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episode3「休日」

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  1. 1 : : 2015/02/19(木) 15:45:00
    こんにちは!


    取り憑かれのエレンというシリーズの第三話です!


    シリーズうらる↓↓


    http://www.ssnote.net/users/m0n0/series


    コメントくれると更新速度比例していきますのでよろしくです!


    あと、今回のスレは長めな予感……(・_・;)








    後もう一つ、ストーリーで一気に読み進めていきたいという方がいれば、name横の虫眼鏡のボタンを押して貰えたらと思います!
  2. 2 : : 2015/02/19(木) 20:35:18
    頑張って下さい。
  3. 4 : : 2015/02/19(木) 21:47:10
    〉角砂糖さん
    コメントありがとうございます!

    気合いを入れて書いていきますね!
  4. 5 : : 2015/02/19(木) 22:18:59














    “前田慶次”。










    1543年に尾張……現代で言う東海道に生まれた。










    戦国時代末期から江戸時代初期にかけて生きた猛将。










    “天下の歌舞伎者”としても有名である。










    その他にも多数の逸話を残した人物。










    つまり、なにが言いたいか。










    それは、この現代に存在することは有り得ない人物であるということ……。














  5. 6 : : 2015/02/19(木) 22:26:28






    ガサガサ‥‥




    エレン「ん~……お、こんなんとかどうだ?」ヒョイッ




    掲げた右手、そこには名前もわからない白い花。




    『あ、うん!それがいい!』




    そいつを見て笑顔を見せる少女。




    慶次『良かったなぁ、嬢ちゃん』ガシガシ




    その頭をでっかい手で荒く撫で回すのは派手な服装の前田慶次。




    『う~あ~』グルグル




    あーあ、目回しちゃってんじゃん。




    エレン「うし、じゃ帰るか」




    公園での一騒動の後、『お兄ちゃん、お花……』って言われたから仕方なく近くの河原で雑草をかき分けてた。




    だがそれも見つかったので、ようやく帰路をたどり始める。




    『はーい!』ピョン、ムギュ




    俺の背中に飛びつく。




    俺はコイツとは割と長い付き合いで、どっか行った帰りはほとんどこの状態。




    ま、霊体に重さなんて概念はないから何とも思わんけど。









  6. 7 : : 2015/02/19(木) 22:29:06












    スタスタスタスタ‥‥




    エレン「……で、お前。これからどうすんだ?」




    女の子を背中にひっつけて歩く俺に付いてくる大男に尋ねる。




    慶次『どうするって……餓鬼んちょ、てめぇの家に帰んだろ?』




    エレン「俺はな」




    『私もー!!』




    エレン「お前はうるさい」




    『ぅ~~』ムスー




    慶次『だったら俺様はそれに付いてくだけだ』




    エレン「いや帰れよ」




    普通、コイツらには帰る場所がある。




    それは基本的に命を終えた場所……。




    この少女の場合、公園の近くの電柱だ。




    慶次『あのなぁ、餓鬼んちょ。俺様はてめぇが帰りてぇっつうからこの世まで来てやったんだぞ?』




    エレン「この世……?なんのことだ?」




    慶次『あーめんどくせ』シュン!




    エレン「……は?」




    『あれぇ?おっきいお兄ちゃんどこー?』




    き、消えた?




    霊体の奴らって実はそういうこと出来るのか?




    慶次《出来るわけねぇだろ、餓鬼んちょ》




    エレン(!!?)




    また……頭ん中に?




    慶次《頭っつうか……餓鬼んちょの中に居んだけどな》




    エレン「はああ!??」




    『わっ!?お、お兄ちゃん……どうしたの?』




    慶次《あ、言っとくがこれ餓鬼んちょにしか聞こえねぇから》




    エレン(な、何だよそれ!つうか俺ん中から出てけよ!!)




    慶次《……》




    エレン(無視すんじゃねぇ!!!)




    『お兄ちゃん……ど、どうして怒ってるの?』オズオズ




    エレン「……ハァ、何でもない」




    とりあえず、家に帰ろう。




    それから考えるとしよう。







  7. 8 : : 2015/02/19(木) 22:30:41














    ‥‥ガチャ




    エレン「ただいま~」




    「おかえり、エレン」スタスタ




    俺の姉のミカサ。




    ミカサ「ご飯出来てるから、母さんに挨拶して来なさい」




    エレン「おう」




    食卓のあるリビングの部屋の前を通り過ぎ、奥にある和室。




    チーン……。




    エレン「ただいま、母さん」




    そこにある写真に挨拶をすませ、リビングへ。










  8. 9 : : 2015/02/19(木) 22:34:08









    ミカサ「はい、お箸。洗い物片づかないからさっさと食べちゃって」




    エレン「わかってる」




    ガシャガシャ




    すでに食器を洗い始めてる。




    エレン「あれ、そういや父さんは?」




    ミカサ「帰ってこれないって」




    エレン「でも今日は帰ってくるって言ってなかったか?」




    ミカサ「仕方ないでしょ。仕事なんだから」




    エレン「あっそ」パクッ




    俺の父親は仕事の関係でほとんど家にいない。




    昔っからそうだった。




    ミカサ「なに?用でもあったわけ?」ガシャガシャ




    エレン「……まぁ、ちょっとな」




    主に俺の進路についてだ。




    ミカサ「ふ~ん、急用ならメールでもしとけば?」ガシャガシャ




    エレン「ん、そうする」モグモグ




    あの学校に俺を進学させたのは親父。




    しかも高校までエスカレーター式なのにわざわざ、だ。




    エレン(……面接だけって時点で警戒しとくべきだったか)




    ま、後悔先に立たずだ。




    さっさと飯食べよ。









  9. 10 : : 2015/02/19(木) 22:39:14














    プルルルル、プルル、ガチャ




    『お客様のおかけになった電話番号は、現在電波の届かないところにあるか……』ピッ




    エレン「……やっぱ出ねえか」




    飯食って風呂入って部屋戻って考えたが、メールでどうやってあの体育館のこと伝えるのってかなり難しかった。




    だから電話をしてみたんだが……ダメだった。




    慶次『へぇ~、これが餓鬼んちょの部屋か』キョロキョロ




    エレン「うぉあ!?……い、いきなり出てくんじゃねえ!!」




    慶次『まぁそう言いなさんな。お、こいつぁなんだ?』




    いきなり現れた自称前田慶次。




    エレン「なんだって、パソコンに決まってんだろ」




    慶次『パソコン?なにに使うんだ?』ジロジロ




    エレン「そりゃ調べ物とかだろ。つうか今の時代珍しいもんでもねぇだろ」




    慶次『仕方ねえだろ。俺様は“この世”に帰ってきたばっかなんだしよ』




    また出た。




    エレン「何だよ、その“この世”ってのは」




    慶次『はあ??そりゃあ、この世界のことだ』




    エレン「???……じゃあ、今までお前はどこにいたんだよ」




    慶次『んたもん、“あの世”に決まってんだろ』




    エレン「あの世って、んなとこからどうやって来たんだよ」




    慶次『俺様の力で来たに決まってんだろ』




    エレン「力?お前ら霊体に何の力があるってんだ?」




    慶次『おいおい……そんなんも知らねぇで俺様を連れてきたのか?』




    エレン「連れてきたって、お前が付いてきただけだろうが」




    慶次『ったく、めんどくせぇな』ガシガシ




    エレン「お前のがめんどくさいわ!」



    ガチャ!!




    ミカサ「エレン、うるさいわよ。電話ならもっと静かに……?」




    ミカサが急に入ってきた。




    と同時に、俺が電話なんてしていないことに気づいたらしい。




    あ、因みに霊感はないのでこの大男は見えていません。




    ミカサ「あ……えっと、そうね、何か思うところがあるならちゃんとお姉ちゃんに相談しなさいよ?」




    バタンッ




    エレン「……」




    慶次『へぇ、餓鬼んちょにあんな美人な姉ちゃんがいるとはねぇ』




    エレン「うるせぇ!!お前のせいで変な誤解されたわ!!!」




    第一なんだよ思うところって!!




    なんも相談なんてする事無いわ!!!




    エレン「あーくそ!もう寝るからな!!」バッ!




    慶次『寝んのか?もうちょい話そうぜ?』




    エレン「うるせぇ!!お前もさっさとどっか行っちまえ!!」




    慶次『ったく、つれねぇなぁ。ま、俺様もちょっと散歩にでも行ってみてぇと思ってたとこだし、ちょっくら行ってくらぁ』




    エレン「二度と戻ってくんじゃねぇぞ!」




    慶次『ハッハッハ!そうはいかねぇんだろうなこれが。餓鬼んちょ、てめえはからなず俺様を呼ぶ』




    エレン「んなことあるか!」




    慶次『絶対だ。そん時はちゃんと呼べよ?俺様がすぐに行ってやるから』




    エレン「さっさと消えやがれ!!」




    そして、気配が消えた。




    ったく、やっと静かになったぜ。




    誰が呼ぶかってんだ、あんな奴……。
















  10. 11 : : 2015/02/19(木) 22:46:56
    他の、武将も出ますか?
  11. 12 : : 2015/02/20(金) 00:05:12
    〉角砂糖さん
    詳しいことは言えませんが、出ます。

    誰がどのタイミングで出てくるのかはストーリーを読み進めてからのお楽しみということにしておいてください(^^;;
  12. 13 : : 2015/02/21(土) 11:06:38










    そのまま安眠する事数時間、朝7時に起床し8時に家を出ると……、




    エレン「……何故だ」




    クリスタ「えへへ、来てみました」




    昨日の幼なじみが現れた。




    エレン「お前さ、俺んちと学校の方向まるっきり逆だろ?」




    クリスタ「いいじゃん、暇なんだし」




    エレン「暇なら家に来んのかよ」




    クリスタ「もちろん♪」




    エレン「……ハァ、なんでそんなにご機嫌なんだか」




    クリスタ「ほぉら、早く行かないと遅刻しちゃうよ?」




    昨日はアンタのせいで遅刻しちまっんだがな。




    エレン「そうだなー。じゃあ走らないといけないよなー」ダダダー




    クリスタ「あ、こらー!置いてくなーー!!」ダダー




    後に信号に阻まれクリスタに捕まったのは言うまでもない。




    そこからクリスタの学校に着くまで手を繋いだ。




    何故かというと、俺が走って逃げるからだそうだ。




    正直、ものすごく恥ずかしかったし視線は痛いしもうこりごりである。










  13. 14 : : 2015/02/22(日) 10:37:54














    「君!!もしかしてエレン・イェーガー君かい!?」ガシッ




    エレン「うお!?な、なんすか?」




    クリスタから解放され、今日は焦ることなく矢白高校の門を通り過ぎたところである。




    「ちょっと来なさい!話がある!」




    半ば強引に……というか完全強制的な感じで連れて行かれる。




    う~ん、昨日なんも言わずに学校飛び出したのがアレだったのかな?







  14. 15 : : 2015/02/22(日) 10:47:16













    エレン「……」ポツーン








    この感じ……会議室か。






    そこの横長な机に俺1人座らせてどっか行った。






    そして待つこと5分弱……、








    ガラガラ








    部屋に入ってきたのは男3人女1人。






    その内男1人と女1人は見覚えがある。






    俺が体育館でぶっ倒れたとき寄ってきた2人だ。






    他の男はよくわからん。






    1人は初老、もう1人は若いが正直に言ってチビ。






    目つきはすこぶる悪いときてる。








    ガタガタガタ








    1対4といった具合に席に着いた。








    「……さて、最後の確認をしようかのぉ。彼はエレン・イェーガー君で、間違いはないのじゃな?」








    沈黙を破ったのは初老の男。








    グンタ「……はい。彼はあの時体育館で倒れた少年に間違いはありません」








    「わ、私もそう思います」








    そう答えるのは俺の記憶に残る2人。






    って言うかこの初老の人、声を聞く限り体育館の教壇に立っていた校長っぽい人……?








    「ふむ、そうか……」






    「率直に聞こう、エレン・イェーガー。お前はどうやって帰ってきた?」








    目つきの悪い男が尋ねてくる。






    というか、帰ってきた?






    いったい何の話だ?








    「これこれ、そう話を急ぐな。まずは自己紹介が先じゃろ?」






    「……チッ」








    おおう、態度悪いなコイツ。






    舌打ち聞こえてるぞ。








    「あ……そ、それじゃあ私から。私はペトラ・ラル。ここの教員で、一年生のクラスを担当してます」








    向かって左端の女性……ペトラ先生の自己紹介だ。






    ということは……、








    グンタ「じゃあ、次は俺だな。グンタ・シュルツ、ペトラ先生と同じ一年の担当だ。よろしく」








    その右隣の男の紹介。





    うん、あんたの名前だけは微かに覚えてたよ。








    「……リヴァイだ。お前ら一年の主任だ」








    サバサバした自己紹介だな。






    しかしこれが学年主任か……。






    怒らせないようにしないとな。








    「儂は、ここの校長をしておるドット・ピクシスというものじゃ。よろしくの」








    やっぱ、アンタがあの時教壇に立ってたのか。












  15. 16 : : 2015/02/22(日) 10:48:59












    リヴァイ「よし、本題に戻すぞ。イェーガー、お前はどうやって帰ってきた?」






    エレン「えっ、と……帰ってきたってなんのことですか?」






    リヴァイ「とぼけてんじゃねぇ。お前はどうやってあの世から帰ってきたのかって聞いてんだ」








    !!……あの世?








    ペトラ「ま、待ってくださいリヴァイ先生!もしかしたらイェーガー君には記憶が無いのかも……」








    ペトラ先生、多分そうです。








    リヴァイ「チッ、めんどくせぇな」






    グンタ「じゃあ、君はどこまで覚えてるんだ?」








    グンタ先生が質問を少し変えて聞いてくる。








    「……俺は昨日遅刻して、体育館に入りました。そしたら多分ですけど、校長先生の声がして……後、木槌のような音が聞こえてきました」






    ペトラ「ちょうど“結いの儀”が終わった後に入ってきたのね」






    グンタ「木槌の音……“イザナイの音色”のことだな」






    エレン「そしたら、体育館にいた皆から魂が抜けていって……」






    リヴァイ「ふん。この学校に入学するだけあってちゃんと“霊力”は持ってんだな」






    エレン「れ、霊力……ですか?」






    グンタ「ああいや、気にせず続けてくれ」






    エレン「はぁ…‥」






    ペトラ「心配しなくても、後でしっかりと説明してあげるからね」






    エレン「……あの後体に力が入んなくなってきて、気が付いたらベッドの上で寝てたんです」






    ピクシス「ふむ、つまり霊界でのことは覚えてない……ということかの?」






    リヴァイ「チッ、使えねぇな」






    エレン「す、すみません」








    こ、怖えぇ……。








    グンタ「わ、悪いなイェーガー。リヴァイ先生はいつもこんななんだ」








    おいおい、教員がそれでいいのかよ。








    ペトラ「そ、それじゃあ校長先生とリヴァイ先生、後は私たちがエレン君にこの学校について説明しますので」






    ピクシス「そうじゃの……エレン・イェーガー」ガタッ






    エレン「は、はい」








    席を立ったピクシス校長が俺を見下ろす。






    どことなく威圧感を感じ、自然と身構えてしまった。












    ピクシス「すまなかった」スッ












    だから頭を下げたその姿を見たとき、どういう反応をすればいいかわからなかった。










    ペトラ「な、何もピクシス先生が謝ることなんて……」






    ピクシス「今の君には、昨日のあの場所で行われたことの意味は分からんじゃろ」






    エレン「……はい」






    ピクシス「死にかけたのじゃ」






    エレン「!!」








    し、死にかけた……俺がか?








    ピクシス「いや、一度死んだと言っても間違ってはおらぬの。儂らが殺したのだからの」






    グンタ「ピクシス先生、それ以上は……」






    ピクシス「許せとは言わん。ただ、恨むのなら儂1人を恨め」






    エレン「ま、待ってください。いきなりそんなことを言われても俺……」






    ピクシス「じゃが、儂が言ったことは事実。もしペトラ先生達の話で不満があるのなら、儂の部屋に来なさい。何度でもこの頭を下げよう」















  16. 17 : : 2015/02/22(日) 13:36:29







    ペトラ「ゴメンなさいね、エレン君。ピクシス先生ってああいう人なの」




    ピクシス先生とリヴァイ先生が部屋を出ていって、残ったのは3人。




    エレン「は、はぁ……」




    小さな会釈。




    グンタ「さて、これからこの学校の説明をしていくが……いいか?」




    エレン「あ、はい。お願いします」




    何はともあれ、ようやくこの学校がなんなのかわかるんだな。




    親父に聞く手間が省けたぜ。







  17. 18 : : 2015/02/22(日) 13:45:12















    ペトラ「エレン君は、幽霊って見えるのかな?」






    エレン「はい、見えます」








    といっても、この学校が普通じゃないのはもうすでに確定してるが。






    だって普通教師が生徒に『幽霊が見えますか?』って聞かないだろ。








    ペトラ「この学校にはね、そういう子達が集められてるの」






    エレン「え……じゃあ、あの体育館にいた生徒全員見えるんですか?」






    ペトラ「ん~、それはどうかな。うっすらとしか見えない子もいると思うし」






    エレン「それって、リヴァイ先生が言っていた“霊力”っていうのと関係があるんですか?」






    グンタ「ああ、大ありだ。だがその話をするのにはまだ早い」






    ペトラ「そうね。まずは“霊獣”について教えなきゃね」








    霊獣……もしかして昨日の黒い奴か?








    グンタ「霊獣ってのは名前の通り、“霊の獣”だ。アレはこの世に残る魂を食い荒らす害悪でしかない奴らだ。しかも質が悪いことに、この世の物質にまで物理的に干渉してきやがる」








    やっぱりそうか。






    だからアイツも狙われたんだな。








    ペトラ「でもその生態とか、詳しいことまではまだよくわからないの」






    エレン「そうなんですか」






    グンタ「この世に残る魂って言っても、それは人間であったことに変わりはない。俺たちにはそれを守る義務がある」






    ペトラ「そうでなくても、原因不明の事故とかそういう類の者は霊獣が関与してたりするものなの。昨日、そこの公園付近のブロック塀が壊されてたんだけど、たぶんそれもそう」






    グンタ「そこで、俺達矢白高校の出番ってわけだ」






    エレン「あの……どうして高校なんですか?大人の人を雇ってすればいいと思ったんですけど」






    ペトラ「君たちの年代が一番霊力が強い時期って言われてるのよ」








    つまり、英才教育ってところか。








    グンタ「イェーガー、君は親からなにも聞かされていないのか?霊力ってのは遺伝と密接な関係があって、ここの生徒はある程度の知識を持って来るものなんだが……」






    エレン「いいえ、俺は何も……」






    グンタ「……まぁいい。話を戻すが、霊獣に対抗するためにはそれなりの霊力と準備がいる。それが昨日体育館で行われてた“契約の儀”だ」






    エレン「契約……?」






    ペトラ「ええ、死者との契約よ」






    エレン「!!?」






    グンタ「昨日、君が入ってきたときは丁度契約の儀が行われる最中だった」






    ペトラ「それによって生徒の魂は一時的に肉体を離れて、あの世へ向かっていくの」






    グンタ「そこで出逢った死者と契約を交わし、この世に戻ってくる……そういう儀式だ」






    ペトラ「でもエレン君の場合、その前の“結いの儀”を済ませてなかったの」








    ……もしかして、あの生徒達の魂と体を結んでいた奴のことか?








    グンタ「結いの議というのは、体とその魂を強い絆で結びつけ、またこの世に戻って来れるようにする……いわゆる命綱みたいなものだ」






    ペトラ「だけどイェーガー君は、それを済ませてはいなかった。アナタは体に戻るための手段を持たずに、魂となったのよ」








    え……それじゃあ、








    エレン「それならなんで俺は今ここにいるんですか?」






    グンタ「方法がないわけじゃない。契約を結ぶ相手、死者の持つ魂の強さが十分であれば帰ってこれる」








    死者の魂……もしかして俺は、前田慶次の魂をつれて来ちまったってのか?








    ペトラ「でも今のエレン君からは何の気配も無いのよね」






    グンタ「ああ、君がもし霊界の誰かと契約したのなら霊力の大きさである程度感知出来るはずなんだが……」








    そりゃあ、昨日の夜に追い出したからな。








    ペトラ「まぁいいじゃない。まだ未契約なら、もう一度ちゃんと結いの儀からすればいいんだし」






    エレン「あの……たぶん契約なら出来てます」






    ペトラ「え、そうなの!?」






    エレン「はい。今はちょっといませんけど……」






    グンタ「いない……?」






    ペトラ「……少しやっかいですね」






    グンタ「そうだな……イェーガー、今日はもう帰って良いぞ」






    エレン「へ?……その、授業とかは無いんですか?」






    グンタ「今日、一年は全員休みだ」















  18. 19 : : 2015/02/22(日) 16:19:43

















    エレン「……はぁ」ゴロン




    あのまま学校にいるわけもいかず、かといって家に帰っても昼飯は無いし、何となく河原と道のあいだに転ぶ。




    川に向かって傾斜になっていて、そこに生えている雑草が俺の肌をくすぐる。




    天気も良く、春の心地いい風が俺を癒す。




    エレン「……寝ちまうか」




    今日は暖かいから風邪引くこともないだろう。




    このまま昼まで寝て、コンビニで適当に買って帰ればいいや。




    そう思って、瞼を下ろす。











  19. 20 : : 2015/02/23(月) 14:10:41









    キーキキッ!!




    自転車のブレーキ音。




    道の方から聞こえたな。




    河原の方から聞こえたら問題あるけど。





    ‥‥スッ






    エレン(……ん?)




    目を閉じていても周りが明るいかどうかはわかるもんだ。




    だからその明るさを感じなくなって、太陽が雲にでも隠れたんだろうと思ったんだが……、




    エレン(今日って、雲もない快晴って感じじゃなかったか?)




    目を閉じる前に見上げてた空に雲を見た覚えはない。




    エレン「……」パチッ




    「……ぁ」




    エレン「……誰?」




    目を開けたら私服を着た女の子。




    年は俺と同じ位か?




    そいつが俺の顔に覆い被さるように見下ろしてた。




    「あ……こ、こんにちは」




    エレン「??……こんにちは」




    「!……えへへ」ニコッ




    何だこいつ。




    なんでいきなり笑ってんだ?




    エレン「……そこ退いてくんね?起きれねぇんだけど」




    「あ……す、すみません!」バッ




    エレン「いや、別に謝んなくてもいいけど」ムクッ




    「あ、はい……すみません」シュン




    謝んなっつったのにまた謝ってるし。




    エレン「……で、なに?」




    「あ、えっと……せ、制服……一緒だったので」




    エレン「一緒……?でもそっちは私服だよな?」




    「こ、これはその……今日は、学校がお休みなので……」




    エレン「……ああ、そういうこと」




    ……ん?




    ってことは……、




    「エレンもしかして矢白高校の新入生?」




    「!」コクコク




    エレン「へぇ……で?」




    「え……と、お、同じ制服……で、昨日…いなかったから」オドオド




    エレン「ああ、昨日な。俺遅刻しちゃってさ」




    「ち、遅刻ですか……」




    ん~、なんというかこの子、喋るの苦手?




    ぎこちないって言うか、喋りにくそうだな。




    エレン「ってか、昨日いなかったって1日でほかの奴の顔全部覚えたってのかよ」




    「……大体は、記憶しました」




    エレン「へぇ……すげぇな」




    「え……あ、その……そ、そんなこと無い、、です」カァァ




    恥ずかしかったのか、俯いて紅くなっちゃってるよ。




    ただ単にスゴいからそう言っただけなのにな。




    エレン「……名前は?」




    「あわ、私……ですか?」




    エレン「他に誰がいんだよ」




    「あの、えっと、、サシャ・ブラウス……です」




    サシャ・ブラウスね。




    途中からどんどん声の出力減ってったけど何とか名前だけは聞き取ったぜ。




    エレン「俺はエレン・イェーガー。よろしく」




    サシャ「よ、よろしく、お願い……します」




    んー、なんだろうなこの感じ。




    サシャ「……!」フイッ




    エレン「ん?どうした?」




    サシャ「あ……いや、河原の方に……」スッ




    サシャの指さす方を見ると、河原の前に突っ立っている40~50位のおっさんが立っていた。




    って言うかあれって……、




    エレン「……やっぱ見えるんだな」




    サシャ「はい……昨日から、スゴく」




    エレン「それまではそうでもなかったのか?」




    サシャ「……うっすらと、感じれる程度でした」




    エレン「……そっか」




    よくわからんが、矢白高校風に言えば契約の儀のおかげってところか。




    サシャ「ぇ……エ、レン……さんは?」




    エレン「エレンでいい。俺は昔っからその辺の人と区別付かないくらいはっきり見えてた」




    サシャ「そ、そうですか……」




    ってか、何で俺は初対面の女子と河原で話し込んでんだろ。




    サシャもなんか隣に座り込んでるし。




    端から見たらカップルに見えなくもないような……?




    別に行くところとかなくて、暇だからここで時間つぶしてるって感じのさ。




    クリスタとか見られたら絶対誤解しやがるぞ。




    時間帯的に見られることなんて無いだろうけど。








  20. 21 : : 2015/02/23(月) 14:53:49










    クウゥゥ‥‥






    あ、腹鳴った。




    サシャのが。




    サシャ「!!」カアァァ!




    おおう、さっきよりも真っ赤だな。




    まー恥ずかしいよな。




    俺は別に気にしないけど。




    エレン「……」チラッ




    サシャ「///!!」プイッ




    ……あー、なんか悪いことしたな。




    何となくそんな感じがする。




    エレン「……なぁ、暇か?」




    サシャ「ぇ……?」キョトン




    エレン「だから、この後なんか用事とかあったかって聞いてんの」




    サシャ「い、いや……無い、です」




    エレン「……うっし、んじゃ行こうぜ」ムクッ




    サシャ「ど、どこに……ですか?」




    エレン「昼飯、奢ってやるよ」










  21. 22 : : 2015/02/23(月) 17:54:26















    キーキキッ!!






    エレン「ここでいいのか?」




    サシャ「は、はい」




    俺チャリ持ってなかったから、サシャので2人乗りしてきた。




    もちろん俺が前だ。






    ガシャン!






    サシャ「あ、あの……ホントに、良いんですか?」




    エレン「良いから誘ったんだ」




    サシャ「あ、ありがとう……ございます」




    エレン(……にしても)






    ガラガラ




    ヘイラッシャーイ!!!






    まさか女子と『どか飯屋』なんて来るとはな。




    ここは名前の通りすべてにおいて量が多い。




    育ち盛りな学生にとっちゃ有り難いことこの上ないが、女の子連れて来るとこではないな絶対。




    エレン(でもま、サシャがここで良いって言うし……仕方ないか)




    「ご注文伺いま~す!」




    エレン「あ、俺は生姜焼き定食で。サシャはもう決まってんのか?」




    サシャ「ぇ……と、わ、私は……これ」スッ




    サシャの指さすそれを見て、店員が威勢良く吠える。




    「へい!!チャレ丼いっちょ入りやーす!!!」




    エレン「……マジ?」




    今入ったオーダーはチャレンジ丼。




    『どか飯屋』のオリジナルメニューで、いわゆる大食いタレントとかが企画で挑戦したりするアレだ。




    この店の場合、米三合、トンカツ5kg、千切りキャベツ3倍盛りという成人男性何人で食うんだよってツッコみたくなる量である。




    因みに30分で食べきればタダ、無理なら8000円。




    エレン「……いけんのか?」




    サシャ「た、タダって書いてたので……その、」




    俺の財布バイバイ。








  22. 23 : : 2015/02/23(月) 21:33:56














    カチカチ‥カチッ!






    サシャ「ご馳走様……でした」




    「の……残り2分34秒!!完食でーす!!」




    エレン「う、嘘だろ?」ポカーン




    く、食っちまいやがった……。




    俺なんかダチと3人がかりでも無理だったんだぞ?




    その体のどこに入ってったんだよ。




    サシャ「えっと、私……昔から、その、たくさんご飯食べてて……」




    エレン「……いや、そういうレベルの話じゃ無いと思うが」




    サシャ「す、すみません」シュン




    エレン「謝られても困るんだけど」




    まぁ、結果だけ見ればタダになったんだし、細かいことは気にしないでおこう。





















  23. 24 : : 2015/02/23(月) 21:46:09









    エレン「……そういや、サシャってこの辺に住んでんの?」




    サシャ「い、いえ……ここよりもっと、その、田舎で……です」




    エレン「田舎……もしかしてさ、無理して標準語話そうとかしてんの?」




    サシャ「!!……そ、そんなこと……ありま、せん」




    エレン「……ふーん」




    話そうとしてんのか。




    すっげぇ訛ってて恥ずかしいからとかか?




    その辺は女の子じゃないとわかんないのかもな。










  24. 25 : : 2015/02/23(月) 21:48:14













    サシャ「え、エレン……は?」






    エレン「俺は元からこの辺に住んでんだよ。サシャは矢白高校に入るためにこの町にきたのか?」






    サシャ「は、はい。決まり……ですから」






    エレン「決まり?」






    サシャ「わ、私の家系は代々、その……れ、霊力が強くて」








    ……そういや、先生も遺伝がどうとか言ってたな。








    サシャ「それで……家族はみんな、“御霊の守人”……でして」






    エレン「御霊の守人?」






    サシャ「が、学校の先生とかそうだと……思います。私たちが……勝手につけた名称ですので」






    エレン「へぇ……大変なんだな」






    サシャ「エレンは……どうして、矢白高校に、?」






    エレン「……別に、なんもねぇよ」






    サシャ「……え?」






    エレン「なにも知らなかったんだ。親に言われてなんの説明もなしにあの学校に進学させられた。入ってみたらビックリだよホント」






    サシャ「そ……そう、ですか」






    エレン「その、御霊の守人ってのはやっぱ危険なやつなのか?」






    サシャ「……はい。一歩間違えると……死んでしまうので」






    エレン「……だろうな」








    何故か、深く考えないようにしてた。






    今俺が足を踏み込もうとしているところ。






    そこがどんなに危険で、死に近い場所であるかということに。






    昨日だってそうだ。






    アイツがいなきゃ、俺は確実に死んでた。






    結果的に勝てただけで、俺は死を間近に感じた。








    サシャ「……こ、怖い……ですか?」






    エレン「ん?……そりゃあ、な。いきなりこんな世界に放り込まれたんだから」






    サシャ「……なら、逃げればいい……です」






    エレン「逃げる?」






    サシャ「逃げるのは、恥ずかしいことじゃないです。動物の……生きとし生けるものの、最も単純な“生”への欲求。抑え込む必要は……無いです」






    エレン「……欲求、か」






    サシャ「あ……す、すいません。変なこと言って……」






    エレン「いや、いいよ謝んなくて」








    ……どっかで親父捕まえて相談だな。






    今から転校とかできるか知らんけど、でもこのまんまじゃダメだからな。








    サシャ「は、はい。……!」ガタッ!!!






    エレン「ん?どうした?」






    サシャ「聞こえませんか?……助けてって」






    エレン「……いや、俺には全く」






    サシャ「すいません、私……行ってきます」ダッ!!






    エレン「ちょ、おい!!」














  25. 26 : : 2015/02/23(月) 22:29:31













    ガラガラ!!










    エレン「……くそっ、居ねぇ」キョロキョロ








    出来るだけ早く会計を済ませたが、やっぱ後を追うのは無理か。






    アイツチャリで行ったんだろうし。








    エレン(……助けて、か)








    多分サシャが聞いた声ってのは多分、昨日俺が聞いたのと同じもんだ。






    何で俺には聞こえなかったのかはわからねぇけどな。






    だがそうだとしたら、1人で行くなんて危険すぎるだろ……!















    エレン(!!……そういや、河原に居たアイツ……)ダッ!!








    もしかしたら襲われてるのかもしれない。






    確証なんて無いが、走るしかない。






    ここでじっとしてても何も始まらねぇからな。


















  26. 27 : : 2015/02/23(月) 23:35:40



















    エレン「ハァ、ハァッ」ダッダッダッ








    《た、助けてくれ!!》








    声が聞こえてきた。






    昨日と同じ、頭の中に。








    《助けてくれ!!喰われちまう!!》








    走ってる最中、段々と聞こえてきたんだ。






    場所もはっきりしている。






    俺の居た河原の場所、そこから川上に100㍍ほど進んだところ。








    「シャアァァァア!!」ブン!!








    ガキイィィ!!!








    サシャ「うっ……くぅ」ガキガギガキ‥








    昨日と同じ漆黒の色をしたそいつは、俺やサシャと同じサイズだ。






    しかし、やはりサシャのもつ刀と切り結んでいる爪は鋭くとがった鉤爪。






    そんなのが3体も居やがるとはな。








    『シャァアアアア!!』ブン!!






    サシャ「きゃっ!!」ギィィン!!、ドサッ






    『シャア!!』ブオン!!








    力負けをしたサシャは弱々しくしりもちを付いた。






    そしてドドメをさそうと、鉤爪は鋭く振り下ろされていく。








    エレン「……らぁ!!」バッ!!






    『イギャア!!?』ドカ!!








    全力疾走、からの全力ジャンプでドロップキック。






    ダメージが無さげなのはほっといてくれ。








    サシャ「え、エレン!??」






    エレン「ッハァ、ッハァ‥お、お前……何1人で行ってんだよ」ゲホッゲホ!!






    『ジャアアァァ!!』ダッダッ‥








    俺が蹴飛ばした奴とは別のが走ってくる。






    休憩する暇もねぇのかよ。








    ブォン!!






    エレン「うぉっと!?」サッ!








    何とか大振りの一撃目は避けた。








    『ガァアア!!』ブン!!








    しかし避けた先には最後の1体。








    ギィィン!!








    エレン「さ、サシャ!」






    サシャ「に…逃げてください!」ギチギチ






    エレン「俺だけ逃げるわけにいくか!!」ドカ!!






    『イギャ!』ドサッ






    エレン「行くぞサシャ!」ガシッ






    サシャ「だ、ダメです!」バッ!!






    エレン「はぁ!?何意味わかんねぇこと言ってんだよ!霊体のあいつならもう逃げてるだろ!」








    俺はここにつく前、襲われていたと思われるおっさんの幽霊が走ってくのを見ている。








    サシャ「そ、それでもダメです!ほっておいたら、また他の人を襲うかもしれない!」






    エレン「な、なら俺も一緒に闘ってやる!」






    サシャ「それもいけません!逃げてください!!」






    『イギャア!!』ブン!!






    サシャ「くっ!!」ギィィン!!






    エレン「サシャ!!」






    サシャ「は、早く逃げて!!」






    エレン「俺だけ逃げられるか!慶次!!!」








    俺は呼んだ。






    必要なときに呼べ。






    そう言ったのはアイツだったしな。













  27. 28 : : 2015/02/24(火) 14:44:55









    『シャア!!』ブン!!






    エレン「うぉっ!???」サッ!








    な、何で来ない……!!






    呼べって言ったのはお前じゃねぇのか!!!












    サシャ「エレン!!!さっさと逃げえ!!!」












    エレン「!!?」ビクッ!!!








    横から鼓膜を通して聞こえてきた訛のある声。






    サシャの声と認識するのに少し戸惑っちまった。








    サシャ「あんたは覚悟が無いんやろ!!だったら逃げ!!ウチは……守らないけんのや!!!」






    エレン「!!」






    サシャ「ウチのことはええ!!覚悟があるんや!!父さんとの、約束なんや!!!」








    なにか、強い意志と決意を感じさせるような……そんな声だった。


















  28. 29 : : 2015/02/24(火) 14:47:31





















    エレン「……やられそうなのに、強がってんじゃねぇよ……クソ」グッ








    ……サシャの覚悟は本物だ。






    こんだけ太刀打ち出来なくても逃げもせず立ち向かってる。






    それと同時に、こういう世界に足を踏み込むことの辛さもわかってる。






    だから俺に逃げろと言ったんだ。










    ……だから、俺が逃げても恨みもしない。










    そのせいで死んでも、多分恨まれない。










    「ガァアアアアア!!」バッ!!
























    俺には、覚悟がない。
























    エレン「だから何だ!!!!!」




















  29. 30 : : 2015/02/24(火) 14:49:31















    知っちまったんだ、この世界を。












    もう、引き返せない。












    この世界を俺の記憶から消し去ってしまわない限り、俺は逃げねぇ。












    逃げられねぇ。












    目の前にいる奴全員守んねぇと気がすまねぇんだ。












    守り続けるしか、ねぇんだ!!!!





















  30. 31 : : 2015/02/24(火) 14:50:46













    エレン「慶次!!!力貸しやがれ!!!!!」






    慶次《おうよ!!!》








    ザン!!!!!








    「……ガ、アァ……」サァァァ








    俺の右手には抜き身の日本刀。






    俺の意志に従わない俺の体は、襲いかかろうとしていた霊獣を両断した。








    慶次「そら、もういっちょ行くぜ……?」スッ








    刀の切っ先を襲いかかろうとしている霊獣に向ける。








    慶次「フッ!!」ダッ!!!








    強い踏み込みとともに、下段に構えた刀。








    チリン‥‥。








    天に向けて振り抜いた刀の柄で鳴る鈴の音。















  31. 32 : : 2015/02/24(火) 14:54:40








    慶次「……好いねぇ、この感覚はよぉ」ニィ






    エレン(慶次!サシャを助けてやれ!!)






    慶次「あー?そこの嬢ちゃんのことかい?」






    エレン(そいつ以外に誰が居るってんだ!早くしろ!!)










    慶次「……ったく、わかってねぇなぁ」ポリポリ






    エレン(はぁ!?)






    慶次「よく見ろ、餓鬼んちょ」






    エレン(見ろったって……!)












  32. 33 : : 2015/02/24(火) 14:55:50















    そう言われて、意識を向ける。










    サシャ「きゃっ!!」ドシャッ!!












    霊獣に力負けをして、ドロッドロに汚れたサシャ。












    サシャ「この……!!」スッ












    そして立ち上がり、構える。












    エレン(……)












    切りかかるもまた弾かれ、地面に転がる。










    また……立ち上がる。












    慶次「……わかるか、餓鬼んちょ」












    一目見ればわかる。








    サシャは負けている。














    だが、見ていればわかる。








    サシャの目は敗者のそれではないことが……。












    慶次「……勝つ気満々、って感じだねぇ」








    エレン(……)








    サシャ「はぁぁぁあ!!」ブン!!












    スカッ、ドサ











    サシャが倒れたのは、何度目だろう。












    「シャアアァァァ……」スッ












    そのたびに何度も起き上がって、立ち向かって……。












    サシャ「!!」サッ!








    エレン(んな!??)












    転がった状態のサシャは鉤爪を振り上げる霊獣を見て、防ごうとも避けようともしなかった。












    「シャア!!」グワァ!











    迫る鉤爪。








    それは反射的に動いたサシャの頭を掠め、地面に刺さる。











  33. 34 : : 2015/02/24(火) 14:58:05












    エレン(!!?)






    慶次「ハッハッハ!!根性のある嬢ちゃんだねぇ!」








    サシャの刀は、霊獣を貫いていた。






    防ごうとも、避けようともしなかったことによって攻撃のチャンスが見いだせたのだ。








    サシャ「……ッハァ、ッハァ」ガシャ








    エレン(……)






    慶次「ほれ餓鬼んちょ、声でもかけてやんな」






    慶次(慶次、行くぞ)






    慶次「行くったって、ほっといていいのかよ?」






    エレン(用事が出来たんだ。早くしてくれ)






    慶次「……ハイハイ。んじゃな、そこの可愛い嬢ちゃん!」ダン!!!








    俺の意識のない体は、あり得ない跳躍力で飛んだ。






    目的地を目指して。








    サシャ「……か、可愛いって、え……エレン?」










  34. 35 : : 2015/02/24(火) 15:00:38
















    地を蹴って、宙を舞う。






    いや、正確に言えば地じゃなくて人様の家の屋根か。






    そうして見えてきたのは俺の通う県立矢白高校。






    その三階校長室の窓……!








    ガラガラ!!








    エレン(!!)スタッ!!






    ピクシス「……何の用かの?エレン・イェーガー」








    窓際に立つピクシス校長。






    そして、沸々と沸き立つ俺の感情。








    エレン「……あんた、言ったよな」








    気づけば、俺の意識は俺の体を支配していた。








    エレン「言いたいことあるなら自分に言えって」






    ピクシス「ふむ、確かに言ったのぉ」














  35. 36 : : 2015/02/24(火) 15:03:29














    エレン「……なんで、こうなっちまったんだ」










    ピクシス「ん?」










    エレン「何で俺は!!あんなバケモンの居る世界に足を踏み込んじまったんだ!!!」














    ぶつける対象のいない怒り。








    口から……俺の中から出てくる感情は目の前のピクシス校長には何の関係もないもの。














    エレン「もう引き返せねぇ!!俺はずっと……死ぬかもしれねぇ危険な世界で生きていくしかねぇ!!!」









    ピクシス「……嫌なら、この学校を去っても良いんだがのぉ」








    エレン「んなこと出来るならやってる!でも無理だ!命張って生きてる奴を見て、自分のために見捨てて逃げられるほど俺は出来た人間じゃねぇ!!」








    ピクシス「……そうか。すまんのぉ」








    エレン「俺は死にたくねぇ!!」














    我ながら、ムチャクチャ言ってんな。














    エレン「他の奴らは絶対に死なせたくねぇ!!!」














    でも押さえ込んでたらダメな気がしたんだ。














    エレン「だから、終わらせてやる!!」














    そしてわかったんだ。














    エレン「霊獣だかなんだかしらねぇが全部ぶっ倒してやる!!」














    俺は、何をどうしたいのか……。














    エレン「こんなクソな世界、ぶっ壊してやる!!!!」














    俺の中にあったもの……吐き出された怒りは、覚悟に替わった。


















    命を懸けて、守る覚悟に。






























  36. 37 : : 2015/02/24(火) 15:04:58
    ここで、とりあえずこのスレは終了です!



    引き続き第四話も書いていきますので、良かったら読んでみて下さい(^ー^)

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取り憑かれのエレン シリーズ

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