このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
ミカサ「過去」~繋がり~
-
- 1 : 2016/02/28(日) 22:12:51 :
- 前作
エレン「お前、何者だ?」ミカサ「……」~秘密~
http://www.ssnote.net/archives/40880
長く間を開けてしまってすみません。ぼちぼち再開です。
-
- 5 : 2016/02/28(日) 22:48:24 :
五年前に起きた、一家心中事件。
血祭られた家は赤くなった。
ミカサ「あそこの家族は、私の従姉妹の家だった」
エレン「!」
私の従姉妹の名前はクリスタ。小さい頃から会って遊んでいた。
クリスタは容姿も綺麗で、勉強も出来て・・・完璧だった。
美しい金髪と、真っ黒な黒髪をよく比べられていたのをよく覚えている。
ミカサ「あの事件がある前日、私は彼女に呼び出された」
彼女は会ったとき泣いていた。
どうしたのか尋ねると、彼女はいきなり暴力を振るってきた。
気絶させられるぐらい、暴力を浴びた・・・らしい。
目を覚ますと、自室のベッドに寝ていて、暴力を振るわれた痕跡は残っていなかった。
-
- 6 : 2016/02/28(日) 22:53:24 :
ふと、テレビを見るとクリスタ家の事件が報道されていた。
すると、ズキズキと頭が痛くなってきて・・・
ミカサ「あの」
エレン「何だよ、続けろよ」
ミカサ「部屋を暗くして、私を一人にしてくれないだろうか」
やはりこいつはMか?エレンは本気で思った。
エレン「何の意味があるんだよ」
ミカサ「いいから。それで泣き声が聞こえたら部屋を明るくして私を見てほしい」
______覚悟は決めているから。
再び向けられた、真剣な真っ直ぐな眼差し。
いくらエレンでも、真っ直ぐなこのミカサの目には敵わなかった。
彼は部屋を暗くし、出ていった。
-
- 7 : 2016/02/29(月) 20:35:05 :
-
ミカサ「……やっぱり怖いな…」
ー五分後
グスッ……
エレン「・・・いいのか?」
ミカサ『どうぞ…っ』
エレンは部屋に入った。
彼は驚いた。今までにないぐらい目を大きく見開いて、彼女を見つめた。
エレン「おまっ……!?」
彼女の頭部には、普通、人間に在るべきではないものが見えたのだ。
うさぎの、耳のようなものが……
ミカサ「『気持ち悪い?近づきたくない?それもそうよね。私は<これ>のせいで殺された』」
エレン「・・・?」
いつもの彼女とは様子が違った。よく見れば、目の色が青色に変わっている。
エレン「誰だよ、お前!!」
ミカサ「『私はクリスタ。この子から話は聞いたようね。私はこの体に乗り移って今は活動している』」
頭が混乱した。色々なことが急に起こってゴチャゴチャしている。
ふぅ……っと、一度深呼吸をして考えを纏めた。
エレン「つまり、二重人格か?」
ミカサ「『そう。ミカサの心に黒い霧がかかったとき、私は現れる』」
-
- 8 : 2016/02/29(月) 20:39:28 :
- エレン「く、クリスタ?お前は一体何がしたいんだ?人の体を操ってまで・・・」
途端にミカサの体を操るクリスタは黙った。
前屈みに倒れ込んでいる。意識がないように見える。
事実、体を抱えてみると何も力を入れなかった。目を瞑っている。
とりあえず明日色々聞くか、と思いエレンは彼女をベッドに入れ、自分は床に寝転んだ。
-
- 12 : 2016/03/01(火) 23:10:56 :
◆◆◆
・・・?
目が覚めた。どうやら私は、あのあと気を失ったらしい。
私の中にいる、『クリスタ』は何を話したのだろう。
あの子、意外と気が強いからな。ひどいことを言ってないといいけれども。
それより、申し訳ない。私がベッドで彼が床なんて。優しい人だ、とても。
とりあえず彼をベッドに上げて、朝ごはんを作って・・・帰ろう。
どうせ、『あの姿』を見られたのだ。もう近づきたくもないだろう。
クリスタの両親・・・叔父さんと叔母さんもそれを気味悪がって心中したのだから。
さようなら、私が初めて心を開いた人。
-
- 14 : 2016/03/12(土) 16:10:23 :
- 翌朝。彼は、7時に起床した。
エレン「朝か……」
彼は一つ疑問を浮かべた。ミカサがいない。それに、自分がベッドで寝ている。
顔を洗おうと立ち上がるとテーブルには作り置きしてある朝食が目に入った。
冷めている。結構な時間が経ったのだろう。
エレン「……つーか…」
エレン「事件の結果聴いてねぇぞ………」
-
- 16 : 2016/04/10(日) 22:59:44 :
彼は支度をし、事務所へ向かった。
妙に背中の辺りが空いているような気がする。
・・・気のせいだ。そう思ってバイクで走り続けた。
事務所には、既に二人は着いていた。
エレン「おはよう」
依頼人も既に来ていた。よほど事件の結果が聴きたいのだろう。
アルミン「エレン!報告ぐらいしてよ……心配したじゃん!」
エレン「あ、ああ。悪い……」
エルヴィン「それで。妻は・・・」
エレン「あ、いや……」
ライナー「まさか、何も分からなかったのか?」
ライナーはまさかと言う表情で質問してきた。
エレン「・・・」
彼は何も言えなかった。事件の真相を知っているのはミカサだからだ。
-
- 18 : 2016/04/11(月) 00:04:26 :
- 思えば、彼女と出会ってから自分は楽をし過ぎたかもしれない。
彼女の優しさに甘えすぎていた。推理力や忍耐力にも。
エレン「……よし」
エレン「すまん!俺、行ってくる!」
アルミン「ちょっとエレン!依頼は……」
バタンッ!
事件は自分の手で掴まなければ意味なんかない。
他人(ひと)の力を借りるなんて、自分らしくない。
しかし、自分らしくないことをさせたのは、ミカサである。彼女と出会い、彼の沢山のことが変わったのだ。
エレン「……!」
彼はあることを思い付いた。
これこそ自分らしくないな、と思ったが「やるしかない」と思うのだった。
-
- 20 : 2016/04/11(月) 00:16:55 :
事務所
夕方になっても、エレンは戻って来なかった。
ライナー「あいつ……一体何をやっているんだ?」
エルヴィン「・・・あの、もうこの依頼は取り下げでいいでしょうか」
アルミン「え……」
エルヴィン「これ以上、時間が掛かるのでは仕事に影響が出るので。妻のことは、諦めます」
アルミン「……申し訳ありませんでした。お役に立てなくて」
エルヴィン「いいえ。では・・・」
バタン
ライナー「おいおい、これで本当にいいのかよ」
アルミン「エレン……」
-
- 23 : 2016/06/03(金) 19:31:21 :
- エルヴィン「(結局、探偵では役に立たなかったか……)」
エルヴィン「(しかし、妻は私に何を隠しているのだ?)」
ごちゃごちゃ考えているうちに、エルヴィンは自宅に着いた。
エルヴィン「はぁ……(鬱だ)」
ガチャ
パンッパパンッ
エルヴィン「!?」
エレン「……」ニヤ
エルヴィン「な、何故……!?」
エレン「分からねえか?俺が、ここにいる訳」ニヤニヤ
-
- 24 : 2016/06/28(火) 16:03:35 :
-
エルヴィン「妻はどこにいる」
エレン「……」ニヤニヤ
エルヴィン「まさか貴様……!」
エルヴィン「どけ」
エレン「断る」ニヤニヤ
エルヴィン「どけっ!」バキッ
エレン「うっ……」ドサァ
エルヴィン「大丈夫か!?」
「」
エルヴィン「こ、これは……?」
『お誕生日おめでとう!!』
「あ、あ、ああああああああああ////」
エルヴィン「……」ポカーン
「な、何で!?もっと遅いはずじゃあ……!まだ料理できないのに」
エルヴィン「い、いや……」
エルヴィン「あの……」
「……食べましょうか、料理はもう少しですから」
エルヴィン「あ、ああ…」
「___それで、彼にお願いしたんです。誕生日から2ヶ月経ったけど、サプライズがしたいって」
エルヴィン「じゃ、じゃあ最近出掛けていたり、電話をしてたりしたのは……」
「プレゼント、選んでました」ニコッ
エルヴィン「……!そうだ、彼は…」
玄関
カラーーン
エルヴィン「帰ったのか…」
「すごく協力してくれて……助かりましたよ。知り合いでしたか?」
エルヴィン「いや………」
-
- 27 : 2016/08/08(月) 14:32:36 :
-
エルヴィン「世の中、捨てたものじゃないな……」
「へ……!?」
エルヴィン「いや何でもない。それよりそろそろ食事を摂ろうか、サシャ」
サシャ「はいっ!」
エレン「……いってぇ」
あのエルヴィンという男、図体の通りかなりの力がある。
実力は頭だけでなく、心身も上等だったようだ。
エレン「連絡だけして帰るか…」
エレン「殴られたぐらいでこんなダメージ受けるなんてな……俺も貧弱だな」
__________だから彼女も、逃げたのか?
エレン「……はははっ」
-
- 28 : 2016/08/08(月) 14:58:59 :
アルミン「つまり、まとめると・・・」
・いつも労働で忙しい夫の為に妻がサプライズ
・夫が妻の様子に気付き浮気を疑う
・浮気を疑れてることに妻が気付く
→わざと嫉妬させる
・真相が分からなかったエレンが聞き込み→サプライズ手伝った
アルミン「どうなるかと思ったよ。……にしても、最近のエレン変じゃない?」
ライナー「そうか?」
アルミン「麻薬を疑ったのに外れてさ……いつものエレンならこんなミスしない」
ライナー「う~む」
アルミン「それにさっきの電話……声がキツそうだった」
ライナー「そういやミカちゃん来てないよな」
アルミン「うげ、ミカちゃんとか呼んでるの」
ライナー「本人に許可は取った」
アルミン「あっそ。で?彼女が?」
ライナー「連絡せずに来ないしエレンもそのことについては何も触れないだろう。何か二人にあったのかな~とか」
アルミン「エレンが…か」
アルミン「エレン、恋でもしてるのかな」
ライナー「かもなww」
アルミン「僕の知る限りエレンが恋をしているのなら、これが初めて」
ライナー「ってことは初恋か!?」
アルミン「昔はエレンに相談したけど今度は僕が受ける番だ!」
ライナー「彼女もいないやつが?www」
アルミン「……」ジト
ライナー「な、なんだよ……」
-
- 29 : 2016/08/08(月) 15:03:35 :
アルミン「僕、彼女いるし」
ライナー「」
アルミン「アメリカに留学中」
ライナー「なのに……合コンあんなにテンションMAXだったのか?」
アルミン「うっさい」
ピコン♪
アルミン「あ!スミスさんからだ」
本当にありがとうございました。お金は振り込んでおきました。
¥2000万円
アルミン「」
ライナー「」
アルミン「さ、流石お金持ち……」
-
- 33 : 2016/09/17(土) 09:54:23 :
◆◆◆
彼は、怒っただろうか。
真実を明かすという約束をしたのに、消えてしまって。
あ・・・・・・
風が、気持ちいい。
ここは、お気に入りの場所にしよう。
翌日
アルミン「あれ、エレンが連絡してる」
ライナー「珍しいないつもは通話なのに」
アルミン「ん~」ドレドレ
アルミン「え、うそ休むって!」
ライナー「!?、本当に珍しい」
アルミン「学校一回も休んだことなかったエレンが……」
ライナー「絶対何かあったな」
アルミン「だね」
-
- 34 : 2016/09/17(土) 10:12:50 :
エレン「二人には悪いことしたな…」
現在、エレン・イェーガーは自宅から数時間掛かる田舎へ向かっていた。
彼は一度も田舎の景色を見たことがない。密かに楽しみにしている。
ただ、観光をしにわざわざ田舎に行くわけではない。
先日、依頼を受けた男性が田舎で町おこしの手伝いに行ったところ、ミカサを見たと言うのだ。
彼は、何故自分が彼女を追い続けているのかよくわからない。
でも、やらなくてはいけないと本能が言っている。そんな感じだ。
バイクでは気が滅入るので、バスや電車を駆使して向かっている。
朝4時に起きたかいがあった。そろそろ着きそうだ。
「次は○○~○○~。お忘れ物のないようにご注意下さい」
プシュー
エレン「ここか」
駅は見事に無人駅。人の代わりのように猫が擦り寄ってきた。
エレン「可愛いな」
彼は背負っているリュックサックからスナック菓子を取りだし、猫に与えた。
よほど腹が減っていたのだろう。猫はすぐさま頬張った。
しばらく眺めたのち、彼は駅を後にした。
-
- 35 : 2016/09/17(土) 10:32:07 :
そこは、今まで住んでいた世界とは全く違った。
辺り一面がほとんど田んぼで、家は遠いところにポツポツとある。
地図を見てみると、コンビニは辛うじて一軒ある。
こんなところに、一体彼女はいるのだろうか。
エレンは不安を覚える。
たった1つのコンビニに立ち寄ってみた。一軒だけなら、必ず彼女が来ていると思ったからだ。
エレン「あの……」
「はい、どうしましたか?」
エレン「ここに二十歳くらいで黒い髪の女性、見ませんでしたか?背は俺とほぼ同じで……」
「はい、来ましたよ」
エレン「いつ頃ですか!?」
「え……つい、先ほど」
エレン「!!、ありがとうございました」
ついさっきなら、まだこの近くにいるはずだ・・・
◆◆◆
はぁ…はぁ……
どうして?なぜあの人がここにいるの……?
彼の家からここまではとてつもなく遠いはずなのに。
クリスタ『会いにいけば?』
!? クリスタ、私の意識の中にも……
クリスタ『会いに行けばいいじゃない。嬉しいでしょ、会えて』
ミカサ「そんなの、できるわけ……」
クリスタ『なら、私があんたを則って会いに行こうか』
ミカサ「!、やめて…」
クリスタ『丁度あいつに話すことあるんだよね』
ミカサ「でも…」
クリスタ『じゃあウサミミ見られたくないならあんたが行ってよ。じゃないと……わかってるよね?』
ミカサ「……っ」
-
- 44 : 2017/07/28(金) 19:04:10 :
- エレン「(いるはずだ…絶対に)」
エレンは走る。
彼女を求めて。
誰かを求めて一生懸命になるのは初めてだった。
この気持ちは何なんだ?
分からないまま、ただひたすら彼女を求めて走っていた。
ミカサ「……」
エレン「……おい!」
ミカサ「……何?」
エレン「何で……っ、勝手にいなくなったんだよ…」
ミカサ「…あんな、姿見られて今まで通り接せる?」
ミカサ「私は、嫌だ。拒否されるなんて……悲しい、耐えられない」
-
- 45 : 2017/07/28(金) 19:25:53 :
ミカサ「みんな、みんなあの姿を怖がるんだ」
ミカサ「お酒を飲んで酔って、あの姿になって……翌日からみんな私を避けるんだ」
ミカサ「汚いものを見るような目で見て、避けていくんだ」ポロポロ
エレン「俺は…俺はそんな奴らとは違う!」
エレン「お前の姿見ても、逃げねぇよ」
ミカサ「嘘、嘘ばっかり」ポロポロ
エレン「何で避けなきゃいけないんだよ?どんな姿でもお前はお前。ミカサ・アッカーマンだろ?」
ミカサ「……!」ポロポロ
-
- 46 : 2017/07/28(金) 19:53:15 :
- ◆◆◆◆◆
初めてだった。
あの姿を見られて、逃げなかった人。
泣く予定のなかった涙が、どんどんどんどん溢れてくる。
ミカサ「どうして、あなたは……?」
エレン「どうしてだろうな、俺にもわからねぇ。でも、お前の悲しむ顔とかさ、泣いてる顔みたくねぇ」
エレン「もしかしたら俺、お前のこと好きなのかもしれないな」
ミカサ「……!」
嘘……?
ミカサ「こんな時にそんな冗談はやめてほしい」グスッ
エレン「冗談じゃねぇよ」
エレン「俺、女なんか大嫌いだった。どんな女も、見ただけで気持ち悪くなるぐらい。でも、お前は違う。どんな姿でも、嫌になんかならない」
エレン「むしろ、もっと一緒に居たいって思う」
ミカサ「……!!」
貴方なら……クリスタを何とかしてくれる?
私を、守ってくれる……?
ミカサ「……ありがとう」
それから私は、意識を失った。
-
- 47 : 2017/07/29(土) 14:08:47 :
- ミカサが意識をなくし、倒れた。
エレン「おい!!」
幸いにも、フラッとゆっくり倒れたので、支えることができた。
彼女の体を支え、地面に倒れるのを防いだ。
エレン「見た目より細いな……」
彼女の細い体を体全体で感じた。
こんなに細くて、こんなに頼りない華奢な身体。これで、色々なことを沢山抱えてきたのだ。
たった1人で……
エレン「お前、初めて会った日、酒飲めねぇって言ってたな」
エレン「あの耳のことで、ずっと怯えてきたんだな……」
ミカサ「……」
俺が、俺が守ってやらないと。
彼女を抱きしめて、温かい気持ちになった。
-
- 48 : 2017/07/29(土) 14:21:27 :
彼女を連れて、探偵事務所きに帰ると、アルミンとライナーは驚いた。
ライナー「お、おいどうしたんだよ」
エレン「ちょっと色々あってな」
ライナー「まさかお前、ヤッたのか?ヤッたんだな!?」
エレン「は?ヤってねえよ」
アルミン「そういうことはさておき、早くソファーに寝かせてあげなきゃ。ライナー!どいて!」
ライナー「す、すまん」
ライナーがどき、広いスペースができたので、そこに彼女を寝かせた。
ゆっくりと、慎重に寝かせた。
アルミン「今コーヒー淹れるからちょっと待ってて」
エレン「ああ、さんきゅ」
ライナー「それにしてもびっくりした」
エレン「まあ色々あってな」
ライナー「ミカりん最近顔色悪かったもんな」
エレン「……ミカりん?」イラッ
ライナー「フ、いいだろ。俺だけ呼んでるんだ」
エレン「気持ちわり」
ライナー「」
アルミン「お待たせ〜。ってライナー死んでるww」
エレン「勝手に死にやがった」
ライナー「おい、勝手に人を殺すなよ」
アルミン「……で?一体何があったの?」
ライナー「俺はスルーかよ」ボソッ
-
- 50 : 2017/07/29(土) 14:56:30 :
エレン「ああ、実はな……」
エレンはミカサのクリスタ時のことは伏せて、アルミンとライナーに説明した。
もちろん、自分が恐らく彼女のことを想っているということも。
アルミン「そっか……色々辛いことがあったんだね」
ライナー「泣けるぜ……ぅぅ」
アルミン「ライナーが泣いても気持ち悪いだけだよ」
エレン「同感」
ライナー「お前たち俺の扱い酷すぎるよな???」
エレン「ていうかもう23時だろ?帰らなくていいのか?」
アルミン「んーそうだね。そろそろ帰ろうかな」
エレン「悪いな、俺のためにこんな時間まで」
ライナー「いいってことよ。じゃあな、また明日」
アルミン「おやすみー」
エレン「……じゃあな」
バタン
エレン「……」
ガチャ
ライナー「あ、寝てるからって襲うなよ?」
エレン「襲わねえよとっとと帰れ」
ライナー「あいよー」
バタン
エレン「……」
ミカサ「……」
エレン「……俺も寝るかな」
イスに腰掛けて、すぐに眠りに入るのだった。
-
- 51 : 2017/07/29(土) 18:01:04 :
◆◆◆◆◆
気がつくと、見覚えのある場所にいた。
私は……彼に運ばれてきたのか。
携帯で現在の時刻を確認すると朝の6時を指していた。
意識を失う前、彼が言ったことが頭を回る。
エレン『もしかしたら俺、お前のこと好きなのかもしれないな』
ミカサ「〜〜〜〜っ//」
本当なのだろうか。あの姿を見ても気持ち悪くならないのか。
と、言うかあれは告白なのだろうか?
ミカサ「……」チラ
エレン「zzz……」
先に、告白(?)したのは私なのに、断ったのに、彼から想いを伝えてきた。
喜ばしいのだが、複雑だ。
でも、正直嬉しい。
私の、あんな姿を見ても逃げなかった。
ありのままの私を受け入れてくれた。
こんな人、初めてだった。
-
- 52 : 2017/07/29(土) 21:36:02 :
もし、もしあれが告白だったのなら。
どうか、深い関係になりたい。
この人と、もっと深い関係になりたい。
私が求めていた、大切な大切な存在。
お願い、どうか。
私と……
ミカサ「……」グスッ
いけない、涙が出てきてしまった。
こんなの見られたら……
ミカサ「だめ、泣いちゃだめ……」ポロポロ
泣いちゃだめ。
口に出しても堪えようとしてるのに、涙が止まらない。
神様、ありがとう。
こんな素敵な人に出会わせてくれて。
本当にありがとう。
ミカサ「うっ……うぇぇぇん……」ポロポロ
涙は嬉しくて嬉しくて、次から次へと溢れてくる。
-
- 53 : 2017/07/29(土) 21:45:48 :
エレン「ん……?」
目が覚めると、目の前で彼女が涙を流していた。
ミカサ「ヒック……グスッ……」ポロポロ
エレン「!?」
エレン「お、おい。大丈夫か?」
ミカサ「……!!ごめんなさい、起こしてしまった」グスッ
エレン「いや、お前のせいじゃないけど…」
エレン「どうした?急に連れてこられてびっくりしたか?」
ミカサ「違う、違うの」ポロポロ
自分が問いかけると更に涙を流した彼女に、エレンは驚いた。
エレン「待て、とりあえず落ち着け」
戸惑いながらも、ミカサの背中をさすり、泣き止むのを待った。
-
- 54 : 2017/07/29(土) 21:57:48 :
- 毛布にうずくまって、落ち着きを取り戻しているミカサに、エレンはホットミルクを淹れた。
エレン「ほら、飲めよ」
ミカサ「ありがとう……」
鼻を真っ赤にしてホットミルクをすする。
ミカサ「美味しい、ありがとう」
エレン「落ち着いたな。良かった」
ミカサ「うん……」
エレン「それで……なんで泣いてたんだ?俺のせいだったらごめん」
ミカサ「……ううん、違うの」
ミカサ「貴方がね、貴方だけが唯一私を受け入れてくれたの」
エレン「……うん」
ミカサ「それでね、昨日多分だけど好きって言ってくれたから……とても嬉しくて……」
エレン「……ははははは!!!」
ミカサ「!?」
エレン「ははは!!そんなことで泣いてたのかよ」
ミカサ「だって……」
ミカサは俯いた。
エレン「悪い、笑って。バカにしたわけじゃないんだ」
ミカサ「……うん」
エレン「ただ、今のこの時代でそんなこと思ってる奴がいるんだなって思うとおかしくてよ」
ミカサ「私は、至って真面目」
エレン「わかってる。」
エレンは急に、真剣な目になった。
その目に、思わず体が動かなくなった。
エレン「なあ」
エレン「俺と、付き合ってください。」
-
- 55 : 2017/07/29(土) 22:04:07 :
- ミカサ「!!」
ミカサは思わず目を見開いた。
彼が、エレンが、正式に告白してくれた。
ミカサ「ぅぅぅ……」グスッ
エレン「待て。泣くのは返事を返してからにしてくれよ」
ミカサ「こちらこそ……」
ミカサ「こちらこそ、よろしくお願いします……」ポロポロ
エレン「……ありがとう」
エレン「ほら、思う存分泣けよ」
エレンが言うが否、ミカサは彼の胸に飛び込んだ。
ミカサ「ありがとう……ありがとう」ポロポロ
エレン「はは……俺にまさか恋人なんかできるなんてな」
運命が変わった。
彼女との出会いで。
良かった、出会えてよかった。
そう思い、優しく背中をさするのだった。
-
- 56 : 2017/07/30(日) 16:56:31 :
探偵事務所外
「うわぁぁぁん……」
アルミン「僕ら、いつ入っていいんだろ?」
ライナー「さあ……空気読んで、後からまた来るか」
アルミン「そうだね。じゃあコンビニで時間潰す?」
ライナー「いや、ちょっと先のドラッグストア寄っていいか?丁度、買いたいものがあってな」
アルミン「いいよ。じゃ、行こう」
エレンとミカサのことを考え、2人は別の場所へ移った。
-
- 57 : 2017/07/30(日) 17:11:26 :
ドラッグストア
アルミン「それにしても、あの2人がくっついたこと喜ばしいけど……」
アルミン「うちの事務所、声筒抜けだね」
ライナー「そこ気にするんだな。祝ってやれよ」
アルミン「……嬉しいけどね!」
ライナー「ていうかアルミン彼女いるんだろ?どんな奴だよ」
アルミン「写真あるけど見る?」
ライナー「見る。可愛いらしいしな」
アルミン「ちょっと待ってね」
ライナー「お、髭剃りあった……」
アルミン「この子だよ」つスマホ
ライナー「!!!」
アルミン「ね?可愛いでしょ?」
ライナー「あ、アニじゃないか……!」
アルミン「え、ライナー知り合いなの?」
ライナー「知り合いも何も幼馴染だ」
アルミン「……そういえば、アニがゴリラとノッポの幼馴染がいるって聞いたことがある気がする」
ライナー「ゴリラは多分俺だな。ノッポは俺の親友だ」
アルミン「へぇー僕ら意外な繋がりがあったんだね」
ライナー「世の中狭いよなー」
-
- 58 : 2017/08/03(木) 18:32:05 :
探偵事務所
エレンに優しくさすってくれたおかげで、ミカサはすっかり涙が止まった。
涙が止まり、我に返ると先ほどまでびょうびよう泣いてたことが恥ずかしく思えてきた。
ミカサ「ごめんなさい。もう大丈夫」
エレン「本当か?無理してないよな?」
ミカサ「本当に大丈夫。ありがとう」
エレン「目の周り真っ赤だから冷やすぞ。あいつらが来たら俺が何かしたと思われるだろうな」
ミカサ「うん……」
水道でタオルを濡らし、ミカサの目にそっと当てがう。
五分ほど繰り返していくと、目の腫れは徐々にひいていった。
-
- 59 : 2017/08/14(月) 17:02:21 :
エレン「よし、こんだけ腫れ引いたら大丈夫だろ」
ミカサ「ありがとう」
エレン「ん」
ミカサ「それにしても、2人とも遅い……」
エレン「あいつらサボりか…」
バンッッ!!
アルミン「サボりとは人聞きの悪い!」
ライナー「空気を読んだやったのにもう許さんぞ!」
エレン「お前らいたのか……」
アルミン「ていうかね?この探偵事務所声筒抜けだからね!?ほんと今朝の話全部聞こえてたから!」
ミカサ「き、聞こえてたの……?」
ライナー「ああ!ここなら盗聴器使わなくてもいいくらいにな」
エレン「設備を強化する必要があるな」
アルミン「そういうことじゃなくて!僕らに何か言うことないの?」
エレン「……」
数秒の沈黙が流れる。
エレン「……ミカサと、付き合うことになった」
アルミン「……そっか!うんうん、お似合いだよ」
ライナー「俺も彼女欲しいな…」
アルミン「ふっ」
ライナー「……今笑っただろ」
アルミン「ううん」
ライナー「いーや笑った!この野郎……!」
ミカサ「わ、私、帳簿の整理してきます……//」
恥ずかしさに耐えられなくなり、ミカサは席を外した。
-
- 60 : 2017/08/26(土) 21:49:45 :
- アルミン「ほら、ライナーがムキになるから彼女にげちゃったじゃないか」
ライナー「俺だけのせいか……?」
アルミン「ムキムキがムキになる……ププッ」
エレン「くだらねえことやってないで仕事はじめるぞ」
アルミン「ムキムキ……wwあ、仕事ね、りょーかい」
ライナー「腑に落ちないな……」
3人はこの間解決した、スミスの件についてレポートを書き始めた。
依頼が解決するといつも数枚の紙にまとめている。
アルミン「あ、そうそう」
ライナー「ん?なんだ?」
-
- 61 : 2017/08/26(土) 22:07:43 :
- アルミン「この間のスミスさんの解決料、2000万はいったんだよね」
エレン「……そんなにか」
アルミン「うん。僕電話でこんなに頂けないって言ったんだけど、どうしても受け取ってほしいって」
エレン「そうか…」
アルミン「1000万はこの事務所のリフォーム代にしたいんだけどいいかな?ほら、筒抜けだし声」
ライナー「そうだな、盗聴器なんか仕掛けなくてもいいぐらいひどいもんな」
エレン「……お前ら、地味にあおってるだろ」
アルミン「あは☆バレた?」
ライナー「流石鋭いな」
エレン「殺す」
エレンはアルミンに往復ビンタを、ライナーにはアッパーを3発喰らわせた。
アルミン「ひ、ひどいよ……」
ライナー「……死ぬかと思った…」
エレン「二度と俺を煽らないことだな」
アルライ「「はーい」」
アルミン「誰が守るかってんだ……」ボソ
エレン「なんか言ったか」
アルミン「ううん、何もー?」ニコニコ
-
- 62 : 2017/08/31(木) 18:34:00 :
エレン「……で、いつリフォームするんだ」
アルミン「んー、来週とか?」
ライナー「そんなに早くできるのか?」
アルミン「僕の知り合いにやってくれる人が心当たりあるよ。腕はいいんだけど、何せ小さな会社だから中々仕事が入らないらしい」
ライナー「そうか、俺は来週でもいいぞ」
エレン「同意」
アルミン「じゃあ早速アポ取ってくるー♪」
ライナー「ミカちゃんにも聞いた方が良いんじゃないか?」
エレン「……ああ」
スッと立ち上がり、ミカサのいる隣の部屋へ向かった。
エレン「おい」
ミカサ「?」
エレン「来週、ここリフォームするけどいいよな」
ミカサ「ええ、大丈夫」
エレン「了解。帳簿どうなった?」
ミカサ「今、整理終わった」
エレン「そうか」
エレン「……」
ミカサ「……」
何となく、先ほどの出来事が脳裏に浮かんでくる。会話が途切れてしまった。
ライナー「おーい、2人とも人生ゲームやらねえか?」
エレン「やる」
ミカサ「あ、私も……」
ライナー「そうか、じゃこっち来いよ」
ライナーのおかげで、少し安心した2人だった。
-
- 63 : 2017/09/16(土) 13:46:55 :
______________________________
数時間後…
アルミン「結構白熱したねー」
アルミン「それにしても……ライナー…」
エレン「相変わらずクソ弱いな」
ライナー「うるせぇぇ!くそ…」
アルミン「まさか初心者のミカサちゃんにも勝てないとはねw」
ミカサ「……て、手加減してくれたんですよね?」
ライナー「……!!そうだ、そうさ、俺は今回特別に手加減しただけだ」
エレン「その割には本気で悔しがっていたけどな」
アルミン「ほんとほんと」
この後、エレンとアルミンの2人は30分ほどライナーを煽り続けていた。
ライナー「おいおい……そろそろ勘弁してくれよ」
アルミン「ま、これぐらいで許してあげるよ」
ライナー「いや、俺これ怒ってもいいレベルだと思うんだが」
エレン「腹減ったな」
アルミン「僕もー」
ライナー「無視かよ…」
アルミン「出前取る?」
エレン「ああ…」
-
- 64 : 2017/09/16(土) 14:13:50 :
ライナー「あれ?ミカちゃんどこいった?」
アルミン「ああ、ソファーに座ってボーッとしてるよ」
ミカサ「……」ボー
アルミン「あれでエレンが隣に行ったらどうなるかな。行ってみてよ」
エレン「出前取っとけよ」
エレンは彼女の隣にそっと腰掛けた。
彼女は、窓の外の景色を眺めているようだった。相当集中しているのか、彼の存在に気づくのに時間が掛かった。
ミカサ「……はっ!?」
エレン「やっと気づいたかよ。ずっとその状態だったぞ」
ミカサ「え、え……いつから隣に?」
エレン「結構前から」
ミカサ「何だか恥ずかしい……」
エレン「何見てたんだ?」
ミカサ「外の、木。カラスが巣を作ってたから、気になって見入ってて」
エレン「それでか集中してたんだな」
お昼を食べ、営業時間が過ぎても依頼は来なかった。
いつものことだったので、いつも通り解散した。
アルミン「じゃ。また明日ー!」
ライナー「じゃあなー」
エレン「ん」
ミカサ「……」ペコリ
アルミンとライナーは、先に帰ったので2人きりになった。
エレン「どこ方面だ、家。送る」
ミカサ「いや……あの…」
エレン「どうかしたのか」
ミカサ「じ、実は……」
-
- 65 : 2017/09/16(土) 14:26:40 :
ミカサ「あの、この前の合コンで来なかった2人、バイトの同僚で……」
ミカサ「そのバイト辞めたから給料支払われないって連絡きて……」
ミカサ「大家さんに家賃支払えないって言ったら追い出されて…」
エレン「はあ?そのバイト先、訴えろよ」
ミカサ「それが無理なので」
エレン「なんでだよ」
ミカサ「話したくないけど、色々あって」
エレン「じゃあ大家は?そんな一回ぐらいで追い出すやついるかよ」
ミカサ「アパートを借りる時、1日でも遅れたら追い出すって契約だった。厳格な方だったから」
エレン「…てことはつまり」
エレン「今、住むとこないのか」
ミカサ「え、ええ……」
彼女はエレンから目を逸らした。伏し目がちに、頷いた。
-
- 66 : 2017/09/16(土) 14:33:15 :
ミカサ「あの、だから送らなくても大丈夫……」
エレン「じゃあ、俺のところまた来いよ」
ミカサ「……え?」
エレン「住むとこないんだろ?」
エレン「来いよ」
ミカサ「いや、でも……」
エレン「今更遠慮してんなよ。前の方がもっと無礼だったからな」
ミカサ「……」
エレン「来いよ、な?」
最終的に柔らかい口調で訪ねた。再び彼と目を合わせると優しい目をしていた。
ミカサ「じゃあ……行く」
エレン「よし、じゃあ帰るぞ」
2人は、肩を並べて歩き始めた。
-
- 67 : 2017/09/16(土) 17:09:43 :
エレン「悪い、昨日タクシーで来たから帰りは歩きだ」
ミカサ「いえ、健康の為にもたまにはいいと思う」
エレン「寒かったら言えよ。俺の貸すから」
ミカサ「ありがとう、今は大丈夫」
エレン「……もうすぐ、クリスマスだな」
ミカサ「え?」
エレン「いや、もうすぐクリスマス……」
ミカサ「そうなんだ……」
クリスマス。
クリスタの、家族が一家心中した日。
彼女が、1番憂鬱な日。
エレン「クリスマス、出かけるか?」
ミカサ「え!?」
エレン「そんな驚くなよ。どっか遊びに行ったら気も晴れるだろ」
エレン「世間が楽しい顔してるのに、お前だけ不安な顔してるのなんておかしいだろ」
ミカサ「……私、大丈夫かもしれない」
ミカサ「いつも、クリスマスが近づいて来たらすごく体調が悪くなってたのに……今年は何だか…」
エレン「……そうか、良かったな」
ミカサ「クリスマス、私と出かけてくれる?」
エレン「!」
エレンは少し驚いた。
今年は大丈夫という彼女の言動から、出かけないのかと思ったからだ。
エレン「ああ、楽しみにしとけ」
思わず、笑顔が綻んでしまうエレンなのであった。
-
- 68 : 2017/09/16(土) 17:38:51 :
- ミカサ「あの、私、今年のクリスマスが大丈夫なのあなたのおかげかもしれない」
エレン「俺?」
ミカサ「ええ、あなたと出会えてから……色々変わることができたから」
ミカサ「本当に、ありがとう」
面と向かってお礼を言われるのは、少し恥ずかしかった。
しかし、愛しい愛しい彼女に言われると、温かい気持ちになれるのであった。
エレン「お前が、そうだったらいいけど」
ミカサ「うん、いい」
ミカサは両手を口元に持ってきて息をはいた。
エレン「寒くなってきたか?」
ミカサ「いえ、手先が少し冷えてきただけ」
エレン「……」
エレンは、黙って手を差し出した。
ミカサ「?」
エレン「手、繋げよ。寒いだろ」
ミカサ「……!い、いえ…でも……」
エレン「いいからほら」
エレンは強引に彼女の手を取った。
氷に触ったのかと錯覚するほど、彼女の手は冷たかった。
エレン「寒いじゃねえか。我慢するな」
ミカサ「……はーい」
幸せを、精一杯噛みしめるミカサなのだった。
-
- 69 : 2017/11/03(金) 00:57:39 :
エレン「……にしても、お前ん家の家具とか取りに行かねぇとな」
ミカサ「大家さんあと3日で勝手に処分するって言ってたから明日、私お仕事休んで取りに行ってもいい?」
エレン「1人でか?」
ミカサ「ええ」
エレン「あほ。時間どれだけかかると思うんだよ」
エレン「それくらい、俺たち男どもに任せろ」
ミカサ「で、でもお仕事が……」
エレン「自営業なんだから休みなんて勝手だ」
ミカサ「しかし……」
エレン「甘えてみろよ、お言葉に」
ミカサ「……」
ミカサ「わかった、そうする」
エレン「それでいい」
ミカサ「……ありがとう」
エレン「どーいたしまして」
握りしめた手を、離すことなく家に辿り着いた2人であった。
-
- 70 : 2017/11/03(金) 01:07:52 :
エレンの自宅に帰ると、ミカサは急に床に倒れ込んだ。
エレン「!、大丈夫か!?」
ミカサ「…大丈夫。ちょっと、疲れただけ」
エレン「悪い、タクシーにすれば良かったな。気が回らなかった」
ミカサ「いいえ、大丈夫だから」
エレン「風呂、沸かしてくる。ベッドにでも横になってろ」
ベッドに横たわると、急に頭が痛み出した。
クリスタ『ミカサ……?あんた調子に乗ってないよね?』
ミカサ「クリスタ…!」
クリスタ『まだ幸せになれたなんて思って貰ったら困るよ?私の存在わかってるの?』
クリスタ『あんたを苦しめるぐらい簡単にできるんだから』
ミカサ「やめて……。お願いだから」
クリスタ『まだまだだよ。まだ、私はあなたの中に居続けるよ』
クリスタ『ずっとね』
ミカサ「…っ!くっ……!」
エレン「……!おい、大丈夫か?」
ミカサ「…え?」
エレン「顔、真っ赤だし息が上がってるぞ」
ミカサ「あ……」
ハァッ、ハァ……
ミカサ「体力がないだけだから。大丈夫」
エレン「絶対、大丈夫じゃないだろ」
エレン「なんで本当のこと言わないんだよ」
ミカサ「え…」
エレン「お前、俺がいるんだから少しは頼れよな」
-
- 71 : 2017/11/03(金) 01:18:46 :
-
エレン「まぁ、俺が頼りないってんなら話は別だけどな」
ミカサ「そんなこと……っ」
エレン「ないんだろ?だったら俺としては素直に助けを求めて欲しいところだ」
ミカサ「……」
エレン「晩飯でも作るかな」
ミカサ「助けて……」
エレン「!」
ミカサ「苦しいし、辛いよ」
ミカサ「さっきまであんなに幸せだったのにね、なんでだろうね」
ミカサ「私、何なんだろう……」
エレン「よく言えたな。」
優しく、ミカサの頭を撫でる。
エレン「ちょっと耳塞いどけ」
ミカサ「へ……?」
エレン「いいから」
ミカサ「わかった」
彼女はエレンに言われるがまま、耳を両手で塞いだ。
エレン「おい!クリスタぁ!!」
彼は全力の声で、クリスタを呼び出した。
ミカサ「『何よ』」
エレン「お前なんだろ?こいつをこんな状態にしてるの」
ミカサ「『は?何か証拠でもあるの?意味わかんない』」
エレン「証拠なんかねぇよ、でもわかるに決まってるだろ」
エレン「やめろ」
ミカサ「『は、それは私の気分次第だね』」
ミカサ「『あんたには、関係ない』」
エレン「関係なくない。あるんだ。だからこうして呼び出しているんだ」
ミカサ「『……くだらな』」
クリスタの人格は消え、ミカサは自分の意識を取り戻した。
-
- 72 : 2017/11/03(金) 01:23:00 :
- ミカサ「今、クリスタが……」
エレン「体、軽くなってないか?」
ミカサ「なってる…」
エレン「……俺あいつが悪い奴とは思えないんだ」
エレン「ミカサに乗っ取るのも、何か意味があるかもしれない」
ミカサ「うん…」
エレン「これからも、クリスタが何かしようとしてると思った時は俺に言え」
ミカサ「わかった」
エレン「はっきり言っておく。俺は我慢されるのが嫌いだ」
エレン「やめてくれ」
ミカサ「うん……」
キツい言い方ではあったが、彼の言葉には優しさがあった。
ミカサはそれを感じ取り、素直に頷いた。
-
- 73 : 2017/11/03(金) 18:13:04 :
- 翌日、ミカサの住んでいたアパートに家具を取りに行った。
アルミンとライナーには昨日から連絡しておいた。
2人とも快く引き受け、集合時間の15分前には全員が集まった。
ミカサ「2人とも……私のためにありがとう」
アルミン「どーせ依頼も来なくて暇だしいいさ。僕らも頼られて嬉しいよ。ね、ライナー」
ライナー「ああ!力仕事なら俺に任せとけ」
エレン「早速取り掛かるぞ。早く済ませたい」
ミカサ「一階だから、楽だと思う」
ミカサの部屋には必要最低限の物しかなく、ライナー1人であっという間に運び出してしまった。
エレン「俺の部屋狭いし、実家の空いてる部屋に置いてていいか?」
ミカサ「し、しかし夜はどうやって寝るの?昨日はあなたが下で寝てくれたけどこれからは申し訳ない…」
エレン「?、一緒に寝ればいいだろ。2人ぐらい寝れるだろ」
ミカサ「え……」//
アルミン「エレン…男友達じゃないんだから」
エレン「当たり前だ。女なんだから」
ライナー「いやいや……だったら分かるだろう」
エレン「は?何言ってんだよ。意味わからん」
今まで交際したことがなかったエレンは、女性との付き合いをよく理解していなかった。
男も女も、皆同じだと考えているのである。
アルミン「ハァ……。エレン、ちょっとこっち来て」
エレン「何だよ」
アルミン「ミカサちゃん、悪いけどそこのゴリラとあっちのカフェで待っててくれる?本当に悪いんだけど」
ライナー「悪いけど使いすぎだろ!」
ミカサ「あ……はい」
-
- 74 : 2017/11/04(土) 00:05:01 :
エレン「んで、話って何だ」
アルミン「エレン、ミカサちゃんは君の彼女さんなんだよ?」
エレン「んなもんわかってる」
アルミン「しかも、まだ付き合いたてだよ。一週間も経ってない」
アルミン「いきなり一緒に寝るだなんて……動揺するに決まってるだろ?」
エレン「……そういうものか」
アルミン「当たり前だろ!男性は女性に出来るだけ気を配ってあげなきゃ。まぁエレンは今まで恋愛に興味なかったし仕方はないんだけど……」
アルミン「ちゃんとミカサちゃんの、相手の気持ちを確認してから物事は決めよ?同棲なんて2人とも始めてなんだし」
エレン「……わかった」
アルミン「でも、君がミカサちゃんに何かしてあげたいと思ってる気持ちは感じ取れるよ。こんなに悩んでるエレンを僕が見たのは久々だよ」
エレン「まあな…」
アルミン「そう気を落とさないで。これから大事にしていけば良いんだから」
アルミン「偉そうなこと言ってごめんよ。さ、2人のところへ戻ろうか」
エレン「……アルミン」
アルミン「ん?」
エレン「助かった。ありがとう」
アルミン「!」
アルミン「どういたしまして!」ニコ
ミカサとライナーが待つカフェに行くと、ミカサはレモンティーを飲み、ライナーはバナナクレープを食べていた。
アルミン「うわ…やっぱゴリラだねさすがだよ」
ライナー「なっ……良いだろ別に!」
ミカサ「私が食べたいと思って頼んだけど……生クリーム苦手なの忘れてて、食べてくれたの」
エレン「……は?てめぇミカサと間接キスしてんのか?」
ライナー「フゴォッ!!?してない!断じてしていない!」
エレン「本当だろうな?」
ライナー「本当だ!ミカりんが一口食べた後、すぐに別のスプーンと交換した」
アルミン「…そのミカりんっていうのやめてくれる?殺意が湧いてくる」
ライナー「じゃ、じゃあ何と呼べば……!?」
エレン「普通にミカサでいいだろ。な」
ミカサ「ええ」
ライナー「んじゃミカサで!」
アルミン「僕もそう呼ぶよ。ミカサも僕とライナーを普通に呼んでよ。気、使わなくていいからさ」
ミカサ「わ、わかった」
-
- 75 : 2017/11/04(土) 00:13:15 :
- エレン「ミカサ、ちょっとこい」
ミカサ「え?」
エレン「来い。話がある」
アルミン「じゃあ僕らは先に事務所に戻ってとくよ」
エレン「ああ、頼んだ」
ミカサ「話って……何?」
エレン「その……さっきは悪かった。いきなり一緒に寝るとか言って」
エレン「あの件は、お前が嫌だったら別に他の案を考えるけど…」
ミカサ「別に、嫌じゃない」
エレン「え」
ミカサ「さっきは動揺しただけで……特に嫌だとかはない」
エレン「じゃあ……いいのか」
ミカサ「大丈夫。寒い時とか、温まる」
エレン「なら良かったんだ」
ミカサ「話って、そのこと?」
エレン「ああ」
ミカサ「それでは帰ろう。家具とか運ばなきゃ」
-
- 76 : 2017/11/04(土) 18:36:17 :
自宅へ戻ると、引っ越し業者が丁度来たところだった。
エレン「荷物が少なくて助かったな」
ミカサ「余計なものを買うお金がなかったから…」
エレン「!」
彼はすっかり忘れかけていたが、ミカサは親戚を亡くしているのだ。
いつ、天涯孤独の身になったのかはわからないが、きっとすごく苦労したに違いない。
美しい美貌で意識していなかったが、彼女はいつも化粧をしていなかった。
自分の生活だけで、ギリギリだったのだろう。
エレン「……」
そう考えると、ぎゅっと胸が苦しくなった。
そして思った。
自分が、幸せにしていこうと。
ミカサ「終わったみたいだ。実家に持っていくものはどうするの?」
エレン「ああ、もうすぐ親父が取りに来てくれるから運ぶつもりだ」
ミカサ「お父さん、来るの…?」
エレン「つ、ついでに紹介しておこうと思ってよ……」
ミカサ「何か、用意した方がいいだろうか」
エレン「いい。逆に気をつけとけ。俺の親は……」
グリシャ「おーーい!エレン!」
エレン「来やがった」
カルラ「私もいるわよー!」
エレン「母さんもか……」
はあ……と、大きくため息をついたエレンを見て、ゴクリと息を飲むミカサだった。
-
- 77 : 2017/11/05(日) 20:59:06 :
あのエレンが気をつけろと忠告をするような両親とはどんな人たちなのか。
ミカサは途端に不安になった。
もしかすると、とても厳しい家庭なのかもしれない。
心してご挨拶をしなければと思った。
グリシャ「その子が、彼女かな?」
カルラ「あんたに彼女が出来るなんてね……」
エレン「ああ。お手柔らかに頼むぞ」
ミカサ「は、初めまして。ミカサ・アッカーマンと申します」
グリシャ「そう堅くならなくて大丈夫だよ。エレン、運ぶ物はどこにあるんだ?」
エレン「こっちだ。ミカサと母さんは少しここで待っててくれ」
カルラ「わかったわ」
エレン「くれぐれも、酷い態度を取るなよ?」
カルラ「分かってるわよ」
エレン「じゃあ、ちょっと行ってくる」
ミカサ「……」
初対面にもかかわらず、いきなり2人きりにされた。
ミカサは何を話せばいいのかと必死に話題を探した。
カルラ「ねぇねぇ」
先に話しかけたのはカルラの方だった。
ミカサ「は、はい」
カルラ「どう?うちの子、迷惑かけてない?」
ミカサ「い、いえ……全然…。こちらこそお世話になってます」
カルラ「そう……。あの子昔から冷たいところあるから心配でね」
ミカサ「エレンは……こんな私にも優しくしてくれて、とても温かいです」
カルラ「何かあったら私に相談してね。あっ、そうだ電話番号交換しましょ?すぐ連絡取れるように」
ミカサ「は、はい」
-
- 78 : 2017/11/05(日) 21:08:30 :
電話番号を交換したカルラはとても満足そうだった。
ミカサ「あの、お名前は……」
カルラ「カルラよ。でもお義母さんって、呼んでもいいのよ?」
ミカサ「あ、ええ……」//
カルラ「あら、顔が紅くなっちゃって…。こんなに可愛い子がエレンの彼女で安心したわ」
ミカサ「そんな……私なんか…」//
カルラ「これからも、あの子をよろしくね、ミカサちゃん」
ミカサ「はい、ええっと……」
カルラ「カルラお義母さん、でいいわよ?」
ミカサ「か、カルラお義母さん…」//
カルラ「ウフフ、可愛い」
真っ赤になった彼女を、カルラは頭を優しく撫でるのであった。
ミカサ「(あ…エレンと、同じだ)」
撫でられた手のひらの優しさは、エレンと全く同じだった。
親子だな、と思った。
-
- 79 : 2017/11/05(日) 21:16:21 :
エレン「やっと終わった……て母さん!」
カルラ「何よ?」
エレン「何やってんだよ」
カルラ「何って見たとおりよ」
グリシャ「はは、仲良くなったようだな」
エレン「どこがだよ。顔真っ赤にして嫌がってんだろ」
ミカサ「ち、違って……」
カルラ「あら何?嫉妬してるの?大丈夫よ、この子はあんたの彼女よ」
エレン「嫉妬なんかするかよ…。早く離れて、車に乗れ」
カルラ「ったく、この子ったら親になんて口の利き方なのかしら」
グリシャ「まあまあ。とにかく行こうカルラ」
カルラ「はいはい」
グリシャ「エレンとミカサは、後部座席に座ってくれ」
エレン「ああ」
ミカサ「はい」
いきなり、名前を呼び捨てで呼ばれたことに受け入れてくれていると嬉しくなったミカサだった。
-
- 80 : 2017/11/10(金) 20:50:34 :
エレンの実家に荷物を置き、そのまま事務所に2人は向かった。
アルミン「意外にくるの、早かったね」
エレン「お前こそ早いな」
アルミン「まあね。エレン、新しい依頼が入ってたよ」
FAXで送られてきたらしい紙には、依頼が書かれていた。
『妹の様子がおかしいので、原因を見つけて欲しい』
ミカサ「尾行の、依頼」
本人が来る日にちと、時間が共に書かれていた。
アルミン「うける?依頼」
エレン「……ああ」
短い文章だが、この文章からは必死さが見えていた。
受けてみたいと思った。
アルミン「わかった。依頼者に連絡しておくね」
-
- 122 : 2017/12/17(日) 15:15:14 :
依頼が来てから予定の日になった。
依頼者は男性で、彼らと同じぐらいの年齢だと思われる。FAXに送られて来た依頼書にはジャン・キルシュタインと書かれていた。
エレン「……キルシュタインさんですね?」
ジャン「おうよ、早速俺の妹の様子を見てくれねぇか?」
エレン「わかりました。それで、妹さんはいつもどの辺へいらっしゃいますか?」
ジャン「アメリカだよ、留学中だ」
ライナー「アメリカか……」
ジャン「でも、今日から日本に帰って来るんだ。お祝いしようとレストランに行こうと誘うだろ?そしたら断りやがるんだよ」
エレン「それは、ご優先することがあるのではないですか?」
ジャン「いーや、大学も気を使って暫く休みにしてくれたし何も用事はないはずだ」
エレン「……わかりました。本日、尾行を開始してよろしいのですね?」
ジャン「ああ、頼む!」
アルミン「べ、別室で今後の予定などをお話しするのでこちらにどうぞ」
ジャン「おう。……お前、何だか顔色悪くないか?」
アルミン「い、いえ。どうもございませんよ」
ジャン「そうか?じゃ、連れて行ってくれ」
______________________________________
依頼者が引き取ってから、アルミンは安堵の息を漏らした。
アルミン「はぁ〜」
ライナー「どうしたんだ?あの人の話を聞くたびに顔色が悪くなっていったが」
アルミン「話を聞けば聞くほど、一致するんだよ」
ライナー「何がだ?」
アルミン「僕の彼女の話と」
皆、驚いた表情を見せた。
エレン「おい、あの金髪の彼女か」
ライナー「お前、知ってたのか!」
アルミン「高校の時から知ってるよ、エレンは」
ライナー「でも、あの人のセカンドネームはキルシュタインだっただろ?アニの場合はレオンハートじゃないか」
アルミン「……アニは元々、施設に入ってたんだよ」
ライナー「!、そうだった。小学生の時、結構虐められてたからな」
アルミン「そう。そして最近僕たちはっちゃけちゃって長電話とかばっかりしてたんだよ」
エレン「それが、様子がおかしいってことの原因だって言いたいのか」
-
- 123 : 2017/12/17(日) 15:21:52 :
アルミン「僕にはそれしか考えられないよ」
エレン「まあ、きっと当たりだろうな」
ライナー「エレンの勘は当たるからなー、どんまい」
アルミン「本当にどうしよう。挨拶とか行ったほうがもう早いかな」
エレン「かもな」
アルミン「エレンもう投げやりだよね?つまんないって思ってるよね?」
エレン「おう」
アルミン「もー!最低だ!」
アルミンが、わなわなと不満をぶちまけている最中、隣の部屋にいたミカサがやってきた。
ミカサ「どうかした?」
エレン「気にすんな。よし、帰るか」
アルミン「酷くない?」
ライナー「そうだな、帰るか」
アルミン「君までか、ライナー」
いつもアルミンにいじられているライナーは、今日ばかりは弱気になっているのでいじめがいがあり、面白かった。
アルミン「覚えとけ」ボソ
背筋が凍った。
-
- 124 : 2018/01/13(土) 18:55:25 :
- 今日は事務所を早く閉めて皆で飲み会をすることにした。
アルミンは相変わらず依頼者のことについて頭を抱えている。
ライナー「元気出せ。今日は俺の奢りだ」
アルミン「……そんなんで元気出せたらどんなに楽なことやらね」
ライナー「」
アルミン「まぁ、せっかくだから奢って貰うよ」
ライナー「オ、オウ……」
エレン「さんきゅライナー」
ライナー「お、お前の分は払わんぞ」
エレン「そんな飲み代ぐらいケチるな。な、ミカサ。お前もライナーの奢りで行きたいだろ?」
ミカサ「え。いいの?」
ライナー「えっ」
ミカサ「あ、じゃあご馳走になる」
ライナー「」
奢りと聞いたミカサは目が普段より輝いた。
その目にライナーは逆らうことなど出来るはずもなく、泣く泣く全員分奢ることとなった。
エレン「太っ腹だな」
ライナー「……お前、絶対恨むからな」
エレン「あ?」
ライナー「……」
-
- 125 : 2018/01/13(土) 20:04:02 :
3人がよく行く居酒屋に入った。
最近は来れていなかったので久しぶりに来店した。まだ早い時間だったので誰も居なかった。
座敷を選んで4人は座った。
従業員がすぐ注文を取りに来た。
「ご注文はございますか?」
ライナー「あ、とりあえず生4つで」
「以上でしょうか」
アルミン「あと枝豆と焼き鳥と唐揚げとイカ焼きとフライドポテトお願いします」
ライナー「え、おい……」
「かしこまりました」
注文を承り、奥へと帰って行った。
ライナー「頼みすぎだろ?」
エレン「奢りだろ。あと、ミカサ酒飲めねぇから。勝手に注文するなよ」
ライナー「す、すまん。知らなかった」
エレン「他の頼むか。酒以外の、何が飲みたい?」
ミカサ「……烏龍茶」
アルミン「オレンジジュースとかあるよ?」
ミカサ「烏龍茶、好きだから」
アルミン「じゃあ次店員さんが来たら言おうか」
ライナー「……気が利くな」
エレン「お前が効かないだけだろ」
アルミン「だからモテないんだよ」
ライナー「」
ミカサ「ちょっと、言い過ぎ……」
ライナー「そ、そうだぞ!言い過ぎだ!ひでぇ!」
「お待たせいたしました。生4つです」
アルミン「あ、烏龍茶追加で」
「かしこまりました」
-
- 126 : 2018/02/25(日) 20:48:04 :
アルミン「今夜は思いっきり飲むぞ。酒もつまみも全部僕の物だ」
ライナー「……少しは控えてくれないか」
アルミン「どうぜスミスさんの報酬が入ってくるんだからいいでしょ。ライナー独身だしお金他に使わないだろ?」
ライナー「それそうだが俺にも嫁さん候補がいた時の為にな……」
エレン「舞い上がるな」
アルミン「調子に乗らな」
ライナー「お前ら扱い酷過ぎるだろ!くそ、彼女持ちだからって良い気になりやがって」
エレン「俺たちとばかりいねえで合コン行けよ、合コン」
エレンは生ビールをゴクゴクと音を鳴らして飲む。
エレン「美味いな」
ライナー「合コンするほど時間くれないだろ」
アルミン「それなら学生時代に彼女を作っておくべきだったね。僕みたいに」
ライナー「アルミン高校の時に付き合ってた子はいたけど別れたしな…」
エレン「女運悪かったよな」
ミカサ「どんな人だったの?」
アルミン「えっと、確か高1の時にいた彼女はブランド品ばっかり買わされてたよね」
ライナー「やめてくれ。黒歴史だ」
アルミン「はっきり言ってそんなに可愛くなかったよね。むしろ……」
ライナー「やめろ。自分でもあの子だけは何故付き合ったのか分からん」
アルミン「高3の最後にいた時の彼女はー、ヤンデレだったっけ」
ミカサ「ヤンデレ?」
エレン「好きな人が他の女と話してたら次の日その女が階段から突き飛ばされたりしたんだ」
ミカサ「好き過ぎて暴走してしまうってこと?」
アルミン「それの5倍ぐらい酷いイメージで考えておけば良いよ。それで問題になってライナーまで職員室行きだったよね」
ライナー「ああ。大変だった。それに大学まで行けなくなったしな」
ミカサ「えっ」
ライナー「本当は大学行く予定で勉強を頑張っていたんだが、元彼女が問題起こしたから俺も責任を負わされてな」
ライナー「それが12月の頭ぐらいだったから就職もできず、今の仕事にいるんだ」
アルミン「かわいそー」
エレン「女運は本当に酷いよ、こいつは」
ミカサ「何といえば良いのか」
「お待たせいたしました。烏龍茶と……」
ミカサの烏龍茶とアルミンの頼んだメニュー全てが運ばれてきた。
綺麗だったテーブルは、直ぐに物で沢山になった。
-
- 127 : 2018/04/15(日) 23:23:05 :
アルミン「あー、生ビールとイカ焼き美味い」
ライナー「ビールとつまみがこの世にあって本当に幸せだよな」
アルミン「ドイツに感謝だよ」
エレン「ほらミカサ、好きなの食っとけよ」
ミカサ「うん」
全員、お腹が空いていたので一品料理などを食べて腹をならした。
この間にミカサ以外の三人はビールを3杯もおかわりしていた。
アルミン「もう明日にでもご挨拶行っちゃおうかな」
エレン「酔ってるな」
ライナー「ああ。いつもは激しく飲まないから酒に慣れてないな」
アルミン「ねえライナー、行った方がいいよね」
ライナー「とりあえず、水を飲め。頭を冷やすんだ」
アルミン「なんだよライナーの癖に。偉そうだな」
ライナー「お前なあ」
ネチネチと面倒くさくライナーに絡みまくった。
エレン「気にするから挨拶行っとけよ」
アルミン「そうだよね。やっぱりエレンは良いこと言う」
ライナー「あの依頼人、説得するのは時間が掛かりそうだけどな」
エレン「アルミンのトーク力なら大丈夫だと俺は思うけどな」
アルミン「そう?」
エレン「あ、これ食っていいぞ」
ミカサ「うん」
アルミン「君たちは順調そうだね」
エレン「…そうだな」
アルミン「……よし、決めた。この酔いが覚めるまでモヤモヤしてたら挨拶に行こう」
ライナー「おお、よく言ったな!」
アルミン「じゃないとアニと堂々とイチャつけないだろう?」
ライナー「俺としては複雑だな……」
ミカサ「幼馴染みだっけ」
ライナー「そうだ。あの小さかったアニがアルミンとな」
アルミン「あ、そうだ。言ってなかったけど今からここにアニが来るから」
エレン「いや、アルミンお前」
アルミン「だって帰国今日だし?一緒にいたいし?皆にも紹介しても良いと思ったし?」
エレン「うぜえ」
アルミン「ごめん」
ライナー「いきなりだな。ここの場所分かるのか?」
アルミン「何回か来たことあるからね。あ、もうすぐだって」
ミカサ「……」
エレン「来る前から人見知りするなよ」
ミカサ「だって」
エレン「俺も一応紹介するだけだから。後は話さなくていいから」
ミカサ「うん」
ライナー「……」
あの冷たいエレンが人に気遣いをするとはな……と、ライナーは感心した。
滅多に見れない、いや、初めて見たエレンの他人に対しての気遣いだったかもしれない。
-
- 128 : 2018/06/26(火) 23:55:43 :
カランカラン
暖簾の向こうで鈴のなる音が聞こえた。
この店の扉が開くとき、鈴の音がなるのである。
アルミン「あ!アニ!こっちこっち」
アニ「大きな声で呼ばないでよ」
迷惑そうに表情を変えた。端正に整っており、綺麗な顔だった。
きっちりと後ろに纏めてある金髪は、とても美しかった。
鮮やかレモン色で、ミカサは魅了された。
アルミン「ごめんよ。嬉しくってつい」
ライナー「アニ、久しぶりだな」
アニ「相変わらずだねあんたは」
エレン「よ」
アニ「あんたはちょっと雰囲気変わった?なんか柔らかくなってる気が」
エレン「変わんねえよ」
アルミン「アニ、とりあえず座りなよ」
アニ「ああ、お邪魔するよ」
アニはアルミンの隣、そしてミカサの真正面に座った。
ミカサ「……」
ミカサは人見知りを存分に発揮しており、アニが来てからは一言も喋っていない。
それを察して、エレンが話を始める。
エレン「アニ、紹介する。この子俺の彼女でミカサって言うんだ」
ミカサ「よろしくです」ペコ
アニ「彼女だって?」
エレン「ああ」
アニ「あんたに?」
エレン「ああ」
アニ「本当だったのか」
アルミン「そうなんだよ。アニったらエレンに彼女ができたことを全く信じてくれなかったんだ」
ライナー「まぁそりゃ、エレンだからな」
エレン「……バカしてんのか」
ライナー「してないですすみません」
アニ「ふぅん。私はアニ・レオンハート。一応アルミンとは付き合ってるよ」
アルミン「一応って」
ミカサ「私は、ミカサ・アッカーマンです。エレンと付き合いさせて頂いてます」
アニ「同い年だろう?タメ語でいい」
ミカサ「う、うん」
エレン「人見知りだからあんま喋れねえんだ。優しくしてやれよ」
アニ「はいよ」
アルミン「アニも生飲む?」
アニ「飲む」
アルミン「すみませーん。生1つ追加で!」
アニ「あんた結構飲んだ?随分酔ってるようだけど」
アルミン「そんなことないよ。アニと久しぶりに会えて嬉しいんだ」ニコニコ
アニ「ふ、ふん。バッカじゃないの」
ライナー「とか言って照れてるんだろ」
アニ「そんなわけないじゃないか」
ライナー「本当かあ?」
-
- 129 : 2018/06/27(水) 16:22:09 :
エレン「ライナー、飲みの席でからかうもんじゃねぇぞ」
ライナー「どの口が言ってんだどの口が」
アニ「むさ苦しいなあんた。細かいことは気にしないの」
ライナー「こいつらっ!」
アルミン「アニも大概にしてあげなよ。後は日頃僕がいじめ抜いておくから」
ライナー「……」
アニ「分かったよ。あ、ビールきたね」
アルミン「乾杯する?」
アニ「うん」
アルミン「それじゃ、アニの久しぶりの帰国に、かんぱーーい!」
ゴクッゴクッゴクッ
アルミン「ぷはぁっ」
ミカサ「いい飲みっぷり」
アルミン「ミカサも飲めれば良かったのにね」
アニ「お酒飲めないの?」ゴクッ
ミカサ「うん。だから、普通に飲んでる皆が羨ましい」
アニ「悪いね、目の前で思いっ切り飲んじゃって」
ミカサ「烏龍茶も美味しいので」
エレン「ミカサ」チョイチョイ
ミカサ「?」
エレン「耳貸せ」
ミカサ「何?」
ミカサはエレンの口元に耳を傾けた。
エレン「後で二人になったら飲もうぜ」コソ
ミカサ「え?でも」コソ
エレン「俺も二人なら良いだろ。クリスタが出てきても平気だ」コソ
ミカサ「ちょっとだけなら」コソ
エレン「おう。楽しみにしてろ」コソ
ライナー「何だよ二人で内緒話かあ?」
エレン「空気読め。今は話しかけんな」
ライナー「ひでえ」
アルミン「ライナーも素敵な彼女を連れてここに来ればいいんだよ」
ライナー「女運悪いって…」
アニ「ろくなのと結婚しそうだよね」
ライナー「それは認めてる」
-
- 130 : 2019/01/14(月) 18:59:19 :
ミカサとアニは初対面でお互いよく喋るような性格ではないにもかかわらず、エレンとアルミンのフォローもありすぐに仲良くなることが出来た。
アニに至っては酔っていることもあるせいか、外国での生活での愚痴を延々とミカサに吐き出していた。
アニ「それで、向こうの人はすぐに冗談言うわけ。『Oh!sorry!』で済まされると思いやがってね」
ミカサ「大変だね」
アニ「あーすっきりした。アルミンてば私の愚痴中々聞いてくれなくてさ。あんたいい奴だね」
ミカサ「そうかな」
アニ「そうさ。私がこんなに喋る相手はそうそういないよ。連絡先交換しない?」
ミカサ「うん。ちょっと待って」
ガサゴソ
ミカサ「あ、あった」
ミカサ「やり方分からないので、教えてくれる?」
アニ「いいよいいよ」
二人は携帯を手に連絡先を交換した。
アニは随分とミカサのことが気に入ったみたいだ。
エレン「……」
アルミン「エレン、嫉妬?」
エレン「は?」
アルミン「アニとミカサが仲良くしてるから。今睨んでたじゃないか」
エレン「別に睨んでねえよ。元々こういう目付きだったっていうわけで」
ゴクッ、ゴクッ
ジョッキの半分入っていたビールを、全て飲み干した。
アルミン「僕の知ってるエレンは、普段もう少し人間っぽい表情をしてるけどな」
エレン「……うるせえ」
ライナー「エレン、おかわりいるかー?」
エレン「いる。つまみも欲しいな」
ライナー「うぃー了解!」
アルミン「僕は、アニに友達ができて嬉しい」
アルミン「僕ら以外に関わろうとしなかったアニが、初めて心を開いたんだ」
エレン「……」
アルミン「ミカサとエレンが付き合ってくれてて良かった」ニコニコ
エレン「ブホッ!げほっ、げほ!お前、酔ってるな」
アルミン「んー?酔ってないよ」
エレン「おいアニ。こいつどうにかしろ」
ミカサ「いや、それは……」
アニ「でね、アルミンがあの時私を見捨ててれば今の出会いはなかったわけで…」ペチャクチャ
ミカサ「こっちも酔ってるみたいで、解放されない」
エレン「……はぁ。2人揃って酒絡み悪いな」
エレン「ライナーにでも押し付けて出よう。帰るぞ」
ミカサ「でも」
エレン「俺はうざいアルミンにこれ以上耐えられる自信はない。今すぐにでも殴ってやりたい」
エレン「それをギリギリで抑えているんだが」
アルミン「あー今僕の悪口言ったでしょ」
エレン「……」グッ
ライナー「拳握るなよ。物騒だな」
ミカサ「……限界みたい」
アニ「何?」
ミカサ「アニ、ライナーが呼んでるよ」
ライナー「……!?」ゴクゴク
アニ「あー?何よ」
ライナー「やめてくれ、構えるな!まず俺に暴力を振るうな」
エレン「押し付けれたか。行くぞ」
ミカサ「うん」
エレン「アルミン。これ俺らの勘定」
財布から1万円を抜き取り、テーブルに置いた。
アルミン「もう帰るのか。つまんないの」
エレン「あんま騒ぐなよ。店の迷惑になるから」
アルミン「ほーい」
エレン「じゃあな」
ミカサ「お疲れ様」
アルミン「ばいばい。また明日ね」ノシ
ライナー「あ、あ、アニ!いてててて!」
アニ「またねミカサ、エレン」ギリリリリ
エレン「ああまたな」
ミカサ「また」
ライナー「普通に帰ろうとしないで助けてくれよ!いてててて!」
-
- 131 : 2019/01/15(火) 01:03:18 :
居酒屋を離れた2人は帰路に着いた。
ヒンヤリとした空気が全身を包み込み、芯から冷えていると感じた。
ミカサ「はぁ〜」
ミカサは掌に温かい息を吹きかけ、暖を取ろうと試みた。
一瞬はあったかくなるものの、やはり継続的な温度は保たれない。
ミカサ「寒いね」
エレン「ああ。……手、いるか」
ミカサ「手を繋いでくれるの?」
エレン「寒いんだろ。手袋なんて持ってねえから」
ミカサ「ありがとう。汗かいてしまったらごめんなさい」
ぎゅっ
ミカサ「エレンの手、私と違って温かいね」
エレン「女は冷え性が多いとか聞いた。辛いんじゃないの」
ミカサ「うん、とても痛い。いつも霜焼け」
エレン「俺はほとんどいつでも変わんねえから。好きなだけ体温奪ってけ」
ミカサ「遠慮なく頂きます」ギュッ
途中でスーパーに寄り、約束していたお酒を数本買った。
つまみも忘れずにミカサの好きなだけ、飲みたいだけ買った。
普段酒を思う存分飲めない彼女を満足させてやりたいと思った。
ミカサ「こんなに買ってしまった」
ドッサリ
エレン「持つ」
ミカサ「私も。力には自信があるから」
エレン「俺よりは弱いだろ。貸せよ」
ミカサ「大丈夫。貸さない」
エレン「貸せよ。手持ち無沙汰だ」
ミカサ「……手、握ってくれない?」
エレン「握ってやらない」
ミカサ「意地悪」
エレン「もうすぐで家だろ。少しぐらい」
ミカサ「んー、では先に行っとく」
ダッ
荷物の半分を奪って、ミカサは逃げた。
エレン「待て!」
ダッ
彼女の後を急いで追いかけた。
-
- 132 : 2019/01/15(火) 22:58:23 :
ミカサ「エレン、遅いよ」タタッ
エレン「こっちは酔っ払いだっての。そりゃ足元もふらつくわ」タタ
ミカサ「待っててあげようか?」タタッ
エレン「そう言うわりには足を止めてくれないな。ていうか前見て走れ、危ねえだろ」スタスタ
ミカサ「何だ、歩くの。つまらない」
エレン「滑って転んで怪我でもしたら仕事に支障が出る」
ミカサ「そうね。私も歩く」
先に行っていたミカサはエレンの隣に並んだ。
エレンはもう、彼女に無理に荷物を貸せとは言わなかった。
意地でも渡さないということが分かったからだ。
エレン「重くはないか」
ミカサ「平気。私のはおつまみだけだもの」
エレン「そうか」
ミカサ「エレン、エレン」
エレン「……?」
ミカサ「私、お酒を沢山飲むのは夢だった。とても楽しみ」
ミカサ「だから、今ちょっとテンションが高い」
エレン「ああ、それで」
ミカサ「明日になれば治るから、それまでとことん付き合ってね」
エレン「お前に付き合うんじゃなくて、クリスタにだよな……」
はあ……
エレンは嫌そうに溜め息をついた。
ミカサ「クリスタは話せば良い子。きっと」
エレン「身体を乗っ取るくせにか?お前にウサギの耳生やして、周りに気味が悪く見せるくせにかよ?」
ミカサ「クリスタだって、好きでやってるわけではないと思う」
ミカサ「昔、あんなに仲の良かった従姉妹だ。私に不利なことをするなんて、何かあったに違いない」
エレン「……お前は聞かないのかよ」
ミカサ「私の言うことは聞いてくれない。悲しい」
エレン「じゃあ俺の言うことなんてもっと聞かねえな」
ミカサ「でも、あの状態の私……クリスタと話せるのはエレンしかいない」
ミカサ「私が自分自身に話しかけることは出来るけど、クリスタの言葉は少なくとも私の無意識で答えていると思うから」
エレン「……自分ではどうにも出来ないんだな」
ミカサ「頼っちゃ、駄目?」
エレン「出来る限りだったら手伝う」
ミカサ「そう言ってくれると思った」
エレン「……」ポリポリ
何だか恥ずかしくて、頭をポリポリと掻いた。
-
- 133 : 2019/01/16(水) 23:20:37 :
家に着いた2人は宴の為にエレンは洗濯、ミカサは入浴をした。
風呂が入れ替わりになり、ミカサは酒とつまみを取りやすいように準備しまさに完璧な状態にした。
エレン「……さんきゅ」
ミカサ「どういたしまして。あっ」
エレン「……?」
ミカサ「髪、ちゃんと拭かないと。風邪引く」
エレン「めんどくせえんだよ。これはいいから」
ミカサ「駄目。貸して」バッ
エレンのタオルを奪うや否、彼を座らせてまだ濡れている髪を入念に拭いた。
湯冷めして風邪を引いてはいけない。
ミカサ「よし」
エレン「お世話係かよ」
ミカサ「そうだよ」
エレン「違えだろ」
ミカサ「そんなことより早く。乾杯しよ」
エレン「ああ」
プシュッ
新品の缶が美味しそうな音を鳴らして外へと空気を逃がす。
2人は缶ビールを片手に、乾杯した。
エレミカ「「乾杯」」
エレン「……」ゴクッゴクッ
ミカサ「……」ゴクッ
エレン「っはぁ、美味え」
ミカサ「……うええええ!」ペッペッ
エレン「!?、何だ?」
ミカサ「に、苦い!」
エレン「ビールはそりゃ苦いだろう」
ミカサ「こんなの想像してない。飲めないよ」
エレン「まさか、酎ハイしか飲まない感じか」
ミカサ「飲んだことないよ……」
エレン「でも何で最初からビールに手を付けたんだよ」
ミカサ「だってさっき、皆が美味しそうに飲んでいた、ので」
期待外れだった、(´・ω・`)ショボ-ンといった具合に、見事に落ち込んでしまった。
普通に酒を飲めない者には、いきなりビールは難しかったらしい。
エレン「残りは俺が飲む。新しいの開けろよ」
ミカサ「うぅ……そうする」
目尻に若干の涙を溜め、新しい缶に手を伸ばした。
ミカサ「……これは美味しい」ゴクッ
エレン「お子ちゃまだな」
ミカサ「舌はね」
エレン「舌だけかあ?」
ポリ、ポリッ
買ってきたつまみの1つ、落花生を複数口の中に放り込んだ。
強めの塩加減とカリッとした食感がたまらなく美味しい。
ミカサ「……」
エレン「えらく静かだな」
ミカサ「……エレン」
エレン「……もう来るのか」
ミカサ「来そう」
エレン「分かった。安心しろ。怖がるな」
ミカサ「ん……」ゴク
-
- 134 : 2019/01/18(金) 00:04:40 :
ミカサ「……」
ミカサは数分のうちに一気に態度が変わった。彼女の頭は下に垂れ、見るだけで力が入っていないことが分かった。
身体が微妙に左右に揺れていることから、意識は朦朧としているのだろう。
エレン「……」ゴク
ミカサの様子が変わるまで、ゆっくりと待った。
話しかけることも触れることもなく、ただひたすら待った。
ミカサ「『……』」スッ
エレン「お」
いつも通り、クリスタが現れるサインであるウサミミが頭に付いた。
目の色が変わる。
ミカサ「『またこの子お酒なんて飲んで。駄目だって言ってるのに』」
エレン「俺が良いって言ったんだよ」
ミカサ「『生前では私は一度も飲めなかったから、飲んだら暴れるよって言ったのに』」
エレン「そりゃあ、迷惑なことをしやがるな」
ミカサ「『この子は約束を破った。だから暴れる』」
エレン「いやいや。生前に飲めなかったなら今飲みゃいいだろ」ゴクッ
エレン「今ならミカサの身体だけど、味と酔った感覚ぐらいならお前だって感じれるんじゃねえの」プハァ
エレン「美味え」ŧ‹"
今度はさきいかに手を出した。
噛めば噛むほど味が出てきて、ビールとの相性は抜群だった。
ミカサ「『そんなの嫌よ。なんで私がこの子の身体なんかで』」
エレン「その身体に何かされたことはあるのかよ」
エレン「俺はねえと思うけど」
ミカサ「『……』」
エレン「なんやかんやいちゃもん付けて、ミカサに苦労をかけたいだけなんじゃねえのか」
エレン「構って欲しいんだろ、要するに」
ミカサ「『な……な…っ!』」///
みるみる顔が紅く染まっていく。
図星だったようだ。
- このスレッドは書き込みが制限されています。
- スレッド作成者が書き込みを許可していないため、書き込むことができません。
- 著者情報
- この作品はシリーズ作品です
-
不思議な二人【エレミカ】 シリーズ
- 「進撃の巨人」カテゴリの人気記事
- 「進撃の巨人」カテゴリの最新記事
- 「進撃の巨人」SSの交流広場
- 進撃の巨人 交流広場