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仮面ライダーぼっち7
- やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
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- 1 : 2013/12/12(木) 22:02:13 :
- 仮面ライダーぼっち7話です。
中学時代の同級生、折本かおりと再会した八幡。
ライダーバトルが、加速する。
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- 2 : 2013/12/12(木) 22:20:18 :
- 「好きです、付き合ってください。」
「友達じゃ、だめかなぁ?」
ふと、思い出がよみがえる。放課後の教室。俺が告白した女の子は、気まずそうな顔を浮かべる。
ちなみにその翌日には、クラス全員がその出来事を知っていて、俺は泣きそうになった。
中学時代の数あるトラウマの中でも屈指の一つである。
振られるだけなら、まだいいのだ。だが、好きだった女の子が、そのことを他人に言いふらす。これはかなり、来るものがある。
俺が女子を信用できなくなった一番の要因になった出来事かもしれない。
その少女の名こそが、折本かおりである。
その少女が、今俺の目の前にいる。
何故俺に声をかけたのか。その魂胆がわからない。ただの気まぐれ?ただ、そこにいたからか?どちらにしても、俺にとっては迷惑でしかない。
「よいしょっと。」
言って、折本は俺の前の席に座る。
は?なんなのこいつ。
「……ンだよ。なんかようか。」
「いや、別に用ってわけでもないんだけどさ。なんか懐かしいなーと思って。」
そうかよ。俺にとっては嫌な思い出でしかないけどな。
「ほら、比企谷って総武高行ったじゃん?あそこってうちの中学からあんまり行った人いないよね?」
「ほら」の意味が全く分からん。それに、そりゃあそうだろう。同じ中学の奴がいるとこには行きたくなかったんだから。
「……ああ、そうだな。」
「おーい、かおりー!」
店の入り口から、周りの迷惑を考えないような大声が聞こえる。
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- 3 : 2013/12/12(木) 22:32:03 :
- 「あ、おーい。」
折本がそういうと、俺の席に一人の女子と二人の男子が寄ってきた。
男の一人には、見覚えがある。確か、俺の中学でバスケ部のキャプテンをやってたやつだ。永山、だったか。
「あれ?比企谷じゃね?うっわー、うけるわー!」
何が面白いんだ?俺の存在がかよ。
「え?これが噂のキモ谷君?うっわー、わかるー。」
……。何故初対面の女子からキモイといわれなあかんのだ。こいつら、高校でも俺を笑い物にしていたのか。
「ははっ、そういえばさ、比企谷って中学ん時、かおりに告ったよなー。あれ笑ったわー!ちょっと優しくされただけで勘違いするとか、脳内めでたすぎンだろ。」
「……昔のことだ。自分でも馬鹿だったと思うよ。」
皮肉を言ったつもりだが、彼らには通じなかったらしい。
「あれ、クラス中の奴らが知ってただろ?ごめんなー、あれ俺が言ったんだわ。あん時からおれたち付き合っててさー。面白半分でさー。でもま、自分の彼女が告白されたってんだから穏やかじゃねーよな。まぁ比企谷にはとられるなんて思わないけどさー。」
「そうだな。」
右手で契約モンスター、ドラグレッダーのカードを強く握りしめる。意思をしっかり持っていないと、今すぐにでもこいつらを襲わせそうになる。
「しっかし比企谷お前……うおっ!?」
鏡の中から突如出てきた何かに、永山が吹き飛ばされる。
あれは……あのモンスターは、雪ノ下の、モンスターだ。
永山はさっきの衝撃で体を思い切りテーブルに体をぶつけた。
窓の外を見ると、雪ノ下雪乃と由比ケ浜結衣が、こちらを見つめていた。
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- 4 : 2013/12/12(木) 22:44:55 :
- あいつらには、見られたくなかったな。
こんなところを。むかしの俺の、残像を。
茫然としている俺を置いて、彼女たちは店の中に入ってきた。
「うわ、何あの二人。すごく綺麗。」
折本の連れの女子が感嘆の声を挙げる。
彼等は、何が何だか分からないといった様子だ。
「んだよ。何か用か。」
「いえ、少し言いたいことがあってね。」
「え?この子達、比企谷の知り合い?」
永山が素っ頓狂な声を挙げる。
「あ、どうも。俺、永山智っていうんだ。比企谷の、友達です。えっと、バスケ部で、キャプテンやってるんだ。」
汚い笑みを浮かべて、さりげなく雪ノ下の肩に手を置こうとするのを、彼女はパシリとはじく。
「あなたの名前なんてどうでもいいわ。それと、彼をあまり馬鹿にしないことね。友達は少なくても、あなたのようなクズを味方にする人ではないわ。」
永山の笑顔が崩れる。
「それと、随分彼に言っていたみたいだけど……彼は、あなた達が見下していいような人じゃない。ねぇ、あなた。」
雪ノ下が折本へと話す対称を変える。
「自分に思いを寄せてくれた人を貶めるなんて、恥ずかしくはないの?でもまぁ、報いは受けているようね。こんなクズを恋人にしているんだもの。これ以上にない辱めだと思うわ。ご愁傷さま。見る目がなかったのね。彼を選んでいれば、もっとましだったはずなのに。でももう遅いわよね、今の彼は、本物を見分けることができるもの、あなたのような人を選ぶはずがないわ。」
「てんめぇぇぇっっ!!」
散々にこきおろされた永山が雪ノ下に殴りかかる。
「キィィィィッッッ!!」
再び現れた蝙蝠のモンスターが、主人への攻撃を止める。
「な、何だ今の!!ば、化け物だ!化け物が出たぞぉ!」
周りにいた客が騒ぎ出し、どたばたと店から去っていく。
あとには、俺達だけが残った。
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- 5 : 2013/12/12(木) 22:55:27 :
- 「な、何なんだよお前ら。意味わかんねぇよ。」
すると、今まで黙っていた由比ケ浜が口を開いた。
「ねぇ、あなたたちは知らないと思うけど、ヒッキーはね、とってもすごい人なんだよ。自分が傷ついても、人を救っちゃうような、そんな人。普段はそっけない態度をとって、周りに興味なさそうにしてても、一度も会ったことないような人を、命をかけて守ってくれるような、そんな人。」
……。違う、違う。俺は、お前らにかばってもらえるような、そんな立派な奴じゃないんだよ。
……?命をかけて守る?そんなこと、後にも先にも一度だけだ。でも、それをこいつが知ってるわけないし……。
まぁ、今はそんなこと些細なことか。
「なんなのよあんたたち!突然現れて好き勝手言っちゃってさぁ!」
折本が激興する。
そして、ポケットからカードを取り出す。
蟹の、カード。
人を襲わせてたライダーは、こいつ、だったのか。
窓から蟹のモンスターが出現する。
由比ケ浜に襲いかかるのを、ダークウイングが止める。
「なんだ、ほんとに……。かおり、お前も、化け物なのか?」
永山はそう言い残すと、そそくさとその場を去って行った。残りの二人も同様だ。
「あんたらのせいで、全部台無しじゃないっっ!」
「それは、あなたの自業自得でしょう。」
「うるさいうるさい!あんたは、私が倒す!」
デッキを、かざす。
「変身!」
「……いいわ、けしてあげる。変身!」
二人が、鏡の世界へと向かう。
折本に誤算があったとすれば、この場にいたライダーが、雪ノ下一人ではないということだろう。
「ヒッキー、少しだけ、待っててね。……変身!」
由比ケ浜も変身する。
俺は一人、取り残された。
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- 6 : 2013/12/12(木) 23:00:18 :
- 「……。はぁ。」
しばらく俺は、茫然としていた。なんとなくぼうっと、鏡の中を見ていた。
折本は、雪ノ下一人にも押されていたが、由比ケ浜が加勢してからは、もうまともな勝負になっていなかった。
「ああああっっ!」
二人とも、折本の叫びを聞いても、攻撃の手を緩めることはなかった。
それだけ怒っていたのだろう。
そうしたのが俺のせいだと思うと、何とも言えない気分になる。
どうして彼女たちは、出会ったばかりの俺の為にここまでしてくれるのだろう。きっと、とてもとても優しいのだろう。
折本が中学時代に俺にした偽りの、計算された汚い優しさではなく、本物の優しさ。
ならば、だからこそ、彼女たちの手を汚させてはいけないだろう。
「……変身!!!」
過去と決別する時が、きっと今なんだ。
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