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比企谷八幡のIS学園生活4
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- 1 : 2014/04/29(火) 23:17:35 :
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比企谷八幡のIS学園生活シリーズ4作目です
第一章
【護衛任務】
臨海学校が終わった次の週の土曜日。比企谷八幡は自分の部屋で1人ベッドに寝転びながら小説を読んでいた
最近何かと忙しい日々が続いていたため、買ったものの読めていない小説がかなり溜まっていたのだ
黙々と小説に没頭していると、不意にノックの音が部屋に響いた
八幡「(ん、誰だ?)」
読みかけの小説を閉じて、そっと立ち上がりドアを開ける
八幡「はーい……って、え?」
ドアの前に立っていた人物の顔を見て、八幡が驚きの声を漏らす
八幡「あなたは……」
ナターシャ「久しぶり……という程でもないかな。
こんにちは、比企谷くん」
そう。そこに笑顔で立っていたのは『銀の福音』の操縦者、ナターシャ・ファイルスだった
八幡「ナターシャさん?
でも、どうしてここに?」
ナターシャ「まぁ、立ち話もなんだから詳しい話は場所を移してからでもいいかな?」
八幡「ええ、大丈夫です」
場所を変えるというのは八幡としても賛成だったため、素直に了承する
ナターシャ「それじゃあ、とりあえず移動しましょうか」
八幡「はい」
そうして八幡とナターシャは場所を移す事にした
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- 2 : 2014/04/29(火) 23:29:17 :
1
八幡「……で、よりによってここですか……」
八幡が深くため息を吐く
ナターシャ「あら、嫌だったかしら?
私、開放感のある広い空間の方が好きなんだけど」
八幡「いえ、問題はそこではなくてですね。
かなり注目されてるのが息苦しいんですけど……」
ナターシャ「ふふ、私は気にしないわよ?」
俺が気にするんだっつの!と、八幡は叫びたくなるが、なんとか我慢する
そう、ナターシャに連れられて八幡がやって来たのは食堂だった
休日にも関わらずそこそこ人がいて、彼女たちは皆揃って八幡とナターシャを興味深そうな目で見ている
八幡はISが使える唯一の男子という事で、学園の誰もが知っている存在だ
そんな彼が明らかに学生ではない金髪のお姉さんとご飯を一緒に食べていれば、注目を集めるのは当然だろう
八幡「それで、話ってなんですか?」
ナターシャ「えっと……そうね。簡単に言えば護衛をお願いしたいの。私とあの子のね」
八幡「護衛ですか?」
ナターシャ「あの子をアメリカの研究所で修理することになったんだけど、研究所までの移動の間とあの子を治療している間、私とあの子を守って欲しいの」
八幡「……つまり、それは……」
八幡は思考を張り巡らせ、一つの答えを導き出す
八幡「福音を狙う何者かがいる、ということですか?」
ナターシャが少し驚いた様子を見せる
ナターシャ「……へぇ、やっぱり頭がよくきれる子ね」
八幡「それは肯定として受け取りますよ?」
ナターシャ「まだ確証はないわ。だけど、狙われる可能性は十分にあるわ」
八幡「(やっぱりか……)」
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- 3 : 2014/04/29(火) 23:33:55 :
暴走事件があったことは各国の組織の間で広まっているはずだ
なら福音が修理を必要としている状態だということも漏れていると考えていい
もしも自分がどこかの組織に属していたなら、間違いなくこの機を利用して福音を狙うだろう、と八幡は考える
福音は今、展開できたとしてもボロボロだ
そんなところを襲撃されれば簡単に奪われてしまうだろう
八幡としても、せっかく助けた福音が他の組織に奪われるというのは避けたい
だが
八幡「さすがに俺の独断では決められないですよ。
俺なんて所詮ただの高校生ですし」
ナターシャ「ああ、それについては大丈夫よ。もうブリュンヒルデの許可は貰ってるから」
ニコリと笑いながら、ナターシャは答える
八幡「ブリュンヒルデ……まさか……」
ナターシャ「ええ、織斑先生よ」
八幡「(マジか。あの人、そんな簡単に許可しちゃっていいのかよ……)」
ナターシャ「それで、君の返事を聞かせてもらえるかな?」
八幡「俺はいいですよ。俺としても福音が奪われるのは見過ごせないんで。
だけど、俺以外にも護衛を任せられる人はいるでしょう?
その人には頼まないんですか?」
ナターシャ「もちろん頼んでいるわよ。だけどやっぱり頼れる人は多い方が良いでしょう?」
八幡「……それもそうですね」
質問してから、当たり前だよなと八幡は納得する
ナターシャ「それじゃ決まりね。出発は明日の予定だから、ちゃんと準備しておいてね」
八幡「うす」
ナターシャ「じゃあまた明日迎えに来るわね」
ナターシャは席を立つと、八幡に手を振りながら帰路につく
八幡「(さてと、俺も準備するため部屋に戻るか。
てか何気にアメリカ行くとか初めてだし楽しみだな……)」
「「「「八幡!!」」」」
と、そこで立ち上がろうとした八幡を呼ぶ声が後ろから聞こえる
八幡「ん?」
振り返るとお馴染みの五人がいた
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- 4 : 2014/04/29(火) 23:41:39 :
シャル「ねぇ八幡、今のどういう事なの?」
八幡「どうって?」
ラウラ「誤魔化そうとしても無駄だぞ。
護衛がどうこうと話していただろう」
セシリア「八幡さん、詳しく説明して下さい」
八幡「ああ、福音が修理に出されてる間だけナターシャさんと福音の護衛を頼まれたんだよ」
セシリア「き、危険ではありませんの?」
セシリアが心配そうに尋ねる
八幡「べつに絶対襲われるってワケでもねぇし、狙う奴がいても俺が護衛につく事で諦めてくれる可能性だってある。
それに護衛を頼まれてるのは俺だけじゃないみたいだし、大丈夫だろ」
鈴「で、でもさ、八幡の独断で決めちゃっていいの?」
八幡「あー、それもちゃんと織斑先生から許可貰ってるってナターシャさん言ってたぞ」
鈴「そ、そうなんだ……」
箒「それで、どのくらい向こうに滞在するのだ?」
八幡「ん、そういや詳しい期間とか聞いてなかったな……。
まぁでもそんなに長くはならないだろ、多分」
ラウラ「しかしだな、何もお前が引き受けなければならない理由も無いだろう?」
シャル「やっぱり危険だし、今からでも断った方がいいんじゃないかな……?」
八幡「心配してくれるのはありがたいが、もう引き受けちまったし、やってみるよ」
シャル「そ、そっか……」
箒「お前がそこまでの覚悟があるのなら、無理に止めはしないが……」
セシリア「決して無茶はしないと約束して下さい」
鈴「危なくなったらすぐに逃げなさいよね。
自分の身を1番に考えること、いいわね?」
全員にここまで心配されている事が意外で、八幡は少しだけむずがゆい思いだったが、純粋に嬉しいとも感じた
八幡「サンキュな。なるべく気をつけるようにするわ」
ラウラ「本当に助けが必要になったら私を呼べ。すぐに駆けつけるからな。
嫁を守るのは夫の役目だ」
八幡「おう、頼りにしてる」
ラウラ「う、うむ。それで良い。任せろ」
ラウラは頬を紅く染めながら胸を張る
八幡「んじゃ、俺は準備があるからそろそろ行くな」
シャル「うん、それじゃまた」
八幡は五人に背を向け、部屋に向かった
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- 5 : 2014/04/30(水) 00:34:20 :
- 小説が無い...だと......orz
小説無いから、ここからアニメの記憶しか無い
(;´д`)トホホ…
まあ、それでもいいか♪(*^^*)頑張ってね!
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- 6 : 2014/04/30(水) 01:00:00 :
- http://www.ssnote.net/link?q=http://www.ssnote.net/groups/341
雑談用、期待、応援?のコメント等々ですよ(*^^*)
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- 7 : 2014/04/30(水) 03:18:04 :
- >>5
続き頑張ります!
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- 8 : 2014/04/30(水) 03:18:20 :
2
翌朝、昨日と同じように部屋にノックの音が響く
八幡は用意してあった荷物を背負うと、そっとドアを開ける
ナターシャ「おはよう、比企谷くん」
そこには案の定、ナターシャが立っていた
八幡「おはようございます。
時間通りですね」
ナターシャ「だって、待たせちゃ悪いでしょ?」
八幡「そこまできっちりしてなくても良いですよ。
少しくらい遅れたって全然気にしませんし」
ナターシャ「ふふ、優しいのね」
ナターシャがニコリと微笑む
八幡「別に、優しいとかじゃないです。こんなの一般論ですよ」
八幡はついナターシャから目を逸らしながら答えてしまう
ナターシャはそんな八幡の反応が面白いのか、楽しそうに眺めていた
ナターシャ「それじゃ、早速だけど空港に向かいましょうか」
八幡「ええ」
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- 9 : 2014/04/30(水) 03:20:34 :
◇
シャル「おはよう八幡」
ラウラ「もう、行くのだな」
八幡「おう」
セシリア「八幡さん、気をつけて行ってらっしゃいませ」
箒「無理だけはせぬようにな」
鈴「帰ってきた時に大怪我なんてしてたら承知しないわよ」
八幡「ああ、肝に命じとく」
校門を越えたところで、五人に声にかけられる
どうやら見送りに来てくれたらしい
ラウラ「私達も護衛に参加できないか織斑先生に頼んでみたが却下されてしまった……。本当なら一緒に行って力になりたいのだが、すまん……」
ラウラが心底申し訳なさそうに顔を伏せる
八幡「いや、気にすんな。その気持ちだけでも十分ありがてぇよ」
ナターシャ「比企谷くん。そろそろ時間だけど、いいかしら?」
八幡「あ、はい。
じゃあなラウラ、シャル、セシリア、箒、鈴。
ちゃんとお土産は買って来るからな」
ラウラ「うむ、さすが私の嫁だな」
セシリア「約束ですわよ」
箒「楽しみにしているぞ」
シャル「待ってるからね」
鈴「ちゃんと可愛いの選んで来てよね」
八幡「分かってるよ。んじゃまた」
こうして俺は箒達と別れ、ナターシャさんと車に乗り込む
今から護衛開始だ
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- 10 : 2014/04/30(水) 17:55:20 :
- 頑張れ
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- 11 : 2014/04/30(水) 18:22:50 :
- う~~ん…皆は付いて行く気はないんだ。
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- 12 : 2014/04/30(水) 18:26:15 :
- ↑気持ちはあったって言ってるでしょう?ちゃんと読もうよ
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- 13 : 2014/04/30(水) 22:28:43 :
- 期待です!
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- 15 : 2014/05/01(木) 02:23:51 :
◇
ナターシャ「わざわざこんな朝早くから見送りに来てくれるなんて良い子達ね」
八幡「ええ。俺も少し驚きました」
現在、車はナターシャが運転しており、八幡はその隣の助手席に座っている
しかし、八幡は自分では気づいていないようだが車に乗ってからずっと難しい顔をしていた
ナターシャ「比企谷くん、そんなに気負わないでいいのよ?
もっとリラックスして……」
八幡「ナターシャさん。その件なんですけど、質問……というよりかは確認に近いんですけど、少しいいですか?」
ナターシャの言葉を遮って、八幡が真剣な表情で尋ねる
ナターシャ「えっと、なにかしら?」
八幡「ラウラ達に護衛の事を話さなかったのは、あいつ等がこの件に関わったら何か問題になる可能性があるから……という解釈でいいですか?
例えば、国際問題……より厳密にいえば【戦争】とか」
ナターシャ「え……」
その一言にナターシャは少しだけ驚いた様子を見せた
ナターシャ「どうしてそう思ったのかしら?」
八幡「あなたの話は徹頭徹尾おかしかった。
本来、護衛なんて大役はそれこそ代表候補生のようなISのエキスパートが適任なのに、あなたはそれを差し置いて俺に話を持ちかけました」
八幡「それで考えてみたんですよ。どうしてナターシャさんは他の専用機持ちではなく俺に話を持ちかけたのかを。
すると、一つの可能性が浮かんで来ました」
八幡「もしかすると、頼まなかったんじゃなくて、頼めなかったんじゃないか……ってね」
今度こそ、ナターシャは面くらった
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- 16 : 2014/05/01(木) 02:30:10 :
八幡「俺とあいつ等の決定的な違いは代表候補生かどうか。
言い換えれば、どこかの国に所属しているかどうかって事です。
それを基盤に考えれば、すぐに答えは出ました」
ナターシャ「……まさか、あんな短い会話でそこまで見透かされてなんてね」
ナターシャが観念したかのようにそっと口を開く
ナターシャ「その通りよ。今回の件はアメリカの軍事問題、だから他の国に所属している人間に頼むワケにはいかなかったの」
八幡「他国の軍事問題に介入すれば、国と国の戦争の引き金になり兼ねないからですよね」
ナターシャは頷く
八幡「だから、どこの国にも所属していない専用機持ち……つまり俺が選ばれたって事で合ってますか?」
ナターシャ「ええ、合ってるわ。
君、本当に頭がよく回るわね。驚いたわ」
八幡「決定打はさっきのラウラとの会話ですけどね。
それで、箒を誘わなかったのは束さんの家族だからですか?」
ナターシャ「そうよ。篠ノ之博士が世界に与えた影響は大きすぎた。その家族が軍事介入すれば、あの子もこれから命を狙われる可能性は十分に考えられたから」
八幡「やっぱりですか。じゃあ、ほとんど俺の推測は当たってたワケですね」
八幡が満足したように頷く
ナターシャ「あの……もしかして詳しい事情を黙っていた事、怒ってるかしら……?」
八幡「あ、いや別にそれは全然気にしてませんよ。
そういった軍事機密は簡単に話せるものじゃない事は知ってますし。
ただこれでハッキリしました」
ナターシャ「え?」
ナターシャが首をかしげる
八幡「俺が思ってたよりISを巡る組織間の争いが物騒だという事がね」
八幡が再び険しい表情になる
ナターシャ「比企谷くん……」
そんな八幡の様子を見てナターシャが心配そうな声を漏らす
しかし
八幡「安心して下さい。それでも絶対に福音は守ってみせますから」
八幡は今回の任務のリスクを理解した上で、ナターシャにそう宣言する
ナターシャ「比企谷くん……本当にありがとう……」
そんな八幡の姿をみて、ふとナターシャは納得した
IS学園の専用機持ちの彼女達がどうして彼に惹かれているのかを
ナターシャ「(そりゃ、惚れちゃうわよね……。こんな素敵な子になら……)」
八幡「どうしました?」
ナターシャ「い、いやっ、何でもないわ。
そろそろ空港に着くから降りる準備をしておいてね」
八幡「了解です」
それから程なくして空港に着き、2人は予定通りの便で日本を発った
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- 17 : 2014/05/01(木) 10:11:55 :
3
飛行機に乗った2人はそれから少し他愛もない会話をし、数十分が経ったところでナターシャの提案でしばしの睡眠をとることにした
八幡「…………」
横に座るナターシャが寝入った頃、八幡はそっと目を開き、再度思考を張り巡らす
車内の会話で八幡の推測は裏付けされた
今回の件に代表候補生が関与できなかったのは、国際問題に発展する可能性があったからだと
今回はあくまでアメリカ個人の軍事問題だ
そこに福音を狙うA国が襲撃し、仮に護衛を引き受けていたB国がA国を迎撃した場合、確実にA国とB国の間で戦争が起きるだろう
もちろん、当事者のアメリカも含めて
B国としても、戦争に巻き込まれるのは本意ではないだろう
千冬は自分の生徒が戦争の引き金になるのを見過ごせなかったため、彼女達が護衛に参加するのを認めなかったのだ
それを踏まえて情報を整理する
ナターシャは八幡の『福音を狙う何者かがいるのか?』という質問に対して『確証はないが、狙われる可能性はある』と曖昧な答えを返した
だが、戦争の引き金になる可能性がある代表候補生や箒に一切声をかけなかった徹底具合を見ると、間違いなく【いる】と八幡は確信する
はぁ、とため息を漏らす
八幡「(予想していたとはいえ、まさか本当に戦争が起きるリスクをおかしてまで他国のISを奪おうとする組織がいるとはな……)」
できれば自分の思い過ごしであって欲しいと八幡は願っていたが、どうもそうはいかないらしい
確実にいるのだ
そういった危険な組織が
八幡「(気、引き締めねぇとな)」
それからさらに時間は経過し、2人は目的地のアメリカへと降り立った
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- 18 : 2014/05/01(木) 10:23:38 :
- オリジナルの話にもちゃんとファントム・タスクのフラグ建ててくるとは流石だな
期待!
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- 19 : 2014/05/01(木) 10:31:33 :
- よく考えられてる!
これは期待です
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- 20 : 2014/05/01(木) 13:53:21 :
- ティナがファントム・タクスに所属してるの?
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- 21 : 2014/05/01(木) 13:55:28 :
- ↑ファントム・タスクな
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- 22 : 2014/05/01(木) 14:03:12 :
- ティナって…ブラック・ブレットの金髪の子ですよね?
プロモーターとして誰か登場するんですか?
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- 23 : 2014/05/01(木) 14:46:05 :
- 八幡は犠牲となったのだ
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- 24 : 2014/05/01(木) 15:07:23 :
- いやいや。
もし犠牲になったら、それこそヒロインズと言う名の各国の代表候補生が怒り狂って戦争になり兼ねないから
その辺は上手く遣るんでしょう?六さん
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- 25 : 2014/05/01(木) 15:25:01 :
- ナターシャさん終了のお知らせ
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- 27 : 2014/05/01(木) 16:59:26 :
4
飛行機から降りて空港を出た2人は、ナターシャがあらかじめ呼んでいた迎えの車に乗り込み、研究所へ向かう
八幡「今から行く研究所で福音を修理するんですか?」
ナターシャ「いえ、今から行く研究所には私を護衛してくれる子と合流するために行くのよ。
あの子を修理できる研究所はまた別の所にあるの」
八幡「なるほど」
そういえばナターシャが、八幡以外にも護衛を頼んでいる人物がいると言っていたのを八幡は思い出す
ナターシャ「それと、修理担当の研究所の受け入れ準備がまだ終わってないらしくてね。
多分、研究所に向かうのは明日になると思うわ」
ナターシャが申し訳なさそうに状況を報告する
八幡「そうなんですか?」
ナターシャ「ついさっき連絡が来てね。
急な事でごめんなさい」
八幡「いえ、構いませんよ。
ナターシャさんのせいじゃないですし」
ナターシャ「ありがとう。そう言ってもらえると助かるわ」
少し安堵したようにナターシャは微笑む
ナターシャ「だから今日は護衛の子達と研究所の役員さん達を紹介して、後は適当に時間を潰す形になると思うけど、それでもいいかしら?」
八幡「適当に時間を潰すって、要するに自由な時間になるという事ですか?」
ナターシャ「そうなるわね」
八幡「なるほど……それはむしろ少しありがたいです」
初めてのアメリカを観光する時間が設けられたのは八幡としては願ってもないラッキーだった
土産を買う約束もしていたので、良い機会だと八幡は思う
少し不謹慎な気もするが
ナターシャ「それじゃ、決まりね。あ、もう研究所が見えて来たわよ」
八幡が窓の外を見てみると、そこには大規模な研究所がそびえ立っていた
八幡「でけぇ……」
ISの研究所というのはこんなに凄いものなのかと八幡は思い知らされ、思わず感嘆の声が漏れる
ナターシャ「それじゃ、降りましょう」
八幡「うす」
そして2人は車から降り、研究所へ入っていった
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- 28 : 2014/05/01(木) 17:06:51 :
八幡「(うっ……)」
八幡の顔がつい反射的に歪んでしまう
ナターシャに研究所の二階にある広場へ案内された八幡だったが、右を見ても左を見ても女性しかいなかったのだ
八幡「(まさか、研究員も全員女なのかよ……)」
そうなればここでも男子は八幡1人という事になる
当然ながら注目の的だ
その証拠にさっきからずっと周りの女の人から視線が集中している
まったく落ち着かない、というのが現在の八幡の心境だった
ナターシャ「じゃあ早速だけど紹介するわね。
私の護衛を引き受けてくれた比企谷八幡くんよ」
八幡「えと、比企谷八幡です。よ、よろしくお願いします」
ナターシャに続いて八幡も自己紹介する
研究員一同「…………」
一瞬の沈黙
しかし
研究員A「えーっ!?
君があの比企谷くん本人なの!?
男性で唯一ISを動かせるっていう!?」
研究員B「うっそ!?
ナターシャさんから日本で一人護衛を引き受けてくれた子がいるって聞いてたけど、それがまさか君だったなんて!!」
研究員C「すごい有名人にあっちゃった!
ねぇ後で写真お願いしてもいいかな!?」
次の瞬間、堰を切ったように喧騒の嵐が巻き起こる
八幡「え、えっ?」
突然の事で八幡が困惑しているとナターシャが止めに入る
ナターシャ「はーい、騒ぐのは今はそこまでにして。とりあえずあなた達も自己紹介して頂戴。比企谷くんが困ってるでしょ?」
ナターシャの一言で取り乱していた三人が『ハッ』と平静を取り戻して、自己紹介を始める
シェリー「あ、ごめんなさいね。
私はシェリー、ここの研究員よ。よろしくね」
リンデ「同じく研究員のリンデです」
リネーア「リネーアよ。これからよろしくね比企谷くん」
八幡「あ、どうも。
それで、ここにいるっていう護衛の方はどなたですか?」
八幡が気になった質問をぶつけてみる
リネーア「あー……えっと、それなんだけど……その……」
しかし返って来たのはリネーアの困った表情だった
そんなリネーアの顔を見て、ナターシャが声をかける
ナターシャ「……やっぱりあの子、まだ来てないの……?」
リネーア「……はい。一切連絡がつかなくて……。
おそらくまだ寝ているんだと思います」
ナターシャ「はぁ……あの子の夜行性には困ったものね……」
ナターシャが額をおさえる
ナターシャ「ごめんね比企谷くん。彼女を紹介するのは夜でもいいかしら?」
八幡「俺はいいですよ。
それより、護衛は俺とその方だけって事でいいですか?」
ナターシャ「いえ、もう一人いるわ。でもその子はもうすでに修理担当の研究所にいるの。
だから紹介するのは向こうに着いてからになるわ」
八幡「なるほど。了解しました」
ナターシャ「それじゃ、一通り自己紹介も済んだことだし比企谷くん、君も羽を伸ばしてきてくれても大丈夫よ。
私も少し自由な時間を楽しんでくるわ」
八幡「あ、はい。ではお言葉に甘えt……」
リネーア「待って比企谷くん!
私たちとお話しましょう!」
リンデ「そうですよ!
少しだけでいいですからー!」
シェリー「それよりさ、写真撮ろうよ写真!」
八幡「あ、えっ……えぇっ?」
自由な時間を満喫しようとした八幡をリネーア達が呼び止め、その出鼻をくじく
そして八幡が三人から解放されて自由になるのはそれから一時間後だった
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- 29 : 2014/05/01(木) 17:35:09 :
- いいぞヽ(゚∀゚)ノ期待してますたい
-
- 30 : 2014/05/01(木) 20:57:05 :
- hd(@^∇゚)/ファイトッ♪
-
- 32 : 2014/05/01(木) 22:56:05 :
◇
八幡「疲れた……」
研究所を出て八幡が大きく伸びをすると、ポキポキという軽快音を立てて体の骨が鳴る
はぁ、と八幡は深い溜息をつきながら顔をあげる
八幡「ん?」
そこで、おや?と思う
研究所前に据えられた噴水の周りを、自転車が周回しているのだ
さきほどからずっと
乗っているのは十歳くらいの女の子で、髪の色はプラチナブロンドというのだろうか、陽射しを浴びてキラキラと光り輝いている
が、彼女の着ている服はぶかぶかのパジャマで、足はスリッパ、髪は寝癖全開で跳ねており、没我の表情でフラフラ自転車を漕いでいた
八幡「(おいおい、危ねぇぞ……)」
夢遊病のように円形の噴水を無限に周回し続ける自転車に、周りを歩く人たちは明らかに関与したくないという様子で足早に通り過ぎていく
嫌な予感がして、八幡も彼女の脇を通り過ぎ、関わらないように十分距離を取る
ホッと胸を撫で下ろしながら、極力振り返らないように土産屋を探そうとした
その刹那、背後から何かが倒れる音が聞こえてきた
「ッてぇなゴラァァアアアアァァッ!!
どこ見てやがんだよテメェッ!!」
辺り一帯に怒号が響き渡り、八幡はついつい振り返ってしまう
すると見るからにヤンキーみたいな少年が三人ほど、さきほどの少女に絡んでいた
自転車から投げ出された少女は未だに何が起きたのか理解していないのか、キョロキョロ左右を見渡しているが、そこに少年の容赦ない蹴りが入り、八幡は片目をつぶる
少女は噴水のヘリに背中から打ち付けられ、痛みをこらえるような悲鳴がここまで聞こえてきた
男A「なに黙ってんだよ、何とか言えやガキ!
テメェはこの自転車で俺の足を踏んだんだよ。分かってんのか?」
男B「あーあ、これ足の骨折れてるんじゃね?」
男C「慰謝料だ、慰謝料」
周囲の人間は前にも増して彼女を避けて通り過ぎるようになり、巻き込まれることを嫌って踵を返す者まで出始めた
可哀想だとは思うが、八幡はここで助けに入るほど善人ではない
関わり合いになりたくないという思いの方が強く、踵を返そうとする
しかし、『とりあえず親呼べや』と言って足で少女を小突いてるリーダー格の男の姿を見ていると、どうしてか足が地面から離れない
八幡は頭をぐしゃぐしゃと掻く
八幡「クソッ」
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- 33 : 2014/05/01(木) 23:00:35 :
八幡はリーダー格のトンガリ頭に近づくと肩に手を置き、振り向かせる
男A「あぁ?」
トンガリ頭は目に見えて不愉快そうに眉をひそめた
悪いがこっちの方が不愉快なんだよボケ、と内心八幡は毒づく
男A「なんだテメェは?」
八幡が黙っているとトンガリ頭は顔を近づけて凄んでくる
別にそれはまったく問題ないのだが、ここで八幡は自分の過ちに気づく
考えもなしに突っ込んでしまったため、相手を黙らせるための策を講じていなかったのだ
八幡「(なんつったら大人しく引き下がってくれるかねぇ……?)」
男A「何とか言ったらどうだ?
あぁッ!?」
八幡「はぁ……別にわざとじゃないみたいだし、そこまでムキになる必要もないだろ。
だからさ、大人しく帰ってくんね?」
八幡はなるべく刺激しない言葉を選んだつもりだったのだが……
男A「ごちゃごちゃうるせぇな!
黙らせてやる!」
トンガリ頭は聞く耳持たずといった様子で、腕を振りかぶり八幡に殴りかかる
八幡「(そう来ると思ったよ)」
八幡は向かってきたトンガリ頭の腕をスルリと避け、腕を掴んでその力を利用して足をかける
男は自分の勢いを殺せず、見事に空中で一回転して背中から地面に落下した
男A「ぐ、あ……っ」
男はどうやら肺の空気をすべて持っていかれたようで、悶え苦しんでいる
男B「くそ!
調子乗ってんじゃねぇぞ!」
トンガリ頭がやられたことで、次は下っ端が逆上して殴りかかってくる
八幡は、横から突っ込んできた下っ端もトンガリ頭と同じように難なく躱すと、男の背後に回り関節を極めた
男B「い、いでででででっ!!
ちょ、離せっ!ぐあ、は、離してくれ!」
男が涙目で懇願してくるので、八幡はそっと手を離す
男C「お、お前何者だよ……」
八幡「別に普通の高校生だ。
ただ、うちの学校にとある軍隊の隊長やってる奴がいてな。
そいつに日々しごかれてる(強制的)内に身についただけだ」
八幡は吐き捨てるように言った
男A「ちっ……お前ら、行くぞ……」
トンガリ頭はフラフラと立ち上がると仲間を引き連れて去っていった
ふぅ、と息を吐いて肩から力を抜く
八幡がチラッと目を向けると、金髪の少女が小さく口を開けてこちらを見上げていた
-
- 34 : 2014/05/01(木) 23:06:07 :
「正義の、ヒーロー……生まれて、初めて見ました……」
八幡「んな事どうでもいいから、さっさと家に帰れ。じゃあな」
パジャマ少女に背を向けて立ち去ろうとすると、ぎゅっと服の裾を掴まれた
「ここ、どこですか?」
八幡は頭を抱える
クソッ、関わっちまった……
近場の公園のベンチに彼女を座らせると、八幡は濡らしたハンカチを絞り、彼女の顔をそっと拭いた
八幡「ちょっとじっとしとけ」
彼女は顎を上げると、目を細くしてされるがままになる
「なんだか、慣れて、おりますね」
八幡「妹が小さい時によくやってたからな。
よし、綺麗になったぞ」
彼女はペコリと一礼する
だがおかしな事にお辞儀したまま顔を上げない
不審に思い八幡が顔を覗き込むと、彼女は目蓋を重そうに上下させながら眠りに落ちかけていた
八幡「おい……」
ハッと顔を上げ、少女はポケットをまさぐると、ラベルが貼られたボトルを取り出し、中の錠剤を掴みだし口に放り込む
ラベルを確認すると、どうやらカフェインの錠剤らしい
「私……夜型なので、こうしてないと、昼は、起きてられないんです」
そう言ってる間もぱくぱくと大量の錠剤を口に含んで咀嚼していく
多分……いや、間違いなく一度に服用する基準値を超えている
八幡「……お前、どこから来た?
名前は? 保護者は? なんでパジャマとスリッパなんだ?」
少女は自分の服装に視線を落とし、ゆっくり首をかしげた
「さあ?」
殴りたい衝動に駆られる八幡だが、なんとかあと一歩のところで踏みとどまる
八幡「さあっておい……じゃあ名前」
「……ティナ……です。ティナ・スプラウト。あなたは?」
八幡「比企谷八幡だ」
ティナ「ティナ、でお願いします」
八幡「じゃあ俺は比企谷でいい」
ティナ「……八幡、さん?」
こいつ話聞いてたか? と問いただしたくなる
ティナは口を半開きにしてボーッと八幡を見ていた
八幡「なんだよ?」
ティナ「呼んでみた、だけですが?」
八幡はがくりと肩を落とす。疲れる……
-
- 35 : 2014/05/01(木) 23:16:05 :
八幡「じゃあティナ、もう一度聞く。保護者はどうした?」
ティナ「いません」
いない?
八幡「どこから来た?
覚えてる範囲で」
ティナは『えっと……』と顎に人差し指を当てて、のろのろと喋りだす
ティナ「たしか、今日はアパートで目が覚めて、歯を磨いて、シャワーを浴びて、服を着替えて、颯爽とおでかけしたところまでは」
八幡「よくそんな嘘がつけたなッ?
服も着替えてないしシャワーも浴びて無いどころか寝起きだろッ」
ティナ「おぉ……。私より、私の事を、ご存じ、なのですね」
八幡「あの自転車はお前のなんだよな?」
ティナ「自転車?
私、そんなものに、乗っていたのですか?」
八幡「……よし。
もういい、お前、交番行って道聞いてこい」
ティナ「それは、ちょっと……」
八幡「いいから。お前の相手は俺には荷が重過ぎた」
ティナ「そんなこと、仰らずに」
八幡はメモ用紙に自分の電話番号を書いて渡す
八幡「ほらよ。もし本当にどうしようもなくなったら電話していいから交番行け。頼むから」
最終、ナターシャに丸投げするつもりの八幡であった
ティナ「じゃあ、いまからテストで電話をかけてもよろしいですか?」
八幡「……なんで、んなことする必要があるんだよ」
ティナ「八幡さんが、偽の電話番号を教えたかもしれません」
八幡「…………」
ふむ……こんな小さいくせに、この他人への疑り深さ……もしかしたら気が合うかもしれないな
と、八幡は少し考えてみた
ティナはこちらに背を向けて携帯を操作すると、八幡のポケットが震える
ティナ『突然ですが、八幡さんは十歳の少女に興味がありますね?』
八幡「……は?」
ティナ『私のパジャマから覗く肌をちらちら眺めていたのを、ひしひしと感じました』
八幡「眼科に行け」
ティナ『眼科へは八幡さんが行くべきかと』
八幡「なに?」
ティナ『面と向かって言うのは憚られたのですが、八幡さんは、本当に、不幸そうな顔をしていますね。特に、その腐り切った目が……』
八幡「うるせぇ」
ティナ『これも、言いそびれましたが、私、アパートの場所分かります』
次こそ八幡はずっこけそうになる
八幡「じゃあこの一連の会話の必要性なかったろッ」
ティナはうっすら微笑むと、ゆっくりした動作で携帯をしまう
ティナ「今日はとても、楽しい一日でした」
どうやら彼女の中では、この茶番が楽しい一日として記録されたらしい
俺は疲れただけで毛ほども楽しくなかったわ、と喉まで出かかったが、彼女の嬉しそうな顔を見ていると、なんだか言うのがアホらしくなった
ティナはそっとベンチから立ち上がると、ゆっくり微笑む
ティナ「また会えるといいですね」
八幡「それはゴメンだ」
ティナ「ふふ。では、さようなら、八幡さん」
彼女は丁寧にお辞儀をすると、おぼつかない足取りで公園を出ていく
八幡「(悪い奴ではなさそうだがな……)」
八幡はもう彼女と会うことは無いだろうと考えながら、ティナとは反対の方向に歩き出し、再び土産屋を探し始めた
-
- 36 : 2014/05/02(金) 00:58:03 :
- 今回は投下するの早くて、ちょこっと見たらもう投下されてて慌てる俺ガイル(`・ω・´)キリッ
まあ、投下早くて助かる自分もいるしガンバ((〃>ω<)★
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- 37 : 2014/05/02(金) 03:43:37 :
- この投稿は削除されました。
-
- 38 : 2014/05/02(金) 19:47:28 :
- 凛って人なんでいつもここに感想とか書くの?
-
- 39 : 2014/05/02(金) 21:02:19 :
- >>38
うん?感想と期待だよ?
まあ、感想は雑談の方でお願いしたいけどまあいいんじゃない?俺は迷惑してないし、批判(信者、荒らし)よりはマシだな。
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- 40 : 2014/05/02(金) 21:27:33 :
- 期待ですよ、六さん!
あと、アイコン画像ってノーゲームノーライフのやつですか?
-
- 42 : 2014/05/02(金) 23:19:09 :
5
ティナは八幡と別れた後、その足でアパートに戻った
その様子は心なしか上機嫌のように見える
ティナはポケットから鍵を取り出すと、鍵穴に差し込みそのまま捻ってロックを外す
扉を開けた瞬間、ふわっと良い香りの空気に出迎えられる
パジャマとスリッパで外出する女の子からは想像出来ないかも知れないが、ティナは掃除などの家庭スキルが驚くほどに高い
部屋にはゴミ一つ落ちておらず、とても清潔感があるのがその証拠だ
ティナはスリッパを脱いで姿見の前に立つと、ポッと頬を紅く染めた
こんな格好で、あの人の前に立っていたのか
おめかしすれば、私だってもっと可愛いのにと後悔にくれながらティナはパジャマを脱ぎ、シャワーを浴びる
服を着替えて携帯を開くと、さっきは気づかなかったが、研究所から電話があった事に気づく
ティナは急いで電話を折り返した
数コールで相手は出る
-
- 43 : 2014/05/02(金) 23:21:47 :
ティナ「もしもし、ティナです」
ナターシャ『え、ティナ!?』
ティナ「ナターシャさん、おはようございます」
ナターシャ『おはようございますって、もう夕方よ?』
ティナ「……すみません」
ナターシャ『まさか、今まで寝てたの?』
ティナ「いえ、少し外出していました」
ナターシャ『が、外出!?
あなた昼間なんてほとんど意識ないでしょう?
何か問題に巻き込まれたりしなかったの?』
ティナ「一度トラブルがありましたが、大事には至っていません」
ティナは胸に手を当て、目蓋を閉じながらゆっくりと続ける
ティナ「……親切な人に、助けていただいたので」
ナターシャ『そう……なの?
なら、良かったわ』
ナターシャがホッと息をつく
ティナ「それより、朝方着信があったようですが、どういった用件だったのですか?」
ナターシャ『えっと、あなたに日本から来てくれた護衛の子を紹介したかったのよ』
ティナ『……ああ、そういえば護衛を引き受けてくれた日本人の方がいると言ってましたね』
さして興味が無かったので完全に頭から抜け落ちていた
護衛を共にする人間が誰であっても、ティナのする事に変わりは無い
それに所詮は数日間だけの関係
別にそこまで馴れ合う必要性はないと判断したからだ
ナターシャ『やっぱり忘れていたのね』
ティナ「興味がありませんでしたので」
ナターシャ『でも、面白い子よ?』
ティナ「関係ありません」
ナターシャ『相変わらず興味のない人とは関わろうとしないのね』
ティナ「(一緒に護衛するのが八幡さんだったらなぁ……なんて……)」
あり得ないが、その護衛というのが八幡であればティナの反応はまったく違うものになっていただろう
ナターシャ『それで、今日の夜研究所に来れる?』
ティナ「ええ、大丈夫ですけど……どうしてですか?」
ナターシャ『その子には今日うちの研究所に泊まってもらう予定だから、ちゃんと紹介しておこうと思って』
ティナ「……はぁ、了解しました」
ナターシャ『それじゃ、また夜にね』
そこで通話は切れた
正直面倒くさい、とティナは思った
一緒に護衛するのが八幡のような人間であればいいなと願うが、ISを使えるのは女性のみ
まず性別からしてあり得ない
そういえば日本に1人、男性でISを使えるの人間がいるらしいが、あまり興味も湧かなかったので名前も知らない
それに、そんな希少な人間が護衛に選ばれる可能性はほぼ0だろう
それを踏まえて、護衛の人間が女性だとティナは断定した
ティナ「(どんな女の人なんだろう……?
どうせ一緒に仕事をするのなら優しそうな人だと楽なんですけどね……)」
ティナはこの後特にする事もなかったので、少し早いが研究所へ向かう事にした
-
- 44 : 2014/05/02(金) 23:25:45 :
- 続き期待してます(*^^*)
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- 45 : 2014/05/02(金) 23:29:08 :
- フラグビンビンっすねぇ
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- 46 : 2014/05/03(土) 02:02:23 :
- この投稿は削除されました。
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- 47 : 2014/05/04(日) 06:52:40 :
- この投稿は削除されました。
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- 48 : 2014/05/04(日) 18:40:31 :
第二章
【ティナ・スプラウト】
ティナ「お久しぶりです、ナターシャさん」
ナターシャ「あら、ティナ。
早かったのね」
ティナ「はい。特にする事もなかったので」
現在時刻は18時45分
ティナはあの後すぐに家を出て研究所に向かい、たった今到着したのだ
ティナ「それで、護衛の人はまだ来てないのですか?」
ティナが周りを見渡しながら尋ねる
ナターシャ「夜までには戻ると言っていたから、もうすぐ来ると思うわ」
ティナ「そうですか」
ティナが短く返すと、そこでナターシャの携帯の着信音が鳴り響く
ナターシャ「はい、もしもし。あ、着いた?
……分かったわ。それじゃ」
ナターシャは電話に出ると、簡潔なやり取りをして、通話を切る
ティナ「電話の相手は?」
ナターシャ「まさに今噂していた護衛の子よ。着いたけど道が分からないから入口まで迎えに来て欲しいって頼まれたの」
ティナ「この研究所広いですからね。
慣れるまでは苦労すると思います」
ナターシャ「ふふ、本当にね」
ナターシャが楽しそうに微笑む
どうやらナターシャは大層その護衛の人間を気に入ってるらしい、とティナは推測する
ナターシャ「ついでだし、あなたも彼を迎えに行くのに付き合ってくれる?」
ティナ「了解しました」
ここで待っていても手持ち無沙汰なので、ティナはナターシャに付いていく事した
2人は研究所内の造りを完全に把握しているため、迷うこと無くほんの数分で入口付近までやって来る
ティナ「(……あれ?)」
そこでティナはふと先程のナターシャのセリフを思い返し、とある疑問が頭をよぎった
そういえばさっき、ナターシャは迎えに行く相手の事を『彼』と呼んでいなかったか?と
ティナはその事が気になってナターシャに声をかけようとしたが、それを遮るようにナターシャが入口で待っていた人物の元へ駆け寄る
ナターシャ「比企谷くん、お待たせ。こっちよ」
その名前を聞いて、ハッと顔をあげる
え? 比企谷って……?
ティナはその人物の顔を見て、自分でも驚くほどに心拍数が跳ね上がるのを実感した
-
- 49 : 2014/05/04(日) 18:48:33 :
こんな偶然があるだろうか
オシャレとは程遠い、ラフ過ぎる格好
その人相の悪い目と、ぶっきらぼうな態度とは裏腹に馬鹿正直なほど面倒見が良くて誠実なのを、ついさっきのごく短い付き合いで学んでいた
好意を寄せていた。いい人だと思っていた。心を許していた
そこに立っていたのは、紛れもないその本人
比企谷八幡だった
八幡もどうやらティナに気づいたらしく、目を見開いている
八幡「え、ティナ……?」
ティナ「八幡さんッ」
ティナは八幡の元へ駆け寄ると、胸に顔をうずめる
八幡「ちょっ、おい」
ティナ「八幡さん!
また会えるなんて、思っていませんでした。
私、今すごく嬉しいです!」
そう言うとティナは満面の笑みを八幡に向ける
それとは対照的に顔を掌で押さえる八幡だったが、確認のためにティナに質問する
八幡「ティナ……まさか、まさかだとは思うが……ナターシャさんが言ってたここで合流するはずだった護衛って、お前の事か……?」
ティナ「はい。私の事ですよ」
ティナはあっさり肯定する
八幡「マジかよ……」
ナターシャ「えっ?
2人とも知り合いだったの?」
さすがのナターシャも驚きを隠せないようだった
八幡「まぁ……知り合ったのはついさっきですけどね」
ナターシャ「凄い偶然もあるのね……。
まぁ、とりあえず紹介しておくわ。彼女はアメリカ最年少の代表候補生、ティナ・スプラウトよ」
八幡「なッ?」
ティナが代表候補生、しかもアメリカで最年少だという事実に八幡が驚愕をあらわにする
ティナ「驚きましたか?」
八幡「昼間のお前から想像できるワケねぇだろ」
ナターシャ「それにしても2人はどこで知り合ったの?」
八幡「研究所のすぐ前にある噴水ですよ」
ティナ「怖い人たちに絡まれていたところを、八幡さんが助けてくれたんです」
ナターシャ「へぇ……じゃあティナが電話で言ってた親切な人っていうのが比企谷くんだったのね」
ティナがコクリと頷く
ナターシャ「本当になんて巡り合わせなのかしら。
2人が出逢うのは運命だったのかもしれないわね」
ティナ「う、運命だなんて……そんな……やめてくださいナターシャさん……」
『やめてください』と言う割に、ティナはまったく嫌そうな表情をしていない
それどころか少し微笑んでいるまである
ナターシャ「さて、それじゃ今日はこれで解散にしよっか」
八幡「そうですね。あ、ナターシャさんここってお風呂とか……」
ティナ「あ、あの」
八幡「ん?」
ティナ「えっと……その、私、もう少し八幡さんとお話、したいです。
せっかく、こうしてまた会えたので……」
ティナが歯切れが悪そうに言葉を紡ぐ
八幡「んー、そうは言ってもな、悪いけど今日は色々あって疲れたからさっさと寝たいんだよな」
八幡は長時間に渡る移動やら、ヤンキーの撃退やら、土産探しやらでだいぶ疲労が溜まっていた
ティナには悪いがすぐにでもシャワーを浴びて寝たいというのが八幡の願望だった
ティナ「そう、ですか……」
それを聞いたティナが顔を伏せる
八幡「(参ったな……)」
ここまで落ち込まれると、少し罪悪感が膨らむ
八幡「……あの、ナターシャさん。明日の予定ってもう決まってますか?」
ナターシャ「ええ。研究所の受け入れ準備が夜には終わるそうだから、ここを夕方頃に出る予定よ」
八幡「えと、じゃあ夕方までは今日と同じで自由時間って事ですか?」
ナターシャ「そうね……こちらも出発の準備とかがあるから、夕方までというワケにはいかないけど、昼過ぎくらいまでなら自由にしてくれて大丈夫よ」
八幡「なぁティナ、一緒に話すのって明日でもいいか?」
ティナ「え?」
八幡「今日は無理だけど、明日なら付き合うぞ?」
ティナ「ほ、本当ですか?」
八幡「ああ」
ティナ「わ、分かりました。それじゃ、約束ですよ!」
八幡「おう」
わざわざ八幡が自分のために時間を作ってくれた事が嬉しくて、ティナはついつい顔が緩む
ナターシャ「あ、そういえば比企谷くんお風呂に行きたいのよね?」
八幡「あ、はい」
ナターシャ「今からリネーアを呼ぶから、リネーアに案内してもらっていいかしら?」
八幡「了解です」
数分後、八幡はやって来たリネーアと風呂場へと向かった
-
- 50 : 2014/05/04(日) 23:05:07 :
- 頑張ってね
-
- 51 : 2014/05/05(月) 01:54:13 :
- >>50
凛さんありがとうございます(o^^o)
-
- 52 : 2014/05/05(月) 01:54:24 :
ナターシャ「ねぇ、ティナ」
ティナ「なんですか?」
ナターシャ「まさか、比企谷くんに惚れた?」
ティナ「なっ……」
ティナの顔が耳まで紅くなる
ティナ「な、何を言ってるんですかっ。そんな事あるワケないです」
ナターシャ「でも比企谷くんに抱きついたり、彼ともっとお話したいとか言ってたじゃない?
普段の貴方なら考えられないわよ」
ティナ「それは……その、護衛を引き受けた者同士うまくやっていかないといけないですし……」
ナターシャ「でもティナ、電話では興味がないって言い切ってたわよ?」
ティナ「考え方が変わったんです」
ナターシャ「彼だから?」
ティナ「そ、そういうワケじゃありませんっ」
ナターシャ「だって貴方、興味がない人間とは全く関わろうとしないし、護衛が一緒だからって必要以上に馴れ合うような子じゃないでしょう?
それなのに比企谷くんにはあんなにデレデレして……」
ティナ「してませんっ」
ナターシャ「ふふ、だけど彼を狙うならライバルは多いわよ」
ティナ「ライバルですか?」
ナターシャ「彼は唯一ISを使える男性として、IS学園に所属しているのよ?」
ティナ「あっ……」
ナターシャ「気づいた?
つまり彼はずっと女の子に囲まれて生活しているのよ。
私が知ってるだけでも少なくても五人、彼に想いを寄せている子がいるわ」
ティナ「そんな……」
思わず泣きそうになる
ナターシャ「だから貴方も変な意地をはってモタモタしていたら手遅れになっちゃうわよ?」
そう言ってナターシャは妖艶な笑みを浮かべる
ティナ「(うぅ……八幡さんみたいな魅力的な人なら、確かに周りの女の人に好かれても不思議じゃないですよね……。
私も頑張らないとっ)」
他の女性に負けないように、もっと八幡にアピールして振り向いてもらう努力をしよう
ティナはそっと心に決めた
-
- 53 : 2014/05/05(月) 06:56:41 :
- 期待です!
-
- 54 : 2014/05/06(火) 10:29:30 :
- 六さんの見てると、八幡がすごくかっこよく見えてくる。
続き期待してます!
-
- 56 : 2014/05/06(火) 16:15:10 :
八幡「ほら、買ってきてやったぞ」
八幡はベンチまで駆け戻り、たこ焼き屋で買ってきたトレイを片方手渡すと、ティナは眠い目を擦りながらも嬉しそうに眼を細める
ティナ「ありがとう、ございます」
翌日の昼下がり
公園には燦々と陽光が降り注ぎ、草木も風に吹かれて気持ち良さそうに揺れている
そんな中、同じベンチに男女2人が並んで腰掛けている光景は、見ていて微笑ましい
八幡が横目でベンチを見ると、今日のティナは昨日のパジャマと比べて随分気合いの入ったドレス姿だった
だが画竜点睛を欠くというべきか、胸元のボタンを一段かけ違っており、髪留めの位置もおかしい
おそらく極端な夜行性の彼女は、眠くてそこまで気が回らなかったのだろう
と、考えている傍からティナの頭がカクンと下がり寝落ちしそうになる
彼女は目を擦り、ポケットからカフェインの錠剤ボトルを取り出すと、中身をたこ焼きに降りかけ始める
八幡「おい待て。何をしてんだお前は」
ティナ「どうか、しましたか、八幡さん?」
のんびりした上目遣いで八幡を見上げるティナ
そんなティナを見ているとなんだか怒る気が失せてきて、八幡は『いや、なんでもねぇ』と手を振る
ティナは危なっかしい手つきでたこ焼きを一つ掬い、口に運ぼうとする
ハラハラしながらそれを眺めていると、案の定というか彼女が手を滑らせる
ティナ「あうあっ」
べちゃ、という音を立ててたこ焼きが地面に落下
八幡は悲鳴をあげそうになった。六個入りで六百円もしたんだぞそれ!
ティナは申し訳なさそうな伏し目がちで八幡を見る
震える手で怒っていないという意思表示のため手を振るのは、大変な労力を要した
再びたこ焼きと格闘を始めたティナを尻目に、八幡はベンチに背を預けて体を反らし、流れる雲を眺める
-
- 57 : 2014/05/06(火) 16:38:21 :
今日の夕方から本格的な護衛が開始される
まだ襲撃されると決まったワケではないが、そういった組織が存在するという事はナターシャとの会話で確証を得た
敵がハッキリしない以上、油断は出来ない
なにより戦争が起きることを厭わない人間の集団だ
警戒するにしても、し過ぎるという事は無いだろう
八幡「(今の俺に太刀打ちできる相手なのか……?)」
もう襲撃があるとすれば、そんな組織なら相当な手練れを送り込んで来るだろう
危険だ
八幡は足を組んで両手を頭の後ろに持ってくると、再び思考に入る
隣から聞こえてくる「あうあッ」ベチャ、という本日二回目の音は努めて意識しないようにした
-
- 58 : 2014/05/06(火) 16:53:09 :
護衛は八幡を含めた3人
その内の1人は既に向こうの研究所で待機しているらしい
そして、もう1人は横に座っている何とも頼りない少女だ
最年少の代表候補生で、護衛も任されている事を考慮すれば、実力は確かなのだろうが……今の様子を見る限りでは何とも言えない
研究所にいるというもう1人の実力も分からない
いささか不安が残る
なんとか、敵の手掛かりだけでも……
ティナ「あうあっ」
八幡「お前一体何個落としてんだよッ!」
地面を見ると、大粒のたこ焼きは三個ほど墜落しており、彼女はといえば一つも口に運んだ形跡がない
ティナはしばらく地面に落ちたたこ焼きを眺めたあと、ゆっくりと顔を上げて至極真面目な顔で言った
ティナ「八幡さん、このたこ焼き、私の口から逃げるようなのです。まだ、内部のタコが生きている可能性が……」
八幡「ねぇよ!
ちょっと貸せバカ」
八幡はトレイを奪い取ると爪楊枝で一個刺し、ティナの口に無理矢理放り込む
ティナは束の間驚いた顔をしていたが、もそもそと咀嚼し始めると徐々に頬の表情筋が緩んでいき、なんとも幸福そうな顔になる
ティナ「八幡ひゃん、もっと、くらひゃい」
ティナが半分ベンチから身を乗り出しながら目を閉じ、小さく口を開ける
なんだかキスをせがまれているようで一瞬どきりとするが、どちらかというと鳥のヒナに餌付けしているような感覚に近いなと思い直す
ぱく、ぱく、と食べていくごとに幸福オーラを発散して弛緩するのが面白くなり、気づけば自分のたこ焼きも全部ティナにあげてしまっていた
-
- 59 : 2014/05/06(火) 17:06:32 :
八幡「ちょっと、じっとしてろ」
八幡はハンカチを取り出してソースまみれになった口を拭こうとすると、ティナは眼を細め顔を上げ、八幡のされるがままになる
背後から笑い声が聞こえてきて首だけ振り返ると、家族連れがこちらを指差しながら朗らかに笑っていた
八幡「(周りからは俺とティナはどう映ってんだろうな)」
兄と妹のように見えてるのだろうか
そう思うとなぜだか、心がほんのりと温かくなった
どうやらそれはティナも同じなようで、八幡への想いがさらに募り、胸の鼓動が早くなる
ティナ「(やっぱり、八幡さんは、素敵な方です。
だから、周りの女性からも、好かれるのですね……)」
八幡が他の人から好かれるのは嬉しい事が、その反面誰にも取られたくないという相反する気持ちがぶつかり、ティナは複雑な心境になる
ティナ「(ナターシャさんの言う通り、自分から進まないと……)」
八幡が少し離れて、「よし、綺麗になった」と頷くと、ティナはゆっくりと目を開け、おもむろに呟く
ティナ「私、八幡さんのこと、好きです」
八幡「は、はぁッ?」
いきなりのことでほんの少し頬を紅くしてたじろぐ八幡だが、ティナはその反応が嬉しく思えた
ちゃんと自分を女の子として意識してくれていると分かったからだ
ティナ「ふふ、八幡さん、可愛い反応をしますね」
八幡「お前が変なことをいきなり言うからだ。
んで、どうしたんだ突然?」
ティナ「いえ、私、男の人にこんなに優しくされたの、生まれて初めてかな、と」
八幡「だからって簡単にそんな事口走ってんじゃねぇよ」
ティナはまだ十歳だが容姿はかなり整っているし、将来は間違いなく美人になるだろう
そんな女の子に急に好きと言われれば、八幡だって当然ドキッとしてしまう
-
- 60 : 2014/05/06(火) 17:14:08 :
ティナ「すみません。でも、どうしても言いたくなってしまいまして」
頭を掻きながら「……まぁ、別に悪い気はしねぇけどよ」と八幡が言ったその次の瞬間
ドコッ!という音と共に八幡の後頭部に衝撃が走り、脳が揺さぶられる
敵襲かッ?と戦慄したが、どうやら後ろで遊んでいた子供が蹴ったサッカーボールが飛んできただけらしい
しかし、突然のことで八幡は対処出来ず、体のバランスを崩してそのままティナに向かって倒れこんでしまう
八幡「いってぇ……」
八幡は頭をさすりながら片目を開けると、自分がティナに覆い被さっている事に気づく
傍から見れば、八幡がティナを押し倒しているようにも見える
八幡「ち、違うんだティナ。
これはわざとじゃ……」
ティナ「八幡さん、意外と、大胆なのですね。でも、私、八幡さんになら……」
八幡「だあぁッ!
違うっつってんだろッ」
頬を紅く染めて、うっとりした目で見てくるティナに、八幡は思わず絶叫した
「比企谷くん?」
八幡「えッ?」
そこで横から声をかけられる
その声の主を、八幡は顔を見るまでも無く分かっていた
八幡「な、ナターシャ……さん……」
ナターシャ「えっと……そろそろ時間だから迎えに来たんだけど……ゴメンね。邪魔しちゃったみたいで……」
八幡「誤解ですからッ」
この後ナターシャの誤解を解くのに多大な労力を必要としたのは言うまでもない
-
- 61 : 2014/05/07(水) 01:46:49 :
- ティナって、ブラブレのティナ?
-
- 62 : 2014/05/07(水) 02:50:23 :
- 期待
-
- 64 : 2014/05/07(水) 23:30:02 :
2
ナターシャ「さあ乗って。比企谷くん、ティナ」
八幡「うす」
ティナ「はい。ナターシャさん」
現在時刻は17時40分。出発の用意が済んだ3人は予定通り福音の修理をすべく、担当の研究所へ向かい始める
車の運転手は担当研究所の男性研究員で、その後ろの席にティナ、八幡、ナターシャの順に右から座っている
八幡「(さて、いよいよだな……)」
ここからが本当の護衛任務の開始である
八幡はより一層気を引き締めて護衛に挑む
ティナ「八幡さん。1人で抱え込まず、私にも頼って下さいね。
これでも多少は力になれるはずですから」
夜が近づいた事で、ティナの細胞一つ一つが確実に覚醒している
八幡の隣に座る彼女は昼間とは打って変わった様子で、代表候補生相応の顔つきになっていた
昼間は頼りないと感じていた八幡も、今のティナを見ているとそれが嘘のように思えてくる
八幡「……ああ、頼りにしてる」
ティナ「はい」
ティナは嬉しそうにニコリと微笑む
ナターシャ「あらあら、あなた達ってば本当に仲が良いのね」
ティナ「い、いえっ、そんなこと……」
八幡「そうですよ。別に仲が良いというワケでは…………って、どうしたんだティナ?」
ティナは突然笑顔から一転して、ムスッとした顔で八幡を見つめる
ティナ「なんでもないです」
八幡「……なんか、怒ってねぇか?」
ティナ「怒ってません」
八幡「え、いやでも……」
ティナ「怒ってませんッ」
八幡「いきなりどうしたんだよ……」
ナターシャ「(ふふ、ここでも比企谷くんは相変わらずみたいね。
あの子達が苦労するのもよく分かるわ)」
八幡「っ!?」
そこで、八幡が急に何かを感じ取ったのか、食い入るよう前方を睨みつける
-
- 65 : 2014/05/07(水) 23:36:45 :
ティナ「八幡さん、どうしたんですか?」
八幡「……分からねぇけど、嫌な感じがする」
車は赤信号に捕まり、今は停車している
いつの間にか小雨が降っており、窓から見える景色を歪ませていた
八幡「(視界が悪いな……)」
全身が異様な緊張に包まれ、早く車が発進してくれるようにと心から祈った
やがて祈りが通じたのか信号が青に変わり、車が動き出す
しかしホッとする間も無く、前方のビル屋上付近でほんの一瞬、チカッとなにかが閃いた
それがマズルフラッシュだと認識した瞬間、背筋が凍りついた
八幡は叫ぶより先にティナの頭を押さえつけ、ナターシャに覆い被さる
直後、ガラスの破砕音と甲高い急ブレーキ音が車内に響く
そのまま車体が横に滑って標識に激突。八幡は妙な浮遊間に襲われ、車内にかかるGに振り回されドアに叩きつけられる
八幡「がッ……」
肺の空気が全て吐き出され、息が止まりそうになる
八幡「(街中で狙撃ッ?)」
ティナ「八幡さん!」
すぐにハッとして八幡は、叫ぶ
八幡「ティナ!
ドライバーを連れて外に出ろ!」
八幡もドアを蹴破ると、ナターシャの手を引いて車の外に転がり出る
とにかく一刻も早く遮蔽物に隠れる必要がある
八幡「ちッ」
再びビルの屋上が光ったかと思うと、直後に爆発音が炸裂する
燃料タンクを撃ち抜いた狙撃弾が車を爆発炎上させ、物凄い勢いで熱波が八幡達に襲いかかる
ナターシャを助け起こそうとするが、逃げ惑う周囲の一般人が邪魔でうまくいかない
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- 66 : 2014/05/07(水) 23:43:10 :
八幡は奥歯を食いしばりビルを見る
まずい
八幡「来い、零式ッ」
零式を呼び出すのとほぼ同時に3度目のマズルフラッシュ
ゴオッ!というイグニッション・ブーストの音が響き、八幡の右腕部・部分展開された零式がうねりをあげる
八幡「らあぁぁぁッ」
イグニッション・ブーストで爆発的に加速された八幡の拳打が狙撃者の放った弾丸を捉える
炸裂音に似たインパクト音が街中に響き渡り、衝撃波が周囲の小石を吹き飛ばす
ねじりながら突き出された拳は、正面から激突した狙撃弾を粉々に粉砕し破壊する
本来聞こえるはずが無いが、八幡は確かに狙撃者が驚愕に息を飲む音を聞いた
今まで八幡は足や背中などの基本的な位置からしかイグニッション・ブーストを発動できなかった
しかし、つい最近他の部位からも発動する術を習得したのだ
これにより、単純な格闘技でも恐るべき威力を生み出すことが可能になった
ちなみに指導したのは束である
ティナ「無事ですか八幡さん!」
八幡「ん、あぁ」
ティナが運転手を避難させて、八幡の元へ駆け寄る
ティナ「敵は?」
八幡「……もう逃げたよ」
ハイパースコープで確認したが、狙撃ポイントには既に誰もいなかった
八幡は首を巡らせて、辺りを見る
炎は荒れ狂い、風に吹かれて舞い踊る灰
車から燃え盛る炎は全く衰える様子を見せず、黒煙を空へ吐き出し続けていた
雨脚が強くなり、八幡の髪を、頬を、身体を濡らしていく
そっと携帯に目を落とす
この携帯には束が作った特殊なアプリがインストールされている
それは、【自分を中心に半径十キロ以内でISが展開、または部分展開した時に警告音を発する】というものだ
全身が濡れるのも構わず、八幡はビルの屋上を睨みつける
距離は目算で一キロ。そして、この携帯からは警告音が聞こえなかった
それが意味するのは、敵はISの加護無しにこの距離から狙撃を成功させたという信じがたい事実だった
もし敵がISを展開した状態で戦闘になったとしたら、その射撃の技量の脅威は言わずもがなである
その悪魔のような射撃スキルは、言っては悪いがシャルロットやセシリアのそれを遥かに凌駕していた
もう一度八幡は狙撃ポイントを睨みつけた
八幡「テメェは……誰だ…………ッ!」
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- 67 : 2014/05/08(木) 19:26:01 :
◆
「ごめん、失敗した」
「失敗?
あなたが?」
電話の相手が意外そうに聞き返す
「うん」
「へぇ……珍しいこともあるのね」
「どうやら向こうは相当の手練れを護衛につけてるみたい。
とりあえず速やかに撤退するわ」
「了解」
……私の見間違いでなければ三発目の狙撃弾を護衛の1人が殴って破壊したように見えた
私の使った対戦車狙撃弾は、大砲やバルカン砲などを除けばこの世に存在する全ての銃弾の王者的な位置にあり、とてつもない運動エネルギーを持っている
それを粉砕したというの?
あの一瞬の判断でISを展開して、的確に弾丸を捉えて……
だとしたら凄まじい使い手だ。強敵といえる
狙撃者は眼下を凍った眼差しで睨んだ
「私を邪魔したあなたは…………誰?」
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- 68 : 2014/05/08(木) 19:28:37 :
fin
-
- 69 : 2014/05/08(木) 19:29:42 :
SS Noteで書くこのシリーズはここで終わりにします
続きは違うところで書くことになると思います
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- 70 : 2014/05/08(木) 19:55:29 :
- 次はどこで書くんですか?大体の候補を教えて下さい。
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- 71 : 2014/05/08(木) 21:47:02 :
- ピクシブですね
-
- 73 : 2014/05/08(木) 23:08:18 :
- URLを貼って貰えるとありがたいです
お願いします
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- 74 : 2014/05/08(木) 23:09:30 :
- この投稿は削除されました。
-
- 75 : 2014/05/08(木) 23:13:11 :
- 最後らへんってブラブレの内容?
誰っていってたやつティナだし
-
- 76 : 2014/05/08(木) 23:13:45 :
- 最後らへんってブラブレ
-
- 77 : 2014/05/08(木) 23:31:16 :
- >>73
http://touch.pixiv.net/member.php
ですよ(^ ^)
>>75
そうですよ
ブラブレの狙撃のシーンの内容を参考にしています
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- 78 : 2014/05/09(金) 16:32:04 :
- pixivでの題名教えて下さい
-
- 79 : 2014/05/10(土) 00:50:29 :
- >>78
題名はこれと同じですよ( ^ω^ )
-
- 80 : 2014/08/05(火) 10:17:36 :
- 続きオネシャス
-
- 81 : 2014/08/06(水) 13:49:45 :
- 続きまだかな
-
- 83 : 2014/09/03(水) 22:53:28 :
- 陽乃さんの作品すごく感動しちゃいました!ぜひまた書いてください!
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- 84 : 2014/12/30(火) 19:37:45 :
- これ書き終わってから活動なくなったなぁ…
-
- 86 : 2016/12/09(金) 19:06:53 :
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