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1000本目の薔薇 A month I spend with a rose

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  1. 1 : : 2017/03/15(水) 00:01:23

  2. 2 : : 2017/03/15(水) 00:02:08
    1日目


    ある日。

    普段通りの日。

    学校に行くと、机の上に一本の薔薇が置かれていた。


    「……なんだ、これ。」


    どういう意味なんだろうか。

    一体、誰が置いたんだろうか。

    訳も分からないまま、手に取る。

    どうしたものか。

    貰っておけば……いいのか?


    結局いくら考えても、この薔薇の意図はわからなかった。

    どうすればいいのかもわからなかったので、一応家に持って帰る。


    「いい匂い…だな。」


    リビング等に置いては変に思われるので、花瓶を購入して、部屋に飾る。





    2日目


    起きると、部屋が若干薔薇の香りに包まれていた。

    好きな匂いだが、慣れない匂いなので、一応換気しておく。


    学校に行くと、今日も机には薔薇が置かれていた。

    ただ、今日は本数が違い、4本の薔薇が置かれてあった。

    これをやったのはまだ誰かわかっていない。


    周りの人間はニヤニヤしていたり、何か羨む目で見ている者もいる。

    何故そんな風にこちらを見るのか聞いても、知らない。と言われるだけだった。

    薔薇の意味か…。


    家に帰ると、母が何故部屋に薔薇があるのか聞いてきた。

    とりあえず「自分で買った」と嘘をついておいた。

    薔薇を貰った、なんて言っても、誰に?わからない。と繋がるだけだからだ。


    今日置かれていた4本は、奇妙ではあるが綺麗でもあるから、庭に植えておく。

    花の知識がないので、もしかしたら植えても意味がないのかもしれないが。


    起きたら部屋が匂いで充満していそうなので、窓を開けて寝ることにした。


    3日目


    今日は5本だった。

    やはり置いている人間はわからない。

    ただ、女子に言われたことから、俺は告白されたらしい。


    なるほど。そう言えばそういうのも聞いたことはあるな。


    …嬉しい気持ちはある。

    だけど、なんでこの人は俺の前に姿を見せないのだろうか。

    恥ずかしいから?断られたくないから?

    不思議な気持ちで一杯になる。

    一応、変人のレッテルを貼られている人間の俺のことを好きになるということが不思議でならなかった。


    家に帰ったら、薔薇に水を。

    このまま毎日渡されていると、庭が薔薇園になりそうだ。


    今日も結局、置いた子のことは知れずに終わった。

  3. 3 : : 2017/03/15(水) 00:02:38
    15日目

    暫く4本、5本と続くだけで、他の本数置かれることはなかったが、今日は違った。

    やはり薔薇が置かれており、今日は11本だった。

    何故毎日薔薇を送ってくるのだろうか。全て持って帰っているから家が薔薇だらけになってしまいそうだ。

    親も最近持って帰りすぎだと言っている。

    あと、それと。重大なことが起きた。

    好きな子ができた。


    薔薇の子には申し訳ない気持ちもあるが、俺はその子に夢中だ。

    出会いは図書館。薔薇について調べようとして本を探している時、同じ本を取ろうとして知り合った。

    全く、ベタな展開だ。

    二人で見ることになり、その時に話した時に惚れた。

    綺麗な子だった。花が好きらしい。

    更に、同じ学校の生徒みたいだ。学年も同じ。

    将来は花屋さんになりたいそうだ。俺は頑張れと応援した。

    好きな子の夢だ。誰だって応援する。



    16日目

    今日は8本。よく本数が変わる時期なんだろうか。

    探してはいるが、結局置いている子は分かっていない。

    図書館に行くと、あの子がいた。

    今日も本を読んでいる。勿論内容は花。


    話していると、反応が普通の女の子とは違う。

    もしかしたら、この子も俺にその気があるのかもしれないな。

    だとしたら嬉しいな。

    ……いや、俺の勘違いかもしれない。

    童貞男子特有の勘違い。もしそうだったら恥ずかしいので、ここは冷静にしていることにする。



    19日目

    ヤバい。

    本数がヤバい。

    今日も薔薇はあった。今日の本数は……100本だった。

    流石に頭がおかしい気がする。

    お金は大丈夫なんだろうか、危ない子だ、怖い。だとか、いろんな思考が脳内を駆け巡る。

    これは……。

    一刻も早く犯人を見つけなければ。このままだとあと数日で我が家の庭が薔薇でいっぱいになってしまう。

    ……いや、そもそも持って帰らなければいいのかもしれない。


    でも、何か持って帰らないといけない気がした。

    一応、今回も持って帰ることにした。

  4. 4 : : 2017/03/15(水) 00:03:51
    23日


    やはり、今日もあるのか。

    12本。減ったり増えたりするのは、何らかの意味があるみたいだ。

    でも、それがなんなのか俺にはわからない。

    顔も知らない人をなんで気にしてるのかもわからない。けど、何故か気になる。

    好きとかじゃなくて、この薔薇の意味を教えてもらいたい。本人から、直接。

    でも、来てはくれないんだろうな。

    好きなら好きって言いにくればいいのにな〜。


    放課後になると、必ず図書館に向かう。

    あの女の子の顔を見に行っているだけなのだが。


    「最近はよく来るんですね。」

    「あぁ、調べたいことがあるからね」


    そう答えながら適当に花の本を手にする。


    「隣、どうぞ。」

    「そ、それじゃあ。失礼します…」


    隣に座ることを彼女は嫌がらないのだが、いざ座るとなると平常心を保っていられない。

    少しばかり、緊張してしまう。

    しばらく本を読んだあと、なんとなく気になったことを聞いてみる。


    「……そういえば、なんで君は花が好きなの?」

    「え…?好きな理由…ですか。

    そうですね。うーん……花の近くで育ったからですかね。前にもお話しした通り、私の家は花屋なので。」

    「花の近くで育ったから……他には?」

    「えっ、他?

    ……多分、意味があるからですね。」


    意味?と聞き返そうとすると、女の子は急に立ち上がる。


    「気がつけばこんな時間ですね。もう、帰りませんか?」


    午後7時。

    少しずつ暗くなってくる時間だ。


    「うん、そうだね。帰ろうか」

    「帰り道、途中まで一緒でしたよね?」

    「そうだよ。行こう。」


    ……帰り道。

    なんだか気まずい。

    気まずいと言うより、恥ずかしい。

    なんで俺は今好きな子と一緒に帰ってるんだろうって、我に帰る

    適当な話題でも降らなければ……

    「そういえば、今度出かける時、どこに行く?」

    今、この子が一瞬ビクッとした気がする


    「そうですね……花のあるところに行きたいですね。

    あ、薔薇園とか。」


    薔薇園。そのワードを聞いて、我が家の庭を思い出す。

    流石に俺の家に来ない?と聞くのはマズいので、あぁ、それがいいね。とだけ返しておく。


    「………明日も図書館、来ますか?」


    唐突な質問にビックリする。


    「 え?うん…?勿論だよ。」

    「そ、そうですか。すみません、突然。」


    どうしたのだろう、急に。まさか、俺に来て欲しいとか……いや、それこそ童貞男子のよくある勘違いだ。


    「それじゃあ、私はここで。」

    「うん。それじゃ。」

    「……また明日。」


    女の子は笑顔を見せる。

    ドキッとした。数秒硬直してしまい、硬直が解けた時には彼女はもう向こうを向いていた

    初めて正面から彼女の笑顔を見た気がする


    「…………すっげー可愛い……」


    勝手に漏れたその言葉が彼女に聞こえていないか心配しながら、俺は家に帰った。
  5. 5 : : 2017/03/15(水) 00:04:43
    28日


    ついに来た日曜日。

    よくよく考えたら土曜日だって図書館デートみたいなものだが、今回はわけが違う。

    ドキドキとワクワクが止まらない。

    待たせてはならないので、予定よりずっと早くに待ち合わせ場所のバス停に向かう。


    待ち合わせ場所。

    俺を視認した女の子が急いで走ってくる。

    時間ちょうどだ。


    「すみません、待ちましたか?」

    「いや、全然待ってないよ。」


    2時間待っていた。

    我ながら、頭がおかしいと思う。

    おかしいとは思うが、これくらいしておかないと気が済まない。

    というか、この会話、なんだかカップルみたいだな。


    「行きましょうか。」


    そう言われ、バスに乗り込む。

    最初は花畑に向かった。


    「そよ風が気持ちいいですね。」

    「うん、とても。」


    この辺りにこんな広い花畑があるとは、知らなかった。

    凄く綺麗だった。

    この花達も、この子も。

    私服を見るのは初めてじゃないが、なんだろう、外に出るための服という感じで、図書館にいる時に着ている服とは感じが違う。

    緊張するな。


    「……俺も、花が好きだな」

    「………え?」

    「俺も、花が好きだ。」

    「……そうなんですね。よかった。無理に付き合わせてないか、心配でした。」


    そんなことで気を遣わせていたのか。

    少し申し訳ないな。


    「でも、安心しました。これからも、一緒にこういう場所に行きたいです。」

    「はは、嬉しいな。」


    そこから暫く経ち、ご飯も食べ、薔薇園で時間になるまで話す時が、とても短く感じた。


    とても、とても充実していた。

  6. 6 : : 2017/03/15(水) 00:05:54
    29日


    事が起きたのは、朝。


    薔薇を置いていた人間が発覚した。


    薔薇を置いていたのは……あの女の子だった。


    嬉しい気持ちはあった。だけど、喜べなかった。それを目撃された彼女は、逃げるように走って行ったからだ。


    そして、更に。


    彼女が、交通事故に遭い、意識不明の重体となった。

    俺のせいだ。


    俺が見つけなければこんなことにはならなかった。

    今は病院にお見舞いに来ている。

    彼女は目を覚まさない。


    彼女の手を握り、呟く。


    「俺も、好きだ。

    初めて会った時から。嬉しかったよ。薔薇をくれたのが君で。」


    30日


    今日も彼女がいる部屋に来る

    相変わらず、彼女は目を覚まさない。


    「なぁ、頼むよ。

    もっと早く見つけれれば、こうはならなかったの?

    君のあの笑顔が、もう一度見たいよ………」


    頼むよ…………


    彼女は、起きない。

    俺の心は、ただひたすらに病んで行った。


















    31日目



    彼女は起きていなかった。

    今日は薔薇を持って来た。


    彼女が俺に最初にくれた、部屋に飾っていた薔薇。


    見ていると、涙が出てきて、彼女の頰に落ちる。


    今日は、親御さんが起きた時に、といつも見ていた本を置いていた。

    誰もいなかったので、俺はそれを読んだ。


    そこには、花言葉について書かれていた。

    ページをめくっていくと、薔薇のページを見つける。


    ここで俺は、薔薇には本数で意味が変わることを知る。


    知らなかった。告白の意味だけじゃないんだ。


    今までの本数を思い出し、思い切り泣いてしまう。



    ここで、俺は何かに包まれる。

    とてもいい香りのする…何かに。

    なんだ……

    知ってる匂い………


    思い出した。薔薇だ。


    振り帰ると、俺と彼女のクラスメイトのみんながいた。


    「え………?」








    「どうでしょうか?この告白は。」






    一番、一番聞きたかった声が耳に入る。


    「起きたの…か……!?」


    また振り帰ると、彼女が目を覚ましていた。


    思わず彼女を抱き締める


    よかった


    本当によかった


    この本数、この量。


    数え切れないけど、きっとこの言葉だ。





    『何度生まれ変わってもあなたを愛する』





    「……好きだよ。」


    「……俺もだ。大好きだ!」





    そう大声で言い、999本の薔薇に、1000本目の薔薇を置く。


    この数に、意味はない。でも、生まれ変わったなら、意味はこれのはずだ。








    あの時と、最初と同じ、告白。





    「愛してる」






  7. 7 : : 2017/03/15(水) 00:11:33
    http://www.ssnote.net/groups/835の、春花杯用のssです。

    思いっきり遅刻した上にバラバラな文章なので無事死亡、拙い文章、申し訳ありません。
  8. 8 : : 2017/03/19(日) 01:19:37
    素直にいい話でした!
    (遅刻、とてももったいないです(・・;))
  9. 9 : : 2017/03/19(日) 08:20:33
    >>8
    コメントとお気に入り、ありがとうございます。
    ですが、このssはあまりいい仕上がりだと自分でも思えず投稿したものなので、評価されるのが恥ずかしいですね

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