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  1. 1 : : 2016/12/20(火) 02:28:09


    当作品はダンガンロンパのssです。

    時系列はダンガンロンパ3絶望編で78期生が入学した後の辺りになり、舞台は平和な希望ヶ峰学園です。

    また、ネタバレが含まれますので苦手な方はお引き返しを勧めさせていただきます。











    ひらりと花が舞い上がったように踊るクラスメイトの姿を私は見た。

    まだ蒼空が霞みがかっている頃、人の気配も殆どない廊下に彼女と胸の高鳴りに遭遇した。


    「あれ?戦刃さんじゃないですか。おはようございます」


    日常であるにも関わらず笑顔であることが自然な彼女が超高校級のアイドルの看板を背負っていることに何も違和感は感じない。


    「お、おはよう舞園さん」


    いつ、どこで、誰にでも笑顔を振り撒き話し掛けるクラスメイトがもう一人いるのを思い出すが、その少年がどこか目の前の少女と同じように見えた。


    「あははっ 戦刃さん、その受け答え方苗木くんみたいですよ?」


    その言葉は私には解らなかった。私は絶望に身を預けた人間で、正反対にいる筈の彼と同じものがあるとは思えないからだ。


    「それを言うなら舞園さんだって苗木くんみたいだよ」


    私の言葉にどこか嬉しそうな顔を浮かべる彼女は私に疑問を投げ掛けながらも期待しているようにも見えた。


    「誰にでも話しかけて笑顔を見せて、相手の本心を見つめようとするところ。かな?」


    少しでも背を押せればと、彼女と彼の恋路が上手くいくようにと私の本心を添えて贈る。

    しかし、どうも喜びきれないようだ。やはり残念な私には無理だったのだろうか。
  2. 2 : : 2016/12/20(火) 02:57:16


    「戦刃さんは残念じゃありませんよ」


    私という人間を抱き締めてくれるように否定する。

    それを深く浸透していくのを感じた後に心を読まれたことに気づく。


    「ちょっとおっちょこちょいなだけです。格好よくて、可愛らしい素敵なお姉さんって感じですよ」


    そう。私達絶望シスターズは彼女達のこういった所に惹かれ、憧れ、そして解されたのだ。先程廊下で出逢った感情もまたそれらの表れだったのだと認識する。

    背を押すつもりが慰められることになっている。この事実を思い出して顔が赤く染まるのが判った。


    「私は、苗木くんみたいに綺麗で強くないんです。

    弱いから泥を被り、その上から綺麗に見えるものを探し集めて取り繕っているだけなんです。そしてそれがたまたま上手くいっただけの人間です」


    私の憧れが弱気になっている姿を見るのはじめてだった。それには少し嬉しくもあり悲しくもあった。


    「誰もがありのままで生き続けられるわけじゃないから仕方がないよ。

    けど、舞園さんは間違いなく強い。だって自分の弱さを理解してる。その上で弱さを越えるために強くなるために努力している。それは強い人間でない限りできないよ」


    「花の栄えは散り際でなく散るまでの一生」だといつだったか腐川さんの小説を読んだ大神さんが作中の台詞を好んで語っていたのを思い出す。

    強くなるべく変わろうとする彼女はまさに今も綺麗に栄えていた。



  3. 3 : : 2016/12/20(火) 03:19:53
    「そうですか」


    途切れ途切れに花は弱々しく相槌を打ち、長いようで短い沈黙が訪れる。

    そこでようやく私達が二人しかいない世界にいることを思い出す。けど、今ここにいない苗木くんならこう言っただろう。自分に自信は無いけど、今は彼の力を模倣することを努て、いつか自分の力に。


    「戦刃さんの表情、明るくなりましたね。」


    再び発した音色には軽妙さがあった。続けて出した言葉には感謝の意を込めて、彼女は息を深く吸う。


    「よし!」


    自らの手でアイドルとしての武器の顔を叩く。


    「ま、舞園さん大丈夫?今のはまずくない?」


    困惑と心配がドッと溢れどもらせる私に彼女は「大丈夫です。寧ろこれで大丈夫です!」と笑顔を見せる。


    「ありがとうございます戦刃さん!お陰で今日は元気にやっていけそうです」


    「そ、そう?ならいいけど…」


    私の言葉は役に立っただろうか?彼のように後押しをできただろうか?と不安がよぎる。


    「大丈夫です!戦刃さんの言葉、一字一句逃さず心に刻まれました。私のエスパーを信じてください。だから…」


  4. 4 : : 2016/12/20(火) 03:23:03





    「また、頼ってもいいですか?むくろさん!」




  5. 5 : : 2016/12/20(火) 03:31:37




    人が1人、2人と校舎に入ってくるのが見えて、二人しかいない世界はこれで幕を閉じた。しかし、何故こんな朝早くに彼女は踊っていたのだろうか?


    「あぁ、それはですね…」


    当然のように心を読むがもう慣れてしまった。自分の鞄を漁る彼女は鼻歌混じりに何かを探す。


    「あった!これ、一緒に行きません?遊園地のチケット、昨日の仕事終わりに16人分譲ってもらったのが嬉しくって…つい」


    優しさから来るものなのかは解らないが、苗木くんとデートも出来た筈なのに皆を誘うこの少女は


    「うん。連れてってくれる?さやかちゃん」


    紛れもない私のアイドルだ。


  6. 6 : : 2016/12/20(火) 03:40:22
    これにて終りです。
    前作に引き続き短い話ではありましたが、後愛読頂きありがとうございました!

    今回は前回と違い、書き溜めといいましょうか。職場で残業中にパッと思い浮かんだ構想をあまり練ることなく書き出してしまったので不安がありますが、もしよろしければご意見ご感想を下さいますと幸いです。

    では、失礼します。




    あー、腰痛ぇ…
  7. 7 : : 2017/03/10(金) 22:35:32
    描写が繊細でキャラの感情がまるで自分自身になったかの様な錯覚さえ覚える素晴らしいSSでした。

    すごく良かったです٩( ᐛ )و
  8. 8 : : 2017/04/14(金) 00:46:44
    Oasis好きだねえ
  9. 9 : : 2017/05/14(日) 22:30:59
    お褒め下さりありがとうございました!
    描写が繊細、感情移入のしやすさについては、自分で後日読み返した際に特に気を付けていただけに涙腺と口元が緩んでしまうほどに嬉しいです!


    OASISは、私の青春時代にハマっていたバンドだったのでつい曲の雰囲気を思い出しながら言葉を選んでしまうので御容赦ください 笑

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みんとなくぷー

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