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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品はオリジナルキャラクターを含みます。

この作品は執筆を終了しています。

東方双赤星 EP2  ―パンドラの球体―

    • Good
    • 2

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  1. 1 : : 2016/07/11(月) 22:45:53

         東方双赤星


    注:このSSには以下の成分が含まれます。

    ・二次創作、独自解釈
    ・キャラ崩壊
    ・オリキャラ、オリスペル
    ・文章gdgd
    ・若干グロテスク
    ・9割方戦闘
    ・ムラのある投稿
  2. 2 : : 2016/07/16(土) 14:58:01
    「そうか、もう二人は向かったか。」

    「多分もう着いてるわよん。 智慧たんとミハイルたんだから片方は倒せるかもねぇ~。」

    「なあ、その口調いい加減やめてくれよ。 いい歳こいたオッサンがその口調ってのはキモイ。」

    「いいじゃないの~。ただの癖なんだから。」


    「重力と回転・・・か。 どちらも恐ろしい能力だ。 私だったら絶対相手にしたくないな。」

    「あ、そうだ。 捕まえて来たヤツ、どうするのん?」

    「そうだな・・・戦力にはなるだろ、連れてこい。」
  3. 3 : : 2016/07/16(土) 16:49:55



    Episode 2 パンドラの球体




    遥斗が左腕から発射した弾丸のうちいくつかがが回転しているミハイルに当たる。

    しかし鉛の弾丸は高速で回転する空気の波にのまれ消滅してしまった。


    ミハイルは回転を解除し、逃げる霊夢と遥斗に向かってレーザーを放つ。

    その姿は白狼天狗に似ているが、縮れ毛と殺気をもった瞳がそれとは違う印象を持たせる。

    かなり距離があったのでレーザーは二人にかすりもしなかった。

    しかし、直線状の青い閃光がうねり、細長い竜巻のようになり弾けた。

    「なにこれ・・・広がって・・・ 危ないッ!」

    光の渦の広がる速度が急に速くなり、二人に迫る。

    いち早く気付いた霊夢が横に回避するが、衝撃で手が離れ、遥斗が暗い森へと落ちていった。


    放たれる大量の弾幕の一つ一つが高速回転をしており、分裂しながら迫って来る。

    霊夢は遥斗が落ちた場所から離れた所へと着陸する。

    陰陽玉を発生させ、霊力を圧縮し針を形成し、上空に向かって発射する。

    しかし再び回転を始めたミハイルには回転の風圧で針がかき消され一発も届かない。


    そのうちミハイルは智慧と合流し、2対1となった。

    なので霊夢にとって圧倒的に不利だ。

    「おい、片方殺ればそれで充分だ。 千條遥斗が合流できないように追い込む。」

    「チッ、仕方ない・・・。 ただしアタシにやらせろ。」

    「はあ・・・わかったよ。」
  4. 4 : : 2016/07/16(土) 16:50:49
    二人はやや低めの位置に弾幕を放った。

    霊夢は飛び上がって回避し、上からお札をばら撒き反撃したが、
    全て回転で打ち消される。


    ふいに自身の周囲に違和感が発生し、僅かに体が軽く感じた。

    その瞬間、体が突然、空高く打ち上げられた。

    智慧が霊夢に上へ向かって重力をかけ、高速で雲の上へ吹きとばしたのだ。

    衝撃で霊夢は意識を失った。


    上空に吹き飛ばされる霊夢と追いかける二つの影を、落ちて木の枝に引っかかっている遥斗は捉えていた。

    「俺の”飛べない”という弱点を突いてきたか・・・まずいな・・・」

    しかし遥斗は自分の大きな弱点を嘆いてはいなかった。
  5. 5 : : 2016/07/16(土) 16:52:03
    気付いた時には、そこは雲の上、上空7000メートルのところだった。

    「えっ・・・ここって・・・空の上!?」

    辺りには乱層雲が海のように一面に広がっていた。

    体制を立て直し下を向くと、雲を突き抜けてこっちへ向かって来る二つの物体とたくさんの光が見える。

    先に弾幕が到達し逆さの雨のように霊夢を襲う。

    それ程弾幕が厚いわけではなく、僅かに動くだけでかわすことができたが、それらの一部が分裂し、八方に散った。

    機敏に動き避け続けていると、気が付いたら既に高度10キロのところまで来ていた。

    「寒い・・・早く降りなきゃ・・・」

    酸素が不足することはなかったが、周りの気温があまりにも低いため、霊夢の体からは湯気が出ていた。


    再び全身に違和感が走る。 何が起こるか分かっているため違和感を感じ取った瞬間に横に逸れた。

    その場に残った湯気がさらに上のダークブルーの空へと吹き飛ばされた。

    不自然な形に残った湯気をかき乱しながら先に現れたのはミハイル。

    そして追いかけるように智慧が飛んで来た。

    「これで完全な2対1ね。 跡は望み通り、好きにやっていい」

    ミハイルの顔がにやけた。 その表情には狂気にも似た喜びが浮かんでいた。

    「ふっふっふふ・・・やっと切り刻めるぞ・・・ハクレイレイムッ!!」

    智慧が引きさがり、かわってミハイルが両腕から鉤爪を伸ばし霊夢に突っ込んでゆく。

    「そう・・・そんなに立ちはだかりたいのなら・・・」

    霊夢の体の周りに赤黒いオーラのようなものが発生し、お祓い棒をもって構えた。

    「全力で突破するのみッ!!」

    お祓い棒の御幣が伸びて硬質化し大きな剣をつくり、ミハイルのもとへ加速してゆく。
  6. 6 : : 2016/07/16(土) 16:53:37
    「キシャアアアァァァァッッ!!」

    「てやぁぁぁッ!」

    かなりあった距離が一気に縮まり、鉤爪と剣が高速でぶつかり合った。
    刃の間に金属音とは違う激し音、そして閃光が発生した。
    ぶつかってお互い逆方向に弾き返され、再び武器を構えて突進し、再び刃がまじわった。

    ミハイルが左腕を後方に引き下げ、もう片方の鉤爪を付き立てようとした。
    それに気付いた霊夢は陰陽玉を形成して受け止め、霊力の負荷をかける。
    陰陽玉が発熱を始め、凍てつくような寒さだったのが砂漠にでもいるかのような高温に変わり始め、
    右の爪が熱で赤くなりはじめた。

    「光りに飲まれなッ!」

    陰陽玉が激しい熱と赤色の光を放ち、ミハイルを左腕から押し上げた。

    「その程度か・・・? それだけかよ・・・? もっと・・・もっと楽しませてくれよおおお!!」

    激しい光で前が見えず、体はもう熱に耐えきれないにも関わらず、左腕を押し出し、陰陽玉を押し返した。

    霊夢は熱を避けるために遠ざかり、陰陽玉が熱を発しなくなったため、受けた熱は比較的少なくなる。
  7. 7 : : 2016/07/16(土) 16:55:01
    「こいつ・・・正気!?」

    ミハイルがまた回転を始めた。

    今度はキリモミ回転で突進するわけではなく、その場でデタラメに周囲の空間ごと回転を始めた。

    回転速度が急速に上昇し、回転する空気と回転しない空気の境目で激しい気圧の変動が起こる。


    霊夢がふとさっきのとは別の違和感に気付き、辺りを見渡した。

    周りの景色がどこも一緒で、雲の形が全く変わらない。

    というより自身の周囲ごととんでもないスピードで回転している。

    後ろに陰陽玉を投げると、回転する空気に削られて消滅した。

    「なるほど、逃げられないってことか・・・ これから何をしようっていうの!?」

    気が付いた時には、すでに霊夢は逃げられなくなっていた。

    逃げようとすればあの陰陽玉のように体がバラバラになって死んでしまう。

    「ほう、あれをやる気か。 塵一つ残さない気か・・・ さすがに可哀想だな・・・ ま、仕方ないか。」

    突風が吹くような音がし、霊夢の左袖が突然裂けた。

    次の瞬間、メロンの皮のように霊夢の腕に切り裂かれたような傷ができた。

    「まずいッ!!」

    すぐに避けたが、左腕の傷からは鮮やかな血がでていた。
  8. 8 : : 2016/07/17(日) 11:27:18
    何が起こったのか霊夢は理解できなかった。

    ただ一つわかったこと、それは自身が非常に危険な状況にあることのみ。


    回転は更に速くなり、ミハイルの姿は高速回転する空気で見えなくなってしまった。

    周りでは突風のような音が断続的に鳴り響いている。


    「アタシの周りの空間ごと高速回転ッ! その回数は一秒で数兆ッ!  空間のズレによる真空波でェェェェッ・・・ 粉微塵になりやがれェェェェェェッッ!!」

    すぐ近くでまた音がした。

    「でも、こうすれば切り刻めないでしょ」

    霊夢は右手を前に突き出し、お祓い棒の前に、正方形の結界を二つ形成した。

    二重結界。 簡易的な博麗式結界を二重に張ることで短い時間で非常に高い防御手段を得るスペルだ。

    結界に見えない何かが何度も触れ、パシュンと音を立てて打ち消される。

    半透明の結界には、亀裂のような傷が付いては消え、再び音を立てる。


    その時、霊夢の背中に激しい痛みが走った。

    「えっ・・・ きゃあああああ!!」

    背中からは血が噴き出しており、網目のような傷が深く刻まれた。

    「そ・・・そんな、何で後ろから!?」
  9. 9 : : 2016/07/17(日) 11:28:08
    後ろからではない。

    結界に気付いたミハイルは真空波を衛星のようにミハイルの周りを回らせながら発射していたのだ。

    出血が激しく、徐々に気分が悪くなってくる。

    絶望の中、辛うじて開けた目に映ったものは、

    回転する中心に走る”赤い線”だった。

    弾丸は例の如く回転に削られる。 

    しかし、尖った先端がブレーキとなり、回転が遅くなる。

    キィィィィンという耳を刺すような激しい音が響く。

    弾丸が消えてなくなったときには、回転は真空波が出ない程に抑えられていた。


    「た・・・助かったの・・・?」
  10. 10 : : 2016/07/17(日) 11:29:09
    「一発目命中ッ! 誤差3センチメートル、もっかい食らえ!!」

    遥斗は上空の霊夢とミハイルを探知する程度の能力で探し、最も空気抵抗が少なく標的までへ近い真下まで来ていた。

    右人さし指の先には、もう一発大き目の弾丸がセットされていた。

    続けざまに二発目の弾丸が撃ち込まれた。

    これも再びミハイルを取り巻く空気に触れるが、真空波を出さないように抑えることしかできない。

    そして再び回転が加速を始めた。

    「もってあと5発。 このままじゃあ抑えきれねえ。 ならば・・・」

    指の先へ再び弾丸がけいせいされ、曇り空を突っ切る。

    霊夢を逃げられないようにしていた広い回転のフィールドを抜け、中心のすぐ近くまで到達した。

    しかしミハイルまで届くことはなく、ギリギリのところで爆発してしまった。

    赤い粒子が広がり、そのほとんどが回転にのまれる。


    はるか下にいる遥斗が指を鳴らした。

    粒子を飲み込みなお高速回転する空気が、赤く染まってゆく。

    「俺の粒子は高温。 熱の球の中で焼け死ぬか、それとも・・・」

    赤い球を突き破り、何かが飛び出た。

    回転するそれは、逃げるように高速で霊夢から離れようとした。
  11. 11 : : 2016/07/17(日) 11:31:06
    「な、何なんだよこれ・・・はっ!?」

    進行方向には霊夢がいる。
     
    出血のせいか顔が青白く、疲れきっているようだ。

    これなら殺せる。 

    このまま進めば殺せるとミハイルは思っていた。

    なぜなら気が動転していて、右腕から発生している二重結界に気付かなかったからからだ。


    ミハイルは結界に頭から激突し、それに気付いて離れようとしたが、ぶつかった所が結界にくっついて離れない。

    「や・・・やめろ! ミハイルに何をする気だ!」

    回転が解けて接近できるようになった智慧がミハイルを助けるために霊夢に突進するが、霊夢に接近した途端に赤色の光が見えた。

    慌てて自身に重力をかけて横に逸れ、弾丸を回避した。

    「だからやらせねえって言ってるだろ。」

    ミハイル側の結界に激しい光が一瞬発生し、次の瞬間に爆発が起こった。

    「霊符・縛破・・・陣・・・」


    霊夢も力尽き、梅雨の曇り空から黒こげの人狼、重力の衝撃で意識を失った般若、そして出血と凍傷で意識を失った人間が落ちて来るという奇妙な光景が遥斗の能力に映った。
  12. 12 : : 2016/07/17(日) 14:09:40
    「う・・・ん・・・?」

    目を開けると、そこはボロボロな畳の上だった。


    背中には濡れたタオルが乗っており、左腕に包帯が巻かれている。

    すぐそばにはお湯が入った桶がある。

    どこからかカリカリという何かがこすれるような音がする。


    「助かった・・・の・・・?」


    起き上がろうとしたが、背中の痛みと低血圧による倦怠感で起き上がれない。

    首を反対方向に向けると、少し離れたところに遥斗がいる。

    彼は机に向かって、見慣れない筆記用具で真剣に何かを書いていた。


    視線に気付いたのか、遥斗がペンを置きこっちを向いた。


    「起きていたか。 意外と早いな。」


    その口調は相変わらず落ち着いていた。
  13. 13 : : 2016/07/17(日) 14:10:53


    「ここは・・・どこ・・・?」

    「廃墟だ。 数年前に干ばつの異変で滅んだ村だが、設備とかはちゃんと残ってる。 ちょっと失礼。」


    遥斗は霊夢のそばに腰を下ろし、タオルを外した。

    そこには、生々しいいくつもの切り傷が付いている。

    一部は背骨まで達している。


    「・・・やはりな。 再生が早い。 このままなら6日で走れるようになるな。 でもしばらくはあまり動くなよ。 もしかしたら一生歩けなくなるかもしれないから。」

    新しいタオルが霊夢の背中に被せられる。

    熱くも冷たくもなく、快適な温度だ。


    遥斗は机に戻り、また何かを書き始めた。

    「ねえ、何を書いてるの? 相当真剣そうだけど。」

    「言えないな。」

    「やっぱり・・・」

    縁側から見える空はオレンジ色で、雲は無かった。

    カラスの鳴き声が途切れて聞こえる。
  14. 14 : : 2016/07/17(日) 14:12:38

    同時刻。


    「おい、ミハイル! 起きてくれ、頼む! ミハイルゥゥゥゥ!」


    夕方になりさらに暗くなった森の中に、悲痛な叫び声が響いた。

    智慧の腕には黒焦げになった人狼が倒れている。


    「そ・・・そんな・・・簡単すぎる・・・あっけなさ過ぎる・・・こんなのいやだ・・・」


    智慧の目には涙が溢れていた。 叫び声は次第に嗚咽に変わってゆく。

    智慧が弱々しくミハイルを抱きしめた。

    しかし、彼女の耳には異様な音が聞こえた。

    いびきだ。 静かないびきの音を智慧は確かに聞いた。


    「えっ・・・」


    「むにゃむにゃ・・・ 温泉卵を殻ごと食うなよ・・・」


    次に聞こえたのは寝言だった。
  15. 15 : : 2016/07/17(日) 14:14:20


    あまりの嬉しさに、智慧は思わずだらしない泣き声をあげてミハイルを強く抱きしめた。

    「んん・・・? ・・・え? どわっち!?」

    目を開けたミハイルが最初に目撃したのは至近距離で泣きじゃくる智慧の顔面。

    唐突な出オチに迎えられ、驚いて変な声を出して跳びはねた。

    状況が理解できず、ミハイルは森の中で固まっている。


    「え・・・ ち、チエ!? お前、なんだってそんな変な顔で・・・  はッ! やつら、どこ行きやがった! 殺してやる! ハクレイレイm・・・」


    戦いの事を思い出し、ミハイルがあてもなく走り出した。

    しかし足がもつれ、その場に倒れてしまう。

    倒れたミハイルの黄色い目には、黒焦げになった腕が映った。

    日が落ち暗くなる中、森に少しの間静寂が漂った。


    「そうか、アタシ、負けたんだ・・・」


    ミハイルはそのまま地面に寝っ転がり、上を向いて力を抜いた。


    「ゆっくり休め、お前の仇は私が討つ。 だから心配するな。」


    そうは言いつつも、内心は不安だらけだった。 

    (くそっ、どうすればいいんだ! 博麗霊夢は火力が強い。 千條遥斗は雲の下から狙撃できる。 一人だから圧倒的に不利だ。 でも何か策はあるはずだ・・・)
  16. 16 : : 2016/07/17(日) 14:17:39


    「ここは・・・洞窟!? 何でこんな所に・・・」


    霊夢は引き付けられるように、そこに降りて来た。

    入口はバーの跡地に隠されており、気が付いたらそれを開け、長いはしごを降りてここにたどり着いていた。

    所々に棒のような白く光る照明、金属でできた足場と手すりが付いている。


    何とも不気味な場所ではあるが、霊夢は妙な”懐かしさ”を感じた。

    まるで幼い頃に突然行方不明となった母親に抱かれているような感覚に。


    「そんなわけない。 そんな事、あるわけない・・・」


    霊夢は母親を恨んでいた。

    父親が死んですぐにいなくなってしまったからだ。

    紫からある程度の保護を受けていたが、幼少期の生活環境は決していいものとは言えなかった。

    意識を回復してから2日が経ち、霊夢は既に歩行できるようになっていた。

    いつもの服はボロボロで使いものにならないので、村に残っていた服を着ている。

    上半身は包帯、その上に腹までの黒いセーター、白と赤のチェック柄のマフラーと左胸に陰陽玉の小さな缶バッジが二個、下半身は青いジーンズの上にスカートのような赤い腰巻という比較的動きやすい服装だ。

    ばかばかしいと思いながらも、自然と足が動き、奥へと進んでしまう。

    この洞窟の形は不自然だ。
     
    弾幕か何かで人工的にぶち抜かれたような形をしている。
    しかし霊夢にとって全く気にならなかった。

    奥にあるものが気になる。 

    奥にある”それ”を見てはいけないのではないかとふと思うが、
    それでも足が止まらない。
  17. 17 : : 2016/07/17(日) 16:21:58

    洞窟の突き当りに遥斗がいる。

    彼は、薄暗い洞窟の中でノートに何かを書きつずっている。

    B6サイズの小さなページは複雑な図や数式、雑な字で書かれたメモで埋め尽くされており、恐らくほかの人が読んでも全く意味がわからないであろう。

    狭い道が続くなかここだけ異常に広く、中央には巨大な球体が吊るされている。

    それはオレンジ色の淡く、しかし暖かい光を発しており、八方からオレンジ色のクサビが打ち付けられている。

    周りにはソーラーパネルや複雑な機械がいくつか並べられているが、だだっ広いこの空間の中では少ないと錯覚してしまう。


    「遥斗・・・どいうこと・・・?」

    遥斗は霊夢の存在に気づき、振り向いた。

    「霊夢・・・!? どうしてここがわかっ・・・」

    「何でこれがあるの・・・?」


    霊夢は遥斗の後ろの球体を見て震えている。

    「どうして・・・ どうして”母さんの結界”があるのよ!!」

    ”母さんの結界”。 

    その言葉を聞いた遥斗は非常に動揺していた。

    「母さん、だと・・・!? まさか・・・」

    遥翔は少しの間下を向いて黙っていたが、ノートを閉じ、口を開いた。

    「お前には、知っている限りのすべてを話す必要がある。
     それは非常に残酷だ。 お前も、俺達と同じ運命に巻き込まれてしまったんだ。」
  18. 18 : : 2016/07/17(日) 16:23:08
    十年前、俺は外の世界の神澤村という人口300人程度の小さな集落に住んでいた。

    のどかな村で、ほとんどの人が農業に従事している活気のある村だった。

    生まれつき突然変異で能力を持っていた俺はこの事を隠して生きていた。


    しかし、その村は僅か一日で滅んでしまったんだ。


    俺の父親が突然能力を発現した。


    ”侵食する程度の能力。


    ヤツは精神をコントロール出来なくなり、その能力でまず俺の母親を殺した。

    侵食されたものはヘドロのようになり、次々と侵食を進めた。

    能力の暴走は止まらず、すぐに住民は皆殺しにされ、この時に俺は左腕を失った。


    父親も自身の能力に殺された。


    ますます歯止めが利かなくなったとき、三人の能力者が現れた。

    しかしそれでも敵わず、一瞬で内一人が殺された。 頭部しか残らなかったそうだ。
  19. 19 : : 2016/07/19(火) 16:37:05
    目の前に転がる父親の頭を見て号泣したことがあったのを霊夢は思い出した。

    霊夢は、非常に悪い予感を感じ取った。


    「二人目は重傷を負い、三人目もボロボロだった。 その人は、すべてのヘドロとともにあの球体の中に入って自爆した。」


    遥翔は、いつもの落ち着いた表情と口調を維持できなくなっていた。


    「俺がいけないんだ。」

    その声は震えていた。

    義手の左手が強く締まり、キリキリと音を立てる。


    「あの時、おれがもっと強ければ・・・ 俺が最初に殺していれば・・・」


    あの時の恐怖を思い出し、遥斗は理性を失っていた。

    いつもの彼は動揺しない。 しかし、それを目の当たりにした記憶が鮮明に蘇り、気が気でいられなくなってしまった。


    「俺がもっと・・・それならお前のの両親は死なず・・・」


    気がつくと遥翔は、地面に倒れていた。

  20. 20 : : 2016/07/19(火) 16:38:09
    頬に痺れるような異様な痛みが走り、視線の先には霊夢がいる。


    霊夢は我慢できなかった。

    いつも冷静で、感情的にならない遥斗が恐怖をむき出しにするのは、彼女にとっても恐怖しかなかった。


    「それなら・・・これでお互いさまってことにしよう。 あなたのせいで私の両親は死んだ。 だから私は全力であなたを殴った。 だから・・・懺悔するのはこれで終わりにしよう。 守らなきゃいけないんでしょ? これを。」

    霊夢は遥斗に向かって手を伸ばした。

    静寂の中、もう一度霊夢は口を開いた。

    「守ることが、死んでいった人たちへの最大の供養。 そうでしょ?」

    遥斗は恐怖から解放されたからなのか、わずかに笑みを浮かべ、腕を掴んだ。


    「お前、強いんだな。」


    遥斗が立ち上がり、二人は互いの拳を軽く打ち付けあった。


    「守りましょう。 幻想卿のために。」
  21. 21 : : 2016/07/19(火) 16:43:47
    また視点かわります

    「やはりここに逃げ込んだか。 普通なら滅んだはずの村で明かりがついているのはあり得ない。」


    ミハイルを病院へ連れて行き、智慧は食料と双眼鏡を買って村まで来ていた。

    霊夢とミハイルが戦ってから既に6日が経っいる。

    智慧は買ってきたサンドイッチを口に押し込み、レンズを覗いた。


    明かりが点いている和室、そこにくつろいでいる人影が一つ。

    すぐそばに机のような影に体を傾け何かをしているる人影が一つ。

    周りは廃墟。 少し離れた荒地には廃墟を囲むような鉄条網と棒のようなものがある。


    「なあるほど。 最初は不利だと思ったが廃墟が並んでるなら行けるか・・・」


    このような場所での単独での戦闘は、彼女にとって有利だ。

    智慧は袋を持ち上げ、復讐すべく明かりへと近づいてゆく。
  22. 22 : : 2016/07/19(火) 16:45:40
    ふと、遥斗が違和感を感じ取り、手が止まった。

    それは、人サイズの何かが何かを突き破ったような感覚。


    「おい霊夢、あの般若が追って来たようだ。 戦えるか?」

    それを聞いた霊夢は素早く立ち上がり、縁側の向こうの朝日を見つめた。

    朝の涼しい風が古びた和室に入り込み、霊夢の長い髪がなびく。


    「もちろん。 相手は一人なんでしょ、リハビリには十分よ。 あそうだ、それ出来た? それが無いと霊力が安定しないのよ。」

    遥斗が作っていたのは、1メートルを超える長さの木の棒の先に長方形の紙の束と長い御幣が付いたものだ。

    前に霊夢が使っていたものと形状が似ているが、それと比べるとボディも御幣も倍以上の大きさがある。


    「ああ、ちゃんと出来てる。 前のヤツと同じように桜の木とヒヒイロカネを抄きこんだ紙を使っている。 義手を作った時の材料が余ってて良かったよ。」


    霊夢は完成したばかりの武器を手に取り、目を閉じた。

    しばらく経つと、突風とともに8個の陰陽玉が同時に現れ、体から赤いオーラのようなものが出て来た。

    「火力の安定性は十分。 次は・・・」
  23. 23 : : 2016/07/19(火) 16:46:52
    目を開けた霊夢は、靴を履いて縁側から外に出た。

    向かった先には、苔がべったりと付いた灯篭がある。

    灯篭の前に立つ霊夢はお祓い棒を振り上げた。


    「えっ・・・おい待て! そんなことしたら折れるぞ!」


    霊夢が武器を振り下ろすと、スパッという音を立て、灯篭が真っ二つに裂けた。


    「切れ味も今まで以上。 気に入ったわ。」


    小鳥がさえずり始め、セミの鳴き声も聞きえ始めた。

    断面はもともと見えていた緑色とは違い、汚れ一つない灰色だ。


    霊夢は長いお祓い棒の柄を肩に乗せ、遥斗の方向を向いた。


    「そんなことしたら・・・ 何だって?」

    「え、いや・・・ 何でもない。」


    次いで遥斗が持ってきたのは背丈を上回る黒色の剣。

    金属板を張り合わせたような雑な造りで、切れ味は良いとは思えない。

    「この地形では探知は使えない。 接近されたら俺はこれを使う。」
  24. 24 : : 2016/07/19(火) 16:48:41
    遠くで土煙が上がり、それが高速で近づいて来る。


    塀を突き破り、建物の破片とともに壊れた灯篭が砕け、和室の一部がバラバラになり吹き飛んでいった。

    灯篭から離れていた霊夢と遥斗には当たらず、攻撃が発生したところの斜め上を遥斗が指差した。


    「音で捉え、重力で巻き込む気か。 霊夢! 次が来たら向かえ!」


    人さし指の先に大き目の弾丸が4つ形成され、上空に向かって発射された。

    途中で分裂し、大量の弾丸となって廃墟に降り注いだ。


    「砲陣・コンテナミサイル! 血のような赤い雨を浴びなッ!」


    小さい弾丸の雨が智慧がいた辺りの廃墟に降りかかり、大量の穴を開ける。

    すでに智慧はそこから離れており、ミサイルが来たところも分かったので再び重力をかける。


    「ここからは一手先の読みあい・・・ 読み違えた方が死ぬということか。」


    遥斗の目の前の塀にヒビが入り、瓦礫が飛んでくる。


    「結晶壁!持ちこたえろ!」


    右手の先から六角形の結晶の束が発生し、飛んでくる瓦礫を防ぐ。

    大きい岩がぶつかる度に、バリンという音を立てて結晶が一つ割れる。

    それと同時に霊夢が全速力で走り出した。


    「もう霊夢はあっちへ行ったか・・・ 音を出さないからなんとかなるな。」


    霊夢の足が地面から離れ、横に旋回しながら敵に突っ込んでゆく。


    「土煙が発生したところが敵の位置。 この距離ならすぐに間合いに入る!」


    霊夢の周りに陰陽玉が発生し、虹色に発光する。

    一つ一つが真横に飛んで行き、進行方向を変えた。


    「霊符・夢想封印!!」
  25. 25 : : 2016/07/19(火) 16:51:36


    廃墟で弾幕と煙と瓦礫が飛び交うなか、そこへ向かう集団があった。



    青いフードと仮面を被った者がいくつかと、

    ピエロのような化粧をし、脳天に毛がなくその周りに赤い縮れ毛が無造作に生えている男、

    白と黄色の装束に身を包み水晶玉を抱える銀髪の女、

    そして拘束具に縛られ、死んだような目で前を向く黄髪の少女が黙々と歩き続ける。



    銀髪の女がにやりと不気味な笑みを浮かべた。








    「ふふふ・・・ 幻想卿は私のものだ・・・」








    _________
    TO BE CONTINUE→
    ―――――――――



  26. 26 : : 2016/07/19(火) 16:57:00




    次回予告

    乱戦のさなか、廃墟に近づく謎の集団。

    彼らの野望が今、現実になろうとしている。


    次回、東方双赤星

    「復讐と狂気と支配欲」

    ※今回から2017年2月下旬まで休載します。
     ご了承ください。
  27. 27 : : 2016/07/22(金) 16:48:38
    期待して待ってます

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pvpvpv0712

通りすがりの御大将

@pvpvpv0712

この作品はシリーズ作品です

東方双赤星  ~A Story Of Eclipse~ シリーズ

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