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俺と魔王と

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  1. 1 : : 2017/08/13(日) 04:57:48
    八幡×陽乃SSです。
    短編なので、そこんところよろしくです。
  2. 2 : : 2017/08/13(日) 04:59:50
    期待です
  3. 3 : : 2017/08/13(日) 05:33:16
    大学受験生になってから半年を過ぎ、世間はもう夏休みに入っていた。
    これはいつも俺からしたら課題さえ終わらせれば惰眠を貪れる最高なvacationな訳だが、今年はそうもいかず、昼夜勉強に明け暮れる毎日となった。

    「ふぃ〜疲れた……」

    「お兄ちゃん、お疲れ様」

    「おう、小町か、お兄ちゃん疲れた。癒して」

    「じゃあビンタしたげる」

    どんな鬼畜妹だよ!嫌だわ!純粋に痛いから嫌だわ!

    「ま、まぁ冗談で……ってあれ?」

    そう言って冷蔵庫を開けてみたものの、中を見てみるとあらビックリ、マックスコーヒーが無いではないか。

    「な、なぁ小町、マックスコーヒーを……」

    「ごめんねお兄ちゃん、今ちょっと宿題で忙しいの」

    と、ケータイ、いわゆるスマホを片手に持ちながら言う我が妹。
    絶対忙しくないよね?なんなら俺の方が十べぇ忙しいよね?忙しすぎて界王拳でちゃうまである。

    「はぁ、しょうがねぇ、どうせ足りねぇし、1ダース買ってくるか」

    そう言って、リビングの扉を開け、地獄の空間へと身を委ねる。

    「お兄ちゃん行ってらっしゃーい」

    そんな生意気な声を背に受けつつ、重い重い玄関の戸を開き、財布を手にして外へと足を運ぶ。

    今は8月上旬、暑いってなもんじゃない。

    そしてチャリの鍵を開け、跨り、ペダルを漕ぎ出す、だが暑さで漕ぐ力も弱々しく、これこそまさに弱虫ペダル!なんつって。


    「はぁはぁ、あっちぃ、スーパーまだかよ……」

    寒いギャグでなんとかなるかと思いきや、世の中そんなに甘くないらしく、全然暑い。
    耳を刺すような蝉の声も混じって、余計を夏を意識させられる

    と、そんなこんなでどうでもいいことを考え続けていると、前方にスーパーが見えてきた。


    「ここが天国か……」

    そんなことを呟きながら、駐輪場に自転車を停め、スーパーへと入っていく
    そんな時

    「あっれー?比企谷君じゃん!」

    苦手な声が後方から聞こえる。無視しよう、うんそれがいい。それしかない!!

    そして早歩きをすると

    「連れないなー、無視するなんて」ギュッ

    なんて言って抱きついてきた。
    あー!近い近い近い近いいい匂い近い気持ちいい!

    「で、比企谷君はナニシテルの?」

    怖い、聞き方が怖い。なんというか生物的本能に基づいた恐怖を与えてくるなこの人。

    「ま、マックスコーヒーを1ダース、買いに来たんですよ……」

    「うん、なら暇だね」

    「いや、今日はこれ買ったら勉強があれで、その、家族の方もあれがこれしてその、色々…」

    「嘘だよね」

    「ひゃい」

    「じゃあお仕置きとして、今日一日中付き合ってもらいます」

    「いや、受験生なんで……」

    「比企谷君ずっと勉強してるでしょ?」


    「息抜きも必要、だよね?」

    「ふぁ、ふぁい」

    そうして、俺と魔王の1日が始まった




  4. 4 : : 2017/08/15(火) 03:21:53
    さぁ、始まりました魔王との1日ゲーム。1回戦会場はお高そうなカフェでございます。さてここで比企谷選手はどのような対応に出るのでしょうか、ぐらいの実況が出来そうなほど焦ってます。
    理由はアイラブ千葉のTシャツに短パンでサンダル。これだけを見ればよく夏で見かける服装なのだが、場所が問題で、お高そうなカフェなのだ。しかも雪ノ下さんはスゲェオシャレそうな服着てて俺の場違い感がすごいからだ。

    「さぁ、比企谷君何頼もっかー」

    「あ、あの俺服装が……」

    「あぁうん、大丈夫気にしてないよー」

    「………」

    おっとここで黙ってしまう!黙っちゃうのかよ。まぁ本人に気にしてないと言われてしまえばおしまいだからな。

    まぁ幸い人も少なく視線を集めることがないから全然良いんだけど。

    そんなことを考えていたら、ウェイトレスの人が来た。
    俺何も決めてないんですけど……

    「私アイスティーにしようかな。比企谷君は?」

    「えーと、じゃあアイスコーヒーで」

    とまぁ、無難な物を頼むと、ウェイトレスさんが小さくお辞儀して、カウンターの方に戻っていく。
    それにしても雪ノ下さんがあまり喋らない。普段は『雪乃ちゃんとはどう?上手くいってる?』とか聞いて茶化してくるのに。

    「あ、比企谷君、私が全然喋らない意外。みたいな顔してるね」

    なんでさらっとこの人は思考を読むのだろうか。なに?雪ノ下家では何か超能力の類の研究でもしてるの?
    姉は思考を読むし妹は(場の雰囲気を)凍らせるし。

    「まぁこれでも比企谷君に話したいことはいっぱいあるんだよ?」

    と、雪ノ下さんは普段とは何一つ変わらない調子で話しかけてくる。
    それにしても話したいこと、世間話等だろうか?
    それが気になり、俺は口に出した。

    「話したいこと、ですか?」

    そう言うと、雪ノ下さんは首を小さく縦に振ってから間を少しだけ空けた。

    「まぁ、私の恋の話かなー、あとは奉仕部が上手くやってるかな?とか静ちゃんにいい相手見つかったかな?とか」

    「平塚先生の事は、その、あまり」

    「そうだね、静ちゃん、この前の合コンも失敗したみたいだし」

    不憫!頑張ってるって分かってるからほんとに不憫!いい加減誰かもらってやれよ、じゃないと本当に俺が貰いそうな勢いなんですが

    ところで、1つ気になるワードがあった。

    「まぁ、それは別として、雪ノ下さん、好きな人いたんですね。意外です」

    「まぁねー、ま、比企谷君はわかると思うけど」

    分かると思うけどってそんな無責任な。恋人経験=年齢の俺が分かるわけないじゃないですか。

    「分かるわけないって顔してるね」

    「……思考を読むのはやめましょうよ」

    「あははは!いやー比企谷君って分かり易いからさ………だからちょっと傷付いたな」

    傷付いた?俺のせいで?何かしたかな……別に雪ノ下にも何もしてないけど、寧ろされてる側だけどね!

    「スーパーの前でたまたま見かけた時に声かけたでしょ?その時に比企谷君露骨に嫌な顔してたよ」

    「……本人の前で言うのもアレですが苦手なんで」

    「まぁ私が常日頃からあんな事してたのがわるいんだけどね。今日だって強引に連れてきたわけだし」

    「で、それがなんで傷付く理由になるんですか?」

    そう言うと、少し雪ノ下さんが驚いた顔をするが、すぐに戻して

    「……君は本当に理性の化物だ」

    小さく呟いた。そして取り繕うように

    「いや、君が悪いわけじゃないんだけどね、けどお姉さん困ったな」

    「何に困るんですか……」

    そうやって少し呆れたように聞くと

    「比企谷君があまりにも罪な男だから、かな?」

    「質問に質問で返さないで下さい」

    「あはは!そう言うと真面目なところも好きだよ」

    も?………いや、やめよう。きっと違うから。

    気づけばウェイトレスの人が注文の品を持って歩いてきた。
    俺と雪ノ下さんはそれを受け取ると、それを飲みながら先程のような調子で談笑をしていた。もっとも、これらの会話を談笑と呼んで良いのか分からないが。
    楽しくなかったと言えば嘘になってしまう。

    ある程度飲み物を飲んだところで陽乃さんが提案する。

    「そうだ、お姉さんが勉強教えてあげよっか?」

    「けど、休憩するっていう体で……」

    「私の気が変わりやすい事ぐらい知ってたでしょ?」

    そう言われ、言葉に詰まる。もとより、俺がこの人について悩まされてたのは自由奔放さであったのだが、雪ノ下さんは難関国立大学に通ってるわけだから、それも悪くないと思う。

    「分かりました」

    「じゃあ今日からみっちり教えてあげる」

    ………………ん?今日から?

    「じゃあ比企谷君君の家に行こう」

    そうして雪ノ下さんは席を立つ

    俺と魔王の1日は当分終わりそうになかった。




  5. 5 : : 2017/08/17(木) 05:00:14
    という訳でやって参りました2回戦会場比企谷家です。このくだり飽きたな……
    まぁそんなこんなで今は雪ノ下さんに数学を教えてもらってる。いや、ほんとに1年の範囲から出来ていないのはビックリした。まぁ分かってたけど。

    「でね、ここはこの式使った方がいいよ」

    「は、はぁ、その理由は聞いても……」

    「いいけど今聞いたらこんがらがるよ?」

    「あ、はい」

    「よし、じゃあお姉さんの通ってる大学の問題いってみよー」

    なんて本を開いて問題を見るが、まぁ、ある程度は分かるようになっている。
    やはりなんやかんやで教え方が上手いんだな。

    そして黙々と問題を解き始める。
    やはりそんなにすぐに完璧に理解したわけでもなく発展問題などでは行き詰まってしまう。まぁこればかりは自分のせいだからな、気長にやっていくしかないだろう。

    「あ、もうこんな時間かー」

    と、不意に雪ノ下さんが呟く。ちらと時計を覗くと時刻は7時を回っていた。

    「比企谷君、終わった?」

    「まぁ、ある程度は……」

    と、雪ノ下さんは軽く回答に目を通し

    「あー、基本は出来てるね。けどやっぱり発展が難しかったかー」

    「まぁ、中々、というか超絶」

    「うーん、まぁ頑張るしかないかー」

    「あ、ところで比企谷君、まだ勉強は続ける?」

    「あー」

    そう言って天井を見上げる。確かに始めてから4時間は経ってるし、そろそろ夕飯の時間、ここで終わってもいいかもしれない。

    「いや、今日は終わります」

    「そっか……ならまた明日」

    「いや明日はその、予備校が1日入ってて」

    「うーん……ならメール交換しようよ。それならいつするかとか連絡できるでしょ?」

    「いや、まぁ、その、えーと」

    「まさかお姉さんとするのが嫌なの!?」

    そんなオーバーリアクションせずとも……まぁ嫌というわけでないが…というか元々この人何故か電話番号知ってるんだし……

    「まぁ、良いですよ」

    「オッケー、ちょっと携帯貸してね〜」

    そう言って机の上にあった携帯をとり、なんか赤外線?みたいなのでメールを交換した(らしい)。
    まったく、由比ヶ浜と言い、なんでそんな高度な技術を…

    「じゃあ連絡するから。またね、比企谷君」

    と、いい、部屋から出ていく。しかし客人なので、とりあえず玄関までは付いていく。

    「なに?お姉さんのこと好きなの?」

    「客人だから見送ってるんですよ……日本の常識です」

    「あはは、比企谷君は真面目なんだから……けど、ありがとね」

    その、ありがとうの言い方は、少し照れていて、外の薄暗さも相まって、俺の心に少しだけ、何かが来た。

    「ところでお姉さんの特別授業は分かりやすかった?」

    「……まぁ、それなりには」

    「もー素直じゃないなー」

    「よし、じゃあ感想も聞けたことだし帰るよ」

    「はい、ありがとうございました」

    「うん、じゃあねー」

    そう言って歩く雪ノ下さんを、俺は何故か姿が見えなくなるまで見送っていた。
  6. 6 : : 2017/08/19(土) 16:13:34






























































































































































































































































































































































































































































  7. 7 : : 2017/09/18(月) 00:44:01
    結局、あの日から互いの予定が合わないままに8月が終わった。
    とはいえ、教えてくもらった模試の数学の結果や、過去問の正答率がグンと上がっていたので感謝である。
    そして今日からは登校日で、いつものようにパンとコーヒーとその他諸々を食べている。

    「小町先いくねー、いろはさんと約束してるんだー」

    一応総武校生になった小町は一色と(やはり)仲良くなっていた。
    いやはや、あざとさカンストのコンビである。
    とはいえ俺も奉仕部として、始業式の準備があるんだったな。

    「俺も行くわ、安心しろ、俺はコソコソ道端の石ころになりきって登校するから」

    「自分でいってて悲しくないの?それ」

    うん、悲しくないわけがないよね。

    「つーわけで先行っとくわ」

    そう言って、せっせと皿などを台所に置いて玄関の戸を開く。

    がちゃり、とそんな聞きなれた音を背に、少し涼しくなった空気を感じる。

    通学路など忘れるはずもなく、総武高校へと、自転車を漕いで向かう。途中、鶴見瑠美らしき人物を見つけた。

    とはいっても、こんな目の腐った怪しい男子高校生が女子小学生に話をかけている所をなどを見られてしまってはそりゃ通報ものだ。
    だから、無視する。俺と彼女の保身のために。

    「あ」

    なんて声が背中の方から聞こえた。まぁ、空飛ぶペンギンでも見たのだろう。

    「八幡」

    バレた。えぇい、ままよ。

    「おぉ、どうしたルミルミ」

    「いや、何でもないけど……見かけたら挨拶するのが礼儀だから…」

    うん、この言葉、小学生の頃の俺に聞かせてやりたい。

    「というか八幡、なんか、変わった……」

    「は?……変わったって、どこがだよ?」

    「分からないけど、なんか、寂しそう」

    「………いや、俺には小町がいるからな、そんなことはないぞ〜」

    「ん、なら良いけど」

    「納得したなら早くいけ、通報される」

    「悲しくないの?それ」

    「まぁ、なんでもいいだろ、じゃあな」

    そう言うとルミルミは小さく手を振っていた。



    それにしても、寂しそう…か。
    寂しくなんてないとは言ったものの、思い当たる節が無いこともないが、それはきっと違うから。それはただの勘違いで戒めなければ行けないと散々攻め立ててきた行為だから。
    だからきっと寂しくなんてない。

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NDaiki0819

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@NDaiki0819

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