例えばの話をしよう
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- 1 : 2016/10/15(土) 14:01:27 :
- http://www.ssnote.net/groups/835
こちらのグループで企画された、『秋花繚乱 秋花杯』への参加作品です。
結構なエグい作品になってます
縛りがあるものだと勘違いして、書き溜めをしてないために、参加したからには拙い文であろうと、期限内に書き切るを目標に頑張ります
※残虐な表現が多々現れます
心臓の悪い方、グロ苦手な方、というか、冬月が嫌いな方は後方を眺めて呪詛の限りをお吐き下さい。
書き溜めなど存在しません
あるのは最終的に行き着くはあれだという呆然としたオチのみです
序盤中間などは爆死覚悟
笑い飛ばされようが書ききってたるぜいの勢いのみで書くために酷い惨状を見せますが、それも一種の味わいと気遣って見やがれコンチクショウです
以上の注意点を踏まえてこの作品は終わらせて頂けたら楽ですのにーーという事で、始まります(号泣)
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- 2 : 2016/10/15(土) 14:26:27 :
- 例えばの話をしよう。
場所は一軒家が建ち並ぶ、いわば住宅街と呼ばれる地域に設けられた、多くの遊具が設置された公園。
時間は日が暮れて、住宅から漏れる光がなく、住民の多くが深い眠りに着くほどの夜更け。
夜も安心して歩き回れる明るさを、建ち並ぶ街灯達が発光し、月明かりだけでは照らされない公園の中にある物を鮮明に照らしてくれていた。
いつも小さい子供が取り合いしているブランコ。
昼間に子供達が成形したであろう砂の山。
誰かが忘れて変えたのかベンチに置き去りにされた鞄。
そして、公園の真ん中で赤い水溜りを形成する真っ赤に染まった男性と、その惨状を作り出した包丁を持ち、楽しげな笑顔を浮かべる少女。
その少女が不気味な笑顔を浮かべながら、自分にこう言って放ってきたらどうする?
「お前は黒羽 鴉 で間違いないか?殺人鬼にスカウトしに来てやったぞ」
勿論、これは例えばの話だ。
それも悪質で、長い例えばの話だが。
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- 3 : 2016/10/15(土) 22:53:11 :
- 最悪の事態だと言えよう。
僕はどこら辺にもいるような、何変哲もない平凡な高校生だ。
頭の良さも可もなく不可もなく、運動神経も特質高いわけでもない。
強いて挙げるならば、高校生にしては生意気さがなく、どこか冷たさを感じる性格にあると幼馴染みからは言われている。
そんな平凡な高校生の俺は、気分転換のついでに、この平和ボケした面白味のない世界を、刺激を求めて犯罪の激増する時間帯に散歩に出た。
馬鹿なもので、刺激を求めてはいたが、絶対的に自分の身近で犯罪が起きるわけがないと楽観視していた俺は、気の向くままに家から少し遠くにある公園へと足を向けてしまった。
それが最悪の事態を招くとは露にも思わずに。
そして、公園に着いてみたらこの惨状。
そして、先程の言葉。
ーー『殺人鬼にスカウトしに来てやった』
殺人鬼。
平気で人を殺める残忍な人間を鬼に例えて造られた言葉。
決して、スカウトするような代物ではない。
スカウトするような代物ではないはずなのだ。
ましてや、ただ単に性格に難があるだけの俺をスカウトする価値はない。
しかし、それら全てが些細な問題。
問題は目の前には殺人現場が広がってしまっており、その現場を作り上げた殺人鬼と顔を合わせてしまっている。
この後、どういった展開に発展するか、想像は容易い。
殺人鬼は目撃証人 を真っ先に消すはずだ。
自分の右手に持つ、赤く染まった包丁を使い。
「い、嫌だ。し、死にたくない」
面白味のない世界。
しかし、死んでもいいと思えるほど人生を満喫していない。
酒やタバコを嗜みたいし、大学だって行ってみたい。
大人になりたいし、結婚式だって執り行いたい。
やりたい事はまだまだある。
「死にたくない!!」
「ほぉ、抵抗を示すか?穏便に済ませようと思うたが、男の意地は無碍に出来ぬタチでの。わらわは優しくないぞ?死ぬ気で来い、童 」
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- 4 : 2016/10/18(火) 00:27:56 :
- 少女は時代錯誤の言葉を吐き捨てると同時に、垂直にジャンプを始めた。
少女はワンピースの裾が捲れるのもお構い無しに、ジャンプの高さを徐々に、徐々に上げていく。
ーー逃げるのには絶好のチャンス。
そう判断し、踵を返して逃げ去ろうとした途端、少女の姿が掻き消えた。
(消えた!?)
目の前で起きた超常現象に戸惑い、逃げ出そうとしていた足も動きを止める。
視線を左右に張り巡らせるが、彼女の姿どころか、影の一つも見つからない。
「何処を見ておる?」
再び、少女の姿を認識したのは時代錯誤の口調の発生源に目を向けた時。
少女は元より小さい身体を縮こませ、視界の下に潜り込み、接近していた。
先程のジャンプは下に注意を向かせない為の心理を揺さぶる動作。
その事に気が付くが遅い。
少女は既に懐に潜り込み、包丁を振りかぶって準備を完了させていた。
(し、死んだ!?)
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- 5 : 2016/10/18(火) 19:47:24 :
- 面白そう
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- 6 : 2016/10/20(木) 06:46:14 :
- ーー死ぬ。
脳裏に過ぎる恐怖の二文字。
死にたくない。
心の底から沸き上がる生への執着。
しかし、間に合わない。
死神の鎌は直前まで差し迫っている。
(助からない)
執着心を掻き消す諦念。
生への執着を手放そうとすると、
ーー本当に助からないか?
突如に聴こえる聞き慣れた声。
その声は、生まれて一番最初に耳にし、少しずつではあるが変化してきた声。
生に執着するあまり、生み出した心の声。
(助かるわけがないだろ!?こんな事態の対処の仕方なんて知らないんだ!!)
僕は自分の心に八つ当たりする。
今の自分には、自分の心に怒りを覚えるくらいに冷静ではなかったようだ。
ーー知らないんじゃない。知りたくないんだろ?対処の仕方も、そして、それを知っている汚い自分も。
お前は綺麗好きだからな、と癇に障る皮肉を付けたし、彼は笑った。
(ちっ、やっぱり僕は自分が嫌いだ)
ーーおぉ、やっぱり気が合わないな。俺は自分が大好きだぜ。
その言葉を最後に、僕の意識は深い闇に沈んだ。
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- 7 : 2016/10/21(金) 18:49:51 :
- (なんじゃ、期待外れじゃな)
深い失望感。
それが殺人鬼の少女が、カラスに抱いた気持ちだった。
殺人鬼の少女はとある殺人鬼集団の一員で、十二席ある席を埋める一人であった。
少女は幼少期より殺人に手を染め、今所属する殺人集団の目に止まった。
ーースカウトしに来た。
先程、少女が放った言葉。
それは悪ふざけで言った言葉でも、冗談の類でもなかった。
少女が所属する殺人鬼集団。
それは十二席の殺人鬼が、命を落とす事や牢の中に入る事があったら、その殺人鬼が後継者に選んだ人間をスカウトし、組織を保ってきた。
そして、今回空いた席を埋めるために、カラスをスカウトするべく出向いたのだが、結果は散々たるだった。
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- 8 : 2016/10/21(金) 21:43:55 :
- まず、目の前で殺人現場が広がっているのを見て、少女を警戒するよりも、恐怖に慄いているのが減点。
次に、少女がジャンプというアクションを取った際に、逃げる選択肢を取ったのは減点。
極めつけは、なす術なく殺されそうになっているのが減点。
少女にとって、カラスはスカウトするに値せず、言っては亡くなった第七席には悪いが、後継者に選んだ第七席には見る目がなかったとしか言いようがないほど期待外れだった。
包丁がカラスの喉元に向け、刻々と迫る数秒の世界。
長らく殺し合いに明け暮れる生活に身を投じていて身に付けた、短い時間に早く考察する特技中、不意に感じる寒気。
幾多もの死地をくぐり抜けて、研ぎ澄まされた少女の警鐘が大きく鳴り響く。
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