この作品は執筆を終了しています。
これからの未来に-エレアニ-
-
- 1 : 2015/02/28(土) 23:50:33 :
- 6作目です。
冬がくれた予感-エレアニ・ベルアニ・エレヒス・104期-
(http://www.ssnote.net/archives/31762)
の続き、エレアニルートになります。
誤字や脱字などあればご指摘お願いします。
-
- 2 : 2015/02/28(土) 23:51:52 :
- ベルトルトはアニを探していた。
運良く並ばずにプリンを買い終え、ケーキ屋の目の前まで来たが彼女はいない。
彼女も既に買い終えたのだろうか、だとしたら何処にいるか。
この身長をもってしても見当たらないということはこの付近にいない可能性が高い。
彼は携帯を取り出し、少ない動作のあと耳に当てた。
-
- 3 : 2015/03/01(日) 01:16:01 :
- 「ベルトルト……?」
小柄で金髪。
一瞬アニかと思ったが、見慣れた位置よりもさらに低いところにある頭で彼女ではないことを悟る。
「えっ……クリスタ?」
「うん、本当はヒストリアって言うの」
困ったように笑う彼女は女神の名に相応しく、相変わらずとても綺麗だった。
「あ、ああ……そういえばそんなこと言ってたね……」
『ってえぇ!?』
-
- 6 : 2015/03/01(日) 14:08:08 :
- 「ま、まさかベルトルトもこの世界にいたなんて……あ、どこかに皆いるだろうなとは思ってたけど!」
「こんなに近くにいたなんてね……」
ひとしきり驚いたあとに、2人は顔を見合わせて笑った。
「私はユミルやコニー、サシャとかエレン、ミカサ、アルミンに会ったよ! 会ったっていうか同じ高校に通ってるんだ」
「そんなに! こっちはライナー、マルコやジャン……フランツとハンナもいるよ。ライナー以外は同い年で同じ高校」
ベルトルトは敢えてアニやミーナの話をしなかった。
アニのことについてどこまで知っているかわからないし、ミーナの名前を出したら昔から仲の良かったアニの話に繋がりかねない、と踏んだのだ。
-
- 9 : 2015/03/01(日) 15:32:29 :
- 「そっちにも沢山いるんだね……あっ私エレンとここに来て探してるの! もう行かなくちゃだけど……連絡先交換しない?」
「もちろん、喜んで。今度ゆっくり話でもしよう」
「うん! もう皆過去のことなんか気にしてないと思うし、『あの』メンバー皆で会いたいね!」
「そうだね。あ、僕も人と来てるから、もう行くね!」
「またね!」
-
- 12 : 2015/03/01(日) 16:41:33 :
- 別れたところでベルトルトは外に向かう。
「中だと電波悪かったからなぁ。寒いけど仕方ない」
-アニにクリスタ……もといヒストリアと会った話を早くしたいな。
そういえばミカサもいるって言ってたっけ。
ジャン、よかったね。ずっと探している想い人に会えそうだよ。
あ、でもエレンもいるらしいから想いが届くかわからないなぁ。
エレンとミカサは付き合ってたりして。-
ベルトルトが様々なことに思いを巡らせていると、目の前に綺麗な黒髪が通った。
「……ミカサ?」
-
- 13 : 2015/03/01(日) 18:01:19 :
- 今度は驚かない。
先ほどヒストリアが話していたとおりならミカサが近くにいても何らおかしいことはない。
「……ベルトルト」
そしてミカサも驚いた様子はない。
いたって冷静だ。
「あはは、驚かないんだね。流石だよ」
「そういうあなたも」
「ついさっきヒストリアに会ったんだ。そのときミカサも同じ高校に通ってる、って聞いてね」
「そう……私もアニを見かけたからそこまでの驚きはなかった。むしろ必然」
「アニを? ちょうど探してたんだ。何処にいたか教えてもらってもいい?」
「そこ」
ミカサが指したのはガラスでできたドアの先。
そこには涙を流しながら一方的にキスを繰り返すエレンと、只々されるがままの呆然としているアニがいた。
-
- 16 : 2015/03/01(日) 22:44:44 :
- 「え……ア「おいミカサ!!」
か細いベルトルトの声は、怒気が含まれた大声で書き消された。
「ユミル、ここは公共の場。静かに「お前、わかってて2人を会わせたのか?」
ミカサの声さえも遮り現れたのはかつての仲間、ユミルだった。
「いいえ、それは違う。たまたまアニを見かけた。なら、会わせなきゃ駄目でしょ? エレンが誰とデートしてようが関係ない」
「お前なぁ!! いくら惚れた奴の為だからって……あいつを傷つける必要はないだろ! 」
「別にヒストリアを傷つけようなんて思ってない。ただここでの運命的な出会いを逃してはならないと思っただけ」
「チッ……てめえ覚えとけよ」
「あ、ベルトルト! ってユミルにミカサ? 何でこんなところで騒いで……」
ユミルはしまった、と顔を歪ませミカサはいつにもまして無表情だった。
そしてヒストリアは目の前の光景に絶句する。
「えっ……なん、で……? エレン……あれ、は、アニ……?」
-
- 21 : 2015/03/01(日) 23:39:01 :
- ふと我に返ったベルトルトは駆け出した。
「駄目、ベルトルト」
ドアを開けるまでもう少しの所でミカサに引き止められる。
昔なら振り切れなかったかもしれないが今は訓練兵でもなんでもない、普通の女性だ。
確かにそこら辺の女性としては力強いが男として生まれ、この世を生きてるベルトルトがその手から抜け出すのは難しいことではない。
「待て、ベルトルト。これは一体どういう状況だ……?」
しかし突然現れたジャンとマルコに止められては動けない。
「離してくれ」
ドスの効いた限りなく低い声。
今まで見たことのない……いや、戦士としての使命を全うしていた過去でしか見たことのない、噛み付くような目つき。
その色はどこまでも深く、終わりのない闇に染まっていた。
-
- 24 : 2015/03/02(月) 00:35:14 :
- 「ちゃんと話し合おう。僕とジャンで2人を連れていくから、そうだな……」
「ここからミカサ達の住んでるマンションが近かったよな。アルミンも同じマンションだし今日は家にいる可能性が高い。いいよな? ミカサ」
マルコとユミルで冷静に話を進めていく。
「構わない」
「それと、マルコとジャンだけじゃこっち側にとってアウェイだ。私も行く」
「あ? 2000年ぶりだってのに随分な挨拶じゃねえか、ユミル」
「ジャン、落ち着いて……じゃあ先に行ってアルミンも呼んでおいてくれ」
優しく微笑みかけるマルコを見て、今にも死にそうだったヒストリアの顔にほんの少しだけ安心の念が宿る。
「う、うん……わかった」
「ジャン、マルコ……」
「ベルトルト心配すんな。俺に任せとけ」
「ヒストリア、ベルトルト、行こう」
さっきの怒りをあらわにした表情とは打って変わって、不安を募らせていたベルトルトもミカサの声に続き歩き出して行った。
-
- 29 : 2015/03/02(月) 08:37:33 :
- 「とりあえず一番厄介な奴らは行ったな」
「問題はこっちの騒ぎにも気づかない2人の中にどうやって入っていくか、だね……」
エレンは静かに涙を流してアニを抱きしめている。
アニは動かなくなった人形のように、抱き返すことも突っぱねることもしていなかった。
「はあ……おいマルコ、こっちは俺らに任せてミーナを呼んでやってくれ。もうそろバイト終わるだろ?」
「これ以上人増えてややこしくして大丈夫かな……」
「……あいつには今、ミーナが必要だろ」
「そうだね、わかった。駅に一番近い出口で落ち合おう」
マルコが走り去った後、少しの沈黙が流れた。
「……俺が先に入る」
「お好きにどーぞ。私はヒストリアしか救う気はないからな」
「はっ、相変わらずだなお前」
「お前が変わりすぎたんだよ」
「あの世界を最後まで生きてりゃ嫌でも変わるんだよ……色んな奴の弱さを知っちまったからな」
「そーかい。まあせいぜい頑張れよ」
ジャンは舌打ちをしてドアを開けた。
-
- 32 : 2015/03/02(月) 20:29:48 :
- 「おい、アニ。なに彼氏以外の男に涙見せびらかしてんだよ」
振り返ったアニの目からはキラキラと涙が流れでている。
「じゃぅ、っん……!」
アニはエレンの元を離れ、ジャンの胸に飛び込む。
それをジャンはしっかりと抱きとめた。
「は、あ!? なんでジャンがここに……ま、まさかお前ら付き合ってるのか!?」
引き離そうと飛び掛るエレンを抑えたのはユミルだった。
「落ち着けエレン。多分こいつが付き合ってるのはベルトルさんだと思うぞ」
「は!? ベルトルト……?」
「まあ色々整理するためにミカサんち行くぞ。来い」
混乱状態のエレンはユミルに宥められた。
「じゃぅ、どぅしよっ、べ、るぇとっがいるの、に……!」
「アニも落ち着け。話せばベルトルトもわかってくれるから。あいつがそう簡単にお前を離すわけないだろ?」
「ぅんっ…」
泣きじゃくってるアニを落ち着かせ、マルコとの待ち合わせ場所に向かった。
-
- 35 : 2015/03/03(火) 19:04:52 :
- 「アニ!」
「……ミーナ!」
2人は抱き合う。
「アニ、話は大体聞いたよ。ミカサの家までの別ルート、教えてもらったから2人でそっちから行こっ!」
ミーナは小さい頃、秘密基地にする基地を探しに行くような目だ。
「……わかった」
-
- 36 : 2015/03/03(火) 19:28:02 :
- *ミカサ・ヒストリア・ベルトルト
「どうぞ、入って」
そう言って通されたミカサの家は、一人暮らしらしくあまり物がない。
リビングには申し訳程度の小さな机とクッションが4つあるだけだ。
「これしかないけれど。私はアルミンを呼んでくる」
暖房のスイッチを入れ、暖かい烏龍茶を机に置くとミカサは家を出ていった。
「……まさかこんなに早く皆で話せるなんてね」
自虐気味に笑ったヒストリアはお茶が入った湯呑を両手で覆って暖をとっている。
「あれはアニ、だよね……付き合ってるの?」
「うん……君は、どこまで知ってるの?」
「エレンの気持ちが私に向いてない事くらいしか知らない」
淡々と告げた彼女に、ベルトルトは驚きを隠せなかった。
「どうして……」
「寝言で名前呼んでたからね」
「辛く……ないの?」
彼女は再び、笑った。
「それでも私は幸せだったの」
-
- 37 : 2015/03/03(火) 20:15:32 :
- しばらく黙ったあと、ヒストリアは口を開いた。
「あんな世界でも同じ時間を長く過ごして、生きたことを覚えてて、またこの世界で出逢えるなんて。運命としか思えないじゃない?」
疑問系だが答える隙は与えない。
「まあ、その場凌ぎの穴埋めでも、私を必要としてくれることに酔ってたんだと思う」
「だってね、不思議と辛くないの」
彼女の笑みは今までの否定的なものではなく
全てが吹っ切れた清々しい笑みだった。
-
- 38 : 2015/03/03(火) 20:42:54 :
- 「そう、決めたんだ」
「うん。こっちを見てないのは付き合う前からわかってたことだしね」
「それなら、なんで……」
「“彼女”が現れない可能性に賭けたの。きっと本物の次に一番近いのは私だから」
自信に満ち溢れた笑顔で言い切る彼女は、確かにベルトルトが見ていたクリスタ・レンズではなく、ヒストリア・レイスだった。
-
- 39 : 2015/03/03(火) 21:12:42 :
- 「呼んできた」
「……アルミン」
「やあベルトルト。2000年ぶり、だね」
ミカサの後に入ってきたのはベルトルト達を一番苦しめた存在と言っても過言ではない、アルミン・アルレルトだ。
「話は大まかにだけど聞いた。正直、エレンに関してはほぼ想像通りだったよ」
どこか寂しそうなアルミンだったがすぐにベルトルトを真っ直ぐ見つめた。
「ベルトルト、君の意見が聞きたい」
-
- 40 : 2015/03/03(火) 21:36:45 :
- ベルトルトは何だか懐かしいな、と『過去』のことを思い出した。
彼ははっきりとした答えが出ない時、何か違う意見があるときにはマルコやベルトルトに意見を聞いていた。
議論に発展するときもあれば正しい答えが出ることもある。
意外に、当時のベルトルトはそんな関係が嫌いじゃなかった。
「僕はアニに直接聞くまで決められない。彼女がエレンを選ぶっていうならそれはその時考えるよ」
彼の答えはいつもこうだ。
どちらともつかない答えのようで、自分の中にある答えは決まっている。
「そっか……変わらないね、君も」
「そういうアルミンの方こそ」
2人は『昔』を思い出し、あの時の少年時代のように笑いあった。
-
- 41 : 2015/03/03(火) 22:02:04 :
- *エレン・ジャン・ユミル・マルコ
「こっから何分くらいでつく?」
「5分くらいだな」
「そうか、ありがとう」
マルコとユミルのこのやりとり以外、家に着くまで誰も喋らなかった。
-
- 44 : 2015/03/04(水) 00:40:45 :
- *アニ・ミーナ
「気持ちはどう?」
「……最悪だよ」
「ああ、質問を変えるね。エレンとキスして、どうだった?」
ミーナは単純な女子高生の恋愛話を聞くように、わくわくした表情を見せていた。
「わからない……ただ、エレンは苦しそうに、泣いてた」
「そっか。アニ、あなたはどうしたい?」
「えっ……」
アニは言葉に困った。
まだ気持ちの整理がついてないのに、答えを簡単に出すわけにはいかない。
-
- 47 : 2015/03/04(水) 18:19:53 :
- 「こういうのって直感、だと思うの。冷静になって理屈を並べて決めるのは本当の、自分自身の気持ちじゃないんじゃないかな」
「だからね、もうここでどっちか決めちゃおう!」
放課後、遊びに行く場所を決めるようなテンションだ。
「駄目だよ、そんな、失礼だよ……」
「じゃあ理屈で選んだ妥協の相手は失礼じゃないっていうの?」
「それは……」
「なら、ここではっきりしよう。何を選んだって私はアニの味方だよ」
アニの表情が険しくなる。
-
- 48 : 2015/03/04(水) 20:03:06 :
- 「ミーナに恋しようって言われたとき、なんとなく思い浮かんだのはベルトルトだった。付き合いも長かったし、一緒にいて楽しかったし、安心できたし、ちょっと気が弱いところもあるけどこれが好きってことなんだって」
アニは決意したのか、はっきりと喋り始めた。
「でもエレンと目が合ったとき思い出したんだ。『アニ・レオンハート』としての想いを」
「あの頃は自分の気持ちを殺してたんだって……いや、ただ気付きなくなかっただけかもしれないね。結局、戦士にも兵士にもなれない中途半端野郎だったってわけさ」
「でも、アニはもう『アニ』でいる必要なんかない!」
「ありがとうミーナ。でも思い出してわかったことがあるんだ」
アニの瞳は、輝いていた。
「エレンから貰った愛を。私があげたくてもあげられなかった愛を」
-
- 49 : 2015/03/04(水) 22:42:07 :
- 「アニ……!」
「今度こそ半端にならないように生きるよ」
「ごめんね、私が恋しようなんて言うから……恋はするものじゃなくて落ちるもの、だね! 大変かもしれないけど、私支えるから!」
「……あ、こんな時間になっちゃった。早く行かなくちゃ!」
ミーナとアニは手を繋いで駆け出した。
道を知っているミーナが引っ張る。
それに応えるアニ。
屈託のない笑顔で、夕焼けを背に走っている女子高生。
まさに青春だった。
-
- 50 : 2015/03/05(木) 22:30:41 :
- *ミカサ宅
この場にはアニとミーナ以外の全員が揃っていた。
「なあ、エレンはなんであんなことしたんだ」
ジャンは責め立てるように質問する。
「俺、中学に入った頃から『昔』の夢を見るようになったんだ」
辛そうに眉間に皺を寄せる。
「その夢を見たあとすごい喪失感に襲われて……死んでもいいな、とか思うんだよ」
「その夢とアニが関係あるの?」
ベルトルトは遠まわしに早く結論を言え、と訴えていた。
「ああ。必ずアニが関連してる夢を見るんだ。その喪失感を埋めたくてもアニは居なかった。だから……他の人で」
-
- 51 : 2015/03/05(木) 23:15:45 :
- エレンはこんな大勢の前で言うのは気が引けたが、やるしかない。
「けど、ごめん。俺、やっぱりアニじゃなきゃ駄目だ」
彼はとても情けない顔をしている。
それに対しヒストリアは楽しそうに笑っていた。
「そんなの、私に限った話じゃないでしょ。今更だよ」
「ヒストリア……!」
ユミルは驚きを隠せない。
「でも、私が良いだけ。彼がそれを許すとは限らない」
細い指がベルトルトを指す。
-
- 52 : 2015/03/06(金) 23:57:27 :
- 「……そうか、お前アニと付き合ってるのか」
「そうだね。でも彼女が君を選ぶというのならそれでいいよ」
「お前……」
ジャンは感情のはっきりしない、複雑な表情を見せた。
「そっか。じゃあ僕らはもういなくて大丈夫そうだね。エレンとヒストリア、ベルトルト以外は僕の家に移動しよう」
アルミンの提案によりエレン、ヒストリア、ベルトルトだけがこの部屋に残った。
-
- 53 : 2015/03/07(土) 01:11:26 :
- 「なあ、『こっち』でアニといつ出会ったんだ」
「小さい頃からずっと一緒だよ。でも付き合い始めたのは1ヶ月前くらい」
「お前、確か前世でもアニの事好きだったよな……なのになんで」
「アニが恋愛に興味なかったから。でもなぜか突然意識しはじめたんだ」
「今思うと彼女には可哀想な事をしたかな……ちゃんと“恋”をさせてあげられたのかな……彼女を一番理解してるつもりだったのに」
ベルトルトは俯く。
「ベルトルトはさ、どう思うの」
ヒストリアは下を向いている。
「さっきの言葉通りだよ。アニがそうしたいって言うなら僕に止める権利はない」
「そうじゃなくて、ベルトルト自身はどう思ってるの? エレンがアニにキスして、皆の前で言い切って」
表情は見えないが今にも泣きそうな声だった。
「……悔しいよ。一緒に住んでても付き合ってないときはそんなことできなかったし、もしエレンを選んだら……」
そのとき、インターホンが鳴った。
-
- 54 : 2015/03/07(土) 12:49:55 :
- 「……入って」
ヒストリアは目の周りを赤く腫らしていた。
「お邪魔します」
出迎えに行ったヒストリアに対し、ミーナは挨拶をしたがアニは無言で玄関に立つ。
「あれ、皆いないの?」
「アルミンの家にいるよ。105号室だって」
「わかった。じゃあアニ……」
「うん、大丈夫」
ミーナが出て行き、アニとヒストリアが部屋に入った。
-
- 59 : 2015/03/07(土) 23:19:57 :
- 「話はどうなってるの」
座り込んだアニが状況説明を求める。
「エレンはアニが好きだって。だから別れたよ」
そしてヒストリアは真顔で淡々と話し始めた。
アニは驚く。
「付き合ってたの……?」
「そう、付き合ってた、の。もう付き合ってないし、私は納得して別れてるからアニの素直な気持ちでいいよ」
「僕は君の選んだことならそれに従う。でも……僕はずっとアニの事が好きだ」
ベルトルトは不安そうにしていた。
-
- 60 : 2015/03/08(日) 00:42:32 :
- 「そう……私は、ベルトルトを愛してる」
アニは言い切った。
エレンの顔に悲痛の色が現れる。
「でも、エレンを愛したい」
時が止まったように、全員動かなかった。
-
- 65 : 2015/03/08(日) 14:54:00 :
- 4人はアルミン達がいる部屋に向かった。
「おい……それは自分へ好意を向けてる奴は手放したくありません、と言っているのか?」
ユミルが怒っているのは明らかだ。
「……ユミル、いいんだよ。アニが言いたいことはわかってる」
ベルトルトは悲しそうに微笑む。
「おめでとうエレン。これからもよろしく、アニ」
-
- 66 : 2015/03/08(日) 15:34:28 :
- この後、理解が追いつかなかった人達への説明が行われた。
「かつて同じ使命を背負った仲間として、今は大事な家族として。今までも、これからもベルトルトを心から愛してる」
「でも、恋人としてエレンを愛したい」
「これに気がついたのはついさっき」
そして
「皆に迷惑かけてごめんなさい」
-
- 67 : 2015/03/08(日) 16:45:17 :
- この言葉で根本的な問題を思い出す。
「そもそもミカサはどうしてこんなことをした? 何を知っていた?」
ユミルの質問にミカサは冷然として答えた。
「エレンが壊れた。なおすにはアニが必要だった。ので、アニのことを調べた結果」
「……じゃあアニとベルトルトが付き合ってること知ってたの?」
ヒストリアは肩を震わせる。
-
- 68 : 2015/03/08(日) 22:45:25 :
- 「いいえ。調べたあとに付き合いはじめた、と思う」
「ミーナが吹きこむ前か?」
「ちょっとジャン、吹きこむって何よ! 私はアニに恋しないのーって言っただけ!」
唐突にベルトルトが手を叩いた。
「……ああ、そういうことだったんだ。ははっ、僕もちゃんと納得できたよ」
「え? 何が?」
隣にいたマルコは手の音に驚き、発言にも疑問を持った。
「いや、今まで恋愛ごとに全く興味がなかったアニが突然意識し始めたからなんでだろうと思ってんだ」
-
- 71 : 2015/03/09(月) 00:04:13 :
- 「そっかぁ……いやうんそうだよね……って、今日僕がご飯当番だった! アニ、何食べたい?」
「チーハン」
「アニはそれしか言わないんだから……ちゃんと野菜も食べてね? ライナーに押し付けないでね?」
「……善処します」
「ダメ! デザート抜くよ!」
「あ、ケーキとプリンどうしたの!?」
「ちゃんとアルミンのとこの冷蔵庫に入れてもらってるよ」
突然繰り広げられた会話に一同は戸惑った。
-
- 74 : 2015/03/09(月) 02:23:14 :
- 「お、お前ら付き合ってる時もそんな感じだったのか……?」
恐る恐るジャンが聞く。
「うーんまあこんな感じだね」
「これにライナーがいるくらい。ねえチーハン早く食べたい」
「はいはい、ちゃんと野菜食べてね。あ、アルミン冷蔵庫貸してくれてありがとうね!」
「えっああ、うん……」
「お邪魔しました」
「……迷惑かけたね」
アニとベルトルト以外の全員が動けないでいる中、2人は帰っていった。
-
- 75 : 2015/03/09(月) 14:00:45 :
- 「こんなこというのもなんだがありゃ別れて正解だな」
「ちょっとユミル……いや、でもあれはどう見ても……」
「マルコ、それ以上は……」
「どう見てもお母さんと子供だな……」
アルミンの制止も虚しくエレンはこの場の全員が思っていたことを口にした。
「まあ丸く収まってよかった……のかな?」
マルコの言葉を皮切りに、残った人達も解散した。
-
- 80 : 2015/03/09(月) 20:34:47 :
- 今日、エレンは初デート……つまりあの出来事以来初めて会う。
あろうことか連絡先を交換し忘れ、アルミンやミカサの手を借りてようやく会えることになった。
-
- 83 : 2015/03/09(月) 23:08:34 :
- アニが通う高校の門前で待つ。
「うわぁ目が痛いな。早く来ねえかな」
他校の制服がよほど珍しいのか、やたらと視線を集めた。
「やあ、エレン。アニを待ってるの?」
緑色のマフラーを巻いて門から出てきたのはマルコだった。
-
- 84 : 2015/03/09(月) 23:44:21 :
- 「お、マルコ。そうなんだよ、マルコが来たってことはもうすぐ……?」
そこでやたらうるさい2人組が迫ってくるのがわかった。
実際には3人だが。
「はあ!? 好きって言えよ! 俺が言ってるんだぞ!」
「……好き」
「声が届かない! もっと大きい声で!」
紛れもなくアニとジャン……あとベルトルトだった。
アニはジャンの胸倉を掴み、キスしてしまうんじゃないかと思うくらい顔を近づけた。
-
- 87 : 2015/03/10(火) 16:26:24 :
- 「小さくて悪かったね!」
「っ……いってえええ!」
そして光の速さで頭突きをお見舞いした。
「え、ちょ、あいつらってあんなに仲良かったのか……それにしても顔近い!」
「エレン、諦めた方がいいよ。ずっとあんな感じだし誰も止められなかった……そして本人達はなにも思ってない……」
「あ、エレン!」
嬉しそうにアニが駆け寄る。
ジャンの胸倉を掴んだまま。
-
- 92 : 2015/03/10(火) 23:20:23 :
- 「エレン、前世の君とジャンだと思って見逃してあげて……今も犬が好きか猫が好きかで言い合ってるんだ」
ベルトルトは得意の困り笑いをした。
「前世の俺とジャン……!? こんなんじゃねえよ!」
「ああ!? やんのか……って、こいつに手出せないんだったあああ」
「なんだそれ……?」
「ふふ、ミカサと約束したらしいよ。エレンに優しくするって」
-
- 93 : 2015/03/11(水) 00:03:14 :
- 「おいマルコ言うな!!」
エレンは不敵な笑みを浮かべる。
「へぇ、それはいいこと聞いたな。また会おうぜ? 馬面!」
「……ああああ殺す! お前殺す!!」
「やってみろよ、ミカサとの約束を破っていいならな! アニ、行こうぜ」
-
- 96 : 2015/03/11(水) 21:13:30 :
- 「あ、アニ待って。髪はねてるよ……はい、大丈夫」
「ん、ありがと。エレン、行こ」
「お前ら相変わらず親子だな……」
「前世のエレンとミカサみたいなもんだろ! 羨ましい!」
「ほらジャン行くよ、カップルの邪魔しない」
「アニ、遅くなるときは連絡してね。ご飯食べるか食べないかも……」
「わかったわかった。じゃ行ってきます!」
「またなマルコ、馬面、お義母さん!」
俺は馬じゃねえ、お義母さんなんて呼ばれる筋合いない、とか色々聞こえたがエレンは無視した。
-
- 99 : 2015/03/11(水) 21:57:00 :
- 「なあアニ、あんまり心配させないでくれよ」
エレンは強引にアニの手をとり、握った。
「心配?」
「ジャンともベルトルトとも、距離が近すぎるぞ。あんなに近づいていいのは俺だけだ」
そう笑ってまだこちらを気にしているだろう3人に見せつけるようなキスをした。
-
- 100 : 2015/03/12(木) 01:20:51 :
「えれっ……!」
「顔赤い、可愛い」
「……もう知らない」
同い年のはずなのに、随分と子供なアニ。
今まで“彼女のために”培ってきたプレイボーイを発揮するエレン。
-
- 101 : 2015/03/12(木) 20:52:59 :
-
「エレン、愛してる」
今までの子供な彼女は何だったのか、とても妖艶な愛の言葉。
「俺も愛してるよ、アニ」
さっきのとは違い、相手の事だけを考えたキス。
-
- 102 : 2015/03/12(木) 21:06:57 :
『2000年後もずっと』
この先の全てをあなたに。
〔これからの未来に約束のキス〕
-Another route?-
-
- 103 : 2015/03/12(木) 23:21:06 :
- ここまで読んでいただきありがとうございます。
無事、終わらせることができました・・・!
他のルートに比べてやたら長くなってしまいました(´・ω・`)
おかげさまで初めて100レス突破、閲覧数1000突破いたしました!
本当にありがとうございます。
これからも書いていこうと思ってるので、よろしくお願いします!
-
- 105 : 2015/05/08(金) 21:50:10 :
- 乙
-
- 106 : 2015/05/08(金) 22:13:10 :
- >>105
とあさん
乙ありです!
- 著者情報
- この作品はシリーズ作品です
-
2000年後の記憶 シリーズ
- 「進撃の巨人 × 恋愛」カテゴリの最新記事
- 「進撃の巨人」SSの交流広場
- 進撃の巨人 交流広場
- 「恋愛」SSの交流広場
- 恋愛 交流広場