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アニ「星空の下で月に願う・・・」【1】

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  1. 1 : : 2017/11/08(水) 01:30:59
    初SSです!
    物語を書くのもウン年振りなので 温かい目で見ていただけると嬉しいです。

    リアルとの都合で更新は遅くなると思いますが、自分のペースでゆっくり書いていきたいと思います。お許しください。

    ※オリキャラがいます。
    ※多少ネタバレあり。
    ※キャラ崩壊も多少あると思います。

    ※アニが大好きなので、救いのない展開にしません。
    ※自分が思うこうなったらいいな、という設定で書きます。
    ※つじつま合わせの勝手な解釈や設定変更があります。

    エレアニ、ジャンミカ、ライクリ、ベルユニ要素ありです。

    よろしくお願いします。
  2. 2 : : 2017/11/08(水) 01:33:09
    −20xx年−

    窓から差し込むやわらかい朝日に照らされて、徐々に目が開いていく。

    「………」

    まだ意識ははっきりしない。
    自分が何者なのかさえ認識できないような感覚だ。

    「………」

    ここは……どこ…?

    やっとそんな問いかけが頭の中に浮かびはじめたとき、

    ブブォォー!キィーーーン!!

    頭の中に擬音のような音とともに、何かが流れ込んできたような気がした。

    それは”今の世界”と”私達が生きた世界”、両方の記憶…。

    「!…」

    私はベッドから飛び起きた。
    慌てて周りを見渡す。
    そこは”今の世界”での自分の部屋。”見慣れたはず”の机やカーテンが目に入る。


    段々と思考が整理されていく。

    そして一瞬目の前が眩い白い光に包まれたと同時に頭の中に女性の声が響きはじめた。


    「あなたの ”新しい約束”を、”新しい使命”を を果たしなさい…。そして ”暖かい世界” で生きていきなさい…」


    白い光が視界から消え、再び部屋の風景が私の目に入る。


    しばらく静寂が部屋を包んでいたが、

    「ありがとう…今度こそ私は ”選択” を間違えたりしない…」

    思わずそう呟いた私の頬を一筋の涙が伝った。

    −−−−−−−−−−
    −−−−−−−−
    −−−−−
    −−
  3. 3 : : 2017/11/08(水) 01:34:20
    −85X年−

    僕、アルミン・アルレルトは、早朝 ウォールローゼの”壁の外” に広がる平原を見つめたいた。

    もう巨人がいない平原を…

    小鳥のさえずりと近くの木に綱でいる馬たちの嘶きを少しの間聞きながら平原を見つめていると、後ろから声をかけられた。

    「アルミン…」

    振り返ると、僕が待っていた親友を含めた ”人類救国の英雄 ” と人々から呼ばれるようになった4人がいた。


    アルミン「待っていたよ、エレン…」

    エレン「あぁ…」

    そう応えたエレンとその少し後ろにいる3人、アニ・ライナー・ベルトルトの表情はとても硬い。


    アルミン「今日、出発するんだよね。馬は準備しておいたから」

    エレン「世話かけてごめんな…」

    僕は静かに首をふってエレンの気遣いに応えた。

    そんな静かなやり取りをしていると、エレン達4人の後ろに、3つの人影が近づいてきた。


    「行くメンツは揃ったようだな…」

    そう僕達に声をかけたのは”人類最強の兵士”、リヴァイ兵長だった。

    エレン「はい…」


    「エレン…」

    兵長の後ろから心配そうな声色でエレンに話しかけたのは、僕とエレンの”家族”であるミカサだった。

    ミカサの胸元には大事そうにひとつの箱が抱えられている。


    ミカサ「…本当にこれを私が持って行っていいの?…」

    エレン「あぁ…。しっかり”連れて”いってやってくれ…」


    そうエレンに言われたミカサの黒い瞳は心なしか潤んでいるように見える。


    ミカサ「でも、エレンかアニが”連れて”いったほうが喜ぶのでは…」


    「私たちは”約束”を果たすまでは”接する”資格はないよ…」

    今まで言葉を発していなかったアニが悲しそうに、呟くように言った。

    ミカサ「アニ…」

    アニの横にいるライナーとベルトルトは下を向いて肩を震わせている。


    リヴァイ「…あいつとの”約束”、しっかり果たしてこい…」

    エレン「兵長…」


    「本当は私たちも行きたい、いや行くべきなんだろうが…」

    兵長の横にいたエルヴィン団長も口を開いた。

    エルヴィン「まだ事後処理に兵団が追われている今、団長の私とリヴァイが壁内を離れるわけにはいかない。…落ち着かせて必ず”会い”にいく…」

    エレン「団長、兵長。無理を言って休暇を頂いて申し訳ありません…」

    リヴァイ「…気にするな。こっちはこっちで役目を果たす。…お前らは”ケジメ”をつけてこい…」

    エレン「…はい…」


    リヴァイ「…これを”渡して”おいてくれ。…詫びだ…」

    そういって兵長は、エレンに小さな袋に入った”飴玉”と調査兵団の象徴である自由の翼のエンブレムを手渡した。

    エレン「…はい、確かに。…きっと喜ぶと思います…」

    受け取ったエレンの瞳から涙が流れた。

    しばらくの間、静寂の中エレン達4人英雄達の嗚咽が響いた…。



    5分ぐらいたっただろうか、なんとか準備を整えたエレン達”人類救国の英雄 ”4人とミカサの計5人が馬に乗って、僕達残った3人の方に一礼すると走り出していった。

    5人はシガンシナ区に向かって行った。

    僕とエレン、ミカサ、そして今ここにいない僕達の大切な”仲間”の故郷に向かって…”約束”を果たすために旅立った。



    僕にはエルヴィン団長、リヴァイ兵長とともに壁内での事後処理をこなす日々が待っている。


    …事後処理をこなしながら、僕は本を書こうと思う。


    人類は巨人との戦いに勝利し、平和が日常になりつつある。

    ”4人の人類救国の英雄”の活躍と調査兵団の奮闘によって人類は勝利した、ということは英雄譚として語り継がれるであろう。


    でも僕は、手に汗握るような戦いだけでなく、そこに兵士や民衆の日常があったことも合わせて後世に伝えたい。

    ごく平凡な、当たり前の喜びや笑顔や悲しいことがあったこと。
    その日常が突然奪われたこと。

    …そして、平和を願い、誰よりも人類や”仲間”のことを想い、行動したのに”自分のこと”には背を向けてしまった5人目の”人類救国の英雄”がいたことを、僕は伝えたい。


    それが僕の”彼”への償い、いやきっと”彼”は償いと言う言葉を自分に使われるのは嫌がるだろうから”恩返し”になればと願いながら…。




    これは人類を救った英雄たちの英雄譚であり、どこにでもいる少年少女たちの日常と、おとぎ話しのような不思議な出来事を書き記した、ちょっと変わった物語…。

    −−−−−−−−−−
    −−−−−
    −−
  4. 4 : : 2017/11/08(水) 01:39:31
    初投稿で緊張しました。

    今日はここまでにします。

    更新は亀更新になると思いますが、頑張ります。

    見てくださる方がいれば嬉しいです。

    これからよろしくお願いいたします。
  5. 5 : : 2017/11/09(木) 00:02:44
    期待してます!
  6. 6 : : 2017/11/09(木) 21:05:03
    >>5
    ジャン↑↑(スマホ没収中)さん、ありがとうございます。
    頑張ります!
  7. 7 : : 2017/11/09(木) 21:05:43
    −845年−

    「その日、人類は思い出した
    ヤツらに支配されていた恐怖を…
    鳥籠の中に囚われていた屈辱を……」

    突然それは起こった。

    昨日までの日常が、人々の笑顔がまるで”嘘”だったかのように…

    シガンシナ区の”壁”が破られた。



    ピカッ!
    ドッゴォォォォオオオ!!


    エレン「あ…あれは…ッ!!」

    ミカサ「どうしたの、エレン?…ッ!?」


    アルミン「そんな…壁は50メートルもあるのに!なんで…なんで巨人がッ!」


    ドッゴォォォォオオオ!!



    ミカサ「ま、まさか…壁が…壊された…」


    エレン「とにかく、早く家に!母さんと逃げるぞ!!」ダッ‼


    ミカサ「わかった!」ダッ‼


    アルミン「うん!」ダッ‼




    エレン「母さん!!大丈夫?!」

    カルラ「エレン!無事でよかった!ミカサもアルミンも!!」

    エレン「巨人が入って来てる!早く逃げるぞ!!」ダッ‼

    カルラ・ミカサ・アルミン「ええ(うん)!」ダッ‼





    僕、アルミン・アルレルトはエレン達と4人で無我夢中に走って逃げた…。


    どのくらい走ったのだろうか、僕達は船着き場についた。

    そこには僕達と同じように逃げてきた大勢の人たちがいた。

    どの顔も疲労と驚き、そして悲しみの色に染まっていた…。

    そして、僕達の大事な”故郷”だったこの”地獄”から逃げ出すために船に乗った…。
  8. 8 : : 2017/11/09(木) 21:19:45
    …これは良作の予感!?

    期待です!
  9. 9 : : 2017/11/10(金) 00:33:09
    >>8
    みさごりさん、ありがとうございます。

    予感があたるように頑張ります!!

    みさごりさんの作品もいつも楽しみに読ませてもらっています!
  10. 10 : : 2017/11/10(金) 00:36:07
    ========
    少しときを遡り、壁が破られる少し前、シガンシナ区の南、外門の近く……



    ???「母さんもこっちに来てごらんよ!みんなで遊ぼうよ〜」

    ???妹「ねぇねぇ、早く〜!!」

    ???幼馴染「おばさん、早く早く!!」


    ???母「はいはい、ちょっと待って。本当に3人は仲良しだね〜」

    ???「本当にこっちの花畑が綺麗だよ!!母さん、早く来て見てごらんよ!!」

    ワイワイ、キャッキャッ!





    ピカッ!


    ???「…何??」


    ドッゴォォォォオオオ!!



    ???「何、この音は??」



    ヒューーーン!!



    ・・・なんで”壁"が飛んでいるんだ・・・



    ???妹「お母さん、危ないーーっ!!!」


    ???「母さんーーっ!!!」


    ドォォーーンッ!



    ブチュッ!
    ビチャッ!


    ???母「」



    ・・・なんでそれが母さんの上に落ちるんだよ・・・



    ???「・・・母さん・・・嘘だぁー!!!」

    ???「お母さん!!!」



    ???幼馴染「あ、あれはなに・・・」


    ・・・なんで壁の上からこっちを覗いてる”巨人”がいるんだ・・・

    ・・・壁は50mあるんだぞ・・・




    ???妹「お母さん!死んじゃいやーー!!!」ボロボロ


    ・・・とにかく逃げないと・・・


    ???「くっそー!!逃げるぞ!!!」


    ???妹「いやー!!お母さんがっ!!」


    ・・・とにかく二人を助けないと…とにかく走るんだ・・・



    ???妹「いやー!!!」ダッ‼


    ???「そっちは!!戻るんだ!!」ダッ‼


    ・・・壁に穴が…破片が当たって空いたんだな・・・

    ・・・どうしてその穴、人がちょうど通れるぐらいの大きさなんだよ・・・


    ???「危ないから外に出てはだめだ!!」





    ???妹「いやーいやーっ!!」ボロボロ



    ・・・だめだって…壁の外に出たら危ないって、戻らないと・・・


     ズシンズシンズシンズシン‼


    ・・・巨人の足音??なんでこんなにたくさん巨人がいるんだ・・・



    「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」ビリビリ


    ダッダッダッダッダッダッダッ!!


    ・・・何?…あれは女の巨人??…何か叫んだ。今度は走りだした?・・・


    ダッダッダッダッダッダッダッ!!


    バキィッ!
    ヒューン!

    ・・・そんなに慌てて走るから木を蹴飛ばしたよ…・・・

    ・・・なんで…なんで…こっちに飛んで来るんだよ!!・・・

    ヒューン!
    ドンッ!
    ブチュッ!
    ビチャッ!



    ???妹「」



    ・・・どうして、どうして!!妹にあたるんだよ!!どうしてっ!・・・





    ・・・母さんが、妹が…死んだの?・・・


    ・・・もうどうしたらいいかわからない・・・


    ・・・あれ…?なんか手を引かれて走ってる?・・・

    ・・・僕の幼馴染はしっかりしてるなぁ・・・

    ・・・こんな時でも僕に声をかけながら手を引いて走ってくれている・・・



    ズシンズシンズシンズシン‼
    ズシンズシンズシンズシン‼


    ・・・今度は、何?…・・・


    ズシンズシンズシンズシン‼
    ズシンズシンズシンズシン‼



    ・・・嘘でしょ…北の方からゴリラみたいな巨人が走ってくる…・・・


    ズシンズシンズシンズシン‼
    ズシンズシンズシンズシン‼


    ドガッ!

    ・・・だから…図体でかいんだから、走ったら危ないって・・・


    ドガッ!
    バキィッ!
    ヒューン!

    ・・・ほら…家、蹴飛ばした・・・


    ヒューン!


    ???幼馴染「!、危ない!!」ドン!

    ・・・あれ…?突き飛ばされた…・・・


    ヒューン!ヒューン!


    ドォォーーンッ!


    ブチュッ!
    ビチャッ!


    ???幼馴染「」





    ・・・嘘…嘘…・・・


    ・・・みんな…いなくなった…・・・








    ・・・どうして、僕はここにいるんだろ?・・・

    ・・・あの後、どうしたんだろ僕…あ、あの知らないおじさんに連れてきてもらったのかな・・・

    ・・・ここは船の上…?・・・


    ・・・どこに行くんだろ…?・・・




    ・・・僕がしっかりしていたら…3人とも死ななかったのかな…・・・




    ・・・どうして…どうして…僕だけ生きているんだろ…・・・



    −−−−−−−−−−
    −−−−−−−−
    −−−−−
    −−
  11. 11 : : 2017/11/11(土) 21:57:59
    少しずつ投稿していきます。

    勝手な設定が多々出てきますが、お許し下さい・・・

    そろそろオリキャラも登場させる予定です。
  12. 12 : : 2017/11/11(土) 21:59:08
    −847年−

    ”あの日”から2年たった。

    あのあと僕、アルミン・アルレルトとエレン、カルラさん、ミカサの四人は船でトロスト区へ逃げた。


    船で地獄と化した僕達の故郷、シガンシナ区を涙を流していた見つめていたエレンが絞り出すように、

    「駆逐してやる!!・・・一匹残らず!!、巨人共を・・・!」

    そう呟いたのを僕は今でも忘れられない…。


    …その後名前”だけ”の「ウォールマリア奪還作戦」があり、人口の約2割が犠牲になった。


    僕達は小さいころからの夢である”外の世界”に行き、”炎の水、氷の大地、砂の雪原”を見ることと、新たに加わった、いや加わってしまった”巨人を駆逐する”ということを実現するために、調査兵団を目指すことにした。

    カルラさんの反対もあったが、エレンが熱弁をふるい、何とか説得した。

    そして今日、僕はエレンとミカサと三人で104期訓練兵団にに入団する。


    −−−−−−−−−−
    −−−−−−−−
    −−−−−
    −−
  13. 13 : : 2017/11/12(日) 00:28:01
    −−訓練兵団入団半年後−−


    私は月と星を眺めるのが好きだ…

    その間、ほんの少しだけ心が落ち着くから。

    悲しい気分のときでも暗闇の静寂の中で時を止めて、自分の背中にのしかかっている悩みなんて夜空の大きさと比べたら小さなことだと思わせてくれるから…


    今日も夕飯のあと、ひとりで宿舎を抜け出した。

    私の悲しい気分のときの定位置になっている訓練所裏について、いつものように座ろうとすると、そこに人影が見えた。


    「…何をしてるんだい…?」

    普段の様子からは、あまり想像できない寂しげな瞳に違和感を感じ、思わず声をかけてしまった。


    「…アニ?…君の方こそこんな時間にどうしたの?」


    自分でも何故声をかけたのかわからない私、アニ・レオンハートにそいつはゆっくり振り返りながらそう返してきた。


    アニ「…私が先に聞いてるんだけどね…」

    私はそう目の前にいる男、アルヴァ・コールに言い返した。


    アルヴァ「…星って綺麗じゃない?」ニコッ


    アニ「…」


    アルヴァの何気ない返答と優しい笑顔に一瞬言葉を失くしてしまった…。

    こいつは訓練生の同期だか、「氷の女」を”演じて”いる私は勿論接点なんかほとんどない、ただの”顔見知り”だ。

    個性豊かな同期たちの中ではさほど目立たないが、頭は抜群に良くて座学の成績はトップ…

    もしかしたら歴代でもダントツの頭脳と判断力の持ち主かも…なんて教官たちが話していたっけ。


    でも、さっきの寂しげな瞳との違和感を感じながら、その表情になぜだか少しほっとする私がいた。

    性格も頭も良さを鼻にかけず、出しゃばることもなく、人の話しを聞くのが上手いらしく、周りに常に誰かしらがいると同室のミーナが言っていた。


    そんな私が知っているこいつの情報からなのか、

    アニ「…私もそう思うよ…」

    自分でもびっくりするくらい穏やかな声色で私はそう応えていた。


    アルヴァ「…だよね。…でもあんなに綺麗に輝いているのに、今あの星たちは存在しないかもしれない…」


    アニ「…」

    アルヴァ「…だからかも知れない、星の光は人の心を静かに癒やす…」

    私からゆっくり視線を夜空に戻しながら、アルヴァは語りかけるように言葉を続けた…。
  14. 14 : : 2017/11/12(日) 13:35:22
    アニ「…さすが座学トップ様だ…。難しいこというね…」

    ちょっと皮肉っぽく、でも自分でも分かるくらい声色も表情も穏やかに返す。

    …何故だろう、とても心が凪いでいる。


    アルヴァ「…もう、茶化さないでよ…」フッ、ニコ


    また視線を私の方に戻しながらアルヴァは少し照れたように言った。


    アルヴァ「星空って本当に広い…。なんだか見つめていると自分の存在や想いがどうでもいいくらい小さなものに感じる…」

    そして、再び視線を星空に向けて独り言のように言葉を続けた…。


    アニ「……」


    私は少し驚いた…。

    私が星空を見つめる理由と、今アルヴァが口にした理由がとても似ていたから。

    だからのなのかな、ほんの少しだけ私の心を覆っている”氷の壁”が溶けて、少し自分に踏み込んだ言葉が出たのは…。
  15. 15 : : 2017/11/12(日) 17:53:11
    アニ「…あんたは”過去”って何のためにあるんだと思う…?」

    言葉にしたことを自分でも驚きながら、私は星空を見上げながら言った。


    アルヴァ「…アニも難しいこと訊くね…」

    アルヴァは少し意表を突かれた様子だったが、星空から私に視線を戻すと言葉を続けた。

    アルヴァ「…過去は変えれない、戻れないもの…」


    …そう、だよね…。私の”過去”には戻れない、変えられない、消えない…

    …だから私はこの背中に”過去”と”罪”を背負って生きていくしかないんだ…



    アルヴァ「でも…」

    後悔にも似た思いを頭の中に巡らせていると、アルヴァが私の瞳をまっすぐ見つめながら、一瞬強い光をその目に宿し、でもすぐに暖かい表情に戻り…

    アルヴァ「未来は”過去”の積み重ねでできる…。」


    アニ「!……」

    私は息を呑んで、思わずアルヴァの顔を見つめた。


    アルヴァ「…今、この瞬間もすぐに”過去”になる…。だからこの”瞬間”を自分の思うように生きる…。」


    アルヴァはまた視線を星空に戻しながら、何か自分に言い聞かせるように…


    アルヴァ「それしかできない…。今、この瞬間に僕達が見ている”星”の輝きは、何万年も前に星ができる限りの力で輝いた”過去”…」


    アニ「……」

    星と月に照らされたこの空間に少しの静寂が流れた…

    それを破ったのは、ゆっくりと私の方に向いたアルヴァだった。


    アルヴァ「人間は、結局自分で自分を納得させるのが一番難しい生き物なんだと思う…」


    アルヴァ「”過去”と”未来”の追いかけっこの中で、”未来”の自分が少しでも納得するように”今”を生きていく…」


    アルヴァ「…”過去”は無駄でない、”今”を生きるための道標…それがどんな後悔や苦しみを含んだものであっても。”自分の未来”は過去から学び、悩んだ自分が作るんだ・・・、過去同じ”後悔”をしないために、少しでも明るく、”生まれてきて良かった”と思えるように…」


    そう言い終えるとアルヴァは私の目を見つめた。強い意志と優しさが混じった目で…。

    …アルヴァの言葉は、ほんの少しだけ表面が溶けていた私の”氷の壁”の中の心の奥まで、静かにでも強烈に突き刺さった。


    アニ「……あんた、頭いいのはわかっていたけど、とびっきりのロマンチストだったんだね…」

    動揺した心を悟られないように、強がりともいえる言葉をアルヴァに投げかける。


    アルヴァ「ははっ、柄にもなかったかな…。」

    アルヴァは少し照れたように苦笑いを浮かべた。


    アルヴァ「今日は月と星が綺麗だし、アニと話しができて嬉しかったからか、恥ずかしいこといっぱい口にしちゃったね…」


    アニ「!…。今も充分恥ずかしい言葉言ってるよ…」

    私はアルヴァの「話しができて嬉しかった」という言葉に焦りながら何とか言葉を返した。

    …何故か私まで恥ずかしかったので、そっぽを向きながらだったけど。


    アニ「…。私と話しができて嬉しかったのかい…?こんな無愛想な女でも…?」

    …私はどうしてこんなこと、コイツに聞いているんだ?


    アルヴァ「そりゃ、嬉しいさ…この先2年以上も苦楽をともにする同期の中で友達ができるのは。」



    …何事でもないように、笑顔で返された。

    …”友達”、か…


    アルヴァ「…それに、アニは表情豊かだよ?わかりにくいかもしれないけど」


    アニ「!…何言ってるんだい…バカ…」

    そんな一言を付け加えてくるから、恥ずかしい気持ちが抑えられない…ずっとそっぽ向いたままだ…。


    アルヴァ「バカとは酷いなぁ…。冗談でもなく本心だし、アニの雰囲気が僕には話しやすったから…」


    …なんだろう、心がかき乱される。

    でも、決して不快ではない…。


    アニ「…ほんとロマンチスト・バカだね、あんた…。でも…私も嫌ではなかったよ…」

    そう囁くように言った私は、ここに来てから初めての微笑みを浮かべた気がした。


    アルヴァ「ロマンチスト・バカ、って新しい、嬉しくない命名だな…。でも良かったよ、アニが嫌じゃなかった、と言ってくれて。」


    アルヴァの言葉とその柔らかい笑顔、そして雰囲気に心が穏やかになっていくのがわかる…。

    いつも一人で星空を眺めているときとは違った種類の心の落ち着きだ…。
  16. 16 : : 2017/11/12(日) 17:57:14
    アルヴァ「…遅くなっちゃったね。そろそろ戻らないと教官にどやされるかな…」

    アニ「そうだね…。なんか邪魔して悪かったね…」

    アルヴァ「ううん。僕は楽しかったし、友達できたし、…いつも違った安らぎの時間だったよ…」

    アニ「また、そんなことを……。”友達”、か…」

    アルヴァ「…いやかい?」

    ちょっと不安そうなコイツの顔…


    …”友達”か…。”使命”を持った私には必要のないもの、作ってはいけないもの…

    …だと思っていた…。ついさっきの”過去”までは。


    アニ「…いいや…。あんたがそう思うんなら、そう思っていて構わないよ…」


    あまり迷わずにそんな返答をしたのは、何故なんだろうか…?

    コイツの話しに影響も受けた…?


    でも”今”の私がそう思ったから、そんな言葉が素直に口から出た。


    …素直に言葉にするには私の柄でもないので、かなり回りくどい言い方だけど。



    アルヴァ「…ありがとう。」フフッ


    アニ「…フンッ…」

    ちょっと、いやかなり恥ずかしいので、そっぽを向いたまま短く返す。


    アルヴァ「戻ろうか…」

    アニ「あぁ…」


    そう言ってそれぞれ宿舎の方に歩きだす。


    アルヴァ「じゃ、ここでね」

    アニ「あぁ…」


    男女の宿舎への分かれ道で、そう声を掛け合う。


    アルヴァ「おやすみなさい、アニ」

    アニ「…おやすみ」


    …おやすみ、という挨拶さえ久しぶりに口にした気がする。

    それぞれの方向にお互いがあるき出したとき、

    アルヴァ「ありがとう、またね…アニ」

    後ろから声がした。

    アニ「…うん」


    …私はそっけない応えをして、そこを離れていく。



    「…こちらこそ、ありがとう。またね…」


    多分、あいつの耳には聞こえないほどの呟きを残して…。


    今日の私は、どうにかしてた…。

    一人で歩く、女子宿舎までの短い間にそんなことを思う。

    …でも…

    不思議なほど、嫌ではない感情もある。



    「…自分の未来は自分が作る、か…」

    「生まれてきて良かった、と思えるようにか…」



    あいつが今日、口にした恥ずかしい、でも私の心に染みた言葉を思い返し、呟いてみる…。


    「とりあえず、”明日”を生きてみよう…」

    最後にそう呟いた私の顔は、多分笑顔だったと思う。

    …頬を涙も伝っていたけど…。



    あいつが言ったことが正しいのか、私に理解できたのかはまだわからない…。

    でも、私は確かに今日あいつと過ごした時間の中で、ほんの、本当に少しだけど表面だけ溶けた心の中に、小さな暖かい光が生まれたような気がしていた…。

    その光が私にとって、正しいものなのか、必要なものかさえもわからないけど。


    「光が生まれた」、という自分の感情と、今日の時間、アルヴァという人間と過ごしたひとときが嫌ではなかった、ということだけは素直に認めよう…。


    そう勝手に自分で結論づけると、目を拭って宿舎への足取りを早めた。


    −−−−−−−−−−
    −−−−−−−−
    −−−−−
    −−


    私、アニ・レオンハートにとって、この日アルヴァ・コールと過ごした時間が、人生の”歯車”を自分で回し始めるきっかけになること、そしてこの時、あいつに聞かなったことがあったことを悔いることを知るのは、もっと”未来”のことだった…。
  17. 17 : : 2017/11/12(日) 23:15:38
    =========

    星空の出来事からさらに数ヶ月後…


    あの日から少し私は変わったのかもしれない…。


    何かと部屋で話しかけてくるミーナに、最低限の会話(まだ挨拶と向こうから話しかけてきたことに応えるぐらいだけど)をするようになった。

    それに…


    「なあ、それ俺にも教えてくんないか?!」


    対人格闘訓練のとき、ライナーと絡んできた死に急ぎ野郎こと、エレンの頼みに何故か頷いてしまった。

    …私らしくもないね、と思いながらもなんとなく夜の自主練習に付き合う時間がくるのを待っているを最近は自覚している。


    今日も訓練所の裏でアイツがくるのを待っている。

    私は約束時間より少し早くきたから。

    アイツが来るのはいつも約束の時間ギリギリだ。


    …なんだか癪にさわるね。

    私がアイツが来るのを楽しみに待っているみたいじゃないか。

    全く乙女をこんな暗いところで待たせるなんて、全く女の扱いがわかってない…。


    …一人でちょっと恥ずかしい、どうでもいいことを考えていると、


    エレン「よっ、待たせたな!」


    なんて脳天気に死に急ぎ野郎は声をかけてきた。

    アニ「…遅いよ…」

    さっきまで考えていたことを打ち消すように、わざと不機嫌な調子で返してやる。


    エレン「そんな怒るなよ…遅れてねえだろ…?」

    アニ「フンッ、さっさとはじめるよ、きなっ!」

    エレン「おおっ!」





    アニ「…今日はこれくらいにしておこうかい…」

    エレン「おぅ、今日もありがとうな、アニ!」ニコッ

    アニ「…別にいいよ…」フフッ

    練習を終えて、私が終わり切り出すとエレンは、屈託のない明るい笑顔でお礼を言ってきた。

    …いつもこの笑顔に私の心は微妙に揺り動かされる。

    知らずと私も表情が柔らかくなるのを感じる…。


    エレン「…やっぱりお前は笑った顔も可愛いな…//」


    アニ「//…な、何バカなこと言ってるだい!」バシッ!

    急にびっくりするようなことを言いやがるので、思わず蹴りが出た…。

    エレン「!、痛ってなー。なんだよ本当に思ってること言っただけだろ…」

    アニ「っ!…本当に鈍感バカだね、あんたは…」


    …恥ずかしいからに決まってるだろ、それぐらい察しろバカ…。

    ハッハッ、とアイツの笑い声が聞こえる。


    本当にこいつといるとペースが狂うよ…。嫌じゃないけどね…。


    なんだか悔しくて、アイツから顔をそむけるとふいに綺麗な星空が目に入った。

    アニ「…あんた、星空は好きかい…?」

    自分でも唐突なこと言っていると思いながらも、そんな問いかけをエレンにしていた…。
  18. 18 : : 2017/11/13(月) 00:20:23
    エレンがちょっと戸惑った感じが伝わってきたが、

    エレン「ああ、オレは好きだぞ!」

    エレンは私から視線を星空に向けて、静かに、でもしっかりと言い切った。

    アニ「…なんでだい…?」

    エレン「…だって綺麗だろ…?」

    何故そんなことを訊く?、みたいにエレンが言った。


    アニ「…あんたは本当に単純だね…」

    なんだか自分が色々考えているのが悔しくて、でもそんな単純に自信を持って言い切れるエレンが羨ましくて、ちょっと皮肉っぽく私はため息混じりに返してやった。

    エレン「馬鹿にしてんのか?…綺麗なもの綺麗、そんな星を見て好きって思うことに難しい理由がいるか?」

    皮肉を言った私を、真っ直ぐに見つめながら聞き返してきた。

    最近、私の心を揺り動かし、そして穏やかにしてくれる明るく、優しい笑顔を浮かべながら…。


    アニ「…そうだね…。私は色々と面倒くさいことを考えすぎるのかもしれないね…」

    エレン「…」

    アニ「…」


    私もエレンも星空を見上げながら、少し言葉を発すことを止めた。しばしの沈黙が流れる…。



    アニ「…私は綺麗な星空を見上げることで、心の中をからっぽにしたいんだ…」

    エレン「…」


    先に沈黙を破ったのは私だった。

    エレンは黙って聞いてくれている。

    能天気で、鈍感で、事あるごとに巨人を駆逐してやる、なんてのたまう死に急ぎ野郎だけど、人の心の動きを察する能力は高いことに、最近私は気がついた…。

    アニ「…私は星の綺麗な光に照らされて、そのまま時が止まって消えてしまいたいって思うことがあるんだ…」

    そう、ちょっと素直な気持ちを言葉を呟いたとき、自分でも気づかずうちに頬を涙が伝った…
  19. 19 : : 2017/11/13(月) 22:47:01
    エレン「……」

    アニ「……?…何しんてだい…?…」


    エレンが正面から無言で私の頭を抱きしめてきた…


    …暖かい…


    いつもだったら言葉より先に蹴りが出そうな状況に関わらず、私の頭の中に浮かんだのはそんな感想だった。


    エレン「…いいから今は泣いとけ…」

    アニ「……」


    私はポロポロと涙をこぼしながらエレンの顔を見上げる…。
    なぜ涙が止まらないのかもわからない…。

    エレン「オレ、難しいことことはわかないけど、涙が出るときは出せばいいと思うぞ…」

    そう言ってエレンはいつもとは少し違う、優しい笑顔で私を見つめてくれた。


    エレン「…消えたいなんていうなよ…悲しくなるだろ…」

    そう言ったエレンは私の頭を抱いて手を肩に回し、抱きしめた。


    …私は抵抗せずにエレンの腕に、暖かい場所に身体を預けたまま、

    アニ「…どうしてあんたが悲しくなるんだい…」

    私はまだ涙を流しながら問いかけるように、すがるようにエレンに言った。
  20. 20 : : 2017/11/15(水) 22:37:38
    エレン「…オレは鈍感らしいけど、大切な仲間が泣いてるのをほっととけるほど薄情じゃない…」

    エレンの顔は見えないが、とても暖かい声色で応えながら頭を撫でてくれる…。


    エレン「…仲間が消えてしまいたい、なんて悲しいこといってるとオレまで悲しくなる…」


    アニ「…う、う、うっ…」

    私はエレンの腕の中で、その暖かさの中でただむせび泣くことしかできなかった…。


    =====

    オレ、エレン・イェーガーは、腕の中で泣くアニの頭を撫でていた…

    …なぜオレが目の前で泣くアニを抱きしめたのかは自分でもわからない。

    ただ、そうしたいと思ったからだと思う…。

    この対人格闘がとんでもなく強く、無愛想な少女がなんで涙を流したのか、”消えたい”なんて口にしたのかは、オレには正直わからない…

    でも、その姿を目にした時にオレは…


    とにかく”守りたい”と思った…


    数ヶ月前から一緒に自主練をしていて感じたこと、それはこの少女の”わかりにくい優しさ”と凄まじく重い”何か”を背負っている、ということだった。

    …本当は、心の底は優しさで満ち溢れているのに、それを何か重いものが蓋をしようとしている、そんな風に感じた。

    それはとても魅力的で、神秘的で、…とても悲しいことのように思えた…。


    今はただ抱きしめて、頭を撫でることしかできない。

    でもオレは、いつの日か、いやできるだけ早く、この少女の背中にのしかかり、心に蓋をしてる”重いもの”を一緒に重さを感じ、取り去ることができたら…と考えるようになっていた。
  21. 21 : : 2017/11/17(金) 21:59:40
    座学がなくなったらアルミンの存在意義がなくなるね
  22. 22 : : 2017/11/18(土) 17:56:19
    着たい
  23. 23 : : 2017/11/19(日) 22:37:43
    >>21
    コメントありがとうございます。

    アルミンには大事な役割りを持ってもらって存在意義がなくならないように頑張ります!

    >>22
    ありがとうございます!
  24. 24 : : 2017/11/19(日) 22:38:04
    私、アニ・レオンハートはエレンの腕の中に抱かれながら、表現のしようのない暖かさで目を閉じていた。


    いつからだろうか、エレンの笑顔を見ると心の中に”暖かい光”が広がるように感じる…。

    最初、その笑顔を見たときは何故か苦しいだけだったのに…。

    ”今”、この瞬間に感じたことを大切にしよう、と思ったときから、私はその笑顔を欲するようになった。


    エレンは真っ直ぐに生きている。

    …本当に馬鹿みたいに。

    鈍感、だと思うけどそれは心に邪念がないことの表れだと思う。

    真っ直ぐだから、言葉に偽りがない…。

    笑顔も、言葉も暖かくてやさしい。

    まるで太陽の光、いや木の葉があっても、それを包みこみながら地面に届き、やさしい光を周りに届ける”木洩れ陽”のような存在だ。


    私とは違う、正反対のような人間だ。


    …だから私は、そんなエレンを眩しくおもい、惹かれているのだろう…



    アニ「…ありがとう…」


    以前の私であれば、そんなお礼の言葉なんて口にしなかっただろう。

    でも、自然に口から出た。


    エレン「…礼なんていいから、落ち着くまでもう少しこのままいろ…」


    エレンの口調はとても穏やかで、暖かい…心が落ち着く…。

    ずっと、この暖かい腕の中で穏やかな気持ちでいたい…、と願ってしまう。


    …それが”許されない”ことだとわかっていても…。

    ”罪深い過去”を背負った私が、そんなことを願っていいはずがない…。

    エレンに”仲間”だと言ってもらう”資格”なんてない…


    でも、でも…。

    だからこそ、この暖かさにすがりたい…。


    ”今”だけでも、この暖かさに包まれて、穏やかな気持ちでいよう…。


    ”今”、エレンの腕の中で涙を流していることも大切に…。
  25. 25 : : 2017/11/21(火) 17:15:37
    きたい
  26. 26 : : 2017/11/24(金) 23:53:57
    >>25
    ありがとうございます!
  27. 27 : : 2017/11/24(金) 23:54:25
    ========
    数日後の夜…。


    「キレイ…」

    私は何故か星空を見上げるために、夜、外に出ていた。

    こんなことをしようと思ったのは初めてかもしれない。


    「でも、寂しい…」

    こんな台詞が口から出て、自分の瞳が涙で潤むを感じた。

    …こんな自分、私らしくない。

    私はこんなに弱い人間ではない…

    私は強い…はず。


    でも、月と星の光に照らされて、どんどん自分の心の中の弱い、いや素直な部分が見えてくる気がした。

    今度はしっかりと頬を涙が伝うのがわかった。

    涙が落ちるのが嫌で、私は星空を見上げる…


    その時、後ろから声をかけられた。
  28. 28 : : 2017/11/27(月) 22:47:45
    「…ミカサ…?」


    私、ミカサ・アッカーマンにそう声をかけたのは訓練兵同期のアルヴァ・コールだった。


    ミカサ「アルヴァ…どうしたのこんな時間に?」

    私は溢れている涙に気づかれるのが嫌で、星空を見上げたまま問い返す。


    アルヴァ「星と月を眺めに時々来るんだ…。ミカサこそ珍しいね、初めてここで会ったね」


    アルヴァは同期の中でダントツの座学の成績を誇っている。

    アルミンより頭のいい人間がいることに、最初かなり驚いた。


    ミカサ「…私も星も見に来た、初めて…」


    そう私が返すと、アルヴァが頷いた気配はあったが何も言葉にしなかった。

    しばしの沈黙を周りを包む。

    きっと、察しのよいアルヴァのこと、私が泣いているのには気づいているはず。

    …でも何も聞かないでいてくれる。

    私は最初、頭だけが良いツマラナイ人間かとアルヴァのことは思っていた。

    私にとって訓練兵の人間は、エレンとアルミンという家族とそれ以外の人間と、いう区別の仕方だった。

    アルヴァも”その他”の人間の一人だと思っていた。


    でも違った。

    アルヴァは人の心のわかる人。

    座学が得意、という共通点があったからか、私たちの中で最初に仲良くなったのはアルミンだった。

    そして、何かと人とぶつかることの多いエレンまでもが仲良くなった。

    私はエレンとアルミンが仲良くアルヴァと話すのをただ聞いているだけだった。

    しばらく私とアルヴァは、それだけの関係だったが、次第にアルヴァがエレンとアルミンのことを大切な仲間として接していることに気がついた。

    それは、あたかも家族のような優しさと、裏表のない気遣い、そして本気の心配だった。

    私にはそれがすごく新鮮だった。

    他人になぜそこまで、心を開けるのか疑問だった。

    かと言って、他人の心にずかずかと踏み込んでくるような真似は決してしない。

    相手を思いやることができる人だった。


    そして、その”思いやり”は私にも向けられていることに気がついた。

    それはまた新鮮で、嬉しいことだった…。

    私にエレンとアルミン以外に、心を許すことができる人間がいたことに驚いた。


    私はうまくアルヴァに話すことができているかどうかはわからない。

    でも、”それ以外の人間”と話すときのような面倒臭さは一切感じなくなっていた。

    アルヴァも私の話しを、私が話すペースを崩さずに聞いてくれる。

    エレンやアルミンとも違う安心感をアルヴァには感じていた。


    だからなのかもしれない、

    次の瞬間に、私の口から弱音が出たのは…。
  29. 29 : : 2017/12/03(日) 23:26:39
    ミカサ「…寂しい…。エレンが私から離れていってしまう…。」

    そう口にした時、私は涙が頬を伝うのをもう隠そうとしなかった。

    アルヴァ「…アニとのこと?」

    ミカサ「…うん。」

    私は最近感じている、いやわかってしまった。

    エレンとアニとの間が急速に縮まっていること、そしてエレンが…アニのことが好きなこと、アニも恐らくエレンに好意を抱いていることを…。


    ミカサ「…エレンとアニはお互い魅かれ合っている。お互いの気持ちを伝え、通じ合えば…エレンに私は必要なくなる…」ボロボロ

    言葉にすると、胸がしめつけられ大粒の涙が止まらない…。
  30. 30 : : 2017/12/04(月) 18:06:34
    きたい
  31. 31 : : 2017/12/10(日) 20:45:07
    >>30 ありがとうございます!
  32. 32 : : 2017/12/10(日) 20:45:12
    アルヴァ「確かにエレンとアニは魅かれ合っていると僕も思う…」

    ミカサ「!…」

    アルヴァ「…でも、例え二人が気持ちを通じ合わせたとしても、エレンは変わらないと思うよ。」

    ミカサ「……」

    アルヴァ「エレンとアニが恋人同士になったとしても、ミカサとエレンは”家族”じゃないの?」

    ミカサ「…でも…」

    アルヴァ「エレンは自分の大切な人を”必要ない”なんて思う人かな…?」

    ミカサ「それは…」

    アルヴァ「エレンが”家族”を、”仲間”をどんな風に思う人間なのか…、僕なんかよりもミカサの方がよく知っているよね?」
  33. 34 : : 2018/01/01(月) 01:27:09

    私はアルヴァの言葉を聞いて、思考を整理する。

    ・・・確かにエレンは”家族”を大切にする人だ。

    たとえアニと恋人同士になったとしても、アルヴァの言うとおりエレンと私は家族・・・。


    アルヴァに言われたことを噛み締めていると、アルヴァが微笑みながら言葉を続けた。


    アルヴァ「ミカサも自信を持って。エレンの”大切な家族”だということに。」

    ミカサ「!・・・」


    アルヴァの言葉はとても優しく、そしてとても強く私の心に染込んできた。

    ミカサ「・・・ありがとう。」

    ミカサ「私は強い、強く生きる。」

    ミカサ「自分のために。・・・そして”大切な家族”のために。」

    ミカサ「だから受け入れる、エレンがアニのことを想う気持ちを・・・。」

    自分でもびっくりするくらいはっきりと言葉にできた、迷いと恐怖が消えた自分の気持ちを。


    アルヴァ「そうだね、ミカサは強い。」

    アルヴァはゆっくりと私に話しかけてきた。

    アルヴァ「でもねミカサ・・・」

    アルヴァは私の名をよんだ後、少し間を置いて

    アルヴァ「人に弱い自分を見せることや、頼ることも”強さ”なんだと僕は思うよ?」


    私はその言葉を聞いた瞬間に、自分の心が暖かいものに包まれるような、我慢していたことが溢れ出すような感覚におそわれ、声をあげて泣いていた・・・。
  34. 35 : : 2018/01/01(月) 18:03:28
    −−−−−続く−−−−
  35. 36 : : 2018/01/22(月) 06:57:06
    続きのスレッドを作成しました。

    http://www.ssnote.net/archives/57486

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