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雨よ

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  1. 1 : : 2016/04/25(月) 23:57:50
    「クソッ」

    土砂降りの雨の中を1人の少年が傘もささずに走っていた。

    「あっ!」

    泥濘に足を掬われたのか水溜りにスライディングしてしまった。

    「あぁ...なんて日だ...」

    全身泥塗れになって余計に機嫌が悪くなったのか彼の眉間には皺が寄っていた。

    「ふふっ」

    いつの間にか少年の傍らに立っていた女性が彼を見て笑っていた。

    「あんだよ」

    眉間に皺を寄せたまま少年は言った。

    「ごめんなさいね。別に貴方がおかしかったから笑ったんじゃないの」

    「そうかよ」

    「怪我はない?」

    「あぁ」

    「よかったらこの傘を使って」

    そう言って彼女は自分のさしている傘を彼に差し出した。

    「あんたはどうすんだよ」

    「いいから」

    傘を受け取るまで彼女が言い続けそうな感じがしたのか、少年は渋々傘を受け取る。

    「ほら、受け取ったぞ」

    少年は傘をもって立ち上がり、彼女の方を向いた。

    「...え?」

    そこには誰も立っていなかった。

    あたりを見渡すが彼女の姿はどこにもない。

    周りに身体を隠せるような場所もなかった為、少年は不気味に思ったのだろう。

    傘を持ったまま走り去っていった。
  2. 2 : : 2016/04/25(月) 23:58:28
    ◇◆◇

    「なんだったんだ...?」

    数日後公園のベンチに座って何か悩む少年の姿があった。

    その手に手に傘を持って。

    ずっとここに座って悩んでいたのだろう。

    彼の横のゴミ箱には彼が飲み干したであろうジュースの空き缶が大量に捨てられていた。

    「はぁ...」

    少年が帰ろうと腰を浮かせた時、ぽつぽつと小雨が降り出した。

    少年はすこしの間傘を眺めたまま固まっていたが、すぐに傘をさして公園を後にした。

    「雨、好きですか?」

    しばらく歩いていると背後から静かに言葉が投げられた。

    「あんたか」

    声をかけてきたのはこの傘を渡したまま煙のように消えたあの女性だった。

    傘はこれしかなかったのだろう。今日は
    彼女は柔らかく微笑むとゆっくりと近づいてきた。

    「雨、好きですか?」

    少年は息を呑んだ。

    雨に濡れた彼女が艶かしい雰囲気を漂わせていたから。

    彼女いない歴=年齢である彼はもうそれだけで言葉を発することができなくなってしまった。

    「雨、好きですか?」

    彼女は再び同じ質問をしてきた。

    「雨か...嫌いだな」

    なんとかそう返すことができた少年はそのまま彼女から目を逸らした。

    耳まで紅く染まっている。

    「そう...ですか」

    そう答えた彼女の声はどこか淋しそうで、気がついた時にはもう少年の手は彼女に向かって伸びていた。

    「どうかしましたか?」

    「あっ...いや、なんでもない」

    少年は彼女に声をかけられ我に返ったのかサッと手を引っ込めて俯いてしまった。

    「貴方とはまた会いそうな気がします」

    彼女はそう言うとゆっくりと歩いていった。

    少年とは逆方向に。

    「傘」

    少年は手元の傘を彼女に向けて振りながらそう言った。

    「まだいいです。きっとまだ時間は来ていませんから」

    「時間?」

    「そのうちわかりますよ」

    少年も彼女もそれ以上会話することはなかった。

    道にはただ彼女の歩いていった道を見つめる少年だけが残っていた。
  3. 3 : : 2016/04/25(月) 23:59:19
    ◇◆◇

    夢をみた。

    遠い昔の記憶の夢を。

    少年と少女が相逢傘をして歩いている映像をひたすら見続けてその夢は終わってしまった。

    あれはきっと昔に。

    もっと昔に経験したはずの景色。

    今はもう思い出せないほど薄れてしまった記憶の。

    彼女はあの後....
  4. 4 : : 2016/04/25(月) 23:59:41
    ◇◆◇

    「ん...」

    少年は自室のベッドで目が覚めた。

    昨日傘の彼女と別れてからずっと彼女の最後の言葉を考えているうちに寝てしまったのだろう。

    "まだ時間は来ていませんから"

    あれはどういう意味なのか。

    そのうち時間がたてばわかるということか?

    1体なんなんだよ...。

    考えれば考えるほどにわからなくなっていく。

    「散歩でもするか」

    少年は傘を持って家を出た。

    外は雲一つない青空だったけれど。

    持っていかなきゃいけない気がしたんだ。

    外にはそとんど誰も出ていなかった。

    まるであの日のように。

    「あの日ってなんだ」

    自分の思考に問いかける。

    あの日...。

    いつのことなのか...。

    だんだんとわけのわからない方向に向かっていた時、

    また昨日と同じように雨が降り出した。

    「雨、好きですか?」

    また昨日と同じように彼女が後ろに立って、同じ質問をしてきた。

    「いや、別に嫌いではないけど」

    昨日嫌いと言って淋しそうな声をされたことを思い出しそう答えた。

    「もう少しですかね」

    「何が?」

    「時間です」

    また時間か。

    「だからその時間って何?時間がたてばわかるってこと?」

    そう聞くと彼女は昨日のような淋しい声をで答えた。

    「それは...私が答えることではないです」

    「答えることではないってどういう――

    質問をあと少しで言い終えるという時、一陣の風が吹いて周囲から声が消えた。

    辛うじて彼女が口を動かしているのが見えたがそれだけだった。

    風が止むとまた彼女は消えていて、手に傘を握りしめていた。

    空は家を出た時と同じように雲ひとつない青空だった。
  5. 5 : : 2016/04/26(火) 00:00:05
    ◇◆◇

    夢を見た。

    前の夢にでてきた少年と少女が交互に出てきては消えていった。

    それを繰り返すうちに少女の方がだんだんと成長していき、それにつれて表情がだんだんと悲しみを表してきていることに気づいた。

    少年は大きくなることもなく、笑顔のまま。

    だんだんとおおきくなっている少女の顔に見覚えがあることにも気づいた。

    その顔は――
  6. 6 : : 2016/04/26(火) 00:00:32
    ◇◆◇

    気がつくと少年は初めて傘を渡された場所にたっていた。

    そこはよく見ると夢で少年と少女が歩いていた場所だ。

    「ここは...」

    「すこし思い出しましたか?」

    その声が聞こえると同時にぽつぽつと雨が降り出した。

    「思い出した...のかな...まだなにもわからないんだ」

    彼女は答えることなく少年と同じ目線になって手を繋いだ。

    「あの時ここで傘を渡した時はもっと大きかったのに」

    そう言われて初めて自分の姿が子供になっていることに気付かされた。

    「どうして...?」

    「もうすぐわかるよ」

    彼女はすべて知っているようだった。

    「ねぇ、教えてよ」

    そう聞くと彼女は悲しそうな目をして首を横に振った。

    「どうして?」

    「ごめんね...でももう時間はすぐくるから」

    彼女はそう言い終わるとまた去っていってしまった。

    雨はいつの間にかやんでいた。

    ◇◆◇

    夢を見た。

    遠く昔の忘れたくなかったはずの記憶の夢を。

    あの日、俺とあの子は2人で散歩していた。

    いつも静かに遊びに付き合ってくれる彼女がその日珍しく自分から何かをしたいって言ったのが何故か嬉しくて1日彼女のしたいことをすることになったんだ。

    そのうちの1つが"雨に濡れた紫陽花を見る"ということだった。

    だけど、その日は雲一つない青空だったからそれだけは叶わなかったんだ。

    それから2、3日くらい経った時雨が降った。

    彼女は止めたけれど、笑った顔が見たくて俺は飛び出したんだ。

    紫陽花が咲いているところは前に確認していたからそこに行って紫陽花を摘んで来るだけでよかった。

    なにも問題は無いはずだったんだ。

    雨さえ激しくならなければ。

    紫陽花を摘んで帰ろうとした時、急に雨が強くなったから急いで帰ろうと近道をしたんだ。

    それが間違いだった。

    街の唯一の橋を渡ればすぐに家に帰れる。

    そのことしか小さな頭にはなくて、川の水のことなんて何も考えていなかった。

    ここから先は後で俺の葬式の時に聞いた話なんだけどさ、俺は橋を渡っている時ひ足を滑らせて川に流されたらしく、下流の方で冷たくなって浮かんでいるのが見つかったらしい。

    まぁ俺のことはこれくらいにして、あの子のことを話そう。

    あの子は俺が死んでからずっと部屋から出てこようとしなかった。

    自分のせいだと思い込んで。

    ずっとずっと来る日も泣き続けていた。

    だから俺はなんとかして元気にしようと思って、幽霊の俺に出来る精一杯のことをしようとしたんだ。

    その時に見つけたのがこの傘。

    この傘をさすと少しの間だけ幽霊が見えるようになるらしくてさ。

    だから俺か彼女のどちらかがさしていれば会話ができるわけ。

    まぁ俺はその傘をもらった代償に記憶の1部を忘れなきゃいけなかったんだけどさ。

    だけどもうこれで思い出せたからいいんだ。

    これでやっと彼女に伝えることが出来るんだから... 。

    ◇◆◇

    「雨、好きですか?」

    目を開けると彼女が傘をさしてたっていた。

    「あぁ、好きだよ」

    「怒って無いですか?」

    「あぁ」

    「紫陽花は綺麗でしたか?」

    「うん」

    彼女は笑顔のまま泣いていた。

    「なぁ、最期に1つ言わせてくれ」

    「なんですか?」

    彼女は首をかしげて聞いてきた。

    「遅くなったし、こんな状態でいっていいのかわからないけどさ」

    深呼吸をして最期にそういった。

    「ただいま」
  7. 7 : : 2023/07/22(土) 13:54:49
    http://www.ssnote.net/archives/90995
    ●トロのフリーアカウント(^ω^)●
    http://www.ssnote.net/archives/90991
    http://www.ssnote.net/groups/633/archives/3655
    http://www.ssnote.net/users/mikasaanti
    2 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 16:43:56 このユーザーのレスのみ表示する
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    16 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 19:01:59 このユーザーのレスのみ表示する
    ちょっと時間あったから3つだけ作った

    unko_chinchin
    shoheikingdom

    mikasatosex
    unko

    pantie_ero_sex
    unko

    http://www.ssnote.net/archives/90992
    アカウントの譲渡について
    http://www.ssnote.net/groups/633/archives/3654

    36 : 2021年11月6日 : 2021/10/13(水) 19:43:59 このユーザーのレスのみ表示する
    理想は登録ユーザーが20人ぐらい増えて、noteをカオスにしてくれて、管理人の手に負えなくなって最悪閉鎖に追い込まれたら嬉しいな

    22 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:37:51 このユーザーのレスのみ表示する
    以前未登録に垢あげた時は複数の他のユーザーに乗っ取られたりで面倒だったからね。

    46 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:45:59 このユーザーのレスのみ表示する
    ぶっちゃけグループ二個ぐらい潰した事あるからね

    52 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:48:34 このユーザーのレスのみ表示する
    一応、自分で名前つけてる未登録で、かつ「あ、コイツならもしかしたらnoteぶっ壊せるかも」て思った奴笑

    89 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 21:17:27 このユーザーのレスのみ表示する
    noteがよりカオスにって運営側の手に負えなくなって閉鎖されたら万々歳だからな、俺のning依存症を終わらせてくれ

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yurakodayo

ゆら

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