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あげないよ/あげねぇよ ※モブ視点あり
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- 1 : 2021/09/20(月) 05:27:23 :
- 僕には印象に残るような名前では無いから名乗りはしない。本当に平凡でその辺に居るような高校2年生だ。
そんな僕には1年生の頃から密かに想いを寄せている女性がいる。
フリーダ・レイス
というのが、僕が気になってる女性の名前だ。
彼女は優等生の中の優等生、学年での成績はトップクラス、そしてスポーツも出来るという文武両道。
可愛いや天真爛漫という表現よりも、綺麗や美人といった表現の方が似合っているような女性だ。
普段はサラサラと流れるように下ろしている黒髪も、夏場の暑さに耐えられなかったのか、1つに纏めてポニーテールにしている。そこから見えるハリのある白いうなじに張り付く一筋の汗は、女子高生とは言い難いような色気を醸し出していた。
人知れず僕は大陽に親指を立てた。
しかし、時期は夏場。もうすぐ夏休みがやってくる。
暫く彼女を見れないという思いから、僕は放課後に彼女に想いを伝えようと考えている。
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- 2 : 2021/09/20(月) 05:49:57 :
- 放課後がやってくる。
彼女は部活をしていなかった気がするので、僕は彼女を探して校内を歩く。
そして、少し歩いた所で彼女を見つけた。
どうやら友達と話をしていたところだったらしく、たった今それが終わって別れの挨拶をしていた。
チャンスは今しかないと、足を踏み出そうとしたその時、後ろから男の声が聞こえた。
「あ、いたいた」
立ち止まる僕の横を通り過ぎるその男からは、彼女と“同じ匂い”がした。
「あれ?エレン、今日部活は?」
「顧問が野暮用あって見れないらしいから今日は無しになった」
僕は、「エレン」と呼ばれる男子を観察する。
黒い髪に暗闇を照らす月のような金色の瞳。
そうして、観察をしていると視線が合ったような気がした。
けど、気がしたという割には何処か冷たさというか昏さを感じた。
そのまま帰路に向かって歩き出した2人を僕は見ていることしか出来なかった。
「へぇ、そうなんだ。あ、そうだ!そういえばね、こないだ妹が美味しいお店があるって紹介してくれたの!一緒に行かない?」
「ハイハイ。食ってもいいけど限度考えろよ、お前スイーツの事になると我を忘れんだから」
「ちょ、頭ぐしゃぐしゃになっちゃうってば!って、聞いてるの!?…って、ん?」
2人のやり取りを見て固まってしまった僕に気付いた様子のフリーダさんと、僕を見ていたもう「エレン」さんは少し笑っていた。
フリーダさんは彼の右腕に自身の腕を絡ませ、隣の彼も当然のようにそれを気にしていなかった。
──あげないよ/あげねぇよ
あぁ、そういう事だったのか。
僕のこの淡い恋は、始まる前から終わっていたのか。
日常と化していた蝉の鳴き声も、今この瞬間だけは、煩わしく感じた。
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- 3 : 2021/09/20(月) 06:21:19 :
- 翌日、分かっていても諦めが付かなかった僕は、教室で気になる彼女を見ていた。
まとめられていた髪は下ろされていて、同様に気付いたクラスの女子がそれを指摘していた。
「今日は髪下ろしてるんだ?ポニテ似合ってたのに」
「へ?う、うん。やっぱり、こうしてた方が落ち着くっていうか、なんていうか…あはは」
「とか言っちゃって〜、ホントは昨日何かあったんじゃないの〜?うりうり」
慌てた様子のフリーダさんにちょっかいをかけている女子のやり取りを見ている中、下ろされた髪に隠されたうなじが少しだけチラッと見えた。
見慣れなかったソレを見た瞬間、僕は机に突っ伏した。
今まで見た事がなかったうなじのソレは、諦めが付かなかった僕に対する追い打ちのように感じてしまった。
何故なら、隠されていた“ソレ”は……。
赤い花のように点々と咲いていたソレは独占欲の表れだったからだ。
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「あれ?エレンが珍しくボタン全部閉めてる」
「エレン、昨日何かあったの?隠さずに話して」
「いや、まぁ…なんつうか、たまにはちゃんとしねぇとさ、先生に叱られるだろ?だからまぁ…うん」
「いーーやっ。絶対何か隠してるね。幼馴染を侮らない方がいいよエレン」
「その通り、包み隠さず、昨日何があったのか教えて」
「な、何もねぇって!お、おい!じわじわ寄ってくるなって!おい!人の話を聞けって!おい!聞けよッ!」
「…(言えないでしょ普通)」
「……(誰にも言えるわけがねぇ)」
──お互いにマーキングしたとか絶対に言えるわけがないっ!
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