このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
Re:ゼロから始める喰種捜査官生活 CaseⅠ「腸狩り」
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- 1 : 2017/02/05(日) 20:12:56 :
- リゼロと東京喰種:reのクロスオーバー作品となります。喰種捜査官となったスバル達が東京喰種の世界を動き回ります。グールのキャラもしっかり出す予定です。
書き溜めをしていないので、例の如く長くなると思いますがよろしくお願いします。
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- 2 : 2017/02/05(日) 20:14:00 :
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――この世界に潜む闇。
彼等はヒトと同じ姿で群衆に紛れ、ヒトを喰らう。
彼等の名は「喰種」。
……そして――
その「喰種」に対抗できる存在が、「CCG」に所属する者達――「喰種捜査官」である。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
CCG本局。
対喰種において拠点とされるこの場所では、日々多数の喰種捜査官達が喰種捜査に取り組んでいる。
彼等は己の仕事に誇りを持ち、熱心に捜査に邁進している。しかし、彼等も人間であるわけで、時には同僚と他愛ない話に興じることもある。
次の会話は、そんな話の一つに過ぎない。
「なぁ、CCGで一番強い捜査官は誰かって聞かれたらどう答える?」
「もちろん、有馬特等に決まっているだろう。ラインハルト准特等も捨て難いけど、実績でいったら有馬特等で決まりだ」
「だよな。それなら、一番強い班って聞かれたら?」
「それは難しいな。有馬班――と答えたいけど、班全体の能力なら鈴屋班の方が高いかもな。やっぱりあそこの連携は凄いし、なんと言っても殉職者が滅多に出ない」
「そうだよな。普通はそう答える。だけど、最近急に最強班候補に名乗りを挙げた班があるんだ。その班は何でも、どんな厳しい任務でも殉職者を全く出さないそうだ」
「そんな班が……? 知らなかった」
「なら教えてやる。その班の名は――エミリア班だ」
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- 3 : 2017/02/05(日) 20:22:19 :
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※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「――へっくしょん! 誰かが噂してるのかな」
漫画のようなクシャミをしたのは、長く伸ばした銀髪と紫紺の瞳が美しい、局内きっての美少女捜査官――エミリア上等捜査官だ。
美女ではなく美“少”女な理由は少しずつ分かってくることなので、今は説明を省く。
「エミリアたんが言うと、迷信をホントに信じてるみたいに聞こえるな」
「え? 迷信ってなんのこと」
「あらやだこの子、迷信だって認識すらなかったわ!」
エミリアの迷言にふざけた突っ込みを入れるのは、オールバックの黒髪と三白眼が特徴のスバル一等捜査官。
彼はエミリア班の副班長であり、この物語の主人公である。
「姉様姉様、今日のスバルくんは一段と格好いいですね」
「レムレム、今日のバルスは一段と突っ込みがつまらないわ」
「褒めるか罵倒するか二人で統一してくんねぇ!?」
次にスバルに突っ込みを入れられたのは、レム一等捜査官とラム一等捜査官だ。
二人は双子の姉妹であり、容姿がとてもよく似ている。違うところは、妹のレムが青色の髪と瞳を、姉のラムが桃色の髪と瞳を持っていること。前髪で隠れている眼が左右逆であること。そしてラムの方が、目尻がやや上向きであることぐらいだ。
外見とは反対に、内面は似ても似つかない。ここでは、レムがスバルに好意を抱いていることと、ラムが傲岸不遜な毒舌家であることだけ説明しておく。
「兄ちゃん――強く生きろよ」
「何で俺慰められてんの!?」
最後に突っ込みを入れられたのは、金髪のセミロングと赤目、そして何より八重歯が特徴的な少女――フェルト三等捜査官だ。
エミリアと違い、彼女は少女と呼ばれるのに差し支えない年齢である。
以上の面々で構成されているのが、噂のエミリア班である。
レムを除いた全員がスバルにため口なのを始め、言葉遣いと年齢・階級がかみ合っていない点については追々語られることになるだろう……たぶん。
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- 4 : 2017/02/06(月) 23:05:03 :
「――エミリア班長。その手に持っていらっしゃる資料は、新しい捜査対象のものですか?」
エミリアのクシャミから始まった不毛な掛け合いを止めたのは、レムのこの一言だった。
「あっ、そうだ。新しく任務が言い渡されたこと、すっかり忘れてた」
「エミリアたんのことだから、またヤバそうなのを引き受けたんだろ?」
「えっとね……。S~レート『腸狩り』だって」
「やっぱSレート超えかよ!」
エミリアの口からあっさりと告げられるその危険度に、スバルは顔を青くする。
Sレート――レートと実力はそのままイコールではないが、一般的には准特等捜査官相当の実力を有するとされる喰種に与えられるレートだ。准特等捜査官よりも一つ下の階級――上等捜査官であるエミリアが率いるこの班にとって、十分に高難易度の捜査対象と言えよう。
だが、その危険度に気を弱くするのはスバルだけであった。
「レム達エミリア班なら、必ず駆逐できますよ! 今までだって、何だかんだうまくやってこれましたから!」
「レムの言う通りよ。男の癖に情けないわ、バルス」
「S~レート……。駆逐したらいくら貰えんのかなぁ」
自分達の実績を鑑みて、高レート喰種の捜査にも前向きな反応を見せるレム、ラム。それとはまた別の理由で、意欲的な反応のフェルト。
レムの言う通り、エミリア班はSレート喰種を何体か駆逐している。それは間違いない事実であり、確かな実績だ。
スバルも当然、そのことは理解している。だが、彼の表情の曇りは一向に晴れない。
「スバル。任務からは逃げられないんだから、観念して」
「ああ、そうだな……」
「大丈夫。皆のことは私が護るから」
そうやって決意を述べるときのエミリアの瞳は力強い。彼女のその瞳を見てスバルは微かに顔を綻ばせると共に、彼もまた決意を固めた。
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- 5 : 2017/02/08(水) 21:23:09 :
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※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「――ではこれから、エミリア班の捜査会議を始めます」
ホワイトボードを後方に備え、エミリアは改まった口調で会議の開会を宣言する。先程から捜査関連の話はしていたが、こうして改めて形式張ったことを行うことで普段から無駄話の絶えない(主にスバルが原因)班員達の気を引き締める狙いだ。これは、エミリア班に新たな任務が言い渡される度に行われる慣習だが――、
「毎度のことながら、エミリアたんがそれを言っても学級会を始めます的なノリにしか見えない」
「もうっ、ふざけないで! スバルのおたんこなす!」
「おたんこなすってきょうび聞かねぇな……」
効果が発揮されたことは一度もない。
「ごほんっ、気を取り直して……。今回私達に与えられた任務は、S~レート『腸狩り』の駆逐よ」
「何度聞いても物騒な名前だなぁ。危険な匂いしかしねぇ」
「良い名前だと思うわ、今度こそバルスが力及ばず殉職することになってしまう予感がして。悲しいけどそれが運命よ、バルス」
「勝手に殺されるのはいつものこととして、嘘でも悲しいとか言うならせめてその笑顔を何とかしろよな!?」
スバルがエミリアの発言にいちいち反応し、それに対しラムも毒舌を発揮するのを忘れない。
エミリアが捜査対象のレートと通り名を話しただけでこの騒ぎ。話が一向に進む気配がない。
「スバルくん、エミリア班長が困っていますよ。ここはしっかりとお話を聞いてあげましょう」
そこでスバルを優しく黙らせるのが、レムの役割だ。
レムのスバルへの好意はしばしば盲信的に思われがちだが、その実しっかりとスバルの良い面だけでなく悪い面も見ている。ただし、レムから見た良い面が多過ぎるのだが。
スバルはスバルでエミリアに嫌われるのは困るので、レムから指摘を受けた後まで騒ぎ続けるような真似はしない。ラムも、スバルが無言の内は大人しいものだ。フェルトは子供っぽさが大いに残っているが、無駄口を叩く方ではない。スバルと比べれば……だが。
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- 6 : 2017/02/08(水) 21:45:01 :
- 期待です。
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- 7 : 2017/02/09(木) 19:27:05 :
- >>6
期待ありがとうございます!
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- 8 : 2017/02/09(木) 21:10:14 :
- 期待です
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- 9 : 2017/02/09(木) 23:34:01 :
- >>8
期待&お気に入りありがとうございます!
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- 10 : 2017/02/10(金) 22:07:16 :
- 「ごほんごほんっ! 話を戻して、『腸狩り』に関しての情報を報告します。先ず、『腸狩り』の捜査が私達の班に移った経緯なんだけど、前任の菊池班が返り討ちにあって全滅しちゃったの」
「やっぱヤバい奴じゃん! 菊池班って、そこそこ実績のある班じゃなかった!?」
「うん。それで元々A+だったレートがS~に上がっちゃったの。でも、菊池班の人達の頑張りのお陰で活動区域と顔はもう判明しているわ。活動区域は主に二区。顔写真は……、これよ」
エミリアは手に持っていた資料の一枚を取り出し、それをホワイトボードに貼り付けた。
「へぇ。綺麗な姉ちゃんだなぁ。それに負けねぇぐらい、危ねぇ臭いもぷんぷんするけど」
フェルトの述べた感想に、一同は大なり小なり同意する仕草を見せる。
写真に写っているのは、黒い外套に身を包んだ20代後半と思われる女性だ。目尻の垂れたおっとりとした顔の美女で、どことなく艶めかしい雰囲気を醸し出している。それだけではなく、喰種捜査官としての経験と本能が頭の中に警鐘を響かせるのも感じる。
「雰囲気だけじゃなくて、実際にすごーく危険な喰種よ。菊池班の人達以外にも、何人か喰種捜査官から被害が出ているわ」
エミリアの口が開く度に、『腸狩り』の危険性が如実に表われていく。今回の標的がSレートの危険度に違わぬ――いや、レート以上の危険度を秘めている可能性が濃くなっていく様子に、スバルは苦笑を浮かべた。
「『腸狩り』という呼び名は、被害者全員がお腹を切られて、腸を食べられていたことからつけられたみたいよ。赫子のタイプは鱗赫。数は最大で二本、長さは短めで、刀のような鋭さを持っているらしいわ」
「『腸狩り』にはうってつけの赫子ってわけだ。そしてこの手の喰種は間違いなく――手強い」
喰種の気質と所持している赫子がマッチしている喰種は、総じて強力な喰種である場合が多い。そして気質が殺伐としたものであればある程、その傾向はより強く表われる。
この理論はスバルの経験則によるものでしかないのだが、自信を持って彼はそう言い切った。
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- 11 : 2017/02/12(日) 18:13:21 :
- 「さっきから弱気過ぎねぇか、兄ちゃん。気持ちで負けてちゃ勝てる相手にも勝てねぇぞ」
「勘違いするなよ、フェルト。俺は超々慎重派なだけで、腹ならとっくにくくってる。まぁぶっちゃけ怖いけど、それもいつものことだ。つまり今回の任務も、いつものように成功するっ!」
「最後の方、いきなり話がぶっとんでんぞ!」
ネガティブな発言が続くスバルに、精神論を訴えるフェルト。その後のスバルのちぐはぐな反論に彼女は苦笑。だが――、
「その最後の方に限っちまえば、アタシは兄ちゃんに賛成だね。『腸狩り』だろうがなんだろうがぶっ殺して、特別賞与をガッポリいただきだ!」
スバルの言葉につられるように、フェルトは任務の成功を声高に宣言する。
「レムはもちろん、スバルくんの言葉の全部に賛成です! 常に支離滅裂なスバルくんらしさが出てて、レムは心を打たれました。今回の任務も、必ず成功させましょう」
「あれ、褒められてんのか俺!?」
「レムの言う通り、バルスの脳みその空っぽさ具合がよく分かる良い言葉だったわ。バルスの言葉はしっかりと聞き流すとして、任務を成功させる意志はラムも一緒よ」
「さすが姉様! 一切褒めてねぇのが分かる!」
前半部分はさておき、レムとラムの二人も任務を成功させることへの意志を表明する。
「みんな一段とやる気になったみたいね。やっぱり、スバルはすごいわ」
スバルの先程の発言はそういう意図で行われたわけではないのだが、エミリアは曇りなき笑顔でスバルを称賛する。もちろん、皮肉は一切感じられない。
「E・M・T」
「ごめん、ちょっと何言ってるか分からない」
E・M・T――エミリアたんマジ天使の意。ただしその意味を、エミリアは理解していない。
「とにかく、任務は必ず成功させましょう。菊池班の人達の命を無駄にしない為にも」
エミリアの言葉には、強い意志が秘められていた。
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- 12 : 2017/02/22(水) 21:36:06 :
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※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
会議を終えたスバルは、出動までの緊張を紛らわす為に局内を徘徊していた。
顔も活動区域も判明している『腸狩り』は、二区の局員捜査官達によってその動向を監視されている。しかし、その監視にも限界というものがあり、実際のところ動向の把握具合は六割程といったところだ。
そして現在はちょうど四割に当たる状況にあり、『腸狩り』の所在を二区の局員捜査官が掴むまで、エミリア班は本局にて待機することになった。
「よっ、スバル! 怖い顔してどうした?」
「怖い顔はいつものこと――って、うるせぇよ!」
「そんなつもりはないんだけど……。まっ、いつも通りで何よりだ」
通路をぶらついていたスバルに声を掛けたのは、糸目が特徴的な伊東倉元一等捜査官だ。倉元は、癖の強いスバルにも快く絡みに来てくれる者の一人だ。
「いつも通りに見えるんなら、俺にも胆力が身に付いてきたってことだな」
「てことは、やっぱし何かあったの?」
「任務だよ任務。S超え喰種の駆逐の」
「あちゃ~、さっすがエミリア班。またまた厄介な案件を……」
スバルに同情の言葉を掛けてくれる倉元。しかし、倉元の所属する平子班もエミリア班に負けず劣らず高難易度の案件を任されることで有名だ。尤も、平子班にはそれに応えられる実力が十分に備わっているのだが。
ちなみに、現在平子班が請け負っている捜査対象は、『腸狩り』と同じS~レート『オロチ』である。
「まっ、任されちまった以上は上手くやるだけだよ」
「そ~だね。お互い落ち着いたら、また飲みに行こうぜ。今度はハイセも一緒に」
「おっ、良いね! そろそろあいつとも飲みたいと思ってたんだ」
ハイセ――佐々木琲世もまた、スバルと快く絡んでくれる者の一人である。彼はとある事情から、スバル以上に煙たがられることの多い存在でもあったりする。
ちなみに、スバルとハイセが仲良くなったきっかけにはレムが関わってくるのだが、それもまた後ほど明かされるだろう。
「さっきから色々と後回しにし過ぎな気はするが」
「ん?」
「こっちの話。お互い頑張ろーな――飲みの為に」
「こらこら、ここは嘘でも市民の為にと言うべきとこだよ」
「それができたら俺の友達はもう五倍いるね!」
「はははっ。俺はスバルのそういうとこ好きだけどねぇ。それじゃ、また」
お互いに手を振って、二人は別れていった。
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- 13 : 2017/02/25(土) 18:13:28 :
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※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
『――出動よ、スバル! 今すぐ正面玄関に来て!』
エミリアから出動の連絡が入ったのは、倉元との会話から約三十分後のことだった。スバルは足早に正面玄関へと向かう。
スバルが到着した時には、彼以外の班員は全員集まっていた。
「女性を待たせるなんて、バルスは紳士の風上にも置けないわね。紳士――男ではなく、当然女でもない。つまりオカマ。汚らわしい」
「遅くなったのは悪かったけど、何で性別まで変えられてんの!?」
「レムはスバルくんがオカマになっても、スバルくんのこと嫌いになりませんからね」
「本気のフォローが逆に辛い!」
「いつも大変だなぁ、兄ちゃん」
スバル、ラム、レムのいつも通りの慌ただしいやり取りに、最年少のフェルトも嘆息するしかない。だが――、
「全員揃ったところで、早速現場に向かいましょう」
エミリアの号令によって、一同の眼差しが真剣を帯びる。
纏める時にはしっかりと纏めるのが班長・エミリアで、従う時にはしっかりと従うのがエミリア班のメンバー達だ。
一同は用意された車両へと乗り込み、二区の局員捜査官から報告があった場所へと向かっていった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「お疲れ様です」
『腸狩り』の尾行に当たっている局員捜査官の下へと駆け寄り、小声で挨拶をするエミリア。その挨拶を受け、局員捜査官は小さく一礼。それから、視線を近くの大通りへと誘導する。
「『腸狩り』はあれだな。御丁寧に、服装まで資料通りだ」
黒い外套に身を包んだその姿を捉えたスバルが、小声でそう呟いた。
「今のところ、特別不審な動きは見られません。どこかへ向かっているようではあるのですが」
「分かりました。後は私達に任せてください」
「よろしくお願いします」
以上のやり取りを以てエミリア班へと捜査の引き継ぎを済ませ、局員捜査官は再び一礼してからその場を後にしていった。
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- 14 : 2017/03/01(水) 16:40:09 :
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「さて、まずは役割分担だな。尾行組が二人――メインが一人に通信役が一人、他は尾行組よりさらに後方で待機、その中からも通信役を一人……てところかな」
捜査を受け継いだところで、『腸狩り』の尾行に際して役割分担を副班長・スバルが提案する。それに対するエミリア班のメンバーの反応は、先程までのスバルへの扱いとは打って変わっており、全員がスバルの言葉に熱心に耳を傾けている。
それも当然――、エミリア班のブレインの役目はスバルが担っているのだ。基本的な指揮を執るのは班長であるエミリアだが、そこに戦略的見地が求められる場合はスバルが作戦立案を担当する。
そうした指揮の分割を行っているのは、エミリアが知略に乏しいことが原因である。一方で、スバルは凄腕とはいわないまでも、持ち前の小賢しさを利用した作戦立案には定評がある。要は、適材適所というわけだ。
「んでもって、個々人の能力と使用クインケを考慮した上で、俺は尾行役の二人にレムとフェルトを推したい」
「分かりました。 スバルくんに任された以上、レムは死力を尽くして役割を全うします」
スバルの推薦に、レムは満面の笑みと決意表明で応じる。推薦しただけで、まだ任せてはいないと突っ込むのは、水を差すようなので控えておこう。
一方で、フェルトは小難しい表情を浮かべている。
「どうしたフェルト。お前のことだから、大見得切って大はしゃぎして『任せな兄ちゃん』とか言うと思ったのに。つーかはしゃげよ。最年少なんだから、もっと若さ見せろよ。さっきから、俺達の方が年下みてぇじゃん」
「それは兄ちゃん達の精神年齢が低すぎるんだよ!」
「しぃ――」
スバルの若さ見せろよ発言に、思わず強い口調で反論してしまうフェルトに、エミリアが人差し指を立て音量を下げるように促す。
念のため改めて言うが、役割分担中の今だって尾行中である。
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- 15 : 2017/03/05(日) 18:47:27 :
- ふざけ始めたのはスバルであるのに、自分だけが注意されたことに頬を膨らませながら、フェルトは複雑な表情を浮かべた理由を音量控え目で次のように語った。
「どっちかって言ったら尾行役の方が危険だろ? 兄ちゃん、いつもアタシのことを危険な役目から引き離そうとするのに、珍しいなと思って」
「なに? 甘やかされたかった?」
「はぁ!? 違ぇし! 寧ろ望むところだってんだよ!」
「しぃ――」
スバルの軽口に対しまたしても熱くなってしまったフェルトに、再びエミリアの注意が入る。発端はスバルの方にあるとは言え、同じ轍を踏んでしまったとあってフェルトはばつの悪そうな顔を浮かべる。
「まっ、フェルトはツンデレってことだな」
おまけにスバルにおかしなまとめ方をされて、フェルトは完全にご機嫌斜めだ。このままだと任務に影響が出かねないので、取り敢えずスバルに噛みつくことで白紙に戻すことにした。
「いてて、女の子らしさの欠片もねぇな。まぁいい加減話を戻すとして、次は通信役についてだ。尾行組からはレムにお願いしたい。んでもって、後方待機組の通信役は俺がやる」
「分かりました。スバルくんの言葉でしたら、レムは一語一句聞き逃しません。小さな呟きは勿論、心の声だって聞き取ってみせます」
「そんな超能力みたいなことまで求めてないから気楽にな。こんな感じで、勝手に決めちゃったけど、エミリアたんの意見は?」
「スバルの意見に賛成よ。すごーく良いと思う」
スバルの提案を全面的に肯定するエミリア。班長の同意が得られたところで、晴れて作戦会議は終了だ。
「んじゃ、エミリアたん」
「ええ。エミリア班、作戦開始よ!」
エミリアの小声の檄によって、エミリア班の作戦行動が開始された。
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- 16 : 2017/03/12(日) 22:11:20 :
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
開始から30分での『腸狩り』の行動はというと、移動のみであった。それに応じて、尾行の舞台も大きく変わり、二区と一区の境の近くまで来ていた。
尾行者の存在に感付いている素振りは一切無く、ここまでの尾行は順調と言えば順調だ。だが一方で、収穫ゼロなのも間違いない。
「ずっと歩いてばっかりね。ちょっぴり退屈かも」
「熱意溢れるエミリアたんには珍しい愚痴だね。まっ、俺はちょっぴりどころかすっげぇ退屈だ。けど――」
真面目なエミリアのレアな弱音に同意しつつも、スバルは逆説の言葉を続ける。
「移動するってことは、その先に何かあるってことだ。尤も、あいつに散歩の趣味が無ければの話だが」
『腸狩り』などという殺伐とした二つ名を持つ喰種が、そんなお気楽な趣味を持っているとは思えない。
『――スバルくんスバルくん』
そのようなことを考えていると、レムのスバルを呼ぶ声がイヤホン越しに響いてきた。
『標的が大通りから抜けて行きました。人通りの少ない裏路地です。仕掛けますか?』
レムの報告を受け、スバルは予想通りの展開に内心溜め息を吐く。
大通りから抜けたということは、目的地はすぐ近くということだろう。そしてそれが裏路地ということであれば……、何かあるに違いない。その「何か」は、他の喰種との接触と言ったCCGにとって有益な情報をもたらすものであるかもしれない。
だがここで「何か」を突き止める必要性は、今回の任務には存在しない。エミリア班が言い渡された任務は「駆逐」だ。人通りが少なく、一般人に危害が及ぶ可能性の少ない場所に標的が入り込んだ時点で、即駆逐へと向かうというのも選択肢の一つだ。
もう少し泳がせて情報を引き出すか、迷わず勝負に出るか、その判断は究極的にはスバル一人に委ねられている。思巡の末、スバルの導き出した決断は――、
「まだ待機だ。標的はSレート……、慎重に行こう」
スバルの指示に、傍らのエミリアは静かに頷いた。
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- 17 : 2017/03/16(木) 17:35:48 :
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「このまま待機とのことです」
スバルの指示を受けたレムは、その指示を隣のフェルトに小声で伝える。フェルトはコクリと頷き、了解を伝える。
裏路地に入り込んだ後も、『腸狩り』の行動は依然として変わらない。何処かも分からぬ目的地へと向かって、歩き続けるのみ。が、その行動が変わる時が遂に訪れる。
彼女が、足を止めたのだ。
「――おかしいわね」
彼女は辺りを見回してから、そう呟いた。レムとフェルトはその行動に、尾行の発覚の可能性を頭に浮かべる。だが、『腸狩り』はそれ以上の動きを見せない。二人の心配が杞憂であったのか、それとも尾行自体はバレていて尾行者の位置を把握しかねているのか、彼女の真意は未だに掴めない。
もし後者であれば、スバルへの通信の声すら命取りになる可能性すらある。レムとフェルトに許される行動は、静止のみ。
『腸狩り』の呟き以降、際限なく続く静寂。それが破られる時が来る。
『ピピピピッ……ピピピピピッ』
着信音――『腸狩り』の所持する携帯電話からのものだ。彼女は懐から携帯電話を取り出し、その呼び掛けに応じる。
「――もしもし。今丁度、約束の場所に着いたところなのだけれど、一体何事かしら」
約束の場所というワードに、レムは今いる場所が『腸狩り』の目的地であったことを連想する。そして、何者かと接触する――筈だった。
「あら、そういうことね。分かったわ。今すぐ向かうわ」
『腸狩り』は通話を終え、携帯電話を懐へとしまう。そして再び、彼女は歩き出す。
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- 18 : 2017/03/20(月) 19:27:58 :
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「――なるほど、了解。引き続き尾行を続けてくれ。ただし、安全第一にな」
レムから『腸狩り』の行動の変化についての報告を受け、当面の指示を出すスバル。だが、指示を出した後もスバルは頭を巡らし続ける。
――それが自分の役割であると、自覚しているから。
スバルの推測通り、移動の先には目的の何かがあった。レムの予想では、それは何者かとの接触。
だが、待ち合わせ場所は変更された。何故?
尾行がバレていて、それを巻くためでは? 若しくは、返り討ちにするため?
このまま尾行を続けても良いのか?
接触する相手とは? 単なる知人か? それとも何らかの組織に入っていて、その仲間か?
『……ん、……ルくん、スバルくん』
「――!? な、何だ、レム」
『何度も呼んだのに、反応が無いので心配しましたよ』
「悪ぃ悪ぃ。ちょっと考え込んでた」
考察にスバルは、レムの呼び掛けに気付くのに遅れてしまった。標的についてあれこれ考える前に、スバルは通信役――その役割も果たせないでどうすると、スバルは内心で自身を責め立てる。
このように、スバルには自己嫌悪に陥りやすい気質がある。
『そうでしたか。それで標的の動向ですが、一度大通りに戻った後にまた脇道に――』
突然の無言。スバルは、その無言が何を意味するかを直感した。直後――。
『トラトラトラ!』
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- 19 : 2017/03/26(日) 22:33:04 :
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
スバル、エミリア、ラムの三人が、レム、フェルトの二人の援護に向かう為に路地裏を駆ける。
トラトラトラ――とはスバルが決めた、緊急事態が発生した際の援護要請の暗号である。そして、ここでの緊急事態とは即ち、尾行の発覚及び敵喰種の急襲。
敵喰種の『腸狩り』はSレート超の実力を持つ超強敵。レムとフェルトの戦闘力も平均的な同階級の捜査官の中ではかなり高い部類に入るが、所詮は下位捜査官、二人でSレート喰種と渡り合うのはかなり厳しいと言わざるを得ない。
――確実に、先手は取らなければならなかった。こちらが合流する前に襲撃を受けることは、最も避けなければならなかった。自身の判断ミスが、二人を命の危機にさらしている。
スバルの心の中で、自責の感情が次々に沸き上がる。だが、それに構っている場合ではないと、何とかその感情を振り切ろうとする。今は一刻も早く二人の所へ辿り着くことが先決だ。
レム達尾行組とスバル達後方待機組との距離は100メートル程。全力で走れば十数秒で辿り着ける。それなのに、その距離がひたすらに長く感じられる。その十数秒が致命的なタイムラグであることを、スバルは悟っているからだ。
――全部俺のせいだ。俺のせい、俺のせい、俺のせい、俺のせい、俺の、俺の……
「――スバル」
自責の言葉の奔流に呑まれかけたスバルを、自分を呼ぶ銀鈴の声が引っ張り上げる。気付けば、隣を走るエミリアがその紫紺の瞳をこちらへと向けている。
「大丈夫」
ただ一言そう告げて、エミリアは前方へと顔を向け直す。気休めにしかならない言葉だったかもしれない。だがその言葉は、スバルの心を立て直すには十分な力を持っている。
「待ってろ、レム」
次の角を曲がれば、そこに二人はいるはずだ。勿論、そこには『腸狩り』の姿もある。出会い頭に一発与えてやろうと、スバルのクインケを握る手の力が強くなる。
そして、その角を曲がり――。
「――――」
スバルは絶句した。
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- 20 : 2017/03/30(木) 21:30:11 :
- 眼前に倒れ伏す、淡い青色の髪の少女。彼女の腹からは、血と臓物が零れ出している。
「レム……。ふぇ、フェルトは? ――うっ」
続いてスバルの目に映り込んだのは、背を壁にもたれて座す金髪の少女の姿。普段の快活さは見る影もなく、レムと同じく腹部から血を流出させながら動かない。
「俺の、せいだ……。ごめ――」
何も言えず何も聞き取れぬ人形へと成り果てた二人に謝罪の言葉を述べようとしたところで、スバルは気付いた。そこに、あるべき姿が無いことに――。
もう、遅かった。
突如、視界の端に銀髪の少女が入り込む。入り込んで、地に伏した。彼女もまた、腹部から腸を零している。
スバルが驚いて振り向くと、そこには桃色の髪の少女の屍も。
そして――。
「貴方の腸も、見せて」
黒い外套の女が艶めかしく呟く。刹那、スバルを激痛と喪失感が襲う。
己の腹から垂れ流される、血、腸、そして命。
スバルは最期の力を振り絞り……、
エミリアの手を握り、息絶えた。
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- 21 : 2017/05/02(火) 16:59:10 :
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「――ではこれから、エミリア班の捜査会議を始めます」
「――!?」
突然、何かに驚いたかのようにスバルは立ち上がった。その奇行に、周囲の面々――エミリア、レム、ラム、フェルトの視線が集まる。
「ダメじゃない、スバル。会議中なんだから、ちゃんと座って話を聞きなさい」
「おっ、おう……。わりぃ」
エミリアの指摘に素直に従い、スバルはもう一度席に着いた。その頃ようやく、スバルの脳は現状に追い付いた。
――「死に戻り」したのだ。
死に戻り――それが、スバル一等捜査官が持つ人知を越えた能力である。
その能力の効果は、タイムリープ。時をある一定の時点まで巻き戻すというものだ。その「ある一定の時点」は、能力を発動するまでスバル自身にも分からない。
そして、能力の発動条件は「自身の死」。これこそが、能力名が「死に戻り」である所以である。
回数制限は無い――と、思われる。
自身の死はおろか、仲間の死すらも無かったことにするこの能力の存在が、飛び抜けて優秀というわけではないエミリア班を最強候補に押し上げた立役者であることは間違いない。現に、死に戻りにより巻き戻された世界で、エミリア班は何度か全滅を経験している。
この能力の要点は、試行回数を重ねることができるという点に尽きる。如何なる強敵でも、無数に試行を積めば勝機が見出せるかも知れない。それも、死者がゼロになるまで何度もやり直すことができる。
正真正銘、無敗の能力と言えよう。
だがしかし、弱点はある。それは、大きく分けて二つだ。
一つ目は、能力の発動条件が死であることだ。幾らやり直すことができるからといって、死の苦痛は常人の許容範囲を超えている。故に、自害を選べばスバルの任意で発動可能とは言え、自由に発動できる能力と呼ぶには無理が大き過ぎる。
二つ目は、巻き戻り先がスバル自身には全く分からないことだ。場合によっては、やり直しの利かない時点に巻き戻される可能性もある。
無敗ではあれど、必勝の能力とは言えないのだ。
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- 22 : 2017/08/13(日) 21:46:09 :
- 期待です
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- 23 : 2017/08/20(日) 23:01:26 :
- >>22
ありがとうございます!
全然更新できなくて申し訳ない…
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- 24 : 2017/08/23(水) 22:19:01 :
- いえいえ、頑張ってください、いつまでも待ってます
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- 25 : 2017/09/08(金) 00:04:12 :
「――先ず、『腸狩り』の捜査が私達の班に移った経緯なんだけど、前任の菊池班が返り討ちにあって全滅しちゃったの」
二度目の『腸狩り』についての捜査会議が始まった。エミリアの口から語られる情報は、一度目となんら変わらない。そして、他の班員の反応もまた――。
死に戻りの際、前周回の記憶を引き継ぐことができるのはスバルだけ。他の者達にその記憶は一切残らない。そしてスバルは、その記憶を他人に口外することは一切許されない。これらもまた、死に戻りにおける制約だ。
故にスバルが動かなければ、運命は決して変わらない。死が、待つばかりなのだ。
――そうだ。また死なせてしまった。俺のせいで……。
自身の判断が自分を含めた班員全員を殺めてしまった事に対し、スバルは自責の念に駆られる。が、このような事態はこれが初めてではない。今までにも何度か、班の実力に見合わぬ任務を請け負って来た。その度にスバルは、仲間の死を目の当たりにし、自らの死を味わってきた。そして彼は学んでいる。
後悔も、自責も、懺悔も、運命の打破には何ももたらさないことを。
――俺が今しなくちゃいけないことは、考えること。いつもと同じだ。
「とにかく、任務は必ず成功させましょう。菊池班の人達の命を無駄にしない為にも」
前回と同じ言葉で、捜査会議は締めくくられる。起こった出来事や皆の言動は、スバル絡みの会話を除いて一周目と全く同一だ。
「ここまでは……な。勝負はここからだ。運命様との勝負のな」
エミリア班の事務室を後にしながら、スバルは静かに運命への宣戦布告を口にした。
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- 26 : 2017/09/11(月) 00:45:58 :
- 期待してます、頑張ってください!
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- 27 : 2017/09/11(月) 21:28:59 :
- >>26
ありがとうございます!
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- 28 : 2017/09/12(火) 00:34:14 :
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「さてと……、始めるとするか」
会議を終えたスバルは、前周回とは異なり資料室へと足を運んでいた。
今周回、スバルがすべきことはハッキリしている。それは、『腸狩り』との交戦をできるだけ絶好の状況下で行えるように仕向けることだ。
前周回でエミリア班が全滅してしまった原因は、『腸狩り』の強さ以上に相手に先制されてしまったことが大きい。特に、尾行組と合流を果たさないまま戦闘に入ってしまったことが致命的であった。
『腸狩り』を倒すためには、全員で交戦することが不可欠だ。さらに欲を言えば、連携が取りやすいようある程度広々とした空間での戦闘が望ましい。勿論、一般市民の安全も考えなければならない。
「――それを成し遂げるためにはまず、『腸狩り』の移動した道のりのおさらいだ。その道のりの中で、一番の好条件を探す」
スバルは地図を広げ、前周回の記憶を頼りに『腸狩り』の移動ルートをペンでなぞっていく。
最初は大通りを歩行。二区と一区の境で裏路地へと入り、そこで一度停止。それから、再び歩行を開始。その二、三分後に尾行が発覚、交戦へ――。
「……くそっ」
そこまで記憶を辿ったところで、スバルの脳裏を過ぎったのはレムとフェルトの無残な姿だ。続いて、エミリアとラムの最期もフラッシュバックされる。
仲間の死――これまでも死に戻りを繰り返してきたスバルにとっては、幾度となく目にしてきた光景だ。だが、その衝撃と哀しみ、そして悔悟に慣れることはない。慣れてはいけないのだ。
「今度は絶対死なせない。その為に俺ができることは、知恵を絞ることぐらいだ。だから、考えろ」
運命を打破するための道筋を。
そしてスバルの取った新たな行動は、新たな遭遇を生む。
「――随分と険しい顔をしているね。喰種と間違えてしまいそうだ、ナツキ・スバル」
「……誰の顔が化け物並みに凶悪だぁ!? ユリウス・ユークリウス」
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- 29 : 2017/09/23(土) 22:06:14 :
資料室で地図と睨めっこをしていたスバルに声を掛けたのは、青みのかかった紫の髪が特徴的なユリウス一等捜査官だ。彼は控え目に言っても美丈夫であり、その長身に加え気品高い雰囲気も相まって、女性人気が非常に高い捜査官である。
だが、彼が優れているのは容姿だけではない。一等捜査官にして、白単翼章を受勲する程の実力者でもある。
「まさに完全無欠の優等生。だから俺はこいつが嫌いだ」
「いきなり酷いじゃないか。ところで君は、ここで何を?」
「見れば分かるだろ。地図を見てるんだよ」
「そういうことではなくてだな……」
ユリウスの問いに、わざと見れば分かるような回答をするスバル。それは単なるユリウスへの嫌がらせの意味もあったが、それ以上に余計な説明を求められるのを省くためだ。死に戻りの記憶を他者へ口外できない以上、前周回の記憶を辿って地図をなぞっていると言うことも許されない。
「ところでユリウス、お前今日暇?」
「何故だい?」
「良いからまずは質問に答えろよ。暇なのか? それとも暇じゃないのか?」
「勿論、暇ではないさ。こうして本局に足を運んでいることから、察して欲しいものなのだが」
「はいはい、そうですね」
拗ねたような返事をするスバルであるが、ユリウスの指摘は全く以てご尤もであると感じていた。
CCG本局を訪れているという時点で、ここにいる捜査官は非番ではなく出勤日であることになる。そして仕事中に食事やデスクワークの合間の小休憩以外に暇な時間ができる程、喰種捜査官の仕事は少なくない。日夜都民の安全を守るために職務に励む、それこそが喰種捜査官のあるべき姿なのだ。
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- 30 : 2017/09/24(日) 00:00:32 :
- 期待です!
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- 31 : 2017/09/30(土) 15:59:43 :
- >>30
ありがとうございます!
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- 32 : 2017/10/02(月) 22:12:58 :
「増援は期待薄。まあ、いつものことか」
先程のユリウスへの質問の真意は、増援要請の可否の確認にあった。
一度の交戦を経て、スバルは『腸狩り』の戦闘力をS~レートに違わぬもの――いや、それを上回るものと見積もっていた。これは、エミリア班のみで対処することとなった喰種の中では過去最強だ。それ故、敵の戦闘力がエミリア班の最大対処能力を上回っている可能性も考えられる。もし本当にそうであれば、奇跡でも起きなければ死のループから抜け出せないことになる。
或いは増援を呼ぶか――だ。
しかし、先程のユリウスの返答に代表されるように、ここCCG本局にいる喰種捜査官達は各々の仕事に勤しんでいる。他班の仕事に、任務でもないのに協力してくれるような班はどこにもないだろう。例外も、いないでもないだろうが。
「ユリウス、ラインハルトが今どこにいるか分かるか?」
というわけで、スバルは例外その一の所在を尋ねる。
ラインハルト准特等捜査官。スバル、ユリウスと同期にして二人より二つも上の階級の彼は、無敗の捜査官・有馬貴将と同等の実力を持つと噂されている。そんなCCG最強候補の一人であるわけだが、彼は性格面においても弱点がない。正義感に厚く、他人に頼られれば喜んでその頼みを引き受ける男だ。
彼も当然激務に追われているわけだが、そういった性格の人間であるため、スバルが頼み込めばエミリア班の手助けをしてくれる可能性も高かった。だが、
「彼は確か、非番の筈だ。自宅でゆっくりしているんじゃないかな」
「マジか。非番か……」
ラインハルトの自宅の場所は知っているが、わざわざ非番の彼に助けを乞うのはさすがに気が引ける。いよいよ打つ手が無いとなれば話は別だが。
「そもそもあいつの家は一区と二区の間ら辺。今すぐ連絡が付いたとしても三十分で合流ってのはちょっと厳しいな」
前周回の経験から、約三十分後に『腸狩り』発見の報が入ってくることは分かっている。今からでは、ラインハルトを呼んでも間に合わない可能性が濃厚だ。
「今回も、自分達で何とかしろってことだ。良いぜ、やってやるよ」
「何を呟いているのかは分からないが……、息災で」
そう言って、ユリウスは去って行った。
息災で――、何とも自分には皮肉な挨拶だと、スバルは思った。
-
- 33 : 2017/10/04(水) 23:08:21 :
- 期待です
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- 34 : 2017/10/07(土) 16:36:33 :
- >>33
ありがとうございます!
-
- 35 : 2020/10/26(月) 14:56:34 :
- http://www.ssnote.net/users/homo
↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️
http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️
⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
今回は誠にすみませんでした。
13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
>>12
みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました
私自身の謝罪を忘れていました。すいません
改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
本当に今回はすみませんでした。
⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️
http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi
⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ごめんなさい。
58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ずっとここ見てました。
怖くて怖くてたまらないんです。
61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
お願いです、やめてください。
65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
元はといえば私の責任なんです。
お願いです、許してください
67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
アカウントは消します。サブ垢もです。
もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
どうかお許しください…
68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
これは嘘じゃないです。
本当にお願いします…
79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ホントにやめてください…お願いします…
85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
それに関しては本当に申し訳ありません。
若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
お願いですから今回だけはお慈悲をください
89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
もう二度としませんから…
お願いです、許してください…
5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
本当に申し訳ございませんでした。
元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。
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