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  1. 1 : : 2016/10/16(日) 09:33:32
    こんにちは。蒼電と申します。
    今回はみーしゃさん主催の秋花杯という企画でこの作品を書いています。
    楽しい企画ですし気になる作品も見つかるので是非下記のURLから
    http://www.ssnote.net/groups/835

    では見て行ってください
  2. 2 : : 2016/10/16(日) 23:42:14
     カタカタカタカタ…………


     パソコンのキーボードを打つ音――ではなく、チョークが黒板に文字を書く音が響く。そしてここは都内のオフィスの一室――でもなく、普通の高校の教室だ。

     シャーペンを授業のノートを取るために走らせつつも僕の意識は時折、右斜め前の席に座っている子に奪われているため、授業に集中はしていない。

     そこに座っている彼女は僕のようにノートを書くだけで授業が上の空なわけではなく、かといって右側の奴のように寝てるふりして携帯をいじっているわけもなく、授業をちゃんと受けている。

     ……彼女だとまるで恋仲のようだからその子と呼ぶことにしよう。
     
     その子の授業の姿勢を見て僕はその子を見習い少しだけ真面目に授業を受けだした。けれどもやはり時折その子に意識を奪われながら。
  3. 3 : : 2016/10/16(日) 23:44:11
     キーンコーンカーンコーン


     チャイムが鳴って先生の合図で授業が終わる。

     僕は今やっていた授業の教材をロッカーに入れて、次の授業の教材を引きだした。それから同じ移動教室のクラスメートの男子達と共に教室の移動を始める。

     火曜日の二時間目、政治の時間。僕が一番好きで、一番苦しい時間がやってくる。

     政治の時間。選択科目の一つで週に3回受ける授業。

     好きな科目ではあるが一番ではない、せめて三番くらいだ。それなのに僕が一番好きな理由はこの授業の隣の席がその子だから。そして一番苦しい理由も同じで隣の席がその子だから。



     クラスメート達、もとい友人達と談笑しつつ教室に入る。移動と言っても移動教室の別のクラスに移動するだけだから教室自体に別段変わった雰囲気などはない。

     いつも座る席に教材を置いて僕達は話を続ける。教材を置くときにいつもと机の雰囲気が違っていた。きっと席替えをしたのだろうと移動先のクラスの一人に聞くとやはりそうらしい。話はそいつの席替えの熱い戦いの件に移り僕は笑いながらそれを聞いていた。
  4. 4 : : 2016/10/17(月) 23:54:58



     ガララッ



     ドアが開いた方向に目を向けると他の女子と一緒にその子が入ってきた。女子の中では少し背が高く、スラッとした体型にロングヘア―。夏ならワンピースに麦わら帽子が似合いそうだが、今は秋なのでカーディガンに制服がとても映える。そんな妄想に力を注ぎながら席替えの話になんとなくの相槌を打って席に座る様子を見ていた。


     キーンコーンカーンコーン


     始業のベルが鳴り少し強引気味に話を終えるのを聞きながら席に着く。

     隣にはその子がいる。そのせいか自然と姿勢は良くなり、右を向くことが出来なくなる。いつもならあんなに右を見ているのにこの時間だけはどうしても右を見れない。

     理由は簡単、その子が隣にいるから。近くにいるはずなのに姿を見れない、まるで壁があるように。

     その子がいる右側から体が温まり、熱くなる。触れている訳ではないけど熱い。隣にその子がいるから。緊張か照れか、誰しも一度はあるだろうこの感覚を今日も僕は感じながら授業を受ける。

     そうして体全体が運動後みたいな熱さに包まれたところでいつも始業から少し遅れてやって来るこの授業の担当の先生が来て授業を始める。

     そんな風に僕の一番好きで、一番苦しい授業が始まる。


  5. 5 : : 2016/10/18(火) 23:37:57
    カタカタカタカタ………



     つい先ほど聞いた音を聞くが今度は真面目に先生の話を聞いている。好きな教科だからって理由もあるが、一番はその子が隣にいるから。前は緊張で授業なんて手に着かなかったけど今は良いところ見せようと真面目に受けられるようになった。慣れたのだと思う。

     「前は」で思うだろうが僕はいつからその子を好きになったのかだがそれは春から夏に移り変わる頃の話になる。



     僕の学校では毎年体育祭はその春から夏に移り変わる頃に行われる。

     他の学校よりは盛り上がりには欠けてしまうが、中学よりは本格的だったので僕は結構楽しんでいた。

     クラスメートが頑張っているのを同じクラスメートの友人数人のグループで応援してる時友人の一人がこんなことをいった。

    「なぁ、あっちの女子たちと写真撮りに行こうぜ」

  6. 6 : : 2016/10/18(火) 23:38:36
     
     行事の時は普段よりも男女で接する機会が多くなる、そのチャンスを無駄にしたくないのだろうそいつはクラスの女子とこれを機に急接近したいのだ。でも一人で行くのは気が引けるから集団対集団で近づきたいからの提案だった。

     僕も他の奴らも女の影はなくクラスの女子と仲良くしたかったのでこの提案に喜んで乗った。

     言い出しっぺのそいつは僕らの快諾に待ってましたと言わんばかりに僕らを引き連れて話を持ちかける。

     僕らは自ら進んで先陣切って進むそいつに感謝しながらついていく、見るところ向こうの女子は5人こちらも5人。合コンか。

     その中にその子がいた。でもその時は可愛い子だなくらいにしか思ってなかった。

     向こうも写真の誘いに快諾してくれたので僕等は早速スマホを自分たちに向けて写真を撮る。
  7. 7 : : 2016/10/19(水) 22:13:02



     パシャリ




     シャッターを切る音がして撮影完了、でも人によってはここからが本番。

     先陣切って話しかけたあいつは気軽に女子と会話ができるやつなので撮った写真をLINEで皆に送ってからをきっかけに個別にトークを始める。

     他の皆も同じように仲を深めるのだろうが、仲間内でも引っ込み事案な方の僕はそんな事できる訳もなく送られた写真を見てグループのトークで多少会話して終わるのだろうと思っていた。





     午前の部が終わってから昼休憩に入る時だった。

     偶々お昼を買う予定だった僕は購買へ向かってる時にその子にあった。

     その子も購買でご飯を買う予定だったらしくさっき写真を撮ったばかりだったのもあり会話をしながら僕らは購買へ向かった。

     そして適当に買うものを決めて買って二人で教室に戻った。
  8. 8 : : 2016/10/19(水) 22:15:26





     でも戻った時の僕の見える風景は変わっていた。

     その子が輝いているように僕の目に留まり僕を惹きつけるが、近いとまともに姿を見れず慣れるまでは会話も普通を装うので苦労した。

     たった購買までを行き来しただけ――事実それだけなのだがそのそれだけで僕は心を奪われてしまった。

     教室に入る際のその子が女子のグループに行く時の「じゃあね」のセリフ。それを聞いて僕はひどく残念に感じていてそこで僕は気づいた。その子に恋をしたって。





     それからの僕はその子に少しだけ話しかけるようになった。朝あったときにおはようとこえをかけたり、その子が授業の準備の為にロッカーに向かった時に僕も同じように向かい次の授業について聞いて見たり。一日に一度あるかないかのちょっとの会話を大切にするようになった。

     でも気軽にいけた訳ではない。話しかける時に毎回のように僕は緊張して、その度に勇気を振り絞っている。他の女子なら簡単に話しかけられるのにその子だけは勇気がいる。

     その勇気が振り絞れずにいると話しかけられなかった結果に酷く後悔して気分が少し落ち込む。 

     だけど話しかけれた後は体が熱くなっていて何とも言えない高揚感に満ち溢れる。

     そんな日々が僕の毎日となった。



  9. 9 : : 2016/10/21(金) 23:54:51



    そんな話の内に授業は残りもう少し。僕にとっての特別な時間は過ぎ去ろうとしている。

     名残惜しくも解放される事に安堵を覚える妙な感覚に見舞われながら注意事項に色ペンで強調しながら黒板の板書を取っていると隣の動きが妙だった。




    シャカシャカシャカシャカ…………




     少し困った表情のその子だ。

     どうやら色ペンのインクが出ないようだ。何度もノートの空白部分にペンをぐるぐると走らせているが出そうにない。

     僕の体は今熱さを増した。僕が何をしようとしてるか気づいて。

     見なかった事にもできた。でも僕は動いていた。

     勇気を振り絞って筆箱からその子と同じ色ペンを出してその子に向ける。

     声が上ずらないように大きな声になったりして目立たないように注意しながら。


  10. 10 : : 2016/10/22(土) 19:49:18



     「そのペン、色でないの?良ければ使っていいよ」


     僕は言った。



    「ありがとう、借りるね」


     その子は僕の申し出に喜んで受け答えて借りて行った。

     その時の笑顔は僕にとっては振り絞った勇気分、それよりもずっと大きなものとなった。


     


    「本当にありがとう!助かりました」

     授業の終わる際その子が僕にペンを返しながらそう言った。

    「今度なんかお礼するね」

     動揺した。だけどどうにか顔には出さず

    「ありがとう、でも気にしないでいいよ」

     と優しく模範解答を答えた。

     もしこれを見ている人がいたらつまらない奴だとか、意気地なしだとか思われるのだろうがそんなものは知らない。第一これ以上の積極性は僕にはない。

  11. 11 : : 2016/10/22(土) 19:58:01





    キーンコーンカーンコーン



     今日何度目かのチャイムが鳴るのを聞きながら僕は決めていた。

     今はまだ僕はその子に告白する勇気は振り絞れないけど、学年が変わる前にこの思いを伝える。

     でも僕はまだまだそれはできそうにない。

     ここまでの考えは恥ずかしいという結論に一瞬で覆われてチャイムが鳴り終わる頃には先程の決意は早くも揺らいでいた。
     
     友人達と教室に戻りながら考える。

     劇的な何かがあったりして二人の仲が急接近といったのは妄想の中でしかない。

     だからこそ僕はただ、地道にその距離を縮めるしかない。
     
     ひたすらその子の事を考えて、数少ない勇気を振り絞って行動に移して。

     こんな体験、共感してくれる人はいるだろうか。もしいてくれたら嬉しいな。

     明日は政治の時間は来ないけど、僕はその子に話しかけることが出来るだろうか、いつか僕はその子を彼女と呼べるだろうか。

     



     
     僕の現在進行中の片思いはまだまだ続きそうだ。




  12. 12 : : 2016/10/22(土) 20:07:05
    おしまいです。
    今回は誰しもがこんな体験あったんじゃないか?というお話を書きたくて書いてみました。
    告白までする人はいないかもしれませんが、片思いはあると思って今回、この恋の結末までは書かなかった次第です。
    共感してくださった方が一人でもいれば幸いです。
    見てくださった方ありがとうございました!

    最後に改めて
    今回この作品はみーしゃさん主催のイベント、秋花杯という企画での作品です
    素晴らしい作品が揃っているので是非みてください!
    http://www.ssnote.net/groups/835


    見てくださった方々、運営の皆さん、参加者の方々、ありがとうございました!

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oudentt

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