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輝く世界(第1話 旅立ち)
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- 1 : 2016/10/30(日) 01:16:09 :
- 続きです。
シリーズ登録しているのであえてURLを貼るという配慮はしません。
注意書きなども全てプロローグで済ませてあるのでそれも省きます。
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- 2 : 2016/10/30(日) 02:26:44 :
- ガラガラと、馬車の走る音がする…
慌ただしい雰囲気の車内…
1人横たわる少女とそれを取り囲む者達…
泣く者、慌てふためく者、憐れみを込めた目で見る者、そして泣き叫ぶ者…
感情を乗せた馬車は街へ急ぐ…
「うーん…」
医者が頭を抱える…
それ程までの難病なんだろうか…
それとも…
「大変申し上げにくいのですが…」
病名がわかる…
俺たちはそう信じて息を飲んで、医者の言葉を待った…
「正直お手上げです…」
…その言葉に場が凍りついた…
元気だったあの娘が、笑顔だったあの娘が、誰からも愛されていたあの娘が…原因不明の病に侵されるなど誰1人思っていなかったからだ。
静寂に包まれる診察室…
国一番の病院がお手上げなのだ、助かる筋はないだろう…
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- 3 : 2016/10/30(日) 08:32:18 :
- ───
俺たちは診察室から病室へ移る…
そこには顔を真っ赤に染め、苦しそうな息継ぎで目を閉じている彼女がいた…
「…ん…?……ル…ん…?」
苦しそうな彼女は、俺の気配でも察知したのかと思うようなタイミングで目を覚ます。
母親が、状況と今、何が起こっているのかを説明する…
「わ…し…し…の…?」
途切れ途切れではあるが、彼女は自分が死ぬのか…と伺ってきた。
どう返事すればよいのかわからない、病名もこれから症状がどう進行するのかも一切わからないのだ。
母親が「大丈夫、貴女は死なない。絶対に助けるから。」と、自力では無理なのにそう返答する。
「そう…ほ…と...?」
虚ろな目で、苦しみながらも生きている彼女を、どうにかして救ってやりたい。そんな願望を思い浮かべる中で、どうしてこの娘なんだと憎悪の念も浮かんでくる。
嗚呼…この娘の為に俺ができる事といえばもう残されてないだろう…
無力な自分を嘆いても何も変わらない、そんな事はわかりきっていたのに、自己嫌悪と憎悪が混ざりあい、なんて無力なんだと嘆いてしまう…
俺に残された道は奇跡が起こることを祈る事だけなのだろうか…
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- 4 : 2016/10/30(日) 08:59:28 :
- ────
彼女が病院に運ばれてから数日、病気は一向に快方へ向かう気配はない。それどころか悪化が続いていると聞いた。
そんな絶望的な状況の中で2通の手紙が家に届く。
1通は王を目指す戦いが始まった事。
この手紙を読んだ父親は、家の蔵から武器になりそうな物を持ち出し、家を出て行った。
…薄情者。
病気で倒れた自分の娘を捨て、何処かへ歩み出す父親を、心では言わないとと思っていたのに、何も言えずただ遠ざかる背中を見つめていた。
そして2通目。
こちらは眉を歪ます内容であった。
─────
アリス様。その御家族様。
アリス様の病気は、我々も見たことがありません。未知の病気が蔓延した際、何もできず数多の人間が死ぬようであれば、1人でも多くの人間を救うべく、技術力向上のため、我らが都市、「医療都市・メデス」への送還を御依頼します。
医療都市メデス国長 アラン・リヴァン
──────────
この内容にその場にいた全員が怒り狂う。(と言っても俺と母だけだが)
メデスは世界で最も医療が発達した国であり、そこに行けばどんな病気でも治ると言われている。
が、それとは逆に未知の病気の者があの都市に行った場合、死より辛い実験が行われるという噂がある。
情報の入手が限られている俺たちはそんな噂を信じきり、メデスへの送還を拒否した。
しかしどういう事なのだろう…後日病院へ行くとそこに彼女の姿はなかった…
医者曰く、メデスの特殊部隊の人間に強制送還されたようだ…
母と姉が泣き崩れる、兄が怒り狂う、祖父母が涙目で医者に突っかかる、そんな中俺は…何の感情も浮かべられず、その様子を見ているしかできなかった…
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- 5 : 2016/10/30(日) 09:09:54 :
- ─────
彼女が送還されてから数年、俺はある噂を耳にする。
「王になれば、どんな病気でも治す薬が手に入る。」
そんないかにも怪しい噂を、疑うこともなく王になる事を決心してしまう。
どれだけ躓いても、どれだけ辛くなっても、どれだけ嘆いても、親父と同じ道を行く。
後がなかった俺には、その考えしかなかった。
(どれだけかかっても、絶対に助け出す。待ってろアリス、俺が…俺が!!
王になりお前を救う!!)
1人の少女のために、王になる事を決心した少年の冒険が、幕を開けようとしている。
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- 6 : 2016/10/30(日) 09:21:09 :
- 王になる事が正しいのかはわからない、しかし、彼女を助けるのであれば、彼はどんな危険な事でも容易く行うだろう。それだけ彼にとって、彼女は大切な存在なのだ…
戦え…
彼の脳内に、かつての王の言葉が響いてくる。
戦え…
聞いたこともない声なのに、闘争心が駆り立てられる。
戦え…
無意識に武器を取る。
己の欲望のままに…戦え!!
持てる全ての力を使い、「魔王」になってみせよ、それが今のお前に成せる最善の行いだ。
かつての狩人は、ずば抜けて賢い頭脳と高い戦闘能力、武器鍛錬により、世界を統べる初代王となった。
狩人の血は途絶えない、愛する人を守るために途絶えない。
彼は武器を持ち、家に背を向け歩み出す。
見守る家族には、かつて消えた父の姿が浮かび上がる。
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