この作品はオリジナルキャラクターを含みます。
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マッスル大戦 Zero
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- 1 : 2016/08/11(木) 20:52:06 :
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「敵襲だあああああ!!!」
城内に兵士達の大きな声が木霊する。自室で筋トレを行っていた騎士軍リーダーである女騎士は、それを聞きながら静かに立ち、体を伝う汗を拭い去った。
そして女騎士は自らを覆う凄まじい筋肉に鎧を被せ、剣を手にする。女騎士は真っ直ぐと前を見据え、剣を優しく撫でると室内に静かに声を響かせた。
「行くか」
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- 2 : 2016/08/11(木) 20:52:25 :
◇ ◇ ◇
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- 3 : 2016/08/11(木) 20:53:28 :
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「ひゃっはああああああああ!!!」
荒れ果てた大地にいそうなモヒカンの男達はそう叫びながら、目につく家屋を破壊し、人を傷つける。
恐らく王政を覆そうとしている反逆軍の者達であろう。男達は手にする棍棒を振り回し続ける。
「そこまでだ!」
そこに降りたった女騎士は男達に剣を突き立てそう言い放つ。何を隠そう、この女こそ騎士軍のリーダーその人である。女のその声には、聞くだけでとてつもない強さを感じさせるほどの威圧感が含まれていた。
男達は一瞬怯みながらも、棍棒を握る手に力を入れなおし果敢に立ち向かう。
「うおおおおおお!!!!」
数十人もの屈強な男達が、たった一人の女騎士に襲いかかる。いくら騎士軍のリーダーといえど女性。この人数の差はどうすることもできないのではないか。その戦いを見つめる町民達の誰もがそう思っていた。
しかし、女騎士は全くの怯えを見せない。周りにいる騎士達も女騎士の数メートル手前で静かに待機している。
その時、女騎士はおもむろに体につけている鎧をゆっくりと外し、地面に投げ出した。まさに戦いが始まったその時に、である。
女騎士のタンクトップにショートパンツという露出度の高い姿に男達は立ち止まり、好色の視線を向けたかと思うと、一瞬で険しい目つきに戻る。
女騎士は体を横に向け、右手首を左手で掴み高らかに叫んだ。
「サイドチェスト!!」
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- 4 : 2016/08/11(木) 20:54:16 :
女騎士の美しくかつ鍛え上げられた大胸筋が強調され、凄まじい威圧が辺りを吹き飛ばす。
「ぐあああああああああ!!」
男共はさながらドミノ倒しのように一斉に地に伏していった。
町民から割れんばかりの歓声が女騎士に与えられ、女騎士はにこやかにそれに応える。
これでまた平和が戻った────誰もがそう思ったその時。それは一瞬の油断、されど大きな油断。周りの町民、騎士達が先程の男共と同じようにその身を倒す。
「なんだと!?」
女騎士が新たな敵がいるであろう背後を振り向いたその刹那、
「うわああああああ!!!!」
稲妻が落ちたような衝撃に体を包まれながら、女騎士の体は吹き飛ばされる。
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- 5 : 2016/08/11(木) 20:56:00 :
そこにいた男は全身を女騎士よりも厚く美しい筋肉で包む反逆軍のリーダーであった。
「そんな……あいつ……どこの筋肉も強調せずに……」
そう、その男は先程の女騎士とは違い何のポーズもとっていなかった。否、正確に言えばポーズはとっている。リラックスポーズと呼ばれる、仁王立ちしながら全身の筋肉に力を入れるポーズだ。それは全ての筋肉を見せつけることのできる反面、強調される筋肉がどこにもなく威力を発揮できない。しかしこの男はどうだ。『原点』にして『至高』そう言わずして何と言えようか。
「私は……まだ……」
女騎士は震える足を立ち直らせ、両手を胸の前で曲げ少し前傾姿勢をとる。
「モストマキュラー!!」
首の横の僧帽筋、肩の厚みや腕の太さがこれでもかと見せつけられ、女騎士の力強さが溢れんばかりに体現される。
しかし、そんな女騎士のポーズは男には全く通用しない。戦場に女騎士の声が虚しく響いただけであった。
「そんなものか」
男は呆れたようにそう言い、体を横に向ける。
「サイドリラックス」
男のその声と共に、女騎士の体はいとも簡単に吹き飛ばされる。
もはやここまでか……誰が見てもそう言うであろう絶望的な状況。しかし、女騎士の目から希望の光は消えていなかった。
─────あのポーズしか、ない。
女騎士は自らの腹筋に絶対の自信があった。しかし女騎士の腹筋はあまりの美しさに見るものを圧倒してしまう。そのため自らずっと封印してきた。無駄に人を傷つけてしまわぬように。本来は皆に見てもらいたかった腹筋を、ずっと誰の目にも触れないようにしてきた。だが、この男に出し惜しみしている余裕はない。
女騎士はタンクトップを脱ぎ去り、黒のスポーツブラを露わにする。刹那、男はこれまでとは段違いの圧力を感じ、身構える。
女騎士の言葉では言い表せないような美しさを誇る腹筋が、そこにはあった。
「いい筋肉だったぞ、男よ」
女騎士はその顔に微笑を浮かべながら両手を頭の後ろで組み、喉が枯れんばかりに叫んだ。
「アドミナルアンドサイ!!!!」
女騎士の腹筋が最も強調されるポーズ、すなわち最強のポーズ。それは周囲の建物を一瞬で吹き飛ばし、さながらビッグバンのような威力を発揮し、男に届けられる。
「ぐあああああああああ!!!!」
男はそう叫びながら、ゆっくりとその場に膝をついた。
「ふ……私の腹筋を見ても吹き飛ばされぬとはな……恐れ入るよ」
タンクトップを着た女騎士は、男に近づきながらそう零す。
「あんたには敵わねえよ……完敗だ」
男は天を仰ぐ。女騎士は何を言ってるだと笑いながら、男に手を伸ばした。
「捨て置くには惜しい筋肉だ。私と一緒に来ないか?」
男は目をまんまると見開き、驚愕の表情をつくる。
「いいのか?俺が?」
「当たり前だ。それほどの素晴らしい筋肉を持っているのだからな」
男は目に薄っすらと涙を浮かべ、女騎士の手をとる。
「一生、あんたについていくよ」
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- 6 : 2016/08/11(木) 20:56:17 :
◇ ◇ ◇
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- 7 : 2016/08/11(木) 20:56:54 :
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「ねえお母さん、あれ何?」
無邪気な表情を浮かべながら、少年は大きな二つの銅像を指差す。
「あれはね、昔この国にいた最強の二人」
その銅像の一つはリラックスポーズをとる屈強な男。
もう一つは、笑顔でアドミナブルアンドサイをする腹筋の美しい女。
あの日、この場で激動を繰り広げた二人の戦士は、今こう呼ばれていた。
「この国の、英雄よ」
『完』
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- 8 : 2016/08/11(木) 20:58:58 :
- あとがき
この名前を考えた時からずっと書きたかった作品です。はい。ごめんなさい。
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- 9 : 2016/08/11(木) 21:11:59 :
- 大好きです
お疲れさまでした!
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- 10 : 2016/08/11(木) 21:42:14 :
- 僕もふじやまさん大好きですありがとうございます!!
- 著者情報
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