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尽生スゴロク

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  1. 1 : : 2018/06/23(土) 21:54:52
    初めまして。嘘眠りと言います。

    稚拙な文章ではありますが、私なりに楽しめたらと思います。
    暇つぶしにどうぞ。それでは、また。
  2. 2 : : 2018/06/23(土) 23:02:25
    昔見ていたテレビで誰かが言っていた。
    「人生はスゴロクのようなものだ。サイコロを放り、マスに忠実に進み尽くし生きていく。酷く単調で楽観で、醜く愚かなものだ」

    「目の前は霧のような状態の中永遠とサイコロを振り、幸か不幸かその人物のサイコロの目次第で人生が決まってしまう。6の目のように贅沢な人生を送り、満足のいくまでサイコロを振る謂わば"勝ち組"そして、1の目。これはどう転がってもマイナスになり自分の存在価値を疑い続け朽ち果てていく"負け組"どちらか二つで成り立っていく」

    その頃の僕は生意気で、テレビの中で喋るその人物が「俺は勝ち組だ1の目しか出ないお前らはひたすら負けた人生を送るがいい」と言われている気がして無性に腹が立った。

    1歩1歩進むのがそんなに負け犬なのか、いきなり大股で躊躇もなく6歩進むのがそれほど勇敢か、いや、それはただの無謀な阿呆だ。進み過ぎて立ち止まれなかったマスも存在するだろう、良くも悪くも、けれどもそれは止まる必要のないマスなのか。

    きっと僕は将来億万長者にはなれないだろう、勝ちにも拘らずひたすらこき使われるだろう、それでいい1のような負け犬の人生でもいい、僕が脱け殻になって陰にならなければ。
    それでいい。
  3. 4 : : 2018/07/08(日) 19:15:22
    夏特有の温度のせいか、それとも僕の気分の問題なのか、部屋からじわじわと漂う奇妙な空気のせいで目が覚めた。
    放り投げてあった携帯を掴み時間を確認する、嫌がらせのように何度も来ている連絡を見て見ぬふりをしダラケきった身体を動かす。

    ―――もうこんな時間か

    外では、拡声器のように鳴り響く蝉の音が聞こえてくる、確か蝉の鳴く行為は人間でいう自慰行為以上の気持ち良さがあると聞いたことがあるが、どうやって確かめたのだろうか、だが1週間だけでもこんな世界に存在声明を示し続けるのだから蝉も立派なものだろう。

    脳裏に蘇る昨日見た夢が今日の指示を出してくる。

    "一番近シイ人間に逢え”

    どうせそのつもりだったのだ、都合がいい。
    いつからだっただろうか、こんな非常にくだらない茶番に付き合わされるようになったのは、思い当たる節は奴にあってからだろうがこのスゴロクをゴールすれば僕の願いは叶う。

    着慣れたシャツを羽織りいつものルートで病院へ向かう。
    ダラダラと垂れてくる汗が邪魔で仕方ない、さっき着たばかりのシャツが既に汗で染み込んでいく、この道も何十回、いや何百回通ったのだろう、変わらない道なりを通ると少しばかり安心する
    僕と同じように何も変わらずにあり続けていることで自分と同じ成長遮断をしているようで安堵してしまう。

    この角はタバコ屋があり、よくお菓子をくれたお婆ちゃんがいるそこのカレーやはあまり美味しくはないが店員の態度が好きよく通っている、ああもう着いてしまうのか、大きく聳える建物に入り病院独特の変な匂いを身体に染み込ませながらエレベーターを待つ、僕は病院が嫌いだ。好きだ、という人もあまり見かけないがここに来ると気分が悪くなる、リハビリをしている人も何らかの病気と闘っている人達を見るとそんな事も言えるはずもないのだろうけど、僕は病院が嫌いだ。

    部屋の前で少しためらう、毎度同じことを繰り返すこの行為は、食べ物を前にして感謝の気持ちを口にするくらいに起こしてしまう、軽くドアを叩く扉の奥から承諾の返事を頂き中に入る。

    ――――あら、また来てくれたの?

    ――――うん、毎日来るって言ったじゃん

    やせ細った身体に今にも折れてしまいそうな腕、母に会うのは凄く嬉しいのだが日に日に痩せていく姿を見るのがとても辛い。

    ――――毎日ってあんた学校は?

    じっと僕を見つめる母親に僕は愛想笑いをかます、軽く溜息を吐かれそして優しく微笑む

    ――――まあ行きたくなったら行きな学校だけが全てじゃないからさ

    何も言えず固まってしまう。
    恥ずかしい話だが、僕は不登校だ。
    幼馴染と同じ高校に合格しこれから始まるであろう日常を平凡と過ごしていくのだろうと思っていたそんなある日母親が倒れた。

    聞きなれない病名と医者には長くは生きられないとの宣告、頭が真っ白になるとはこういう時に言うんだろうと僕は思った。
    何週間か経った日も僕はこれからどうすればいいのだろうと、自分に問いかけ、問われ、破滅していった。

    学校には通っていたがあの教室に僕が存在していく理由が見つからずいつからか同じ時間にあの学校に向かうことは無くなっていた。幼馴染には心配されると思ったが何も言わずビンタを一発お見舞いされてしまった。母親は「そっか」とだけ言われると普段通りの接し方をされた。
  4. 5 : : 2018/07/28(土) 16:32:07
    病院を出た後僕は必ず行く場所がある。
    数十分電車に揺られ辿り着いたのは人気離れた海が見える丘。

    遠い昔、まだ母が元気だったころ父と母と僕でよくここへ来た、
    身体に染みついたせいか、此処へ訪れるのが僕の日課となっていった。知られず、寂しく、ポツンと建てられたベンチに腰掛けもうすぐ沈むであろう夕日を見つめながら、思い出す。

    "あのゲーム"を始めさせた、根源と出会ったのはこの場所だから。
    母が入院をし自暴自棄になっていた僕は、自分が自分でいれるこの場所へ来ていた。
    遠くから聞こえるさざ波と、微かに吹く風、誰もいない安心感に浸っていた時
    後ろから”そいつ”に声をかけられた。

    身長は175㎝くらいだろうか、着ている燕尾服が無性に似合い、そして顔を見せないよう奇妙なピエロの仮面を付け十分不気味なのになぜだろう不思議と安心してしまった。

    ―こんにちは

    声は大人びたような声で顔を窺えないが仮面を外したら笑っているのだろう、僕はつられて挨拶を交わした。

    ―いい場所ですね、良くいらっしゃるのですか?

    ―ええまあ、時々ですが。

    あまり、話すのは得意ではないので、軽く虚言を吐く。
    この場所ではあまり話しかけられたくなく早く帰ってくれ
    と、祈りをするように手を合わせようとした時。

    ―お母様はお元気ですか?

    ビクッと身体が刺激された。
    この人は何故急にそんな話を、それに、どうして母の話を、とりあえず訳が分からないまま似合いもしないぎこちない愛想笑いをし「元気です」とだけ話す。

    ―そうですか。ですが、病院に彼是半年以上も入院して元気なんですか?

    ただただ気持ち悪い。
    ここまで知られているとストーカー、母のことを知る人物か。
    いやでも、こんな変な人物が母の知り合いという事も失礼ながらない気もする。

    ―はは。失礼しました。多岐 海さん。一つゲームをしませんか?

    名前まで知られている以上この人には全て筒抜けのような気がする。
    話を聞くだけ聞いて早くこの場を去ろう、そう僕はすぐさま決心した。
  5. 7 : : 2018/09/15(土) 14:51:16
    ―ゲーム・・・ですか?

    ―そう、ゲームです。
    ―私は飽きているのです、人間は生まれた時点で死ぬまでの人生が決まっています。
     良い人生を送って「俺は努力したからこんな生活ができる!」と豪語するものも「元から才能もないしどうにもできない」とやる気のない人間もいますが、最初から決まっているのに薄っぺらい落胆や感動ができますねと私は呆れてしまうのですよ。

    ―そうそう時々、自殺をしてゲームを早く上がる方がいますが
     あれは成功者ですね。自分の愚かさを熟知して後からくる敗北 に逃げ、次に転生していくのですから、賢いのはもしかしたら 彼らかもしれませんね。

    一方的にぺらぺらと話す彼の声音からは楽しさを表している。
    子供が新しいおもちゃを買いそれを自慢げにしているようだ。

    ―おっと、話が逸れました。
     それで私は考えました。私たちが決めるのではなく、人生を貴方たち人間に決めさせる決定権をあげようではないかと。
    そしてそれを私が考えた「尽生ゲーム」で決めようと。
     海さんにはこれを差し上げましょう。

    差し出されそれを受け取る。
    ちらりとそれをのぞき込むと昔よく遊んだサイコロだった。
    真っ黒のサイコロ状に白の点がいくつかついている。

    ―それが貴方の今後使えるサイコロになります。
     貴方はこれから毎晩眠るとき夢でサイコロを振ってもらいま  す。そして、そのでた目の数を進んで止まったイベントを遂行 していってください。
     前回被験体がマス目のイベントを無視したのですが、ずるはダ メですよ?
     被験体のようにはなりたくないですよね。

    ―とまあ、さらっと説明させていただきましたけど、何か質問は御座いますか?

    ―色々と言いたい事はありますが、まず、普通サイコロは1から6までの目の数じゃないんですか、僕のは1の目が5個と6の目が1つだけなんですが。


    ―おお、良い所をつきますね。
     すぐにゴールできてもつまらないじゃないですか。だから少々 小細工をいたしました。

    不利ではないのかこのサイコロは。

    ―ふたつ目、先に聞いておくべきでした。
     あなたは誰なんですか?

    ―うーん、神様と言っても私は違いますし第一信じてもらえない ですよね。
     そうですね、まあ敢えて言うなら半端な人間の失敗体とでもい いますか。
     まあ、これも借り物ですが。

    話が全くわからない、というか、理解が追い付かない。
    排水溝に挟まれているみたいで、吸い寄せられ、消えてしまいそうだ。

    ―最後に。どうして僕にこれを。

    ―貴方が死にたそうにしていたから。
     先程も言いましたが、自殺をする方は成功者です、ですが、私はそうやって抜け道を通ろうとする人たちが気に入らない、気に入らない、気に入らない。だから、虐めたくなって
     しまうのです。多岐さん平凡な淡々とした日々はここで終わりです。ここから続くのは
     多岐さん貴方の運しだい、どう転んでも、私たちのせいじゃない、貴方の一振り次第です。
     そこのとこ、お忘れなく。

    ―長々と話してしまってすみません、これで私は失礼します。
    気を付けてください、私の、いえ、私たちの目は常に”貴方達“を見ています。
     そうだ、最後の最後に忘れてました。見事このゲームに勝利し たら多岐さん
     貴方の叶えたい願いを一つだけ叶えてあげましょう。
     それでは精々頑張ってください、唯一無二の実験体さん。
    そういい去ると、奇妙な人間はゆっくり、ゆっくり消え去った。

    いなくなった事を確認すると足がガクンと崩れ落ちた、ビクビクと震え、生まれたての小鹿
    のようになる、武者震い?寒気のせい?どれも違うこれは恐怖だ。
    頭の狂った話と捉えたほうがいいのか、バカ真面目にゲームを進行するのか
    だが、最後に行った一つの願い。あれがもし本当ならば、母さんは…。

  6. 8 : : 2018/09/15(土) 18:18:39
    あれから2週間が過ぎた。
    あいつに言われた通り毎晩同じサイコロを振る夢をみる。

    言われた命令で言われた通りの事をこなす、「今日は一人で買い物に行く」「普段行かない道を通る」などこなすには簡単なものばかりだ、もしこれが犯罪に加担、若しくは主犯になるような命令だとしたらと思うと汗が止まらない。

    けれども、今日見た命令も僕の中で中々の嫌な命令だ本当に僕は運がない「5か月以上の学校への登校をする」本当に災難だ。
    だが、命令を無視すると、どんな事が起こるかもわからない…

    クローゼットの奥に放り投げてあったブレザーを拾う、少し埃臭く着るのを躊躇いそうになるが袖を通し普段寝ている時間に登校をする。

    履きなれないローファーのせいで歩き方が変になる、こんな朝早くから通う学生は本当にすごいな、これが後何ヶ月も続くとなると嫌気が「やっと来たな!」後ろから強い衝撃で道に倒れこむ。

    ー久しぶりに会って最初がこれって痛いよ…帆乃佳

    ーうるさい!何回訪ねても居留守きめこむあんたが悪い!

    頭に今でも湯気が出てきそうなほどに上機嫌…訂正不機嫌な幼馴染 池野 帆乃佳 僕の家へ何度も訪ねてきたが居留守をしていたせいで会えずにいた。

    ーようやく、来る気になったの?

    ーまあ・・・ね。5ヶ月は通える自信あるよ。

    頭を叩かれる。

    ー毎日来な、毎日

    ー…はい

             ―――――――――――――――――


    不登校が自分の教室に入るのは死にたくなる以上の不安があるという、僕も肩書としては不登校なのだがそんな不安はない、あの教室に期待や、存在意義を感じなくなったあの日からどうでもよくなってしまった。

    唯一心配なのは自分の机があるのか、若しくは花瓶など置かれてはいないかその2択だけだった。

    帆乃佳とは同じクラスでもありよくポストにプリントなどが入っていたようなないような。

    教室に入るなり皆の視線が僕に来る。
    きっと「誰だあいつ」とか「転校生?」だとかそんな事しか
    思われていないだろう。

    キョロキョロと周りを見回すと一目で自分の机だと分かりそこに足取りを運ぶ、席替えでもしたのだろうか窓際の席に代わっていた。

    ー……あと何ヶ月も通うのか。

    通えというのは学校に足を運べがクリアなのか、6時限目まで終わればクリアなのかわからないせいで、2限でサボろうとしている計画がダメになりそうだ、危ないリスクは負わずが正解。

    ーよう、久しぶり

    顔をあげると知らない顔が二つ
    それもそのはず数週間学校に通ってはいたが上の空で名前など
    覚えている暇などなかったのだ。

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mou-mou

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