょっと………本当だ。外門付近の様だけど、…余りに人気が無さ過ぎる。」
ミカサ「確かに。門前の見張りくらいは居てもいいはず…何故?」
目の前に広がる光景は、よく見るトロスト区の街並み。
そこに異常な違和感を感じるのは、やはり人が居ないせいだろうか。
ジャン「住民はどこだ?ここは商店街が近かったよな。この夕暮れ時に過疎状態ってのはおかしくないか?」
ハンネス「兵士の連中も同じだ。ここの担当連中は確かにダラダラしてるが、ここまで大胆な職務放棄はしねえ。」
エレン「何が、起こったんだ…?」
ここは、ウォールローゼ南端に位置するトロスト区の中でも更に南、外門付近の商店街前。
建物が多く並ぶ街並みの割に不気味なほど閑散としていた。
対して、トロスト区の北側に位置する内門付近は喧騒が鳴り止まない。
尤も、それは対極に位置するエレン達には届かないが。
-
- 83 : 2015/04/25(土) 16:01:13 :
- 夕方の赤い空の下、不安の表情を浮かべたトロスト区の住民達が内門付近へ群がる。中には怒号を上げる者すら出ていた。
昼頃のトロスト区で突然、憲兵や駐屯兵が説明も無しに避難誘導を始めた。
そして、いざ避難先の内門へと着いてみれば例の内門は閉ざされていた。
兵士曰く、『許可が下りるまでここは通れません』だそう。訳が分からない。
付け加えるならば、『ここを離れる事も出来ません』とも言っていたそう。一体何事か。
市民が抗議を起こすのも無理はない。
完全に兵士達による越権行為としか思えない行動に、人混みの所々から大きな声が聞こえる。
「ふざけるなー!説明をしろー!」
「憲兵だからって許されると思うなー!」
まさに言いたい放題。
勿論、彼らが納税者である限り、不正を糾弾する権利は大いにあるのだが。
住民達は知らない。
この避難行動には市民や部下に指示を出している上官がいる。
その上官ですら政府が出したこの避難命令に、何の意味があるのか告げられていない事を。
彼らは知らない。
住民達は知らない。
街の正反対で若き訓練兵達がとある事態に直面している。
それはいずれ、自分たちの身にも襲いかかってくるであろう事を。
彼らは知らない。
未来を知る事など誰にも出来ない。
-
- 84 : 2015/04/26(日) 09:09:17 :
- キース「何故我々はこんな任務とも言えない事をしているのだ?市民を惑わせた挙句、半ば軟禁状態にするなど全く理解し難い。うちの訓練兵も対応に追われている。」
ナイル「……それが私にもさっぱりでして。キャリアの長いキース殿なら何か知っているのでは、と思ったのですが。」
キース「…ふむ、ピクシス司令からはなんと?彼ならば何か知っているのではないか?」
ナイル「ピクシス司令は事情を知っている様でしたが、今は何も言えないとのことで…」
キース「……そうか…」
陰で訓練兵達から鬼教官とまで揶揄されるキースもであるが、訓練兵をまとめる管理者である。
説明も無しに命令を出す上の身勝手さには、些か腹立たしさを感じていた。
管理者としてはその様な身勝手に訓練兵達を付き合わせるのはとても不本意であった。
…訓練兵といえば…確か今日の午前中、怪事件の調査の手伝いに複数人向かわせたのを覚えている。
その後、この意味不明な命令に付き合わされて、それどころでは無くなったのだが……。
…さらに言えば…先ほどの訓練兵の点呼、8人ほど欠如していると報告があった。
その後、市民への対応に関する会議があるとのことで、それどころでは無くなったのだが……。
キース「…無事でいると良いが……」
ナイル「…はい?」
キース「いや、なんでもない。」
-
- 85 : 2015/04/27(月) 00:46:02 :
- 現在兵士の殆どはウォールローゼの壁上に登っている。
残り少ない例外は市民のクレーム対応である。
はっきり言って、市民も兵士も何がしたいのか全く掴めない状況である。
キースが抱いていた疑問はなにも彼一人だけのものでは無かったのだ。
その疑問を取り払うためにトロスト区へ早馬を走らせていたのは中央憲兵の伝達兵だった。
彼は壁上に登り、ナイルとキースの姿を確認すると早足で寄ってきた。
中央憲兵a「キッツ隊長はどこへ?」
キース「…下で市民の苦情対応、と言ったところか…尤も怒鳴り散らすのが対応と言えるのかは分からんが。」
中央憲兵の問いに対し、キースが苦笑混じりに返答する。
二人の一通りのやりとりを確認するとナイルが本題を切り出す。
どうやらこの場における駐屯兵の指揮官は、本題を交えた会議にはお呼びでないらしい。
ナイル「それで…中央憲兵様がおいでになったからには、それなりの説明をする準備もあるのだろうな…?」
中央憲兵a「そう急かすな師団長殿。説明はする…が、命令には従ってもらう。」
キース「命令だと?まだこんな事を続ける気か…?」
中央憲兵a「継続するとは言っていない。新たな命令が発令されましてね…」
-
- 86 : 2015/04/28(火) 08:51:38 :
- 【トロスト区における感染症に関する詳細及び拡大防止について】
『現在、トロスト区で発生している現象はとある感染症が原因であると判明した。早急な対応が求められる。諸君等の役目はその拡大を防ぐ事にある。
下記はその感染症の特徴を記したものである。』
症状:動悸が激しくなり体温が著しく上昇し、死に至る。感染から発症までには個人差あり。(発症確率はほぼ十割。)死後は再活動を始め、周囲の生物を無差別に襲う。(理性は失われている模様。)
感染経路:基本的には接触による感染。咬み傷や爪痕からの感染が多数。程度によらず確実に感染するので要注意。
対処方法:対象の活動停止は頭部の破壊でのみ可能。その他の部位を傷付けても効果は無い。
以下は上記を参考の上、考案された対策である。細心の注意を払い遂行せよ。
・本日18:30をもってトロスト区を完全に閉鎖、隔離状態に置く。尚、解放については未だ検討中。
・壁上に検問を設け、壁を越える際は例外無く全員が身体調査及び健康調査を行うこと。外傷が確認された場合は例外無く隔離対象とする。各隊員も審査対象である。
・感染者が発見された場合及び、発症した者が現れた場合は速やかに対処せよ。
・各隊員は立体起動、市民はリフトを使用すること。人数制限は現場に一任する。
・感染者が大量発生した場合は未感染者のみを避難させること。また、それ以降の検問通過は認められない。
-
- 87 : 2015/04/29(水) 09:53:23 :
- 中央憲兵の男の懐から取り出されたその書類をキースとナイルはジッと読み込む。
二人とも記載事項を読み進めていくにつれ、表情が一層険しくなっていくように見えるのは恐らく気のせいではない。
明らかに苛立ちを隠さず、むしろ放っている様でもある。
しかしナイルもキースも、一組織を率いる人間である。いかなる場合でもその選択に迷いの余地は無い。
もし令状に記されている事が事実ならば、ここで目の前の男に人徳や倫理観念を説くよりも、迅速に行動を起こす方が最善である。
最後の項目の切り捨てる様な表現は気に食わないが。
要は感染爆発を起こす前に全員を避難させれば良いだけのこと。
それがあまりにも単純で、あまりにも困難な解決策である事は承知の上である。訓練兵には酷だろうがやるしかないのだ。
市民という“集団”を守り抜くのはそれほど難しい。数年前、兵団という訓練された“集団”でさえ守れなかった記憶が頭をよぎる。
しかし胸の内の不安などかけらも出さず、あくまで鬼教官然として振る舞う。
壁上から降り門前に立つと、覇気のこもった声で令状の記載事項をその場いる者達に簡潔に伝える。各隊員には的確に指示を飛ばす。
-
- 88 : 2015/04/30(木) 08:21:31 :
- 18:00頃、各隊員及び検問の準備が整った。検問が設けられてからというもの、内門付近はより一層騒々しさを増した。
タイムリミットまで30分を切っているせいか、市民の焦りや苛立ちが加速度的に上昇している。
押し寄せる人波、渦巻くような怒号や悲鳴。
その混沌とした状況はまるで、数年前のシガンシナ区襲撃とそれに続くウォールマリア崩壊の時の状況を彷彿とさせた。
この場の兵士の半数近くを占めるのは訓練兵、あとの半分近くが駐屯兵、残り少数が憲兵である。
経験上、憲兵や駐屯兵の一部はこの手の仕事は慣れているが、訓練兵は人間相手の調査などほぼ初経験である。故に検問の進行状況は芳しくない。
だが非情にも時間というものは確実に進んでゆく。それは人の手ではどうにも抗えないものである。
時間とは、運命と似通ったところがあるのかも知れない。
運命もまた、多くの人々が逆らえないものである。
両者の違いは一つ、運命には稀にそれを覆さんとする者が現れる。
-
- 89 : 2015/04/30(木) 08:21:48 :
- 時刻は18:30に近づいており、そろそろ時間切れか近いということである。
検問を通過し避難可能となったのはトロスト区全市民の三割程度。残った七割は言ってしまえば置き去り。
壁の下で整列を促している兵士達は元より少なかった立体起動のガスを使い切った者達だ。
よって彼らも切り捨てられるという形になる。
それは市民も察したのか更にどよめきが増す。
今トロスト区に居るのは、
トロスト区中の七割の市民、
ガス切れを起こした数十人の兵士達、
街の反対側にいたエレン達九人、
そして街中の地下をうろついている不特定多数の感染者。
現在時刻18:30、只今をもってトロスト区は完全隔離状態に置く。
リフトは動力源を断たれ、トロスト区本部からは既にガスを全て抜き取られている。
言うなれば、陸の孤島。
陽は沈み朱が藍に染まってゆく。
今この街には暗がりを好む者たちがいる。
ここから先は彼らの独壇場。
地獄が、始まる。
-
- 90 : 2015/05/05(火) 19:54:24 :
- 更新待ってます!
-
- 91 : 2015/05/08(金) 20:18:19 :
- 「なあマジで俺ら置いてかれんの?」
「まさか、そのうち増援とか来んだろ……来るよね?」
「いや知らねえけどよ…本部のガスまで抜いてったみたいだな。」
「えっ嘘でしょ?それじゃどうやって俺ら上がんのよ。」
「いやだから隔離するって訓練兵団の教官さん言ってたじゃん。今の教官誰か知らんけど。」
この状況にしては危機感に欠ける話し声が聞こえる。声の主は取り残された駐屯兵達。
その油断とも呼べる態度は、数年前の巨人の侵略を目の当たりにした経験によるものなのだろう。
自分達は一度悲劇を経験したのだと。あれ以上の悲劇は起こらないだろうと。
皮肉にもその負の慢心は油断を生み出す素となり、その油断を餌に地獄は寄ってくる。
既にそれが同僚五人を喰らっている事実を、未だ彼らは知らない。
-
- 92 : 2015/05/09(土) 23:49:56 :
- サシャ「なんか置いてかれちゃいましたねー私達。」
コニー「ばっかお前考えろよ、これはあれだ。上官達は俺達にこの場を任せて行ったんだよ。」
サシャ「ほぇー、そういことだったんで……ん?ってことは…この場においては私達に指示する人がいない、ということになりませんか?コニー。」
コニー「ふっ…気付いたか。そうだ、つまり…」
「「上官達のお肉食べ放題!!」」
サシャ「そうと決まれば急がなくてはっ!」
コニー「あっ待てサシャ!…えっ、四足歩行…?」
テーマは“食糧の拝借”。
そんなバカ二人が織りなす独特の会話が何処からともなく聞こえてくる。
今日も今日とて彼らに異常無し。仲良き事は美しき哉。(共犯,悪友ともいう)
彼らの向かう先は街の中央に位置するトロスト区本部。
当然、その行いは集団から外れる事となるのだが、果たしてそれは彼らの命運にどう作用するのか。
-
- 93 : 2015/05/17(日) 21:59:13 :
- 期待!!
-
- 94 : 2015/05/18(月) 07:40:15 :
- お待たせしました。
今日の夜投下します
-
- 95 : 2015/05/19(火) 00:24:37 :
- 「とうとう本格的にまずくないか?」
「確かに…上官っぽい人が出してた命令の内容通りだとすると、既に感染症が蔓延してる可能性もあるのか?どんな病気なのかは聞こえなかったが。」
「そりゃないと思うぜ。もしそうなら検問なんてしないで最初から隔離だったろうよ。」
「じゃあこれから広がるってことか。でもどうやって…」
自分達が置かされている状況を分析しようと知恵を絞る市民達。
議題としては、どんな感染症なのか、具体的な対策はどうするか。そういったものが挙げられた。
巨人の侵略という修羅場をくぐった者達が居るからか、彼らは落ち着きを取り戻し始めていた。
その時、
影が動いた。
既に陽は落ちて灯の少ないこの街中で、確かに影が動いた。
ヒトのような、それでいて本能の何処かでそれを否定したくなるような気配が複数。
その影を見た者は集団の外側に居る数人だけ。
そのうちの誰かがふと、疑問を抱いた。
「??」(何だ今の…人か……?)
次の瞬間、
「ゃ…嫌ああああ!!」
集団の何処かで耳を裂くような金切り声が響いた。
まるで地獄の幕開けを知らせるかのように。
そして、影を見た者達はその姿をはっきり視界に捉え、自ずと絶句する。
そして、やがて彼らは物言わぬ肉の塊へと姿を変える。
そして、その光景は集団全体へと広がりつつある。
-
- 96 : 2015/05/23(土) 08:48:30 :
- 期待期待♪
-
- 97 : 2015/05/23(土) 19:02:06 :
- トロスト区外門付近、とある酒場にてーー。
ギギィィ…
頼りない音を立て、ノブも金具もない扉が押し開かれた。
膝上から胸ぐらいのその扉は、トリガーを手にしたままの少年にとっては都合が良かった。
息を潜め、押しのけるように入り口を過ぎる。
机や椅子の様子から廃墟ではない事が伺えた。
だが物音がしない。廃墟で無くとも人が居る訳ではない。そしてヤツらが居る気配も無い。
カウンターの奥、物陰を確認していく。
危険性が無いのを確認すると、止めていた呼吸を再び始める。
大きな息を吐き、眉間に寄せていた皺を解いて後ろを振り向く。
そして入り口の方にむけて声をかけた。
「クリスタ、ユミル!問題無い、入っていいぞ!」
-
- 98 : 2015/05/23(土) 19:15:29 :
- 期待
-
- 99 : 2015/05/23(土) 20:02:28 :
- クリスタ「ね、ねえ戻らなくていいのかな?その、本部とかに……、ここに居る必要ってあるのかな?」
ユミル「それよりも、まずはエレン達との合流だな。ライナーが言うには分かりやすい目印を付けて来たって話だしな。」
ライナー「ああ…、だがそれもエレン達が無事だったらっていう話だ。まあ例えエレン達が来なくても、陽が昇るまではここを離れないがな。」
クリスタ「え、なんで?早く帰った方が…」
ユミル「落ち着けクリスタ。さっさと帰りてえってのも分かるがな、今はその帰る道中が危険かも知れねえんだ。そういう事だろライナー?」
ライナー「そうだ。それに、今日の兵装は訓練目的じゃないからな、立体起動装置を使おうにもガスが無い。だからどうしても移動は徒歩になる。」
ユミル「そんな状況で、もしヤツらと遭遇でもしたら、今度こそ逃げ切れるか分からねえな。」
瞬間、三人の脳裏に同じ光景が浮かび上がる。
ヒトの形をした獣のようなソレが、人をただの肉塊へと作り替えるあの光景が。
分からない。
果たしてアレは連鎖的に起こる現象なのか、それとも人智を超えた神の悪戯なのか。
彼らにはまだ、分からない。
-
- 100 : 2015/05/26(火) 08:29:33 :
- トロスト区外門付近、大通りにてーー。
時刻は18:30を少し過ぎ。
北部では市民達の集団に異変が発生し始め、ライナー達三人が束の間の安息を手にした頃。
一つの集団に新たな動きがあった。
ミカサ「…!エレン、目印があった。」
エレン「おぉ、ホントだ。案外すぐ見つかるもんだな。アルミン、あったぞ!」
アルミン「うん、よし…順調だ。ライナーの目印も目立って分かりやすくなってる…、向こうも大分落ち着いてきてるんだろう。」
アニ「指しているのは商店街の方向だね。本部への直帰ルートじゃないって事は、何処かに身を隠してる可能性が高い……」
ハンネス「まあそう考えるのが妥当だわな。連中と集団でかち合ったら、無事じゃ済まねえだろうよ。経験則だ、間違い無い。」
アルミン「じゃあ商店街でライナー達を捜そう。少し経っても見つからなかったら、僕達だけでも仮拠点を作る。これで良いね?」
ミカサ「異議無し。でもアルミン、もう陽が沈んできてる。完全に沈むまでに終わらせよう。」
ジャン「無理に動かねえ方が利口ってか。まあミカサの言う通り、暗くなるまでに一息つきてえな。」
エレン「んじゃ行くか。」
そして彼らは再び歩き始める。
-
- 101 : 2015/05/29(金) 01:08:21 :
- エレン達は先の場所から少し歩き、商店街の中にいた。
今日1日で色々な事が起き過ぎた。
皆一様、足取りが重く感じられる。
精神的にも肉体的にも、疲労が蓄積しているのだろう。(ミカサも多少)
ここで一息つける所を探せれば、それも少しは楽になる。
そんな中、エレンが何かを感じ取った。
エレン「…?」
ミカサ「エレン、どうかした?」
エレン「いや、今あそこの建物からなんか気配がした……、気のせいじゃねえ。」
アルミン「…ライナー達かもしれない、行ってみよう。」
ミカサ「確かに…合流は早めに済ませた方が良い。」
-
- 102 : 2015/05/29(金) 01:16:09 :
- ハンネス「待て、俺が先に行く。もしその感じた気配が人間じゃなかったら危険だ。」
ジャン「おいおっさん、あんた正気か?これまで既に何回も襲われてんだろ?」
アニ「……少しでも経験のある奴が対応するのが、現状では一番リスクが低い。…ハンネスさんだっけ?問題があるならあんた自身だけど。」
ハンネス「大丈夫だ。敵前逃亡なんて二度しねえ……絶対に。」
ミカサ「……」
エレン「ハンネスさん…」
アルミン「……話は後にしよう。まずハンネスさんを先頭に、全員固まって全方位を警戒しつつ侵入する…ライナー達かもしれないからそこは気をつけて。」
アルミンの作戦に全員が頷くと、ハンネスを先頭に全員が背中合わせになる形で陣を組む。
そのままゆっくりと、建物の中に足を踏み入れる。
-
- 103 : 2015/05/29(金) 02:00:08 :
- エレン達が建物へ侵入したのと同時、他の三人にも動きがあった。
ライナー「…ッ!」
ユミル「…あ?」
クリスタ「どうかしたの、ユミル?」
ユミル「なんか来たな…」
ライナー「みたいだな…」
ユミル「どうする?」
ライナー「どうするってお前……お出迎えして差し上げるに決まってんだろ。」
ユミル「だろうな…んじゃ私はここでクリスタ守ってるから、ライナーが片付けて来い。」
ライナー「はぁ……いいか?二分以内に戻らなかったらここから離れろ。」
ユミル「あぁ分かった。あとそんな気ぃ落とすなって。これでも結構おめーのこと買ってんだかんな。」
ライナー「ありがとよ…クリスタから言われたかったけど。」
ユミル「はよ行けゴリラ」
-
- 104 : 2015/05/29(金) 02:29:36 :
- エレン達が組んだ陣全体が建物に入り、探索を開始する。
建物の中は棚や木箱、樽などで埋め尽くされていた。
棚と木箱には瓶やグラス、樽には主にワインが入っていた。
まさに倉庫のようだった。
そして探索を少ししてエレンが口を開く。
エレン「ライナー達に呼びかけてみるか?」
アルミン「もしヤツらがいたらおびき寄せる事になる。やめた方が良い。」
ジャン「なあエレン…まさか何にも居なかったっつーオチじゃねえよな?」
エレン「いやそれはない、確かに気配は感じた。絶対に何か居……!?」
エレンの言葉は何者かに遮られた。
-
- 105 : 2015/05/29(金) 03:05:38 :
- 倉庫のような場所でエレンが口を開いた時、ライナーは階段を下っていた。
ライナー達の入った酒場は店主の住居でもあり、彼は二階にある一部屋を自室としていた。
勿論ライナー達はそんな事は知らなかったがその部屋を拝借して休憩していたのだ。
ライナー(ヤツらが来やがったか…いや、エレン達が到着したか?どちらにせよ、実際に下りて確かめる他はない。)
一階の酒場に着くと、真っ先に入り口を見るが誰も居ない。
周りも注意深く見渡すが、ここには誰も居ない。
だが、何か聞こえる。
………声?
奥の扉の方から声が聞こえる。
話し声なのか呻き声なのか、判別は付かないが確かに居る。しかも複数人。
そういえば、あの扉の存在には気付かなった。
最初入ってきた時に見落としていたのか。
何にせよあの扉は開かねばならない。
エレン達なら合流出来るし、ヤツらならここで始末しなければ上のクリスタ達が危険だ。
覚悟決めろ。
俺は“兵士”、戦わなければならない時がある。
-
- 106 : 2015/05/30(土) 01:35:53 :
- チャキッ
キリリリ……
トリガーを手に取り、ブレードを装着する。
大柄でパワーも訓練兵トップのライナーは、このような近接戦は得意な筈である。
なのに、雑念が頭をよぎるのはヤツらに対する本能的な嫌悪感から来るものだろう。
その負の感情を押さえ込み、酒場の奥の扉へ素早く駆け寄る。
ヒトの形をした化け物の首を跳ねる覚悟を決めて。
-
- 107 : 2015/05/30(土) 02:15:25 :
- グァアア!!!
エレン「……ッ!?」
突然の襲撃でエレンの身体か一瞬硬直する。
それでも無理矢理上げた腕に握られたブレードは、襲撃者の胸を突き刺す。
それでも襲撃者は止まらない。
尚もエレンを喰らわんとし、接近する。
ミカサ「危ないエレンッ!!」
アニ「……ッ!!」
ハンネス「…くそッ!!」
陣の反対側に居たミカサとアニは間に合わない。
ジャンとアルミンでは反応し切れない。
後方で起きた出来事にハンネスは反応が遅れる。
ブレードに胸を貫かれながらも、その化け物は自分目掛けて腕を伸ばして来る。
斜めに開かれた顎は凶暴性を帯びていて、何より絶望を感じさせた。
エレン(ヤバい…、頭じゃないとッ…!喰われるッ、早く避け…)
エレンの頭はフル回転していた。
していたのだが、判断力が欠け、幾つもの思考が流れ消えてゆく。
そして最後に、限界まで稼働した脳に過ぎった言葉は“死ぬ”だった。
次の瞬間。
ブシュッッ!!!
エレンの視界に映ったのは、凶暴性を帯びた顎や、鮮血の血飛沫ではなかった。
それらとは全く別の、見慣れた金属製の刃に貫かれた眉間や、赤黒い血液と濁った脳漿だった。
-
- 108 : 2015/06/01(月) 01:05:18 :
- 間一髪。
化け物の顎は、あと数センチでエレンの首筋に達するところだった。
エレンはまたしても、ギリギリのところで命を拾ったのだった。
そして恐る恐る、焦点の合わない瞳を化け物の背後へ向けた。
その先に化け物の眉間を貫いた張本人が居た。
エレン「ら、ライナー…か?」
ライナー「ハァ…ハァ…危ないところだったな、エレン。」
アニ「はあ…来るのが遅い。」
アルミン「エレン、良かった…生きてる……」
ミカサ「…エレンッ!!」
エレン「うおっ、おいミカサなんだいきなり…どうしたんだよ?」
アルミン「はは、まあ好きにさせてあげなよ。正直僕も、今のは助からないと思ってしまった…」
ジャン「おいこらエレン、生き残れた上にミカサに飛びつかれて、その上まだ文句あんのかテメー?」
エレン「んなこた無えけどよ……あ、それよりライナー、助かったぜ。ありがとな…」
ライナー「ふっ、良いってことよ……無事こうやって合流できた訳だしな。それとクリスタとユミルを待たせてる。行こう、話はそれからだ。」
アルミン「うん、そうだね。ちゃんと話しておきたい情報もあるし。」
ハンネス「…なあエレン、あの兄ちゃんは…」
エレン「?…ああ、ライナーか。ライナー・ブラウン、104期生で暫定2位だ。それに頼り甲斐のある奴でもある。」
ハンネス「ほー、素質のある若者が育つってのは良いな。」
エレン「何ジジくせえ事言ってんだよ、ほら行こうぜハンネスさん。」
ハンネス「おう。」(…エレン達にはもう、頼れる仲間が居る…。この分なら俺もそろそろ、お役ご免だな…)
-
- 109 : 2015/06/20(土) 13:30:07 :
- 続きはよ
-
- 110 : 2015/06/28(日) 02:57:52 :
- 楽しみにしてくれていた方、長らくお待たせしました。
そうでない方も楽しんで頂ければと思います。
テストが終了したのでぼちぼち再開します。
投稿は明日からの予定。
-
- 111 : 2015/06/28(日) 23:50:55 :
- トットットッ…
スタッスタッ…
スッ…
複数人の階段を昇る足音、その後ドアノブに手を掛ける音。
自然と警戒の態勢をとる。
ここ数時間でだいぶ物音に敏感になった気がする。
個人差はあれどそれはクリスタもユミルも同じ事だろう。
ユミル「…」
クリスタ「ッ…」
ガチャッ
クリスタ「ッ、ライナー!」
ライナー「遅れて悪かったな。それと少し急だが話がある、良い知らせだぞ?」
ユミル「ハァ…エレン達だろ?もったいぶんな。」
ライナー「何だ驚かせてやろうと思ったんだがな…そこからは見えない筈なのに…」
ユミル「足音で人数くらい分かるっての…まず発想がしょうもねぇ。」
ライナー「む、そうか…、ああ入って良いぞ。」
-
- 112 : 2015/06/29(月) 00:08:29 :
- そう言うとライナーは名残惜しそうに部屋の入り口から離れる。
ライナーの背中から苦笑混じりのエレンが顔を出し、続いて六人が部屋に入る。
エレン「ライナー、俺もユミルに同意だわ。」
ライナー「んん……次からはもっと凝ってみるか…」
クリスタ「皆、エレン達も無事だったんだね…」
エレン「おう、何度か死ぬかと思ったけどな。」
ジャン「ッ〜…ぁぁ!やっと一息つけるぜぇ…」
アルミン「クリスタもユミルも無事で本当に良かったよ。」
ミカサ「今日はずっと張り詰めていた。流石に疲れた…」
アニ「あんたでも疲れは感じるんだね。」
ハンネス「俺からすりゃミカサだってまだまだ子供だからな…随分と強かになっちまったが。」
クリスタ「………ねぇユミル、あの人誰?」
ユミル「薔薇の紋章…駐屯兵、だな……あーミカサ、ちょっと。」
ミカサ「?…何?」
ユミル「あの駐屯兵のおっさん、誰だ?」
ミカサ「……そう言えばハンネスさんの紹介がまだだった。」
そうして一同は安息の場を手に入れた。
そして今大事なのは状況を掴む事。
だがその前に確認しておく事がある。
この場の大半が見知らぬ顔である駐屯兵、ハンネスについて。
-
- 113 : 2015/06/29(月) 07:49:00 :
- 昔、ハンネスはエレン、ミカサ、アルミン三人の面倒を見ていた飲んだくれの怠惰な駐屯兵だった。
彼は巨人の襲撃時、エレンとミカサを救い出すも、巨人の恐怖を前に彼らの母親を救うことは出来なかった。
その後、彼は一部隊の隊長となった。部下はお世辞にも真面目な者達では無かったが信頼はされていた。
彼は昨夜、一人の部下を知らぬ間に失った。
今朝には四人の部下に守られ、そして彼らを失った。
自身の無力さを改めて感じ、絶望さえ感じた。
だが彼は守ることが出来た。
最後に残された、自分の手で守りたいと思う者達を。
飲んだくれで怠惰な駐屯兵はもうここには居ない。
エレン「少し長くなっちまったかな…?ちょいと紹介するつもりだけだったんだが。」
ハンネス「ま、実際のところそんな立派な人間じゃねえけどな。」
ミカサ「エレンの言う通り。事実、ハンネスさんには昔から良くしてもらったし、感謝もしている。」
ジャン「そうか、昔からミカサ達を…」
アニ「……」
ハンネス「さあ、俺の話はこれで十分だろう。本題はこれじゃない。そうだろ?」
アルミン「うん。まずは互いの情報交換だ。」
ライナー「ああ、そうだな。」
-
- 114 : 2015/06/30(火) 23:43:57 :
- ライナー「まずはここの事を知ってるだけ話しておくか。」
アルミン「うん、一階を通り過ぎた時は酒場みたいだったけど。」
ライナー「あながち間違っちゃいねえだろうな。それよりもコレだ、見てくれ。」
ライナーが机から取り出したのは一枚の紙切れだった。
ライナー「置き手紙か何かだろう。字は殴り書きで、使った紙は新聞紙、インクも薄れてる……急いで書いたんだろうな。恐らくここの店主が書いたものだろう。」
-
- 115 : 2015/07/01(水) 00:20:09 :
- ーーーーーーーーーーーー
〜愛する娘へ〜
この手紙を読んでいるという事は、無事に塾から帰ってきたのだろうか。
お前が帰って来ている頃には、私はお家にいないだろう。
昼間うちの近くに憲兵が来て、避難しろと言っていた。お前の塾の方も同じだろうか。
私は内門に向かう事にした。塾にも憲兵が来て、お前も既に避難している事を祈る。
憲兵が来た上でうちに来たのなら、内門に向かいなさい。きっと避難誘導をしているはずだ。
それとクローゼットの中に去年買ってあげた赤いドレスが有るはずだ。目印になるからそれを着て来なさい。
愛しているよ。
〜パパより〜
最後に、この手紙を読んだ顔も知らぬ誰か。
赤いドレスを着た女の子が居たら保護してやって欲しい。その子の名はビアンカ。
もう行かなければ。外の様子がおかしい
ーーーーーーーーーーーー
-
- 116 : 2015/07/03(金) 01:42:39 :
- スカトロトロピカル
-
- 117 : 2015/07/09(木) 23:31:52 :
- エレン「…」(クローゼット…あれか?)
エレンの視線の先に映ったのは、開きっ放しのクローゼットと床に落ちたままのハンガーが一つ。
赤いドレスは無い。
エレン「俺らが下にいる間、何があった…?」
アルミン「分からないけど…これを見る限り、尋常じゃない事態らしいね。」
ハンネス「恐らく原因はヤツらだろう。下の倉庫にも一人いたんだ。他にいてもおかしくない。」
ライナー「住民は内門に避難してるみたいだが…どうする、行くか?」
ジャン「そりゃ自殺行為だぜ。外は真っ暗だ、ランタンじゃ心許なさ過ぎる。」
アルミン「うん、ひとまずここで明るくなるまで待機するのが一番安全かもしれない。」
ユミル「んじゃ今日はここで泊まりだな。とりあえず、それっぽい情報はこれくらいだ。そっちは?」
-
- 118 : 2015/07/10(金) 07:55:27 :
- アルミン「そうだった、こっちも知ってる事話さなきゃね。不確かなものばっかりだけど。」
ユミル「構わねえよ、そんなんでも有るのと無いのじゃ大違いだからな。」
アルミン「分かった。それじゃ、何から話そうか……」
もう癖になっていた。
他人にものを教える時のアルミンはいつもこの位置取りだった。
アルミンは無意識にやっているだろうが、この位置関係がまたお互いとてもやりやすい。
そんなアルミンの姿に二人の幼馴染と一人の中年兵士はその顔に微笑みを浮かべていた。
アルミン「よし、じゃあまず順を追って………どうかした?」
エレン「あぁいや、なにも。」
ミカサ「ええ、別になにも無い。」
ハンネス「アルミンの勘違いじゃねえのか?」
アルミン「…?まあいいや、ライナーとクリスタもちゃんと聞いてね。まず…」
-
- 119 : 2015/08/25(火) 20:03:41 :
- B.O.W、タイラントてかでたら無理だろう
-
- 120 : 2016/01/24(日) 14:03:03 :
- まだかな♪
-
- 121 : 2016/03/07(月) 15:53:10 :
- 初めまして
あの~続きが気になります
-
- 122 : 2020/09/28(月) 11:12:29 :
- 高身長イケメン偏差値70代の生まれた時からnote民とは格が違って、黒帯で力も強くて身体能力も高いが、noteに個人情報を公開して引退まで追い込まれたラーメンマンの冒険
http://www.ssnote.net/archives/80410
恋中騒動 提督 みかぱん 絶賛恋仲 神威団
http://www.ssnote.net/archives/86931
害悪ユーザーカグラ
http://www.ssnote.net/archives/78041
害悪ユーザースルメ わたあめ
http://www.ssnote.net/archives/78042
害悪ユーザーエルドカエサル (カエサル)
http://www.ssnote.net/archives/80906
害悪ユーザー提督、にゃる、墓場
http://www.ssnote.net/archives/81672
害悪ユーザー墓場、提督の別アカ
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害悪ユーザー筋力
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害悪ユーザースルメ、カグラ、提督謝罪
http://www.ssnote.net/archives/85091
害悪ユーザー空山
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【キャロル様教団】
http://www.ssnote.net/archives/86972
何故、登録ユーザーは自演をするのだろうか??
コソコソ隠れて見てるのも知ってるぞ?
http://www.ssnote.net/archives/86986
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