このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
―潜在熱源― 心の容が変わるとき
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- 1 : 2016/04/14(木) 05:16:31 :
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―前書き的な何か―
※この御話は、以前勝手に書かせて頂いた、
―名も無き者へ― その後の彼と彼女の話
http://www.ssnote.net/archives/41732
・・の、続編的な何かです。
一応メインなカップリングの括りとしましては
ミカ×エレ
となります。前回は二人が特に接近するような描写が
無かったので今回もう少し幅を縮めた感じで書けたらなと
思いながら書き始めました。
例によって時系列は最新巻の流れを汲みながらにして・・・
それよりも“ずっとあと”の創作描写となります。
簡単に言ってしまいますと、最初に奪われた壁の奪還も
無事何事も無く終わり、さあ、これから皆でシガンシナ
行っちゃおうぜ?..みたいな感じで、
原作と大きく違う創作要素としては、
敵対勢力との本格的な衝突が未だ起こっていません。
・・以下、簡易注意点です。
-
- 2 : 2016/04/14(木) 05:17:16 :
※注意点※
1.著しいネタバレ要素を含みます・・が、創作要素も同様に
混同される為その辺りの認識がとてもややこしくなります。
ネタバレ範囲は・・・原作最新巻・・から、珍しく
“最新巻に載ってない分”まで喰いこむ可能性もあります。
之より以下、 ネタバレ要素満載でお送り致しますので、
お目を通されていない方には申し訳ありませんが
ご留意ください。
2.色々と設定に無理があったり、原作と食い違いがあったり。。
堂々としたキャラ崩壊があったりします。
3.まず心配ないと思いますが、ご感想などのレスに関して。
最近全体的に登録ユーザーさんとの邂逅が少ない今、
恐らく杞憂に終わると思いますが・・・いつも通りレスなど
頂けるのは私自身大歓迎です。が、お話を書き終えるまでに
いただけたレス等は読みやすさ重視で、レスを返させて頂いた
一定時間後に非表示にさせて頂く事になると思います。
若しくは↓のグループまで。
http://www.ssnote.net/groups/541/archives/3
4.改行形態、描写の変化。
ご覧の通りで、またまた携帯画面幅ではない改行と・・・
台詞前に発言者の名が入らない仕様です。
まあ、殆どの発言者の喋り方に特徴があるので
今回は必要ないと判断しました。
5.性描写、性的表現の有無。
毎度の事ですが。・・・・今回は様子をみながら
ちらほらかましていくかもしれません。(´・ω・`)
少し最近大人しくし過ぎたのでたまには悍ましいものを
書く練習をしておかないと(ry
…と言う事なので、そう言った描写が苦手な方は要・注意ですが…
例によって危険域に突入する前後に◆◆◆←このような線を
引けたら引きますので、そちらを目安にして下さりますれば。
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- 3 : 2016/04/14(木) 05:30:18 :
・
・
・
―現・調査兵団拠点・エルヴィンの居室―
トン トントンッ・・・・
「エルヴィン団長。指示通り一人で伺いましたが,,,
出来る限り内密に留めておきたい話とは・・・一体。。..?」
前以て聞き伝えられていた通り、自身が此処へ来る事を
他の誰にも公言せずにこの戸口まで辿りついたアルミンが、
その顔に若干の緊張を走らせ、周囲の廊下を見渡しながら
戸を叩く。
....するとそこから少しの間を空けて・・・・・
ガチャッ.....
「・・・・・・・・・・・・・・・」ヌッッ・・・・
「ッ!!??!?」ビクッ
てっきり部屋奥から応答が帰ってくるものと思い込んでいた
予測が見事に外れ、驚愕に跳ねるアルミンの両肩。
まさに戸の向こう側でノックを待ち受けていたかのような
タイミングにて戸を半開きにし、その狭間から頭部のみを
部屋の外に出すと・・・・眼前の来訪者を一瞥するよりも先に、
その視線を通路の両端へと瞬時にとばす。
一連の動作を彼の至って平静な無表情が迅速に行っている為、
その様子だけを見ていると非常にシュールな光景である。
「、君か。・・・・追っ手は居ないようだな。・・・入ってくれ。」
「(君か・・・・って、僕を認識する前にまず・・・っていうか
追っ手・・・・って・・・・??;)っぅ、りょ、了解・・・・です・・!」
ババッ
カッ・・カッ・・・・カッ・・・・
バタン・・・・・・
「(ぃ・・・・一体団長が僕と一対一 で話したいだなんて・・・
それもここまで神経質に人払いを徹底しなければ
うっかりできないような話なのか・・・?)」ゴクッ...
事がここに至るまで、エルヴィンの口から内緒話の概要はおろか
どの様な趣旨の話であるかなどという事すら仄めかされていない為、
今、自らにふりかかるこの状況に底知れない不安と、
同時に不気味な胸騒ぎを払拭しきれないアルミン。
「すまないな、いきなりこのような形で呼び出してしまって。
他の者と比べても数倍話の先を読める君の事だ。
恐らくこれから私が君にする話と言うのがとてつもなく
穏やかではない話なのではないか、と・・・・
そう考えている様な顔だが」
「・・・・・・そういう訳では;・・・、、と言ってしまえば軽弾みな虚偽と
なってしまいますから・・・包み隠さず言いますが;
・・・・正直に伺いたい自分の心としては
仰る通りです。一体団長は・・・僕にどの様な・・・・・」
「先に言っておこう。話そのものは・・・・全く物騒でもなければ
当然血が流れるような話でも無い。むしろもっと沢山の
“人の輪”を広げる為に行う慈善活動のようなものだ」
「(慈善...)慈善、、活動ですか」
-
- 4 : 2016/04/14(木) 05:32:42 :
「・・・・そうだな。君の理解力ならば・・・遠まわしに言うよりも
何もかも素直かつ実直に伝えてしまった方が“事”が上手く
運ぶ事請け合いだろう。難しい話は一先ず端へと寄せて・・・
まず私の目的を君に伝えてしまおうと思う訳だが・・・・
その前に一ついいか・・・・?」
「・・・・・・・はい・・・・・・・?」
「君は・・・ミカサ・アッカーマン・・・、彼女とはエレン同様に
かなりの長い付き合いになると聞き及んでいるが」
「はい。ミカサとは・・・・彼女が諸事情あって
親元を離れざるを得なくなった翌日にエレンから
紹介されたくらいですから。
審議所で少し触れたかと思いますが・・・・その歳で押し入り強盗に
入られ、両親を帰らぬ人にされてしまっている経緯があります。
その日から彼女は・・・僕の一番古い親友でもあるエレンの
家族ですから。僕も彼女の事は家族同然に考えてます」
「・・・・家族同然・・・・か・・・・・」
「・・・・・はい。(・・・・?)」
アルミンの言葉を聞くやいなや、
顎に手を添えてその心情を伺うようにしてアルミンを
凝視するエルヴィン。
「・・・・・失礼、これから私が君に投げかける質問は・・・・
正直かなり応え辛い質問だと思うのだが・・・・素直に答えて欲しい。
――――君の心情次第では・・・・協力を仰ぐにしても少々
酷な話 になりかねない。」
「・・・・・・はい・・・・・?;」ピリッ・・・
徐々に神妙な色を表情に濃く滲ませるエルヴィンを前に、
何となく只ならぬ空気を察すると、一層緊張を強く全身に
巡らせるアルミン。
・・・・話の内容すらまったく予測が出来ていない段階ではあるが、
勘繰り深いことこの上ないアルミンの脳内演算スペースでは
『一対一』というこの状況、そして周囲の人の気配に
ここまで敏感になっている団長と、その人柄から度々噂されている
“根も葉もない”偏見までも不安材料として採用しつつも・・・・
目の前の上官が実は同性愛者であり、こうして呼ばれた今、
いつ襲い掛かられるとも分からない。...といったケースまで
試算の上で想定されていた。
それ故に全身から見て取れる明らかな警戒の色。
「君は・・・・・・」
「(大丈夫なのか・・・・・??!僕は・・・ここから生きて帰れるのか..!!?)」
ダラダラダラ....
しかし。
「―――-君は彼女に・・・・“ミカサ”に、家族や、
友人、以上の・・・何というか、恋愛感情というか・・・
もっと率直にいってしまうなら、異性として
“特別な感情”を向けたりはしていないか・・・・?」
「――――!!!」
-
- 5 : 2016/04/14(木) 05:34:20 :
エルヴィンの口から放たれたのは、彼の想定していたパターンの内
どれにも合致しないものであった。・・・・しかしだからこそ
「――――-・・・・」
問いかけられた一瞬だけに驚きを抑え、見る見るうちに
冷静に頭脳を回転させるアルミン。
エルヴィンが彼の応答を待つ、その数瞬の内に・・・・
「(ミカサに・・・僕が・・・・?何故・・・・―==―-慈善・・・?
エレン・・・・?―==『酷な話』・・・・・・協力を。。。
・・・・・仰ぐ。。)」
ピタッ・・・・・
彼の思考は既にこの場がどの様な密会の場として誂えられたのか、
断片的な記憶の中から即座に選定したピース同士の
仮組みによって、その答えを導き出していた。
「(――――――なるほど。
・・・・・・ああ、“ひょっとして”。“まさか”・・・・・いや、
これはもう“十中八九”・・・・・・)」
それから、質問に対する応答を飛ばして彼は、
自身の属する組織の長へ、こう問いかけた。
「・・・・・憶測でものを言うのはどうかと思うので・・・
事実と違ったら申し訳ないのですが。団長・・・・まさか・・・・・
・・・・兵長とハンジ分隊長の件 ・・・・、、“あれ”も
団長が関与している・・・ なんてことは・・・・・?(滝のような汗)」
「っ・・・・・・」
自身の予想を遥かに超える速度で自らが説明を
行う手間を大幅に控除してみせる秀才の閃きに思わず
表情を変えずに息を呑み込む、エルヴィン・スミス。
「・・・・・やはり私の目に狂いは無かった・・・・
君に協力を仰げるなら・・・
私の目的...いや、人類の安泰は約束されたも同然だ・・・・..!
私の謀に・・・・協力してくれるな・・・・・?アルミン・・・・・!!!」
ガシッ・・・・
「あの二人・・いえ、エレンと・・・・ミカサですね・・・・?
正直どこまで力になれるか自信はないですけど・・・・
尽力します・・・・!(あの顔)」ニヤァッ・・・
ガッ・・・・
人知れず二体の悪魔が盟約を交わしてしまった瞬間であった。
~~~~~~~~~~~~~~~~
-
- 6 : 2016/04/14(木) 05:45:12 :
「―――――仮設駐屯地囲設計画・・・・ですか?」
「・・・・・ああ。これに関しては既に計画に必要な材木などの
調達も全て完了し、ほぼこの案で通す気概で我々は臨んでいる。
君ならそれに対する説明も・・・
必要最小限ですぐに理解できてしまうだろう。
・・・・シガンシナにあるというエレン宅の地下室・・・・
その探索こそが我々が今最も意欲を燃やしている第一目標で
ある訳だが・・・・しかしその為には」
「・・・・・そうですね・・・・いくら壁の穴、そのものは既に塞いだとは
いえ・・・それでも壁内に紛れ込んでしまった巨人の掃滅となれば・・
相当長い目で見なければ現実的ですらありません。
・・・・シガンシナ区限定で考えるとしても・・・・できれば
直接戦闘は避けたいですし、何かの間違いを避けるためにも
集中砲火で家屋を巻き込むのも....」ゥウン・・・・
「・・・こうして話を交えていると・・・なにか私は・・・時々本当に
君が最も直近の新期入団員なのかどうか、分からなくなる時が
あるな・・・・。」
「そんな。僕は与えられた情報を元に普通に考えた事を
口にしてるだけですから・・・何も大したことなんてしてません..」
「(・・・・その自己評価はどう考えても過小だな・・)」
エルヴィンは知っている。目の前の、見るからに頼りない、
遠めに一目見ただけでは二度見しないと性別すら判じ兼ねる様な彼が・・・
懐疑心に支配された人類の総意代行者たる駐屯兵団部隊長に対し
一歩も退かず、
更には矢面に立ちながら説得を続けた猛者であるという事を。
結局指令官の横槍が無ければ砲撃を中断する事は
叶わなかったという話を聞いてはいるが・・・・、
既に一介の訓練兵の思考力でそこまでの時間を稼げるのが
常人業ではないという事も・・・“人を使う”立場としてよく
理解できていた。・・・・・そして同時に自分に近い“何か”を・・・
目の前のアルミンに感じてさえいた。
「本題を進めよう・・・。とにかくその囲設計画の概要だが。
我々のやる事は至って単純な事だ。例の地下空洞から採掘された
鉱石のお陰で・・・・夜間の行動が、松明のみに頼っていた今までとは
比べ物に成らないほど幅広くなったのは事実だ。
・・・・しかし同時に・・・・
壁内に紛れ込んだ巨人の中には、夜間でも殆ど行動に制限を
受けない固体も相当数存在している事が、その夜間活動の増加と
同時に判明した。・・・・結局のところ、夜間にひっそりと
エレン宅を調べ上げるのは思いのほか骨が折れるという事だ
・・・・そこで」
-
- 7 : 2016/04/14(木) 05:48:01 :
~『仮設駐屯地囲設計画』その目的とは ~
シガンシナ地区に存在するエレン宅を一周して囲うようにして
簡易的な櫓と櫓を繋いだ“柵”のようなもので包囲し・・・・、
その仮設が済み次第、出来うる限り迅速かつ勢い任せの
人海戦術を用いて一気に明るい日中に地下室の探索を済ませて
しまおうというもの。
無論、計画の間中、周囲四方の見渡しの効く高さの建造物に
陣取った囮部隊によって、出来得る限り、巨人の誘導は
行う手筈になっているが・・・、
肝心の、“櫓の設置”その作業工程を短時間の内に済ませる
役割が、誰あろう“エレン”であるため、その誘引効果が
果たしてどこまで『普段通り』はたらくものか、
実行に移して見ない事にはそれすら定かではない。~
「また随分と・・・・大胆な計画を立てたんですね・・・・」ゴクッ・・
「理解に苦しむかもしれないが・・・・少し位強硬な手段であっても、
ある程度の行動力を示す事こそが重要なのだ。特に、
“多くを知らず”に日々を過ごす者達にとっては。・・・・な。
犠牲は最小限に抑えたい。それは勿論我々全員の総意ではあるが」
「・・・・・・・・」
「だからといって確実にエレン頼りで製造している“アレ”のみで
壁内の巨人を掃滅するまで待たなければならないなどという
事になれば・・・・まさしく途方も無い時間を要する事になる。
・・・・言うまでも無く、既に壊滅的な打撃を受けたエレンの家が・・
その地下室まで、どの程度の雨漏りの影響を受けているかも
分かっていない。部屋の内部が風化する前に何としても
我々は手を打たねばならない。」
「それは・・・言うまでも無い事ですけど・・・・・」
「・・・・さて、そこで作戦の概要をもう少し詳細に説明する前に・・・
我々、つまり私と君が作戦と平行して企む今回の真の作戦、
ソレこそが・・・・・“エレン及びミカサを引き合わせる事”
であるわけだが・・・・・」
「本題は・・・そこですね・・・・・」
二人の表情が、より一層渋いものに変わる。
作戦の成否は今後の人類の行く末を左右しかねない
相当重要なものであるのは間違いないはずだが、それについて
話し合っている時よりもエレンとミカサ、その二人を如何にして
引き合わせるか、そんな話をしている今の方が
寧ろ真剣な顔になって俯く二人....
「コレについては・・・正直君の判断にほぼ全てを委ねようという
方向で考えている。当然昔馴染みとして今迄彼らを
傍で見続けてきた君の方が勝手は知り尽くしているはずだ」
「...作戦の手順で言えば・・・まずお聞きしたい事ですが・・・
“エレンの巨人”による“櫓”の設置作業自体は・・・
どの程度で完了させる予定ですか?期間的には」
-
- 8 : 2016/04/14(木) 05:49:53 :
「できる事ならば・・・エレンの意識が克明に保たれる範囲内の
短時間に収めたい、と言うのと・・・・出来る限り櫓の数を
少数に留める事で囲いの強度を上げる目的もある。
櫓そのものの組み立ては・・・夜間に隙を見ながら手を進めて・・・
今ではほぼ全基完成している。
エレンには・・・・この“櫓”を、現在までで何とか完成させた
8基までを、彼の家の外周で、出来るだけ脚部の杭が深く
突き刺さる位地表が柔らかい部分を選定して迅速な設置を
頼む積りだ。この間の護衛を当然ながら・・・・」
「リヴァイ兵長、そしてミカサを含む・・・
調査兵団実働部隊総掛かりで行うわけですね。」
「ぁあ。しかし大半は高所に陣取っての巨人誘引に人数を
割く事になる。エレンの傍についていて貰うのは・・・
彼との親睦が特に深い、現特別作戦班総員。。
つまり君達の任にあたる。」
「最近の実験で・・・相当エレンによる巨人の制御は
以前より格段に上がってますから、恐らく奪還作戦の時のような
制御不能に陥る事も無いと思いますが・・・そうして頂けるのは
とても助かります。」
「但し、これはあくまで周囲の人員による誘導がある程度
有効であった場合の話で・・・もしもそれらに目もくれず、
全ての巨人が“エレン”に襲い掛かるような事があれば・・・・」
「・・・・・・(ゴクッ・・・・)」
「・・・第一段階に、アレ以来今迄一度も成功していない、
“叫ぶ”ことから試したうえで・・・・その効果が望めない事を
確認し次第、第二段階としておそらく総員でエレンの設置作業が
終わるまで命懸けで戦って貰う事になる。」
「エレンには・・・出来得る限り作業の方だけに集中して
貰いたい訳だが。欲を言うなら此方としても・・・
止めを刺さないまでも、エレン自身に敵対する巨人達の
転倒を狙って貰うだけで死傷者の数は桁違いに抑えられる
公算が望める。」
「それは・・・尤もな事ですが」
アルミンの脳裏に去来するのは、彼が巨人体を駆り、
十数体以上の巨人をたった一体で返り討ちにしたという
ジャンや、コニーなども共に確認した事実上の戦果。
ウォールローゼの壁を岩で塞いだ時もそう、女型の巨人を
五体不満足状態で追い詰めたときにしてもそう。
彼もまた・・・“エレンの巨人”の馬力が、通常にうろついている
巨人とは比較にならず、更には“操縦者”の技量の関係もあって
終始劣勢だった為中々目がいかなかった事実でもあるが・・・
その膂力は明らかに同じ等級にいる筈の女型巨人より
一歩先を行っていた事に。・・・薄々気が付いてはいた。
「・・・・そういった事情もあって、多少は・・・・エレン自身にも
戦闘は行って貰う事になる。
そうして一仕事行って貰ってから。そこからが・・・・・」
「つまりあの二人を急接近させるチャンス、と言うわけですね・・・!」
話の流れからして明らかに場違いな方向へと
流れている気がしてならないが、二人の目は
依然として真面目一色である。
「話が早くて助かる。
ミカサには・・・エレンが建て終わった櫓の外周を、
以前奪還作戦の際、巨人達の足止めに使われた銛付きネットで
全て包囲出来次第、
巨人化解除後でもれなく疲弊しているであろう
彼の介抱にあたってもらうことになる。
我々がその時までに積んでおきたい前準備は・・・・
彼女と彼の仲を今より更に双方近づいたものにすることだ」
「・・・・・・・・・・エルヴィン団長には・・・確認を取るのを
すっかり失念していましたが。それについて・・・
一つお聞きしてもいいですか?」
「何でも聞いてくれ。この“作戦”・・・その成功を収める事は
全人類にとって有益なものとなる筈だ。
その為なら私は・・・君に対してどのような協力も惜しまない。
気になることは極力聞いてくれると有り難い。」
-
- 9 : 2016/04/14(木) 05:51:36 :
「先程の質問です。
・・・・その、リヴァイ兵長と、ハンジ分隊長の・・・・」
「ああ、・・・・あの二人だな」
「その・・・・結局あの二人も・・・・団長が何か・・・・・?」
「何かしたのかと問われれば、否と答えても応と答えても
語弊があるが・・・。第一に彼女の“そうした”欲求を過度に
開放する切っ掛けとなったのが怪我の痛み止めに処方した
薬だった、というだけで・・・結局は偶発的な事故のようなものだ。
・・・まあ、あの二人はそもそも私が手を加えずとも
ああなっていた気はするものだが。
・・・君などは身を以って体感済みだったはずだろう・・・?」
「・・・・・・・」
「・・・・その・・・・あまり思い出させないほうが良いのかもしれないが。
ハンジとの一件もあったことだからな」
「アレは・・・確かに驚きはしましたが、
あまりに一瞬の出来事だったので、実を言うとそこまで
怖い思いをしたとか、そういうのは無かったんです・・・・;
後ろから分隊長の嗚咽と、本当に申し訳無さそうに
謝る声が聞こえてきた次の瞬間には・・・・」
「成程・・・・な。 散々彼女には謝られただろうが・・・・
本当に彼女も悪気があったわけではない様だ。
この機会に重ねて私からも君には...」
「い、いえ、!そんな...ですから、いいんです。
その、、あれはあれで貴重な経験でもあったので・・・・。」
「そう言って貰えるのは有り難いのだが・・・・・・しかし
普通に考えれば・・・・心に相当な苦痛を・・・」
「大丈夫ですから!本当にその,,あっという間の事だったし・・・
寧ろ片腕を使えない分隊長に簡単に制圧されてしまったのが
僕としては少しショックだったと言うか;」
「それは・・・君が過度に気にする事もない。
彼女はあれで・・・兵団でも相当な修羅場を潜って来ているからな。
その上薬剤で身体の限界を超えた動きで襲い掛かられてしまえば
今の私では手も足も出ない」
「団長も・・・片腕がその状態ですからね;」
「・・・話を戻そう。・・・それで、君からはそれ以外で何か私に
聞きたい事はあるかな」
「・・ではもう一つ。僕自身の憶測としては数ヶ月前の事に
なりますが・・・もしかして、団長は・・・
こういった事に関して、既にミカサ本人に何か話を
持ち掛けたりなんてことは・・・・」
「・・・・ぁあ。既に彼女にはな」
「・・・そう、、、ですか」
「その顔から察するには・・どういった対応で切り返されたかは
既に聞くまでも無い・・・といったところか」
「あの二人・・特にミカサ自身がエレンをどんな風に見ていて、
そして自分をどの様な立ち位置に置いているかは・・・
隣でずっと見てきた僕が一番分かってますから」
「流石だな。・・・まあ言うまでも無いと思うが・・・
一も二も無く却下されてしまった」
「・・・・・」
-
- 10 : 2016/04/14(木) 05:55:53 :
「私は断られてしまった時の事をまるで考えて居なかったからな。
こう言っては何だが・・・唖然としてしまった。
まさか彼女がエレンを拒むなどとは想像もしていなかった
物だから・・・最初は知らずの内に私がどんな無礼を彼女に
働いて憤慨させてしまったのかと冷や汗をかいたものだが」
「普段から周りで見ている限りそう思うかもしれません。
ですが・・・彼女 は・・・周りが思う以上の強い想いを
エレンに抱いています。それは・・・疑いようの無い位強く
紐付けされた絆であり」
「・・・・・」
「自身の生涯をかけてエレンを護り抜くという・・・
揺ぎ無い使命感でもあります。彼女の中ではエレンは
恋愛や求愛の対象と言うよりも寧ろ・・・・
何としても守り通したい家族・・つまり子供や弟といった
認識の方が近いのかもしれません」
「・・・だが彼女自身からはまんざらでもない意識が見て取れた。
そういった事も期待して良さそうな雰囲気ではあった」
「それは一応期待していいと思います。
あくまでミカサにとって“エレンの身の安全”が
第一であるというのは動かしようの無い事ではありますが・・」
コッ・・・コツ・・・
エルヴィンとの会話を続けながら歩を進め、窓から外を見るアルミン。
その視線の先には・・・・
~調査兵団・一時拠点・敷地内の空き地~
ズンッ・・・・ ドシン・・・・!!!!
「ハイ!今度は上手く出来たな!いいぞ~・・・そしたら今度は―――」
屋外でエレンの巨人化実験を行っている真っ最中である
特別作戦班の面々、すなわち、エレン、ミカサ、ハンジ、リヴァイ
そしてコニー、ジャン、サシャがその周囲でいつでも不測の事態に
応じられる様に立体機動装置を装着した状態で見守っていた。
・・・しかし、不測の事態とは言ったところで、
最近ではエレンの巨人化の練度も着実に上がってきており、
また、制御不能に陥る危険域とされる上限時間も統計で大分
絞れるようになってきた為、そのような心配は最早殆ど
無いと言っても過言ではない。
-
- 11 : 2016/04/14(木) 05:57:30 :
-
「「・・・・――――」」
ズンッ・・・・ ドガッ
「うんうん、いいよ~~・・・もっちょい真っ直ぐに建てられるか?」
「「っ・・・・」」ゴゴゴ・・
コクン
エレンやハンジ、そしてリヴァイ等には来るべき作戦の詳細が
伝えられているのか・・・エレンが現在行っているのは
作戦で実際に自らが設置する事になる“櫓”に構造自体は
似通ったものを、地面に差し込んではそれを引き抜き、
更に別の地点に繰り返し突き立てる・・・といった作業内容であった。
「・・・・おいハンジ。実験に夢中になるのは良いが・・・
そいつの練習も程々にして硬化の方もやらせちゃどうだ。
綺麗サッパリだった空き地が穴だらけになっちまうだろうが」
「ぇえ~~・・・いいじゃん別に。
本番でしくじらない為にもエレンには沢山練習しといて貰ってさ。
立派な囲いを建てて貰わなきゃ困るんだから。
あとエレンの巨人が少しでも沢山動いてる所を近くで見てた方が
私は楽しいし・・・」
「結局お前の都合じゃねえか」
「そうでもないんだけどなぁ。
硬化 の方は・・・やっぱりまだエレンには
身体の負担が大きいみたいだから、・・・例の“処刑台”を組み立てる
用がある時みたいな・・・確固とした目的が無い以上あまり
進んで行いたくは無いんだけどね」チラッ・・・
「・・・・・・・・私も・・ハンジさんの意見には極めて同感です」
「・・・・まあ。最も優先されるべき“壁の補修”を完遂した
訳だ・・・。そいつに何かこれ以上の事を望むのは
欲張りすぎなのかもしれない事は事実ではあるが。
しかしそれだけ応用の利く能力だ。
最大の“不穏分子”がまだ3つも残ってる以上・・・そいつを
更に伸ばしておくべきだという俺の考え方も、少しは
検討して貰いたい物なんだが」
「~~~!一々そういう所だけは細かいんだからなぁ・・・
リヴァイはぁ・・・・ あ、、エレン、今度はそっちの方
ぶっ刺してみて~」ビっ
「・・・あとな。。
ここに来るまで誰も突っ込もうとしなかったから
言うべきかどうか迷ったが・・・、自分の腹周りをよく
考えて行動しろよ。お前が肩に乗ってる所為でエレン が
随分と動き辛そうにしてるのに気が付かねぇのか」
「(突っ込める空気じゃ無かったしな・・・)」
「(だってあの人巨人絡みになると明らかに正気失うし..)」
「(お芋食べたい.....)」
-
- 12 : 2016/04/14(木) 06:02:07 :
「だって!!!巨人の肩に乗れる機会なんてこんな時くらいしか
ないんだよ!?!!//// お腹が重いとかそんな事
言ってる場合じゃないよ!!!
それにエレンだっていいって言ってくれてるし!!!
,,,っな!!?!エレン!!?>」パンパンッ
「「・・・・・・――」」コクン
「『な』じゃねえよ。
・・・・エレン。お前もその馬鹿の我侭を律儀に聞き入れて
やる事なんかしなくていいんだ。大体そいつが肩に載ってて
得られるメリットなんざ何も無いだろうが。
・・・だとすりゃそんな縛りは百害あって一理無しだ。
おまけにそいつは今そんな腹だから立体機動装置すら
満足に.......」クドクドクド
「//なぁんだよリヴァイ~~。心配してくれてるなら
そう素直に言えって~~ww大丈夫大丈夫♪
もう大分エレンの活動限界も解ってきた事だし、今ではホラ」
「「っ・・・・・・・・(ムフー..)」」スッ・・・・
「縄の蝶々結びだってお手の物なんだぞ!!」ォ~~、ヨシヨシ
「杭の抜き刺しなら作戦の予行演習って事でまだ分かる・・・・。
だが縄結び に一体何の有用性が・・・・...?」イラッ
ピキッ・・・・・!!
「だからお前は一々細かいんだよ!!エレンにとってはね、
巨人化の能力に関して何かを教えてくれる人なんて
当然居ない訳だし、それを考えれば全てを自分の手探りで
掴んでいくしか無いんだよ?
そういう事なら・・難しい意味なんてとりあえず置いといて
とにかく何でも挑戦して見る他無いじゃないか!!」
「「・・・・・・・・・」」
「・・・おっと、そろそろ時間かな・・・・(パチン)エレン?
まだ身体の自由は利きそう?大丈夫だったら首を縦に、
無理そうだったら横に振ってご覧.... 、、んン?」チャッ・・
手元の懐中時計で分針の振り幅を再確認したハンジが、
己を肩に載せるエレンにそう問いかけるが、
彼の返答を確認する前にその視線の先に何らかの違和感を見止める。
その視線の行く先は直ぐ傍にて此方に首を捻るエレンではなく・・・
少し離れた宿舎の上階へと向いていた...
―現調査兵団拠点・エルヴィンの居室―
「・・・・・あ;」
ピタッ・・・・
「・・・どうした。何かエレンの実験で不手際でもあったのか・・・??」
ヒョイッ・・・
「いや・・何か今一瞬ハンジ分隊長と目が合った気が・・・、、
したのですが。流石にこの距離では気のせいだと
思われま・・す・・・・?;」
『(ジィィィ・・・・・・)』
「・・・・・・・・・・・・・!!」
目と目が合った数秒間後、固まっていたハンジが
エレンの首筋をタップして、跪かせるのと、
その動作にアルミンが気付き、背筋を震わせるのは
ほぼ同時の事だった。
「・・・どうした。・・・・まさか」
「済みません。。。。感づかれた可能性が・・・・・」
-
- 13 : 2016/04/16(土) 14:08:40 :
「・・・・(溜息)致し方あるまい。そもそもこういった事を
彼女に隠したまま推し進めようとするのが既に・・・・」
ドバンッっ !!!
目頭を押さえて若干俯いてみせるエルヴィンの憂鬱を
後押しするかのように、その闖入者は高らかに戸を開け放ち、
その声を張り上げる。
「やあやあ!! こんな天気のいい真っ昼真っっから、男二人が
部屋でこそこそ隠れて集まって..,何をシコシコやってんのさ!!?
...それも調査兵団きっての頭脳派ともいえる
君達二人がお揃いでねぇ・・・・・?!
これはもう相当良くない謀の匂いがプンプンするなぁ・・・・・?!」
(訳※私にも一枚噛ませろ)
「早かったな・・・。。
その身体でよくここまで上がってきたものだ。
それもこの短時間の内に」
「ぃやあ、面白い話の気配がしたからね。(ヨッコイショ)
・・・・で>?
よりによって君達二人が揃って内緒話してまで進めたい
案件ってのは一体何なのかな?・・・・ああ、
どんなに隠しだてても無駄だからね。気になった事はどこまでも
追求するから。私は」ギラギラギラ
「・・・・・いつか君にも少し話しただろう。
エレンとミカサの二人についてだ。彼らの距離感に業を煮やした
と言う程ではないが…流石にあの調子が続くようではと思ってな」
「成程、アルミンの協力も仰ごうって訳か。 ウン、
いいんじゃないかな、彼らの人となりを良く理解している
君の横車は・・・この状況では非常に役に立つ筈だ。
私もね・・・流石に"あの二人"の歩みの遅さにはどうしたものかと
思ってたんだけれど・・・・・君が本格的に手を貸してくれるなら、
この膠着状態にも打開の望みが見えてくるって物さ」
ニャァ・・・・
「それはそうと・・・ハンジさん・・・?エレンの巨人化実験の
最中だったみたいですが・・・・いいんですか??:」
「うん、大丈夫だよ。もう終わるところだったからね。
一応もう巨人化を解くように言ってきたし。」
ヒョイッ
窓から階下を覗き込むと、そこには自力でうなじの部分より
這いずり出でるエレンの姿があった。
「慣れたもんだよね~。。まだ追っかけを気にしながら慣れない
巨人化に苦戦してた頃なんてあんな目ん玉ベロ~ンな大惨事に
なっちゃってたって言うのに、今ではあの通り、
活動許容時間も以前より大分伸びた上に巨人からの解除も
自分一人で出来るようになった。彼は本当によくやるよ」
「エレンには・・・・昔から自分がやろうとしてできない事を
諦めようという頭がそもそもないですから・・・。
出来るようになるまで自分を追い込む事に関しては、
多分、僕が知る中で彼以上の人間は居ません」
「・・・いいなぁ、彼。ミカサは幸せ者だよ、許されるなら私が
食べちゃいたいくらいだ」アッハハハ
「ハンジさんにはリヴァイ兵長が居るじゃ無いですか...:」
「でもほらさ!リヴァイの子 が産まれてからなら・・・ね!?
ダメかなエルヴィン???、私、結構マジメに・・・・」ネェネェ!//
「・・・・・私がこういうのも何だが・・・君はもっと自分の年齢も考えて
節度ある身の振りを覚えた方が良いだろうな。
こればかりはリヴァイに肩入れせざるを得ない」サラッ
「そんな!! だってエレンの子供なら多い方が良いんだろ!?
私大歓迎だよ!!?... それにちょっと興味もあるし・・・・」
-
- 14 : 2016/04/16(土) 14:12:38 :
-
「(この人本当に本能に忠実なんだな...)」ジトッ・・・
「・・・ハンジ。少しは自分の過去を省みろ」
「っ・・・・ぅ。。。;」
アルミンの突き刺さるようなじっとりとした視線に晒された
ハンジの脳裏に蘇るのは・・・薬による不可抗力とはいえ
自身の本能のままに目の前のいたいけな彼を蹂躙してしまう
その一歩手前という暴挙を働いてしまった・・・過去の苦い記憶。。。
「ご・・・ごめんよ,,,,、私ったら、あの・・・
すっかり安定期に入ってついつい気分がそっちの方に
盛り上がっちゃってて・・・・;決してその・・・
君に手を上げてしまったあの時の戒めを忘れたわけじゃ・・・」
オズオズ、、、、、、
「、いえ、、;体調的だとか。、その、生理的なものなら
仕方ないと考えてますから、そんなに気にしないで下さい!」
「ぁ・・・有難うねぇ、、、;アルミン、君は優しいんだな..」
ヨシヨシ(ナデナデ)
「,,,,//////」
「こうして見てみると・・・君も結構可愛い顔をしてるよね」
マジマジ・・・・
「アルミン、彼女は見ての通り移り気が激しい。
・・・あまり気を遣って手を差し伸べてしまうと次に産まれてくる
彼女の子は君と同じ髪色をしていたり等という事も・・・・・」
アリエナイトハ...
「ャダ,,,ちょっと・・・私なんだか本気でアルミンの事
気になってきちゃったかも・・・」ドキドキドキ (ガシッ)
「ちょっ、、!;///
少し落ち着いて下さいって!!!;大体エレンの話から
脱線してないですか!!?」ワタワタワタ
「それもそうかもしれないけど・・・なんかほら、こうして見ると
アルミン、君って・・・私なんかよりずっと綺麗な顔立ちをしてるし
・・・君とは違った方向で中性的な認識を持たれ易い私としては・・・
少し妙な気持ちになってしまうんだよ・・・
ねぇ、キミは・・・どう思う?」ズズイッ
「妙、、と言われましても・・・・;///(困)」
オズオズ
「アルミン、君がそこまで真面目に取り合う必要は無い,,,!」
ソイツハキケンダ・・・!ハナレルンダ!
「男とよく見間違われる私と、対照的に女性的な何かすら感じる位
中性的で顔が整った君とで・・・何か通じ合えそうなものを
感じるんだけど・・・君はどう? ・・・やっぱりこんな私じゃ困るかな//」
「仰る意味が難しすぎて返しに困ります・・・・///;(ジリ..ジリ...)
それにハンジさんは兵長とご結婚を・・・・・!!;」
「・・・・??? ケッコン??まだ私達籍なんて入れてないよ??
私もリヴァイも忙しくてそれどころじゃ無いしね。それに
あいつもそんな堅苦しい型に自分を押し込むタイプじゃ無いって(笑)
だから・・・ね??丁度いい機会だとおもわない??」
「で、ですから何が・・・・(大汗)」
ダラダラダラ・・・・
ガチャッ・・・
キィッ・・・・・
「・・・・おいメガネ・・・随分帰りが遅いと思ったらお前・・・
また部下相手に盛 ってやがるのか・・・(苛)
まだ腹の中のソイツが出てくるまで数ヶ月はあろうかって
この時期に・・・お前はキツツキか何かと同レベルの畜生か」
「・・・・いやぁ、だからこそ、だろ??
リヴァイの言う通りお腹にこうして私とあんたの子が居る訳だから・・・
今の私はどれだけお楽しみになっても、君の言いたいであろう
所謂、『託卵』にはあたらない。安定期にまでとっくに入ってしまった今
重複で身篭ってしまう危険性は皆無だしね」
「・・・・・・///////////」
(真っ赤々)
-
- 15 : 2016/04/16(土) 14:16:47 :
-
「昔から人目を憚らない性格だと言うのは理解できていたが・・・
流石に人目を気にしなさ過ぎるだろう。・・・リヴァイ、
早急に彼女をつまみ出してくれないか。。
私と彼の大事な話し合いが頓挫するだけでなく・・・このままでは
彼の羞恥心が臨界を超えた末に倒れてしまいかねない」
「俺はお前ら二人の内緒話にも少なからず警戒してここまで
足を運んだってのもあるんだけどな・・・・まぁいい
おい、行くぞ豚メガネ。。あれだけ機敏な動きでここまで
駆け上がって来れたんだ。きびきび歩け」ギュッ
「ひょっ・・・はっ、鼻を摘むな!!!
千切れる!!鼻が取れちゃうからぁ!!!!」バタッ・・ジタバタ・・・
「実験の後の記帳もまだ済んで無ぇだろうが。
エレンも態々お前を待ってんだ・・・・早く来い。」
「分かってるっての、、もう!!!
じゃっ、アルミン!エルヴィン!!?私も出来るだけ
状況が好転するように独自に働きかけるからさ!
そっちはそっちで是非うまくやってくれよ!!?アルミンもね!」
ズルズル・・・
「^^;」
「・・・・・(深い溜息)」
―――ッバタン....
「本当に・・あの人っていつでも自分の心に嘘を付けないというか・・・
思った事何でもやっちゃう人ですよね・・・・」
「あのような調子でよく今迄壁内外を
何度も往復出来たものだと言う者も少なからず
兵団内に居るのは事実だが・・・寧ろ彼女のあの
奔放さこそが・・・今日まで彼女を生き永らえさせている
命綱でもある。それだけは間違いないと断言できる。」
「そう・・・なんですか・・・。」
「君自身、数える程しか壁外へと赴いた事が無いとは言え…
少しくらいなら理解出来なくもあるまい。
外の世界とは・・・元来そういうものだ。
壁内にて保身のみを考える者の思考では決して
推し量る事の出来ない理と不確定要素の群れが
全てを支配する世界・・・それが“壁外”であり・・・・」
「・・・・・・」
「遠い昔、どの様な思惑と決断の末に築かれたか、
それすら今となっては定かではないが・・・
“あの壁”でこの世界を囲った者達が決別した、
“本来の世界”の姿だ。
・・・・・まあ・・・・その辺りの話はこれ位にして・・・。
・・・話を本筋に戻そう。
アルミン、ここまで君に直接的に協力を仰いでおいて
今更ではあるが・・・ここで重ねて確認しておきたい。
君は・・・あの二人を間近で見てきて・・・どう思う?
我々のような取巻きがどうこうする事で・・・その仲が
すんなり進展すると・・・素直に思えるか?」
「・・・・・正直に、率直に言ってしまうなら・・・・
エレンはともかく・・・ミカサ本人にはご存知の通り、
エレン以外の異性を意識する思考ルーチンが
そもそも存在しないと思うので・・・そこは安心して
見ていられるのでは・・・と言いたい所ですが」
「・・・・・やはり・・・か。」
「はい。ミカサはともかくエレンにもまだそういった目で
ミカサを見る感情は芽生えてないでしょうし、そこから更に
一歩踏み込んで、“肉体的な関係”ともなると・・・
ただ放っておくだけでは難しいかと思います。」
-
- 16 : 2016/04/16(土) 14:20:49 :
-
「・・・・それもそうか・・・、それでは質問を更に変えよう。
君は・・・いや、、、君も、彼女とは幼い内から“彼女”とは
親交が深かったと聞いているが。 ソレについては・・・
失礼、とても聞き方に困るのだが・・・君は・・・・
それでも構わない・・・・のか?」
「・・・・・・・・」
明らかに一歩引いた姿勢にて遠慮交じりに問いかけてくる
エルヴィン。
「お聞きしたい事は何となく理解できますが・・・しかし、、」
「ああ・・・済まないな。
遠まわしな聞き方で申し訳無い事だが・・・君くらい
理解が早い者なら最早それについて説明の必要も無いだろう。
・・・かく言う私にも・・・進む路さえ違っていれば伴侶として
迎えていたかもしれない様な異性との交流が・・・少なからず
あった。」
「エルヴィン・・団長に・・・・?」
「....訳だが・・・知っての通り、壁の外を目指すこの道に
志願した時点で、その繋がりは当然断ち切られる結果となり・・・
今その女性の隣には同期の成績上位組の中でも憲兵団への
入団を希望した者が居る。・・・、無論今この道を往く自分に
後悔などという念を抱く事など決して無いが・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・しかし、“其方を選ばなかった”事に、
微塵も未練が残らないというものでもない。
あれだけ見目麗しく、器量も良く、体力知力共に
文句の付け所が無い、魅力的な女性だ。古くからの知人である
君でなくともそういった感情を抱くのは別段おかしい事だとは・・・
私は考えない。 ・・・・アルミン、君は・・・君自身は、
彼女にそういった感情を抱いては・・・・?」
「・・・・・これは・・・僕個人が思ったままの意見でしかありませんが・・・、、
団長のお気遣い通り・・・僕の中にも少なからず彼女 に対する
好意・・・というか、その括りを超えた感情は確かにあります。
・・・ですが・・・・・・、、、」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「僕自身も彼女 の事が心の底から好きだからこそ ・・・
そんな彼女が一心を向けて想い続けているエレンと無事に
添い遂げて欲しいと思うんです。彼女 は・・・
本当にエレンの事しか考えずに毎日を過ごしてますから」
「せめて・・・少しでも早く、“それ”形 をで実感できる
幸せを知って貰いたい・・・。僕自身、そう願うからこそ
今こうして団長にはお力添えしている次第です」
-
- 19 : 2016/04/16(土) 14:36:30 :
~それより少し前~
―調査兵団臨時拠点・浴場―
そこは、かねてより多忙であった調査兵団の一群の中でも
他に類を見ない程の清潔意識の塊ともいえるリヴァイの
断固とした鉄の様な意思の元、拠点敷地内に設えられた簡易浴場。
掛け湯として使う為、火に掛けられた湯が巨大な金盥 の中で
適度に炊かれており、
端には単独で一人ずつ使用できるドラム缶風呂のような格好の
大型の寸胴釜が三つ並び、何れも直火で湯を沸かせる
仕様となっており、如何にこの設備に力が入れられているかが
一目で伺える。
火傷防止用の簀子まで浴槽には設えられてあるが、
それらも全てリヴァイの工作品である。
「しっかし・・・あの二人が・・・なぁ・・・・」
ワシャワシャ・・・・
「そんなに不思議がる事かよ。憲兵と違って
出会いもクソもねえ壁の外で、代わりに毎日巨人と
出会いまくってはその度に生きるか死ぬかの追いかけっこを
繰り返す事を余儀なくされてきた調査兵団の中で…
あの人らくらいの歳になるまで互いに生き残ってる
男女が居たってんなら少し位そんな目で意識するようにも
なるだろ・・・・」
ザバッ・・・
「・・・・・・・・・・・」
ゴシゴシ・・・
現在この時間、その場を使用しているのは
エレンの巨人化実験の監視要員・兼、待機要員として参加していた
ジャン、コニーの二人に・・・実験の当事者でもある
エレンの三人であった。
回数を重ねて慣れが出てきた為、
体力的には何とも無さそうに無言で自らの体を
黙々と洗い流すエレン。
・・・・しかし、
その場の二人の会話を、何処か遠くの景色を眺めるように
呆然とした態度で流し聞きする彼の顔には・・・
巨人化解除後特有の隈取のような跡が残っていた。
「・・・違うって・・・そういう事じゃなくてだな・・・
“よりによって”あの二人がそういう関係になってたってのが・・
どうしても頭の中で想像出来ねーんだって....。
だってよ...実際子供が出来てるって事は…つまり“あの2人”が
やる事やったって・・・・・事だろ。。。ジャンお前・・・
そんなの想像できるか??」
「とても想像はできねえがその事実が無けりゃ
あの人のあの腹はどう説明つける気だってんだ・・・・?;
・・・まさかお前、本気で太っただけだって言い訳を
のっけから信じてたクチじゃねえよな....?
(とんでもない馬鹿を見る目)」
「(オレは本気でそう思ってたっつの・・・・・)」
ゴシゴシ・・・・ ザバッ
-
- 20 : 2016/04/16(土) 14:38:39 :
「・・・・~~~、、、ダメだ、全然想像出来ねぇ;」
「・・・・お前、自分の両親を同じような目で見られんのか」
「っっ・・・・気色悪い事言うなよいきなり!!!
そんな事考えて何が,,,っ」
「それと一緒だバカ。分かったら余計な想像なんかに
その小さい脳味噌を働かせるのは止せ。
...そんなどうでもいい事に無駄遣いできるほどお前の頭は
引き出しが多くない筈だろ・・・....。。」
「っ、、人のこと散々好き勝手いいやがって...。
でもアレだな。これだけ意外な組み合わせでつがいが出来上がる
なんて・・・・世の中分からないもんだな・・・・」
「結局話が一周して元に戻ってるな。」
「俺達も・・・・いつかそういうのあるのかな・・・・・」
「・・・・・さぁな。そんな相手が見つかるまで
俺達がマリアより内側の巨人に喰われてなけりゃ・・・・
ひょっとしてない事も無いんじゃねえか。
何だお前・・・・そんな事は眼中にも無いかと思ってたが・・・
実は結構そういう出会いを求めてたりしたのか??
悪気無く言わせて貰うが甚だ意外だな」
「・・・・そんなんじゃ・・・ねえよ....ただ」
「・・・・ぁあ?」
「母ちゃんがあのまま でいつまでああして
あそこに居続ける事になるのか、ついでにそれが
いつまで“もつ”のか・・・
それすら分からないんだ・・・。。
もしあの時母ちゃんが俺に声を掛けてくれたのが気のせいで
無いなら・・・・巨人の身体になっちまったとしても・・・
ほんの少しの意識くらい残ってるのかも知れないわけだろ。
・・・・安心させてやりたいんだよ・・・・どんな事でもいい。
少しでも早い内に、それを伝えてやりたい。」
「・・・・・・・・」
「まあ・・・・普通に子供の心配して弁当まで持ってきてくれる
親を煙たがってるジャンには・・・さすがに俺のこの気持ちは
わからないんだろうけどな」ヘッ
「・・・・いや。別にその気持ちは・・・分からないでもねぇが。」
「けどなぁ・・・こんな状況で・・・正直それどころじゃねえよな(溜息)」
「・・・お前、芋女とそこそこ訓練兵の時期から仲良かっただろ。
アイツじゃダメなのか」
「サシャ・・・・、、、、ぅうン。。。・・・・サシャか・・・・」
マジマジ・・・・・
「・・・・意外だな;お前の性格じゃ速攻ありえないって
言いそうだと思いながらあえて聞いたんだが」
「・・・・あの悪食だけを考えたらな~。。
…でもどうだ?実際あいつ…そんなに悪くない・・・気がしないか?
頭は確かに弱いけど座学成績は何故かオレより上だし
行動力だってそれなりに・・・」
「・・・俺はパスだな・・・女に必要とされるのは
何より慎みだと思う訳だ。
そこ行くとやっぱり俺にとって理想となるのはそりゃ・・・・、、」
「ぁあ、その先は分かってるから言わなくて良いや・・・・↓↓」
「っ・・・てめぇ!!少しは俺にも喋らせろよ//!!!」
-
- 21 : 2016/04/16(土) 14:42:33 :
「だってお前・・・“あいつ”はどう考えても・・・・」チラッ
(風呂釜に一人浸かるエレンを一瞥)
「分かってる!!!ンな事、お前に一々言われなくても
最初ッから分かりきってるんだよ!!!だがそれが何だってんだ??!
自分が惚れた女に、既に好きな奴が居た・・・・それだけで
諦めろってか?!!・・・生憎だがな、俺はそこまで潔い人間じゃねえ!!」
「・・・・そりゃどう思うかは自由だけどなぁ・・・;
俺は・・・とっとと諦めた方がいいと思う」ゲンジツミロヨ
「ぁあ、言ってろ・・・・俺は決して諦めねえからな。」
ジロ・・・・
「・・・・・・」(ボケ~~・・・・)
「・・・・・・・」
そう吐き捨てるように言うと、エレンの方を鋭い目つきで
一瞥するジャンであったが・・・ついに先程から気になっていた
エレンの無気力極まりない態度への言及を決意する。
「・・・・おい、さっきから気になってたんだがお前・・・
今日何かあったのか・・・?」
「~~~・・・・・」
しかし、依然として風呂に浸かりながらまるでジャンの問いかけも
聞こえていない様子のエレン。
「おい!!てめえ起きてんだろな!!?風呂ン中で寝て窒息死とか
勘弁しろよな!!!?
俺達全員で命懸けになってでっかくなったお前の
お守りをしながらも何とか例の実験にも進みが見られてきたって
言うこのタイミングで・・・肝心のお前がそんな死に方でも
した日にゃ笑い話にもならねーぞ!!!」
ガバッ・・・ バシャッ
「ブハッ・・・!!、、ゴフッ・・ゲホ!!!
うルっせぇな・・!!起きてるっつの!!何だよいきなり!!?」ガバッ
ザバッ・・・!!!! ビチャビチャ....
「何だってお前な・・・・さっきからどこ見てんのか分からねぇ様な
完全に死んだ目しやがって・・・調子が悪いなら分隊長にでも
包み隠さず言えってんだよ!!そうすりゃ実験の先送りなり
なんなりするだろうがよ。」
「・・・・・・・・」
「お前がぶっ倒れればその時点で俺らのお先も同時に真っ暗なんだ。
・・・無茶するならそこんとこ良く考えてしやがれ・・・!」
「・・・・お前に心配をされる事になるなんてな。
・・・・悪ぃ。もう少し気を引き締めていかねえとな」
「・・・・・」
「・・・・・」
「――お前・・・・本当に何があったんだ?」
「大した事じゃねえ。
・・・大した事じゃねえが・・・・まあ」
「今お前らが二人して話し合っていた事とそう変わらない事だ。
・・・オレが考え込んでたのは」
「・・・・・・あ・・・・・・・?」
ザバッ・・・・・
「余計な心配をかけたなら悪かったな。オレは先に出る・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
(信じられないモノを見送る目)
-
- 22 : 2016/04/16(土) 14:45:17 :
-
....バタンッ・・・
「―――なあオイ・・・・お前、どう思う・・・?」
「どうって・・・エレンの事言ってるのか?」
「決まりきった事を聞くな。大体検証前から変だと
思ってたんだ。何するときも威勢だけは良く吼えるあいつが・・
今日はどうにも大人しめだったからな。
・・・・お前なんか心当たりあるか」ソワソワ・・・
「それを俺に聞いて何とかなると思ったのか・・・(呆)
ジャン、お前相当焦ってないか;?
俺とジャンの話を聞いててあの雰囲気だったって事は・・・
流石にあの“エレン”もそっち の想像で
頭が一杯になってたんじゃねえかって事くらい・・・
馬鹿の俺でも分かったのに。」
「ッ!!? あの野郎がとうとうミカサをそういう 目で
見始めたんじゃねえかって・・・お前はそう言いたいのか!!?」
ガバッ!!!!
ザッ・・・・!!!
「ぅわっ・・!いきなり飛び上がるなよ!お湯が勿体無いだろ!!
・・・・っていうかあいつも普通に自分でそう言ってたじゃねーか;
・・・・あとずっと風呂釜から“出てこなかったし”....」
ハズカシカッタンダロ
「 !!? 」
ザバーーーッ・・・!!!
「ぁあっ!!オイ、だからさっきから言ってるだろ!!
折角張ったお湯が・・・っ! 俺らだけじゃなく
後にも入るんだぞ!!!?」
「こうしちゃ居られねえ・・・・・!
ミカサが・・・・!ミカサが危ねえ・・・・ッ!俺も出る!!」
ザバザバ・・・・ ビシャッ・・・
「・・・・(溜息)
一応聞いとくけどな・・・危ないって何が危ないんだ?;
ミカサの性格考えればエレンがその気になったら即
OKなんだろうし・・・もし万が一ミカサにその気が無かったら
エレンが投げ飛ばされるだけだろ・・・・;
対人格闘の通算成績で見てもミカサを襲える男子なんて
同期には一人も居ないし。
俺にはお前がそこまで焦る理由が理解できねーよ...(困)」
「(最早聞く耳持たず)ッ――!!」
ペタペタペタ―――――・・・
バタンッ!!!
「・・・・・・・・・・・・」
見えない何かに恐れをなしたかの様に浴場を後にする
同期の戦々恐々とした表情を見送りながら・・・
一人その場に残されたコニーは柄にも無く
湯船に肩まで浸かって呟く。
「平和・・・なんだよな・・・。こんな事で
さわいで居られるうちは・・・・まだ・・・・・・・。
俺ももっと焦った方がいいのかな・・・・・・・・」
そして何と無しに傾げた脳裏の片隅に、
同期でもっとも落ち着きの無い女子と自分が明るい家庭を
築く未来図を想像し・・・・・
ザバッ・・・・!
「・・・・・・ダメだ・・・・・・
全っっっ....然、、想像できやしねえ・・・・・・!!!」
やはり 一人空しく、己の丸い頭を抱えて苦悩した。
-
- 23 : 2016/04/19(火) 00:07:08 :
~調査兵団一時拠点・休憩室前~
「・・・・・・・」
「・・・・・。今風呂上がったんだけどよ」
いつもなら実験後すぐにハンジと共にその場で行うはずの
検分だが、
落ち合い場所のみ言い残してどこかへ駆け出してしまった
ハンジに口頭で伝えられた通りの場所へこうして
やって来たエレン。
しかし
「・・・なんでお前がここで待ってるんだ?」
戸の前でさながら門扉を守護する石像の片割れように
正立していたのは、近頃どうもその様子に違和感を覚える
幼馴染の姿であった。
「・・・何故と聞かれても。私も単に此処へ休憩を取りに
来ただけ。偶然にも丁度今・・・・エレンとこうして出くわした。」
「(明らかに戸の前で誰か待ってる体 でいただろうが・・・;)
・・・・まあ別にいいけどよ・・。」ガチャッ・・・
「エレン、折角こうして“偶然”会えたのだし、巨人化実験後の
柔軟もかねて私が手を貸そう。前屈は二人で行った方が
断然効率的・・・・・」ニギニギ
「(“いいよ別に・・”なんて言っても無駄なんだろうな、
・・・・いつも通りに。)ああ。じゃあ頼むか・・・・でもお前、
力加減しろよ・・・・;たまに背骨軋むまで押すけど、
あれすっげー痛ぇんだぞ・・・」
「っ・・・・、、ェ、エレン・・・・?」
ソワソワ・・・・
「何だよ・・・何焦ってんだお前」
「“一人でできるからいい”とか・・・・
今日はそういった駄々をこねないの・・・・・?;」ドキマギ・・・
「ッ・・・(苛)!
んなこと聞くなら最初から言い出すんじゃねえよ!!
一々変な奴だなお前は!だったら別にお前の手を借りなくたって
柔軟くらい余裕だっつの!!」フンッ
「だ・・・ダメだ!!エレンはっ・・・私の補助を受けるべき・・!」
アタフタ・・・・・
ッ・・・バタン =3
「・・・・・・・・・」ソロ~~・・・・
「(い、急いで風呂を上がってここまで尾行 けてきたが・・・
別にあの感じだといつも通り・・・・だよな・・・・;!?
ぁあ、いつも通りの鈍感野郎なハズだ・・・!ミカサにしたって
何もおかしいところも無く、いつも通りあの死に急ぎ野郎に
何故か世話を焼きたがってるだけな感じだったしな・・!)」
ソワソワ・・・
・・・・と、その場まで気配と吐息を噛み殺しながら
エレンの後を追ってきたジャンが、休憩室の戸口近くまで寄って
壁を背にしながら室内の会話をなんとか傍受しようと感覚を
研ぎ澄ませていた正にその時
-
- 24 : 2016/04/19(火) 00:11:38 :
「いやぁ・・・・相変わらず仲のいいお二人だよね。
傍から見てても"もう結婚しちゃえよ!"
って言いたくなってくるよね~~♪」
(体育座り)
「結婚だと・・・?!?あんな死に急ぎ野郎とミカサが・・・
結婚・・・・・・・・ッ!?? 冗談も休み休み・・・・ってうおぁっ!!!!??」
ビグッッ!!!!
「やぁ☆
...。。どうしたの?こんなところでしゃがみ込んで??
仲間に入れて欲しいならさっさと入っちゃえばいいのn....
「しっ・・・・・!!!失礼致しますッッ!!!!」バッ!!!
「あ、っ、、おいちょっと・・・・」
ダダダダッ・・・・・・
「(ぁあ~~・・・行っちゃったよ。
彼は・・・確か普段の挙動からしても明らかにミカサに
気がある感じ丸出しだったからな・・・
彼の押しをうまく利用してエレンの方をなんとか
触発できないかと考えても居たんだけど・・・・)
まあ・・・・そういうのはやっぱりあんまり良くないかな。
彼の恋愛感情をダシに使うみたいで」ポリポリ
「(しかし・・今思い出したけど良く考えて見れば
アルミンも彼女 とはエレン同様に幼馴染・・だったよな。
その辺アルミンは気にしないのかな・・・(悩))」ウウム・・
あれだけの美人で欠点らしい欠点も殆ど無い、
強く、優しく、美しくの三拍子揃った女の子に気を惹かれない
男の子なんて・・・絶対に居ない筈だ。それも幼い頃からの
付き合いだったのなら尚更・・・・
「(・・・もし彼もミカサに気があるのだというなら・・・
私は彼の意思も尊重して上げるべきだと思うんだよね)」
~調査兵団一時拠点・共同休憩室~
「ぁだっ・・・・痛”っ・・・・いでぇッ・・・・!!!」
グギッ・・・グググ・・・・
「エレン・・・実験や訓練の後に関わらず・・・
やはり少しあなたは柔軟の方が疎かだ・・・。
鍛錬に打ち込む姿勢に関して私から言う事は何もないが・・・
できるだけ体中の腱や靱帯はこまめに...
「ぅわっ・・・分かってるっつの!!!!っってぇ!!
柔軟自体は普段からオレだってやってる!!
実験の後なんか特に・・・体中筋張って仕方ないから
こぅしてしょうがなくお前っ・・・にィっ・・・・!?!?っっ痛ッ・・!!!!」
-
- 25 : 2016/04/19(火) 00:15:38 :
部屋の中で悲痛な叫びをあげていたのは・・・・
未だ先程行った巨人化実験の影響で、下瞼から頬にかけてのラインに
特有の隈取りのような模様を残したエレンだった。
一人で身体の柔軟を行うのが困難な状況なのを理解してか、
それとも単にミカサの押しを振り切れなかったためか、
結局ミカサの補助を借りて体幹のストレッチを行っている。
・・・が、やはり身体に深刻なレベルの負担を及ぼすであろう巨人化の影響故か、
普段自らのみで行っているそれも、思うようには行かない様子である。
ガチャッ・・・・
「ぃやぁ~・・・随分と威勢のいい声が聞こえて来るけど大丈夫かな?
(ヒョコッ)
...おお・・・?でも随分と・・・・・、、ふむふむ。
実験後のコンディションとしては大分良好みたいじゃないか。
その程度の反動で済んでいるだけでなく、
意識まで健在だというなら・・・・最初の内と比べてもまさしく天と地の差だ」
「ッぃぃっ痛,,,,、、、、ぁ、」
「・・・・ハンジさん。」
「やあ、改めてお疲れさま。エレン?
いや、本当にキミはよく頑張ってくれてるよ。
今私も言ったように・・・キミの巨人化の活動限界を探る為の・・・
最初の内の実験の時なんか・・引きはがしたキミの身体なんてとてもじゃないけど
元に戻るとは思えないほどヒドい有様だったん...」
「ン"んッ・・・・,,コホン,, ....ハンジさん・・・?」
(※副音声※その話は・・・・今ここでは・・・・)ジロリッ・・・
「???」
「あ、ぁあイヤ;、何でもないんだ!!今のはその、聞かなかった事にして
流してくれ。さてさてそれじゃ毎度お馴染みの問診と
実験の記録から行こうか。・・・体調的に大丈夫かな?エレン。」
「ええ、全く問題ありません! ・・・むしろいつもより調子が
良い位なのでこの機会にもっと鍛錬を積んでおいて、
例の“一点集中の奴”も、もっと練習を・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」ジィ・・・・
「あ、っははw;
気持ちは嬉しいし、頼もしい限りなんだけどね、いいかいエレン?
周囲の皆からは口を酸っぱくして言われてると思うし、
もし言われてなくてもそろそろ時期的に察すると思うけど・・・
肝心要の君の家の地下室・・・その探索ももう目前に迫っている。
有難くも気味の悪い事に外門、内門と壁の綻びを修復し終わった
我々の前に・・・ついぞ彼らは姿を現さなかった。」
「それは・・・・あの・・・・」
「ああ。壁の修復は勿論我々人類のほぼ全てが願って止まない
悲願の一つではあるけれど・・・結局その壁を前回壊した実行犯の足取りが
未だ掴めないというのは不完全燃焼極まりない事実だ。
・・・例えるならそうだね、これまで食害の絶えなかった食糧庫で
盗み食いを働く鼠を何とか駆逐することには成功したものの・・・
そいつらの糞だけは未だにそこかしこから見つかる。。
今は正にそんな状況な訳だけど・・・・・」
「・・・・・・・・・」
-
- 26 : 2016/04/19(火) 00:19:17 :
「しかしだからと言って我々に歩みを止める余裕もない。
“彼ら”がその尻尾を掴ませてくれない以上・・・・
また、その牙を剝き出しにして襲い掛かってこない以上、。
私達は私達の仕事をまっとうするしかないという訳だ。
いつまた崩されるか分からない壁であろうと取りあえずは
塞がなきゃいけないし、君ん家の地下室にあるとされる
何らかの手掛かりは確実に掴みにいかなきゃならない。
つまりエレン、キミには・・・・」
「普段から常に充分な余力を残し・・・いつどんな突拍子も無い
勢いでやってくる有事にも備えておけ、・・・って事ですね」
「・・・・・ん。満点だ!・・・――キミの性格は・・・私もちゃんと
理解しているよ。そこのミカサがそんなキミをどれだけ大事に
想っているか、それもしっかり理解できているつもりだ。
・・・・然るにキミがこの状況をそうしてきちんと理解してくれて
居るのはとても助かる。...毎度私達はキミに助けられっぱなしだ。
・・・・有難うね。エレン?」ニコニコ
「は・・・・はあ・・・・;」
「・・・・・私は今日の当番を任されているサシャと食事の準備を
始める前に・・・軽く自分の運動を済ませて水を浴びてきます・・・・」スクッ・・・
「あ、ウン。分かった、行っておいで~~、、(ヒラヒラ)
それじゃ、エレン・・・?」
「ハイ。まず一回目の解除から二回目の疲労感ですが・・・・」
ガチャッ・・・
バタン...
―ミカサ・退室―
「(やはり・・・どうも調子が出ない・・・。いや。
身体の調子自体はすこぶる良好なのだが・・・。)」
エレンの身体に触れたり、近くに寄る、という
ただそれだけの事で・・・・
「(何か動悸に近いものが抑えられなくなる。これも・・・
少し前の団長との話・・それからヒストリアとの一件からだ。)」
こうした異常も、きっと最近忙しくなってきたエレンと
ろくに接し合えて居ないからだろうと・・・・
今日こうして私自らエレンに近寄ってみたけれど。
―――これでは余計に酷くなっている。
エレンをその様な目で・・・そこまで現実味をもって
まじまじと見つめた事なんて今まで無かったのに。
・・・しかし考えてみればそれは当たり前の事だ。
この世界は・・・とても残酷だから。少しでも気を抜いていれば
エレンは勿論、私だって例外なくいつ命を墜とすか、
それすら全く予想などつかない。
こんな壮絶で凄惨な世界において。
私には自身を鍛え上げてエレンを護り抜くという選択以外・・・
有りはしなかったから。最近は少しその鍛錬の頻度も
以前に比べて少なくなって来ている。
・・・それも少し関係しているのだろうか。
「(・・・・いや。)」
これは・・・この感情は。きっとそのような束の間のものでは無いはず。
此間の一件のように・・・エレンへのこの気持ちを誰かと共有しながら
見つめなおした事は無かった。きっとそれが大きいのだと思う。
-
- 27 : 2016/04/20(水) 23:43:09 :
「(私は・・・やはりエレンを・・・・)」
「・・・・・・・・・・・、、↓」
・・・、と、その場で一人静かに視線を落とし、
俯くミカサの背に・・・・
「どうしたの?ミカサ・・・;そんなところで下を向いて・・・
何か床に落ちてる?」
「サシャとの共同で任されてる食事当番まで未だ少し時間がある。
・・・・・・・・これから久々に一人でトレーニングを行おうと
思っていたが・・・・」
「あ、そうなの??それなら私も少し身体動かしたいから
一緒に・・・・・」
「・・・・・・しかし少し気が変った。先に水を浴びに行きたくなって
しまった・・・・・」ノソノソ・・・・・
「・・??;~~いや、これから汗かくのに・・・先に水浴びなの??」
「説明が難しいが。そういう気分だから。」
キニシナイデ
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
(ミカサが・・・“気分で”・・・・?)
ミカサの表情に普段感じる事のない僅かな起伏を感じ取り、
その場に暫し固まるヒストリア。
「それなら私もついてくよ!あ、あとそれから・・・」
ワタワタ・・・
「有難う。ヒストリア。」
―ミカサ退室から数分後―
~調査兵士団一時拠点・共同休憩室~
「なるほどなるほど・・・・それから?」
「最初の頃とどう違いがあるのか,,,なんとなく、ですが
手足に少し痺れが残る気がします。」
「・・・・痺れか・・・違和感程度かな?それとも・・・」
「それほど気になる感じじゃないです。
筆記用具の使用に支障が出たり・・・走るのが辛く感じる程では。」
「・・・ふむ。まあ"巨人化"というものが一体全体『何』であるのか、
その答えが細かいところまで分かってない以上、
私達に言えることは多くないけど・・・
あれだけ巨大なモノでも、キミとその巨人の身体は・・・
見た感じ、ちゃんと"繋がって”いる。
手や足・・・そしてもっとも複雑かつ綿密な神経の密集地とされる
頭部でさえも、しっかりとね。」
「ええ・・・・まあ、そうでなければ自分が思ったように
動かせる事も無いでしょうし」
「その通りだ。・・・・そしてそれだけの巨体の制御も・・・結局は、
君自身の、その“脳”によって統括されているに他ならない。
・・・そうなるとキミのコンディションが普段と何か違ったりすると
その様子も実に顕著に“巨人のキミ”の方にも現れるようになる」
ズイッ・・・
「えっと・・・?; は、はい・・・・
それは・・その・・・・仰る通りだと思いますけど・・・・・
済みませんハンジさん・・・・?オレ・・・今日何か・・・・?」
ドキドキドキ
「えーー・・・・?何か、だって>?・・・・それはキミ・・・
どちらかといえばこっちが聞きたいくらいなんだけど・・・・
なんというか・・・エレン。今日のキミはさ・・・巨人化した後も ・・・
どことなく、此方の呼びかけに対して一寸反応までの“間”が
あったよね・・・?」 ジリジリ・・・・
「・・・・・・・・!;」
「そう、何と言えばいいのか・・・一見落ち着いているようには
見えるんだけど、その実
とても気になることに気を取られてしまって、とても
落ち着き払った心をこの場に置いておく余裕が無い、
と言うような・・・・そんな雰囲気が」
-
- 28 : 2016/04/20(水) 23:47:08 :
「な・・・・何言ってるんですか・・・、別にそんな事・・・」
「ミカサだろ?」
「(っ)」
「あ!今ギクッとした!!!!
ホラホラ、素直に言えって!!」ガシッ
「“言え”って言われても・・・・オレに何を言えっていうんですか?!」
「とぼけたって無駄だぞ!?ミカサが気になって仕方ないんだろ!!
分かるんだよね~~、、ずっと見ててもしきりに視線が
チラチラとミカサの方へ寄ったりしてたし・・・・・
普段から彼女の気遣いをうっとうしそうにしている君にも
ついに心境の変化が訪れたんだ!!・・そうなんだよね?!」
ガバッ!!!
「い。。。いえ、あのですね・・・・;
それは・・、あいつの様子が最近ずっとおかしいのには
気が付いてたし、それでいつも以上にあいつの方に
目が行っちまってたのは認めます・・・・
でもそんな・・・ハンジさんが期待してるような事は・・・」
「・・・・ふ~~む。。
エレン、キミは・・・素直になんでも白状してくれるのは
いいんだけど・・・本当に・・・色々と破滅的に察しが悪いな」
ポリポリ
「・・・・・そう言われても・・・・↓↓」
ナンテイエバイイノカ
「ホラもう~、そんな風に落ち込まないで。
・・・・じゃあ年頃の乙女の心境が全く読めないキミにも
できるだけ分かりやすく・・・・彼女の心情というか・・・
内に渦巻く葛藤というものを教えてあげようか」
「・・・・・・・、、、」
「“動作はことばより雄弁である”
・・・・これは昔々ある人が残した、今のキミ達のような
人間にとって非常にタメになる言葉だ。」
「・・・・???」
「何も難しい話ではないよ。
笑顔と身振りはこう語りかける――――
“私はあなたと居られてこんなに嬉しい”
呼びかけに応じようとしない余所見は相手に伝える――――
“私はあなたにあまり良くない隠し事をしています”
・・・・・犬が人に可愛がられる所以さ。
彼らは人に気持ちを伝える“言葉”を持たない。
巨人と同様にね。しかし―――」
「・・・・・・」
「自らの気持ちを一切の偽り無く態度に表す事が出来る。
・・・・自然、我々も彼らが愛しく思える。
人間の世界には、“造り笑い”という概念が存在するが・・・
彼らの世界にそのようなものは無い。偽りの存在しない
彼らの笑顔に・・・私達の“心”は動かされるんだ」
「・・・・仰る事は理解できるんですけど・・・・
あいつとその犬の話に・・・・どんな関係が・・・・」
「 キ 、 ミ 、 は 、 ホ ン ト ~~~~~ッに鈍いな!!!
この場合・・・それだけ聞いたら大きな誤解を招きかねないけど、
キミにとっての“犬”は彼女だってこと!!私が言いたいのは
そういう事だよ!!!!」
「えっ・・・・?? ミカサ・・・いや、あいつが・・・・!?」
アタフタ・・・・・
「何をそんなに焦る必要があるのさ!!
知っての通り彼女は人間で・・・キミに己の気持ちを伝える
口も、心もしっかりもってるさ。・・・けれど彼女は・・・・
昔馴染みのキミの方が良く知ってるだろうけど、その辺
とても不器用だ。キミに対してなにか強い思いや葛藤が
あったとしてもそれをうまく伝える術を見出せないし、
もしかすると・・・・・」
「もしかすると・・・?;」
「彼女自身、自分がどうしていつもと違う状態におかれているのか
・・・それすら得心に至らない可能性だってある。
キミもミカサも非常に不器用で物分りが悪いから私が
とてもストレートな助言を与えてあげるよ!!(苛)
とっても簡単な事だから、理解したらそれについて
自身が如何するべきか・・・そこから先はキミが自分の頭で
考える事!!!・・・・いいかな?」
「りっ・・・了解ですっ・・・・・??;」ババッ
(何なんだこの状況・・・・:)
-
- 29 : 2016/04/20(水) 23:50:25 :
「彼女はね・・・生き物の抱く本能としてごくごく
当たり前の欲求に揺すられてるだけだ。
今の私を見ればどんなに鈍いキミだって
細かい説明は要らないだろ??
こうなる ためだけに・・・・・我々は自身の求める
最良のパートナーを見つけると度々そういった衝動を
抑えきれなくなる。彼女もキミも・・・・
その事実に気が付いてなかった、ただそれだけの事さ」
大きく突出し始めた自らの腹部を撫で、半ば呆れながら
そう言い放つハンジ。
「まさか・・・あの・・・・ミカサが。」
「不思議がる理由なんて無いハズだ。
元来、人 っていうのは繁殖欲求の塊みたいな生き物だ。
自然界でもそうだけど・・・戦って生き残る事が難しい生き物ほど
“殖 えようとする力”つまり繁殖力が強い。
それも、魚なんかみたいにいっぺんに何匹も増えられる
生物と違い・・・私らは知っての通り“ほぼ一人づつ”しか
増える事ができない。そうなれば当然年中真っ盛りな訳さ」
「・・・・兵長は・・・充分“戦って生き残る”力を
もってると思いますけど・・・・」
「・・・・いやね、幾ら“人類最強”とか言われても・・・
それは周りが勝手に囃し立ててるだけの事であって、
実のところ、あのリヴァイだってれっきとした“人間”なんだ。
150センチ級の巨(?)人じゃぁないんだよ・・・・?」
「・・・・それくらい理解してます・・・でも・・・・」
「でも・・・?やっぱりエレンは自分の中にあるリヴァイへの
憧れを崩したくは無い・・・・?
現実を見たがらないキミに対しては悪いけどね・・・
あいつもやっぱり可愛げのある、一個の人間なんだよ。
言わなくても分かりきってると思うけど・・・
“私の強要”だけでこうなる 事はなかったよ。
ヤツが本気でそれを嫌がってたら・・・
襲ってきた相手が女であっても容赦なく床の間から
蹴っ飛ばすだろうからね。」
「・・・・つまりハンジさんは・・・・
ミカサ がそういう 欲求を抑え切れなくて
普段と違った様子になってると・・・そう言いたいんですか」
「・・・キミにしては理解が早いじゃないか。
・・・ぁあ、くれぐれも言っておくけれど、幾らなんでも
それをいきなり言葉で問いかけるのは止しなよ?
キミならやりかねないから先に釘を刺しておくけれど・・・
普通の女子なら張り手打ちが飛んでくるのが当たり前だ」
「・・・・あいつはあまり・・ハンジさんが言うような
普通の女子じゃないです」
「・・・そうだよ。だから・・・言葉を用いずとも
その挙動と雰囲気だけで・・・・先程の話で例に挙げたように、
“身振りだけで”キミに自身の異変を伝える事ができた。
何も言葉で伝えられてない筈のキミは・・・本能レベルで
ここ最近の彼女が気になって仕方が無かった。」
「・・・・・・・」
「これは強要してるわけでもせかしてる訳でもない。
――ただ彼女は・・・・キミに対する自らの心 の容 を徐々に
変えようとしている。それだけの事なんだ。
近々互いの人生を大きく左右する戦いが視野に
入ってきている今みたいな情況なら・・・
寧ろそうなるのは必然だ。
ここで重要なのは・・・・
キミにその気持ちを受け止めて上げられる気概が
あるかどうか・・・それだけだ」
-
- 30 : 2016/04/20(水) 23:54:07 :
-
「・・・・・・ハンジさんはそういいますけど・・・・
オレはやっぱりあいつの口から直接そう聞かない限り
とても信じられません」
「ぁあ、それで構わないと思うよ。
・・・“今は”ね。これからも、状況次第で彼女と近づく機会は
どんどん増えてくる事になる。その度にキミは・・・・
今私が言った事を頭の片隅においといてくれるだけでいい。
きっと彼女がキミにどういった気持ちを
抱いているのか・・・・遠からず鈍感なキミにだって
理解できるはずだからね」
「・・・・・そうですか・・・・。でも、いくらミカサが
そんな突拍子も無い事を考えてたとしても・・・・エルヴィン団長の許可が
おりるとは思えませんが」
「(その団長本人の悲願でもあるのが
キミとミカサの関係成就であるだなんて・・・とても言えないが)」
「とにもかくにもコレだけは覚えておいて欲しい。
“キミと彼女”のつながりは・・・現時点の壁内において、
この上ない“人類の希望”であるという事をね。
“アッカーマン”の血族である彼女と、
“壁の中ではない何処か”の記憶をその身に宿すキミなら・・・」
「分かってます・・・それについては幾らオレでも」ムスッ・・・
「そう卑屈にならないでよ。大体キミは
何が不満なんだ?あんなに可愛くて綺麗で
おまけに頭も良くてキミより断然力持ちの女性に
ずっとずっと好意を寄せられ続けて・・・それでどんな不満が・・」
「女に護られっぱなしで情け無いと思うのは男として
当然の感情ですよ!!??」
「そこはほら・・・・;ちょっとくらい大目にみてあげなよ。。
あの腹筋と歪みねえ肢体を御覧よ;
幾らアッカーマンという特異な家柄が影響していたとはいえ・・・
並みの努力で女性が手に入れられるモノじゃ無いよ、
あの五体は・・・・」
「尚更複雑ですよ!!!;;オレだってあいつに護られっぱなしなんて
まっぴら御免だから、死に物狂いで兵団に入ってからも
鍛えまくったのに・・・・!!!差は縮むどころか離される一方で・・!」
「寧ろそこまでしてキミを護ろうと必死になってくれる
彼女の意気込みを素直に賞賛してあげる気持ちとか・・・
そういうのは無いのかな?;キミの頭の中には」
「無いです!!!今のところ!!!!!」
キッパリ!!
「(即答しやがった・・・)まあ、そういう訳(?)だからさ・・・・
私の話、全てを飲み込む必要は無いから・・・・
以降、キミも出来るだけ彼女の事を気にかけてやっては
くれないかな。」
「気にかけるも何も、ふだんからついてまわって来るから
気にせずには居られませんよ・・・・;」
「“そうじゃない”・・・・って、もういいや・・・;
じゃ、きょうの検分はこれでおしまい!!夕飯まで
もうすこし時間もあることだし・・・・
キミは部屋で大人しくしてなさい」
「・・・・はい。十分な体力は残しつつトレーニングはしますが」
「はいはい;」
-
- 31 : 2016/04/21(木) 00:03:14 :
-
~それより少し前~
~炊事場周辺~
「っ・・・・!! ハァっ・・・・・ はぁっ・・・・
ッ・・・・ぁあクソっ・・・・心臓に悪ィっ・・・・!!!真っ隣にいて
全然気が付かなかったぜ畜生・・・・・・・!!」
それだけ周囲へ向ける注意力に余裕すらなかった事実を
直視しようとしない彼に背後から語りかけて来た声は・・・
あまりに無神経かつ、彼自身の持つ緊迫感とは反対側に居る
感情を分かり易く表していた。
「おや・・・・ジャン坊や。そんなに慌てて何処へ行く途中ですか?
手が空いてるなら是非ともお手伝い願いたい事があるのですが」
モゴモゴ・・・・
なにやら口にモノでも入れているのか、
あまりハキハキとしない声で語りかけてくるサシャ。
「(飴玉か・・・?)うるせえ。飲み食いしながら
歩き回るのは行儀が悪いから止せって親に習わなかったのか。
・・・・あとその呼び名を二度と口にするな。
どこから手に入れたか知らねぇが兵長に密告して没収させんぞ」
「?????・・・・・あなたが何を言っているのか
私にはちょっと理解できませんが」モゴモゴ・・・・
「とぼけんじゃねえ!!!お前が今、そうして
隠す気も無く口の中で転がしてる“ソレ”も・・・
どうせつまみ食いだろ!!!!今日の食事当番は・・・・・なるほど、
お前とミカサだったからな。
大方砂糖の塊とか・・・なんかそんなのを
くすねたとか、そんなトコだろ・・・・・ぁあ?」
「、、!ぁあ、なんですか、ジャンも“コレ”が
欲しかったんですね、なら素直にそういって下されば
一個くらい差し上げましたのに!!!(ゴソゴソ・・・)
安心してください。“コレ”は盗品でもなんでもなく・・・
私が自分で調達した“貴重な食料”ですから。
密告なんかされても何も困る事は無いです」スッ・・・・
まったく悪びれる様子も見せず、なにやら瓶詰めの中から
1つの球体を取り出してその掌に転がすサシャ。
「・・・・・自分で“買って”きたのか・・・・?
何時・・・どこでそんな余裕があった。食事当番任されてる
お前は・・・食糧調達で森を駆けずり回ってただけだろうが」
「ええ!ですからあなたが言う通り、“狩って”きた獲物の
・・・・その副産物がコレなんですって。ほら、貴重な
ご馳走ですから、普通は絶対に人にあげたりしないんですが・・・
今日は特別にあなたにも一個だけ分けてあげましょう。
今日は大漁でしたからね」ウキウキ
「おい・・・ちょっとまて芋女。
俺とお前の会話が・・・さっきから今1つ噛み合ってねえ。
まず1つ聞くが・・・その、お前が手の上に乗せてる飴は・・・
どこで手に入れた。そいつを聞かない限りそんな
怪しげな色した飴玉を不用意に俺が口にするとでも・・・・」
「飴玉・・・・?;いえ、ですから何を言っているのですかあなたは・・
見て分かりませんか・・・?;どこからどう見ても新鮮な
“ウサギの目玉”にしか見えないじゃないですk.....
「ってめッッ....!!!!!
なんつーーモン人に食わせようとしやがる!!!
今お前・・・普通に笑顔でオレに手渡そうとしてたのか!!!?
そんなモノを!!!??」ギャァァアアア!!
「ぇえ!!!こんなに貴重なお宝を分けてあげようという
この私の寛容な心を理解できないあなたという人間が、
私には全然・全く理解できません!!!」コンナニオイシイノニ!
モゴモゴ・・・プチッ (ゴクン)
-
- 32 : 2016/04/21(木) 00:08:37 :
-
「~~~~~~!!!!!
色々と突っ込みたい気持ちを抑えて冷静な意見を1ついいか。
お前・・・そりゃ大丈夫なのか??いくら晩飯の
材料調達を一任されてるからっつっても・・・・狩猟の許可まで
下りてるのかよ」
「その辺は問題なし!です。
ほら、あなたが覚えているかどうか分かりませんが・・・
“指令に献上するお料理”を作ったあの時同様に・・・
団長その他からちゃんと狩猟の許可はいただいてますから。
こんな時位・・・皆さんの元気を取り戻す為に
少し位お肉が食卓に並んだっていいと私は考えます」ウンウン
「・・・それでウサギ肉かよ・・・・(溜息)」
「ウサギさんは体も小さく食べられる部分は思いのほか
少ないですからね・・・例え目玉といえど無駄には出来ません。
リスも相当数確保しましたが・・こちらはもっと小さいので」
「リスの目ん玉 も喰らうのか・・・?お前は;」
「・・・いえ。流石にそっちは小さすぎて難しいので」
「(嫌な溜息).....」
「取り出したのうみそに塩をふって食べるのが極上です///」
(´q`*)ジュルリ・・・・;
「寄るんじゃねえぇぇええええええ!!!!」
ゥワァアアアアアアア(;゚Д゚)アアアアアァァァ!!!!
「な、なんて不躾なジャン坊やでしょう!!!
せめて捕食者として仕留めた小さな命を余すところ無く
頂こうと言うこの尊い考え方が理解できないとは・・・・!」
アナタソレデモニンゲンデスカ!!!
「う、うるせえ!!!
まともな事言ってるように聞こえなくもないが
喰い方位少しは気を遣えよ!!!!
お前ら狩猟民だっていくら仕留めた獲物を大事にしましょう
なんて綺麗ごとをのたまってても、糞が詰まった部分を
好んで喰うか??!喰わねえだろうが!!!! ぁああ!!?」
「ぅむむっ・・・?!!?
そんな屁理屈を言いますが・・・ジャン坊や!!
じゃあ、あなたの大好物“オムオム”は・・・・!
鳥の糞が排出されるのと同じ部分からこの世に
産み落とされた・・・鳥の全身を形作る一切合財が
詰まった“卵”を使うことを前提とされた料理です!!!
よってあなたのその言葉に一切正当性は無いと私は主張します!!!」
意義アリ!!!!
「お前の頭脳をどう回転させたらその文句が出てくるんだ!!??
普段から真面目にその考察力を活かして見せろよこの芋女が!!!
あと何度も言わせるな!!!!オレの名前は“ジャン”であって
“ジャンボ”でも“ジャン坊や”でもねえ!!!!!」
「~~~~~~!!!!」
イライライラ・・・
「~~~~~~!!!!」
ヌグググ・・・!
グゥ・・・・・
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
-
- 33 : 2016/04/21(木) 00:12:09 :
あまりに激しくいがみ合っていた為、不意にもれたその
腹の虫が果たしてどちらの身体から響いたものかも
解せずに・・・・
「止めだ・・・・馬鹿馬鹿しい。
とっとと飯を作るんだろ・・・・オラ行けよ芋女。
肉とかはまだいいが、シチューに目玉とかマジで入れるなよ」
「言われなくても・・・・今日の品目はシチューの予定では
ありませんから。ご安心を。」ムスッ
「・・・・・しかし・・・・・・」
ジャンの脳裏に思い出されたのは、先程のサシャがふと
口にした一言を切っ掛けに思い出された一件。
「“指令の夜食勝負”か・・・ンな事もあったか・・・・
・・・・・懐かしいな・・・・・。」
「ぇえ・・・・・ありましたね、そんな事も。」
「結局俺の出した家庭の味が圧勝したわけだが」
「よく言います。普段口にしていた食材への感謝を
おろそかにしていた私が大声で言えることでは無いですが
あのお肉だってなかなかの味でした・・・・!」ムムム
過去を思い出しながらも未だにいがみ合っているようにしか
見えない二人ではあるが・・・二人の中には凡そ変わらない
感情が抱かれていた。
・・・壁の奪取はおろか、壁内における支配図も今とは
まるで異なる、仮初の平和でしかなかったが・・・・
あの頃の自分達は未だ・・・・・
「(まだ・・・あの頃の私達は・・・・)」
「(平和だったよな・・・・オムレツどころか人間 の
上手な料理の仕方を知る事になるとは思ってもいなかった)」
「「・・・・・・・・・」」
無言で交差する尖った目つきと垂れ目がちな瞳。
「・・・・なんだろうな、不思議とお前が今
俺と同じような事を考えてんじゃねえかって…そんな気がするぜ」
「そうですか。それはそれは」
「・・・・で、お前は俺にさっき何を言おうとしてたんだ」
「・・・・??え?」
「もう忘れたのかよ・・・鳥頭3歩って言葉は
割とマジなんだな・・・・・;
お前、自分で言ってたろ・・・手が空いてんなら
俺に手伝って欲しいことがあるだのなんだの・・・・
そんな事言ってた気がするのは俺の気のせいか?」
-
- 34 : 2016/04/28(木) 15:17:09 :
「 ! ...ああ!!
そうでしたそうでした!私すっかり忘れていました。
実はですね・・・・いつもいつもミカサが気になって仕方がない
あなたに、今日は私からあなたへ丁度良い提案があったのです!」
フフン!
「・・・・・ぁ?」ジロリ・・・
「まあ、そう怖い顔をなさらずに。
うまくすればあなたはミカサとお近づきになれるチャンスかも
しれませんし、・・・ジャン、あなたの“得意の技術”を活かせば、
私達が今夜作る予定の“ある料理”はそれだけ完璧な姿に
近づくことになるので・・・これは互いに有益な話になると
思うのですが」
「・・・・・話が見えねえな・・・・?
とりあえず・・・・・詳しく話を聞かせてみろよ」
―調査兵団臨時拠点・浴場―
ザバァッ・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
普段から口数の少ないミカサだが、そんな彼女の寡黙さを
考慮して尚、いつも以上に物憂げな何かを感じて
浴場までの付き添いに踏みきったヒストリア。
「ねえ、あの・・・・ミカサ。」
「・・・何か」
「あの・・・最近あなた・・・少し元気ない・・・?気がするんだけど・・
それは私の気のせい・・・かな」彼女 の心境の変化が・・・どういった物事に対して
引き起こされているのか、それ自体に関しては彼女 も
簡単に予想できていた ・・・・ただ、
-
- 35 : 2016/04/28(木) 15:18:38 :
「色々と忙しいだけでなく・・・私自身の“生きかた”を
どの様に決めていくべきか見つめなければいけない時期に
差し掛かっている。・・・・そのせいでヒストリア、あなたには
こうして要らない心配をかけてしまっているようだが・・・
・・・大丈夫。私は・・・元気がない訳ではない
、、寧ろどちらかといえばとても元気だ」ウン
相変わらずの無表情でその様に述べるミカサだが・・・・
やはりその顔には、ヒストリアの目から見て
どうにも釈然としない一筋の影が纏わり付いたまま、
拭い去れていなかった。
「それってやっぱり・・・あの、この前の・・・
(寧ろ全然元気って・・・とてもそうは見えないから
こうして気になってるんだけど)」
「・・・・そう。あれからずっと・・・エレンが目の届く
場所にいるだけで・・・・とても落ち着かない。
何も疚しいことをしている訳ではないのに・・・
全身の緊張が解けない...。。(ザァッ・・・)
私がこんな状態ではいざという時にエレンを
守れない。・・・・とても困っている」ググッ・・・
桶に掬った一杯の湯で頭から全身を洗い流したミカサは、
前髪から滴り落ちる雫を気にも留めず、自身の右手を閉じて、
開いてを繰り返す。
その動きを見つめる伏せられた双眸に、若干の戸惑いと
彼女にしては珍しい苛立ちの色を浮ばせて。
「あの・・・ミカサ、それって・・・・・」
単なる“恋煩い”・・・なんじゃ・・・・
そこまで考えて、思い描いた言葉が口をついて出ない様に
飲み込むヒストリア。
「(そうか・・・よりによって“ミカサ”じゃ・・・・
普通の人とエレンに対する恋愛感情や、
相手と自分の立場とか、そういう考え方も違うから・・・
それがどういう物なのか・・・分からないのかも)」
相手が“ミカサ”となると・・・普段女子の間内で行っていたような
恋愛話のノリで助言を与えてもそれが彼女の理解に
直結するとは思えない。そう考えたヒストリアは、
もう一度頭の中で目の前の彼女にかけるべき言葉を
取捨選択にかける。
「(少し・・・恥ずかしいけど・・・相手が“ミカサ”だったらここは)
ねえ・・・ミカサ?こないだの団長の話から・・・やっぱりあなたも、
エレンに対する思いとか・・・そういうのが強くなって来てる感じ?
ぐ・・・・具体的に言うと・・・あの、ほら・・・え、エレンと・・・///」
「・・・・子作り?」
「う、うん!:そうとも言うかな!!でも、
そういう具体的過ぎる言葉じゃなくっても・・・ね??;
たとえば“結婚”とか・・・その・・」ストレートスギ!!
-
- 36 : 2016/04/28(木) 15:20:27 :
-
「・・・何故?私は・・・事実、この所ずっと
エレンと子作りがしたくて仕方が無い。
今もこうしてトレーニング前にも関わらず、
妄想で湿りきった局部が気になってしまい・・・
水浴びに来てしまうほど落ち着いていない。」ドーン・・・・・
「―――――」
(絶句)
青い玉石のような目を丸くして、
等身大愛玩人形のように立ち尽くすヒストリアに向けて
休む間もなく続けられる偽りなき真意による弾幕攻撃。
「私は・・・たとえば訓練兵団で平時から寄り添いあっていた
あのふたり の様に・・・恋人らしい振る舞いとか
そういったものよりも寧ろ・・・・・具体的な繋がりを
欲しがっている。
しかし、団長に進言されたあの時、
あれだけ一方的に断言してしまった手前
・・・今更こんな感情を露 にするわけにもいかない。
・・・だから困っている///」(溜息)
彼女の言葉に一切の嘘や偽りは無く、
言葉を紡ぐその顔に、唇に。昂りの証として
若干の上気は見られたとしても、反面、欠片も恥じらいの色は
浮んでいない。・・・それがさも当たり前といわんばかりに。
「・・・・随分・・・・思い詰めてるんだね・・・・??////」
ドキドキドキドキ・・・・
「。。(頷き)
今週に入って既に3回目だ。」
「・・・・??;」
「もう3回も・・・エレンを夢の中で襲ってしまった挙句
布団を洗う羽目になっている」ハァァ,,,,
この告白に関しては我ながら痛恨の極みとばかりに
本気で頭を抱えて嘆くミカサ。
「(最近やたら布団をマメに替えて干してると思ったら・・
まさかそんな・・・・;)でも・・・まさかミカサがそんな・・・ねえ?;
すっごく意外・・・。訓練兵の時からミカサはエレン一筋って
決めてたハズだけど・・・別室で恋愛絡みの話してても
全然浮いた話出てこなかったじゃない。」
「私の部屋は・・・同室がアニとミーナだった。
ミーナにはそういった歳相応の関心もあったようだが・・・
知っての通り“アニ”は・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
僅かな負の感情を眉間に現して俯くミカサ。
その先に紡ごうとした言葉は果たして、
自身の立場、目的を偽って反逆の機会を伺っていた
仇敵に対する言及か、それとも実際の年齢を偽っていた
可能性を示唆する言葉か。
-
- 37 : 2016/04/28(木) 15:22:28 :
-
「・・・・申し訳ない。今・・・“あの女”については話の内容と
何の関係も無かった。
・・・要するに私の居た部屋の環境では・・・そこまで
男子に対する恋愛話が盛り上がる要素が無かった。
そういう事。」
「・・・・・・・・・・・・」
隣り合った桶の湯船に肩まで浸かり、
普段の様子とは反対にミカサの独白に無言で聞き入るヒストリア。
「・・・ヒストリア。あなたがエレンの事を相応に気にしている事も
あれから大分理解できてきた。
それは・・・私の、この自発的な行動を示さない姿勢に
苛立ちを覚えかねない程に強い物だという事も」
「ファッ・・・・?!??!?!」ビクッ
バシャッ
話の矛先が、唐突に自らへと向けられたため
驚きにそのか細い全身を跳ねさせるヒストリア。
「前にも言ったと思うが・・・私にはエレンに対する
独占欲がある訳ではない・・・・いや、言い方を変えよう・・・・
寧ろ私は・・・・・・」ザッ・・・・
「っっ・・?!? ・・?!??ッ」
ビクビク・・・・
語りかけながら湯船を跨ぎ、傍に近づいてくるミカサに
ただならぬモノを感じたのか・・・極度の緊張を露にする彼女 に
一切の躊躇いも無く言い放ったミカサの言葉は――――
「“私とエレンの子”も見たいし、“あなたとエレンの子”も・・・
とても見てみたい。私は・・・“エレンの無事が分かる場所”に
居られればそれで充分だから・・・だから・・・・ヒストリア。」
ジリッ・・・・・
「ぃっ・・・・・/////ちょ、ちょっとストップ!!
ミカサ!!!流石にあなたそれはッッ・・・・//////」アタフタ・・・
バシャバシャ
紡がれる言葉と共にその顔を近づけてくるミカサを
必死に振りかざす両の手で引き離そうと牽制するヒストリア。
しかし、自身の真摯な気持ちを伝える為の行いとして
近づいているミカサは、降りかかる水飛沫にすら臆さない。
-
- 38 : 2016/04/28(木) 15:25:25 :
「・・・ヒストリア。私はこれでもわりと真面目に言っている。
普通の見方をしてしまえばそんな、結婚もせずに
子を設けるなんて常識から外れているようにしか思えないが」
ポタポタ・・・
「・・・・・・//////」
「最低でもエレンの家の地下室探索まで・・・
それが完遂するまでエレンを守り抜かなければいけいない
私と違い・・ヒストリア、あなたは」
「そんな・・・私は・・・私なんか・・・・;
エレンの相手は・・・あなたしか居ないって皆そう言うよ・・・!
絶対に・・・・」
「私は・・・そう思わない。あなたは立場上、その身に何かあっては
困る、とても重要な立ち位置に居る。・・・つまり私などより、
“身重になった際”の安全確保は確実に行われる。
あなたにこそ・・・私にとって何より大事な“エレン”の
跡継ぎの産出を引き受けてほしいと考えてしまう・・・・。
・・・・それも結局は私個人の勝手な都合でしかないが。。」
「~~~~・・・・・」
「そこに、“あなたからエレンに向けられる好意”も
確かに存在すると分かっている今・・・その様な事を気負いする
必要も無い。・・・・・もう一度言おう。ヒストリア?」
「・・・・ダメだよ・・・そんなの....;」
「ダメじゃない。団長も・・・この私も、それを望んでいる。
勿論これに関してはもっとも“本人”の気持ちが大事だが・・・
『エレン』も、きっと今のあなたが本気で気持ちを伝えれば
それを拒否したリはしないはず。次の作戦が始まるまでに・・
是非あなたからも本気でエレンにあたってみてほしい」
「何で・・・“次の作戦まで”・・・なの?」
オドオド・・・・
「・・・、それは当然“私もエレンも”、
戦いに身を投じる以上、いつ何がその身に降りかかるか
知れたものではないから。・・・縁起でもないように
聞こえるかもしれないが・・・“何かある”前にエレンには
やれる事をやっておいてほしい。
もう一度言うがこれは・・・・・・」
「私からあなたへの真剣なお願いだ。
あなたという一人の人間を・・・大事な同期の仲間として、
戦友として、・・・それから・・・・友達として。
私にもしものこと があった時の為に・・・
もっとエレンに接しておいて貰いたい。
これは、エレンに抱く好意があると素直に伝えてくれた
あなただからお願いできる事だ」
「お願いって・・・・そんな事急に言われても・・・・」
ウジウジ・・・・
「・・・・・・・・」
このところ自分の思ったことは何でもハッキリと口に出来る様になった
彼女にしては珍しくしどろもどろとした返しを受け、しばし無言で
彼女の顔を凝視するミカサ。
-
- 39 : 2016/04/28(木) 15:27:46 :
「・・・意外だった・・・ヒストリア・・・、
名前を偽らなくなったあなたの物腰なら、もっと私の言葉に対しても
明快な答えを出せると思っていたが・・・・・今のあなたはまるで
・・・まるで“前のあなた”のような・・・」
その脳裏に蘇るのは・・・兵団でも神格化されるまでに
お人好しとされていた、在りし日のクリスタ・レンズの姿。
「・・・・違うよ・・・・・、、?私、別にあなたに気を遣って、
あなたを立てようとして、ただそれだけでこんな風に
悩んでるんじゃない・・・・。
正直な気持ちを言うけど・・・私だって・・・
私だってエレンの事は好きだよ」
「・・・子供も作りたい程に?」ゥン?
「 っ//////」フィッ↩
「・・・・?ヒストリア・・・・?聞こえていないの>?
あなたはエレンと・・・・」ズズィッ
「きっ・・・聞こえてるよッ!!!!
聞こえてるけど、態々その聞き方は無いんじゃないかな!!?
その確認ってミカサ的に必要!!!???////」カァァァ・・・・
「・・・・とても重要。私的に。
私という人間が此処にいるのは・・・お母さんとお父さんが
出会ってくれたお陰。二人が子を残したいと思えるくらい
想いあって居なければ・・・・・私という人間は
今此処に存在しない。 もっと言ってしまえば・・・
エレンとも出会うことが出来なかった。
・・・・そして」
「そして・・・・?;」
「私の“お母さん”は・・・・私と同じ、
この血筋の物珍しさ・・・それだけの為に攫われそうになり、
抵抗したから殺された。お父さんに至ってはその時部屋に
押し入るのに邪魔だったから、ただそれだけで。
・・・・二人とも・・・・
本当に突然巨人でも何でもない、“ただの人間”に命を奪われた」
「・・・・・・・・」
-
- 40 : 2016/04/28(木) 15:41:22 :
-
「時々・・・よく考える。私のお父さんと、お母さん、
・・・二人が出会わなかったら。いや・・・・
出会ったとしてもそもそも私を産んでくれなければ・・・
“私”はどうなっていたのだろう・・・と」
「それは・・・みんな考えると思うけど、
どんなに考えたってどうしようもないと思う」
「・・・・ヒストリアの言う通りだ。
だから私は・・・団長の推進に拒絶の色を見せてしまった
その日から・・・急激にエレンの夢ばかり見るようになってしまった。
・・・正確にはエレンの夢は毎日見ているのだが・・・
もっと、より過激な夢を。
きっと私の心の底にはまだ、エレンをこの身に求めてやまない
欲求が燻っているから。」
「そんなに悩むなら・・・もういっそミカサが今日すぐにでも
エレンに迫っちゃったりしてみたほうが・・・良くないかな?」
「それが出来ないからこうしてあなたに頼んでいる。
私のなかで今・・・“エレンが生きた証”をこの世にのこしたい、
その気持ちは以前より大きくなっているが・・・それ以上に
エレン自身の身を守る事こそが私の全て。」
「・・・・・・・・(参ったな・・・全然退いてくれそうにない)」
幾らやんわりとした物腰で当たり障り無く拒否しようとも
簡単には首を縦に振ってくれそうにない目の前の同期を見つめ、
さて、どうしたものかと考え込むヒストリアにとって、
期せずして助け舟となる一声が響き渡る。
「ォ~~イ!ミィ~カァ~サ~~~??
ヒストリアも一緒ですか~~??
随分長風呂ですが、大丈夫ですか~~!
夕飯の下拵え!!もう始めないと
時間的に~~!!!」ケツカッチンデスヨ!
風呂場の覗き見防止柵を越えて響き渡る一声。
「・・・・サシャだ。・・・そういえば・・・今日は私と
二人で当番だった。大事な話の最中だったが・・・
ヒストリア。ひとまず話はここまで。
続きはまた後で」スクッ・・・
ガコッ・・・
「あ、、いや、あの、後でとかそんな・・・・・
(続きとか勘弁してほしいよ・・・!)
・・・・って、ミ、ミカサ・・・?あなたそれ何してるの・・・?」
話の続きという言葉に怯えつつも、同時になにやら
桶を風呂場の石畳において三歩下がるミカサを怪訝な目で
見るヒストリアだったが・・・
「・・・・っ」タタンッ
ガしっ・・・・
ググッ・・・・!
「--っ・・・済まないサシャ、すぐ出るつもりだが・・
例の・・・件は、、、、、
「 ∑(;゚Д゚) 」
(゚o゚)<ぁ....
「m(。(。) m 」
...ミカサが行った事は実に単純な事で、
桶を踏み台にして跳躍する事により、風呂場外周を
囲っている覗き見防止の柵(リヴァイ作)に両腕をかけ、
懸垂の要領で自身を引き上げ、
外から呼びかけてきたであろうサシャに半身を露呈してから
すぐにここから出るつもりである意志を伝える、
・・・・ただこれだけの事であったが
「・・・・ジャン。あなたもすでにそこに居たとは。これは失礼した。
(シフトダウン↓)
・・・・ということはサシャ。
例の話 は既にジャンに・・・・?」ムニュゥ・・・
上がる瞬間に勢いで晒してしまった上半身を、
ジャンの視線を考慮して胸の辺りで腕組みして柵に捕まるミカサ。
起用に胸の半分位は隠れているものの、
彼女自身の体重が掛かって乳房が湾曲しており、
大分見るものに扇情的な印象を与えかねない形に寄せ上げられて
しまっている。
・・・見るものによっては此方の方が遥かに目に毒かもしれない。
-
- 41 : 2016/04/28(木) 15:59:12 :
-
「っ・・・・・・!!っ・・・・・・!!!??!??」
(モロに見ちまった・・・ミ・・ミミ・・ミカサの・・)
バクバクバクバク.....!!!
「ええ!ジャンにはきちんと協力の要請に関して
ご理解ご協力を・・・・ ってミカサあなた!!!!///
ジャンも居るんですよ!!?裸で乗り出しちゃ
はしたないです!!??」ホラ!ハヤクヒッコメテ!!
「私はそれほど気にしないが・・・・
それに頭頂部が隠れていればまだセーフだと・・・
昔ユミルに聞いた。ちゃんとその部分は腕で
隠れているはず。」ホラ、ミエテナイデショ
ムニュ・・・
「今一瞬全部見えちゃってませんでしたか!!
全然アウトですよ!!!?」(;゚Д゚)
「ちょっとミカサ!?向こうにジャンが居るの!!!?
流石にそれはまずいって!!サシャの言う通り
早く降りて!???;(エレンを想うミカサの心もちゃんと
気遣えるジャンからしたらそんなの・・拷問だよ!)」
「ともかくポッチが隠れててもアウトなものはアウトです!!
そこから早く降りて下さいミカサ!!///」
「(ぅぉっ・・・み・・・ミカサの・・・“谷間”が・・・・!!!!)」
マジマジ・・・・
「ッ!!!??じゃ、ジャン!!!!あなたもあなたですッ!!!
乙女の半裸をなにマジマジとみつめてんですか!!」
ペシンッ!!!
「ぐぁっ....!!! 目がッ・・・・目がぁぁああああ!!!!」
容赦の無い唐突な平手打ちを顔面に喰らい、
片目に指が入ったことにより悶絶必死の激痛にのた打ち回るジャン。
「それでは・・・・サシャ。
私はすぐに体を拭いて出る・・・ので、先にジャンをつれて
厨房へと向っていてほしい。
“肉”の下ごしらえは・・・・?」
「え、えぇ・・・それは抜かりなく。
ただ、量はそれほど重要ではないというあなたの言葉をうけて、
鶏肉の代わりにウサギさんを使用する積りですが。
大丈夫ですか?鳥4羽分くらいしか量的には
確保できませんでしたが」
「ならば結構。“中身”の具として疎らに感じられればそれで
充分だ。・・・では後ほど厨房で。」ノシ
-
- 42 : 2016/05/01(日) 23:54:34 :
「大体ミカサあなた・・・“ユミルに聞いた”って言ったけど・・・
それ、どんな流れ・・・・?(汗)」
「水着の話をしていた時だ。
かねてより女子はあまり人前で肌を露出するべきではない
という風潮に私自身が疑問を抱いていたのと・・・・、
男子と違って“何故か”胸部も隠さなければ
ならないので、何故隠さなければいけないのか?というのと、
何処まで隠せていれば大丈夫なのか?という話をした事がある」
ヒョイッ ペタン・・・
「そんな質問を・・・サシャじゃなくあなたがしたんだ・・・」
「今は周囲の風潮をある程度理解できてきたから
私にだってそれくらいの恥じらいはある・・・。
しかし、当時は私も本気で理解できなかった。
“恥ずかしい”と思うのは・・・そこに隠したい気持ちがあるから。
私は・・・エレンを守り抜く為に鍛え抜いたこの身体に、
一切他人に見せて“恥ずかしい”と思うような部分は無い」
ムフー・・・・
「ミカサ・・・あなたの思う“恥ずかしい”と
みんなが言う“恥ずかしい”は大分違うものだと思う」
「流石にそれくらいなら私も理解できてきた。
だから、今だってしっかりジャンに見られて常識の無い
人間と思われないように・・・半分位は隠した。」ダイジョウブ
「思いっきり一瞬見られてたよね・・・多分」
「細かい事は気にしない。
・・・ではそういうことで、私はサシャとの用事があるので
今から向わなければならないが・・・話の続きはあとで
きちんと。」
「だからさ・・・何度も言うけど私は・・・
エレンと一緒にいていいのは、あなただけだって本気で思ってる。
ダメなの?あなたがエレンの隣じゃ」
「今すぐそれが叶うならきっとそれこそが私にとっても最適解。
しかし世界は・・・――残酷だ。未だ、エレンが無事にこの世界を
生き抜くためには・・・私も“兵士”でいなければならない。
・・・・ヒストリア、あなたのような
“強くてしっかり前を向ける人”なら・・・エレンと共に、
子を護る“母”として居て貰う事に何も不安は無い。
それについても・・・一度本気で検討しておいてほしい。」
-
- 43 : 2016/05/01(日) 23:56:53 :
「・・・・それは・・・本気で困るよ・・・。
私の気持ち・・分かるでしょ・・・?分かっててそんな事言うの・・・・?」
「・・・勿論。あなたが・・・簡単にエレンを諦められない位
好意を抱いてくれているから、私もこうしてあなたに
頼み込んでいる。・・・それから・・・・」
「それから・・・?;」
「これは完全に私の主観だが・・。ヒストリア。あなたなら・・・」
「?」
「・・・・すまない、聞かなかったことに・・・」
「そこでお預け!??ちょっと、聞かせてよ!!
気になるよ!!!!!」
「では私はこれで・・・サシャを待たせる訳にはいかない・・・ので」
スワッ・・・
「ちょっ・・待っ・・・待ってよミカサ!!!」ザバッ
バタン・・・・
―脱衣所―
「(しかし、ヒストリアも・・・私がエレンに向ける好意に
遠慮するあまり、全くエレンに関してその気が無いわけでは
無さそうだ。・・・良かった。)」バサッ・・・
既に手拭で拭うべき部分はそれほど無い位に乾きかけた
自らの全身、主としては未だ水気が多く残る頭部を
拭きながら思案するミカサ。布に隠れていなくとも、
その顔を見ている者は姿見の中の彼女以外、この場には居ないが・・・
「(ヒストリア・・・あなたとエレンの子なら、きっと
私達人類にとって・・・大きな希望になる)」
その顔は、彼女の表情としては希少価値すら見出されるほど
貴重な・・・薄い笑顔に輝いていた。
-
- 44 : 2016/05/01(日) 23:58:26 :
~それから少し後~
―現・調査兵団拠点・厨房―
ガチャッ・・・
「待たせてしまって済まなかった・・・それはそうと、
サシャ。何故ジャンは目隠しされているのだろうか」
「・・・・・・(風呂場柵上での映像を脳内再生中....)」
「いえ・・・、先程ミカサは思い切り裸を見られてしまった訳では
ないですか。・・・ならばその直後でこうして顔を合わせるのは・・
幾らなんでも酷かと思いまして。ミカサだって・・・ホラ。
女の子なんですから」ネェ?
「・・・・ヒストリアに先程似た様な事を言われたが・・・
とても意外だ。サシャ・・・あなたがそんな事を気にするなんて」
「わッ・・・!私だってっ!!ミーナやクリスタ他、
色々な皆さんに教わってきた教訓を復習してですね・・!
町娘の流儀というか、何が恥ずかしい事なのかとか・・・それくらい
日々勉強してるんです!!///」フンッ//
「心遣いは感謝する・・・だがジャンの目隠しは必要ないので
取って貰って構わない。・・・なによりそのままでは
“調理の協力”にあたっても色々と不便が生じる」ギュッ・・・ ハラッ
「っ・・・ぉあ・・・・っ!! 、、 あ、お、オイミカサ!??」
アタフタ アタフタ
唐突に開け放たれた自らの視界と、
つい先程、不可抗力とはいえあられもない姿を
目の当たりにしてしまった相手を至近距離に認め、
惑いを隠せないジャン。
とりあえず言うべき言葉を口に出そうにも・・・
サシャの呼びかけに応じて足早に身支度を済ませた為か、
または普段からこのスタイルなのか・・・
薄手のカットシャツのみで覆われた上体の、
とりわけ肌着も何も身に纏っていないこの場面。
万物に働く理として、“重力”という摂理に従っている以上
そこまで己が存在感を主張する事は無いはずの二つの山脈が・・・
くまなく鍛え上げられた大胸筋に、または、日々欠かさず行う
ストレッチによって一切張りを失っていないクーパー靭帯の
支えの賜物か、見事に天を突くような勢いでジャンの両目をも
刺し貫いた。
―――無論言うまでも無く視覚的に。
-
- 45 : 2016/05/02(月) 00:01:37 :
「っ・・・あ・・・うわッ・・・・・!!!!////」
ガクガクブルブル・・・・・
当然局所に急降下し、滾る鉄血を抑えるのに必死になるあまり
前傾姿勢を余儀なくされるジャン。
例え服を着ていたとしても・・・先程の情景がしっかりと
目の前の彼女 に重なって見えてしまう為、
流石のジャンも押し寄せる良心と欲求のせめぎあいに
言葉すらロクに放てなくなってしまう。
・・・・・そんな彼を見て尚ミカサは
「・・・・・・?どうしたの・・・・、ジャン??
随分と顔色が良くない。それにすごい汗だ・・・・。
記憶が確かなら貴方は…エレン達と先に入浴を済ませているはず」
ダイジョウブ??
自身の出で立ちが目の前の同期にどのような
影響を与えているかなど一切関知しないといった顔で、ただその
落ち着くことすら満足に出来ない挙動に小首を傾げる。
「ぁ・・・ぁあ・・・・?そう・・・見えるか…変だな・・・ハハは・・ハッ、、ヒャ;」
ヒクヒク
「なんですかその変態っぽさ漂う不気味な笑い方は!!
どうでもいいで、・・いえ、よくないですが!!!
仮にもワザとでないとはいえ女の子の裸を見たんですよ!!
何か言うべき事があるのでは!!?」ペキポキ コリっ
グルルルr..
鳴れない関節鳴らしで手指から快音を立てながら垂れ目を
片側に吊り上げるサシャ。
「ぉお、オイ止せってマジで!!;(ササッ)
何度も言うが本当に不可抗力だったんだ!」
眼窩に走る激痛を思い出し、サシャの平手を警戒しながら
改めてミカサに向き直ったジャンは、そこでようやく
まともに言葉を紡ぎだす余裕を取り戻す。
そして――
「俺に何の非があるわけでもねえから謝るのは本位じゃねえが・・・
芋女の言う事も一理ある。
だからその…わ・・悪かったな・・・さっきは。」
何とか平静を取り戻してそのように口篭る。
-
- 46 : 2016/05/02(月) 00:02:43 :
-
「・・・・? 悪かったとは・・・何が」
目前より得られる視覚情報から、今尚先程の強烈なワンシーンが
ジャンの脳内ではフラッシュバックしている真っ最中である訳だが
そんな煩悩を何とか振り切って真摯な気持ちで述べた
謝罪の言葉でも、彼女 の得心はまるで得られなかった様で、
心底“どうして?”という顔で怪訝そうに顎を傾げられてしまう。
「(・・・だろうな・・・こいつは・・そういう奴だ・・・どうせ
どんな説明をしたって自分が何故謝られてるかなんて
理解しちゃくれねぇだろう。なら・・・)
なら言い方を変える。有難うな、イイモン見せてもらった。
とても見事な腹筋だった・・・・」シミジミ・・・
「・・・・・・?どういたしまして。
・・しかし腹筋くらいなら、渡河訓練や・・・そうでなくても
軽装に着替える際には何度も衆目に晒していると思うが。」
・・・イマサラ。
「そこに普段見えない部分までセットでついてくると
流石に壮観なんだよ。とにかく悪かった。
お前が慎みに欠ける奴だとは欠片も思っちゃいないが・・
芋女の言う通り、女子が男子に半裸を見られたら、
普通そのリアクションはおかしいんだよ。だからその・・・・
もっと気にしてくれ;」
「・・・?腹筋は特にエレンにも褒められているので
全く誰に見せても恥ずかしい部分ではない―――というより
寧ろもっと見て貰っても気分が良いくらいだ。(エッヘン=3)」
ヘルモノデハナイ
思いを寄せる異性からの切実な願いも、
どこかずれた感性を持つ彼女 には届く事叶わず・・・。
今はシャツの布地に隠れて見えない腰周りを誇張し、
無表情で誇らしげに上体の姿勢を正してみせるミカサ。
タイトなシャツの下には、たとえ見えなくとも104期卒の誰もが
クリスタの美貌と並んで今期最大の芸術品として疑わない
見事な岸壁が聳えたっていることは想像に難くない。
「(本当に・・・つくづく思うが・・・
あの馬鹿には・・・惜しい女だぜ。ここまで自分の事を
二の次にして日々鍛錬に明け暮れる女が他にいるか・・・?
おまけに座学でも、立体機動でも、、俺がコイツを出し抜ける
科目は一個もありゃしなかった。)」
「では・・・・時間に余裕も無い。 ,,ので
そろそろ調理の説明に移りたいのだけれど」
ソロソロ イイダロウカ
「ああ・・・そうしてくれ。」
一体なんだってあの死に急ぎの大馬鹿野郎は・・・
こんなにできた 女が傍に来るたびに虫でも
追い払うような態度が取れるんだ・・・?俺の常識的な思考じゃ
到底理解しきれねえ・・・・
-
- 47 : 2016/05/03(火) 02:29:15 :
~数分後~
「・・・・・・・オム・・・・ライス ・・・・・だと?」
「そう・・・」
「そうそう!ジャンの大好きなオムレツ ではなく、
その名もオムライス と言うのが・・・・
今回ミカサの情報を元にあなたの協力を得て再現しようと
している品目の名なのです!!」
「・・・・別にそこまでオムレツが好物だと
お前にカミングアウトした覚えはねえがな;...俺は。
・・・・しかし名前が似てて・・・俺にそんな声が掛かるって事は
そりゃオムレツと似ちゃいるがどこかが違う料理だって事か。
・・・まずそもそも“ライス”ってのは何だ」
「“ライス”とは・・・脱穀したある穀物を釜で煮詰めて蒸かし、
食べやすくした物。壁の外・・・とりわけ私の“お母さん”に
聞いた話では、『東洋』の主食はパンではなく・・・
この、“ライス”だったとか。
―――東洋での呼び方は“オコメ”」
「押し麦煮詰めた粥とかとは違うのか?」
「煮詰めるのに用いる水の量と・・・そもそも穀物の種類が違う。
“ライス”は・・・脱穀の度合いにもよるが、丁寧に殻を
除いたものはとても口当たりがよく、美味しい」ゴソゴソ・・・
ズシッ・・
「・・・・・・?」
持っていた目の細かい麻袋に入ったそれがジャンに手渡される。
中には純白の石粒のような・・・彼の目にしたことも無い
楕円形の穀物がぎっしりと詰まっていた。
「私もお母さんが育てていた品種を見たのは随分昔なので
確かな事はいえない。・・が、これはよく似た別の品種の穀物だ。
兵団に食料物資面で大きな協力関係にあるリーブス協会のつてで
仕入れてもらった。これだけの量でも同重量の鶏肉に差し迫る
高級食材.....」
「ファッッ!!!?????」ガタッ!!
「うぉっ・・いきなり飛び上がるな芋女!!」
「これが飛び上がらずにいられますか!!!
ちょっとミカサ!!!あなたの話で、その“オムライス”なる
ものが非常に美味だと聞いて、今回の計画に乗った私ですが・・!
それは、本当にローストした鶏さんを超えられる
ご馳走なのですか・・・・?と、私はあなたに問いたい!!
問い詰めたい!! (深呼吸)...小一時間問い詰めたいです!!!」
「・・・・おちついて、サシャ。」
ドウドウ。。
「フぅーーー・・・・フゥーーーー・・・ ...Σクワッ」
「あなたでなくとも・・・やはり普段ロクに口に出来ない
“肉”に対する憧れと、その満足度は大きいだろう。
しかし・・・この“オムライス”の独特な味付けと、
今までに皆が感じたことの無いこの食感は・・・きっと
満足してもらえる物だと自信を持って言える。
・・・・加えて、この“オコメ”だが・・・・煮詰めて
“炊く”という調理法の都合上、この状態よりも
結果的に、はるかに膨張する。」
-
- 48 : 2016/05/03(火) 02:31:37 :
-
「そう・・・・なのですか?」
「そう。それを考慮すれば・・・・この麻袋に入った分だけでも・・・
一応今夜の全員分をまかなう事が出来る」
「たったこれだけなのにですか!?」
「パンを思い出して欲しい。
あれは調理法からして全く別のものでもあるが・・・
しかし粉から、生地を練って、焼き上げる段階であそこまで
膨張する。・・・・この“オコメ”も水を吸って多少重く、
大きくなる。・・・・加えて腹持ちはパンよりも良い。」
「・・・う、嘘じゃないでしょうね・・・!本当の本当に!!?」
「こんな事で嘘はつかない」
「・・・・大体読めてきたぞ・・・つまりその“ライス”だか
“オコメ”だかってのを・・・本来挽肉だの野菜のコマ切れだのを
包んで作る『オムレツ』の中身にしたのが・・・・・」
「ご明察だ。・・・そこまで理解が早いなら、やはりあなたに
手を伸べたのは間違った判断ではなかった。」
「・・・そいつはどうも//
・・・で、そこまで分かったら・・・後はもう説明してもらいながら
調理に取り掛かっちまった方が良いだろうな。
結局俺が担当するのはほぼ仕上げのみでいいって事だろ。」
「そうなる・・が、一つ気をつけて欲しい事がある。」
「・・何だ?」
「この、“オムライス”だが・・・中身が細切れの野菜、
更に挽肉まで混ぜた“ライス”が具になっている、
主食でありながら副菜でもある、そんなレシピだ。
・・・・当然、オムレツよりも玉子焼きの被覆を破かないように
作るのが難しい。そこをジャンにはなんとか上手く...
「ぁあ、心配いらねえ、任せとけ。さっきの償いにしちゃ
代償が小さすぎるが・・・・・誠心誠意やってやっからよ。」
こんな・・・聞いた事の無い料理を、わざわざ協会経由で
食材調達してまで作ろうってンだ・・・
アイツにもっと美味いもん食わせて元気を出してもらいたいとか…
大方そんな事くらいしか考えてねえんだろうな・・・ミカサ は・・・・。
「・・・・・償い??」ゥウン?
「ホラホラ、あなたは気にしないでいいんですってミカサ。
それより私とあなたで中身の部分の調理にとりかからなくては!」
「・・・承知した・・・ではサシャ・・・まずは説明したとおりに
塩胡椒で下味をつけた兎肉を挽肉程度になるまで細かく叩いたら
この赤いペーストを...
・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・
・ ・ ・
・ ・
・
-
- 49 : 2016/05/03(火) 02:35:22 :
-
~数十分後~
「ぉ・・おふぉおお・・・・・!///;
これは・・・・まさしく空きっ腹には拷問ですぅぅ.....
(grrrrrr・・・・!!(※腹の虫))
あの・・・つかぬ事を伺いますがミカサ・・・?」(*‘∀‘)エヘ、エヘ♪
「つまみ食い・・・・・ダメ。絶対」(´・×・`)ビッ
「ちょっとくらいイイじゃないですかもぉぉお!!!!」ァアアア、イイニホイ!!
ジタバタ
「流石にこの人数分焼いてると手首がしんどいが・・・
もう終わりも見えてきたぜ・・・・・!(汗拭い)
しかし・・・・こりゃマジで匂いだけでパンが美味くなりそうだな。
ライスとかってのの味付けに混ぜてある・・・
なんだ?赤いソースと、乳脂肪をあえて炒める事によって
立ち込める殺人的なまでに食欲をそそるこの匂い・・・・。。
こりゃ食い意地汚れきった芋女じゃなくても空腹には毒だぜ。
・・・今頃拠点中の兵士が全員この匂いに夢中になってるだろうな」
ッヘッヘ...
ジュアッ・・・ パムパム
「ジャン!!あなたはいつも一言余計なんです!!
私、そんなに意地汚い人間じゃありません!!!(プンプン)
折角調理場に立つ男性という形で、普段あまり良い所の無い
あなたにいかばかりかの魅力を感じようかというこの場面で!」
カシャカシャ・・・ パキッ・・ カチャカチャ・・・
「よりによってお前に、しかもそんな限定的な魅力を
見出されてもな・・・・。・・・あっ・・ぉぃテメェ!!
今の随分雑に割っただろ!!!もっと丁寧に割れよ!!
殻の欠片が溶き卵に混ざっちまうじゃねえか!!!!」ジュッ・・ ジュァ・・
料理対決の後からも度々研鑽を重ねていたのか、
慣れた手つきでフライパンの上の黄色い膨らみを躍らせるジャンと、
相変わらず歯に衣着せぬ、その物言いに噛み付くサシャと・・・・
「ライスの味付けに使っているこの“ケチャップ”も・・・
私の手作りだ。こちらに関してはお母さんに作り方を
教わっていたし、材料も育てているトマト、玉ネギとこの厨房に
そろっている調味料が少々あれば簡単に作れる。」
焼き上げられた一人前が乗った皿を、相変わらず
淡々と仕事をこなす女中の様に手際よく運んで行くミカサ。
人数分の焼き上げを要する理由から、まとめて大人数の分を
調理する、といった横着ができないのがこのレシピの
難点でもあるが・・・、
ジャンの言葉通り、人数分の調理完了も大分先が見えてきた。
-
- 50 : 2016/05/03(火) 02:38:18 :
「さっき少し舐めさせてもらったたが・・・成る程、
野菜でこんな味の濃いソースができるなんてな。
・・しかしこの余った分はどうするんだ。全部ライスに
混ぜちまうんじゃなかったのか? ・・・結構余ってるが」
瓶詰めの中にある赤色のそれは、水と糊の中間のような
粘度をしており、ミカサが前以て調合、保存していた4つ分の
瓶詰めの内、未だ一瓶と半分程度の残があった。
「それには・・・別の使い道がある。直ぐに使わないと
腐ってしまうというほど足が速いわけでもないが・・・・
一応この場で使い切ってしまうので心配は無い」ゴソゴソ・・・
「?」
次にミカサが取り出したのは・・・薄さのあまり透けて
向こうが見えてしまうのでは、というような
不思議な材質でできた布のようなもの。
一見一枚の布に見えるそれは、よく見ると
袋状になっていた。
「何だそりゃ・・・・?」
「水を一切通さない生地でできた袋・・・。
皮でも布でもなく・・・特殊な樹脂から作られるそうだ。
これも協会から。」
そんな物を一体この場で何に・・・と、
ジャンが問いかけようとするより先に、手にした袋へ
瓶の中身のケチャップを全て落としたミカサが、
相変わらずの無表情で紡ぎ出した次なる一声・・
否、二声目の言葉は・・・・
全神経を手首のスナップへと集中させて料理に専念する
ジャンの心身を、暫しの間停止させた。
「この“オムライス”は、これで完成ではない・・・。
調理の仕上げは・・・ジャン、あなたに行ってもらう。
あなたの最も得意とする技術が、今、まさに此処で活かされる。」
「ぁ・・・・?いやお前・・・もうオムレツと同じ工程なら
これ以上先はねえだろが・・・・・?;技術って・・・この上何を」
「あなたが折角綺麗に焼き上げたこの表面をただそのまま
皆の前に出すのは惜しい。折角なので・・・・
ジャン、あなたにはこの“オムライス”の表面に、
“絵”を描いてもらう。・・・・絵画はあなたの得意分野でしょ・・?」
「 (顔面蒼白) 」
....ジュッ
「―――-・・・・ッアァ!!!!!!!!!っづぁっ!!!」ババッ
ガチャチャッ!!!!
あまりにも唐突な一言に、思わず手元が狂い、
木製の柄で保護されていない軸部分を握ってしまい、
自らの指を焼かれる激痛に飛びのくジャン。
...しかし運よく現在調理中だったオムライスは型崩れを
起こしていない様だ。
「・・・ジャン...!今の音では相当熱かったはず・・・・
大丈夫......?!」タタッ
「ぁあっ!!大変です!私、火傷に効く薬もってますから
部屋からもってきます!!! ジャン、水なら
桶にはってありますから、私が来るまで冷やしておいて
下さいね!!?」ババッ・・・ ガチャッ
-
- 51 : 2016/05/03(火) 02:41:53 :
「あっ・・・熱いのは当然熱かったけどよ・・・!
それよりちょっと待て!!!!お前の言葉に幾つか
疑問がある!!」
「・・・・?疑問?なんだろうか。気になる事があるなら・・・」
「まずお前・・・! ぉ、俺の趣味を・・・何時 ・何処 で何奴 に聞いた・??!?;」
ダラダラダラ・・・・
「・・・・趣味?・・・・これ は趣味だったの・・・・?」ゴソゴソ
フム?
「ファッ・・・・?!?」ビクッ
「そうか・・・なるほど、ならばいい趣味だ。
正直、こんな才覚を持っているあなたがとても羨ましい。
私も・・・こんなにうまく、エレンの顔を描けたなら//」
カサカサ・・ パラッ・・・
「( モノクロ化 )」
彼女にしては非常に珍しい恥じらい交じりの表情にも
驚くジャンであったが、それに関しては同時に口にされた
“エレン”というワードがそうさせたのであろうと断定し、
それ以上の余計な思考を一切斬り捨てるジャンの思考回路。
そう、この場で最も重要なのは・・・彼女が懐から取り出し、
折り畳まれていた状態から開かれた、その一枚の紙面である。
そこには・・・・紙面を手にする彼女 本人が
絵の中に閉じ込められたのかと見紛うばかりの・・・
見事な肖像が描かれていた。
「おまっッッ...!!!!!ど こ で そ れ を!!!!!」ガバッ!!!!!
ブンッ
「おっと。」ヒョイッ
カサッ
「はっ・・・離せ!!そいつをとっととその手から・・・!」ニジリ・・・
「何故。私がコレを手放して・・・あなたはそれを如何するつもり?」
「決まってんだろ!!!今この場で竈 の火にくべて
綺麗さっぱり消し炭に―――ッ!!!」ガバッ
「・・・ならば尚更その要求には応じられない。(ヒョイッ)
・・・そもそも何故・・・ここまで良く描けているのに
それを破棄しようとする?私にはあなたの考えている事が
今ひとつ分からない。」マジマジ...
ブンッ・・・・・ ...スカッ
-
- 52 : 2016/05/03(火) 02:44:36 :
-
「決まってんだろ!!(大事な事なので2回言いました)
こそこそと人の顔を覗き見して絵に描く様な根暗な趣味が
あるなんて知られりゃ、それ自体が俺の沽券に関わる!!
分かったらとっととソイツを手放せよ!!!
お前がそれを持ってて特になる事なんざ何一つねぇーだろうが!!」
「断る。・・・どうしても今此処にあるこの“私の絵”を
破棄したいのならば・・・代わりに1つ、あなたには“ある条件”を
飲んで貰う事になる。」ヌッ・・・・
「ッ・・・・・!!?; 条件・・・だと・・・・・?」
幾度にも及ぶアタックを悉く躱され、息を荒げて膝に両腕をつく
ジャンへと迫るミカサの鉄面皮。アルミンほどでは無いにせよ
それでも人並み以上に察しが良いジャンは、、目の前に居る
“ミカサ”という人間が、何かしらの条件を相手に
提示した場合、そこに必ずといっていいほど絡んでくる、
彼女自身以外の人間の名を、そして顔を逡巡させ・・・
やはりその嫌な予感はほぼ想像通りの形で現実の物となった。
「この、私の絵と引き換えに・・・・
“エレンの絵”を描いて欲しい。あなたが
この絵の技量に見合う精度で上手にエレンを描いてくれれば・・
私はこの絵を潔く返却しよう。
・・・・つまり物々交換。」
「(よりによって・・・よりによって、あの 死に急ぎ野郎の
肖像画を・・・この俺に描け・・・・・だと・・・・?!)
お断りだ・・・・!ンなもん金積まれたって御免だぜ・・・・!」ヘッ
「・・――結構。嫌なら強要などしない・・・・ので、
この、素晴らしい写生は私の手からエレンの手へと
譲渡される事になる。」
「 !!!?? 」
(今・・・・、、今なんつったコイツ!!??)
「しかしあなたの観察力と表現力には驚かされるばかりだ。(マジマジ)
私はあなたに画のモデルになって欲しいなどと頼まれて
じっとしていた訳でもないのに。墨一本でここまで
明瞭に顔の特徴を表す事ができるなんて」ツクヅクモッタイナイ
「(そりゃ今目の前にある“その顔”が・・・訓練兵団で
初めてお前に出会う前から妄想してた“理想の女”と殆ど
同じ顔だとは口が裂けたって言えるかよ・・・・!)
おいちょっと待てお前・・・・・!今、なんつった・・・!!
聞き間違えでなきゃ確か今・・・その落書きの次なる行き先が
よりによってあの、死に急ぎ野郎だとか・・・・
なんかそんな言葉が聞こえた気がしたんだが」
-
- 53 : 2016/05/08(日) 04:45:32 :
「・・・・確かにそう言ったつもりだ。
エレンにも・・・私が傍に居られなくて不安で眠れない夜が
ある事だと思う。・・・そんな時に、こうして懐に仕舞える
“もう一人の私”が居たならば・・・それはどれ程心強い事か//」
ホッコリ・・・・・(*ノωノ)
「そりゃお前の一方的な主観だろうが!!!
先に言っとくが、あいつにそれを渡したところで
互いに何の利も生まれやしねえぞ!!!?現実を見ろよ!!!」
「・・・・ジャン・・あなたこそ何を言うの・・。
私がエレンをこんなに好きなのと同じで・・・・
エレンは―――私の事が好きなのだから、これだけ
再現度の高い形見ならきっと喜んで貰えるはず。
随分前に・・南方訓練兵団の宿舎周辺で偶然拾ったっきり
仕舞いこんでいたのだが・・・いい拾い物をした。」
イイオマモリニナル。
「、、、、!!?・・・・今のお前の言い分もおかしいだろ・・・!
そいつを偶然拾っただと・・・・・!?じゃあ何故お前それが・・・・」
ワナワナ・・・・・!
「・・・あなたが作者であると看破できたのか・・・、と言いたいの?
あなたが何故そこまで焦っているのか理解できないが、
そこまで言ってしまっている以上、この際どうでもいい事だと
思う・・・・」
「うるせえ!!既に墓穴を掘っちまったならそれはそれで
気にしても仕方ないのかも知れねえがな・・・・!
“その絵”に関して、お前以外の女子がそれを知っているか
どうか・・・そっちも俺にとっては遥かに重要な・・・
「ちょ、ちょっとお二人とも!?何故そんなところで
言い争い(?)みたいな事になって居られるので....(チラッ)
「・・・・何でもない。(ササッ)・・・それよりサシャ・・・
そのあなたが持っている、見るからに料理の材料には
適さない瓶詰めの中身は一体・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
話の混迷を避ける為、手にしていた自らの肖像を
素早くサシャの視界の外へと引っ込めるミカサの挙動を確認し
取り合えず彼女が自身の創作物をいたずらな気持ちで
晒しものにしている訳ではないと判断できたジャンは、
心の内にて安堵の溜息を放つ。
「何って・・・あれですよ!!!ジャン、あなたの火傷に塗るための
塗り薬に決まってるじゃ無いですか!!!!」バーン・・・・・
「塗り・・・・薬・・・・・?;;;;;」
ダラダラ・・・・
「・・・・・・・・・なるほど」
-
- 54 : 2016/05/08(日) 04:48:43 :
門番に掲げる通行手形の如く、サシャがその手に握って
見せ付けてきた透明の瓶詰めだが・・・・その内容物を凝視する
ジャンの頬を、嫌な汗が一滑りした後やがて顎から滴り落ちる。
瓶の中に、茶褐色の油に包まれて末期の姿で積み重なっているのは
・・・・無数の百足 。どれもこれも、
室内などで万一遭遇すれば、女子なら悲鳴を上げるサイズを誇る
それらの死骸... 死骸。。。 死骸の山―――・・・
「いや・・・・お前・・・今、成程って何を納得したんだ・・・」
ゥッ・・・・;
「ムカデ油なら・・・・私もお母さんに教わった事があるので
知っている。これはとても火傷によく効くので作っておいて
損という事は無い。・・・ただ、」
「(コイツがこう言うって事は・・・流石に芋女の遠まわしな嫌がらせって
ワケでも無えみてーだな・・・・)・・・ただ・・・なんだ??
いかにも言い辛そうなその先は」
「見ての通りあまり景観が宜しくないというのと・・・
とてもくさい という欠点がある。」
「・・・・・・・・・」
「匂いも見た目も気にしてたらキリが無いですって!!
とにかく火傷にはコレが一番効くんです!さあ、とっとと
塗っちゃいましょうジャン!!!」カポッ
サシャに関してはこのような言葉を普段通りに述べ上げて
瓶の蓋を開けた上に平気で自らの指を突っ込んでいるが・・・
やや大きめの瓶の中、相当な長期に渡って発見、捕獲の度に
“薬”の原材料が補充されてきたからなのか・・・
現在目に見えて原型が残っているものの下敷きになっている
油以外の不純物は・・・全て油の中で原型を留めていられなくなった
蟲たちの成れの果てという事になる。
その内溶液が放つ臭気レベルは、具体的に想像すらできないものの、
それが容易に顔を近づけていいものではないという事くらい
初見のジャンにでもすぐに理解できた。
「っ・・・ぁウ・・・;(ツ~~ン・・)
相変わらず何度嗅いでも壮絶な腐臭ですが・・・さぁはい、!
火傷した指をお出しになってくださいジャン!」ホラ!
ベト・・・
何の躊躇も無く自らの薬指に油を纏わせ、恐れ戦くジャンへと
迫るサシャであるが・・・サシャ自らがそこまで臭いと言い切る
薬剤の塗布を、当の負傷者である彼が潔く受けるはずも無い。
「・・・・おい・・そりゃぁ・・・お前がそこまで言うって事ァ
そんなに臭いのk....(クンクン)
っっァアアアア!!!!コイツはクセェぇえええええ!!!!!
(ギャぁあああああ!!)
ゲロ以下の匂いがプンプンするぜ―――――――ッ!!!!!
――-・・・って、そんな臭ぇモン塗れるか!!!
しかも原材料がなんだか分かり切ってる以上
余計気が進まねぇ!!!」
「ちょっと!!;それはないですよジャン!!!(涙)
折角あなたの火傷が少しでもよくなる様にと、
こうして私の薬指を間接的に使ってでも応急処置して
差し上げようと言うこの心意気を・・・
あなたは平気で無下にしようというのですか!!!」
(ゥァァ...↓↓クサイデス....)
-
- 55 : 2016/05/08(日) 04:51:26 :
-
「うるっっせぇーーーーーー!!!
お前、自分で匂い嗅いだだけでも泣きたくなるほど
臭ぇ謎の液体(謎でも何でもないが)を、他人に塗る事に関して
何の罪悪感も湧かないのか!?
仮にも傷を負った箇所に塗られるこっちの身にもなってみろよ!!!
俺は絶対にイヤだからな!!!」ジンジン・・・
「ジャン,,,。それは折角あなたの身を案じてまで薬を取りに
部屋まで戻ってくれたサシャに対してあんまりだ。
少しくらい不快に思うことになっても、ここは彼女の善意を
たててあげるべき。あの油は・・・事実しっかり
皮膚の炎症には効果がある。私は身をもって知っているから」
「~~~~~....;
そうは・・・言われてもな・・・・!大体お前の話じゃ
例のオムライスとやらはまだコレでおしまいじゃねえんだろ。
何か・・・この上絵を描くとか何とか・・・」
途中で別の話へと脱線していた為、忘れかけていたその事実を
再び確認するジャン。
「そうだ・・・・すっかり忘れていた・・・・。
ジャン、あなたにはまだこの人数分のオムライスに
絵を描いて貰うという大事な仕事が残っていた。(ポン)
・・・サシャ。その油は・・・・一先ずジャンがこちらの仕事を
終えるまでしまって置いて。」スマナイ....
「そっ・・・そんなぁ・・・・;早めに塗っておいた方が効きも
良いんですよ・・・?いいのですか・・・??本当に~~,,,」イジイジ
負傷した張本人でもないのに、既に悪臭漂う油塗れになってしまった
己の薬指をじっとりとした目で見つめるサシャ。
「~~~。;分かった分かった。テメーが本気で心配してそいつを
用意してくれたのは理解した。正直嫌で仕方が無いが・・・
ミカサが言うこっちの作業が全部終わったらちゃんと
使ってやるから、んなこの世の終わりみたいな顔するんじゃねえ」
「っ・・・!
は、はい!そうですよね!!折角こんなに多くの命を奪って
作った薬ですから、たまに使う機会がないと流石の私も、
犠牲になった数知れないムカデさん達に申し訳ないと
思ってたんです・・・・!(それが本音)
えっと・・・・ジャン、では火傷した指を少々
拝見させてもらっても・・・・??」
「おら、そんな大したモンじゃねえよ。
皮がむける程度ではあったが・・・こんなモン本来なら
そんな禍々しい薬を塗ったりしなくたって、唾つけときゃ
治るモンだろうが....」
「では・・・・ ッ ぁむっ」
Σパクッ
「 ッ!!?? 」ビグッ
ジャンの言いかけた言葉を最期まで聞き届ける事無く、
彼が火傷を負った、利き腕人差し指の第二関節付近まで、
完全な不意打ちとなる形ですっぽりと齧り付くサシャ。
瞬間、ジャンの全身と思考能力が、外敵を至近距離に認めた
野生動物のように硬直する。
-
- 56 : 2016/05/08(日) 04:59:26 :
「ンむっ・・・・ピチャッ・・・ チュパッ・・・
。。ぁ・・・・、先程下ごしらえに刻んだせいか、
若干たまねぎの風味が・・・・・」
今・・・自身の体の末端に接触している器官と、
その接触部分を内包している他人の体内部分は、ジャンにとって
産まれて初めて経験する感触を一方的に送ってきている訳だが、
完全に成す術なく固まっているジャンにはお構いなく、
自らの舌先を彼の指に絡めるサシャ。
「・・・・、、ヨシ!薬には到底及びませんがこれで
少しは違うでしょう・・・・!、
私は食欲が人よりある分よだれが少しばかり多いので!
...さぁ時間が経ってしまっては
後から薬の効き目も落ちてしまう一方ですし・・・
早い所その調理の締めくくりとやらに移ってしまいましょう!
私も手伝いますから!!」ファイトデス!!
「ぉ・・・、おう・・・・・・」
(機を逃してしまい、最早どのようなリアクションを
取っていいのか、判断が遅れてしまった結果)
此方を見つめる彼女の目に、微塵の恥じらいも
戸惑いも感じられない輝きを見て、殊更その純心に気圧されるジャン。
「・・・・サシャ。火傷の応急処置として唾液が多少有効であるという
話は、迷信程度に聞いた事があるが・・・あまり他人にいきなり
喰いつくのは感心しない・・・・。
只でさえあなたは食欲が旺盛だから・・・・
やられた方は一瞬身の危険を感じてしまうかも知れない。」
「そンなっ!!? 私はあくまで親切で・・・・!!!」
オロオロ・・・・・
「~~~~~~~・・・・・」
(フリーズ中.....)
グルグルグルグル・・・・
「ジャンをよく見て欲しい・・・・
あまりに一瞬の出来事だったので・・・
自分の指一本を失う一歩手前だったかもしれないという恐怖に、
喋る事すら出来ないほどすっかり萎縮してしまっている。」
ホラ・・・・
「そんなァァァ・・・・・!??!幾らなんでも私だって、
お腹がすいた勢いで人の指を食いちぎるなんて事は・・・!!」
「もう良いからよ・・・取り合えずこっちを先に終わらせちまおうぜ;」
(ミカサが言ったのと別の意味で心臓に悪ぃぜ・・全く・・・・)
・
・ ・
・ ・ ・
・ ・ ・ ・
-
- 57 : 2016/05/08(日) 05:00:40 :
「先程袋に入れたこの“ケチャップ”だが。
・・・袋の末端をこのように鋏で切り落とす事によって、
細く線引きすることが出来る・・・ので、これを使って
表面に上手く絵を描いて欲しい。絵柄に関しては・・・
全員分に足りれば何でもいいので適当に。」
「・・・・適当でいいなら別に俺がやらなてもいいと思うんだが」
「・・・そうも行かない。」
(暗に何かを訴えかける目)
「(クソッ・・・!例のアレさえなけりゃこんな面倒な事は
こっちから願い下げだってのに・・・!)っ・・・・;
分かったよ...クソッ・・・。描けば良いんだろ描けば!
~~・・・なんだ・・・適当って・・・、、兵団の紋でも入れときゃ
それで充分だろ...!」シャキッ・・・ ニュルルル....
「ぉっ・・・・・、、、お、、、おおお・・・・!?」
言うが早いか、極細の切り口を袋端に入れたジャンの両腕に
ケチャップ袋が保持され、見る見るうちに卵焼き表面部分に
描かれていく自由の翼の紋章。
当然翼部分のみ、簡略化した描写となってはいるものの、
ここまで緻密に描こうとすれば、相当手先が器用でなければ
上手くは行かないだろう。..傍らで覗き込むサシャの口が
あいて塞がらないのも無理は無い、正確無比なその手際の良さ。
「ぅわぁぁァァ・・・・・・!!!!!!
す、すごいですよジャン!!!でもこれ・・・全員分やってたら
流石のあなたでも相当な時間を必要とするのでは・・・?」
「...当たり前の事訊くんじゃねえよ・・・
俺が今やってるコレは精々見た目にうるさそうな人 のぶりで
作ってるだけだ。後のヤツは・・・当然お前らにも手分けして
貰うんだからな。ほれお前も描けよ」
「っ」
「・・・・私には・・・あなた程、人の目を惹きつける
絵心が無い。だから・・・いい。」
「オイオイ。今芋女にも言ったばかりだが・・・
何人分あると思ってんだ。俺一人でやってたら
どれだけかかるか見当もつかねえ。
お前も手伝え。...味に支障が出るモンでも
ねんだからよ・・・・(舌打ち)」
「・・・・・でも」
「“でも”じゃねえ。
それにだ・・・・、こういうのは気持ちが大事なんだよ。
手前が一番うまい飯を食って欲しいと思う奴の分くらいは・・・
せめて手前でやれ。いいな」ビッ
「ほほぅ、、、これはこれは;、普段の横柄な貴方らしからぬ
素晴らしい心構えではないですかジャン。
貴方の心の中にもそんな博愛の精神みたいなものが、
例え微粒子レベルであったとしても存在するという事。。。
それ自体が私にとって驚きの大発見ですね、、」フォォ・・・!
「人を貶してんのか、褒めてんのか、どっちかハッキリしろよ。
・・・あと微粒子なんて小賢しい単語どこで仕入れてきたんだ。。
・・・おら、お前もだ。コニーの分くらいお前も書いてやれ」
-
- 58 : 2016/05/08(日) 05:08:48 :
「・・・・・?別にそれくらい構いませんが…
・・・・・しかし何故コニーの分を私が?」キョトン
「何故ってお前そりゃ・・・・」
(普段の様子からしたって当然・・・)
「・・・・・・・・?」ウン?
「べっ、別に深い意味なんざ無ぇよ!!!いいからお前らも
とっとと描け;!!大体今更だが別にこんなの無きゃ無いで
支障なく食えるだろ!!!
途中までやっちまってから言うのもなんだけどよ!!!」ァアモウ!
チュ~~・・・・
「~~~~.....」
「どうしたんです?ミカサ。、ささっと何か
適当に描いてしまえば・・・・」
「そう・・・、、しかし折角エレンに食べて貰うのだから
何かメッセージ性のあるものを・・・と思ったのだが・・・
何を描けばいいのか・・・」ゥゥン・・・↓↓
「~~、そうですねぇ。ミカサですと・・・
ジャンの様に細かい絵が描ける訳でもなさそうですから、
何か簡単なものの方がいいんじゃないですかね」パァン、トカ・・・
「簡単に・・・心に訴えかけられるような絵・・・・
だ・・・ダメだ・・・・、、私にはそんなもの、思いつかない・・・」
ジャン、、オネガイ・・・・
「俺に丸投げすんじゃねえよ!!
こっちはこっちで忙しいんだしよ・・・・!!、そもそもそりゃ
お前の大好きな死に急ぎ野郎の分だろ!?
俺が奴にぶちまけたい不満を全て書き上げようとすれば
その表面が普段からの愚痴だけで真っ赤に染まるぞ!!」
「しかし・・思いつかないものはどうしようもない...」
本気で頭を抱えた挙句、やはり自分ではその答えに
相応しいものは描けないと諦める彼女に対し
「・・・・・・・・・仕方がねえな。じゃあ・・・・・
“この”形を・・・このまま見よう見真似でそこに描け。
これくらいの形なら・・・いくら不器用でも描けんだろ」
「?」
そう言いながら、保持していたケチャップ袋を手放した
ジャンが両手で形作ったのは・・・両手の人差し指と
親指を曲げながら組み合わせた、1つの左右対称形。
上部が丸く二つに分かれているが、下部末端は窄まって
尖っているその不思議な形――
その“形状”は・・・・都の娯楽にある程度理解がある者なら
子供でも知っている1つの象形 のようなものだった。
-
- 59 : 2016/05/08(日) 05:11:20 :
「・・・それは?何か意味のある形なの?」
「・・・・・・・・・あ?ちょっとまてお前まさか」
「あ!それ私知ってます!おト、、、、(ゲフン)
父に聞いたことあります!確か・・・」
「お前ら・・・・“トランプ”も知らないのか・・・・;、
まあ・・詳しい事までは俺にも分からないけどな。
コイツは・・・そのトランプって絵札の中に使われている
マークの1つで・・・“心”を形にしたシンボルらしい。」
「心を・・・・かたちに・・・?」
「ぇ・・・?? わ、私はそれ・・・“心臓”って教わりましたけど...」
「その辺は不確実なんだよ。結局俺だって町に居た時
取巻きのやつらが壁外の知識をひけらかしてるときに
偶然耳にしただけだ。
・・・内一人はケツの形を模したマークだと言い張って
聞かなかったしな。」
「・・・形的にはソレが一番近いじゃないですか・・・;
人間以外の なら色々見てきましたが・・・やっぱり私、
これがどうしても心臓の形に近いとはとても・・・・」
ゥ~~ン・・・・;ミエマセン、
「一々お前の話聞いてると食欲が失せるからマジでその辺に
しといてくれ・・・。。」ゲンナリ・・・
「何故!!? 私なにも不快になるような事言ってませんよね今!?!」
「(心の・・・カタチ・・・か・・・・・。)」
「ま、まあアレですよミカサ!?
その形が“心臓”であれ“心”であれ・・、
それであなたが伝えたい言葉としては充分そのまま
エレンに伝わるのでは・・・・・?」ニマニマ
「・・・・・分かった。折角教えて貰ったのだし・・・・
それでいくとしよう。ジャン、もう一度さっきのカタチを」グッ・・・
「面倒くせえな。...ほらよ、手本に一個同じ形の描いてやったから
真似して描けばいい。」コトッ・・・
「ぁあっ!!ジャン!!!!そんなに気安く心臓を模したマークを
乱用していいのですか!?バチが当りますよ!!!?
といいますか、“それ”を誰に食べさせる気ですか!!」
ソワソワ・・・
「・・・・別に俺が自分で食えば何の問題も無いだろ」
ナンダコイツ・・・・
-
- 60 : 2016/05/08(日) 05:12:59 :
「あ!!じゃあ、じゃあ私が食べます!!!」
アセアセ・・・
「オイ・・・どうでもいいがお前不自然なまでに必死じゃねえか・・?
何故そんなどうでもいいことを・・・・」
「・・・・そこまで難しい事ではない。
サシャの視線と異常なまでの集中力を見れば一目瞭然だが・・・。
先程からずっと、ジャンが溶き卵で包み焼きを行うチキンライスを
逐一凝視していた。・・・おそらくウサギ肉がより多めに
混ざった一品を目視で品定めしていたのだろう・・・」
「(ギクッ!!)」
「・・・・なるほどな。そいつは納得だ」
「うぇ、、ふへへ・・・; そんな・・・
御二人とも考えすぎですよ・・・・(ヒクヒク)
まさかそのような・・・ww;」(´q`;)
ビクビク・・・・
「そんなに食いたいなら普通にそう言やぁいいだろうが。
・・・・ほらよ。」
コトッ・・・
「・・・・・・!? え・・・!?、イイんですか・・・・!?」ビクビク
「別につまみ食いで無いなら、お前の正当な取り分として
今日の分の飯を食う権利は普通に有るだろ・・・。
その中身にたまたま 少しだけ肉が多めに入ってたってのは・・・
....これはまあ単なる偶然でしかない訳だが」
-
- 61 : 2016/05/18(水) 00:15:56 :
「~~~~・・!!ジャ、ジャン~~!!本当に、、本当にイイのですか!!?
お肉が・・・・! あんなに美味しいウサギ肉が沢山入っていると
分かっていて・・・・それをあえて私にお譲りしてくださると・・・?!
あなたはそう仰っているのですか!!?」
ガバッ
「うわッ・・・・!あぶねぇっ・・・いきなり飛びつくんじゃねえよ!
こっちは未だ作業中なんだよクソっ・・・
っていうかお前らも手を動かせ!手を!!」
「―――――できた・・・・!見事な心臓だ・・・!」
(謎のやりきった感。)
「・・・なんか、偏ってませんか・・・こう、もっと左右対称な
感じだったような、、」ゥゥム
「それ1つ描くのにそこまで時間使うか普通よ・・・・!
終わったなら他の分もやってくれよ・・・(溜息)」
「はいは~い!! 私こっちやりますね!!」
・
・ ・
・ ・ ・
・ ・ ・ ・
調理の最終仕上げに入ってから十数分が経過し、
結局一部といいながらも20数対の自由の翼を描きあげたジャンと、
残りのものに適当な意匠を施したミカサとサシャによって…
雑多な記号とも象形文字ともつかない謎の紋様が
踊る人数分のオムライスが完成し、それらを全て
食堂へと運ぶ最中の事
「おい・・・・さっきのアレだが・・・・!お前マジで・・・・」
カチャカチャ。。
「さっきのアレ とは?」
カチャ・・・カチャ・・
「一々言わせるんじゃねえ・・・!お前が俺への交渉材料に
チラつかせたあの落書きだ・・・・!アレについてだが・・・・!」
オロオロ...
「ああ。コレのこと。」カサッ・・・
~ヒラヒラ
両手に乗せていた二つの皿を器用に片腕の関節部分に
載せる事で、料理の運搬スタイルを片腕保持に切り替えると、
更に器用に折り畳まれた紙切れを取り出すミカサ。
「っぁ・・・・!!てメッ・・・・・・・!!???」
ガチャチャッ・・・
それをまるで猫でもじゃらすかのように
躍らせた直後、、その紙面を強引に奪い返そうとして、
自分の両手が不幸にも塞がっている現状に我が身を抑え込む
ジャンの顔の前へともって行き・・・・
「・・・・・あなたには充分働いて貰ったし・・・・“いい事”も教わった。
その上で“これ”の作者があなただと分かった以上・・・
“これ”はあなたの手に返すのがスジというものだろう・・・」ハイ。
両手が塞がっているなら、と
歯軋りをして睨みつけるジャンの顔を見据え、
顎で受け取れるように口のすぐ前に差し出すミカサ。
「ぁっ・・・?!?(噛)・・・・ヒ・・・ヒヒホハ?! 」
クシャッ・・・
「いいも何も・・・・それはあなたが描いたと聞いた。
最初から・・・持ち主を特定できたら返すつもりでいた。
・・・エレンの絵の話は・・・半分冗談のようなもの
・・・なので、できれば忘れて欲しい」フイッ・・
「(半分...冗談ってお前・・・・)」
-
- 62 : 2016/05/18(水) 00:18:36 :
普段の彼女の物腰から考えれば、そもそも“冗談”という単語
そのものが既に耳を疑うほどに貴重な爆弾発言でもある。
そんな彼女の横顔をもう一度、渡された自身の創作物を咥えながら
目にしたジャンは・・・・・
「(お前が冗談なんて口にした事が・・・今まで
たったの一回でもあったかよ・・・)」ギリッ・・・
無言で紙面の端を噛み締めながら、物憂げなその横顔に
何かを訴えかけるような視線を飛ばした。。。
「ファッ・・・??!?!な、なんですかジャン、あなたが口に咥えてる
その・・・・絵・・・・・ 、、ぅわっ!!!そ、ソックリです!!!
ミカサの肖像画ですか!!??ま、まさかそれ貴方が・・・・!!」カチャカチャ
ウヒョーーー!!
「Σ ンガッ・・・・!!!!!」ダダッ
「ちょっ..,
なぜ早足で逃げるのですか!!!
待ってくださいジャン!!」ダダッ
「・・・・・・・」カチャ..カチャ..
サシャに調理の話を持ちかけた際にジャンの名前が出た時は・・・
うまく行くかどうか正直不安だったが。
余計な心配だったようで何よりだ
皿をけたたましく鳴らしながら駆けて行く二人を流し目で見送り、
自身の杞憂に安堵するミカサ。その目の先に居る二人に
何を重ねているのか、そのまま目を伏せると
「(うまく出来たと思うが・・・エレンは喜んでくれるだろうか)」
言葉も無く想い人の顔を脳裏に描いて俯いた。
―調査兵団一時拠点・休憩室―
「―――あ。」
「――--っぉ」
「・・・おう。ヒストリアか・・・・どうしたんだ」
室内に誰かいるとは思っていなかったらしく、
戸を開け放った直後、腹筋運動を行う姿勢ゆえに逆さになった
エレンの目と目が合い、一瞬だけ硬直するヒストリアの表情。
「いや・・・どうしたって言われても・・・・
休憩室に来る用なんて・・・・休む位しかない....けど」オズオズ
「・・・・そうか・・・・まあっ・・・フンッ...=3・・・・それもそうだな」
ググッ・・・
どこと無くエレンの目から自身の視線を逸らし、
何かを探るような様子で返答を返すヒストリアの様子に
気が付いていながらも、未だエレンは上体起こし運動を
止めようとはしない。
「っ・・・ねえ、、エレンは・・・さ・・・・?」
「・・・・・――っ・・・・フッ・・・ ぁあ?何だ・・・?」
「自分の身を守る際だったら・・・緊急措置としての“巨人化”が
認められてて・・・、、、というか、寧ろ何かあってからじゃ困るから、
少しでも自分の身が危険と感じたら、
すぐに巨人になって事態に対応するように・・・
..って言われてたはずだよね」
「ああ。言われてるな。特にハンジさんからは200回くらい
言われてる気がする。・・・けどそれがどうしたんだ?」ムクッ
「いや・・・あのね、いざって言う時に備えるのは分かるけど・・
15mの巨人になって身を守る許可がおりてるのに・・・
休憩に割り当てられてる時間まで鍛錬するのって・・・
勿体無い気とかしない?」
「勿体無いって・・・・何がだよ」
「うん・・・だってどうせどんなに体を鍛えても・・・
“巨人になれる”んだったら・・・それで充分な気がするじゃない」
「・・・・・・お前、、、何ていうか・・・本当にそういうところは
前より思ったことそのまま言うようになったよな。
まあ・・・そう思うのが普通のヤツの考え方だろうな。」
-
- 63 : 2016/05/18(水) 00:26:38 :
「・・・・そうだよ、普通は皆そう考えると思う」
「・・・・けどよ、お前は・・・オレを“普通のヤツ”だと思うか?」
「・・・ごめん、正直に言っちゃうとあまり思えないかな」
「・・・何で謝るんだよ。
・・・前のお前だったら答えがどっちであれ
自分が思ったことをそのままストレートに口に出さなかっただろ。
訓練兵までのお前より・・・今の素直なままのお前の方が
オレとしてはずっと印象いいぞ」
「そっか・・・エレンはそういうのあんまり気にしないよね。
それなら・・・私も気が楽。」フフッ
「ああ、それでいい。お前だって今でこそ大分マシにはなったが
元々大分変わり者だっただろ。笑いたい訳でもないところで
いつもニコニコ笑ったりしてよ・・・・。」
「・・・それは言わないでよ・・・;
あの頃の“私”はさ・・・、そうする事でしか、
“私”でいられなかったから・・・ただ・・・それだけの事だったの」
「・・・まあいいんじゃねえか。別に誰に迷惑かけてた訳でもないしな。
・・・・・話を戻すか。腹筋 の事だけどな、。」
「ああ、、、うん?」
「特に何があるからやってるって訳でもないんだ。
・・・そりゃ勿論お前が言ったように“いざ”というときの為に
備えておく意味もあるけどな。・・・・まあオレとしちゃ・・・
他人 の為だけに暇さえありゃトレーニングしてる誰かを差し置いて
男のオレが・・・“巨人の力”だけをアテにしてぬくぬくしてる訳に
行かないだろ」
「ミカサは・・・本当にエレンの事が好きだからね」
スッ・・・
「・・・・・・・・、、」
その、何気ない一言。
その一言が自身に向けられたのを境に、若干彼女の面持ちが
先程までのそれより明るくなった事に気付くエレン。
元々他人の情緒を察する事に関してあまりに鈍感極まる
彼が、ここまで繊細に他人の面持ちに気を向けられるのは・・・
彼にも何か思うところあっての事か。
「・・・・正直、な。今までオレは・・・・
あいつをそういう目で見たことが無かったんだ。一度も」
「うん・・。訓練兵の時にはそんなあなたを・・・
周りは皆して“あいつの察しの悪さには悪意すら感じる”
って言ってたくらいだけど・・・私はそうは思わないかな。
ずっとミカサやアルミンと居たあなたからすれば・・・
恋愛感情より家族としての認識が先に来るのは当然だと思うし」
「散々な言いようだな.... そこまで空気が読めないヤツ扱い
されてたのか・・・・・」
「うん。そこも申し訳ないけど・・・あれだけ甲斐甲斐しく
接してくれるミカサを相手にして・・・エレンが
“あの”対応じゃあね。
その場だけを見れば相当鈍い人というか・・・
単にミカサを嫌ってるんじゃないかって位にしか
見えなかったかな・・・;」
「・・・・・そうか・・・・・・」フム・・・
「・・・・・・・・・・」
上体起こし運動を一時中断し、真面目な面持ちで顎を擦る
エレンを目下に捉え、ヒストリアの青い瞳が彼の心象風景を
覗き込むような下目使いで見つめている。
-
- 64 : 2016/05/23(月) 01:25:25 :
「それじゃあ、さ・・・“今まで”って事は・・・・今は・・・違うの?」
「・・・ああ・・・・?」ムクッ...
問いを投げ掛けられた方向へと顔を向け、
その瞳と目を合わせるエレン。
そのまま見つめ続ければ、たちまち
吸い込まれてしまいそうな程に大きく青いその瞳。
彼女が本当の自分を表に出そうとしなかった頃は
少し苦手意識すら感じていたその青色に、
今では一切の偽心もない事を見取ったエレンは、
その視線に応じるようにして―――
「そうだな・・・・ああ。ここの所・・・
オレもどうやらあいつが気になって仕方が無い。
・・・・・みたいだ。さっきハンジさんに言われて
オレ自身も初めてちゃんと自覚したんだが。」
・・・――素直にその心情を吐露する。
彼の愚直すぎる性格では、自分でも未だにどの様に
話の落としどころを見定めるべきかと迷いながらの、
懺悔にも似た告白。
「今更だけど・・・・本当、今更だけど・・・・!!!
とうとう・・・エレンの口からそんな言葉が出るように
なったんだ・・・・!!!..ッていう事は当然ミカサとももう・・・・?」
ソワソワ・・・
まさかこれほどまでにすんなり聞ける言葉だと思っては
いなかったらしく、少々鼻息も荒めになるヒストリアだが・・・
「いや、言ってねえよ。そもそも言ったところで
何がどうなるってワケでも・・・・」
「言ってないの!!???ミカサ本人に言ってないのに・・・・
よりによって今、私に先に言っちゃったの!?」
「・・・なんなんだよ・・;
お前が訊いて来たから正直に応えただけだろ・・・
何かまずい事したかよ?オレが・・・・」
「まずいとかじゃ無いけど・・・・!!
ううん、、やっぱりそれはかなりマズいと思う・・・・・!
エレンがそう思ってるなら・・・その気持ちはまず真っ先に
ミカサに伝えてあげるべきだって・・・私は思うな・・・・!」ググッ・・・
感情の昂りに応じて、只でさえ大きい瞳が
更にその瞳孔を拡張させる。ただならぬ気迫すら感じさせる
その瞳は、身を乗り出させるヒストリアの動きに併せて
エレンの緊張をも煽る。
「だから、、、!そんな話を今あいつにしたところでどうなるってんだよ・・;
一番動向が気になる奴らは雲隠れの真っ最中で、
まだオレ達調査兵団には・・・行って調べなきゃならねえ
最大の目的地が残ってるんだ・・・・
これからやっとその探索が始まろうかって時に・・・」
「関係ないよ・・・・!関係...ない..!!」
「おいおい・・・・;流石に関係ないって事は無いだろ。
ミカサ がいくら普通と違う神経をしてるからってよ・・・、
いきなりオレみたいな・・・昔からずっと一緒だった奴に
そんな事言われりゃ落ち着かなくもなるハズだ。
そんなうわついた状態で壁外なんて・・・・」
「これから状況が慌しくなるって分かってるなら・・・
お互いに明日も無事でいられるかどうか分からないなら・・・
どうしてその気持ちをすぐにでも伝えておこうって
気持ちが起きないのかな・・・・!
私はそれが信じられないよ・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
-
- 65 : 2016/05/23(月) 01:27:44 :
彼女の胸中に、脳裏に浮かび上がっては、その心を
縛り付けるのは・・・今は無事かどうかも分からない、
かつての親友にして悪友でもあった同期の一人であろうか。
それについてはこの場で一切触れられていないが、
それだけは何となくエレンでさえも察する事ができた。
・・・それほどまでに強く煮えたぎるような・・・彼女 の葛藤。
「お前の言いたい事は・・・確かに分かるけどな、 でも・・・・」
「分かってないよ・・・、エレンは私の気持ちなんて
全然分かってない。
だから何も分かってないエレンには今ここで言ってあげる」
「・・・???」
「私は・・・エレンの事が好きなんだ。」
「・・・・・・・!」
「・・・当然、訓練兵団に居た頃は私もあんな調子だったから
その頃からどうだったかは私自身でもなんとも言えないよ。
・・・・でも・・それでも、今の私は・・・エレン、あなたが好きなの」
唐突ではあるものの、彼女の感情の波は至って安定して見えるので
嘘や冗談、さもなくばその場の勢いだけで口にしている
言葉ではないというのは態度から見ても明らかだった。
これに対し、少々の驚きは見せるものの、
異を唱えたりなどはせず、比較的平静な態度で聞き入るエレンは
「オレの事が・・・・好き...だって・・・・?
そりゃ一体・・・どういう 意味での“好き”だ・・・・?」
漠然としつつも自分が最も疑問に思ったその問いで返す。
「心の中にある気持ちは・・・大分違うかもしれないけど。
・・・でも、ミカサがあなたを想って言うような・・・そういう
“好き”で合ってると思う。」
「・・・・・・・」
「・・・・・・当然、単純にエレンが好きなだけじゃ無くて・・・
“あなたの中に居る”人の事も無関係じゃないかもしれない。
でも・・・それでも私があなたを好きだと思うこの気持ちは・・・
それとはまた別のものだから」
-
- 66 : 2016/05/23(月) 01:29:41 :
「・・・お前が嘘を言ってないってのは分かった・・・けど。
けど何で今それをオレに言うんだ・・・・?;」
「・・・・・・・・・・・・・・」
暫しの沈黙。
「そんな事・・・、いちいち説明したくない・・・。(ムスッ)
大体ミカサもミカサだよ・・・・!ミカサに加えてエレンまで
そんなだから・・・!挙句の果てに私とエレンで....!!!
(超小声) .......
....とか言うんだよ....!///理解できないのはこっちだよ・・!」
口篭りながらも見る見るうちに萎縮して行き、
ついに何を言っているか聞き取れない程に声量を落とした頃には
真っ赤に染めた頬を髪の隙間から覗かせて項垂れる彼女が
そこに居た。
「・・・・ぁあ??お前何言って・・・、、
...っていうかさっきからなんか
・・・・すげぇイイ匂いしねえか・・・?」クンクン
「ヒドい!!! 今のはひどいよエレン!言ってる私だってかなり
恥ずかしい思いをしたのに、そんなスルーの仕方はさすがに無いよ!!////」
「だから・・・お前の声が小さすぎて全然何言ってるか聞こえなかった
っつの・・・。ミカサのヤツが・・・お前に何か言って来たのか?
もう一回今度はハッキリ聞こえる様に言ってくれって。
ちゃんと聞いててやるからy...
「あんな恥ずかしいこと2度も言わせないで////!!!!
ッ...;!! いいよ!!!エレンなんてもう知らない!!!!!」フンンッ=3
ダダッ...
「ちょっ・・・ ぉいクリ..じゃねえ、ヒストリア!!!」
バタンッッ
「(自分の気持ちに素直になったのは良い事なんだが・・・
本来あんなに直情的なヤツだったのか・・・・
しかしあの様子だとあいつ・・・・・)」ムクッ。。。
「・・・・ミカサの奴と何かあったのか・・・?一応何があったか
聞いてみた方がいいな。(クンクン)
(・・・と、そろそろメシだな・・・・。何作ったのか知らねーが
これだけ空腹を刺激するいい匂いがする状況で・・・調理当番が
よりによってサシャ じゃねえか・・・;確実につまみ食いするだろ・・・・。。)」
...そこまで考えた所で、本日もう一方の調理係担当が
誰だったのかを思い出して、すぐにその懸念を払拭するエレン。
「(まあ・・・ミカサ と共同だったら大丈夫か・・・)
....しかしいい匂いだな・・・、、何作ったんだ一体。」
飯時直前のこの時間までこれだけ香ばしい油と玉ネギを炒るような
匂いがするという事は炒め物の類か。
――そこまでの推測を立てて
実験に、追い討ちの自主鍛錬にと適度な疲労が残る我が足を
のそのそと食堂へ向ける...
-
- 67 : 2016/05/23(月) 01:32:09 :
-
―調査兵団一時拠点・リヴァイ部屋―
ギュロロロロロロlllllllllllrrrrr......
『一部を除き』隅々まで管理清掃が行き届いたその一室に、
外敵を威嚇する猛獣の唸り声かと聞き紛うほどの重低音が轟き渡る。
「ぁぁぁあああ....すっげイイ匂いするよぉ・・・・!!!
なぁなぁリヴァイィィ、、、、もういい加減食堂行こうよ....
空腹が限界でお腹と背中がくっつきそうだよ私・・・・!」
ネ~ ネ~~
「・・・行きたきゃ一人で勝手に行けばいい。
・・・そもそも此処は俺の部屋で、お前は別件の書類整理を
自分の部屋で済ませる用があったはずだろ・・・・、、それが・・
何故俺の部屋で書類の山 を広げて寝転がってやがる・・・・・?!」
しかし、そんな至極当然な問いかけにも依然として
「~~??、どうしてってあんたそりゃ・・・・
このお腹を御覧よ。私とお前はもうそういう 関係なんだから・・
同じ部屋の中で中睦まじく暮らすのは当たり前の事だろ?
・・・なのにエルヴィンの奴と来たら、
『いくら身重になったとはいえ君と始終付きっ切りでは
リヴァイの身が保たん。それくらい察してくれ』
なんて事を平然と言うんだよ??全く、人の気持ちを
察する事ができないのはどっちなんだって話だ...」ヤレヤレ
奔放かつ自由な身の振りを決して正そうとはしないハンジ。
・・・他人の部屋の寝床に書類をぶちまけ、右に左にと
寝転がって見せる様は、リヴァイ視点からでなくとも十分にだらしがない。
「今この場で間違いなく言えるのは、お前より奴の方が
少なくとも俺の気持ちを良く理解できてるだろうって事だけだが。」
「何ッ?!? まさか・・・リヴァイは・・・私と一緒にいるのが嫌なのか!??」
ババッ
「・・・・そうは言ってないが」
「同室で暮らすのもうんざりするような奴と・・・
一線を越えただけでなく、あまつさえ一子設けてしまうような・・・
そんなろくでなしだったのか!!?リヴァイ・アッカーマンという男は!!!」
-
- 68 : 2016/05/23(月) 01:41:56 :
冗談交じりに放たれた牽制の一撃は・・・・
「・・・・(溜息)・・・・まあ、所詮“酔った勢い”だしな・・・」
(※冷え切った視線)
しかし、投げつけられた威力をそのままに、まるでブーメランの様に
軌道を変えて彼女の元へと飛来した。
「まっ・・・待て待て・・・・待ってくれ・・・
その・・・その目は何だッ・・・・!!??(ビクビク)
ちょっ・・・嘘だと言ってくれよリヴァイ・・・・・?!!」ブルブル・・・
見事なまでのうろたえっぷりでその三白眼から放たれる
冷ややかな視線に抗おうとするハンジだが...
「お前が何に恐れをなしてそんな面を晒してるのか知らねえが・・・
相手を気遣うならまずは接し方から考えろ。
四六時中やかましい奴にへばり付かれてなんとも思わない
ような・・・図太い神経の持ち主に見えるか?この俺が」
自分から勢い任せに捲し立てた結果、思った以上に冷めた
リアクションで斬り返された為、リヴァイの言葉を
頭から否定できずにたじろぐのみ、という
なんとも憐れな有様と成り果ててしまっている。
「ごっ・・・ごご、ゴメンっ・・・私・・・私ちょっと調子に乗りすぎてたよ・・・・!!!
折角綺麗にしてた部屋まで散らかしちゃってホントゴメン!!
すぐ片付けて私は自分の部屋に戻るからッ・・・
だからっ・・・だからホントそのッ・・・・」バタバタ・・・
「・・・・・・(コイツは・・・本当にワザとやってんじゃねえかって位に
すぐ態度に出る奴だな・・・ベソまでかいて慌てやがって・・・)」
「・・・そんなに焦るなら最初から吹っかけて来るな。
・・・・それからお前は自分の腹が今どうなってるのかを
その都度気に掛けろ。
・・・・危ねえから急に慌てて動き回るんじゃねえ」グッ・・・
身長体型などから見て、一般的な兵士と比しても、
別段大きいという事も無いリヴァイの両手に肩を抑えられ、
心身ともに制止させられるハンジ。
「っ・・・ぅあっ・・・・う、うん・・・?;」
ピタッ・・・
その手に掛かる力も、特に無理矢理押さえ込むようなものではないが、
肩に乗せられる彼の重みは、次第にハンジの心を落ち着かせていく。
-
- 69 : 2016/05/23(月) 01:42:59 :
「・・・安心しろ。酔った勢いとはいえ・・・
別に・・・俺がお前の事をなんとも思ってないとか、
そういうワケじゃねえ。だからそんな顔をするn...
「っ!!?なんだよオイ!!まさかリヴァイお前!!今・・・デレてるのか!!!?
そうならそうと早く言ってよもう!!!お前って本当表情
変わらないから分かり辛いんだよ!!」コロッ・・・☆
「(・・・・こいつ....)」ギチッッ・・・
目の前の馴染みが本格的に立腹ではないと察した途端、
まるで掌どころか全身を翻したかのような変り身を見せる彼女 に
抱きしめられ、ほんの僅かの怒気を再燃させるリヴァイでは
あったが・・・・
「ぉ~~~おう、ヨシヨシヨシ~♥♪(ナデナデ)
リヴァイのデレる姿なんて貴重すぎて滅多に人前じゃ拝めない
からな~・・・、、、って・・・そうか!!それっていうのは、
こうして私だけが目の前に居る密室空間だからこそ見せてくれる
姿なわけであって・・・・
つまりこれはお前なりの最大の愛情表現って奴なんだな!!?」
「・・・・・・・・・(チッ)」
秋の空と並べるにしても、あまりに変わりやすいその女心を
その態度、そして表情ですべて体現し、コロコロと切り替える
彼女の奔放さと毒気の無さ。
・・・・それから抱擁の度に身長の関係で
自らの胸部付近に押し当てられる膨らみによって、
一瞬でその焔を沈火せられてしまう。彼女の想いのみ では・・・・
そうして宿る事はなかったであろう新たな生命 の温もりに、彼 もただ、押し黙るしかなかった。
「ぁ・・・あれっ・・・なんだお前・・・今日はなんか・・・
いつになく大人しいじゃない・・・か・・・??いつもなら
何か軽く一発ジャブが飛んでくるはずなのに。。。
・・・・まさかお前今日は・・・」パッ・・
ソワソワ・・・
「・・・・あ?」
そこまで言ってリヴァイを開放すると、部屋の隅に鎮座する
戸棚の中段を開け放ち、奥から一本の酒瓶を取り出すハンジ。
-
- 70 : 2016/05/23(月) 01:44:44 :
「そ・・・・そっか・・・・そうだよな・・・・
最近御互い忙しくてちょっとご無沙汰だったもんな・・・・?
ひ・・・久しぶりに・・・ぃ、、一本、いっとくか?////」ドキドキドキ
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
二人が“一線”を超え、現在のような関係になってからというものの、
・・・しかし互いの人柄が影響して(特にリヴァイ)そういった異性間における
夜の営みに特別執心する事も無く、精々その回数頻度としては
月に一度かそこらといった日々の中で・・・・
元々“そちらの欲”に関して人並み以上に旺盛なハンジが
その日、その夜のリヴァイの機嫌を推し測る為の物差し代わりに
使っていたのが・・・他でもないその手に握られている酒瓶であった。
彼が勧められた酒に手を付ければ“可”を意味し、
そうでなければ“不可”の返答を意味するという、
どこかで聞いたような、それも男女の立場が逆転したような
暗黙の問いかけを唐突にこの場で投げかけられたリヴァイは..
「・・・・お前は本当に目先のことにしか頭が働かないんだな・・・!!
そもそもさっきから腹が減っただの餓死しそうだのと
散々わめき散らしてやがった癖に・・・何処にそんな元気が
残ってやがるんだ・・・・(蔑)」
「ええっ!!!ち、違うの!!???てっきりリヴァイなりに精一杯
アピールしてみた“今晩どう?”って意思表示だと思ってたのに!」
ガーーーン・・・・
「第一今から飯だってのに酒 をやる意味が理解できねえ。
・・・それと『したくて』仕方が無いのはお前だけだろ」チッ
「だぁって~~~!!!!最近全然シてないじゃんかもう~~~!!
折角タグだってつけてるんだからさ・・・・!!!せめてちょっとくらい
私とあんたでイチャイチャしたってバチは当らないと思うんだ!!!!
なぁ~いいだろ~~~~!!!久しぶりにシようよ~~~!!」ヤリタイヤリタイ~~!
ドタバタ
「どさくさに紛れてメタな事言ってんじゃねえ・・・・!
とっとと飯に行くぞ・・・・。(フンッ..)」ガタッ・・・
「~~~ぁあああもう~~~!!!リヴァイのいけず!!
朴念仁!!!!心因性勃起不全!!!!」ムキィ~~!!
「俺の方は心身共に問題ねえよ。・・・お前の欲しがり方が異常なだけだ」
「飯終わったら覚えてろよ~~!ꐦ
絶対に今夜はその気にさせてやるからな!!!」プンプン=3
「その前に片付いてねえテメェの事務仕事を何とかしろ」
・ ・ ・ ・
・ ・ ・
・ ・
・
-
- 71 : 2016/06/01(水) 23:54:41 :
~それより少し前~
―調査兵団一時拠点・納屋―
「もうすぐ・・近い内にあなた達もまた命懸けで壁の外に
行くんだし・・・・・こんな日くらい、少し奮発したっていいよね」ワシャワシャ・・・
ブルルッ・・・・ ドドッ・・・・
「ん。。よしよし・・・・・・・」
“この子達”と一緒に居る時こそが・・・・正直最も私の心が休まる時だ。
農場の外 を知るずっと前から・・・“この子達”だけはずっと私の友達だから。
私達の都合で一方的にその命の所存を決められてしまう
この子達は・・・・・・・けれど、そんな自分達の処遇に何を疑おうと
いう事もせず、ただ人間 達に尽くし、そして駆け回ってくれる。
人はこんなにも自分達に都合のいいように自らの一生を捧げてくれている
この子達を指して、“家畜”と呼ぶけれど・・・
「それなら私だってあなた達と同じ・・・同じ家畜だよね。
誰かの都合で産まれて、誰かの都合に合わせて生かされて・・・
ここまで来たんだから。」
・・・そうだ。自由の身であるかどうかなんて…そんなの関係ない。
私がこの子達を見てとても安心するのもきっとそう。
同じ生き方を強いられているこの子達と触れ合っている間こそ
こんなに心が安らぐ私は・・・やっぱり・・・・
「おい」
並んで人参を齧る馬の内、一頭の頭部を撫でながら
一人物思いに耽るヒストリアの背後から不意に掛けられた声は
「わっ・・・・・」ババッ
「どうしたんだよ・・・・そんな驚いて・・・;
っていうかそいつがどうかしたのか?」
外出から戻った直後なのか、一頭の馬を引きながら
納屋に入って来たコニーのものだった。
「あっ・・・・ううん、何でもないの!!ちょっと考え事を・・・ね!」
「・・・・ふーん・・・・・。まあ、余計なおせっかいかもしないけど、
どうも元気がありそうな顔じゃ無かったからな。
何かあるんだったらすぐ誰かに相談しろよ?」
-
- 72 : 2016/06/01(水) 23:56:30 :
「(あんまり人の事言えなさそうな顔色だけど・・・)
うん・・・・・ありがとう・・・・。。コニーは・・・・ひょっとして今日も・・・・・・?」
「ああ。母ちゃんのとこにな。
・・・あんなんなってても、一応は生きてるんだし・・・
やっぱりどうにかすれば元に戻れるんじゃねえかって・・・
そう思いたくもなってくる」
「きっと――戻れるよ。。
気休めで言ってるんじゃないし、詳しくは分からないけれど
“ユミル”だって、同じような状況から、あんなふうに
戻る事が出来たって言ってたんだから・・・・」
「・・・でもそれって・・・、
確か“巨人化できる人間”・・・つまり
人間に戻る事ができる、『エレン』や『アニ』みたいな
奴を・・・食わなきゃダメなんだって話だろ・・・・?」
「・・・・・・」
「そんなの・・・結局誰かを犠牲にしなきゃ
元に戻れないって事じゃねーか・・・・・。
いくら身内を助ける為とか言っても・・・
母ちゃんに人間 を食わせるだなんて・・・俺は・・・・」
ガタガタ・・・・
「それは・・・今この時点では“巨人化”に関してそこまで
詳しい事がわかってないからそれしか手段が見つからないだけで・・・
きっとエレンのお父さんが家の地下に隠していたっていう
何かを全部調べれば・・・・きっと何か・・・・」
「悪ぃ・・・お前が気休めだけでそんな事を言ってるとか・・・
そこまで言いたいワケじゃないけどよ・・・・
流石にそううまくは行かないんだろうって事くらい・・・
分かってるんだろ?」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・何せ“巨人になれる人間の脳髄”を取り込まないと
元に戻れないって情報自体・・・・お前があの王様だかから仕入れて
兵団にそのまま流した情報なんだしな・・・
いや・・・・。別に尋問を受けた訳でもないんだ、
ひょっとしてまだ兵団にそのまま話してない、、、
そもそも話しても不安が増すだけの情報とかだって・・・
実はまだあるんじゃないのか・・・・?」
-
- 73 : 2016/06/02(木) 00:04:46 :
「ゴメン・・・。。ゴメンね。コニーは本気でお母さんの事
心配してるのに・・・適当な事言っちゃって・・・。
でも・・・私も知ってる事は・・『あの人』から教えて貰った事は
全部上の人に伝えたから。それだけは信じて欲しい。」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
横たわるのは―――重苦しい沈黙。。
「・・・・っ・・・こっちこそ。。悪かった・・・
頭で分かってはいるんだ・・・こんな風に誰かに当ったって
何にもならないって事くらい・・・でも・・・・
ああっ・・・クソっ・・ダメだな本当に・・・、、
人をあんなに殺しておきながら・・・今更こんな・・・」ガタガタ・・・
抑えきれぬ不安と苦悩からか・・・
その場に膝を着いて自身の震えを押さえ込む事に精一杯のコニー。
初陣の市街戦、、壁外遠征、それから中央憲兵を相手取っての・・・
事実上の殺し合い。それらの凄惨な修羅場を潜り抜けてきた
彼だが、その最中であってもここまで取り乱す事が
あっただろうかと言うほどに落ち着きを無くしてしまっている。
そんな彼を眼下に捉え、同じ視線まで自身も身を屈めるヒストリアは・・・
「・・・・・・・・っ」
ギュッ・・・・
「・・・・・・・・!」
何か言葉をかけるよりも早く、その細い腕でコニーの肩を抱きかかえていた。
「大切な家族を失うかもって思うと・・・普段会えない場所に居ても
平気なのに、すごく辛くなるよね。
コニーは・・・そう思えるコニー はまだ私なんかよりずっとマシだよ。
だから・・・もっと自分に自信を持って・・・?
あなたは・・自分が思ってるよりずっと立派な兵士だよ。」
「そんな・・・大したもんなんかじゃないって・・・
実際どうだよ・・・・・。あんな事になっちまった親に
どうにか助からないかって未練しかない俺と比べて・・・
エレンやお前に比べたら・・・・俺なんて・・・・」
「・・・・・・・・・」
選択の余地はおろか、自身すら知り得ない形で、
親殺しという苦行、そして“王家の力”を行使する鍵ともなる
“座標”を一手に託されたエレンに加え、
いくら自身で選択した路 とはいえ、手ずから実の父を討つという
英断を余儀なくされ、その身を名実共に壁の内側の民を導く
王として捧げる事になった目の前のヒストリアという同期生。
彼らの置かれた境遇に比べれば自分など...
そう苦悩しつつ、あくまでも自分を追い詰めようとする彼に
激励の言葉を贈ったのは、意外にもその胸を貸す形で
今最も肉薄しているヒストリアではなく・・・・
-
- 74 : 2016/06/02(木) 00:06:19 :
「ヒストリアの言う通りだよ。
僕らは・・・いや、ガス切れで機動力を失っていた
僕なんて特に、あの日・・・コニーが居なかったら
真っ先にトロスト区で巨人に食べられちゃってたよ。」
「・・・・・アルミン・・・・」
またもやいつからそこに居たのか、
納屋の入り口に立っていたアルミンだった。
「っ・・・・ぁっ・・・こ、これはそのっ・・・違うぞ・・・!!!」
アタフタ・・・・
「・・・・うわっ・・・ちょ、、、何で急に慌てるの・・・・?」
「(やっぱりこういうのは変わらないな・・・コニーも・・・)」
流石に落ち着きを取り戻して現在自分がどのような
姿を晒しているのか思い出すと自身を抱き留めるヒストリアから
離れようと慌てるコニーだが、
アルミンもヒストリアも、そんな状況に何か茶々を入れるような
性格ではないため、至って平静とした目でそんな彼の慌てぶりを
見届けるのみである。
「(でも・・・当たり前か。変わらなくて当然だ・・・・
色々あって・・・何度死を覚悟したか分からないような
壮絶な日々だったけど・・・、、僕等が訓練兵団の卒業を迎えてから
今までで・・・精々一年くらいしか経ってない。)」
「大体俺のおかげって・・・
俺はそんな大袈裟な事してねえよ!それ言うなら
あの時、巨人になったエレンについてこうって言い出した
アルミンのお陰だろ・・・!あの場を皆して生き延びる事ができたのは・・」
「・・・うん。それもそうかもね。
だから・・・今こうして調査兵団の仲間として生き残っている
僕等全員・・・、その内誰が欠けてたとしても
この全員が生き残る事は無かったと・・・僕は思うよ。
思い起こしてみれば・・・皆一人一人が互いに危機を乗り越える
助けになってるしね。本当に良い仲間を持てたなって思う。
だから・・・・・」
「ぁあ・・・・・?;」
「気休めに聞こえちゃうのは申し訳無いけど、
コニーのお母さんを助ける方法はきっと・・・いや、
必ず見つかるはずだ。その時まで・・・一緒に頑張ろうよ」スッ・・・
(手延)
「アルミンの言う通りだね。
私も・・・コニーだけじゃなく今生き残ってる皆がいなければ、
今のこの状況は無かったと思う。それだけは事実だよ」
「・・・・・・何だかな・・・・、、
とっくに親を二人ともなくしてる二人にそんなこと言われたら・・・
それでうじうじしてるワケにいかないだろ・・・・
悪かった・・・心配かけちまって」グッ
(握手)
-
- 75 : 2016/06/02(木) 00:06:44 :
「ううん・・、いいんだ。だからこそ僕にも君の気持ちが
分かるんだし。
・・・ああ。それはそうと、そろそろ夕食が出来上がってる頃だと思うんだけど・・・
・・・・最近コニー少し食欲が落ちてきたよね・・・
今日は大丈夫そうなの?」
「大分落ち着けたからな・・・さすがにこの匂いを嗅いでたら
腹が減ってきた。これもお前らのお陰だ」
「、大袈裟すぎるってばコニー・・・(笑)」
「そうだよ・・・私達別にそこまで大したことしてない」
「いやでも・・・飯を食いたいと思えるだけ元気で、その上
食ったものを美味しく感じられるってのはかなり大事な事だと
思うぞ・・・。 サシャをみれば説明する必要も無いだろ?」
「それは・・・・確かにそうかもしれないけれど」
「(あの サシャでも・・・流石に正真正銘の“対人戦”
には気が滅入ってしまって、一時何も口にしてなかったからね・・・。
あの時のサシャは本当に普段の見る影も無い位弱々しかった)」
「・・・・とにかく馬の餌もやり終わったんだし・・・
...さっさとメシ行こうぜメシ!!
いや、本当良い匂いだな!!今日何作ってんだ一体・・?!
・・・・・・まさか肉とかじゃねーよな・・・・」ババッ
「ぁっ、待ってコニー!!!バケツ持つの手伝って!!!?」アタフタ
ガコガコッ・・・
「(まったく・・・、、半分虚勢なのは見てて丸分かりだけど、
そういうところまで気が回らないのは、いかにもコニーらしいよ・・・)」
-
- 76 : 2016/06/02(木) 00:10:29 :
―調査兵団一時拠点・食堂付近―
「――――アルミン。」
「やあ、食事当番ご苦労様、ミカサ。
・・・随分時間かかったみたいだけど・・・一体...何を」
アルミンの視線が無意識の内に注視したのは当然、
たった今ミカサが両手に乗せて運んでいる最中の皿であるが・・・
「(・・・・蓋 ・・・・・?それも・・・全ての皿に被せてる?
何だろう・・・本当にコニーがさっき言ってたように肉とか・・・
普段食べられないようなご馳走なのかな)」
「・・・中身は・・・見てのお楽しみ。」
正面から見えた訳ではないので、時間にしてほんの一秒にも
満たない間の事であったが・・・僅かに結ばれた唇の端と
狭められた目尻から、彼女が微笑を浮かべている事実を察するアルミン。
「(ミカサが・・・この顔でこんな事を言うなんて・・・・)
そんな事まで言われちゃうと期待しちゃうな・・・」
普段から感情を表す表情変化に乏しい彼女が、つい最近になってから
度々見せるようになったその顔。
そんな彼女の変化からアルミンが汲み取ろうとするのは当然―――
「(これが・・・何かエレンに対する気持ちの変化から来る
ものだったら・・・状況としては非常に良いんだけど・・・)」
彼女が自身の全てを捧げると断言して憚らない、
唯一の存在、すなわちエレン・イエーガーに対する彼女の心境の変化。
「な・・・なんだろう・・・・?ミカサがそんな事言うなんて珍しいよね・・??
匂いからしたら・・・炒め物かなと思ってたんだけど」
「俺もそう思ってた・・・・、、これはもしかして
滅多に食えないようなご馳走とか・・・・」ゴクッ・・・
「・・・そこまで高価なものでも無いのであまり期待はしないで欲しいが」
「取り合えず食堂に入ろうよ。・・・・あ、ミカサ?
それ・・・蓋付だと人数分運ぶのも結構大変じゃない・・・・?
もう全員分運んだの?まだだったら私達も・・・・」
「いい。それには及ばない。あらかたの分は
ワゴン等も使ってサシャとジャンも手分けして運んでくれた・・・
ので、私が今もっているこの二皿が最後だから」
「そっか・・・ならもう後は皆集まるのを待つだけだね」
「(他の分をワゴンも使って運んだなら・・・・
何で今ミカサは最後の二皿を自分の手で・・・?
単純にワゴンに載りきらなかった半端分・・・・?いや・・・)」
疑念に突き動かされるままに皿を運ぶミカサを注視する
アルミンのまなざしが、単純にして明確な違和感を瞬時に捉える。
「(ミカサが右手に持っている皿の方にだけ・・・・クロッシュの
取っ手部分に布の切れ端のようなものが括りつけてある・・・?
アレ・・は・・・・、、なるほど。ミカサが普段手首に巻いてる包帯の換えと同じ生地だ)」
-
- 77 : 2016/06/02(木) 00:13:03 :
つまりミカサは・・・蓋で中身を隠しながらも
先に運び終わった分とは別にして、あの一皿・・もしくは
二皿だけは他の物と仕様違いの区別が付くように目印を
つけている。
そこにどの様な差異が設えてあるのかは
アレをあけてもらうまでは分からない事だけど・・・・
少なくともその“違い”というのは、使用している具材の
多い少ないとか、有り無しではない...ハズだ。
いくらミカサといっても、エレンだけに偏って
そういうあからさまなひいきをするような性格ではないし、
(注※苦手な野菜の増量ならあり得るけれど。)
これだけ大人数で食事する時に・・・
一人だけ他の人となにか見違える点があっては
たちまち不平不満の火種になりかねない。
・・・・となればあの一皿は間違いなく・・・・・
「(これは・・・遠征に乗じて...なんて回りくどい事をしなくても、
ひょっとすると進みの早い展開が期待できるかな・・・?)」
<<ガタガタンッ!!! ドタァン!!!!
「「「 ・・・・?? 」」」
不意に食堂内より響き渡る物音に、互いの顔を見合う三人。
「何だろう・・・明らかに今誰か転んだような音が・・・・」
「・・・・中にはジャンとサシャしか居ないはずだけれど。」
「・・・・結構派手な音したぞ・・・おいおい大丈夫か・・・・・」
自然と足早になり、扉を開け放った四人の目に飛び込んできた
その光景は・・・・・
-
- 78 : 2016/06/06(月) 13:22:20 :
―調査兵団一時拠点・食堂―
「あ、、、」
「おっ・・・・うぁッ・・・・・、、、、!!!!!」ババッ
「「「「・・・・・・」」」」
サシャが両腕で掲げ上げた何かを強行的に奪おうとする形で
マウントポジション、つまり馬乗りとなる格好で彼女に
覆いかぶさっているジャンの姿。
体勢が体勢なので、いくらサシャの顔がおちょくる様に
にやけていても、そしてそれに迫るジャンの顔が、焦燥に駆られて
焦りきった顔をしていても、見るものに充分な誤認の余地を
与えてしまうワンシーンが......そこにはあった。
「っっっ・・・その、、、・・・これはっ・・違うぞ!!誤解すんなよ!!?」
ッドタドタ
「おほっ・・ たはっ☆ 」ヒョイッ ブンッ
「クソッ・・・・クソクソッ・・・・!!!!放せこの芋女!!!!その紙をッっ!!」
バタバタバタ・・・
「オヤオヤ皆様、やはりこの素晴らしい匂いに誘われて
いてもたってもいられませんでしたか・・・!それでは早速皆で
食卓を囲んで今晩のご馳走をば・・・・!!!」キラキラキラ・・・
つい先程どこかで聞いたような釈明を述べつつも、ちゃっかり
サシャから目当ての物を奪還せんとして両腕を働かせるジャンだが、
当のサシャは彼の手延べを悉く器用に躱し尽くしている。
そして一方のサシャも・・・・今この瞬間、自分と目の前の同期がどのような視線を
受けているのか、そんな事は全く意に介さず、あくまで食欲の赴くままに
その目を輝かせるのみ。
「何ていうか・・・・・意外だったよ。
・・・てっきり・・・サシャはタイプじゃない のかと・・・・」オズオズ・・・
(至って真面目に驚きを隠せない顔)
「ジャン・・・お前・・・・、、、いや、やっぱいい」フイッ
(物凄く複雑な真顔)
「この時間からそういうことする元気があるのはいいと思うんだけど
・・・一応ここ、ご飯食べるところだから・・・・ね?二人共。。」
(あくまで真面目に注意喚起)
「・・・・・・・・私も・・アルミンとおおよそ同じ意見だ。
あなたたち二人がそういう関係まで進んでいたのは意外だった・・・・
・・・・・とりあえず、おめでとう。」コトン・・・
(至って無表情)
「 だ か ら !!!!お前ら揃いも揃って、
早とちりすんなって言ってるのが聞こえねぇのか!!!」ムッカァァァ・・・!!
四者四様に、やはり彼が最も憂慮していた誤解を抱き、
しかもそれを持てはやしたり貶めたりする事もなく真面目な態度で
諭しにかかる始末。彼の血液と体温が一気に沸点近くまで持ち上げられる。
「・・・・・それはそうとジャン、いい加減降りてはいただけませんか??
流石にこのままだと私、重いのですが・・・・・」
「ほら・・・ジャン。ヒストリアも言ったけど此処は食堂なんだ。
こんなところで気分が盛り上がった成り行きでサシャを押し倒す君の
モチベーションの高さは察してあげるから・・・・
せめて兵長に見つかってお腹に蹴りを入れられる前に
サシャを連れてどこか別の部屋に・・・
「 お い 。ケンカ売ってるならそう言えよ・・・・!!!
なんならお前が下になるか・・・・・!??」ギリッ・・・
「・・・ゴメン、僕・・・そっちの趣味無いから....(引)」ススッ
「何から何まで話の通じねえ奴らだなクソッ!!!!」
-
- 79 : 2016/06/06(月) 13:23:54 :
-
「・・・・ジャン、まずは落ち着いて・・・それからサシャの上から
退くべき。その格好で必死に何を訴えても・・・説得力が無い」
ドウドウ、、、、、
「俺は・・・・コレ を返して欲しいだけなんだ!!」
チキショォォォォゥ!!!!!!!(ブンッ)
「コレって・・・・何だよ?? サシャがもってるその・・・
クシャクシャニなってる紙切れか・・・?ソレが一体何だって・・・・」
ヒョイッ・・・・
「止せ!!!! みっ・・・見るんじゃねえ!!!!
いや、後生だ!!!頼む!!!!見るな!!!!!」ギャァァァアア
「(自分が思ったことは何でも正直に口に出してしまうジャンだけど・・
そんな彼がここまで必死にお願いするなんて。
いや・・・あの・・・紙は・・・・?)」
「・・・・・・ジャン。あなたが何故そんなものにそこまで
必死になるのか私にはもう到底理解できない。
サシャがそれをあなたに返してくれないなら・・・・
自分でもう一度描いてしまった方が早いのでは・・・?
必要ならば私が見本になっても構わない。。」
「・・・???、え?? ちょっと・・・
かく・・・?見本?何々?話が見えないんだけど・・・説明してくれる?
ミカサ???ジャンは一体何を・・・・」
「ぁっ!!! じゃあじゃあ、
ジャン!!ミカサより先に私を描いてくださいよ!!!!
それも出来るだけ清く凛々しく美しく!!!!
そしたら私、これを素直にお返しします!!!」
「全部てめぇに当て嵌めるには不適当な表現じゃねえか!!!(怒)
大体何の為にンなモン描かなきゃならねえんだ!!!この俺が!!??」
「何のためって・・・・それはホラ、
今もジャン坊やが必死になって返して欲しいとお願いしている
“この”似顔絵を返還することに対する交換条件ですよ・・・」フリフリ
「やめッ・・・・・!!!! 見えちまうだろうが///!!ヒラヒラすんな!!!
それから俺がお前に聞いたのはそういう意味じゃねえ!!!!
そんなモンをもし仮に・・・万が一俺が仕方なく描いたとして・・!
ソレをどうすんだって話だ!!!」
「フフン・・・・!そんな決まりきった事を聞きますか・・・?
それは勿論・・・・額縁に収めて部屋に飾るに決まっているでは
ないですか・・・!・・・・・と、言いたいところですが・・・・
故郷の父に贈る手紙に同封させて頂こうかと思いまして。」ムフフフ
「なら尚更そんな嘘っぱちの覚書なんざ描けるか!!!
いいからとっととそいつを手放しやがれ!!」
「・・・・・・なあオイ・・・・、俺達置いてきぼりなんだけど・・・
あいつらは一体何であんな盛り上がってるんだ???」
「う~~ん・・・・ジャンがあの手に持ってる“何か”でサシャに
揺すられてるってのは見てるだけで簡単に理解できるんだけど」
「何だろう・・・・・絵・・・・・?だよね・・・多分」
「・・・・すまない、ジャンが酷く嫌がっている様子なので
私から皆に説明することもできないが・・・・・
大体そんなところ・・・・」
「思っきし説明しちまってんじゃねーかおいィ!!!」
クソッ ヨコセコラ!!!
「っファ!!??ww マジかよオイ!!!!
俺にも見せろよサシャ!!!」ドンナヘタクソナンダ!!?
バタバタバタ
「こっち来んじゃねぇぇえええええ!!!」
-
- 80 : 2016/06/06(月) 13:26:10 :
・・・・・しかし、夕飯の時間に差し迫った食堂という事もあり、
当然そこに・・・
「おい・・・テメーら・・・・食堂で何騒いでやがる」
「うっひゃ~~!良い匂いだ!!!なんだちゃんと全員分
テーブルに載ってるじゃない!・・・・・って。。。。
蓋してあるぞ!!?? 何々!!?!??今日はひょっとしてとんでもなく
豪華なご馳走とか・・・・・!!!」ヒャッホォォゥ!!!!
ピョンッ
「お前もたかが飯で騒ぎすぎだ。。。。
それからむやみに飛び跳ねるんじゃねえと、何度言ったら分かる...!?
少しは・・・・」
「あ~~ハイハイ。。大人しくしてろってね??
分かった分かった!!。。。さぁさ、ゴハンだゴハン!!!」パンパン
「腹減った~~。。。」 「相変わらず元気良いな・・・104期の奴らは」
「今日は何の日だ・・・?」 「さぁな」
「オムレツっぽい匂いだと思ってたが・・・パンがねえぞオイ」
「飯とは関係ないけど・・ハンジさんってお腹は
膨らんできてるのに・・・・上の方は殆ど変化ねえよな。
・・・・・・・・大丈夫なのか、今のままだと全然足りないんじゃ」
「足りないって何がだよ」 「そりゃ...お前」
「決まってんだろ…兵長のご子息の身長に必要なカルシウム..」
リヴァイ、ハンジを筆頭にして夕食を目当てにやってきた
調査兵多数が集まり始める。
「オぃ!!!!!今誰か聞き捨てならない発言をさらっと・・・・!!!」ムカッ!!
「おとなしくしていろと何度言えば分かる」ガシッ
「っぐぇぁ」
自身より遥かに低身長なリヴァイに首根っこを掴まれ、
蹴飛ばされた猫の様な悲鳴を上げるハンジ。
その彼女の余りの落ち着きの無さに溜息混じりに視線を流した
リヴァイの視線の先には―――
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「おいッ・・・・もうっ・・・飯だっつってンだろッ・・・・!!
いい加減悪ふざけは止めてソイツを・・・・!!」ブンッ ブオッ
「ホッ・・・・ お断りッ・・・・します!!」ババッ
ヒョイッ・・
未だに幼稚な取り合いに悪戦苦闘を続ける二人の部下の姿が。
-
- 81 : 2016/06/06(月) 13:27:48 :
「・・・・・お前ら二人がそんな間柄だったのは正直意外だが・・・
ここは飯を食う場所だ。・・・やるなら表でやれ。
部屋でされると掃除が面倒だからな・・・・(チッ)」
「リヴァイ兵長まで!!!!!誤解ですっ・・・・俺はただ・・・!!!」
「ぷっフフフフ!!!さぁさぁどうするのですジャン坊や!!!
このまま私からこれを奪おうと悪あがきすればするほど
あなたは私に興奮して抑え切れなくなったジャンボを
振りかざしたならず者として・・・・後世に語り継がれることに・・・」
(これ以上無いほどに悪い顔)ゲヘヘヘ・・・
「このッ・・・腐れ芋女が・・・・!!!」
ヒクヒク,,,
「ぁあッ!?!リヴァイッ・・・!!自分の事を棚に上げて偉そうにッ!!!
あの日私は何処で押し倒された!?きっちり部屋の中だった
じゃないk....
ガッッッ
「・・・・・・・・・それ以上・・・・・口を開くんじゃねえ・・・・!!!(ピキピキ)
「・・・・・・どうした、やけに騒がしいが・・・
もうとっくに夕食の時間ではなかったか。」スッ・・・
「エルヴィン団長っ・・・・!」
普段食堂まで赴く事の無い団長の姿がそこにあった。
当然、普段ない事が起きている以上、何事かと真っ先に
気を立てるのは、104期一番の頭脳派といっても過言ではないアルミン。
「あのっ・・・何か御用が・・・・?
食事ならいつも通り、これから部屋に届けようかと・・・・」
「いや、何・・・・。久々に皆で食卓を囲むのも悪くないと
思ってな。3日後に控えた地下室探索に関しての簡単な話と・・・
それから君にも少しばかり話がある。」
「・・・・・・・!」
組織のトップに立つ者から自身に対しての用向きを揶揄した発言を
されたアルミンであったが、口に出さずともその意味を察した彼は、
丁度今食堂に辿りついた幼馴染と、もう一方で既に食堂にて
自分の席の対面に一枚の皿を置きながら食堂の入り口を注視する
もう一人の幼馴染を見やる。
「まあ・・・そこまでかしこまった話でも無い。
それに夕食の調理に際して漂ってきた匂いについ食欲が
かきたてられてしまってな・・・・。 こうしていても仕方が無い。
取り合えず皆で食事を始めてしまおうか」
「は、はいっ・・・ではどうぞ此方へ・・・」
「あっ、エルヴィン食堂でゴハン食べるなんて珍しいじゃん!!
私達のテーブルで食べない?? どうせいつも椅子空いてるし」
「・・・・では折角なのでご招待に預かろうか。
しかしこのテーブルは6人掛けだろう・・・・
いつもこんな調子で君とリヴァイ二人の貸切なのか・・・・・?」
「そんなの私に聞くなよ!!リヴァイの目つきと態度と
日頃の行いが悪いからだろ~~~」
「・・・・最後のはどう考えても余計だろうが」
「ほほう。つまり最初の二つに自覚はあると」
「~~~~~~」
「~~~~~~」
「(実質もう夫婦みてーなもんだろあの二人・・)」
「(前から近寄りがたい空気はあったし・・)」
「(あの空気に入っていけるかよ・・・普通・・・;)」
「(あの空気に自分から入っていけるような奴なんて…)」
「あ、あのッ・・・エルヴィン団長っ・・・、お席空いてるなら
そちらのテーブル・・・お邪魔しても・・・??」ガタッ
「「「「「(((((そういやアイツがいたな・・・・・)))))」」」」」
空席が一際目立つそのテーブルへの移動を志願したのは・・・
言わずと知れた104期生一の努力家・無鉄砲・馬鹿正直を絵に描いたような
その一人・・・すなわちエレン・イエーガー。
-
- 82 : 2016/06/06(月) 13:30:19 :
-
「・・・・・次回の作戦の要でもある都合上是非そうしてもらえると
助かるし、その申し出を断る理由も特に無いのだが・・・・」チラッ・・・
「っ・・・・」↩バッ
エルヴィンが不意に向けてきた視線に反射するように、
机の上から持ち上げていた皿を元の位置に戻してそっぽを向く
ミカサだったが・・・・
「・・・・彼女も此方の席に来たいそうだ。それでも構わないな?」
「 っ ・・・・!」
/✧ファァ・・・✧\
ほんの一瞬だけ、奈落のどん底まで叩き落されかけたミカサの顔に
場所と時間帯の関係で差すはずの無い陽光が差し込む。
「はッ・・・! 自分に拒否権はありませんので!!!」バッ
「エレン・・・・君はホンッ・・・とに空気が読めないんだな・・・
いや、まあ今更過ぎるけどね・・・・・(諦)
(・・・ミカサが不憫で仕方ないよ・・・。さっきしてあげた話で
少しは自分の気持ちとも向き合えたかと思えば・・・)」
「(良かった・・・エレンに作った分はちゃんとエレンに食べて貰える…)」
(エレンと一緒になれるなら最早どうでもいい)
「さて・・・じゃ、ちゃっちゃと食べちゃおうよ・・は~~・・・
お腹減ったお腹減った!!!」
「そうですね・・・いただきます・・・・」
「・・・!アルミンの分の皿はこっち・・・。。」
「・・・・??(僕の分・・・??布が着いてない蓋・・・。。
・・・つまりさっき持ってた二枚の内もう片方が・・僕の分だったのか)」
「ぉお~~~???何だいミカサ??w
エレンが振り向いてくれないからとうとうアルミンにチェンジか~???
清楚な顔して中々君も・・・・////」
「っ・・・!!ぁ、違・・・そんな・・・事は・・・・・」オロオロ・・・
「行き過ぎた冗談は止めてくださいハンジさんッ!!!////;
流石に言っていい事と悪い事があります!!」キッ・・・・
「(いやぁ、悪いねw;でもこれくらい発破を掛けないと
あの二人を焦らせるのは難しいと思ってさぁ(小声))」
-
- 83 : 2016/06/07(火) 06:08:52 :
「(・・・っ;本当に勘弁して下さいよ....!(小声))
そ・・・それはそうとミカサ・・・これが・・・僕の分なの・・・?」
「・・・・・そう。」
「・・・気持ちは嬉しいんだけど・・・他の人の分と何がどう違うの・・?
蓋を開けば分かるのかもしれないけれど・・・よければ
できる範囲でいいから先に教えてくれるかな。」
「それは・・・・・私も“未だ”見てないから分からない」
「・・・・・え」
「その皿は・・・私が“ジャンにお願い”して仕上げて貰ったものだから。」
「????・・・・???;」
「・・・しかし安心してほしい、私よりもジャンの方がずっと
上手に仕上げられると判断したからそのように頼んだ。
・・・だからきっと大丈夫」
「そう・・・・?なんだ・・・、、、じゃあ取り合えず・・・頂くね・・?」
(何なんだ・・??ジャンが仕上げた・・・?まるで意味が理解できない)
カパッ・・・・
食堂のそこかしこから聞こえる乾杯の音頭に合わせてクロッシュを
持ち上げる音が次々と連鎖する。
・・・それらに続いて、その場の全員の心境を表すどよめきが充満する。
ドヨ・・・・ 「オイ・・・・・・・こりゃ・・・オムレツ…だよな・・?」
「しかしそれにしちゃ少しデカくねえか」 ドヨ・・・
ドヨ・・「何だこの赤いの…」 ・・・・ドヨ・・・ 「って言うか・・絵・・?」
「正直匂いも美味そうだけど・・パン無しでイくのかこれ;」 ドヨヨ・・・・
「何の絵だこれ・・・?」 「いや・・そっちはまだ『絵』だって判別できるが」
ドヨドヨ・・・「そうだな・・;こっちのこれは・・まるで血塗れの・・・」
「シッ・・・・失礼な!!どこからどう見ても自由の翼の紋章では・・・!」
アタフタ・・・・
「いや・・・・ねーよ・・・・。大体どのへんが翼で、どの辺が紋章として
収まった形になってるんだ・・・・アレ;」
・・・例によってサシャが仕上げを担当した分のオムライスには皆、
災厄を呼び寄せる呪いの呪文とも、地獄の使い魔を召還する為の
魔法陣ともつかないおどろおどろしい不規則模様が踊っていた。
フリーハンド線形の集合体のみでここまで見る者の背筋に怖気を
呼び寄せることが出来るというのも、最早一種の才能と言っていい。
-
- 84 : 2016/06/07(火) 06:12:18 :
「ジャンの描いているのを精一杯観察して模写したんですよ!?!
全くそのように見えないなんて事は・・・・!」アセアセ・・・
「おわっ!!これどうやって描いたんだ・・!!!?すっげー綺麗だな!!」
タベルノモッタイナイナ!!!
「ほう・・・・・悪くない。」
シゲシゲ・・・・
「これは・・・大したものだな・・・モブリット副長の画才に迫るものがある
・・・今日の食事当番は・・・・」クルッ・・・
「私と・・・サシャでしたが。
そちらの皿の仕上げはジャン・キルシュタインが」
「(極めて無表情なドヤァ・・・・・・)」
「ちょっと・・・ミカサ・・・・・上手なのはいいんだけど・・・(カタカタ・・)
何で僕だけこんな・・・・??;(涙目)」
(※あの顔)
アルミンの皿に乗っているオムライスに描かれていたものは・・・
緻密に描かれた二頭身の“何か”。ギョロついた不気味な目と
厚ぼったい唇が印象的な・・・実に不気味な何か・・・というか巨人であった。
「ちょっと!!ジャン!!言いたい事はわかるけどこれはあんまりだよ!!」
「うるせー!!!嘘予告の仕返しだチキショウめが!!!!あの予告のせいで
どれだけのマイナスイメージが着いたと思ってんだ!!(涙目)」
「僕に言われたってどうしようもないよ!!!諌山先生に言ってよ!!!」
「ジャン・・・・私はアルミンの似顔絵を描いてとお願いした筈・・・」
ジロッ・・・・
「っ・・・はっ;流石にあんなソースで人の似顔絵が描けるかよ」
「いや・・・・;あれだけ不気味なのがかけるならアルミンの顔くらい
余裕だろ・・・・」カパッ・・・
「・・・・・?」
そう言いつつ自分の皿にかぶさっていた蓋を取り去ったエレンの
目に飛び込んできたのは・・・・・
♡
「なんだ・・・・こりゃ。」
サシャが描いたものにしては簡潔かつ単純な図形。
ジャンが描いた物にしては別段なんらかの悪意も感じない。
-
- 85 : 2016/06/07(火) 06:15:02 :
「・・・・おいサシャ・・・こりゃ何の絵だ・・・・?
まさか巨人のケツとか言う気じゃ・・・・・・;」カチャッ・・
「「「「「(((((爆発しろッ.....!!!)))))」」」」」
「(そう・・・・来たか!!!!)」 「(鈍い・・・!!!鈍すぎるッ!!!)」
「(こいつ・・・ワザとやってるんじゃなくマジで知らないのか)」
「(そうか・・・町では僕とミカサ以外友達も作らず
訓練兵になってからは部屋の皆の娯楽にも殆ど興味を持たずに
自主トレばっかしてたエレンも当然・・・・)」
・・・・・・先程までのミカサやサシャ同様に、
エレンもまたその図形を知らなかったようだ。
「違いますっ!!それはミカサが描いたんですよ!!!!
そしてお尻でもありませんし、
そもそも何で巨人なんですか!!本当にあなたは考え方がおかしいですね!!
普段から一体何考えてるんです??!」プンプン!!!!
「いや・・・・こう、巨人を残らず駆逐してやる・・・・的なアレだよ
っつか、確実に痛い目みるって分かっていながら
年中盗み食い働いてたお前に言われたくねえよ・・・・;」
「むグッ・・・・!!ぬぅ....!;」
「・・・まさかまだライナーが言っていた巨人のもう1つの弱点というのを
真に受けてるの・・・・エレンは・・・(溜息)」
「ちっ・・・・違ぇよっ・・・・!!大体あいつはッ・・・
最初からオレ達を騙してやがった糞野郎どころか・・・
二つの壁をぶち壊しにしてくれた諸悪の根源だろうが・・・・!
飯が不味くなる話するんじゃねえよ・・・・・・・!!!!」ギリッ・・・・
「それは・・・・私が描いた。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・?お前がこれを・・・・・・・?」
後ろから掛けられた声に・・・普段彼女に向けられる物よりも
若干感情的な声で反応するエレン。
「・・・・そう。」
「そうか・・・・」カチャッ・・・
「「「 !!! 」」」
それだけのやり取りを終えると、無言でフォークとナイフを
オムライスに突きたてようとするエレン。
流石にその様子を横目で気にしていた三人が席から飛び上がる。
「そこまで聞いておいて絵については聞かないのかよエレン!!!」ガバッ
「エレン・・・君はもう少し異性の気持ちというものを・・・・!!」バッ
「畜生――ッ!!!!このっ…この豚野郎がーーーッッ!!!!」ァァァア;
ガチャンッ・・・・
-
- 86 : 2016/06/13(月) 00:18:55 :
「なっ・・・ぇえっ・・!?・・・ッぇ、、、襟を掴むなバカ野郎!!!
シャツが伸びちゃうだろうが!!!!」ビクッ・・
「ぅるせ――――ッ!!!(涙)こんな襟なんざ破けちまえばいいんだ!!」
「いや・・・・うん、それは流石にないとおもうぞエレン・・・・。」
ポン・・・・
「コニーまで!!!おいなんなんだよ一体!??このマークが..
................一体なんだって・・・・・・・・・・・・・」
オロオロ・・・・
同期生のみならず、兵団における上官、果ては団長にまで
異を唱えられてしまったのは流石にエレンも意外だったらしく、
本気で焦り、なりふり構わずに目の前の記号の意味するものを
誰かしらに聞こうとする。。。。が、
「もうミカサが直接教えてあげれば良いじゃん~・・・エレンには
遠まわしなやり方したって無意味だってよく分かったでしょ..?
(ニヤニヤ)
・・・・・~というわけで、はい、ミカサ??エレンに教えてあげようか~。
この記号は何を表すものなのでしょ~ぅか。」グッ
「っ、、、?!///」
「――――・・・・!」
突然両肩を掴まれてエレンの真隣へと移動させられたから・・・
という理由だけでミカサが見せる反応としては、
やや不自然な狼狽混じりのその挙動が、
アルミンの目に、注意に留まる。
「(やっぱり・・・、、ミカサの様子が明らかにこれまでとは違う・・・
幾らエレン絡みで感情の波が立つことはあったとしても・・・
今まであんな細かい恥じらいを見せるような事は無かったミカサが…)」
平時の彼女であればその程度の事は顔色1つ変えずに
エレンに教える位はできるはずで、その上なぜ自分がそのような
シンボルを料理に描こうなどと思い至ったか
その理由についても淡々と無表情で
語りあげる位の事はやってのけて当たり前だった。
「(あれは・・・あの恥ずかしがり方・・・あれじゃあまるで・・・)」
“まるで普通の女の子みたいじゃないか”
・・・・・―――そう心の中で呟くアルミン
・・・・つまり、今この瞬間まで、彼の心中ではミカサ・アッカーマンという
幼馴染にして家族でもあり大恩人でもある黒髪の美少女は、
普通の女子などでは断じて無かった事になる。
・・・当然といえば当然の事である。
幼少の時分、自らの力では突き飛ばす事すらかなわない
体格の良い町の悪ガキ達を、自分と同じ歳の華奢な少女が
容赦なく殴り飛ばし、蹴り飛ばし、胸倉を掴みあげて地べたへと
叩きつけるその様は・・・幼心の彼に強烈なトラウマと、束の間の安心感、
そして確かな劣等感を与えた。
-
- 87 : 2016/06/13(月) 00:20:52 :
そういった熾烈な制裁を下す最中にあっても彼女は基本的に
普段からの無表情を崩す事が無く・・・
その整った顔に張り付いたような鉄面皮は、見ている者に底知れない
何かを感じさせるものとして充分な威圧感を漂わせる事もあった。
「(そんなミカサが・・・・)」
「こ・・・これは・・・・・その,,,,,」モジモジ・・・
「(ホラホラ、どーんと言っちゃえって!!
この期を逃す手はないぞ!!!(小声))」バシバシ
「(ミカサ!!ここで貴女が強気を見せなきゃエレンはずっと
あんな調子かもしれないんだよ!!本気でぶつからなきゃ!!(小声))」
リーリー!!
「(そうですよミカサ!!!あんな鈍感が服を着て歩いてるような
エレンにはビシッと言っておかなければ!!舐められたら
そこでおしまいです!!!(小声))」リーリーリー!!
いつの間にかその場に集結していたハンジ・ヒストリア・サシャに
背を押され、しどろもどろとその目を泳がせるミカサ。
その場の三人はこのミカサの反応を見ても、
精々普段見られない彼女の慌てぶりくらいにしか感じていなかったが...
少々の距離を置いてその様子を観察しているアルミンの目には、
彼女の見せる狼狽がとにかく異質に見えた。
そして、察しが悪い、あまりにも異性のアピールに鈍いと
散々な言われようである、もう一方のエレンの目の色からも....
普段の彼から感じるようなあっけらかんとした
無頓着さとは違った、目の前の彼女に対して内面で揺れ動く
なにかを感じ取っていた。
「それはっ・・・・、、、“トランプ”という絵札に使われている
“ハート”と呼ばれるマークで・・・曰く、ジャンやサシャの
話では・・・私も今日まで知らなかったが、
『心』や『心臓』を表す図形でも・・・ある・・・・・らしい。」オドオド・・・
-
- 88 : 2016/06/13(月) 00:23:00 :
「はぁ・・・・、、?これ が・・・心・・・臓?」
「も、勿論、それはきっと比喩 だ・・・・!私も
実際に心臓の形をこの目で見たことは無いから確かな事は
言えないけれど・・・・でも・・・!」
「まあ、実際の形とかどうでもいいけどよ・・・、、、
じゃあ何でそんな・・・心臓だか・・・心だかを表す絵を
態々食い物なんかに・・・・?お前が描いたって言ってたが」
「・・・ミカサ、ごめんね。エレンを一発ぶん殴ってもいいかな?」ニコニコ☆
ガタッ・・・・・ギリィ...!!!
「・・・・おい。テメェは何度言わせればわかる・・・・?
餓鬼共には餓鬼共の領分があるんだ。
分かったら椅子に座って静かに食ってろ」ガシッ!!!!!
「ぅぉおおお!!!放せッ!!放すんだリヴァぁ"ぁ"ぃ!!!!
私はたった今確信した!!彼は・・・彼は女の敵だ!!!
それも自分でどれだけ多くの敵を作っているか
まるで自覚してないときてる!!!ここで一発ガツンといってやるのが
彼自身の為でもあるんだっ!!」ジタバタ
「その意見に異論はないが・・・まあいいから黙ってみてろ」
「~~~~~、、??」
未だリヴァイ羽交い絞めによる拘束を振りほどこうと
抵抗を続けながらも、彼が顎で指し示す先を怪訝そうに見ると
そこには・・・・
「それは・・その、意味とか・・・・そういっ・・・たものは・・・・」
プルプル・・・
普段エレンを目の前にした時以上に激しく狼狽するミカサが
何かを言おうと必死に身をよじらせる姿が。
「(中途半端なのはダメだよ!!!もういっそここで
婚約を取り付ける位の意気込みで行かなきゃダメ!!(小声))」
パシンッ!
「(クリ..ヒストリアの言う通りです!!必ずやここで
エレンを仕留めるくらいの積りでっ・・・!
大丈夫!!あなたならできますよミカサ!!!(小声))」
バンバン!!
どうやら背後からけしかけているヒストリアとサシャの二人が
後方支援というよりも背水の陣として作用する形で
ミカサに発破をかけているが、その影響にしても戸惑いが
大きすぎるように見える。
-
- 89 : 2016/06/13(月) 00:25:09 :
-
――――しかし、冷静にそんな分析をしていたアルミンその他
大勢の前で、ついにミカサが意を決したように一歩踏み出し、
回らぬ舌を無理矢理稼動させるような動きを見せる。
「つまりっ・・・その記号を・・・エレン。あなたに認 めたのは...
“私の・・・・心ッ、、、臓 を,,,,あげる”・・・・という意味であって・・・・」
ドキドキドキドキドキドキ
「っ・・・・ぁあ、(溜息)=3
なんだよ...つまり公に心臓を捧げるって意味だろ
今更こんなところでアピールするまでも無く訓練兵の頃から,,」
「っ・・・・・・ꐦ」がタッ
「ちょっぉ・・・・リヴァイっ!!?!?(裏声)」
ハンジを制止していたリヴァイの拘束が解けた瞬間、
彼のこめかみに青筋が走るのを見たハンジは思わず
間抜けな声をあげて驚く事となり・・・・、同時にその攻守関係は
瞬時に逆転する事になる。
「ちょ待っ・・・・おィ!!誰か手伝って!!
こいつ本気だぞ!!!うわっすっげ力・・・・!!!」ズルズル....
「放せクソメガネ・・・・!!たった今までのお前の気持ちに
賛同してやろうっていうんだ・・・お前にとっても
悪い話じゃねえだろうが・・・・・!」ググッ・・・
「お前が本気でおこだっていうのが問題なんだよ!!
頭にくるのはわかるけど堪えてくれよ!!!幾ら巨人の“再生能力”が
あるからって・・・お前の本気で殴ったりしたら・・・!ほら、
後遺症とかなんかあるかもしれない!!!!」
「(あくまで一時的な外傷は気にしないんだ..;)」
「いや・・・あれは流石にエレンに問題がある・・・
こんな有様でなければ私が直々に張り手をくれてやりたいほどだ」
(震え声)
「うわっ・・・ちょ・・・兵長・・・・って団長まで!!!」バタバタ・・・
大気を揺るがすほどの怒りのオーラを纏わせながら徐々に
此方に迫りくる外野を他所に、ミカサとエレンのやり取りは未だ
続いていた。
「・・・・違う。“公”にではない。私がここで心臓を捧げると
宣言したいのは、エレン・・・・“あなたに”という意味だ。」
フルフル・・・・
徐々に安定した活舌を取り戻し、細動を繰り返していた
瞳孔の焦点が定まり始めたその時、ミカサの方から更に
一歩エレンとの距離が詰められる。
-
- 90 : 2016/06/13(月) 00:26:44 :
-
「・・・・、あぁ??」
あと一歩進めば、エレンに接触できる距離。
「つまり・・・私が伝えたいのは・・・・」フッ・・・・
その間合いで上から見下ろされていたエレンは・・・・・
今までミカサを揺すっていた動揺がぴたりと成りを潜めたのに
いち早く気付く。最も近くに居るから気付けたその変化。
そして―――最も永く共に居たから気付けたその変貌
「 ・・・・替わりにエレン、“あなたの心臓を頂戴”..という事 」
「―――――――」
ドヨッ・・・・・・
いきなり第三者がその一言だけを耳にすれば、
間違いなくあらぬ誤解を招く事になるであろうその一言を受け、
エレンを含めたその場の全員が凍りつく。
「ミカサ・・・・・お前・・・・・」
されどその場でもっとも心に衝撃を受けたのは
他ならぬエレンだった。理由は言うまでも無く・・・・
「勿論妙な意味で言っているのではない。
私の人生を・・・全てあなたにあげる―――だから、エレン。
あなたの人生も――――私に」
至って真剣な眼で此方を見据える彼女の佇まい。
「まっ・・・・待てっ・・・・!!待て待てまて!!!!!分かったから!!
少し・・・少し待ってくれ!!!!まずその・・・・少し落ち着....(ハッ)」
言いかけてからハッと気付くが既に遅く、その事実は
エレンの身を金縛りの如くきつく縛り付ける。
「何を言っているの・・・・?私はさっきより・・・大分・・・
ずっと落ち着いている。今なら・・エレン。私が今まであなたに
いえなかった事も堂々と伝えられるくらいに。
落ち着けていないのは・・・あなたのほう」ズイッ
「おっ・・・うわッ・・・////」
周囲で見ているものも最早成り行きを見守るのみに全神経を
集中する始末となっており、既にその場の全員が口を噤み、
二人のやり取りを食い入るような目で見つめている。
―――その中心でエレンに肉薄したミカサは、いつもの顔、
いつもの語調で、ごく平静にその一言を言い放った。
-
- 91 : 2016/06/13(月) 00:28:57 :
「・・・・・エレン。結婚しよう。無論・・・私とあなたが、という意味で」
ついに言い放たれたその一言を。
「おっ・・・・・、、;」
「「「「「「「「・・・・・・・お?;」」」」」」」」」」
「おう・・・・・。。。」コクッ・・
迫り来るミカサの無言の気迫と、その真摯な眼差しに気圧されて
思わずエレンがそう頷いたその瞬間―――――
「「「「「「「「っ・・・・・・!!!」」」」」」」」」」ワッ・・・・・
先程までの殺伐とした空気はまるで嘘のように・・・・
食堂内の空気が一気に湧き上がり、弾け飛ぶ。
「っ・・・・(溜息)
(やっと怒りが収まったか・・・まあ、私もリヴァイ の事言えないけど。)」
「・・・・・・・・・・・」
ゴトッ・・・・
「おいおいおい!!!とうとう言ったぞあの ミカサが!?」
「"とうとう"っていうか・・・態度にだったらとっくの昔から出してたけどな」
「しかしついにあの エレンが首を縦に振った」
「だが普通あの言葉は男 が言うべきだろ...」
「これで晴れて公認か...ミカサもやっと今までの苦心が報われたな」
「・・・まあ、今まで具体的にエレンとくっつこうとはしてなかったけどな」
「っつうかおい!!!皆飯そっちのけで夢中になってたけどよ・・!
このオムレツ食ったか!!!中身が・・・なんなんだよこれ?」
「っぅ・・・美味い....!!!」 「これならパン要らねえな」
「不思議な食感だな」 「穀物か?」 「食った事の無い感触だ」
二人が一束ねにしていた衆目が解かれるにあたって、
次第に手元の夕飯へと話題が移っていく中、
自らの怒りのままに部下を叱咤せんとして立ち上がっていた
リヴァイは大人しく着席し、ハンジは胸を撫で下ろす思いで
溜息を付く。
「めでたしめでたし、ですね!さぁさぁ、ミカサの悲願も
達成できたところで・・・お待ち兼ねの夕食です・・・・!!」ウキウキ
「あれ・・・?でもサシャの分・・・・テーブルに載ってないけど」
「・・・・?ほ、本当です!?何で!!!???」ガバッ
ホワイ!!!?
「何で?じゃねえよ。お前・・・厨房で俺が仕上げた一皿を渡してやった
その直後に、蓋して見分けが付かなくなる前にって、
一人だけ早弁してただろーが・・・・。お前のとこに飯がねえのは
誰かが盗ったからじゃねえ。お前が自分で食ったからだ」ヨロッ・・・
-
- 92 : 2016/06/13(月) 00:31:13 :
「・・・・?ジャン、大丈夫か・・?顔が支給用の固形食みたいな色になってるぞ」
「わりぃが俺は・・・・食欲が無ぇ・・・。・・というか失せた。。
少し夜風に当ってくるから・・・・おい芋女、、その飯は
テメェが食っちまっていい。」
「「 っファ!!!?????? 」」
驚愕のあまりほぼ同時に跳ね上がり、奇声を発するサシャ&コニー。
「残したりすれば兵長に殺されるからな。その“コメ”とかって
中身を一粒も残すんじゃねえぞ・・・」フラッ・・・
「かっ・・・・神!!!!!!??????」ウッヒョ~~~~!!!!
「っ・・・・!?ズりぃぞ!!!!; 俺もおかわりできるなら食いたい!!!」
「フフンッ!!; 残念でしたね!!ジャンはワ・タ・シをご指名です!!!」
「ふざっ・・・ふざけんな!!そんな・・・・!ジャンケンで決め・・・」
「ははぁん???何ですか・・・?その、JANNEKEN?..とは??
生憎設定上そういった御遊びはこの世界には伝来していませんので」
シレッ・・・
「メタな言い逃れしてんじゃねーよ!!
とにかく俺もそれ食いたいんだよ!!・・・よ、よしじゃあ半分っ!!
半分こならどうだ!!?」
「ノーです!!!こんなおいしいご馳走を前にして他人に
それを譲るなど・・・とても正気の沙汰ではありません!!」ウヘヘヘヘ・・・・
「あの・・・コニー・・・?そんなに食べたいなら私の...半分食べる?」
「えっ・・・・・」
「あちょっ・・・ヒストリア!!?コニーなんかに気を遣う必要
無いですよ!?私のこれは、偶然食欲が無いと申し出たジャンが
いたから発生したロスであって・・・ 貴女が気を遣うのは...」
「“なんか”ってなんだよオイ!!!」
「気を遣ってるとか・・・そういうのじゃないよ。
私もジャンと同じで・・・単に食欲が無いだけだから」
「えっ・・・?ヒストリア・・・・あなたも・・・・?」キョトン
「・・・・うん、だから、はい。私の分は・・・もう
半分食べ終わったから。コニーが食べるなら・・・ここに置いとくよ。
ジャンも言ってたけど・・残したら兵長に叱られちゃうから。
替わりに食器だけちゃんと片付けてくれればそれでいいから・・・
だからちゃんと食べてね?」フラッ・・
夜風に当たりに行くと発言したジャンとは違う方向へと
足を向け、寂しげな笑顔を残しその場を後にするヒストリア。
「・・・・・・オイオイ・・・・なんだかな・・・・折角貰えてもそんなの・・・・
味わって食えねえだろ・・・・↓↓」ゲンナリ....
「コニー・・・・・、、、」ヒシッ
「だったらソレ私にくだ(ry...
「ふざっけんな!!大体幾つ食えば気が済むんだよお前!!?」
-
- 93 : 2016/06/18(土) 20:38:15 :
―――エレン・ミカサ(兵団上層部組)卓―――
「~~~それでね、それでね、例の『処刑台』の命名についてなんだけど・・・
今々候補が3つ挙がってるんだ。
...①、最大の功労者である彼の名から取って“狩り取る者 ”
...②、壁の名から取って“荊の槌”...
...③、んで、最後に私の発案で、硬質化・丸太ハンマー!!...
「名前なんざどうだっていい.....」キッパリ
ズズ・・・・
「・・・・流石に最後のは無いな。無難に彼の名前案でいいだろう。」
「いぇ・・・そんな。
オレは・・・ただ自分の力で出来る事をしただけです。
発案者というか・・・設計者は殆どハンジさんなんですし・・・
名前に関しては別にどういったものでも・・・・」
「オイ、あまりソイツを持ち上げるな。
調子に乗るとまた舞い上がって面倒な事になる」
「おっ!!嬉しい事言ってくれちゃって,..といってもね、
キミの言う通り確かに設計、施工に恐らく一番大きな部分で
携わっているのはこの私かも知れないけど・・・
あの“処刑台”は、我々人類全ての想いの結晶だ。
兵団の現体制を支える全ての人々の助力・・・
その中にはリーブス協会の皆は勿論の事、
日夜開拓地で生産活動に尽力して私たちを支えてくれている
人達も含まれている。
こればっかりは安易に下手な名前をつける訳にも
いかないんだなぁ・・・」ポリポリ
「だったら尚更三つ目の案は却下だ。」
「やっぱり安易すぎるか?・・・あ、そうか!感嘆符 があるせいで
軽く見えちゃうか!じゃあそこをどうにかいじって...」
「感嘆符の有り無しに関わらず、君のネーミングセンスは聊か
挑戦的過ぎる。」キッパリ
「そんなァ!!!(落胆)だって、、、だって、“雷槍 ”は結構みんな
気に入ってくれたじゃないか!??」
「そっちはシンプルに纏まってるからな。・・・だが所詮そっちだって
読みをもう少し凝ったものに変えりゃ立派な中二ネームだろ」
「リヴァイまで!!!そんなメタなダメ出しを!!!!」
ウゎァァァアン!!;
-
- 94 : 2016/06/18(土) 20:40:36 :
「・・・・・;」チラッ↩
「・・・・・・・」モクモク・・・
カチャカチャ・・・
先程のやり取りが嘘のように沈静化した今、
隣で黙々とオムライスを口に運ぶミカサを見るエレン。
彼女が食事の際に隣に座る事など当然今まで珍しくもなかったが、
今、この場に於いては・・・彼自身の心境は今までと大きく違っていた。
「(求婚・・・された・・・・、、、のか・・・オレは・・・??)」
「・・・・、、」ムグムグ・・・
「(ミカサ に・・・・・!?)」
「・・・・・・・・?」ゴクンッ・・・
「(つまりガキの頃から家族としか思ってなかったこいつが・・・
オレにとって・・・そういう “家族”になるって事なのか・・・?)」
エレンの内に渦巻いていた感情、それら全てを一言で言い表すには
難儀に思える程、様々な感情が数多入り混じっていたものの、、
第一にその流れを形作っていたのは、言うまでも無く“困惑”の色だった。
「・・・・・どうしたの、エレン?」キョトン
「~~~・・・・・・・・」マジマジ・・・・
こいつが昔から・・・そう、ウチに来たあの頃から
やたらとオレに引っ付いてくるのには勿論自覚があったし
何かにつけて自分を置いといてオレの世話ばかり焼こうと
するのは一緒に居たから誰より知ってる。
夜盗に殺されるか生き延びるかの瀬戸際を“あの歳”で
一緒に切り抜けたんだ。何かしらの恩を感じたってそんなの
は全く不思議な事じゃ無い。
だが・・・まさかそのコイツが・・・・
「(オレと・・・結婚したいと・・・・、、さっき、間違いなく
そう言ったのか・・・・・!?)」ダラダラ・・・・
「・・・・エレン?まさか食欲がすぐれないの・・・?」
先程までの眼前に迫り来るような静かな気迫はどこかに消え失せ、
いつもの調子で自分を気遣う彼女を前に、彼は周囲の喧騒を
意識の外に置いて確認の意図をもって彼女に問いかける。
「・・・・・・・おい、ミカサ。」
「・・・・・・!(やっと口を利いてくれた..!(嬉))
・・・・・何?」
「お前が冗談なんて言わないのは知ってるから
そっちの言ったかどうかの確認はしないが・・・・
お前、“結婚 ”ってのがどういう事なのか、そもそも
理解してるのか・・・?」
「勿論・・・理解している。
私の意識している“結婚 ”とは、つまり・・・
同じ家で、衣食住を共にして互いに支えあって生きていく・・・
そういう事。」
「いや・・・;一緒に暮らす事つったらお前・・・そりゃつまり
兵団に入る前までと同じ生活に戻るってだけの話じゃ..
「・・・・そして訓練兵になるまで・・・つまり今までの
私達二人が経験したそれらと唯一異なる点を挙げるなら・・・
私達の“家族”を新たに設けようという事。
要するに私が。あなたの子を成す事――――・・・・
・・・――――エレン、、私はあなたと、『それ』がしたい。」
「・・・・・・・・・・」
-
- 95 : 2016/06/18(土) 20:42:20 :
「・・・勿論それは今すぐに、という事ではない。
今は・・・まだ先にやらなければいけない事もある。
しかし――
早い遅いはともかくとして私は、エレン と結婚したいと言った。
間違いなく言った。そしてエレン・・・・あなたもそれに
すぐに応じてくれた。」
「・・・・・・・・・・」
「私はあなたの意思を何より尊重したい。
だからこうして確認してくれたあなたの意を汲んで、
もう一度聞いておく。 さっきの返事は・・・・本当に
エレン の正直な気持ちと受け取ってしまって良いのだろうか。
あの返答が何か、場の雰囲気に逆らえない等といった不可抗力から
来たものなのだとしたら・・・私は・・・・・
私はあなたをそんなもので縛り付けたくない」
「・・・・・・・・・・」
未だに口を噤んでミカサの言葉を咀嚼するのみという姿勢を貫くエレン。
二人の間に言葉は交わされず、今は未だミカサの一方的な
意思伝達にのみ、その場の空気は支配されていたが
「そんな事・・・・今更聞いてくるんじゃねえよ。
まったく・・・・お前は本当に・・・・・、、、クソッ」
バクンッ
交わった視線に躊躇いを感じた訳ではないが、
真面目なやりとりに気恥ずかしさを隠せなかったのか、
手元の夕食へと匙を突き立て、ぶっきらぼうに開け放つ口に、
幼馴染手製の料理を放り込むエレン。
オムライスは既に中心部近くまで削り取られており、
彼女が彼へのメッセージを込めて描いた心の紋章には未だ手が
つけられていない状態であったが・・・、その一匙で
『心の形』は大きく半分に欠けることとなり、そのまま彼の
胃袋へと吸い込まれていく。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・美味いな、これ」
「・・・・そんなにおいしい?」
「・・・・・ああ。かなり美味い。これが毎日食えるなら・・・・
“結婚”もいいんじゃねえか」フイッ・・・
「―――・・・!」
そっぽを向いて食事を続けるエレンが素っ気無しに言い捨てたような
その一言に目を輝かせるミカサ。
「・・・・残念ながら、外側の卵はまだ私では上手く焼けないから・・・
その部分はジャンに頼んだ。・・・ので、すぐには作れそうもない。
.....済まない。」シュン...
「・・・そうかよ。・・・けど何でもうまいことやっちまうお前の事だ、
練習すりゃ楽勝だろ。・・・・母さんだって、お前は飲み込みの早さは
普通じゃねえって褒めてたんだ。」
「・・・・・・・・!」
「・・・・だろ?」
「そう・・・だった。そんな事も・・・あった」
「お前の方が物覚えは良い筈だろ、頼むぜこれからも。
何たって・・・“結婚”...なんだからな,,,///」
「(頷)、、.... ・・・・エレン?」
「・・・・何だよ」
「私も・・・おばさんのような立派な“母親”になれるだろうか」
「・・・・・・さぁな。・・・・けど少なくとも
オレより腕力も腹筋もあるんだから父親より
立派な事は・・・まあ間違いないだろ;」
「そういう意味ではなくて」
・・・
・・
・
-
- 96 : 2016/06/18(土) 20:44:04 :
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
(爆ぜてしまえばいいのに....)
「どうした・・・アルミン。まるで断頭台の執行人のように
冷ややかな目をしているようだが。」スッ・・・
「ェッ・・・エルヴィン団長!!!ぁあ、あの、
少し・・・二人の会話を聞き取ろうとしたら
集中しすぎて....つい・・・・!;」ゴクッ
「(...どうだあの二人の具合は。
先程の様子からしても・・・これは既に遠征を待たずして
二人を更に引き合わせるのも難しい話ではないと思うのだが(小声))」
「(どうでしょうか・・・、、ミカサはアレでかなり
自分自身の役目を考えて自身の気持ちを律してる所がありますから。
此方で“何か”仕掛けたとしてもその思惑通りに事が進むとは
考えづらいかと..(小声))」
「(・・・そうか。事は早ければ早いほど助かるのだがな。(小声))」
「・・・・おい。こそこそやってる所悪いが・・・飯が終わったら
ハンジと俺からお前らに1つ伝えておくことがある。」
「はっ...、、!はい・・???僕と・・・団長・・・にですか?」
「話の内容が内容だ。必要最低限の人間の耳にしか伝えねえ。」
「・・・・・・・」
「・・・・俺は呼ばれねえのか・・・?って面してるな、エレンよ」
「ぁ、・・・いえ!!!兵長がそう判断した事に何も異論なんて・・・!」
「心配するな。順序が前後するだけで・・・・
この話はいずれお前に行くことになる。とりあえず
こっちでどうするか、その辺りを大まかに決めた後にな。
ここまで言えば分かると思うが・・・話の内容ってのは
巨人化したお前の力が必要不可欠である、とある
作業に関してだ。」
「(とある・・・作業・・・?)」
「とりあえずはそんな所だ。
飯が終わったら俺とハンジでエルヴィンの部屋まで出向く。
お前も食い終わったらそのまま向え。
・・・それからミカサ。言い忘れてたがお前もだ」
「・・・・?!(エレンへは一先ず伏せておいて・・・先に
ミカサにしておくべき話なのか・・・?!一体何故そんな・・・・)」
「・・・・・お言葉ですが。それは一体何故」
「俺がそうするべきだと判断したからだ。」
「・・・兵長や団長なら・・・私がどういう人間か分かっている筈です。
折角エレンに伏せたとしても・・・私がそのままエレンに
話の内容を伝えるべきだと判断したその時は・・迷わず」
「そうするだろうな。そこまで考えた上での措置だ。
その辺についても・・・お前が“そうするべき”だと判断したなら
・・・・そうすりゃいい。ただこれだけは再三言っておくが・・・
遅いか早いかの話だ。どの道エレンには説明する必要がある」
-
- 97 : 2016/06/20(月) 01:06:07 :
「・・・・?、、、、解りました。
いえ、本心で言ってしまえばよく解りません が。
エレンの事を考えた上で、私の自由が多少容認されるというのなら。
・・・・では、後ほど団長の部屋・・・・ま...で...、?」ピクッ
「・・・・・どうした」
「(気のせい...?今・・窓に・・・・)・・・いえ、なんでも。
・・・・そういう訳だ。折角だから・・・
エレンとはゆっくり話したい事は山ほどあるのだけど、
こちらもとても重要な話らしい。・・・・ので」ジト.....
「そんな嫌そうな顔すんなよ....団長や兵長から
アルミンとお前に直接説明しなきゃならないほど重要な
事なんだろ。ちゃんと聞いてこいって」
「安心して・・・、あなたにするべき話だと私が判断したら、
あなたの耳にはそのまま伝える積り」
「いや・・・;兵長がまだオレにするべき話じゃ無いと判断したなら
別にしなくていいって・・・;後で説明して貰えるなら尚更だ」
「・・・ 嫌 だ。エレンに隠してエレンに関連する内緒話のやりとりを
行うなんて・・・そんな事は私が許容できない。」ズイッ
「ぁあ;もういいって、食い終わったならとっとと
行けよ・・・・・」
「・・・では、エレン、また後で・・・・。それから・・・・忘れないで。」
「忘れないでって、何をだよ」
「・・・・・・・結婚。」
「いっ・・・・!!!!////
いちいち確認取り直さなくていい!!言われなくても
なかったことになんてしねえ!!!いいからもう行けよ!!!」
ブンブンッ!!
「ムッフフフフ....wたったコレだけの短時間でまさか二人がここまで
進展を見せるなんてねー・・・・・・、、こりゃ私たちも急いで
籍でも入れちゃう>?? ねぇねぇリヴァイったら!!!
そっぽ向いてないでなんか言ってよ!!!」ネーエー!!!
「(真顔でスルー)・・・・ミカサ、今日の献立・・・こいつはお前の発案だと聞いたが」
「その通りですが」ツン・・・・
「・・・そうか。
味も見てくれもまあまあ悪くなかった。
・・・機会があればまたエレンにでも作ってやれ。
ああいう単純な癖にえらく鈍い奴を振り向かせるには
下手に言葉で伝えようとするよりも、とにかくそれ だ。
美味い飯を口にすれば自然と素直に喋るようになる。
多少いざこざがあったとしても簡単に行く。そういう事だ」
「・・・・・は、はぁ・・・・・。頭に入れて...おきます///」
(※然るべき報い値※・・・・5点減算)
「・・・・・!!?」
「・・・・・??!」
口を開け放ち、同様に目を驚愕に見開くのはハンジ、アルミンの二人。
「リヴァイ・・・、、あんた今日・・・ホントどうしちゃったの」
ソーイウキャラダッケ...アンタ...
-
- 98 : 2016/06/20(月) 01:08:21 :
「 どうもしてねえ。口下手な後輩と空気の読めねぇ部下が
少しでも上手く行くようにと助言してやっただけの事だ
・・・何かおかしな事をしてるように見えるのか。お前の目には」
「・・・・、いや。べつにそういう訳ではないけど;」
「・・・・なら余計な時間をかけずにとっとと皿を片して
エルヴィンの部屋に来い。お前ら三人もだ。
・・・・・俺は先に行ってる。」
「は、はいっ・・・今すぐ・・・!
っ、ああ、団長の分は僕が食器さげますから!」ガタガタ・・
「すまないな・・・・頼もう」
・
・
「(しかし・・・ああは言ったものの当然気になるよな。
オレの耳に入れる時期を見定める必要があるって事は・・・
『ソレ』は、作業内容に未だ変更の余地があるとか・・・
もっと言えば行うかどうかも決定してない事なのかもしれない。
アルミンとミカサ 二人と相談する必要があるってのは・・・
つまりその辺についての事なんだろう。
どっちにしても兵長の判断に反感なんてこれっぽっちも無いが。)」
「ぉ・・・・おいエレン・・・・?(ソワソワ)」
「・・・?なんだよコニー。そんなこそこそと・・・」
「なんかさっき・・・お前の所のテーブルでミカサが
かなり思い切ったジョークをかましてたような気がするんだけど
・・・・あれは一体どういう・・・・」サプライズ???
「ぁあ、、?
・・・・・冗談な訳ないだろ。アイツはああいう冗句は
口にしない。普通に求婚されたんだよ。」
「・・・・・・・いや・・・・求婚ってお前・・・;
そ、その後・・・気のせいでなければ首を縦に振ってなかったか?
エレンお前・・・・」ガタガタ・・・・
「気のせいじゃねえ。確かに頷いたし、
オーケーも出した。つまり・・・お付き合いだなんだって
手順を全部どけちまって・・・オレとあいつは結婚することに
なった訳だ。今日、さっき、いきなりな。」
「・・・・??!?・・・・~~??!?」
「なんなんだよその顔は・・・・;
こんなにお前にでも解りやすいように説明してんのに・・・
ああ、言っとくけど別に安易に勢いに負けて
許諾したとかじゃないからな。オレはオレでちゃんと考えて・・・」
「エレンお前・・・・!!!ようやくまともに人の気持ちが
理解できるようになったんだな!!!いや~~良かった良かった!!!
しかしケッコン・・・結婚か・・・。。とにかくおめでとう!!!!」バン、、バン!!!
「(ゲホッ・・・・)っ・・・・これはストレートに馬鹿にされてるって
ことでいいんだよな・・・?そうなんだよな・・・コニー・・・!
ぇえ・・・?オイ・・・・!!!」イラッ・・
「しかし・・・それはそうと大丈夫でしょうか。
ヒストリアとジャンは・・・・。なにやら食欲がすぐれずに
御退席されてしまいましたが・・・・」モグモグ・・・・
「あ~~・・・・・;いや、
ヒストリアはともかく・・・ジャンはな。(エレンをチラ見)
・・・これ食い終わったら様子見に行ってやるか」ヤレヤレ・・・
「ぁ・・・・!コニー!!その、それならお願いがあるのですが!」
「・・・・?なんだよお願いって・・・...」
「えっと、実は......
・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・
・ ・ ・
・ ・
・
-
- 99 : 2016/06/20(月) 01:22:31 :
~それより少し前~
―食堂・外周―
時は丁度全員分の料理が配膳台に並び、空腹に喘ぐ団員ほぼ全員が
宿舎の別棟として建てられている食堂に集結してからの事。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・これで全員入ってったか」
周囲の茂みから、食堂の様子を観察している4つの目があった。
「しかし驚いたな・・・・ここは確か・・・俺の記憶では
調査兵団の管轄でもなんでもない普通の農場だった気がするんだが」
「・・・・なにも不思議な事はないさ。僕らが一度手を引いてから・・・
“壁の内側”ではそれだけの事が起こってるんだ
・・・むしろ兵団のメンバーがあれだけ生き残っているのが
奇跡みたいなものだと思う」
そこに息を潜めていたのは・・・依然として調査兵団にとっての
最大の懸案事項でもありながら、最後の不穏分子。
―――すなわちライナーとベルトルトであった。
「何にせよ・・・クリスタが無事だったのは僥倖だ。
後は・・・・アニが無事である事を願うばかりだな」
いざとなれば邪魔になると判断しているのか、
立体機動装置は身につけておらず、かわりに兵団所属時に
着ていたものとは異なる兵服を着用している。
異国の戦闘服か何かだろうか。
「・・・・それもそうだけど・・・僕は君が
あの “戦士長”から一本とってしまったのが
驚きだったよ・・・・まともに戦えば勝ちの目なんて10に1つも無いのに」
「・・・・そこをあえて万と言ってくれないのは喜んでいいところなのかも
しれないが・・・俺だって必死だったんだ。あの場で勝つ為だったら
どんな汚い手でも使う覚悟だった・・・」
「そうは言うけど・・・・ライナー・・・・・・
-
- 100 : 2016/06/20(月) 01:23:30 :
・
・ ・
・ ・ ・
・ ・ ・ ・
~以下回想~
―シガンシナ区―
「やれやれ・・・仲間思いは結構な事だけどね、
お前達二人はやっぱりまだまだ“戦士”として戦うには早すぎたのかな。
この場合、何を第一に優先するべきかは考えるまでもないだろうに」
「ジーク戦士長・・・・!俺達はあなたの言う事の方が正しいと
心で理解しては居ます!!しかし・・・・!
俺にとっても、それからアイツにとっては自分以上に・・・・
アニという戦友の存在は掛け替えの無い物なんです!!!」
「らっ・・・ライナー・・・・!!正気か!!??止めるんだ!!
相手は“戦士長”だぞ!!!こんなの・・・無謀とかそれ以前に
なんの益も無い無用な争いだ!!!考え直してくれ!!!!」
「ベルトルト・・・必死な顔してそんな事言っちゃいるが・・・
アニ のことを一番気にかけてるのは他でもないお前だろう。
ならここは・・・・嘘でも俺の肩を持ってくれると嬉しいんだがな」
「(首振..)。。。。。戦友って。
わざわざそんな言い方しなくても、フツーに友達、
でいいじゃないの。・・・どうせそのくらいにしか考えてないんだろ。
仲間が敵に捕まった、…で、捕虜になってるだか、拷問を受けてるだか
っていう敵の煽情口撃をまんまと真に受けて『助けにいかなきゃ!!』
・・・って焦ってるのが今の誰かさん達だ。
・・・・ま、若いから仕方ない事なんだろうケドね」ポリポリ
「―――仰る事は理解できます!!それが真実であるかどうかも
確認しない事には解らないし、そもそもアニが生きているかどうかも
解らない―――!ですが、万一・・・、万が一俺たちが
『座標』の奪取に成功したとして・・・その上で調査兵団の...
「あ~~・・・・そういう御託はいいから。。
時間勿体無いからさ、やるならとっとと済ませようよ。
・・・・で、どうすんの?
言いだしっぺなんだからやる のはお前なんだろ?ライナー。
・・・・後ろで変な震え方してるベルトルト君に
レフェリーでもさせるのか?」パキッ・・・パキ
「一本勝負で・・・・!どちらかが動けなくなるまでで・・・
お願いします・・・・・!!
そして・・・万一俺が戦士長・・・あなたに勝ったその時は・・・・!」
ググッ・・・・
-
- 101 : 2016/06/20(月) 01:26:42 :
「"万一"・・・・・ねえ。また詰まらない冗談を言う。
お前は・・・・思い切ったことはするが、そんな低い確率に
あえて賭けるような人間じゃない。“正気である無し”に関らずね。
ホント言うともっと勝てるんじゃないかって思ってるから
こういうことしてる癖に・・・・・。。
ぁあ、はいはい。分かったよ。お前が一本取ったなら
お前達二人がしたいように・・・アニちゃんを助けにいくなり
なんなりすればいい。
・・・・けど、もし俺が勝ったら・・・ わかるよね?」
「異論はありません!!!!!」バッ!!!!
「やれやれ・・・・じゃあ始めよっか・・・・(嘆息)まったく、
折角拭いたばっかりだったのに・・・・」スチャッ・・・
「・・・・・・・・・・」
壁外から押し寄せた巨人達の進撃によって廃墟と化した
シガンシナ区大通りの中心にて、一騎打ちの決闘を行うには
あまりに遠すぎる距離を開けて対峙する二人。
片や命を賭けた真剣勝負に等しき集中力をその目に燃やし、
――片や、欠伸すら漏れだしそうな緊張感のない面持ちで
肩をまわして互いの出方を伺う、一対一の睨み合いの最中――
「ッ・・・・・・!!!!!」シャッ・・・
先に口火を切ったのはライナーの方であった。
ガカッ!!!!!!
ズドォオオオオオオオン!!!!
閃光に次ぐ、急激な空気の膨張と豪風。
「ヤル気満々だねぇ・・・・。できることならそのやる気を
使命遂行第一に向けて頑張ってくれれば何も言う事無かったんだけど」
カッ!!!!!
それに応じるように対する“戦士長”もその身に光を纏い、大気が爆ぜる。
ズズン.... !! ガゴッ・・・
現れたのは・・・・15mを超えようかという大型の甲冑に
身を包んだような出で立ちの“巨人”と、その巨体すらも見下ろす
獣のような体毛に全身を覆われた、腕の長い巨人。
先程まで遠すぎる様に見えていた互いの距離は、
巨人化直後から一歩踏み出していたライナーにより
一触即発といった距離まで詰められており・・・・
――――“鎧”が踏み込んだそこは既に“戦士長”の間合いであった
ゴフ ァ ッ!!!!!
ズドッ!!メキメキ!!
ライナーによる開幕突進 を完全に読んでいたような
身のこなしで全身を捻り、異様に長いその腕によるスイングを
所定の位置に置いていた “戦士長”の一撃が、鎧の顔面を捉える。
硬化装甲の継ぎ目にクリーンヒットしたその右フックは、
硬化していない速攻の拳であるにも関らず、
容易にその鎧に亀裂を走らせ、食い込んでいく。
そして・・・先読みしていたにしても、その一撃は・・・
信じられないほど迅 かった。
-
- 102 : 2016/06/20(月) 01:30:08 :
「らっ・・・・ライナーーー!!!!」
「「・・・・・・ンん。 みえみえ。・・・ぶつかってくる前にリーチを考えなよ」」
「「ッ・・・・・・!!!」」
ザガガッ・・・・・ ズシャッ・・・
実際の対人戦であれば今の一撃で綺麗に脳震盪による一発kO...
という展開もあり得たのだろうが、互いに“巨人体”である以上
立て直しの時間が有れば、ある程度のダメージリカバリーは可能である。
痛恨のカウンターを歯牙にもかけず組みにかかろうとする鎧 。
「ダメだライナ―ー―!!!君が打撃戦では勝ち目がないのを
戦士長は完全に読んでいる!!!掴みに掛かろうとすればするほど
打ち込まれるぞ!!!」
「「(ンなこと本人が一番分かってるって…。ただ、分かっていた所で…)」」
「「(分かっていた所で・・・・!!!最早コレ以外に無い・・・・・!)」」ッギギ..!!!
往生際悪く、という言葉以外に今の彼を形容する言葉は無いだろう。
まさに僅かな突破口を遮二無二掴まんとして詰め寄るライナー。
「「ッ・・・・ガァァァアァ!!!!!!」」
ズンッ・・ズン!!ズン!!!ズン!!!!
一旦距離を取った後、再び捨て身のタックルとも取れる
突撃をかけるライナーだったが...直後、唐突に・・・・
彼は、戦士長の思考すら停止させる謎の行動に出る。
「「ッ・・・・・・・・!!!!」」ッズシャッ
ガガガガガガガガガ!!!!!!!
「「 ??? 」」
もう一歩、二歩というところでまた戦士長の無情の拳が
振るわれるかという間合いで、急にその場に踏みとどまったのだ。
「「(・・・?返し の呼吸をずらしたつもりかな・・・?
・・・にしたってすぐ畳み掛けなきゃ何の意味もな....)」」
「「・・・・・・・・・!」」
相手の思考を読み取ろうとしていた戦士長の遥か後方・・・・つまり
ウォールマリアの壁上辺りを指差して停止した鎧 の姿を見て、
瞬間的に、その身を凍りつかせる。
-
- 103 : 2016/06/20(月) 01:33:22 :
-
反射的に脳裏に浮かべてしまったのは、
壁を塞ぎ終わった今、来るべき地下室への探索を画策している筈の
敵対勢力の、あまりにも速すぎる再来。
「「(っ・・・・・まさか・・・・いや!早すぎっ・・・・・・!!?))」」
――――しかし
「「 っ 」」;°д°)↩
当然、壁には何の異変も起こっては居なかった。
そして戦士長が振り向くのとほぼ同時にライナーの布石は打たれていた。
尤もそれは“布石”と呼ぶにはあまりにも幼稚かつ
子供だまし極まりないモノであった訳だが。
「「 な ん だ あ の で っ か い も の・・・ 」」
「「 ッ!!?・・・なっ・・・・ちょっ・・・ 」」
戦士長の“巨人”と違い、『喋る』ことに特化していないはずの
骨格より不意に放たれる、不意打ちのこの一言。
「「 あれっ・・お前、、喋れないんじゃなかっ・・・ あ。。」」
ガギィッ!!!
何とも滑稽な事に、その幼稚な騙まし討ちは
あっさり成功してしまった。その流れから繰り出された組み技は・・・
「ライナー!!!!!」
「「ぐっ・・・・・!!? これは・・・!!!」」
彼が前回、体格差で圧倒できるはずだった相手に
成すすべなく組み伏せられてしまった際の物とほぼ同じ・・・・
アニなどが得意とする関節極めで押さえ込む寝技であった。
「「 ッ・・・ぁあ~~~・・・も少し・・・早く気付けば
抜けられた・・・けどな・・・。仕方が無い・・・・これは・・・」」
グギッ・・・・ ギシギシ・・・・!!!!
その長い両腕すらも絡み取り、最早完全に脱出は不可能な
形が完成していた。
――通常の白兵戦と巨人同士の肉弾戦で最も異なる点を
挙げるとするならば・・・それは単純なスケールの違いなどでは無く、
戦局一転を狙える“急所”への攻撃が殆ど
無効となってしまう事である。
まず第一に、理性を保ち、操縦している“巨人”からは
『操縦者』に対し、生身の戦闘に伴うような
『痛み』がそもそも通っていない
故に生身であれば数え切れないほど点在する人体の弱所と
される神経密集部分も、攻撃の標的としては狙っても
まるで意味の無い場所となってしまう。
加えて・・・周知の通り、精々損傷を与えて
動きを制限できるのは運動の要となる関節や腱といった限られた
部分のみとなり・・・、一撃で屠る事ができる急所はといえば、
“操縦者”を内包する、そのただ一点のみ。
・・・と、するならば巨人対巨人の戦闘において・・・
相手を殺害せずに無力化する方法は、必然、
締めつけの強固な寝技などがもっとも威力を発揮するようになる。
・・・・生身同士の組合いであれば、片腕でも自由になっていれば
目突きや急所への打撃や圧迫といった幾らかの突破口は
存在したものの、それが最早不可能であると判断した“戦士長”は、
潔く自ら巨人の体躯より這いずり出でる
-
- 104 : 2016/06/20(月) 01:36:41 :
「ッ・・・・・・ ぶはっ・・・・ぁ~~あ・・・・やられちゃった。
(フキフキ・・・)
一本取られたよ。・・・ああ、でも実際ガチの殺 り合いだったなら・・
知っての通り、まだこっちにも奥の手はあったからね。
実戦でこの手が通じるとはくれぐれも勘違いしないように
・・・・・OK??」ザッ ズジャッ...
「ヌッっ・・・・・はッ!!!!」ブチブチブチッ・・・・!!
組み伏せられた格好のまま蒸散していく巨人体から降り立つ
戦士長の言葉は彼の耳に届いていたのか否か、それと僅差のタイミングで
自らの“鎧”より離脱するライナー
「ハァッ・・・・!!! ハァッ・・・・!!!!! ハッ・・・・!!」
「ライナーー!!!!大丈夫かっ!!!?」
「どうなった・・・!?俺は・・・・本当に・・・やったのか・・・・!!?(ハァ・・!!)
あの 戦士長から・・・・!!」
「ぁあ・・・・しかしライナ―・・・・勝ったからいいようなものの・・
とはとても言えないくらいに......
~回想終わり~
・ ・ ・ ・
・ ・ ・
・ ・
・
・・あれは・・・・あれは流石に“無い”だろ・・・・(呆)」
「結果良ければ何とやら、だ。お陰で本来なら今も
座標の奪取に備えてテント生活を続けなきゃいけないところを
こうして我侭が通ったんだ。不満を垂らすのは・・・・
ちょっと違うんじゃないのか」
「ああ・・・・!そうだとも、君にはこれ以上無いくらい感謝している。
アニの事を最も心配してるのもきっと僕だし、あの時アルミンに掛けられた
揺さぶりに僕が乗らなければもっとマシな結果だって
あったかもしれない・・・・!
しかしそんな僕から見ても君は毎度毎度無茶が過ぎる・・・!」
「・・・・・・・・」
「最悪あの場で君があんな幼稚な騙し打ちを不発にでも
終わらせていたら・・・・君が戦士長に見限られる結果だって
充分あったかもしれない・・・・!
戦士長は君を、そこまで分の悪い勝負に賭けることは無い
戦士だと評価していたが・・・僕はそういう風に思ってないぞ」
「・・・・・・・・・考え過ぎだ・・・・なんていえた事じゃないか。
心配掛けたみたいで悪いな。・・・しかし俺にとって・・・
アニの身柄はどうしても戦いが始まる前に抑えておきたかった。
縁起でもない事だが・・・その状態如何に関らずだ。
そうでなきゃ・・・“覚悟”も固まらない。・・・・・・だろ?」
-
- 105 : 2016/06/27(月) 00:29:58 :
「・・・・ああ。僕も悪かった。
折角君が恥を呑みこみ、誇りも捨てて通した・・・
“僕達二人の我侭”だ。今その話をするのは止そう.....」
「極めて賛成だ。
・・・・しかしまったく・・・なんなんだ・・・?この猛烈に美味そうな
匂いは・・・・!!さらに残酷なことに皿を運んでいたところからも
察するに・・・今日の調理当番はクリスタじゃないか・・・・!!!
つまり今食堂内で振る舞われているのはクリスタの手料理・・・!」
ゴクッ・・・・
「ライナー・・・・?おいライナー・・・!眼が・・!眼がやばい方になってる!!
気を確かに持て!!お腹がすいてるならホラ・・・ここにまだ
『カ○リーメイト』の余りが・・・」
「いらん!!!5年ぶりくらいに食ったときは“美味すぎる!!”と
絶叫したい気分だったが・・・!!もう飽き飽きするほど食ったからな!!!(涙)」
「贅沢言わないでくれ・・・・!ほら、
メープル味にプレーン味だってあるんだ・・・。」ガサガサ・・・
「味の問題じゃない!!! それ食うと猛烈に喉が渇くんだ!!
ああっ・・・・!!畜生っ・・・畜生・・・!!!俺もクリスタの手料理が
食いたい・・・・!!!!」ヨロッ・・・・
「気持ちはわかるけど・・・!ホラ、やっと食事も始まったみたいだし
殆どの人員が一箇所に集まるこの機に少しでも情報を
集めないと・・・!」ガサッ・・
「・・・待て。俺達が今最も欲してる情報・・・つまりアニの居場所だがな・・・
離反者とかスパイとかそんな生温いものでなく、
壁の中の連中からしたらそれこそあいつは
俺達同様“全人類の仇”なんだ。
そんな、居場所が割れたら殺されてもおかしくないような奴の
居場所を記した“何か”が・・・此処とは限らずとも
何処かに丁寧にしまってあると思うか?」
「なら・・・一体どうするんだ・・・? 誰かを捕らえて尋問するのか?
・・・先に言っておくけどもし僕達の姿を見られたらその時は・・・」
「分かってる。俺達の失敗はそれ即ち、呪われた歴史の
永続を意味する。アニの救出はあくまで俺達二人の切望であって
・・・・“戦士”としての俺達の使命は・・・必ず全うする必要がある。
クリスタをこんな地獄から救い出すためにもな」
「・・・もっとも、僕等二人が何かしくじってしまったとしても、
戦士長はこの二人抜きで作戦を実行するだろうけどね」
「・・・それはあくまでしくじった“俺達”を回収できれば、
の話だろう。・・・・王政が崩壊して、王族のカラクリが
奴らに割れたんだとしたら・・・“引継ぎ”の仕方を知られていても
おかしくない。そうなれば相当厄介な事になるぞ
・・・・まあ、俺達二人が向こうに“利用”されたとして、
それでもジーク戦士長が負ける事は無いだろうがな」
「・・・話を戻そう。で、どうするんだ、ライナー・・・・」
「まず・・・一番情報を得られそうな奴・・・
というよりも安全牌を取るならアルミンだな。」
「意外だな・・・。場合によっては聞くだけの事を聞いた後には
口を封じ なきゃならないのに・・・よりによって一緒の部屋だった彼を・・・
君は躊躇なくやれる覚悟があるのか・・・・?」
「マルコの時とは違う・・・・。俺ももう今までの甘さは捨てた。
やるときは・・・・一思いにやれる。同じ事 だからな・・・結局。」
-
- 106 : 2016/06/27(月) 00:32:04 :
「・・・・・・・・・・」
「それにな、一番にアルミンを挙げたのは、
体力が劣ってるからとか、そういう意味での“安全”を
取上げて言ったんじゃない。
あいつは・・・頭が異常に回る。
突然兵団の陣地の中で、敵と鉢合わせしたとしても・・・
周囲に助けを呼ぶ事が出来ない状況に追い込めば、
冷静に話し合いに応じるはずだ」
「しかし彼は・・・・104期の中でも一番信用できない。
頭が回るという事は・・・それだけ此方を出し抜く機会を
逐一見逃さないという事だ。
あの時の挑発だって・・・彼の虚偽である可能性は
充分にありえる。」
「ユトピア区で拷問を受けてる・・・・っていう例のあれか。
何度も言うがお前、、それはな・・・・・」
「ああ。虚偽『かもしれない』とかじゃない・・・・確実に嘘だ。」
「そうだ。第一向こうは“エレン”の例からも
『巨人化』の条件をある程度理解している。
生け捕りにしている事は充分に考えられるとしても・・・
体に外傷が発生するような拷問を行うのは危険だと
判断するのが通常の考え方だ」
「・・・・それだと、“くすぐり責め”や、“不眠追求”みたいな
“傷がつかない拷問”なら行われてもおかしくないってことに
なってしまうと思うんだけど」
「・・・・やっぱり相当心配してるだろ・・・・」
「僕が彼の言葉を虚偽だと思う理由はそういう部分じゃ無いさ。
彼の言葉は・・・恐らく、10割、全てが嘘という訳じゃない。
彼はちゃんと分かっているからね、他人に嘘を付くときは・・・・
“自分すらも”騙せるように、事実を混ぜて口にするのが
定石だ。アニがおそらく『死んではいなくて』、
彼らの監視下に置かれているというのは間違いないが・・・
何がどう転ぶかも分からない、さらにあの乱戦の最中だ。
誰が聴いてるかもわからないのにあんな事を口走るのは
どう考えてもおかしい。」
「・・・・・・・・」
「更にこの場合・・・相手と会話をする必要が無く、
単純に相手の動揺を誘うだけが目的なのだとしたら・・・
本当の言葉を嘘に混ぜる必要すらなくなる。
彼はそういう土壇場にこそ思いも付かない事をやってのける。
・・・そういう人間だ。」
「・・・・そうだな。言われてみれば・・・
“壁外遠征”でエレンが所定の位置に居なかった事に
焦って、アニと合流せざるを得なかったあの時 も、
アニの動揺を誘う為に、真っ先にエレンの名を・・・・
いや、“死に急ぎ”と口にした。今思えば・・・・
俺達の素性を怪しまれた切っ掛けがあるとすれば・・・・
間違いなく『あの時』だろうな」
-
- 107 : 2016/06/27(月) 00:35:13 :
「・・・そうだ、彼は・・・彼の言葉は何一つ信用できない。
話し合いなんて悠長な事を言っていたら、
無意識の内にこっちの重要な情報まで引き出されかねない。
・・・僕は、命乞いをするくらいの所まで追い込む必要があると思うんだ」
「お前・・・思ってたよりおっかない事を言うな」
「おっかない・・・おっかない,,か。
ライナー。。僕には・・・彼らの方がもっとずっと
恐ろしいものにしか感じないよ・・・彼らは・・・呪われた歴史を
抱え込み、今尚壁に閉じこもる“悪魔の末裔”だ。
これだけの惨状に自ら追い詰められて居ながら、
歴史から何も学んでいないし、また学ぼうともしていない。
そんな奴らに・・・アニはおそらくたった今も捕まっているんだ。
可愛そうに・・・きっと強がっていても内心怖い思いをしてるに違いない。
しかもアニは・・・美人だから・・・もし・・もしも・・・・」ガタガタガタ・・・
「ぉぃ・・・・?,,,おいベルトルト!!!今度はお前が落ち着け!!!!」
ユサユサ
「(フー・・フ――・・・・)・・・・あぁ、大丈夫・・・・。。
しかし、“傷をつけることが出来ないから”といって・・・
もしも彼女が、そのような 辱めを受けていたなんて事にでもなれば・・・
僕は・・・ 僕は・・・・・・・」キッ・・・
「-―――っ」ゾクッ・・
「“戦士長”に許可された期限ぎりぎりを使ってでも・・・いや。。
『約束の期日』を超過して・・・・・何日掛けてでも・・・
兵団に与した人間の寝首を一人残らず掻き切って回るよ.....!」
「・・・・(溜息)
意気込みは理解するがな・・・。もしもアニの身柄が
抑えられそうなら・・・そこでお前がその命を投げ捨てるのが、
あいつにとって果たして後味の良い事なのかどうか・・・
よく考えてから行動に移す事だな」
「・・・安心してくれ・・・僕は使命を全うするまで死ぬつもりもない。」
「・・・・捕まりそうにでもなったら、その場で町もろとも
吹き飛ばす...か?・・・・その時アニがお前の爆発半径に居たら
どうするつもりだ。」
「・・・・・・・・」
「お前の“巨人化”はな・・・とてもじゃないが、
大は小を兼ねるなんて言えないくらい、使い所に難儀する
諸刃の剣だ。“対巨人としての用途”で扱うなら・・・余程
油断をしない限り『エレン』に負ける事は無いだろう。
・・・しかし、調査兵団クラスの兵士が纏まって
お前の項 を狙いに飛び掛ってきてみろ。動きの緩慢さを考えれば
後は“解除”以外に回避手段が無い」
-
- 108 : 2016/06/27(月) 00:49:39 :
「・・・冗談だよ。
そこまで混戦を招くような羽目を外す気は無い。
例えアニの身に『何か』あったとしても・・・あくまで
僕はアニの身柄を無事奪取することに全力を尽くす。
使命の完遂までに何か波風を立てる訳にも行かないからね。
その為には、壁の内側で此方の思惑を気取られるのは
何より都合が悪い。」
「分かってるならそれでいい。
さて・・・飯を食いながらそんな重要な話を都合よく
駄弁ってくれるとは思えないが・・・少しの可能性でも見逃す訳に
いかないからな・・・。できるだけ兵長か、団長のテーブルに近い
窓を探して、会話の内容を拾うぞ」ソロソロ・・・・
「分かった・・・手分けして探ろう」
・
・ ・
・ ・ ・
・ ・ ・ ・
~時は戻り・リヴァイ・ハンジ・アルミン・ミカサ移動直後~
-食堂-
「しかし珍しい事もあるんだな・・・」
「・・・・ああ。あのサシャがジャンの奴を心配するなんてな
・・・そもそも何が原因で飯も食えないほど落ち込んでるのか知らないが。」
「(じっとりした目)まあ・・・・エレンが知る必要はないだろうな。」
「・・・なんだよそれ。大して気にしてなかったのに
そんな言われ方すると逆に気になっちまうだろ」
「気にしなくていいって。訓練兵の時からお前ら
あんな調子だったろ。・・・とりあえずジャンの方は芋女に
任せといて、俺達はヒストリア探そうぜ。」
「・・・・あのよ、言おう言おうと思ってたんだが・・・
探してどうすんだよ・・・?
ジャンにしてもヒストリアにしても、一人にして欲しいから
どっか行ったんだろ?
・・・だったら探し出してちょっかい出したって迷惑なだけじゃねえのか」
「・・・・そう言われると何故だか
正論に聞こえなくも無いんだけどな・・言ってるのが
エレンだと思うとどうも納得できないんだよな」
「・・・・なんだよそれ・・・(苛)
まあいい、とにかく探すんだろ?だったら手伝う。
・・・どうせまだ部屋に帰っても筋トレくらいしかすることないしな」
「この期に及んでまだやるのか・・・もう地下室の探索まで
日も無いんだからゆっくりしてろよ・・・・(呆)
一応言っとくけど、多分どんなにエレンが必死こいて
鍛えても・・・それでミカサを追い越す事は不可能だと思うぞ..?
訓練兵団入ったばっかりの時から思ってたけど
あいつは絶対どこか俺達と体の構造が違う。ほら、
『東洋』っていう島国出身の戦闘民族の血が濃いんだろ?
きっとそれだって・・・あの馬鹿力の元になってるのは」
「そればっかじゃねえよ。絶対に。
事実あいつの母さんは・・・何度か会ったことあるが、
純血の東洋人だったけど、普通の女の人だった。
・・そりゃ顔こそは今のミカサにめちゃくちゃそっくりだったが・・・
そんな武闘派だとかって話は父さんからも何も・・・・」
「・・・・じゃ、鍛え方がまるで俺達と違うかだ、それしかない」
「それなんだよ・・・なんとかしてあいつがどうやって
あそこまでの身体を作ったのか、それが知りたいんだ。
女であそこまでの力を発揮できるんだ・・・男が同じ方法で
鍛えればきっとあいつを超えることだって・・・」
「・・・だから・・・・・なんでそこまで頑なにミカサを追い抜く事に
拘るんだよ?別にいいじゃねーか。そんなに気にしなくたって」
-
- 109 : 2016/06/27(月) 00:56:32 :
「そんなに気にするだろ!!
あいつは女で・・・しかもついさっきオレとあいつは
婚約しちまったんだぞ!――このままだとオレは嫁より非力な
情け無い夫になっちまう・・・・!!!」ブルブル・・・
「いいよもうそれで(呆)...
式挙げる時はいっそミカサにお姫様抱っこでもしてもらえ」
「・・・マジでやられそうな気がするから冗談でも止めてくれ」
・
・ ・
・ ・ ・
・ ・ ・ ・
―食堂外周―
「おい・・・・・ベルトルト」
「なんだいライナー。
団長達の卓の会話を聞いただろ。あの面子で内緒話をするなら・・・
そこで一番有力な情報を得られそうだ。なんとかして後を尾行 けよ...
「それもそうなんだが・・・・1つ聞きたいことがある(滝汗)」
「・・・・聞きたいこと?」
「・・・・ああ。
さっきコニーなんかも口にしてた名前だが・・・・
“ヒストリア”ってのは・・・誰の事だ(真顔)」
「会話の内容から察しても・・・ジャン以外に食堂を途中退場したのは
クリスタだけだ。・・・きっとクリスタの事じゃないのか。
・・・ほら、集めた情報の通りなら・・・
王政の崩壊と同時にオルブド区で仕留められたデカイ奴の話だけど・・・
あれに止めを刺した少女が、王位を継いだとかどうとか・・・
つまり彼女の本名かなにかじゃ」
「・・・本名!!?な、何故・・・!今までクリスタは自分の名前を
偽ってたっていうのか??」
「・・・それは僕に聞かれても分からないよ・・・
本人に会えるときがあったら直接聞けばいい」
「・・・・・本人に会える時って・・・、
そりゃすべての仕事に片がついて、ようやく世界が
あるべき姿に戻ってからじゃないか。
そんなに先までこのモヤモヤとした気持ちを
そのままにしておかなきゃならないってのか」
「・・・・我慢してくれ。僕だってアニの無事すら分からない現状では
気が気じゃ無いんだ。・・・そういうところじゃ、彼女の無事だけでも
分かってる君はまだ良いじゃないか」
「・・・・分かった。俺個人の我侭はこの際置いといて・・・
あの組の後を尾行けるか・・・。しかし団長の部屋が二階だったら
どうするつもりだ」
「それは・・・宿舎の中までついて行くしかないだろうね」
「・・・・どうするんだよ・・・俺もお前もこの上なく目立つぞ・・・
この背丈だからな。」
「・・・・変装でもしてみる?」
「いや変装ってお前な・・・幾らなんでも無茶が・・・(ハッ)」
「・・・・・・・・・・・!!!!」
窓枠をはさみ、壁に背を預けていた二人の背筋が瞬時に凍りつく。
一体どのようにして室内への潜入を行うかというライナーの
問いかけに応えたのは、共に隣で冷や汗を流している戦友ではなく・・・
「話・・・全部じゃ無いけど聞こえてた。貴方達二人が、
もっと見過ごせない目的をもっているならすぐに皆を呼ぶ所だと
思うけど・・・どっちにしてもそうなったらお互いに
良くないと思った・・・。
だから話し合えるなら落ち着いて返事して欲しいの」
つい今しがたまで二人で話していた元 同期の女子。
――即ち、クリスタ・レンズ 改め・・・ヒストリア・レイスであった。
-
- 110 : 2016/07/01(金) 00:16:32 :
「くっ・・・クリスタ!!!!」
「ライナー・・!声が大きい...!!
それに驚いたり喜んだりしてる場合でもなくなった・・・・!!
姿を見られた上にこっちの目的まで聞かれてしまったんだ・・・
覚悟は決まってるんだよね・・・・」ギリッ・・・
「1つだけ聞いていい・・?貴方達は...」
「おい・・・おいおいおいちょっと待て・・・!
覚悟って何だ・・・・?!相手はクリスタだろうが・・・!
まさかお前・・・・・・・」
「まさかも何も無い・・・!彼女は現状調査兵団に属する兵士で・・・
名実共に僕らの“敵”だ・・・。君にその勇気が無いなら
この場で下せる決断は2つに1つ・・・。彼女を
「おい・・・・そこまでにしてくれベルトルト。
軽々しく口にした覚悟を撤回する気も更々無いが・・・
俺はお前をこの手にかけるような事になるのだけは御免だ。」
「ねえ」
「・・・落ち着いて聞いてくれライナー。
僕は選択肢の数を2つといったはずだ。1つは口にしただけで
君に殺されてしまいそうな気がするからあえて口にはしないが・・・
もう1つ、この場で彼女を拉致する。この2つ以外に
この場を上手く収める手立ては無いよ・・・・」
「・・・・あの、」
「却下だ・・・!どちらも今後の作戦続行に支障が出る!
勿論クリスタが大人しく付いてきてくれるっていうなら
俺だってそうしたい・・・!...だがそんな甘い展開は期待できそうもない...
「ちょっと 聞 い て く れ る...!?」キッ・・・・!!!
「っ・・・!!」
ゾクッ・・
「・・・ス、スマン!何だクリスタ!!?」
ビクッ
「・・・まったく、貴方達二人・・・自分が壁の中で
どういう立場か分かってないでしょ・・・。。
それと・・・どっちでもいいけど、私は“クリスタ”じゃない。
私の本当の名前は・・・“ヒストリア・レイス”。
もう・・・自分を偽らないで生きるって・・・
約束したから。私が二人に聞きたいのはその約束をした
相手が・・・今どこでどうしてるか、それだけなの」
「それは・・・まさか」
「・・・・・・・・“ユミル”はどこ・・・・・・?」
静かにそう口にした彼女の顔は、一件いつも通りの顔に
見えなくも無かったが、直ぐ傍で彼女の怒気を感じ取ったライナーは
背筋から全身に危険信号を走らせる。
「ねえ・・・・答えてよ・・・ユミルは・・・・・私だけ置いて勝手にどこか
飛び出していったあの『クソったれ』は・・・・今、何処で、何をしてるの・・・・!!」
キリキリギリ・・・・!!!!
以前の彼女なら何を間違っても口にしなかったであろう
その場に居ない同期の罵倒を行い、
端正な顔に並んだ、大きな二つの瞳を見開き、
怒りを露わにする....
-
- 111 : 2016/07/01(金) 00:19:12 :
そんな彼女の静かな激情に慄き、ただ固まるしかない二人。
「お・・・おいおいクリスタお前・・・気のせいか・・・?;
お前みたいに上品な女子がそんな汚い言葉を使うもんじゃ・・・・」
「クリスタじゃないって言ってるでしょ!!答えて!!!
ユミルは無...、、何処に居るの!!?」
「・・・・・それは・・・・・・」
「・・・・・・・!!」
「・・・・・すまないが…言えない。」
「そう。・・・でもどうせ壁の外にいるのは分かってるから!!
・・・じゃあ場所はどうでもいいから生きてるかどうかだけでも
教えてよ!!!あいつはまだ何処かでのうのうと生きてるの???!
それとも巨人に喰われてくたばった!!?
・・・・・ねえ、どっち・・・・!!?」
これだけの大声を上げればいつ誰が来てもおかしくないという状況で
喚き散らすヒストリアの背筋が、言葉の最中には徐々に震え始め・・・
ついには一筋の涙を頬から零し、その場にへたり込んでしまう。
「すまない・・・・・!!!
それも ・・・・・言えない....!!言えない約束 なんだ・・・・」
「約・・・・・束・・・・?;約束って・・・・誰との約束よ・・・・!」
グズッ・・・・ズルッ・・・
「決まってるだろ・・・君が今、『クソッたれ』と罵った・・・
ユミルとの約束だ。僕とライナーは・・・まあ、
君達からしたら何の事とも理解できないかもしれないが
彼女に“救われた”んだ。
僕には君のその怒りの理由がどうしても分からない。
僕達二人をそんな風に憎んで、今すぐにでも刺しに来るなら
それは尤もだと納得できる・・・、しかし何故....」
「貴方達の質問なんて訊いてない」ギリッ・・・
「っ・・・・・」
その目に宿る、とても静かな拒絶の色。
・・・二人の知る、以前の人当り良い彼女なら決して
見せる事の無かった静かなる激憤を前に、此処が何処で 、
互いが現在どのような 関係であるかを視線だけで
再認識した二人は、静かにその身を一歩退かせる。
「・・・・そう・・・・だな。
そもそもなら見つかった時点で仲間を呼ばれて拘束か・・・
即、頭を飛ばされるのが当然なんだ・・・・済まない、
何故そうしなかったのかはあえて聞かないが・・・・
一言だけ言わせてくれ。俺は・・・お前の無事が分かって
心底安心した・・・ク・・ああ、いや・・・ヒストリ・・ェ?だったか・・・?」
「ヒストリア !!!!」クワッ
「悪い悪い・・・!聞いた事も無い名前だったからな・・・・
しかし“ヒストリア”・・・か・・・・ぁあ、良い名前だ。
何処と無く高貴な感じがしてお前にピッタリな・・・・」
-
- 112 : 2016/07/01(金) 00:22:39 :
「そ れ よ り も ・ ・ ・ ・ 何?ひょっとして・・・
この場から何も失わずにおさらばできると思ってるの・・・?」
ガシッ・・・・・
「ウホッ!!!????」ビクッ
その場で身を屈ませていたライナーの首に回される、
細くしなやかな腕。それは彼女にとっては全身全霊をかけた
必死の拘束だったが・・・力量で言ってしまえば彼にとっては
子供にしがみ付かれているのと同じ程度である。
拘束を受ける側であるライナーの屈強な体格とそれに伴う
膂力をもってすれば、身震いだけで振り切れるであろう、その
チョークスリーパーは・・・しかし
「ラ・・・ライナーー!!!だから言ったんだ!!!直ぐにこの場を・・・!」
「・・・・ぬッ・・・グゥゥゥ・・・!!!!///////」
ダラダラダラ・・・・
「吐け!!!ユミルの居場所が無理なら・・・!
貴方達の他に居る仲間の情報を置いていけ!!!でないと・・・!!
このッ、、、く、びを・・・・(ンギギ・・・!!)」
プルプル・・・
彼にとっては、神をも縛り封じる天の鎖に等しい拘束力を発揮した。
「ぅ・・・・動けん・・・・!一歩も・・・・!!というか動きたくない・・・(本心)!!」
ムギュゥゥ.....
「ライナー!!ふざけてる場合か!!?ホラ、とりあえず早くこの場を・・」ガシッ
「もう・・・捕まってもいい・・・!殺されてもいい・・・・!!
っていうか・・・使命とかそういうの全部どうでもいい・・・・!!!」
ズルズル・・
・・・・ヒストリアをおんぶした様な格好のライナーを、
二人まとめて引き摺ってでも移動しようと必死に牽引するベルトルト。
傍から見ればそれは・・・全人類に弓引く逃亡者と、
それを逃がすまいと健闘する最中である
全人類を傅かせる女王の図には・・・・とても見えなかった。。。
-
- 113 : 2016/07/01(金) 00:24:08 :
~それより少し前の事~
― 食堂・バルコニー ―
「~~~~,,,,」ソロ~リ・・・・
「...........」ボケェ~~・・・
「ぉ~~い・・・・ジャン・・???あなた本当に大丈夫ですか?」
片手に先ほどジャンから譲り受けた皿を載せ、
恐る恐る様子を伺うようにして、食堂のバルコニー部分の陰から
顔を出して問いかけるサシャ。...しかし対するジャンはと言えば
「・・・・ぁあ?・・・・・・――あぁ。」フイッ・・
「頂いてしまってから言うのも何なのですが・・・・
あなたちゃんとゴハンくらい食べないと体壊しちゃいますよ」
「・・・・・・・・・・」
サシャの言葉は確かに耳に届いている様子だが、
それでも反応が極端に鈍っている彼の様子を見るに、
まさに心ここにあらず・・・といった状態にあるのは
サシャの目にも一目瞭然である。
「その台詞、マリア奪還前まで盗み食いを自粛する程までに
消沈してた誰かさんにもそっくりそのまま言ってやりたいな」ハッ
「そーいう揚げ足をとりますか!あれは・・・・アレですよ!
流石の私だって・・・・目の前で人が沢山死んだり・・・
死なせたりっ..そういう・・・・色々あったから・・・・だから,,」↓↓
「・・・・ぁー・・・・クソッ...悪ィ悪ィ、、悪かったって。
飯食ってん時に思い出すことじゃ無ぇだろが。
っつか、こんなとこで食ってねーでテーブルの上で食えよ。
なんだって俺なんかにちょっかい出しに来やがる?
おとなしく一人にもさせちゃ貰えねえのか」
「ごっ・・・ごふぁんふぁ みんふぁふぇ ふぁふぇふぁふぉぅは っ・・・・ングッ」ムシャムシャ
「ぁっ・・・くそ!!!口にモノ入れて喋るんじゃねぇ!
みっともねえな・・!
親御さんやお前以外の家族には悪いが・・・・本当に名は
体を表すって言葉通りだぜ・・・!」
「(ゴクッ)・・・?(訝)
何のことですか・・・・・?」
「お前の“ブラウス”っていう、その苗字がだよ!!
そいつは一地方で言う所の・・・
"うるさいもの”や”轟音”を指す言葉だ....!
飯を食いながらもべちゃくちゃうるさかったり
大砲みたいな屁をぶっ放すお前にはこの上なく
似合いな苗字だなと・・・・、そう言ってやったんだ!」
「・・・・・・・・・・」
-
- 114 : 2016/07/01(金) 00:28:32 :
「俺はな、うるさい奴が側にいるとイライラすんだよ!!
故郷 の母ちゃん を思い出すからな!!!
分かったらとっとと戻って食堂で大人しく食って...アガッ
ガチッ・・
ジャンの言葉は、彼がまさに喋っているその途中、唐突に遮られた。
サシャが彼の不意をついて口に差し込んだ匙によって。
「がっ..へめっ・・!!! 」
「人のことうるさいうるさいって・・・
今どちらかといえばうるさいのはあなたの方です。
・・・・・違いますか?ジャン。」ホラ、スコシデモイイカラ タベテクダサイ
「~~・・・・・・・・・・・」
ムグッ・・・・ゴクッ
「ジャン・・・・、あなたの気持ちも分かりますよ、
しかしやっぱりゴハンを食べずにこうして塞ぎこんでいるのは
お体にはもちろん、心の...
「"気持ちが分かる"・・・だと?お前に今の俺の心境が分かって堪るか。
食い物にしか執着できないお前に、目の前で片恋相手が
他の奴と婚約を結ぶ場に居合わせちまったこの俺の気持ちがな。
・・・しかもよりによってその相手が、
俺にとって最も嫌いなタイプの人間ときた。
・・・・まあ、
そんな奴の事しか見る事ができない 女を諦められなかった
俺も悪いんだろうけどな・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
暫くの間が置かれて、それから切り出したのはサシャだった。
「いいえ、ジャン。“悪い”だなんて・・とんでもない。
貴方はとても正しいと思います。
好きで好きで欲しくて仕方が無い物を諦められないというのは…
人として当然の事だと思います。それは食べ物でもなんでも
同じだと・・・・私はそう考え
「お前のその感覚と一緒にすんじゃねえ。だからお前には
俺の気持ちなんざ理解できねえと言ったんだ」
「・・・(溜息)わかりますよ・・・私にだって・・・・貴方の気持ち。」
「・・・・何だと?」
「“意中の人”が目の前で、違う異性にすっかり
夢中になってしまっている・・・そんな状況の事を言っているんですよね?
・・・だったら私にも貴方のその気持ち はよくわかります。
・・・今、この状況がまさにそれですから」
「 」
「しかも・・・その人 は、片恋相手への想いがかなわないと
落胆して、食事も喉を通らない有様で。
そんな姿を見せられたら・・・せめて元気だけでも取り戻して
貰いたいと考えるのが普通の....
「 おい、 お前・・・・ 今 な ん つ っ た 」
-
- 115 : 2016/07/01(金) 00:31:48 :
「・・・・おやおや。聞こえませんでしたか。
・・しかし・・・そうですね、普通に聞くのは私としても
とても恥ずかしいです。あなたが私に言いたい事は分かりますので、
どうかここは先に私に質問させて貰えませんか?」
「・・・・・・・(なんだ・・こいつ・・・??何を言ってる・・・?!いや・・・その前に)」
――こいつ・・・本当にあの 芋女なのかよ...!!?
ジャンがそんな言葉を心中で呟きながら、
嫌な汗を流してしまったのも無理は無い。
たった今、眼前で自らに語りかけてくる彼女 の顔も、声も、
そして普段から必要以上に丁寧なその口調も―――
それら全てが、普段の彼女のそれ とはあまりにかけ離れていたから。
とても落ち着いていて、尚且つ理知的にすらみえてしまう
その振る舞い。1つに束ねた艶のある髪と、黙っていればそれなりに
見栄えのする整った顔立ちに、幾らかの幼さを残す柔らかで大きなその瞳。
「あ・・・、変ですか・・・?
ジャン...ぁ、あなたが・・・うるさい人は嫌いだというので
極力ミカサのように静かな物腰で話しているのですが・・気持ち悪かったり
変な感じがするなら遠慮せずにそう言って貰いたいのですが」
「・・・・いや?;
変じゃ・・ねえな。寧ろ・・・・・・」
「・・・む、寧ろ・・・なんですかその先は(ゴクッ)」
ドキドキ
「・・・・寧ろこれから先もずっとそうしてろよ。
何なんだよお前・・・、静かにしてりゃ、、、普通にマシじゃねえか・・・!
ふざけんなよお前・・・ 納得がいかねえ・・・・!!(イライラ)」
少し前にコニーに言われた言葉を思い出し、
その場では即断で否定的な切り返しを行ったジャンであったが、
いざこうして淑やかな物腰を見せる彼女を前にした途端、
その偏見がいとも容易く打ち砕かれてしまう程に・・・
一時限りとは言え、暴食の彼女が見せた瀟洒な姿は
彼の素直な気持ちを確実に射止めていた。
-
- 116 : 2016/07/01(金) 00:35:54 :
「(なるほど・・な。大人しくしてさえいれば・・・
外面 だけは・・・まあ、マシなのかもしれねえ。
・・・・しかし今一番問題なのはそこじゃねえ・・・・)」
「なっ・・・!?なんですかその、喜んでいいのか
怒るべきなのか非常に対応に困る意見は・・・!」
「そりゃこっちの台詞だ!!
今までのお前は一体何だったんだ!!?
暇さえ見つけりゃ芋を盗み、人前でも平気でそいつを貪った後に
何かを思い出したかの様に屁をひり出してた今までのお前は・・・・!」
「っ・・・、失礼な!! 私、そんなに人前で放屁を我慢できないほど
だらしない人間じゃありません!」
「今、とりあえずそっちはどうでもいい・・・それよりもお前よ・・・、、
お前が何も聞いてこないなら俺から聞くぞ。
お前・・・さっき、“意中の人”とかって言葉を使わなかったか」
「使いましたけど」
「お前が本来方言訛りの凄まじい地方出身だってのは
一応頭に入ってる。・・・そのくせやたら畏まった言葉ばっか使う理由は
・・・・この際俺にとっちゃどうでもいいことだ。
・・・だが、そいつの・・・その言葉の意味は分かってるのか?
“意中”ってのはお前・・・・」
「分かってますよ!!ちゃんと勉強して・・・
意味を理解してるから使ったんじゃないですか!!!
つまり物凄く簡単に言って、“好きな人”とか・・・
“気になる人”・・・で合ってるんですよね!?」
-
- 117 : 2016/07/01(金) 00:36:40 :
「ああ・・・そうだ。それで合ってるが・・・
だったらお前、さっきはどこのどいつ を指して“意中の人”なんて
言いやがった・・・?話の流れ的におかしいじゃねえ...
「決まってるじゃないですか。私の目の前で今・・・
片恋相手の恋愛成就に落胆している人といえば、この場に居る..
―――ジャン、あなただけですよね」
「お前が、俺を?好いてる・・だと・・・・?」
オソルオソル
「・・・ほぅ、、流石はジャン。あなたホントに思ったことは
なんでも口に出来てしまうんですね。
お陰で私がそれを直接口にせず済みました。流石に・・・
それを面と向かっていうのは恥ずかしいですし・・・・。。
ぁあ、ですが1ついいでしょうか??」
「・・・・・?」
「分かりやすく言えば・・・それでもいいのですが、
正確にはですね・・・私の言う、“意中”というのは、
未だ先程上げた例のうちの一つで、“気になる人”の段階で
留まっているのです。
何故かといえば・・・・私、貴方が先ほど言ったように、
何かを食べたいと思う気持ちよりも強く異性を想った事が
今まで無いんです。・・・・だから、ちゃんとした『恋』というのが
どういうものなのか、分からないんです。
・・・つまり、、、ですね・・・・」
「おい・・・・悪い冗談なら勘弁してくれ・・・
そんな性質 の悪い冗談を真面目でマトモな面でされる
こっちの身にもなってくれ・・・・(滝汗)」
「・・・・冗談じゃないって言ってますよね。ジャン、
あなたどんだけ疑り深いんですか・・・・(呆)
ええ、じゃあ分かりました、私があなたをどういった経緯で
“気になる”ところまで至ったのか・・・まずそこから
お話しますから、その前に私があなたに問いかけたかった言葉を
一先ず聞いてもらえますか(深呼吸)」スゥゥ.....
ガッ
「・・・・・・・??;」
背を反らし、その肺一杯に夜空の空気を取り込むのと同時に
ジャンの両手を掴み取るサシャの掌。
汗ばんだその手から、彼に自分の緊張が伝わる前に、
更に一歩詰め寄った彼女は、実にはきはきとした声で――
夜空を貫く一筋の矢のような声でもって―――こう言った。
「――ジャン、永く続いた片想いが唐突に終わってしまった
あなたの気持ちも分ります。それはとても辛い事なんでしょう。
・・・でしたらこの際ですから心機一転して・・・
今度は私の事を好きになってみませんか?」
-
- 118 : 2016/07/08(金) 04:25:43 :
―調査兵団・一時拠点・食堂付近の茂み―
「・・・で、。何故かこういう事になってる訳だが・・・」
「・・・・・・・・・・・・・何故かじゃ無いよ。――最悪だ・・・・
アルミン以上に・・・いや、それは言いすぎかもしれないが、
君が同伴であることを考えるとこれ以上なく厄介な相手に
見つかってしまったじゃないか。
・・・それも、
僕らの知ってるいくつかの情報と引き換えに・・・
アニの“居場所”をなんとか調べてきてくれるとは
言ってたけど・・・此処を下手に動いたりすれば即
調査兵団総出でこの場を包囲するとまで脅された。
・・・念のため確認しておくけれどライナー・・・僕は・・・・」
「分かってる。お前は・・・お前なら、いざと言うときには
『やる』んだろう。その時は・・・・
俺は、なんとしてでもクリスタだけはその場で守ってみせる。
だから遠慮なくやればいい。・・・もしも、
そうなったら の話だがな・・・。
だがクリスt・・・おっと、ヒストリア・・・だったな。あいつは・・・
約束は守る奴だ。意外と攻撃的な一面もあるのには衝撃を受けたが
・・・・自分を一切偽らないあいつの顔も・・・それはそれで美しい」ホッコリ・・
「・・・君が彼女をどういう目で見てるかはどうでもいいけど・・・
ここで考えるべきなのは、彼女の真意だ。
彼女は・・・アニの居場所を“調べる”と言っていた。
居場所が判明しさえすればそれを教えることも出来る・・・
つまり彼女 は今そういう状態にある・・・・そういう事なんじゃないか」
「・・・・k、、ヒストリアを疑う訳じゃ無いが、そこは今
何とも言えないな。この目で見るまでは。
・・・・しかし、アニは“どうやら”生きていて、
情報なんぞ引き出せる状況に無いのだとすれば・・・・
考えられる可能性は・・・限定されるな。
いくつかある仮定の中でもアニが無傷で居られるモノを
ひとまず前提に考えるなら・・・・
まず、アニを見つけても俺達二人が“巨人化”せずに救出するのは
不可能だろうな。」
「・・・・やはりその線で見ておくべき・・・なのか・・・?」
ブルブル・・・・
「・・・まだそうと決まった訳じゃ無い。
それに・・・もしそう だったなら、連中がアニに指一本触れる事が出来ないのは言うまでも無い。
・・・お前にとってはその方が安心だろう」
「そんな楽観的で居られるものか・・・・!
敵に情報を漏らさない為・・・、、自決が間に合わない場合にとる、
文字通りの最終措置だぞ...!!?
自発的な解除もできないし、もし“現物”を僕らで何とか
救助できる時がやってきたとしても・・・上手く行くかどうか...!」
「そこにあいつが居れば・・・ゼロじゃないだろう。
精神的な拷問すら受けずに済むんだ、
俺はその方が安心できると思うが・・・・」
「・・・・ああ・・・・、君の考え方だって間違ってはいない・・・
でも僕はそっちの可能性は・・・できるだけ考えたくない。」
「それはそうと・・・俺達今晩中にここを動けるんだろうな・・・・」
「君が盲目的に崇拝してる“彼女”を信じるしかないだろうね・・・
僕は正直今すぐここから脱出したい気分なんだけど」
-
- 119 : 2016/07/08(金) 04:29:12 :
―調査兵団・一時拠点・エルヴィンの居室―
「・・・・すみません、もう一度・・・・いいですか。
私には・・兵長の言葉の意味が理解できませんでした」
普段の声のトーンをそのまま保ちながらも、
会合の劈頭からリヴァイの口より告げられた一言に対し、文字通り
理解が追いつかないという困惑の色を織り交ぜて挙手をするミカサ。
その隣にはミカサと違い、無言で俯きながら顎に手を添えて
考え込むアルミンの姿が。
リヴァイの言葉の意味をあらゆる角度から捉え、
既にそれに対する返答すらも、彼の頭の中には浮かんでいた。
「、、まあ・・・いきなりこういわれて理解が追いつかないのも
無理は無い。私も・・・・前以てこいつにこの案を進言された時は
流石に時期尚早というか・・・冒険が過ぎると思ったさ。
しかし、我々調査兵団が偶然手に入れたこれ が、果たして
人類に更なる希望をもたらすモノなのか、はたまたありったけの災厄が
コレでもかって位に詰め込まれたパンドラの箱なのか・・・
ヒストリアの情報による考察は出来ても、使ってみないことには
分からない」
「で・・・ですが・・・・そんな、使ってみたところで確実に
何がどうなるかも分からないものを・・・」
「・・・その様子を見るに繰り返し説明する必要は無いように見えるが・・・
まあ、今メガネが言った通りだ。使ってみねえ事には
薬の効き目も何も分かりゃしねえし・・・・こいつ を預かってる俺が、次の作戦中に
こいつごとオシャカになる事態も想定しとくべきだ。
・・・折角の拾い物だからな。使えるうちに使っておくべきだと判断した。
・・・どうだ、お前かアルミン・・・おまえらどっちか 『巨人』になってみる気は?」
エルヴィンの部屋の卓上に置かれた箱。
その中身をその場に居る全員に見えるように持ち上げながら、
再びリヴァイは先に口にした文言と同じ言葉を繰り返す。
無論その提案は、実行の末にどのような結果が待っているのか
その場の全員がまったく予測できない類のものであり、
とても軽はずみに持ちかけられる様なものではなかったが・・・
まるで期せずして手に入った酒瓶を譲ろうとするかのように、
リヴァイの口調は軽いものであった
-
- 120 : 2016/07/08(金) 04:32:27 :
「・・・・どうって・・・・そんな、何がどうなるかも分からない物を
進んで使う気にはなれません・・・・!
それに私は、今のままでも充分巨人と戦えます・・・・・!」
「・・・だろうな。俺も同意見だ。
今のままでも千人分働けてるとか言われてた俺が・・
いざ巨人になってみたら拍子抜けするほどに
仕事が出来ない、単なる“でくのぼう”になっちまった...
なんて結果に終わっても困る。ならついでに聞くが・・・
なぜ俺がお前ら二人にこの話を持ってきたのか・・・その理由がわかるか?」
「なぜ・・・と言われても」
「・・・エレンの身に『何か』あった時・・・僕達みたいに
親しみの深い人間の方が都合がいいから・・・ですか」
「・・・・・・・?!」
「・・・大体お前の言わんとしてる事で合ってるだろうな。
・・今回俺とメガネでこうして話し合って決めたのは・・・
“巨人になれる”奴を一人増やして戦力の増強を図ろう
・・・なんて単純な目的からくる物じゃねえ。
ヒストリアの情報からある程度お前達の頭にも入ってるだろう。
“巨人化の制御”に必要な条件と・・・その特性の“引き継ぎ”
この話の本題は・・・そいつでエレンの中の“始祖の巨人”を
奪われたりした際の保険をかけておく事だ」
「1ついいですか・・・?;それを実践してみるにあたってぶつかる事になる・・・
根本的な問題については解決してるんですか・・・・?」
「根本的な問題・・・とは?」
固唾を呑み込みながら尋ねてくるアルミンの質問の意図が既に
分かっているのか、疑問系で返しながらも全く問題ないというような
態度を崩さないリヴァイ。
「ヒストリアの話では、『その薬』で得られる力は
それのみでは未だ知性の無い巨人と化してしまうだけで・・・
無くした知性を再び得るには、他の“巨人化を制御できる”人間を...
正確にはその脳髄を取り込むという事だったはずです」
「・・・・そういう事になってるな。話の上では」
「では・・・・僕かミカサのどちらか一人がその薬を
例えば使用するとして・・・その際、“誰”を取り込んで
知性を復活させるのか・・・・、、
その心当たりがあるのですか・・・?」
まさか、自分が知らない内に“知性を持った”新たな巨人の
捕虜が確保されているのでは・・・?と内心で勘繰っていたアルミンを
軽くあしらうかのように、リヴァイが口にした返答は・・・
彼の予想を大きく素通りさせるものであった。
-
- 121 : 2016/07/08(金) 04:35:12 :
「心当たりも何も・・・丁度一人居るだろうが。
ローゼの壁際まで逃走を謀ったところを追い詰めたはいいが
そのまま透けた石の中に閉じ篭っちまった奴が」
「「!!??」」
驚きを隠せなかったのは当然、アルミンとミカサの二人。
しかし話を最も離れた位置で聞いているエルヴィンは、
ハンジ、そしてリヴァイがどの様に話し合ってそうした
結論に至ったのか・・・既にその答えにたどり着いていた。
「アニを・・・ですか・・・・!?しかし・・・ちょっと待ってください
・・・・それは・・・・・!」
「いくら人類の仇とはいえ・・流石に同期を喰うのは
気が引けるか・・・・?
だったらミカサだな。お前よりは幾分切り替えが早そうだ」
「・・・!違います・・・!
アニの・・・あの 鉄でも削れない硬化結晶はどうするんですか・・・?!
まさか、あれごと 呑み込むなんて言うんじゃ・・・・!?」
「いやいやいや、そりゃ流石に無いよ!
第一それじゃ・・・肝心の脳髄が取り込まれた事に
ならないじゃないか。例 の結晶 の発破は・・・・
エレンの『硬化パンチ!』と、その衝撃でうまれた綻びに
炸薬を調節した『雷槍』を使用して行う。いけそうなら
エレンの力のみで“解体”するのが望ましいんだけど・・・
とにかく“中身”が粉々に吹っ飛ばないよう、細心の注意を払いながらね」
「硬い物をカチ割りたい時は同じ位硬い物をぶつけてみればいい。
・・・勿論、やってみない事には果たしてあれをエレンの高質化で
割れるのかどうかも分かりゃしねえからな
・・・・『志願者』が決まったとしても、そいつを打つのは
エレンの力で突破口が見えてからだ・・・・説明するべき事は
これで殆ど済んだか。・・・・・で、どうすんだ
お前ら二人が無理という事なら・・・そっちの片輪に試して貰う
案もある・・・。そうすりゃ無くした腕も生えてくるかもだしな」
「・・・・腕は勿論なのだが・・・・その他にも生えてくるものは
あるだろうか・・・(切実)」
「壁外にはツルツルな子も結構居たから・・・無理じゃ無いかな。
頭部は勿論・・・腋や局部にも構造上体毛は要らないみたいだし」
「・・・・そうか・・・・(俯)」
「・・・・・・・・・;」
(なんなんだろう・・・このリアクションに困る
真面目なやり取りは・・・・)
「そっちは諦めろ。
今更お前の真の姿を知ったとしてもそう驚く奴は居ねえ。」
「・・・・巨人の力をどうにかして制御する・・・その手立てが一応
手元にあるというのは理解できました。しかし・・・
アルミンは納得出来たようですが私にはまだ今一つ・・・・」
「・・・アルミンが言った“もしもの時”ってのは・・・
お前にも分かりやすく言うなら、エレンを守るべき
取巻きである俺らが全員殺されたりでもしてエレンが
敵に“喰われちまった”場合の事だ。
有り得ない事じゃねえからな。
エレンを護ろうと周囲を固めている所で超大型発生規模の
熱風でもぶちかまされれば一網打尽ってことも充分ある 」
「っ・・・・!」
「そういう状況が来ちまってからでは悔やんでも遅い。
・・・後悔が先に立たねえと言われる所以だ。だから多少冒険でも、
先にコイツを試す。エレンと同じことが出来る奴が、
兵士の格好をして隣に控えていれば・・・・
相手の虚を突く秘策にもなる。・・・そしてもしもエレンが
喰われちまうような事があったそのときは・・・・」
-
- 122 : 2016/07/08(金) 04:38:40 :
- 「わかりました・・・・!もう、兵長の考えは充分理解できました。
そうならない為に 死力を尽くすのが・・・私の役目であり、使命です。
その先は・・・言う必要が・・・ありません」
「・・そうか。お前の意気込みは理解した。
・・・なら不測の事態を想定しての役どころとしちゃ・・・
やはりアルミン、お前辺りが妥当という事になるか
・・・・何、強要しようってんじゃねえ。
話半分に聞いて貰えりゃそれでいいんだが。
・・・お前はどう思う」
「エレンとの付き合いの長さを考えたのは理解しますが・・・
まずそもそも何故僕もミカサと同じくその候補に挙がったんですか?
それが気になるんですけど・・・・」
「・・・・お前は頭が回るからな
巨人化・・・って奴の仕組みは今になっても完全には解せねえが、
体のデカさがそれによって桁違いに増すのであれば・・・
体格差が多少あったとしても考える脳があるお前の方が
逐一状況に対応できる・・・かと、安易に考えもしたんだが」フイッ
「うん・・・・・、、私は ね! でもなんか
リヴァイは、そう単純には行かないって言い張って聞かないんだ」
「・・・・アルミン はな・・・・・、確かに作戦立案や相手の手の内を読むことには
長けているが・・・・身一つで状況解決に対応したりといった事に
そこまで長けてる訳じゃねえ。
・・・まあ、自分で気が付いた可能性に即時対応できるといった
意味では・・・そいつが巨人化できる事にメリットがない訳じゃない。
・・・問題は、でかくなっちまった後だと『ハッキリ喋れない』事だ」
「ぅうん....やっぱり・・それは痛いよなあ・・・・。
アルミンの機転には事実我々もかなり助けられてる。
それを考えると・・・・アルミンが巨人になってしまうということは、
一見体格的に頼りない彼が無敵の肉体を手に入れるといった意味では
魅力的なメリットに感じられなくもないけど・・・
戦況が一変した時、彼が何かに気付いてもそれを周囲に
円滑に伝える術を失ってしまうことも同時に意味する。」
「・・・・・・・・・・・」
-
- 123 : 2016/07/08(金) 04:40:50 :
-
「それとは別に・・・今度は考え方を変えてそいつが候補に挙がった
理由だが・・・やはり“巨人化の制御”の引継ぎよりも目が行ったのは・・・・
“記憶の引継ぎ”だ。」
「ヒストリアも言っていた・・・例の奴だね。
知性を持たずに巨人化してしまった者が・・・というより、
“巨人と化した者”が、現状分かっている内で唯一
その制御を可能とすることが出来る条件として
“既にそれを行える者”を捕食する事が挙げられる訳だけど・・・
その際に得られる“巨人化を制御する術 ”及び“知性”それから・・・
“捕食対象の記憶”についてだ。
・・・アルミン、実を言うと君をこの試みにミカサ同様
推薦したのはこっちの理由の方が大きかったりもする」
「僕に・・・・アニの記憶を・・・・?」
「考察力の関係もあるが・・・“奴”については・・・
訓練兵の時から知ってたお前なんかの方が人となりについても
詳しいはずだ。そこから何かしら情報を掬い取れるなら、
それが俺等にとって無益なものになるとは思えねえ」
「彼女もまあ・・・私達調査兵団の兵士に限らず
そりゃもう沢山殺したからね。気まずいってのもあるかも
しれないけど・・・それ抜きで考えて、
何とかあの硬化物質を除去して
上手いこと身柄を拘束したとしても・・・彼女自身の口から
情報を引き出せるとは思えないんだ。」
「「・・・・・・・・・」」
「・・・だから、ね。
彼女の素性が・・・その真の目的がどうだったであれ
一時期寝食を共に、訓練兵として研鑽しあった仲間を
手に掛けるなんていうのはどうしても蟠りが残るかもしれない。
けど・・・・有力な情報源として活用できそうなものは何でも
取り入れていかなきゃならないんだ。
アルミン、、・・・そしてミカサ。
君達二人もとっくに訓練兵卒と呼ぶには
不釣合いな程に過酷な局面を切り抜けてきた立派な兵士だ。
だから・・・今更こんな確認をするのもどうかと思うけど」
「私は・・・・欠片の躊躇も無くやれます。
個人的なことを言わせて貰うなら・・・・アニやライナー、
そしてベルトルトが何故そこまで『エレン』に固執するのか、
アニの記憶を得た末にそれが明らかになるというのなら
私にとって願っても無い事です。」
「単純には・・・やっぱりどう考えてもエレンの内にあるとされる、
“始祖の巨人”なんだろうね・・・。それも現段階では
憶測に過ぎないから何とも言えないけど」
「それから・・・敵の総数も不明瞭な現状では。
私は一体、どれだけの 数の、・・・そしてどんな 敵からエレンを護ればいいのか、
それが分かりません。
アニを“食い殺す”ことでそれが分かるというのなら・・・
私にとっては巨人の体などよりもそちらの方が遥かに有益なものです」
「ふむ・・・ミカサは覚悟充分みたいだね。
じゃあ・・・・アルミン、君はどう?さっきからとても
難しい顔しているみたいだけど・・何を考えていたのか
聞かせてもらっても?」
-
- 124 : 2016/07/21(木) 05:27:51 :
「・・・・あ、いえその・・・
その提案について反感があるとか・・・そこまでの抵抗があるとか
じゃなくて・・・、ヒストリアがロッド・レイスを
通して得た情報通りなら、確かに記憶の継承は可能なようですが・・
エレンの場合を考えてみるとそれが上手く行かないことも
充分あるんじゃないかと思えてしまって。」
「それは仕方ないんじゃないかな。推測通りなら・・・
彼は代々受け継がれてきた“始祖の巨人”を『奪った』実父である
グリシャ・イエーガーを、更に取り込んだ形になる。
それら全員の記憶が一挙に流れ込んでくれば・・・・
色々混ざり合って混濁してしまっても不思議じゃない」
「それもそうですが・・・・もう1つ、どうしても考えてしまうのは
他人の記憶を取り込むことで、当人の人格が変容してしまう
可能性です。」
「ケニーの奴が言ってた話を考えりゃ・・・お前の心配事は
あながち的外れでもない。“始祖”を引き継いだ奴の人格が
元のそれよりも大分達観したものになるのを、
奴がその目で見てるからな。
“初代王”の記憶とやらの中には・・・相当この壁の中の現状に
夢も希望も持てないほど絶望的な真実が仕舞われてんだろうな」
「・・・・だが、その“初代王”の記憶を今正に
保有している事になっている当のエレンに関しては・・・・
幸か不幸か、謎の記憶障害が壁となって
それに至る記憶の道筋が閉ざされている。
彼の記憶からそれに関する情報が簡単に得られるなら、
状況はどうであっても大きく変化するだろう。」
「・・・・それらに関しちゃ今ここで頭を捻ったところで
どうにもならねえ。今ここでお前ら二人に聞いとくべき事は
1つだけだ。
――ミカサは即答で首を縦に振った。。
・・・アルミン、お前はやれるのか ?」
「・・・・・・・・・僕は・・・・・・・」
「・・・僕は・・・正直今日こうして兵長に計画の一端を持ちかけられた
際・・・真っ先に自分では無理だと考えていました。」
「・・・つまりそこまでする度胸は自分 にはないと?」
「・・・・そうではありません。分かりやすく言うなら・・・
僕は、多分彼女 や彼ら の本懐がどうしても知りたい半面、
それを知るのが・・・・・・少し恐いんです。」
「奴らの腹の底を見ちまったら、もしかするとその目的に
共感しちまうかもしれねえと・・・・そういう事か」
-
- 125 : 2016/07/21(木) 05:29:52 :
「そこまであからさまでもありませんが・・・
しかしそれでも間違っていません。彼らの実年齢が
どれ位かは推定の域を出ませんが・・・それでも僕たちとそう
変わりは無い筈...いえ、少し歳は上くらいなんだと思います。
・・・・そんな、僕らと歳を同じくするような彼らが
行き場を塞がれた壁の中、たった3人だけで
『全人類』を敵に回すという途方も無い孤軍奮闘にその身を
投じる決意をしたんです」
「・・・・・そう改まって考えるような事か・・・?
壁の外の“世界”の広さと・・そこを自由気ままにふらついてる
巨人共の総数を思えば今の俺達が置かれてる状況と
さして変わらない気もするが」
「ええ。何せその・・・僕たちからすれば、自身の身を脅かす、
“巨人”に囲まれて生活するのと同じような重圧に・・・・
彼らは三年以上耐え抜いたんです。
例えどんな決意が先に立っていたのだとしても・・・
三年も寝食を共にした仲間を、いずれは壁の崩壊と共に
掃滅する運命にあると知りながら。
・・・僕には・・・彼らがそこまでの事をしなければいけないと
決意する“理由”がどのようなものであるのか・・・
怖くて目を向けられる自信がありませんでした」
「・・・・“でした”って事は・・・・
今は違うと。・・・そう受け取っていいのか」
「・・・・確かにそれを知ってしまうのは・・・今でもまだ怖いです。
・・・・ですが・・・・それ以上に僕が訓練兵科であんなに
親しくしていた友達の最期に“彼女”や“彼ら”が、
一体どのような形で関わっているのか。
それに関する事実関係のほうが気になります」
「・・・・まあ、奴を喰うことになるのが
誰になるかまではここで決めるつもりは無いが・・・・
そうなった場合には勿論得られた情報は
そいつに洗い浚い提示してもらうことになる。
・・・例え俺等にとってどんなに『都合の悪い事でも』だ
・・・・分かってるだろうな」
「理解しています。もしも僕がその大役にこの身を
捧げる事になるとしたら、その時は・・・一切情報の秘匿などを
行うつもりはありません」
「・・・・私も、アルミンと同じつもりです。
その決定権に関しては特に関知するつもりはありませんが・・・
その時は勿論エレンにも」
「ああ。構わねえ。・・・・というよりあいつの“力”が無い限り
例の硬化物質をどうにかする事はできねえんだ
・・・どの道エレンには説明する。」
-
- 126 : 2016/07/21(木) 05:32:52 :
「(でも・・・そういうことなら何故今日この話をする場に
エレンを呼ばなかったんだろう・・・別に、、
.......別に今伏せずともこの場で説明してしまっても
問題無いんじゃ・・・・....って面をしてるな
・・・アルミンよ」
「えっ!!?あ・・・は、っ・・・あの!今僕喋ってましたか?!?!」
アタフタ・・・・
「喋ってねえよ。
・・・そんな顔をしてたと思ってカマをかけただけだが・・
その様子じゃ図星ド真ん中だったか」
「ん~、最近コイツ、人の顔色を見るのが
段々上手になってきてね。
じき一児の親になるって自覚から来る何かなのかな・・・・
ともかく何か今までのコイツらしくなくって若干気持ち悪いくらいに..」
「話はそれだけだ。・・・現状話した通り・・・
候補に挙がってるのはお前にミカサ、エルヴィンの三人だ。
・・今は頭に入れとくだけでいい。その内に
俺とこいつ で話を煮詰めて、最終的に誰にするか
決めてから、もう一回あえて確認を取る。そこで選ばれた奴、
それから選ばれなかった奴に意義や不満があるなら・・・・
そこで改めて申し立てれば答えてやる。・・・じゃあな。
明日は特にこれといって 重労働があるわけじゃねえが・・・
普段通り夜更かしせずに寝ろ。」スッ・・・・ガタ。。
「あちょっ・・・・
待ってくれよ!リヴァイッ。。。(あのほら今夜は私・・・・(小声))」
エヘ・・エヘヘ
「気味の悪い面晒して笑ってるんじゃねえ。
夜更かしすんなって警告は・・・お前に対しての物でもある。
どんだけ欲求不満なんだ・・・いい加減にしろよ」チッ・・
「(相当毎晩頑張ってるんだな・・・兵長・・・)」
「・・・・・・・・」ジィィィ・・・・
「ハッ 」
「いっ・・・!いえあの!!決して失礼な想像をしていた訳じゃ・・・・」
「・・・・・兵長。“夜の勤め”は・・・男性にとって・・・どう。。。ですか」
「・・・・・あ゛・・・・・??」ぴキッ
「!!??(み、、ミミ、ミカサッ!??(小声))」
ガバッ・・・・
「ぃ・・・いえ・・・、その、今まで私は・・・・
・・・・そういった 夜の勤めというものは・・・適齢を迎えた男なら
誰しも率先して行おうとするもの..だと考えて居ました・・・・
しかし今の兵長と・・・ハンジさんのやり取りだけを見た感じでは・・・」
オズオズ...
「お、落ち着いてってばミカサ!!!兵長もハンジさんも別に
今夜これから“何”をするとも口にしてないって!!;^^」アタフタ
「ん――・・・いや、多分ミカサの考える通りで合ってるから
大丈夫だよ。Σb
リヴァイはその辺一度火がついたら鎮火まで相当な時間を
要するというのに・・・“そこまで”もってくのが大変でね・・」
ヤレヤレ
「(折角必死にフォローしようと思ったのに・・)」
「(それなりに見えないところでよろしくやっているのか・・・
良かった。一応は相愛なのだな(生暖かい目))」
「何が大変だ。どう考えたって大変なのは夜な夜な組体操がしたくて
眠れねえとか言って安眠を邪魔される俺の方だろうが・・・・
・・・あとそこのヅラ。気味の悪い視線で見つめるのは止せ。
他人様の人間関係にちょっかい出す暇があったら自分の
身を固める努力でもしたらどうだ」チッ・・・
-
- 127 : 2016/07/21(木) 05:35:22 :
「あのっ・・・答えづらかったら構わない・・・です、、
“エレン”の感じ方は兵長とは大分違うかもしれませんが・・・
それでも参考にはなると思って・・・兵長は・・・
女性からそういった押しが来ることについて・・やはり
気乗りしませんか・・・・」
「・・・・・――(こいつ・・・)」
「(彼女 ・・・単なる挑発ではなく素直に気になってるのか・・・・)
っはは!!考えすぎさミカサ!!(ガシッ) 少しリヴァイがムッツリなだけで・・・
健康な男子なら皆君が思っていた通り、本能に従ってそういった
快感を欲しているものなのさ。だから大丈夫!!気にせずガンガン
ぶつかっていくべきだよ!」
「・・・・・ッ(舌打ち)
そいつのいう事は大袈裟が過ぎるが・・・
・・・まあ、お前ら位の歳ならそれが普通だろ。
・・・別にそこまで深く考えることじゃねえ」
「そうそう!だから・・・・さ、(肩組)
(エレンみたいなのを振り向かせたいなら・・・
揺さぶりを意識して・・・あくまで彼自身を奮起させる事を
目標にしてやって御覧・・・?ミカサ・・君なら確実に出来る(小声))」
ニェッ・・・
「・・・・・・・!」
「(・・・だってほら、なんたってこんな私がこの通り、
人類最強の男を相手にやり遂げたんだから(小声))」
エッヘン=3
「・・・・・・何ボソボソやってたのか知らねえが・・・みっともない
腹晒してふんぞり返ってねえでとっとと部屋に戻るぞ・・・
・・・それに忘れちまってるようだから再度思い出させてやるが・・
お前にはまだ飯前から片付いてない事務仕事が・・・・」
「ァ"~~ァ"~~~・・・・キコエナ~~イ」トントントン
「・・・あれを片付けねえことには俺の寝床も・・・・」
「よし!!!ソッコーで片付けなくっちゃね!!気合入れて
頑張ろうリヴァイ!!?(キリッ)」
「何で俺まで一緒になってお前の事務処理手伝う体 になってん...」
「ハイハイハイ!!時間勿体無いよーー!!さあさあ、とっとと行こう!!」グイッ
ズルズル・・・
「・・・・・・・・お前ら、こういう大人になるんじゃねえぞ...」
ズルズル。。。
バタンッ!!!!!
「「「・・・・・・・・・・」」」
部屋に残されたミカサ・アルミン・エルヴィンの無言の間は
暫し続き、、、、そして
「何か・・・・あのお二人も結構上手くやってるんですね・・・」
アルミンのこの一言で打ち切られた。
-
- 128 : 2016/07/21(木) 05:38:05 :
「・・・・エレンと繋がりがある君達以上に、あの二人の付き合いは
長いからな・・・。
私としては最早余計な横車は要らないようで安心している」
「私も・・・エレンと上手にやっていけるでしょうか。
今までどれだけ気を遣ってもそれだけ窮屈な思いを
させてしまっていた様なので・・・とても不安です」
「「・・・・・・」」
二人の物言わぬ視線が交差する事数秒。
入団一年生にして既に調査兵団屈指の参謀といっても
過言ではない立場にいるアルミン・アルレルト、
そして今日に至るまで、いかに組織が惨憺たる局面を迎えようとも
団全体の行く末を常に引き摺ってきた、
調査兵団の頭脳そのものといえるエルヴィン・スミス。
二つの頭脳が言葉を交わさず視線だけで意思を疎通する。
――ここは...更なる彼女の奮起を促す為一気に押すべきか?
否 ...ここは彼女の性格を考えるとその必要はありません。、、寧ろ・・・・
「ミカサの気持ちも分かるけど・・・今は丁度エレンにとっても
地下室の探索を控えた大事な時期だ。変にアプローチを掛けずに
そっとしておいた方がいいかもね」
「・・・そう、↓」
「ぁあ。・・・それにエレンも君の気持ちを理解してくれたからこそ
ああして君の求婚に素直に応じてくれたのだと・・・
そう考えるのが妥当だ。 ・・・でなければ以前の彼ならば
君の申し出に対し、その場の雰囲気だけに押されて
許諾するような事も無かった筈。
・・・つまり彼には既に君の気持ちもしっかり伝わっている。。
そう考えてみてはどうだ。何も勇み足になる必要は無い。
・・・だが、、」
「・・・?」
「以前私が君に勧めた様に、直ぐにでもエレンと
家族を増やしたいという気が起きたなら・・・それはそれで
兵団として・・・、いや、私個人としても大いに大賛成なので
いつでもそうしてもらって構わないのだが」
「(団長っ、、!そんな火に油を注ぐような・・・!)
「っ・・・・///!
ぃ・・以前一度申し上げた通りです...!私は・・・
調査兵団にとっても非常に大事な調査を目前に控えたこの
時に・・・・!そのっ。、、それに、兵長にあのような
質問をしたのも。。家族を増やしたいとかではなく、あくまで
エレンの・・・、、」アタフタ・・・
「それはあくまで建前上の話であって、
“君の意思”の話では無いのだろう?」
「それは・・・ あの、それだけではなく、勿論エレンの為にも,,,」
「はは・・・、いや、別に構わんのだ。そこまで必死に弁明せずともな。
只1つ心に留めておいて欲しいのは・・・我々は常に君の意思を
尊重し、その決定に異議を唱えるような真似はしないという事だ。
・・・エレンと君がこの先どのように接し合っていくかは・・・
君自身が最良だと思った道を選択して決めればいい。
「・・・・はあ、、、」
自らの肩に手を載せながら語りかけてくる
エルヴィンの意図が正確には読めずに困惑するミカサ。
「・・・・さて、それでは私もこれからシガンシナの調査に向けて
片付けなければならない仕事がある。
リヴァイとハンジが言っていた通りだが・・・
二人共、先程の話を常に頭の隅に置いておいてほしい。」
「、、っは、はい・・・・・。
・・・・・・・、それでは・・・・・失礼します」バッ
「・・・・・・失礼しました」バッ
-
- 129 : 2016/07/21(木) 05:40:56 :
-
アルミンと揃って行う敬礼に背筋を正し、
団長部屋を後にしながら・・・ミカサは思った。
「(此間あのような提案をされたばかりなのだから、
このような質問をすれば迷う事無く私の背を押してくれる様な
助言をくれる・・・と踏んでいたのだが,,,)」ピタ・・・・
――しかし彼女は謎多き上官の思惑よりも先に、自らの内に潜む
その本心に辿りつく。
「(――ああ、、そうか
私は・・・・・・・・)」
今まで自らが貫いてきた信念に矛盾する事になる、その心に。
「(私は・・・他人の後押しという口実を利用しても構わないと言うくらいに――
エレンと本当の意味で結ばれる その日を待ちきれないのか――)」
――― いつから・・・・・?
いつから私は自分の我侭の為だけに
こうしてエレンを想う様になっていた・・・・?
少なくとも…団長にエレンとの間に子を儲けてみてはどうかと
訊かれた際には。私は確かにエレンの安全のみを考えて
首を横に振っていた。
すると…最早それがいつからなのかと考える事自体が間違っているのか。
いつから・・・私の心の容 は変わっていたのか。
―――そんな事を少し考えてもみたが
「(不毛だ・・・・・・)」
そう。全く以って不毛な考え事として、
私は自分の中に渦巻いていた疑念を払拭する。
当たり前の事だから。
自分が大事に想っていて、何時までも無事であって欲しいと
想うその相手の事を・・・・
同じように誰にも渡したくないと考えるのは・・・・
いたって自然な事だから。
「もっと・・・早く気が付けば良かった」ボソッ・・・
「あれ・・・ミカサ・・・、、何処に行くの・・・?」
「休憩室。 エレンとは食後にも軽く運動する約束をしていた。
まだ私を待っていると思う・・・・ので、消灯まで時間も無いが
とりあえず行ってくる」
「ぁあ、うん。じゃあ行っておいで。
あと・・・さっきされた話だけど・・・・・」
「分かっている。私も途中まではエレンに全て
打ち明けるつもりでいたが・・・・未だ“候補”が一人に
絞られていない状態でエレンに伝えたところであまり意味が無い。
釈然としないところはあるが・・・ここは兵長達がそうしたように
エレンに直接話すのは見合わせようと思う」
-
- 130 : 2016/08/04(木) 07:26:29 :
「・・・・うん。ありがとうね」
「・・・特別感謝されるような事は無い。
エレンに・・・アルミン・・・。あなたたちは二人とも私の大事な家族だ。
常に隠し事をせずにやっていけるならそれが一番いいけれど
今回の“これ”は・・・まだエレンには話す時では無いと思う。
・・・・そう思っただけ。」
「・・・そうだね。僕も・・・ミカサの言う通りだと思う」
「――――アルミン」
「・・・・・なに?」
「団長の部屋でさっきの話をされてから・・・
あなたの気分がすぐれないように見える。
――私の気のせいだろうか」
「・・・それは・・・まあ、勿論あまりいい気分ではないよ。
ライナーやベルトルト・・・そしていずれはアニも。
僕らで何とかしないといけないのは分かってた。
・・・でもそれがまさか・・・僕達自らが彼らと“同じ巨人”になって
食い殺さなきゃならない・・・なんて話になったらね」
「・・・・・・・」
「彼らの目的が最初から人類を脅かすことだったと分かった
今でも・・・一応は、彼らと一緒に訓練に身を磨り減らした
思い出だってあるんだしね」
「・・・本当にそれだけ?」
「 うん? 」
「本当に・・・単純にそれだけなのか と聞いている。
先程からすっかり淀んでいるあなたの目からは・・・何か、
何かもっと難しい事を考えている感じがした。
・・・上手く説明できなくて申し訳ないが」
「・・・・随分心配かけちゃってるみたいだね。
・・・本当、それだけだから気にしないで。きっと兵長とハンジさんが
僕を選ぶ事は無いと思うけど・・・例えそうなったとしても
さっき言った言葉に嘘は無いから。僕だって・・・
アニが何を考えていたのか、それを本人の記憶から知れるなら・・」
「何故・・・・あの時見逃されたのか が気になる・・・・?」
「・・・・あれ・・・ミカサ・・・君にその話は・・・・」
「・・・・(溜息)...
アルミン。やはりあなたは今冷静ではない。
壁外であなたが“女型”のアニに顔だけ確認されて見逃された
話はされたし・・・その前に、私達も居る前で『本人』に
聞いていた。――私も・・・ずっと気になっていた。
何故その時、アニはあなたを殺さずに放置したのか?・・と」
「・・・それはアニだって、ついこないだまで一緒に訓練していた
僕等を自分の手で握りつぶすなんて・・・」
-
- 131 : 2016/08/04(木) 07:28:19 :
「ジャンの事は平気で殺そうとしたのに?」
「・・・・・――」
「アルミン、あなたや・・・無論仲間である
ライナーは、事前に示し合わせていたからそうなる事など
なかったのだろう。・・・・・しかし、ジャンは言っていた。
『あれは本気で自分を殺しに来ていた』...と。アルミン、
あなたが寸前になってアニの気を引かなければ
自分は確実に死んでいたと。ジャンは・・・そういった嘘を決して
吹聴しない」
「・・・・アニが・・・僕に何かジャンを見る時と違う
感情を抱いていたかもしれない・・・・って言いたいの?」
「・・・・私にはそこまでわからない。
そういった他人の心を汲み取る事に関しては・・・私より
アルミンの方がずっと得意なはず。 ・・・ので、
あなたがそうだと思うのならきっとそうなのかもしれない」
「・・・・・・・・・・・・・」
「意外だった。あなたは私なんかよりずっと人の事を
よく見ているから・・・・アニが何を考えてそうした行動に
出たのかも、大体分かっているものだと。」
「それは・・・買い被りだよ・・・。
彼女が何を考えていたか本当に分からないから・・
知りたいと思った。それだけだ」
「・・・もし兵長やハンジさんが言っていたように
アニの“記憶”と呼べるものが無事手に入ったとして。
そこから得られる答えもそう難しいものではない・・・と
私は思う。」
「・・・・・・」
「アニは・・・あの女はあなたを殺したくなかったから殺さなかった。
それだけだ。そこに少なからず好意があったのだとしても
何も不自然な事はない」
「・・・・(苦笑)珍しいな・・・ミカサがそんな冗談を口にするなんて」
「割りと冗談ではない」
「・・・・・・・・」
「・・・・行くの?アニ のところへ」
「・・・・知ってたんだ・・僕がアニの留置場所を知ってるって・・・」
「私が知っているのにアルミンが知らないはずは無い」
「・・・まあ、行っても彼女と話しが出来る訳でも無いし
何にもならないんだけどね。
ただ・・・・、例え話を聞くことが出来ないとしても、
最後になる前に一度彼女の顔を見に行こうとは思ってるよ」
「・・・・何故?意味があるとは思えない。
・・・・アルミンには非情に徹しきれない部分が未だある。
辛くなるだけだ」
「・・・意味なら有るよ。会話が出来なくても・・・
彼女が閉じこもってる石は水のように透き通ってるからね
・・・閉じこもる前のアニの顔が良く見えるんだ。
彼女が何を考えてあんな悲しそうな顔をしていたのか、
その答えを知る前に良く見ておきたい」
「・・・・そう。
止めはしない・・・けれど早めに戻るように。
許可さえ通れば見にいけるとは言っても・・・
あまり長く見つめていると情が移ったと勘違いされてしまう」
「・・・・考え過ぎだって」
-
- 132 : 2016/08/04(木) 07:31:15 :
― 食堂・バルコニー―
「ンぎっ....ひぎィ・・・・・!!!!!(ワナワナ・・・)
ちょっ・・・ちょっと、ジャン!!!!!?
人がせっかく素直に自らの思いの丈をぶつけたというのに、
その返事がゲンコツっていったい何事ですか!!!」
ォォォゥゥ......↓↓
「本気で殴った訳じゃねえ・・・!
それに殴られて当たり前の事を言ったのは手前だろうが・・・!あぁ・・!?
本命がダメだったから、じゃあ今度は別の奴に
気を移してみねえか・・・だと、??お前は一体俺をどんな節操無しだと・・・・」
「・・・・・?それが何かおかしい事ですか??」
「・・・・・・」
「ミカサがエレンの事を昔から気に掛けているのは
皆知っていた事じゃないですか。・・・それは勿論あなただって
知ってましたよね」
「・・・だったらどうした」
「なら・・・いつか必ず失恋すると分かっているのに
ずっとミカサのことを想い続けてたんですか?ジャンは。」
「・・・・お前の言葉をそのまま使わせてもらうぜ
・・・『それが何かおかしい事なのか?』」
「・・・・・・」
「・・・てめえは狩猟民だろ。・・・ならお前みたいな奴にも分かりやすく
例えてやる。目の前に自分の技量と釣りあわない
大物がうろついてたら・・・お前なら諦めて尻尾巻いて逃げるか?」
「状況にもよりますが・・・・よほど無謀でない限り
諦めないでしょうね」
「それとたいして変わりゃしねえよ。
・・・一回ダメだったくらいですぐ目当てを別の獲物に
移せるほど・・・俺は割り切った性格してねえ」
「・・・しかし諦めも時には大切です。
なんと言っても・・・ミカサはエレンに“求婚”して、
当のエレンはそれを快諾したんですよ?
こうなってはもう打つ手無しですよ」
「それで、ミカサがダメだったから今度は
自分にしてみないか、、ってか?デリカシーの欠片もねえな
お前・・・・!」
-
- 133 : 2016/08/04(木) 07:35:51 :
「だから、それの何がおかしいんですか??!
理由を聞かせてくださいよ!!私、まだあなたに嫌われてる
ってワケじゃないんですよね??!簡単には諦めませんよ!!」
キリカエ、ダイジ!
「充分おかしいだろうが!!今まで意識した事も無い奴を
いきなり好きになってみねえかと聞かれたら、誰だって
“何言ってんだコイツ”と思うに決まってるだろ!!!
――今の俺がそうだ!!自分が殴られた理由は理解できたか!?」ァア!?
「なるほど!!理解できました!!!!(バッ)
ならばミカサにものの見事にフられたジャンを
まずは私に振り向かせるところから頑張るとしましょう!」
「フられてはいねえよ!!あいつが死に急ぎ野郎に
求婚して勝手にくっ付いただけだ!!!」
「・・・・そういうところは素直じゃ無いですね・・・(溜息)」
~~~~~~~数分後~~~~~~~~~
サシャによる突然の衝撃発言から発生した言葉の応酬に
ようやく一旦の決着が訪れたかと思いきや、
それに続く形で二人の間に気まずい沈黙が生まれる・・・。
息苦しい無言の時間が尾を引く中、唐突にその切り口を開けたのは
何か意を決したような顔でジャンに向き直るサシャであった。
「ジャン、あなた・・・アニの事は・・・どう思ってましたか」
「・・・・?どう思ってたって・・・そりゃどういう意味で聞いてんだ?
っつうか・・・いきなりだな」
「どういう意味も何も。そのままですよ
あなたにとって、アニ・レオンハートという人は・・・
どういう印象がありました?」
「どうもこうもねえ。最初から俺達全員を騙してやがった上に
状況からして間違いなくマルコはあいつが何かしら
いらねーことしなけりゃ死ぬ事はなかった。立体機動装置が
奴の手にあったというアルミンの奴の供述がデマで無ければな。
・・・できる事なら洗い浚い吐かせた後この手で殺してやりたい位
憎んでるだろうな・・・・それがどうした」
「だろうな・・・ってあなた・・・・;
まるで他人事みたいな言い方しますね・・・私、
あなた自身の考えを聞いているのですが・・・」
「俺も自分がどう考えてるのかさっぱり分からねえんだよ。
殺してやりたいほど憎んじゃいるが・・・あいつが
生きたままゲロしなきゃ分からない事だって山ほど有る。
・・・・結局・・・どうなるんだかな、あの状態じゃ
火薬で発破かける以外に何も手立てが無えだろ」
「・・・・・これは内緒にしておいて欲しいのですが」
「・・・・・?」
「私・・・つい先日、兵長とハンジ分隊長の会話を
小耳に挟んでしまったんですよね、、、その、
アニの、、処遇というか、これからの事についてなのですが」
-
- 134 : 2016/08/08(月) 00:23:52 :
「・・・・おい、ちょっと待て、お前・・・上の人間が俺らに態々
隠してる内緒話を盗み聞きしてんのか・・・・?!そりゃ流石にマズイだろ
スパイだと疑われでもしたらどうすんだよ,,,
事実俺達揃って疑われた時には武装を取上げられて隔離された挙句
巨人に喰われかけたのを忘れたのか;」
「人聞きの悪い事言わないで下さい!!偶々宿舎の近くを
通り過ぎた時に聞こえてしまっただけなんですから!」
「二階の奥まった部屋の会話が聞こえる聴力ってのがそもそも
おかしい。・・・前から思ってたんだがお前・・・
本当に俺らと同じ人間なのか?;」
「しっ・・・失礼な!!!しっかりこの通り人間です!!!
とっ・・・ともかくアニですよ!なんとそのアニの処遇が・・!
(ゴニョゴニョ・・・(耳打ち))」
・
・
「・・・・・、、、、そりゃ本当か・・・・・?お前の聞き間違え
とかってんじゃ・・・・」
「いいえ、聞き間違いとかではありません・・!
確かに、そう言ってました・・・・」
「だが待てよ・・・・巨人化した奴が、あいつを食えば
その記憶がそいつのモノになるってのは理解できるが・・・
あの硬くて削れもしなかったやつは一体どうすんだよ・・・?」
「簡単な事じゃ無いですか・・・、地下空洞で私たちを助けてくれた
あの時以来、エレンもかつてのアニと同じような事が
出来るようになってるんです。同じ位か・・・
もしくはエレンのあれがアニのものより硬さで勝っているなら・・・
木の実を割るように上手く割れない事だって無い筈です,,」
「・・・――なるほどな。・・・っていうよりお前・・・やっぱりどこか
具合おかしいだろ。普段のお前ならそんなマトモな考えに
思い至るハズがねえ・・・・」
「ジャン・・・・あなた本当に思ったことズバズバ言いますよね....
私って・・・・やっぱり貴方から見てそんなに常識に欠けた、
普通ではない人間として見えてますか?」
-
- 135 : 2016/08/08(月) 00:25:55 :
「・・・・・あー。悪いが正直に言って
お前を普通の奴だとはこれっぽっちも思ってねえ。
お前はやる事なす事全て人並みから外れてやがるからな」
「人並み外れて・・・・と、いいますと。」
「要するに・・・例えるのもかなり失礼な話だが、
ミカサと同じように・・・お前は普通じゃねえと言ってんだよ」
「むッ・・・・!」
「全員どんな地獄のしごきが始まるのかと緊張してるさなか
一人だけ盗んだ芋齧ってんだ。神経だってマトモな太さじゃねえ」
「もう忘れてくださいよ...、流石に私、今でも三年前と同じ事は・・・・・」
「・・・だが、お前のその人並み外れた行動力で命拾いした奴が
それなりにいるのも事実だ。
お前が“人並みから外れてる”ってのは・・・そういう意味だ」
「つ、つまり私、そこまで貴方に嫌われてるってワケじゃ
無いんですね!!?」ガバッ
「っ・・・・・!!;いきなり飛びついて来るんじゃねえ!!
っつうかよ・・・・、本気で理解できねえから聞くが・・・・
お前みたいな奴がこの俺の何をそんなに気に入って
そんな接し方になってんだよ・・・・
これじゃ訓練兵の頃と全然態度が違うじゃねえか」
「さっき私がそれを言おうとしたら貴方がグーで
私の頭頂部を殴ったんじゃないですか!!」
「ああ・・・そりゃ悪かったな。まさかあんな言葉を
真面目に口にしてるとは思えなかったからな。
失恋の矢先にふざけてあんな言葉をふっかけられたら、
当然手が出るだろ。だからこうして謝ってんだ
真面目に言ってたんだろ・・・いいから理由を言え」
「ふ、ふむ・・・・;分かってくださったならまあ・・・
それについては私もこれ以上深く追求致しません。
そして私が貴方に惹かれるようになった理由ですが・・・
別に難しい事じゃないんです。貴方は・・・本当に
自分に正直じゃないですか。それに少し卑屈なところも
あるかもしれませんが、他人を認めようとする心もあります。」
「・・・・お前が人を好きになる理由ってのは・・・・
そんな、誰が聞いてもまともな理屈にしか聞こえない
普通の理由なのか?
・・・・そうじゃねぇだろ・・・・お前はそういう奴じゃねえ」
ジトッ....
-
- 136 : 2016/08/08(月) 00:28:39 :
「・・・・そうですね。もっと分かりやすく言ってしまうと、
やっぱり“料理が出来る”というのが一番大きいかと....」
ジュルリ...
「 それだけだろ・・・お前の場合 」
「 ・・・・バレましたか。」
「お前には食欲しかねえからな。バレるも何も、
最初から面は割れてんだよ」
「失礼な事言わないで下さい。ジャンがどう思おうと
私にだって・・・きちんと歳相応に性欲、とか恋愛願望
というものだってあります。
それに私は皆さんと比べても1つ年上ですから、、
皆さんよりもそれはそれは立派なものを持っていますよ。」
ヌフフフ・・・・
「そうか。そりゃ良かったな、俺には至って関係無い事だが」
「フムゥ・・・つれないですね。。。
しかし参ってしまいました・・・予想以上にジャンの身持ちは
硬かった様子で。」
「お前・・・畏まった言葉を率先して使う前に
意味位調べてから使えよな。それから一体俺をどんな
節操のない人間だと思ってやがったんだ」
「やっぱりジャンの様に意外とガードが固い異性相手では
もう少し実力行使に出なければ事態の進展は望めませんか」
ゴソゴソ・・・
その時、ジャンの言葉を無視しながらも、自らのシャツのボタンに
手を掛けるサシャの姿が、ジャンの脇目に捉えられる....
「聞けよオイ。
・・・・それからお前・・・・、そんなとこで何をゴソゴソと・・・・
「何って・・・・御覧の通り服を脱いでるんですよ」
グッ・・・グイッ..... スルッ・・・
「 何故今ここで脱ぐ 」
ドッ・・・・ドッ・・・・
ジャンの脈拍が、その速度を急激に増していく...
目の前で恥ずかしげも無くシャツの前ボタンを取払っていく
サシャの、その淡々とした無表情に僅かな不安をおぼえながら。
「何故ってそれは・・・・、、やり方 を変えるべきだと
思ったからです。あなたは『ミカサ』のような清楚で淑やかな
女性を好むという話でしたから、私だって何とかそんな風に
見てもらえないものかと頑張ってみましたが・・・・
どうやら真面目でお利口さんのジャンにはそういった
アピールでは効果が今一つなご様子」
ゴソゴソ・・・ ハラリ
-
- 137 : 2016/08/08(月) 00:31:34 :
-
サシャの脱衣は淡々と行われ、ついにボタンをすべて
外し終わったシャツがバルコニーの柵部分へと投げかけられる。
「・・・・オイ...!!
冗談ならそれくらいにしろよ・・・・!今だったらまだ許してやる。
・・・俺がこっち向いてる間にシャツを着ねえなら・・・・」
ドッ・・・・
「ッ。。。」
そっぽを向きながら、彼が放てる限りの威圧を込めて
投げかけた警告の言葉はサシャに届く事もなく、
その返答は彼の両脇腹に走った衝撃と、背中一面に
張り付く温もりによって返された。
「着ないなら・・・?許さない・・・、、ですか?この場合あなたが言う
『許さない』というのは・・・つまり、“こんな私を襲ってくれる”
・・・そういう事で宜しいんですか?」
「ふざけんのも大概にしとけ・・・、お前がこういうタチの悪い
冗句に身体を張る女だとは思ってなかったが・・・自分が今
何してるか理解出来てるんだろうな」
かろうじて冷静な素振りを維持し続け、背中の布地越しに
体温を伝えてくるサシャに訴えかけるジャン。
声色には出ていないものの、彼の頬には一筋の...汗。
「ええ。きっちり理解してますよ。
私・・・これでもジャンを誘惑してるつもりなのですが、
こんな感じだと・・・まだダメですか?。、、、あ、でも・・・
(ゴソゴソ)
やった!!ジャン、ちゃんと大きくなってるじゃ無いですか!!」
ヤッホホイ!!
「何処に手ぇ突っ込んでんだ手前 ぇぇぇぁあ!!!!」ギクッ
「っ・・・、、ぁあ、もううるさいジャン坊やですね・・・!
コニーやエレンには念のため此方は私一人に任せていただけるよう
念押ししておきましたけど、もしこの大声を聞きつけて誰か
来てしまったらどうするんですか・・・・
・・・・・見られちゃいますよ??私とジャンのあられもない姿が」
カチャカチャ・・・ スルン
ジャンの悲鳴もほぼ聞き流し、手探りでベルトを外しにかかる
サシャの両腕。
「っ・・・・ちょ、、、、やめっ・・・・
本当に勘弁して下さい。なんなんだよお前・・・・本当に・・・
何が目的でこんな・・・」ガッ
本気で身の危険を感じたのか、その両腕を必死に抑えつけながら
欠片も圧力の無い言葉で抵抗を続けるジャンだったが...
「何で敬語なんですか...;」
「タメの奴らに対していつでも敬語のお前に言われたくない」
「・・・・・!なるほど、それもそうでしたね!
ですが今までこのようにしてきたので急に変えろといわれましても
難しいので・・・そこは察して頂けると助かります。」
-
- 138 : 2016/08/08(月) 00:41:49 :
「・・・ぁあそうかよ。
もういいだろ・・・とっとと離れろ・・・・あとベルト返せ」
「離れません。ベルトも・・・まだ返せません」ブンッ
ガササッ
「ッ・・・・テメっ・・・あんな遠くに投げる事ねえだろ!!!」
「ジャン、私・・・・・・・、、
言葉でこういう気持ちを伝えるのとか・・そういうの
とても苦手なので。やり方は今一つピンとこないのですが・・・
手探りでなんとか挑戦してみますので、
嫌でないならご一緒にお願いしたいのですが、、宜しいですか?
覚悟の程は」
「お前・・・・冗談抜きで言ってるんだな・・・・?」
「至って真面目です。貴方が嫌なら突き飛ばすなり
逃げるなりしてくれて結構ですので。・・・ですから」
グッ・・・ ギュッ
「 !! 」
それまでの体の向きとは変わり、後ろから抱きしめてきていた
サシャを正面から抱き留める格好になり、
声のトーンも幾らか落としたジャンは、
脅しと警告と、それから最後の確認を含め、自らの胸中で蹲る
サシャへと告げる
「いいか・・・、俺は男だし、お前は女だ。
俺の趣味や人間性はともかく・・・お前がさっき触って
確認したように、俺はもう理性だけで踏みとどまってる訳だが。」
「・・・はい。」
ドキドキ・・・・
「これ以上お前が押して来るなら・・・本当にする事しちまう ぞ・・・・?」
「構いませんよ、むしろ大歓迎です」
「・・・噂に聞いたが、最初は相当痛むとかって話だ・・・ぁあ、、
主に俺らじゃなくブツをねじ込まれるお前らの方が・・・だけどな・・・。
そりゃそうだ、股座に入れたこともないモノ突っ込むんだからな。
お前がどれだけ泣き叫んで血を流したりしても俺は止めないだろうし・・・
経験も当然無いから気の利いた配慮もできねえ」
「フフッ・・・・ジャン、貴方本当に普段からツンツンしてるくせに
意外と優しいですよね」
「買い被るんじゃねえ。俺はあくまで
“こんなハズじゃなかった”・・なんて後から言われねえ用に
確認してるだけに過ぎねえ。別にお前の身を気遣って
聞いてる訳じゃ・・・・」
「そうですか(微笑)
なら心配は全く要りませんので早いところお願いできますか?
嫌だと思ったら別にいつでも突き放して貰って構いませんし・・・
それに何より・・・・
ほら・・・貴方は・・・自称“目的の為には手段を選ばない非情な男”
・・・でしたよね??」(ニヤニヤ)
「てめッ・・・・どこでそれを・・・!!!/////」
カッ・・・・・
「OVAで言ってました。確か。
ほら・・・普通の料理では私の猪肉には太刀打ちできないと踏んで
上官の食糧庫から肉を盗もうかどうかという時ですよ」
「ここでまさかのメタかよ!!!」
「ええ、メタでも何でもいいんです。
ジャンが私を意識してくれるなら・・・・少しでも
何か私に異性らしい気持ちを向けてくれるなら何だって
してくれて構いません。
・・・・――――だから」
「っ・・・」
「早くしてくれないと、私の方から始めちゃいますよ・・・・?
いいんですか・・・?普通こういう事って男の方が主導権を
握るモノなんじゃないですか?私に先手を許せばそれこそ
ジャンの男としての尊厳というものが・・・(ニヤニヤ)」ススッ・・・・
「クソッ・・・・・どうなっても知らねえからな・・・・本当によ...!」
その場の勢いに身を任せ、擦り寄ってくるサシャの押しに
とうとう根負けしたジャンは、勢いに呑まれるまま
そこがどういった場所であるかという事すらも失念し、
彼女の誘いに乗じてしまう。
時を同じくして彼が少し前まで想っていた少女もまた・・・
同じ様な境遇に立たされているとも知らずに。
-
- 139 : 2016/08/13(土) 04:26:59 :
~時は少し遡り~
―調査兵士団一時拠点・共同休憩室―
ガチャ・・・・
「・・・待たせてしまって済まない・・・エレン。」
(もうとっくに寝てしまったかと思ったが・・・来て良かった)
「・・・別に構わねえよ。呼ばれた面子が面子だったんだ、
・・・それなりに大事な話だったんだろ」ムクッ・・・
「・・・、、(頷き)」
「・・・そうか。じゃ、用事も済んだところで・・・・
手が空いたなら今度は腕立ての錘になってくれよ。・・・あれだ。
いつもお前がやってるヤツ。オレより重いお前だったら
体重が倍になるのと同じだしな・・・」
「・・・エレン。その方式では・・・私くらいしっかり
腰周りや背筋に至るまで鍛え抜いていないと無理がある・・・。
例え身一つで軽く感じたとしても回数を重ねればそれで
充分鍛錬の効果はあるから・・・・」
「普通にやってたらいつまでたってもお前に追いつく事なんて
不可能に決まってんだろ?それにお前だって
いつもオレを乗せて腕立てしてるじゃねえか・・・・」ジロ...
「・・・エレン。私とあなたでは体のつくりが違う」
「ぁあそうだな!!!何でか知らないが男なのに女のお前より貧弱な
オレが自分を鍛える為にコレだけ必死になってる!
だから少し位無茶だと知っててもこうして頼んでんだよ・・・
どうしても嫌だってんなら強要はしないけどよ」フンッ・・・
「(溜息)....分かった、そんなに言うのなら・・・
エレンの背中を少し借りよう。
ただしきついと感じたら直ぐに言ってほしい」
「っし、、、そうこねーと面白くねえ・・・・
ょし来いッ・・・・
(ズンッ・・・・) ッ・・!?!?うぉっ・・・・」グギギッ・・・
「・・・・どうかした? 」グラグラ
「(コイツとオレの体重差は・・・・確かにコイツの方が重いが、
それでもそこまで目立った差がある訳じゃねえ・・・
つまりコイツ・・・・こんな負荷を掛けられた状態で
普通にオレがやってるようなペースの腕立てしてやがるのかよ...!)」
プルプル・・・・
-
- 140 : 2016/08/13(土) 04:28:38 :
「・・・・私の言いたい事は理解出来ただろうか。」
「っンなっ・・・もん、勝手に決め付けんなよ・・・・!!
この状態でだって・・・オレは全然」
フラフラ・・・
「・・・・エレン。あなたの気持ちが分からない訳ではない。
・・・けれど、張り合うだけではなく、
もっと私を頼って欲しい。私は・・・あなたに無理をさせたくて
自分を鍛えている訳ではない」
「言って...ろ・・・・・!!!」グググ・・・・
「(溜息)...」
ミカサの真摯な説得も聞き入れず、既に悲鳴を上げている
全身の筋肉を酷使するエレンと、そんな不屈の悪あがきに
ただ溜息を漏らすしかないミカサ。
・・・しかし、呆れ半分でありながらも、
そんないつも通りのエレンを最も傍で感じられる
この瞬間というものは、彼女にとって何よりかけがえのない
ひと時でもあった。
ゆっくりと上下する部屋の景色を見つめながら、
彼女は今最も気になっていた事を真下で唸り声を上げる
想い人...否、今では既に互いに想いを通じ合わせ、婚約まで
交わす事が出来たので、この場合『恋人』となるが....
ともかく、その相手に問いかける
「・・・・エレン。」
「、、、・・・・っ・・・・・!!!」
「・・・・・・エレン・・・・?」
「・・・・っんだよ・・・・!!話しかけんな,,,!
回数続かねえだろ・・・・!!!」ゼェゼェ・・・・
「・・・済まない。・・・でもどうしても気になったから。」
「・・・・・・何だよ」
ミカサの雰囲気から、彼女の問いに真面目な何かを感じたエレンは
腕立て伏せを一時中断して聞き手に徹する。
「・・・・聞いてこないの?」
「・・・・・・・・・・・・・お前とアルミンが・・・
団長やリヴァイ兵長に何を話されたのかってか・・・?」
「・・・・・・・・」
自らの背中に腰掛けるミカサの無言の頷きを察すると
一際大きな溜息と共に彼は言い放つ。
「オレは・・・さっき食堂でお前に結婚してほしいと口にされた時は
本当に驚いたんだ。
・・・今までお前の事は“家族”だと思ってたし
いちいちお節介を焼いてくるのは正直鬱陶しいと思うこともあった。
・・・けど父さんも母さんも居ないオレにとって・・・お前は
一人だけの家族だ。そう考えればそこまでお前の余計な世話も
苦じゃなかった」
「・・・・・・」
-
- 141 : 2016/08/13(土) 04:29:45 :
-
「・・・・だが・・・今までお前をそういうふうに 考えた事は
殆ど無かった。
お前の態度を見て周りの奴らはそんな風にオレを
煽ってくるのが当たり前だったが・・・それでもオレ自身、
そうは考えなかった。
たったさっき、お前の口からそう言われるまでは」
「・・・・それについては・・突然の事で済まなかった。
できる事なら私も・・・エレンに想いを伝えるなら
もう少し時と場所を選ぶべきだったと今でも反省している。
・・・しかし、あの場で言うべきだと思ったから...」
「別に謝る必要なんかねえ・・・。
もっと周りに騒がれるかと思ってたがそうでもなかったし・・・
オレもお前と同じで、あの場でお前の言葉に頷くべきだと
思ったからそうしたんだ。
――あの場で言えなかったから今言わせてもらうが・・・・」
「・・・・・・・」
心なしか不機嫌そうな声色に若干の緊張を覚え、
また、いつもの調子で考えるとこの後どの様なダメ出しが
自らに差し向けられるのかと静かに戦慄するミカサ。
「―――ありがとうな。
多分お前から言ってくれなきゃ・・・オレの方から
お前に求婚なんてしなかったと断言できる。
まあ改めて考えればオレが誰かと一緒に暮らすなら・・・
お前しかいないと・・・今なら本気で言える」
しかし彼女の不安は、続く彼の柔らかい声色に一気に払拭される。
―――そして
「――話を戻すけどな、つまりオレは・・・
お前の事を今まで以上に信じてるし、頼ってもいる。
お前が自分でオレに伝えて来ないなら・・・今はまだ
聞いたってどうしようもないような話なんだろ。
・・・・だから聞かねえんだよ」
その心に心地良い一陣の涼風のような余韻を齎される。
「(こんな事を言われたのは・・・何時以来だろう)」
いや・・・・・
未だかつて、こんな想いを真正面から向けられた事が
あっただろうか。
それも、最も古い仲にして最も愛しいエレンの口から。
たぶん、思い出そうとするまでも無く今この時が初めてだ。
-
- 142 : 2016/08/13(土) 04:32:10 :
彼女の内心に差し込んだ安堵の陽光と、
どこまでも透き通った涼やかな彼の心がそうさせたのか、
はたまた彼の言葉に感銘を受ける時間が長すぎたあまり、
返答の時を逃した際に産まれた無言の時間がそうさせたのか、
彼女の胸中に、ざわつく何か が湧き上がる。
今は自らの臀部を介し、確かな熱源として
感じられる彼自身に
確かに湧いてくる、どこかざわついた高揚感。
奇しくも彼女のその高揚は・・・
腰を預けている彼にも鏡写しのように伝わっていた。
“動作はことばより雄弁である”
――彼 の心に去来するのは、先だって自身の上に立つ
上官にして先を行く人生の先輩にもあたる分隊長からもたらされた言葉。
“重要なのはキミにその気持ちを受け止めてあげられる
気概があるかどうか・・・・・・それだけだ”
「(休憩室には今のところ誰も来る気配は無いが、
あまり時間を掛けられる余裕は当然無いな・・・・。
こうしてる間に誰が来たっておかしくも無いんだ。・・・・だが、、)」
ズッ・・・・
「っ・・・・」
無言で身体を捻ると、背に乗せていた彼女を床に降ろし、
その両肩を掴むエレン。
彼の両手が掴んだ彼女の両肩は日々営々と繰り返される鍛錬で
同年代の女子とは思えないほどの密度を有していたが、
その肩は小刻みに震えていた。
そんな彼女に言葉による事前通知を行う事も無く、
彼は・・・・
「・・・・ェ、エレン・・?;」
「(口で伝えるのは得意じゃねえが・・・
もし『こんな事』くらいで、少しでもオレの気持ちが
こいつに伝わるなら・・・)」
言葉による意思疎通を必要としないカタチで、
自らの心を伝え得る手段を、
この世に生を受けてから初めて用いる接触 を試みる。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
-
- 143 : 2016/08/14(日) 04:06:53 :
#########################
まだオレが両手で抑えているミカサの肩は震えてる。
・・・しかしいくら人の考えに対して鈍いこいつでも
無言で顔を近づけていけば、今がどんな状況か・・・
それくらいは察しがつくハズだ・・・・
オレがまず最初にするべきこと・・・それは言うまでも無く・・・
「 っ 」
ガバッ
行動に移すまで溜めの間を作りすぎてしまった・・・
オレが実行に移そうとしていたそれは、
何かを逃がさないように慌てたような様子を見せた
ミカサの方から仕掛けられた...
その上考えていたタイミングと違うところで口を塞がれたので
息はそこまで続きそうも無い。
「・・・・ふぅっ・・・・ンっ・・・・」
「・・・・・、・・・・・・、、
(とても驚いた・・しかし今・・
ここでエレンを手放してしまったら
大事な切っ掛けを逃してしまう事になる・・・
・・・・絶対に・・手放せない。)」
ただ口を合わせるだけでいいのかと思ってたが
ミカサは口の中で自分の舌を蛇のようにのた打ち回らせてくる。
この動きだけから考えてもこいつがわりと
まんざらでもないというのが分かってしまった。
言葉ではここまで積極的に態度を表さないミカサだが・・
オレは内心少し安心していた。
もしこの場で迫っておきながら、
その押しをミカサ本人に拒まれでもしたら・・・
それはそれでかなり恥ずかしい事になるからな。
「(この感じなら・・・・)」
「(嬉しい・・・まさかエレンの方から
こんな風に身を寄せてくれるなんて。
『どこまで』のつもりでいるのかにも
よるが・・・これでは私も落ち着きが保てない・・)」
口を繋ぐ時間も延び、呼吸に少し息苦しさを感じ始めたところで
オレは手を伸ばし、目的の場所へ向って指を這わせる...
目当ての場所は言うまでも無く・・・ミカサのシャツの
前ボタン,,,,
「・・・・・・・・・・・待って、エレン。」
ガシッ.....
「なっ・・なんだよ・・・・まさかここまで来てお前」
「――――その“まさか”・・・・・。
やはり・・・・私達はここで一線を越えるべきではない。
そう言う訳で・・・・エレン。申し訳ないがそれ以上は・・・・」
「冗談止せよ・・・・・ここまで来て止められるか....!!
言っとくけどな、お前も相当したい んだって分かったから
オレは今こうしてるんだぞ・・・・!当たり前だが、
最後まで しようってんじゃねえ。
ちゃんと危なくなったら退くつもりだ・・・・
・・・・まさかお前・・・オレがそれくらい我慢できないとでも・・」
「 エ レ ン 。」
ガシッ!!!!
「ッ・・・・・・・!;」
言葉による制止に昂り始めた自分を抑えきれず
ミカサの両肩を押さえつけるオレの両腕に対し、
一瞬だけまるで万力に抑えつけられたのかと錯覚するほどの圧が掛かる。
オレの腕を更に握りこむ・・・ミカサの両手だ。
昔からそうだったが・・・やっぱりこいつの腕力と握力は、
オレがどんなに鍛錬を積み上げても辿りつけない域に達している。
その圧倒的な力は、本能的にオレの全身を萎縮させる。
腕力による制止と共に掛けられるのは・・・
目の前でオレに押し倒される格好のままそいつの口から
放たれる・・・普通ではないくらいに強められた
更なる語気が篭る言葉による静止。
短い一言ではあったがオレの名前を呼ぶその声は・・・・
わずかではあるものの、しかし確実にオレとミカサの間にある
空気を震わせていた。
.....つまり、ミカサ自身の声も明らかに震えていた。
-
- 144 : 2016/08/14(日) 04:08:08 :
「・・・・なんだよ・・・何もそこまでおっかねぇ顔することないだろ」
そう言って見せるが、目の前のミカサの顔には
昔から馴れ合ってるオレやアルミンでなければ読み取れない程の
変化しか見受けられない。僅かに目は開かれ、
口の端に不自然な力が入り、その所為で顔全体にひきつった様な
震えが走っている。
・・・・しかしこの顔が、こいつの感情を表す
バロメータとしてはかなり上位に食い込む危険信号の1つだ。
鍛錬するにも限界があるだろうって歳の頃から、
この“顔”を見せた直後のこいつが冗談みたいな腕力 を
振り回すのはよくあることだった。
・・・・主にアルミンを囲い込んでつまらねえちょっかいを出す
町の悪ガキ共の悪戯が行き過ぎた際などに。
解りやすく言うなら、よく言われる火事場のバカ力の一段上だ。
こいつはどういうわけか普段から一段階周囲の人間とは違う
力を発揮する事ができるが、そこから更に感情的になって
火が着く事で、それ以上におっかない馬力を発揮する。
どこまで が限度なのか解らない腕力で不意に抑え付けられりゃ、
それは誰だってビビッて縮こまるのが普通だ。
「・・・・手を止めてくれてありがとう。
驚かせてしまったなら・・・謝りたい。しかし、
同時に勘違いしないで欲しい・・・・。私は・・・エレン、あなたに対して
何か怒ったりしているわけでもなければ、“信用していない”わけでも無い。
むしろこんな形でエレンが接してきてくれた事には
感動しているくらい」
「・・・・???;」
「・・・・これ以上してしまうと我慢できないのはエレンの方ではなく・・・・・
・・・私の方だと言っている。・・・・・済まない、、手を。」
グイッ・・・
そう言うと視線をオレから外して、掴んでいた両腕のうち、
左腕だけを動かし、自分の胸元へと押し付けてくる。
「っ・・・・・・・」
抱きつかれて当る事はしょっちゅうあったが・・・
掌に収めたことは殆ど無い・・・ミカサの胸。相変わらず体格と
反比例して、本当に女子なのかと疑いたくもなってくる
腹筋、大胸筋、前鋸筋に囲われた一部分に乗っかっている、
こいつの体の中でも数少ない『女らしさ』を意識させられる部分。
真下がガチガチに固められた筋肉であっても、
流石にこの部分だけは指が沈み込むほど柔らかかった。
しかし、ミカサがオレに伝えたいのはその部分の
触り心地とかではないらしく、やや手の位置を体の中心部に
ずらして行く。
「・・・・分かる?」
掌と指から伝わる小刻みにして力強く繰り返される脈動。
・・・・なるほど、人間の心臓ってのは・・・当然個人差はあるが
正対してきっちり左側とは限らず、やや中心部に寄っていると
座学では習った。ミカサの強靭な胸板を隔ててオレの掌に
振動を伝えるミカサのその臓器は・・・・
「・・・・・・・・・」
ドドッ・・・ドドッ・・・・ ドドッ・・・・・
まるで乗馬している時全身に走る振動のような...
凄まじい脈動を刻んでいた。早さも普通ではないが、
とにかく鼓動が強く、小刻みなのに大きい。
「今・・・私は・・・・おそらくエレン以上に冷静ではない。
しかしエレン、あなた以上に今からあなたが行おうとしていた
『それ』に対して積極的に体が反応してしまっている。
・・・・つまり。始めてしまったら・・・私が、
エレン をつき放せなく なる。
・・・この意味をどうか理解して欲しい.....」
フルフル・・・・・・・
-
- 145 : 2016/08/14(日) 04:09:55 :
震えるミカサの横顔を見つめるオレの背筋に寒気が走る。
怖いとかそういう感情じゃ無い。ただ単純に・・・・
目の前で震えているコイツと、それを押し倒す格好で留まっている
オレ達二人のこの状況だが・・・いざ事が始まってしまえば、
この構図は簡単に逆転するだろう。そして情け無い事に、
オレがどんなに死力を振り絞ったとしても・・・・
本気を出したミカサ には、到底敵いっこない。
つまりはオレが途中で『もしも』に備え、“ソレ”を中断しようとした所で
コイツが行為続行を強要してきた場合、オレには止める術 がねえ。
・・・・情けねえ事だが物理的に。
無意識に覚えた震えっていうのは、つまりそこから来る、
ひとつの危険信号・・・のようなものだと思う
恐らく始めてしまえば最後。
――そうだ、最後まで止まれない気がする。
「はっきり言おう。私は―――・・・したい 。
エレン と此処で、今すぐに。エレンの掌が載せられた
この心臓が揺さぶる衝動のままに・・・今までの『我慢』を全て
忘れて・・・・エレン の気が済むまで、
何度だってそうして欲しい。
・・・・それが私の本心だ・・・・だから、、いけない。。
それ以上は私の服を脱がさないで欲しい。」
今ミカサが口にした“最後”とはつまり・・・
理性を抜きにして互いの身体が求めている条件を
達成してしまうその時の事を言ってるんだろう。
「・・・そう言われてもな・・・;こっちはもうすっかり
その気になっちまってんだよ・・・。
オレはこんなになったのをこれからアルミンも居る部屋に
戻って、一人でなんとかしないといけないのかよ」
しかし、当たり前の事だがそう簡単にここでお預けと
行くはずもない。オレだって気分が乗ってなければ
わざわざミカサにキスまでして迫る事も無い。
「気持ちはとても嬉しい。けれどどうか分かってほしい。
勿論、治まりきらないエレンの面倒は・・・私がちゃんと見る。
私が服を着たままなら・・・きっとまだ理性で抑えられるから。」
ゴソゴソ・・・・
「っ・・・・・」
-
- 146 : 2016/08/14(日) 04:16:07 :
#########################
そう言いながら自らに覆いかぶさるエレンの下履きへと手を伸ばし、
沸き立つ全身の血脈に抗いながらもズボンの内側へと、
震える己が手を伸ばすミカサ。
至近距離で上目使いになりながらも、エレンとの繋がった視線を
逸らさずに手を動かすミカサと、エレンの吐息の吐き出される音が、糾 われる縄の様に、交差する。
理性ではどうにかエレンによる勇み足を押し留めた
ミカサであったものの、その吐息に織り交ざる熱と、
それらを無理に押さえ込もうとする際に端々に毀れ出る艶やかさが
次第にエレンの理性、そしてミカサのそれをも溶かし崩していく....
##########################
「(口では虚勢を張って見たものの・・・やはりこれは)」
ドキドキドキ・・・・・
・・・・とても抑えられそうにない。
団長に勧められた時はああして即断できたというのに・・・・
エレン自身にこうして身を寄せられてしまったら流石に
「(我慢できるはずもない・・・か。)」
「・・・・・済まない、エレン・・・・・?」
「・・・・あ、ああ、どうしたミカサ」
「あなたを間接的に満足させるくらいで留めたかったが・・・
どうやらそこまでで止められそうもない。
やはり“やり遂げてしまっても”良いだろうか?」
ハァッ・・・・・////
「おっ・・・おいおい!!!ちょっと待て!!!“やり遂げる”って
おまえまさか・・・・!!!」
グイッ・・・・・
「・・・・エレンの局部 を握っていたら、とても興奮してしまった。
・・・・申し訳ないがそういうこと、、、」プチ・・プチ・・・
エレンに途中まで解かれたシャツのボタンを全て
自ら解いてしまうが・・・、もう私自身も自分で何を考えるべきか、
何を護らなければならないのか・・・それすら判断出来なく
なってしまっていた。
「・・・・考えてみればエレンがその気 になってくれた、これほど貴重な機会・・・・
無駄にしてはいけない気がして・・・」ドキドキ
「いやっ・・・そりゃ当然オレの方から仕掛けたんだから
オレが言えた事じゃねえかもしれないけどよ・・・・
オレは当然寸前でやめるつもりだったんだ・・・・。
お前もたった今そう言ってただろ・・・それが無理だって言うなら・・・
・・・い、 いいのか・・・・?それで本当に」
「・・・・・・あまり良くない。
以前団長にエレンと『子作り』してみないかと勧められた際に
私はその場であっさり却下してしまった都合もある。
ここでその言葉を反故にしてしまっては
団長にとって悲願であったとしても・・・私が口にした
言葉の信用問題と・・・沽券に関わる。
・・・どちらかと言うと非常に宜しくない」
-
- 147 : 2016/08/14(日) 04:17:46 :
「どっちか迷っておいて非常に良くねーのかよ(溜息)
だったらやっぱり止めとくか?始めてから止められないなら
最初からやめといた方が無難だろ・・・」
口ではそう言うエレンだが・・・この手に収まる
局部の硬度が、言葉とは真逆の主張を私にぶつけてくる。
考えている事は御互いそう違わないのかもしれない。
その事実が・・・今は少しだけ嬉しくも感じる
「しかし、ここまでその気にさせて貰えたのに
それを無理矢理押し込む事の方が非常に良くない、と思う。
正しくエレンが今言ったように・・・・
私も部屋に帰ってから・・・行き場を失ったこの衝動に
身を任せてサシャなどを襲ってしまうかもしれない(真顔)」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・今なんか聞こえたな;」
「・・・・サシャのくしゃみだ・・・・多分。」
「どこから聞こえてきたんだよ・・・;
しかし遠慮も何も無い、汚ぇくしゃみだな・・・・
・・・まあ、サシャの為だと思えば・・・・・
今ここで止めるのは良く・・・ないよな・・・」チラッ
「私もそう思う・・・アルミンの為にも・・・・」チラッ・・・
「おい、、ちょっとまて、オレはお前と違って別にアルミンを
そういう目で見てる訳じゃねーよ!!!
ただ同じ部屋に居られると物音が・・・!!」
「・・・・どうでもいい。
所詮・・・建前だから。
・・・・・どうする?私は・・・あなたに任せたい。始めるなら・・・・」
私がそう問いかける間に、エレンは行動に移っていた。
・・・昔からそうだ。エレンは口や頭を動かすより行動を先に起こす。
今、この時の反応にしても。
・・・それはいつも通りのエレンらしい行動だったと思う
-
- 148 : 2016/08/14(日) 04:20:02 :
##########################
言葉で伝える必要は無い。・・・そう考えたから
オレは自分からミカサに手を出した。
既にこの状況に陥る前、一番先にオレの方から仕掛けた時・・・
つまり互いの口を合わせた時に、ミカサの気持ちは
何となくだが伝わってきた。
オレの浅い知識の中で、接吻 ってのは・・・
母さんにされた時から今までの間、ずっと
“ただの愛情表現”の手段でしかなかった。
家族の無事を祈ったりする意味で、出掛けに施される
一種の呪 いのような・・・そんなものだとばかり思ってた。
しかし、自分がこういう状況に置かれるようになって
初めてしてみて・・・・その本質が良く判った。
先程の感覚を確かめるように、オレは
無意識の内にミカサの頭を自分の顔に引き寄せて口を合わせる。
これは・・・なるほど、ミカサみたいに自分の考えてる事を
うまく相手に伝えられない奴や・・・
取り分け“オレみたいなの”にはこれ以上無いくらいに
誂え向きの伝達手段だ。
「・・・・・ェレ・・・・ン・・・・・」
「――――・・・・・」
―――オレが舌を押し込めばミカサもそれに応じて
自分の口の中に入り込んできたオレを押し退けることなく
誘いこむように絡み付いてくる。
これは・・・つまりどれだけ相手に心を許しているか、
その表現を行い、確かめ合う為のモノなんだろう。
舌の動きに併せて揺れるミカサの顔と
互いに身体を抱き寄せる事で密着するミカサの腰の動きが、
一切の言葉を用いずにオレにけしかけてくる。
、、、、この程度ではまだ足りないと。
もっと、深く。
もっと、、、、、強く。
もっと、、、、、、、直接的なオレを寄越せ、と。
「(言葉にしないでここまで身振りだけで伝えられるってのも・・・
それはそれで一種の才能だよな・・・・・)」
そんな事を考えていた矢先
「・・・・ップハっ・・・ すまないエレン・・?/////」
「・・・・、、、ああ・・・?どうしたんだ」
「・・・・汗・・・というか、においが気になってしまうのだろうか」
「・・・・なんだよ急に」
「ぃ・・・いや・・・・、気のせいだったならそれでいい。。
しかし・・・キスしながらエレンが何か考え事をしているように
感じたから・・・・」
「・・・別にお前が匂うから動きが鈍ってたんじゃねえよ・・・。
大体お前、さっき風呂入ったばっかりだろ」
「それもそうだった・・・済まない。すっかり忘れていた・・・/////」
ホッ・・・・
緊張が僅かにほぐれたこの瞬間に、
オレはミカサのシャツのボタンを全て外しにかかるが、
既にそれらはミカサが自分で外してたのを思い出し、
シャツの両袖を脱がせる事に意識を向ける。
今度はミカサの両腕が止めに入ってくることもない・・・
このまま行ってOK・・・って事だろう。
-
- 149 : 2016/08/17(水) 03:23:49 :
「・・・・恥ずかしい・・・・・。
こんなにじっとしているのが苦痛なのは初めてだ・・・・」
「おいちょっと待て・・・・;
お前、別に普段から他人の前で服を脱ぐくらい
平気でやってんじゃねえかよ・・・・?ちゃんと鍛えてるから
何処を見られたって恥ずかしくないとか言ってよ・・・・」
「そっ・・・それとこれとは話が違う・・・・!////
何故なら私は・・・!私はまだ、経験が無い ・・・!
エレン以外の誰かとは勿論の事・・・エレンとだって
した事がないのに・・・・、、これからそれ を行う為に
服を脱いでエレンに見せた事も無い場所を見せなければ
いけない・・・・、、、
正直にいって恥ずかしさのあまり気を失ってしまいそうだ・・・・」
クラクラ・・・
「・・・それもなんか変だろ・・・・;
大体母さんと一緒に水浴びしてた時なんか
オレもお前も全裸だったろ・・・。もう見てるっつの・・・」
「・・・・・///あの頃と今の私では・・全然違う・・・・///
下はとくに・・・あの頃のおばさんの様に,,,(ハッ
「・・・・なるほどな。・・・けどまあ気にする事ねえだろ。
オレも当然生えてるんだからな」
「・・・・・・エレン、私のお願いを1つ聞いてもらえるだろうか」
「・・・それは一々聞かなきゃいけない類のお願いなのかよ」
「・・・・私の・・・下の方はあまりみないで欲しい・・・・」
「・・・・“あまり”見なければいいんだな?」
「失言だった・・・・一切見ないで欲しい」
ダラダラ・・・・
「何でだよ!!!見ないで入れられるか!!
言っとくけどオレだって当然初めてなんだぞ!!!
それとも入れる穴を間違っても良いってのか?」
「じゃ・・・じゃあ・・・やっぱりシない方向でいい・・・。
良く考えてみればこれからしてしまうと汗をかくし・・・
汗をかいたらまた風呂に入りたくなってしまう・・・・ので...」
ダラダラダラ・・・・
――ここまで落ち着きが無いコイツはかなり珍しい。
落とした視線をウロウロとオレの目から逃がそうとしてる様子は
まるで図星を突かれて落ち着きをなくしたアルミンが目の前に
いるみたいだ。
「オレは筋トレしたからどっちにしてももう一度
汗を流すつもりだから別にいい」
「・・・・・」
「・・・・なんだったら背中くらい流してやるから」
「(エレンが・・・私の背中を・・・!!!?)」
Σズガァァァァン....!!!!
いつも思う事だが。・・・こいつの持ってる価値観は普通の人間と大分違う。
オレ達のように壁の中に産まれた歴史が深い人間か、壁外からの
祖先の血を濃く受け継いでいるかの違いなのか・・・
その辺確かな事は言えないが。
-
- 150 : 2016/08/17(水) 03:27:38 :
-
「(何も言ってこないな・・・今の内に脱がしちまうか)」
ズル・・・
「ぇ・・・エレンがそこまで言うなら・・・
しかし、見せるときは私のタイミングで・・・・」
スゴスゴ・・・
ズルッ・・・・
「おお・・・・本当だすげえ。
お前これ・・・・ひょっとして母さんよりすごい事になってるんじゃ」
「ッ?!?!?!」
ビグッ
ミカサが抵抗を見せる前に手早く下履きと肌着を
降ろしてしまったが・・・・オレの目の前に晒されたミカサの
下半身に、予想以上の密林が鬱蒼と生い茂っていた。
ハッキリ言って 毛深い。 それも、おおっぴらに言って
大事な部分と呼ばれるその一地帯だけ...昔見た時に
そこに在ったはずの割れ目が目視できないくらいには・・・
かなり立派に生え揃っていた。
腕や足なんかが特別毛深い訳じゃねえ・・・・
つまりこの部分だけ濃いって事は生き物の本能で
急所部分を外からの脅威に晒されないよう護ってるんだろう。
しかし、自分が気をそらした隙にオレにその部分を
見られてしまったのが相当堪えたのか・・・
直後、ミカサは大袈裟にビビッた挙句、
下を向いてすっかり消沈してしまう
「す・・・すまない・・・今日・・・こんな事になると分かってさえいれば
・・・ちゃんと・・・エレンにも嫌われないように揃えておいたのに・・・
(もうダメだ・・・・私は・・・・エレンに嫌われてしまった・・・・
折角婚約まで漕ぎ着けたというのに・・・こんな事で・・・)
嫌なものを見せてしまって済まない・・・、、
今日はこれくらいにして」スゴスゴ
「何勝手に落ち込んでんだ・・・;別に嫌だなんて思ってねえよ。
・・・ほら、オレだって毛深い方じゃねえがちゃんと生えてる。」
「・・・・・・!」
#########################
そう言いながら産まれたままの姿になって
私に見せ付けてくるエレンだが・・・
「私が気にしているのはエレンが僅かでも
不快に思わないかどうかという事だ。・・・だから、
エレンの陰毛の物量が気休めとしてはたらく訳ではない・・・
気遣いは嬉しいけれど...」
「気遣いとかそんな面倒な事するか。
大体普通にしてて生えてくるモノだぞ。
お前の髪の毛位伸びるってんならまだ分かるが・・・
その程度なら生やしといて問題ないだろ・・・?
女子の常識は知った事じゃ無いが、わざわざ剃ったりまでする
必要はねーよ・・・・」
「いっ・・・・、いいの・・・・・・・!?」
ガバッッ
「おわっ・・・?!?あ、ああ??;」
「エレンは・・・気にしないで居てくれる・・・・・?
私がこのように毛深くても・・・・??;本当に嫌ではない・・・?!」
エレンの事だ・・・他人の心情を察する能力こそ
他人より大分劣るが、気を遣う事だって当然あり得る。
それが私のような間柄であれば特に・・・。
ここは本当に嫌でないのかどうか・・・きちんと確認しなければ。
――でないと・・・・
後々エレンはきっと、私に気を遣ったことを後悔してしまう。。!
―――だからここは・・エレンの本当の気持ちを・・・・
-
- 151 : 2016/08/17(水) 03:31:27 :
「っ・・・・!!!ッぁああ・・・!!!もう面ッ倒臭ぇな!!!
んなもん全く気にしてねえよ!!!なんなら・・・・
ほら、、!こんな事だって平気でしてやる!」
ガバッ
「っ・・・ッひ////」
瞬間。私は自分の耳を疑った。
たった今、無意識の内に跳ねるように飛び出した
嬌声は・・・本当に自分が口にしたものだったのかと。
「やっ・・・、、何をしている、、の、、エレン・・・・・!
そんな場所・・・
き、汚い・・・・・・!すぐに口を離しっ
「ひふぁふぇははふは ・・・・
プハッ・・・どうせ“最後までしない代わり”とかいって・・・
お前だって口でするつもりだったんだだろ。
だったらお前も汚いものを口にするのか?」
「ぃっ・・・・え、エレンは汚くないから、、、いい!」
「ッ・・・・=3(溜息)
お前は・・・本当にオレばっかりだな・・・・・・
そんなにオレの事ばっか考えてて疲れないのか・・・・?」
「疲れなど・・・・感じるはずも無い。私は・・・あなただけ見えていれば
それでいい。エレンを想えるこの身体と・・・
エレンさえそこにいてくれれば 全て受け入れられる。
だから・・・」
「・・・・オレだけってお前・・・アルミンはどうでもいいのか。」
フム
「・・・・そういう冗談は・・・好きではない・・訂正してエレン」
キッ・・・
「ッ・・・・ぁあ、悪かった・・・。本気にするなよ・・・。
あんまりオレの事ばっかり言われると・・・
こういう揚げ足だって・・・取ってみたくもなるだろ」
「謝ってくれれば・・・いい。エレンは自分の気持ちに素直なのが
何よりの取り柄だから。
・・・・しかし、今1つ気になった事があるのでエレンに聞きたい。
素直な気持ちを正直に口に出来る・・・エレン に」
スッ・・・
「・・・・・な・・・なんだよ改まって・・・・」
問いかけるにあたり、私はエレンへと更に身を寄せる。
今、私達二人がどれだけ常識から外れた事をしているのか、
それは一々考えなくても直ぐに分かる。
私もエレンもその身に衣類を何も纏っておらず・・・
更にここは施錠も行っていない多目的休憩室。
エレンの様に自主鍛錬に赴いてやってくる人が
そこまで居るとは思えないが・・・・
その他の目的があってこの部屋に足を踏み入れる人が
何時現れても何も不思議は無い。
今誰かが入ってきたりでもしたら・・・・
・・・・いや、入って来なくとも入室直前に私とエレンの状況を
悟られでもしたら。
「エレン・・・・あなたは・・・・私の“揚げ足を取って”・・・・
何をしたかったの・・・・?」ン・・・・?
そんな緊張感によって跳ね上がる鼓動を隅へと追いやり、
素朴な疑問をエレンへと摺り寄せる
地肌の体温と・・・乳房の感触を織り交ぜるようにして。
男子は・・・この、脂肪が集中した柔らかい部分に
触れる事に関して、なかなか興味深い感情を持っていると、
クリスタたちの会話から学んでいたから。
・・・きっとエレンもその例外ではないはず
-
- 152 : 2016/08/17(水) 03:35:10 :
-
「何って・・・お前こそ、なんだよ・・・その意地の悪い聞き方は・・・!//」
オズオズ・・・・
「そのように聞こえる・・・?しかし揚げ足を取ろうとした
エレンの方が・・・所謂“意地の悪い”事を口にしてきた
気がするが」
「っ・・・・;」
「何故・・・エレンは私が困りそうな揚げ足を取ろうとしたの>?」
ズイッ・・・
何故だろうか・・エレンが困っているというのに何故か
楽しく感じてしまう。聞かずにして理解してしまった
気もするがこれが・・・・
エレンの求めていたものと同じものなのだろうか
「お前が・・・あんまり真面目な顔してオレの事しか
眼中にないみたいな事言うから・・・・
少し困らせてやりたかっただけだ..もういいだろ。。クソッ」
プイッ
「いいや・・・もう一声。。。
なら何故エレンは・・・・私を困らせたかったの??
何か具体的な理由があるはずだ。何故ならエレン・・・
あなたは理由も無く人を困らせるのを好むような
趣味は持っていないから」
これ以上は肉薄のしようがないというくらい・・・
私はエレンに顔を寄せる。
状況こそ全く異なるが、あの日と重なる格好だ。
アニの正体が女型だという事実を受け入れられずに
困惑するエレンに・・・私が詰め寄ったあの日の光景に
「。。。見たかったんだよ・・・・」
ボソッ・・・
「・・・・・??」
「・・・・、、、ッぁあクソっ・・・
こういうの・・・上手く言えねえけど、・・・でも
言いたい事だから伝えるし、理解できなくても言わせてもらう。
大事な事だから口答えしないで聞けよ・・・、いいか」
ガッ・・・・
エレンの目つきが今までと変わる。
・・・しかしどうした事だろう。質問しているのは私だったのだけれど。
「・・・・・・・!」
エレンの両手が・・私の両側頭部を押さえつけてくる。
同時に火が付いてしまいそうなくらいの感情の昂りを示す
その瞳。これは・・“このエレン”は単に怒っているエレンではない。
何か・・・どうしても大事な事を伝えたくて
必死な目をしている時の・・・そんなエレン。
きっと傍から見れば今の私とエレンは・・・・
躾を施されている最中の飼い犬とその飼い主のように
見えていることだろう。
「・・・・・いいか?お前はな―――
“綺麗”なんだよ・・これっぽっちも汚くなんか無い・・・!」
「え・・・・・・・」
「壁の中では他に居ないようなこの黒髪も・・・
陽に当たると灰色に見える事があるこの黒い目も・・・」
「いや・・・・あの・・・・・」
「体中どこを見たって白い肌も・・・・
やたらつやつやで目立つ唇も・・・・」
「エレン・・?そ・・・・それは・・・・;
(おかしい・・・普段のエレンなら態々こんな事・・・)」
「あ、あと・・・・瞬きしただけで風が立ちそうなその睫毛とか・・!
ふ・・・腹筋とか・・・!とにかくお前は美人なんだよ・・・・!
汚いとか自分で言うんじゃねえって言ってるんだ・・・・」プルプル
「エレン・・・、、落ち着いて欲しい・・・
それらは最後の腹筋以外殆どTVバージョンの私の仕様...;」
オチツイテ(ポン=3)
「こんな時にメタな返しがあるかよ!!オレは真面目に言ってんだぞ!!?」
「い・・いや・・・そんな事を言ってくるなんて・・・
あまりにも私の知っているエレンと違うと思ったから
・・・・・・つい」
-
- 153 : 2016/08/17(水) 03:38:22 :
「上手く話を逸らされた気がして腹が立つな・・・
とにかく聞けよ・・・、お前はオレばっか見すぎてるせいで
自分の事が全然見えてねえんだよ・・・!」
「問題ない・・・私には
それに上手く話を逸らしたのはエレンの方。
・・・・まだ私はエレンの返答をしっかり聞いてはいない」
ガシッ
エレンと私で、互いの眼を見詰め合い、
各々の両手を交えて相手の頭部を押さえ合うという
奇妙な格好をとりながら・・・私は今度こそエレンに
明確な答えを聞き迫る
「・・・・だから・・・・お前の色々な表情 を・・・・
もっと、、、見たかったから・・・!///」
「 」
「折角母さんも褒めてくれた位の美人なのに・・・
お前いッつも顔に出さないだろ・・・もっと見たいんだよ」
「お前が困っていると一目で分かる顔でも・・・・
笑ってる顔でもいい。とにかく普段見られないミカサの顔が
見てみたかったから・・・、、、だから・・・・」
「 本当に・・・そんな理由で・・・・? 」
「そんな理由で だ本当に。・・・悪かったって・・・
謝ってるだろ、、もう勘弁しろよいい加減・・・・」
とてもばつの悪そうな顔をして私の手を振り払おうとする
エレンの両腕を更に引き寄せ、
「逆だ・・・。
あなたのその言葉を聞いて・・・私の気持ちは固まった。
・・・・・・・エレン。」
「・・・ああ?」
――今最も伝えたい事を率直に述べる。
###########################
「やはり、今すぐしよう 。御互い、気持ちが盛り上がっているこの内に。」
その眼に、嘘も冗談もチラつかせる事なく
これから互いに始めようとしていた“仕事”の決意表明を
行うミカサ。
改めて真顔で言われると確かに小っ恥ずかしい気持ちが
起きないでもないが、二人して何も服を着ていない時点で、
どちらにしてもやることはやるつもりだった。
寧ろその言葉を口にするなら遅かったくらいだ。
「最初からその積りだったんだけどな・・・誰かさんが
話し込むもんだからこの通りだ。
よく考えてみりゃオレ達二人して全裸でこんな長い事
話し込んでよ・・・・さっさと始めていれば誰も来ないうちに
一通り終わってたんじゃねえのか・・・・(溜息)」
「そう・・・、、。人目を気にするのなら悪い事をした。
しかしエレン、 私は・・・あなたと二人でこうして
愉しめるのなら、交わる姿を見世物にされても・・・
馬鹿にされても一向にかまわない。
その時は・・・堂々とエレンと私の子を儲ける様を眼に焼き付けて
生き証人になってもらうまで・・・・」ムフー・・・
「お前・・・・最初と言ってる事全然違ってきたな・・・・
いいんだな・・・?本当に最後までやるからな。」
「本当にいい。折角の“初めて”なら・・・
エレンには思う存分シて貰いたいから。
これも鍛錬の一環だと思って頑張って欲しい。
エレンが精一杯頑張ってくれるなら・・・・」
「・・・・?」
-
- 154 : 2016/08/17(水) 03:44:29 :
-
「誰にも見せた事の無い私の顔を・・・
今日これから、あなただけに見せよう。
私自身すら知らない・・・・これまでの私の人生で最も
悦びに満ちた・・・、、そんな貌 を。」
ミカサのその言葉の意味を耳にしたくらいの所で・・・
「エレンが見たいと願うのなら・・・私に
晒せない表情 などひとつもない。」
オレの意識はまるで夜更けの濃霧の中へ
放り出されたかの様に、すっかり盲目と化していた。
理由は説明するまでも無く単純なもので
「っ・・・・!!」
すぐ目の前でオレを迎え入れるかのように
両腕を広げるミカサの中へと・・・飛び込んでいたから。
「みっ・・・ミカサッ・・・・!!」
夢中になってしまっていた。
目の前に開かれたミカサの全身に
部屋の隅にはトレーニングスペース用に申し訳程度の
マットが敷いてあるが・・・今ミカサが壁に背を預け、
両手足を投げ出しているのはその部分であり、
オレが我を忘れるようにして飛び込もうとしていたのも
そこに座り込んでいるミカサの開け放たれた腕の中だった。
「落ち着く暇も無く私に夢中になってくれるのは
嬉しいのだけれど・・・私は何処へも行かない。・・・ので、
落ち着いていい」パタパタ
・・・などと言い、余裕の姿勢を崩さないまま覆いかぶさってきた
オレの背をミカサがタップしてくる。
・・・流石にこれじゃ完全にミカサに主導権を握られてるみたいで
恥ずかし過ぎる。とりあえず無言の間を作らず、
何でもいいから話をしながら手を進める事にした。
・・・まあ、手を進めるといってもオレもミカサも既に
素っ裸だ。当然初めてこういう事をするって意識から来る
興奮でオレの方も準備が出来てるから、
後やる事といえば“どの様に入っていくべきか”
その狙いを定めるのみ。
「ああ・・・そういやオレ・・・さっきまでコニーと一緒に
ヒストリア探しに表回ってたんだけどよ・・・」
「ンッ・・・/// ?ヒス...トリアを・・・・?」
大分毛深いミカサのその部分に手をやって
どこがどうなってるのか手探りで入り口を探る。
出来るだけ気まずい空気が出来上がらないようにと
適当な話題を持ちかけながら動かされるオレの手に反応するように・・・
次の瞬間ミカサが身を捩じらせながら
聞いた事も無い声色の混じった吐息を吐く。
「(・・・・こいつ・・・こんな顔とか・・・声も出せるんだな・・・)」
ズリッ・・・
指先で掻き分ける都度にびっしりとミカサの股座を
覆う毛並みの手触りに...次第に混ざり始める湿った熱気。
こんな経験は当然初めてだから、
勿論これがオレ達で言うところの“勃起”に相当する
『前準備』である事なんて、知りもしない事だが・・・
それでも、目の前に居るオレの知らないミカサの表情と・・
それから聞いた事の無いミカサの声とが、それらの異変と
重なって、一つの事実をオレに教える。
「(やっべぇな・・・こんなに・・・こんなに意識しちまうとは
・・・正直思っちゃ居なかった・・・)」ヌチッ・・・
#########################
―――目の前の幼馴染の目には・・・既に彼がそういった対象として
しか見えておらず、最早一つの生き物として、彼がその身を
重ねてくる事だけを心待ちにしていると。
―――そう悟らせるのに十分な熱気が・・・
彼女の吐息には充満していた。
########################
-
- 155 : 2016/08/17(水) 03:50:42 :
“堰を切るように”とは正にこのことで
私の意識は・・・というより平常心と呼べるものは。
綺麗さっぱり、私の中から消え去ろうとしていた。
「フーー・・・・っ・・・・・ フゥ・・・・・・ ///」
代わりに“私の中”を満たしていくのは・・・
そのほとんどが脂肪で出来ているといわれる
この私の“脳”ですらも溶かし尽くしてしまうのでは
と思えるほどの・・・・
自身では押さえつける事も敵わない猛烈な熱気。
はち切れそうな私の心臓が全身へと送り出した
そのままの勢いで体中を亢進する血潮の勢いに....
少しでも気を緩めれば正気さえ攫われてしまいそうになるが。
「それで・・・・ヒストリアは・・・見つけられたの・・・?///」
フゥ・・・フゥ・・・・・・
たった今目の前に居て、私だけを見てくれているエレンだけが、
何よりも強固に私の意識をこの場に繋ぎとめる支えとなっていた。
「いや・・・結局見つからなかった。
・・・だからコニーの奴が気を遣ってくれた。
先休憩室行ってていいって・・・な・・・・・」ヌッ・・・ズル・・・
「っ・・・・ ハフッ・・・」
言葉を繋げながらも、手探りで私の入り口をまさぐるエレンの指。
恐らく・・・というより間違いなく御互い初めてなので
きっとエレンは“場所さえ分かってしまえば”すぐにでも
身体を重ねようとするだろう。
「(そうなる前までは・・・何とか。。。///)」
―――何とか保 って・・・・・私の意識、、、、。
自分勝手な我侭を通すようでエレンには申し訳ないが・・・
「(折角の初めて・・・/////エレンとは、交わりそのものは勿論、
その前準備であってもゆっくり行って欲しい・・・。。だから・・・・)」
「そう・・・・・。。なら・・・今ここでこうしてエレンと私が
愉しめるのも、コニーのおかげという事。」ソッ・・・
こうして会話を繋げながらもエレンの心を落ち着かせる様に
毅然と振る舞うが
体が――噪 ぐ。 血の騒 ぎに翻弄されるように。
「そう・・・か、そういえば・・・ あんまりのんびりしてても
コニーが来ちまうかもしれないしな・・・もう・・・
入れちまってもいいのか?、ミカサ・・・」
「・・・・・・・・・・
できれば・・・もう少し焦らすようにしてくれると私は嬉しい。」
「・・・ぁあ・・・湿ってないと滑りが悪い・・・のか?
でももうこれくらいなら充分じゃ・・・・」
グイッ
「 いいから 」
短くそう言うと、私に入ろうとしていたエレンを
引き寄せ、挿入を一時中断させるようにして抱きしめる。
これだけ密着してしまえば、
エレンも大人しくしているしか無いはず。
「・・・ったく・・・・。ああ、そうだ・・・そういえば・・・
言い忘れてた事が一つあったんだけどよ」
「・・・・?なに」
-
- 156 : 2016/08/17(水) 04:04:52 :
「さっき・・・休憩室 でよ。ヒストリアに・・・“好きだ”って言われた。」
エレンの口から告げられる、ある意味驚きの・・・しかし
以前から知っていたという意味では反対にそうでもない一言。
「 ・・・・・――知っているけれど 」
「・・・・・?!いや、本当についさっきだぞ!飯喰う前くらいで・・・」
「・・・そういうことではなく・・・ヒストリアがあなたを
想っていたという事くらいなら・・・私はずっと前から
知っていた・・・・という意味で」
「・・・・なんだよ・・・・そういう事・・・・・
ってオイ、ちょっと待て・・・・それも初耳だぞ・・・・・」
「・・・・当たり前だ。
ヒストリアが自分の口で伝えるべき事実を・・・・
私が先にエレンに伝えるのは道理に反する。
事実私はあなたに勇気を出して直接求婚して―――」
ギュウッ・・・・
「 っ 」
耳元でささやくように言葉を続けながら、
両腕に込める拘束力を強め、否が応にも私の体温と鼓動を
意識させるようにエレンを抱きしめる。
――互いに何も身に纏っていないから、
当然エレンの硬く膨らんだものは私の下腹部に密着する事になり、
エレン自身の昂りを、静かな律動に変えて私に教えてくれる。
「―――そうしてエレンが私の申し出に応じてくれたから、
こうして“初夜”を迎えるに至っている。」
私と同じように高まった脈動に影響され、
活発になった血の流れがそうさせているのか・・・・
私のお腹で跳ねているのが分かる。
・・・そして、その感触を私へと伝える事に
何かしらの気恥ずかしさを覚えてしまうのか・・・・
私が強く抱こうとするその度に腰だけを引け気味にする
エレンの照れ隠しともいえるその抵抗が。
―――尚更、私を熱くさせる。
「“ショヤ”・・・・ってなんだよ・・・」
モゾモゾ・・・
「結婚した男女が“初めて迎える夜”・・・という意味で
使われる言葉だ・・・。
・・・広い意味では初めて迎える夜そのもの・・・というより
主にたった今、私とエレンがしようとしている事 を指すが」
「ああ・・・・;そういう・・・・事かっ・・・・
しかし・・・こんな何時誰が来るとも知れない休憩室で
そんな初めてを済ませるってのは・・・お前は気にしないのかよ」
苦し紛れの抵抗で相当エレンも頭が回らないようだ...
その問いに対する返答は既に済んでいる。
「・・・・全然......全く気にならない。
私にとって・・大事なのはエレン。。あなたが“その気”に
なってくれるかどうか。 それだけ。」
「っ・・・・本ッ当にお前は・・・・オレ以外の奴に対して
恥ずかしいとか思う事ねえのかよ・・・・!!////」
-
- 157 : 2016/08/17(水) 04:08:47 :
「今私のお腹の辺りで引き攣っている・・・
このあなたの性器が、どれだけ私を異性として
意識してくれているか、その感触だけで私に教えてくれる。
・・・・それが何より嬉しい。―――だから私は・・・」
そろそろエレンに我慢ばかりさせるのではなく・・・
“エレンの知らない私を感じてもらう”事にしよう。
ギュゥッ・・・・
「たとえ今、誰かがこの部屋に入ってきたとしても・・・
一向に構わない・・・笑顔でエレンとの交わりを続けてみせる。
先程言った通りだ」
抱きとめながら、ついにエレンの肉茎を手にする。
出来る事なら・・・やはりエレンに主導を任せて奪って貰いたい・・・
そんな欲求も確かにあったのだが、 しかし。
先程エレンに聞かされた一言で・・・気持ちが変わった。
「っ・・・・お、おい・・・お前・・・・この体勢で・・・挿入 れんのかよっ・・・・
それじゃまるで・・・・・・・」
エレンの口から聞かされた“その名”を聞いて、
気持ちが変わった。
「・・・・・そうだ。確かに・・・初めてはエレンに奪って欲しい・・・
そう思っていたけれど・・・気が変わった。」ググッ・・・
ドサッ
やはりエレンもそのつもりでいたのだろう。
しかし私は拘束から逃れようと身を捩るエレンの背を
片手で抱き留め、上下と攻守の位置関係をそっくり逆転させると
そのまま逃げ場を無くしたエレンの腰に全体重を乗せ、
もう一方の腕でエレン自身を優しく掴む。
「 ・・・・・エレン・・・・? 」
「な・・・何だよ・・・・・,,//」ヒクヒク・・・
―――――罪悪感。そう呼ぶべきものが私の中を這いずり回る。
エレンは私の目を直視できずに力なく震えている。
今から私がしようとしている事を察することは出来るが、
“それ”が自分の望んでいた『初めて』とは違うという事が
分かっているから・・・。
そしてきっと目の前に居るこの私の雰囲気から・・・
拒否を示しても聞き入れられず、抵抗しても敵う事はないと
察してしまったから・・・・
だから、こうして私すらも知らなかった“私自身”に
怯える結果へと行き着いてしまった。
-
- 158 : 2016/08/17(水) 04:09:39 :
私の中に湧き上がる、エレンに対する罪悪感と・・・
同時にそれを掻き消すほどの勢いで燃え上がるこの感情、
それは間違いなく……
『加虐心』
「あなたに初めてをあげられなくて 本当に済まない・・・。
けれど同時にあなたには深く刻み込んでおいてもらいたい」
「(何だよくそッ...!こんな・・・・これじゃまるで)」
ブルブル・・・・
「 ―――エレン、、あなたの初めては私のものだ 」
ググッ・・・・ ズヌゥッ・・・・
とうとう・・・・私の力加減が導くまま、この身に入り込んでくる
エレンの体温。
「残念ながらヒストリアのものではなく・・・・」
「・・・・・・、、!・・・・・」
通常・・・初めての性交には相応の苦痛が伴う。・・・らしい。
当然それは同期の女子達の間でまことしやかに囁かれていた
証言に基づくものであり・・・
・・・それは当然、体内の未通領域を男性器で物理的に
引き千切られる事になる、私達女性側にとっての
痛みであるのは言うまでも無い。
しかし私にとって、この程度の血が出るか出ないかの
貫通に伴う痛みというものは・・・少しの我慢で
充分噛み殺せる程度のものでしかない。
・・・・・・なので、今最も気になるのはエレンにとっても初めて
感じることになる私の体内がどんな具合であるか・・・
それのみであったわけだが・・・・
「わたしのもの 。」
「――・・・フッ・・・・・,,,くぅッ・・・///」
ギリギリ・・・
声も無く身悶えしてくれているエレンの様子からは・・・
私の中の居心地も、それなりに良好であると直ぐに判断できた。
-
- 159 : 2016/08/19(金) 04:58:36 :
-
「・・・・すまない・・・ヒストリアの名前を聞いたら・・・
何故か・・・なぜかは分からないけれど、あなたをこの手で
襲ってしまいたくなった。体勢を変えるので・・・・
ここからはあなたが動きたいように動いていい・・・」
「・・・・・・・・・・」
・・・・・ここまで来てしまってから“しまった”と思う。
「あ、あの・・・・機嫌を直して欲しい・・・・エレン・・・・・??;」
オロオロ・・・・・・
やってしまった・・・・・!
「・・・・機嫌?
誰の機嫌を直せってんだよ。オレは元からこういう顔だ・・・・・・・」
ムッスゥゥゥ......ꐦ•̀ω•́)
このエレンは・・・この上なく“お冠 ”なエレンだ・・・・・・!
「・・・・・済まない・・・・うまくは説明できないが・・・・つい・・・感情的に
なってしまって・・・・」
「だから何を謝ってるんだよ・・・・まずそこから分かる様に
説明してくれよ ・・・なあ? ミカサ」ジロッ・・・
これは・・・かなりマズイ・・・。エレンは相当ご立腹だ。
いつものエレンであれば自らに握らせてもらえるはずの
主導権を寸前になってから撤回された事に抗議してくるはず。
・・・しかし率直に自分の気持ちをぶつけるのではなく
こうして暗に自分の怒りを表現しようとしているあたり・・・
とても簡単に機嫌を直してくれそうな状態ではない。
「・・・・あ・・・あの・・・エレンに“上”を任せるつもりだったのに・・・
よりにもよって直前で私が・・・その・・・」オドオドオド・・・・
「・・・・・・・・・・」
ジッ・・・・・・
エレンの淀んだ視線が・・・・私の身と心を締め付けてくる。
・・・幸いまだ私の中で膨張したエレンは、その硬さを
損なわずに居てくれる。・・・もしエレンが“その気”さえ
失ってしまえば・・・折角の貴重な“初めて”が最悪の終焉を
迎えてしまう・・・・
・・・・いやそれどころか・・・・
「(溜息)....そんなに焦るなよ・・・・;
まあ・・・そんな風に・・・顔に出して貰えればこっちも
お前が何を考えてるのか分かりやすいから助かるし・・
それはそれで良いんだけどよ・・・、、けどその前にお前・・・」
「 」
直後あっさりと表情を崩してくれたエレンの真意が見えず、
理解が追いつかないあまり固まってしまった私に、
少しだけ身を起こしたエレンがお互いの深く繋がりあう部分を
覗きこんで問いかけてくる。
-
- 160 : 2016/08/19(金) 05:07:26 :
「・・・・これ・・・血が出てるじゃねーか・・・・痛くない・・・のか・・・・?」
「・・・・?ああ・・・・挿れる時一瞬だけなら
痛みがあったが・・・別に口にするほどのものでは」
「おいなんでそういう事を先に言わねえんだ!!」
「??・・・、、、????;
いや・・・・折角のエレンとの“初めて”なのに・・・
そのようなもたついた事を言ってエレンの気を
盛り下げたくなかった・・・・ので・・・・」
「・・・ああそうかよ・・・(溜息)
・・・・けどそのワリにお前・・・・オレがいれようとしたのに
自分で横取りしたよな。」
「そっ・・・・そのことについては・・・本当にっ。。。本当に
申し訳ないことをしてしまった・・・・!!どうか気を...
「そんな事で謝るんじゃねえよ・・・;忘れたのか・・?」
グイッ・・・
「???;」
今度は完全に身を起こして私の半身を抱き寄せてくれるエレン。
・・・つまり今私とエレンは何も服を着ないで向かい合った
長座姿勢で繋がりあい、抱き合っている形にもなる。
「オレとお前は・・・もう"夫婦"なんだろ・・・・・?だったら・・・
そんなどうでもいい事で謝る必要なんかねえよ・・・・。
大体どっちがやったってヤる事は一緒だろうが・・・」
「い・・・・いいの・・・・?本当に・・・
許してくれるの・・・!? ・・・・・エレン・・・・!?」ガバッ・・・
「・・・くどいって・・・・(溜息)
じゃあ・・許すとかじゃねえが替わりに一つ聞かせろよ。」
「・・・・何?」
普通に会話は続いているが・・・私とエレンは
一つに繋がったまま。
互いの体温をこれ以上なく深く感じられる場所で
接し合いながらの対話というのも・・・・これで中々得難い経験だ。
「お前・・・・さっきは何であんなにヤル気になってたんだよ。
なんか・・・初めてはヒストリアじゃないとかって
余計に強調してたよな・・・・まさかお前」
「ッ・・・・・///////」
その後に続くエレンの言葉は・・・例えこうして
繋がって居なくとも容易に想像できる。
「 けっ・・・決してその・・・私がヒストリアに対して
対抗心を持っていたとか・・・ 嫉妬を覚えたとか・・・
むきになったとか・・・そういう・・・ 事などでは・・・・・・!!!」
ワタワタ・・・・
「・・・・・・・・・・・・」
フム・・・・
まただ・・・また私の見せる表情を余さず観察するようなエレンの
瞳が私の失態を逃さず捉えてしまう。
やはりエレンは・・・意地の悪い発想からではなく、
純粋に私のさまざまな表情を見る事に興味があるらしい。
・・・そんなに普段の私は表情に乏しかったのだろうか?
-
- 161 : 2016/08/19(金) 05:09:37 :
-
「そうか・・・、なるほどな・・・・。
・・・まあ・・・・なるほどとか言っておきながら結構意外だけどな・・・。
お前も・・・そういう普通に女子らしい気持ちが..
「違うッ・・・・だから、、、ちがうのエレン・・・・!!
私は・・・どちらかといえばクリスタにもあなたの子供を
産んで欲しいと考えている位で・・・・!!」
「"ヒストリア"・・・、な; っていうか本当に落ち着けよお前。
勢いでなんかすげえ事口走ってるぞ・・・何でオレが
そこでヒストリアと・・・・」
「・・・・だって・・・!だってエレンとヒストリアの子なら・・・・
・・・・絶対に可愛いハズ・・・・・・!だから・・・・・!」
「そういう事を言ってるんじゃねえよ!!常識で考えろよお前!?
それじゃ重婚なのは言うまでも無いしそもそもあいつは立場上・・」
「ヒストリアもあなたと同じような反応をしていたが・・・
しかし私は別段おかしなことではないと思う・・・・」
ハテ・・・
「 “ヒストリアも”!!??
お前っ・・・オレの知らない場所で何とんでもない事を・・・・!!」
「それほど慌てる事だろうか・・・?(訝)
ヒストリアの立場を考えればこそ・・・跡継ぎの問題は早期に
解決するべき。そこでエレンが嫡子の産出に手を貸せるというなら
それはとても理想的な協力関係となる。」
「いや・・・・あのな・・・・お前・・・・・!!」
ダラダラダラ・・・
エレンは未だ頭が追いついていないようで、
この思惑がさも私一人によるプランであると
断定した上で頭を抱えているが・・・・
「・・・大丈夫。何も問題は・・・無い。
団長もそれについては至って協力的だし・・・・・
何よりヒストリアがエレンに抱く好意に関しては・・・・
エレン 自身すでに身を以って知っている筈だ」
「・・・・・・・・」
「私も勿論エレンがヒストリアと子を儲ける事に反対など
していない。・・・先程のあれは・・・、なんというべきか・・・・
ヒストリアがあなたに好意を寄せているのは
当然知っていた訳だが・・・・私のほうが・・・その・・・・
もっとずっと小さい頃から・・・エレンの事を・・・すきだったから///」
カァァァ・・・・・
そう・・・、先程まで私自身ですら今一つ得心がいかなかった
あの感情の正体は・・・・きっとそれしかない。
つまり・・・・一番を譲りたくなかった 。
-
- 162 : 2016/08/19(金) 05:13:50 :
「なんだかな・・・・;話がとんでもない方向に
大きくなりすぎて返す言葉がみつからねえよ・・・。
何だそれ・・・;なんでオレも知らない場所で
王族の跡継ぎをオレとヒストリアで作る事になってんだよ・・・!」
「エレンは私と・・・ヒストリアとの重婚などで
難しく考えている事だろう・・・しかし。その点も問題ない。
・・・何故ならヒストリアが女王なのだから、そのくらいの横暴は
簡単に通る・・・・」
ドヤァ・・・・
「いや・・・そういう問題じゃねえよどう考えても」
ドヤルナ
「エレンは多妻で両手に花。エレンの可愛い子供は私とヒストリア
最低二人づつ産むと仮定しても・・・私はあなたの跡継ぎを
四人も見ることが出来る。
これほど喜ばしい未来図なら是非とも無理を通してでも
実現してみたいもの」ムフー....=3
「・・・わかった・・・;(焦)
いや、全然分からんがとりあえずそこで一旦落ち着けよお前・・!
体の中も相当熱いけどな・・・これそうとう体温が上がって
きてるだろ・・・・!落ち着いてまず正気に戻れって・・・・」ヤレヤレ
「気遣ってくれて有難う。。
しかしこの程度の体温変化は・・・既に鍛錬で慣れっこ。
・・・そして大きな誤解をしているようなのでエレンには
認識を正して貰いたい。私は・・・今、いたって冷静であり
・・・同時に正気を保っている。」
「・・・・・そいつは驚いたな・・・・・
どう考えてもお前の言ってる事はまともじゃ無いと
思ったんだが・・・しかもお前そんな事を・・・団長にも
本気で進言したのか・・・・?」
「・・・・?何を言っているの・・・・?」
そうか・・・エレンの反応に首を傾げてしまってから
反応を誤ってしまったと後悔する私。
この事実は・・・できればエレンにはまだ 伝えたくは無かったから。
「エレン・・・、あなたの実子を出来る限り迅速に、
かつ可能な限り多く残したいという考えは・・・・、
元々団長から私に示された意向だ。つまり、
この場合あなた限って免除されるであろう一夫多妻制は・・・
団長のお墨付きでもある。」
「 」
-
- 163 : 2016/08/19(金) 05:19:22 :
流石に・・・私の中でエレンの硬度が僅かに減衰するのを感じる。
無理も無い事だ。これだけ行為そっちのけで普段通りの
会話を続けていれば・・・互いに落ち着いてしまうのは当然の事。
・・・・なので、言葉による会話ではなく・・・
“ふれあい”による対話を始めるとしよう。
「・・・・そんな顔をしないでエレン。
私が今こうしてあなたと事に至っているのは・・・そんな
団長から寄せられた使命感に突き動かされているからではない。
・・・寧ろ一番最初、団長にその話を一対一でふられた際に・・・
私はその提案を迷う事も無く蹴っている。」
言葉を紡ぎながら私がその手を添えるのは・・・
服を着ていないことで今も私の眼前に晒されている
エレンの胸板。本人は一生懸命毎日鍛えているが・・・
私のそれと比べると少々見劣りする起伏に・・・
静かに指先を這わせる。
こういった接触はエレンに性感を与えるのが
第一の目的ではなく、あくまで私がエレンの感触を確かめて
自身を昂らせるためのものでもあるが・・・・
「なっ・・・・団長が・・・・お前に・・・・・?!
っていうか・・・・そこで拒否ったのに・・・今・・・・これ・・・!!」
アタフタ・・・
しかし全くの“無効”と言う訳でも無さそうだ。
「・・・大丈夫。あなたは何も心配する必要は無い。
聞かれる前に教えておこう。私が何故団長の進言に
頷かずに一度は拒絶したのか。
それは・・・・結局“あなたを信用しきれていなかった”からだ」
「ぁあ・・・・・?;///」
真面目な話を続けながらも・・・私は両手でエレンの
半身、取り分け腕部や腹部など・・・鍛錬の影響が出やすい
部分に触れながら、エレンの成長ぶりをこの手になぞり、
そして実感する。
「団長には・・・できるだけ早く、、、いや、今すぐにでもエレンと
子作りを行ってみてはとの打診を受けた訳だが・・・・
知っての通り壁の奪取も済んだ今、残すところ
あと一つ・・・地下室の探索という重大な使命がある。
この大事な時期に・・・・私が身重になって、エレンを
護りきれない身体になり果てるなど、その時の私にとって
考えるまでも無い愚策としか思えなかった」
「ンなっ・・・・そんな恥ずかしい理由で団長の勧めを
蹴ったってのか・・・・!?!お前っ・・・オレをどこまで信....
「だ か ら 。その頃の私は・・・本当にエレン の事を
信じられない小心者だったと・・・今では深く反省している。」
ギュッ・・・
途中でエレンの言葉を遮りながら、
私の両手は対面するエレンの両肩をつよく握り締める。
私の想いが・・・言葉から、眼差しから、そして何より
直接体内で共有する温もりから確かに伝わっているのか、
エレンの表情も次第にその色を変えていく。
「“あなたを護る為だ”と言い放っていた過去の私は・・・・
つまりこれ程までに自らを鍛え上げ、立派な兵士となったあなたを
・・・・少しもあてにできないものと考えていた・・・・
そういう事なのだから。」スッ・・・・
-
- 164 : 2016/08/19(金) 05:24:23 :
-
本当に・・・昔とは見違えるほど立派に、逞しく育ってくれた。
町でアルミンを救う為に蛮勇を振るっていたころのエレンは・・・・
気持ちは立派でも当然力がそれに見合ったものではなかった。
それはもう・・・私の手助け無しではとても見ていられないほどに。
――しかし今は。今となってはこれほどまでに
頼りがいのある一人の男として私を抱き留めてくれている。
こういう感慨は・・・育ての親であるエレンのおばさんなどが
本来なら抱くべき感情なのだろうけど・・・・・
「しかし今は・・・お互いに今はもう違う 。先程も言ったように・・・・
私とエレンは・・・既に本当の意味での“家族”だ。
あなたの事を“護るべき家族”・・という意味合いだけではなく、
全幅の信頼を寄せることができる・・・・つまり、
“頼る事が出来る家族”として。最初のお願いを聞いて欲しい」
グイッ・・
私にとってエレンの存在は・・・例え同い年であろうとも
おばさんにとっての“それ”と同じ様なものだ。
だから・・・・
その成長がこんなにも愛おしく、同時に嬉しくも感じられる。
「・・・・・おね・・・・がい・・・・・?なんだ・・・お願いって・・・」
真面目な話ついで、これからエレンに行う求愛行為は
“ある意味”求婚よりも大事なので私は自身の鼻先を
触れ合う寸前までエレンの眼前に寄せ、
返答の如何に関わらず接吻の前兆を意識させる。
どのみち私が顔を重ねるつもりで居るのを察したのか
流石のエレンも頬を赤らめて視線を逸らす。
「・・・・・そう。お願い。改めて・・・。
エレン。あなたの子が欲しい。あなたの妻として・・・
嫁として・・・・また大事な一人の家族として。
心から信じる事ができるあなたの子供を・・・
その・・・私に、、く・・・ください・・・・///」
しまった・・・。毅然とした態度で最後まで言い切って
そのまま口付けを交わすはずが。
後一歩のところでエレンの眼力に負けて・・・
照れの心を炙り出されてしまった・・・・・
-
- 165 : 2016/08/21(日) 02:04:04 :
「・・・・・・・・・・」
お陰で顔を重ねるタイミングまで逸してしまった。。。
「ブッ・・・・・ ァハッ・・・・ハハハ・・・・ ハハハハハ・・・・!///」
しかし、その直後・・・私の言葉に何を言い返すでもなく
声高に笑うエレン。
「いや・・・まあここまでしてるのに本当今更だけどよ・・・!(笑い堪え)
オレとお前で子供をつくろうってか・・・・。。母さんがもし
まだ生きてたら・・・なんて言うだろうな・・・・」
「おっ・・・おばさんなら・・・きっと・・・!いや、絶対、、、!!
私とエレンの背を押してくれる・・・・そう信じている・・・!だから・・」
「ぁあ、オレも・・・ここまでお前の事を知る事ができた
今なら・・・・・正直にそう思える・・・・」グイッ・・
密着。。。
エレンが私の頭部を両手で掴み、僅かしか無い
間合いを一気に詰めた事で・・・私の唇と、
エレンの唇とが重なり合う。
局部で繋がりながらの・・・つまり性交を
行いながらの接吻とは、言葉にするまでも無く
淫猥な印象を受けそうな状況だが。
・・・不思議とそういった恥じらいは、今この私の中に
存在しなかった。先程エレンを目前にして不覚を許してしまった
恥じらいにしても・・・・そういったところから来るものではなった。
ピチャッ・・・・ ヌニュッ・・・・ グチュ・・・・
「クフッ・・・エ・・・・えふぇン ・・・・////」
そこまで広いとは言えない休憩室に、
口付けによって発せられるものと、更に深くつながり合う
その部分が立てる水音とが折り重なって響き渡る。
エレンが・・・とうとう言葉ではなく身体で、
私に自らの気持ちを刻みつけてくれた瞬間だった。
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・しかし、濃密な口付けと同時に腰の前後運動を
始めてくれたエレンを感じて湧き上がる多幸感は・・・・
そう長く続かなかった。
――何故・・・?
――――何故なのか理解したくも無い。
―――――――今まで時折私を悩ませてきた“あの”痛みが・・・
よりにもよって、今・・・此処で。 目の前のエレンを
まるで塗り潰すかのように私の頭を縛り付けてきたから。
それも未だかつて感じた事が無い程の鈍く重苦しい痛み。
・・・・押し寄せてくる強烈な苦痛の奔流に呻きを漏らす私だが、
私の意志が痛みを拒もうとすればするほど、その勢いは
助長されていくような気さえした。
打つ手無し。。。。だが幸い、『痛い』だけだ。
-
- 166 : 2016/08/21(日) 02:06:47 :
私がどんなに意識を強く持ったとしてもこの痛みを
そのまま無視する事など出来はしないだろう。
・・・・いつもそうだから。この“痛み”は・・・
自然に収まるまで待つしか・・・時が解決してくれるのを
待つしかない。
・・・・唯一つ、こういった状況に置かれることで
今初めて気が付いた打開策ではあるが・・・
エレンが与えてくれる“その”痛みだけが・・・
私の正常な思考すら妨げるこの痛みを和らげてくれる、、
――そんな気がした。
############################
やっとそれらしい空気になってきたところで・・・
オレは腰から下の運動を始める。恐らくミカサが
するつもりだっただろう口付けの先制を奪いながら。
「・・・・・、 ・・・・・・、 ・・・・・・・、
(こんなんで・・・いいんだよな・・・多分)」
パッ・・・
「ンッ・・・・ ンンッ;・・・・//// ふぁっ・・・・」
プハッ・・・・
ヌッ・・・ グチュッ・・・ チュッ・・・ クチュッ・・・
互いの口に封じられていた呼吸を取り戻すと同時、
休憩室内の空気が新鮮に思えるくらいの深呼吸で一気に
肺を酸素で満たしたオレは・・・一思いにミカサへの進撃を
加速させる。
「っ・・・・///!ッぁ・・・・!! アッ・・・!!! ぁ゛っ.... 」
ズキン..ズキッ.....!!!
経験がないのは勿論だが、誰かがやってる所をこの目で
確かめたワケでも無い。・・・・だからオレが動いているまま、
この速度や力加減がミカサにとって億劫でなければ
それでいいんだが・・・・・
「ぁあッ・・・・エレン・・・・!!!エレンが・・・・・!!!!私の・・・!!」
ヒクヒクッ・・・・
聞いた事も無い声でオレの名前を呼び続けるミカサだが
特にこっちの動きを緩めるように要求してきたりといった感じは
今のところ見られない。
-
- 167 : 2016/08/21(日) 02:08:29 :
――だがよく考えてみれば、こいつが自分で
“痛みを感じた”と言っていた挿入の瞬間なんかには・・・
こいつは痛そうな顔など欠片も見せなかった。
つまり顔を真っ赤にして呻くようにしているその表情は・・・
見方を変えれば苦しそうな表情に見えなくも無い。
良く見りゃ半泣きになってやがるし・・・・
「っ・・・ぉぃ・・・・ミカサ・・・?? キツイか・・・・?
もし動かし方がおかしかったら、さっきみてえに
痛みを感じる前にすぐ言え...
「ぃイッ・・・!!!/// いいのエレン・・・・!少し痛むが・・・!!!
その痛みがっ・・・・私の・・・・ッ・・・・」
畜生・・やっぱり痛ぇんじゃねえか・・・・!
「ッ・・・痛いんだな!? どうする・・・動くのやめるか・・・?
それとも一旦抜いて...」
「嫌ッ・・・・・!!!!!!」
ガッ・・・・
「ッ・・・・!!???お、、おいミカサっ・・・・」
「お願い・・・やめないで・・・・・ェレン・・・・・!!
とても・・・・とても痛むの ・・・・・!!
だからお願いだ・・・もっと激しく・・・・!!!この痛みを消せるほどの
痛みを・・・・私に・・・・!!!」ス"キンッ....!! キ"リキリ・・・
余程の痛みに切羽詰ってるのか知らないが、
まるでワケの分からない事を喚くミカサが、オレの背中に
両腕を回し、全力でホールドを掛けてくる。
・・・・この力の掛け方は・・・・本気でオレを放そうと
していない気持ちの表れだと思えるが・・・しかし。
「だっ・・・から・・・・・!意味がわかんねーよお前・・・・!
そんな・・・・泣いちまうほど痛いんだろ・・・・?!なら何でそこで
止めずにもっと激しくしろだなんて・・・・」
口に出す所まで頭に浮かんだ訳じゃないが、
思わずミカサには重度の“そういう”趣味でも
あるんじゃないかと一瞬疑いかけたその時・・・
息を吐くのもつらそうなミカサの苦痛の表情が・・・
続けて訴えかけてくる。
-
- 168 : 2016/08/21(日) 02:10:45 :
「そう・・・・じゃ・・・、、、、!!そうじゃ・・・ない...!!
私が言っている“痛み”と・・・エレンが言っている“痛さ”は...
とにかく、、、 違う・・・の.....!!」グッ・・・・・・
「言いたい事が分からねえって・・・;もっと・・・
オレにも分かる様に言えって・・・・!」
どの道分かる様に言って貰っても、今こうしてミカサに
確実に動きを封じられている以上。オレの力ではどうする事も
できないから・・・動くか、止まるか。
その2択しか現状オレに選べる道は無いが。
「私の・・・・頭が痛むと言っているの・・・・!!
今まで・・・たまにエレンの事を考えている時だけ、こうなる事はあった・・・!
けれど・・・ここまで酷く痛むのは私にとっても初めてで・・・
とても・・・とても怖い・・・・!!頭が・・・割れてしまいそうな程痛い・・・・!!!」
・・・・結構ヤバそうだが・・・大丈夫なのかこれ・・・
「おい・・・、、 おいミカサ...!!?
お前・・・こんな事してる場合じゃなくて・・・とっとと医務室に・・?!」
「お願いだから・・・!やめないでと・・・言っている・・・・・!
エレンが動いてさえ居てくれれば・・・私は・・・!私は
エレンだけを感じられるから・・・!
同じ“痛み”でも・・・あなたがくれる“痛み”なら・・・
私にとってそれ以上の薬は無い...!
だから・・・・もっと・・・・・!///」
・・・・こいつの目・・・・
言ってる事は明らかにまともじゃ無いが・・・・
少なくとも嘘をつける余裕がある時の目でもない・・・
「・・・・・(深い溜息)....。
お前・・・やっぱかなり普通じゃねえって・・・」
「・・・私がそういう人間であると・・・エレンは既に
知っていた...はず。」ハァ・・・ ハッ・・・・ ;
「知ってたよ。。。ああ充分変な奴だってことくらい」
「・・・・嫌いになってしまった・・・?」フッ・・・
未だに涙を溜めながら薄ら笑いを浮かべてくるミカサ。
・・・こんな当たり前の問いかけには・・・
勿論答えてやる必要なんて無い。
「・・・・・・・本当に動いて良いんだな・・・・?」
「・・・・有難う。・・・是非そうして欲しい、
エレンが気持ち良いのであれば・・・どれだけ強くシてもいい・・・
だから・・・・もっと動いて・・・」
「あのな・・・お前のそういうところが気に入らないんだよ・・・
オレさえ良ければそれでいい・・・っていうの・・もういい加減
やめてくれ・・・。」
「・・・・・・」
こういう事は少し強めに言っておかないと・・・
流石のこいつも真面目に聞いちゃくれない気がして、
オレは真面目に思ったままのことを口にする。
「そんなんじゃお前・・・・これまでとおんなじじゃねえか・・・」
-
- 169 : 2016/09/10(土) 16:52:39 :
「・・・・違う。」
クスッ・・・
「っ」
「“エレンさえよければ”・・・・そんな意味でお願いしたつもりはない。」
まだ頭痛が抜けきって無いんだろう。
コイツの顔としては滅多に見られない、
困りながら笑うような不思議な顔で・・・それでもかなりの
苦痛に耐えながら口を聞いているのがわかる声量で、
弱弱しく口にする。
「私がこれだけ“痛い”のだから・・・・
代わりにそれを忘れさせてくれる位の良い顔を、
エレン に見せて欲しいとお願いしている・・・」
フッ・・・・
「 --- 」
――不意打ち。。
「、、、・・・・ミカサ・・・・・?」
「・・・・ぅン?」
――それはあまりにも唐突過ぎる・・・
「今の顔・・・・もう一回見せろよ・・・・・・なぁ・・??;」
「・・・・済まないが・・・・こういうものは“造ってみせる”
ものではない。。どうしても見たいなら・・・・
そうなるように エレンが頑張って」
「ッ・・・(舌打ち)何だよ・・・一瞬で素の顔に戻りやがって・・・
折角素直に“可愛い”とか言おうと思ったのによ・・・!!」
「お世辞を言っても何も出ない」
「そうかよ・・・オレは悪いがもう出そうなんだが・・・;」
ワルイ・・ワリト ゲンカイ ダ・・
「っ・・・!?も、もう・・・・??! それは・・・困る・・・・!
折角痛みも引いてきた・・・ので、もっとエレンには
頑張ってもらわないと」ソワソワ・・・
ガッ・・・
「あ、オイッ・・・・」
辛抱の限界も程近いと素直に白状したオレの両肩を
押さえて何とか持ち堪えるようにと渇を入れて来るミカサだが・・・
その動きは残念ながら逆効果だった。
-
- 170 : 2016/09/10(土) 16:53:57 :
「が・・・頑張ってエレン・・・・!なんとか・・;」
アタフタ・・・
必死に訴えかけてくるコイツの眼が、やけに切羽詰って見える。
・・・・多分一回出しちまったらそれっきりだと
勘違いしてやがるんだろう
「だ、だから力入れるなっての・・・・!これじゃ余計に・・・・!!」
肩にかかるプレシャーと同時に・・・
ミカサの体内 が、キツく締まる。
ミカサの全身が・・・腹筋に限らずくまなく鍛えられているのは
今更言うまでも無い。
例え下半身とは直接的に関係していなくとも、
腕に力を入れると同時、ミカサがその全身に緊張を走らせる・・・
それだけの事で
「ッ・・・・ミッ・・ミカサ・・・・;;」
ブルブル
その緊張の真っ只中に居る事になるオレは、
まるで今ミカサに突っ込んでいる部分を
掴んで引っこ抜かれるんじゃないかって位の怖気に襲われる。
・・・つまり締め付けが凄すぎて我慢できそうも無くなる。
「エレン・・・・・!?!待っ....」
「スマン・・・もっ・・・無理っ..ぽい...」
フッ・・・・
情け無い事だが、ミカサの締め付けの凄さに一瞬で
限界まで追いやられたオレは・・・
自分の中でまるで背筋に通った一本の筋を
引き抜かれるかのような感覚に打ち震える。
自分ひとりでなら、既に何度も体験した事のあるこの感じが――
とうとうミカサと行くところまで行き着いちまう時が
こうしてやってきた。
「(仕方が・・・無いか・・・・)
分かった・・・エレン。。無理なら我慢はしないで・・・
その代わり・・・顔を良く見せて・・・・」
「ぁあ・・・・?;なんつった・・・・!
悪いがもう余裕なくて全然・・・・・!!!」
ガッ
「っ・・・・・・・・・・」
後ろ頭に走る軽い衝撃。
それは言うまでも無く
「エ レ ン の 顔 を 。よ く見 せ て 」
「っ・・・・・・!!」
オレの頭を自分の顔に引き寄せようと掴む、
ミカサの両手。そこから伝わった衝撃だった。
-
- 171 : 2016/09/10(土) 16:55:20 :
「・・・・・・・っ...フゥ・・・」
初めての感覚だった。。
コイツの顔を...いや。
ミカサ の顔を見てこんな気持ちになったのは。
・・・・いや、さっき食堂で結婚しようだなんて言われた時から、
これに近い感情は確かにオレの中にあった・・・・
しかし、今感じている“これ”は・・・・その比じゃなかった。
「っ・・・ダメだ・・・・ッ・・・・・」
限界を踏み越えるその瞬間にオレは自分でも情けなさ過ぎて
死にそうな言葉を吐き出し・・・
おまけにあまりにも近すぎて逆に焦点が合わないほどの距離まで
顔を寄せるミカサの視線を受け、恥ずかしさの余り
死にたくなる程の熱が顔面に篭るのを感じる。
「っ・・・・・////」
・・・・だが、良く見えないとは言っても、
ミカサの表情や顔色くらいなら大体分かる。
我慢できなくなって全身を震わせるオレを
愉しんでいる様にも見える顔だが・・・・
ミカサの性格を考えれば多分違う。
「っ・・・・・///ぁ・・・ありがとう・・・・エレン・・・・,,,
残念ながら・・・・頭痛と下からの痛みも重なって・・・・あなたが
出してくれているのを感じ取ることはできないけれど・・・
“その表情 ”が・・・私の為に頑張ってくれている
エレンの顔だと分かるだけで・・・・・・・・」ゾクゾクゾクッ・・・・
言いかけると同時、ミカサの背筋に不規則な緊張が走り、
当然力んだミカサの腰に捻じ込んでいるオレも
それなりの力で締め付けられる事になる。
「(しっかし・・・・なんて顔してやがるんだ・・・コイツは・・・)」
・・・・いや・・・多分オレも言えないな。
目を凝らせばコイツの眼にオレの顔が
映るんじゃないかってくらいに互いの距離は近いが・・・
オレも・・・今自分の顔を鏡で見る勇気は無い。
「(クソッ・・・なんでこんなに・・・・!!!)」ブルッ・・・
――つまりそれくらい....
それくらいにミカサ の中は気持ちが良かった。
しかもただ気持ちが良いだけでなく、既に言葉にしたように、
言葉にしようがない位の小っ恥ずかしさもオレの中にあった。
その恥ずかしさの正体・・・それは勿論・・・・
「・・・・・・・エレン。。」
「・・・・・ナんだよ・・・・」///ムスッ・・・
「 気持ちいい? 」
今まで誰にも晒した事がない状態をこれ以上
接近しようが無い格好で、よりによって一番オレの事を
良く知ってるミカサ にみられてしまったという事実。
そして―――
「気持ち良くなかったら我慢できねえなんて言うかよ・・・・!!
おちょくりやがって・・・・」イラッ・・・
「おちょくってなどいない。
エレンが辛抱できないほど気持ちよくなってくれたと
言ってくれるなら・・・・私はとても嬉しい。」ホゥッ・・・・///
今、目の前に顔を寄せてくるこいつに、
結婚指輪以上に『重い贈り物』をしちまっているという・・・
どうあがいても否定しようの無い、屈服感。。
-
- 172 : 2016/09/10(土) 16:58:12 :
-
「だから・・・・ちゃんと言って欲しい・・・・のだけれど」
「・・・・・何をだよ....ッ(舌打ち)」
「“気持ちいい”と。あなたの口から聞きたい」
「・・・・・・無理やり言わせて満足か?
こういうのは“造って見せる”もんじゃないんだろ
悔しかったら言わせてみろよ」ヘッ;
ここぞとばかりに思いついたお返しをしてやるが・・・
「・・・・私は構わない。・・・やっとどっちの痛みも 引いてきた・・・
エレンがそうしてもいいというのなら・・・・
“ここからは”私が エレンを犯してしまう事になるが・・・・・」
こいつ・・・一々言う事が露骨なんだよな・・・第一...
グルンッ・・・・ ドサッッ
「 」
そんな事を考えていた矢先、、
反転する景色と・・・背中に走る軽い・・・いや、重い衝撃。
それと同時にオレの背筋から全身にかけて、
気持ちよさとは全く違う寒気が走る。
「すぐに出てしまうと聞いたときはとても焦ってしまったが・・・
やっぱりエレンは私の期待を裏切らない。。
ほら、もうこんなに私の中で硬くなっている。。。」ウットリ....///
待て・・・・
「これだけ硬くさせる力がエレンに残っているという事は・・・
もちろん“出す事も出来る”・・・と、受け取っていい??///」
ちょっと待て・・・・・!
「・・・・そんなに慌てなくていい・・・・///
催促しなくても・・・私がいくらでもエレンを満足させてあげるから」
「待てっ・・・・!お前これ・・・またさっきと
同じ流れになってんじゃねえか・・・・・・!!
勝手に姿勢を変えるんじゃねえよ・・・ぉ・・・オレが...」ガクン...
・・・・????
言いかけたオレの腰を中心にして・・・言いようの無い痺れが
走っているのを感じる。何が起きてるのか理解しようと
頭を働かせるオレの耳元にミカサが顔を寄せてくる。
「・・・・エレン・・・・?自分で気づいていないの・・・・?」
「・・??!?・・・・???!!なっ・・・・お前・・・何を・・・・」
本気でオレの正気を疑うかのようなミカサの目。
「今・・・姿勢を変えたのは・・・あなたの方でしょ・・・?
エレン」
「 ―――― 」ゾクッ・・・・
結論から先に言うと・・・オレは腰を抜かしてた。
・・・らしい。
「っっ―――!!!!!////」
最悪だ....!!!!!!!!
一生の内で・・・・恐らく今日が最も思い出したくない
最悪の思い出の日としてオレの歴史に刻まれる事になるだろう。
母さんが目の前で巨人に喰われたあの日とどっこいと言えるほど
オレにとって今この瞬間は悪夢そのものだった。
-
- 173 : 2016/09/10(土) 17:01:09 :
-
「エレン・・・・、大丈夫・・・・?;凄い顔になっている....」
挙句にはミカサに同情までされる始末だ・・・
正直今ここで死にたいとすら思える
「・・・おそらく“実験の反動”で・・・ここへ来て体力の底が
見えてしまったのだろう・・・。実験の後のトレーニングもいいが、
ほどほどにしてと・・・・あれほど言ったのに」フゥッ・・・・=3
しまいには溜息を漏らしてオレの上から少し身体をずらすミカサ。
直後・・オレの中の何かが音すら立てそうな勢いで崩れ落ちた。
「・・・・エレン・・・?とても顔色が悪い・・・
大丈夫・・?そんなに気分が悪いの・・・・?」ソワッ・・
「あまり大丈夫じゃねえな・・・こんなに情け無くて参ったのは
何時以来だってくらいに・・・・」
そう口にするのもやっとの事で・・・
オレは未だに目も合わせられずに、とりあえず上に乗っている
ミカサの腰を両手で押さえ、その身体を退かそうとするが...
「・・・・エレン、無理は良くない。
辛いなら一休みしてからでいい・・・・・」グッ・・・
――何か勘違いをしているのか動きを封じられてしまう。
「いや・・・一休みとかじゃなく・・・もう今日は
止めにしようぜ、、っつってんだ...
流石に精神的ショックがでけえって・・・・」
・・・そうだ。いくら実験とトレーニングが重なったからといって
この程度身体を動かしただけで腰を抜かしちまったなんて・・・
「・・・・そういうことなら、」ガシッ・・・・
「 !? 」
オレの返事を聞くなり更に腰を落とし込み、
曲げた膝でオレの腰骨を押さえ込んでくるミカサ。
「なおさら放す訳に行かなくなった。」ギシッッ・・・
「は!?!?オイオイ・・・お前がどう言おうと勝手だけどよ・・・・
そもそも“こいつ”を見ろよ・・・・
オレがその気 にすらならなきゃ
お前がいくらしたいって言っても・・・・・」
未だに上に乗っかられて自由が利かない状態で、
オレはたった今まで硬直してたそこ を顎で指す。
さっきまでなら、あれだけ締め付けの強いミカサの中に
突き立つのに充分な硬さがあったが・・・・今じゃ見る影も無い。
「―――問題・・・・ない。。私が・・・どんなことをしてでも、
・・・あなたを『その気』にさせてみせるから・・・・」
そんな事を言って更に距離を詰めて迫ってくる
ミカサは、言葉の通りに相当やる気になってる様子だったが・・・
バンッ!!!!!
「「 っ 」」
ビクッ × 2
かなりの勢いで急に開け放たれたドアから休憩室に
駆け込んできたのは・・・・・
「っ・・・おい!!エレン、食堂テラスまで行こうぜ!!!
すっっっげ―――面白いもん見られっ,,,,」
何をそこまではしゃいでるのか知らないが、
やたらテンションが上がっているコニーだった。
今更言うまでも無く、オレとミカサの姿は何も着ていない。
更にこの上なくタイミングの悪い事に今はミカサがオレの上に
跨っている状態ときた。
―――最悪の思い出が更にランクアップしちまった・・・・
-
- 174 : 2017/01/18(水) 22:45:21 :
「・・・・・ぁあ・・ なんか・・・・
いきなり開けてすまなかった
・・・・っていうか・・エレン・・・・?お前それだいじょ...
(ダラダラ・・)
「・・・・な ん だ よ ・・・・・」イラッ
「っ・・・・ぁっ・・・イ、イヤ!!!勘違いだったら良いんだ!!
邪魔して悪かった!!!!」ババッ!!!!
バタンッ!!! ダダダダダダダ.....
「・・・・・・・・?」
大方あの反応だと・・・・オレがミカサに無理矢理襲われてる
最中なんじゃないか・・・とか、そんな勘違いをしてたんだろう。
しかし、ミカサの奴はこれだけストレートに目撃されてるのに
本当に全く動じて居ない。
「お前は・・・・本当に人に見られるの平気なのか・・・・」
ハァ・・・・
「さっきもそういったはず・・・・。
私は・・・エレンとこうして身体を重ねられる事実に誇りすら
もっている。・・・だから何も恥じる事など」
「・・・・・・;ああ・・・そうかよ。じゃあもう好きにしろよ・・・
お前がどうしてもしたいってんならそれでいいが・・・
さっきも言った通りオレは...」
「いい。エレンの疲労は私もよく理解している。。
・・・が、どれだけ心身に蓄積した疲労に悩まされているのか・・・
その程度は結局本人しか理解できない。・・・・ので」
「(・・・珍しいな・・・コイツがこんな形で大人しく退き下がるとか・・)」
「あくまでエレンがこれ以上疲れないよう、私が
主導してやらせて貰おうと思う...///
上に乗ってしまっては血の流れが滞ってしまうとおもうので・・・
その・・・・、、どうしたらいいだろう・・・?」アノ....
「・・・・・(溜息);
ッ、、っぁあ、分かったよ畜生!!!そんな事に一々気を遣う位なら
オレが動くって!大体そんなんじゃオレがしたくないのに
無理矢理お前がしてるみたいに見えちまうだろうが」
「!
エレン・・・・?、今の言葉・・・私にとっては聞き逃せない重要な
一言だったから、、、
聞き直したいのだけれど。
・・・つまりそれは・・エレンも私とこうする事を望んでくれて...
「お前って本当そういうとこ面倒臭い奴だな!!!」
・
・
・
-
- 175 : 2017/01/18(水) 22:47:40 :
結局その後もこんなやり取りをミカサの奴と繰り返す事
十数分...いや、数十分だったか。
何の緊張感も持てずにくだらない事を喋りながら、
オレとこいつの『それ』は続けられた。
その間、コニーに続く形で誰も部屋に来る事がなかったのは・・・
単なる偶然だったのか、それともコニーにしては珍しく
気を遣って人払いをしてくれたからだったのか。
それを知れるのは少し先の話になる。
#############################
~ほぼ同時刻~
―調査兵団一時拠点・リヴァイ部屋―
「ぁ~~・・・・・暇だ.....」
「片付けるべき山積みの仕事をそこいらにほっぽっていながら
何をもってお前がヒマだと言いてえのか....俺にはどうしても
理解が追いつかねえ訳だが。
取り合えず寝床に散らばった書類 だけでもとっとと
纏めて机に持っていけ。・・・でなきゃ
「それもそうだな!ベッドにこんなに荷物があったら
夜のお仕事どころじゃ無いもんね!悪い悪い、今すぐ片付けるよ!」
アッハッハ!!
「・・・・・お前・・・本当に節操もクソも無くなってきたな・・・・
毎度毎度迫られるこっちの身にもなってみろ。
・・・・・いい加減本気で軽蔑するかもな」キロッ・・・
そう言いつつ、心の温度と同時に元々声のトーンとしては
一貫して低いものを維持するリヴァイが見せたその目は・・・
「(ヒッ・・・・・)」
これから自身が丸呑みするべき獲物を視界に捉えた
爬虫類のそれと同じような・・・一切の血の気を感じさせない
とても冷たい目だった
「わっ・・・・悪かったって!!そんなマジになる事無いだろ!!;
だって、なんか食堂の方とか賑やかそうな音が聞こえてくるし・・・
皆が盛り上がってる中私達だけこんなさぁ・・・ 、、ねぇ?」
「“ねぇ”じゃねえ。書類整理 もお前の仕事だろうが。
浮き足立って騒ぐ部下に感化されるのはいいがそれで
手前の仕事をおろそかにするのは違うだろ」
「ソレもそう・・・なんだけどさぁ・・・
ねえ、リヴァイはどう思う?“彼”・・・、大丈夫だと思う?」
「お前が誰を指して言ってるのか分からねえ以上
ソイツが大丈夫なのかどうか、俺が言えることは何も無い」
「またまた・・・分かってるくせに。
言うまでも無くアルミンの事に決まってるじゃないか。」
「質問が大雑把すぎる。
大丈夫ってのは・・・何に対しての“保証”だ?」
-
- 176 : 2017/01/18(水) 22:49:36 :
「彼の中にはまだ・・・彼らの真の目的に対する疑心と
例の眠りについたままの彼女がどんな真意をもって
自分達を、皆殺しにしようとしたのか・・・
“怨嗟以外”で何らかの強い感情と、興味を持ってる。
そんな彼を・・・このまま放って置いて本当に大丈夫なのかな?
――っていう意味なんだけど」
「火薬をしこたま使った発破でもなけりゃ破壊の目処も
立たないような殻に引き篭ってんだぞ。
・・・大丈夫もクソもあるか。
寧ろ奴がアレを手前だけでどうにか出来るというなら
替わりに何とかして貰いたい位だ。」
「そりゃそうだけどさ・・・しかし“事”はそう単純な話じゃ無い。
彼やミカサに相談した例の作戦を実行に移すにあたっては・・・・
彼のような人間が『迷い』を断ち切れてないというのが
もっとも危うい。 そういうのは今までの経験上
あんたみたいなのが一番が分かってるはずだ
・・・・・ねえ?違うかい、リヴァイ。。」
「お前の言う“大丈夫かどうか”の答えにはならねえが・・・
俺が奴に今回の作戦について先に話を通したのは・・・
その心の準備を済ませる時間的猶予を与える為でもある。
この程度の事で動じられてたらこの先
兵団を預けるどころの話じゃねえ」
「――!・・・・へぇ・・意外だな。
あんたがそこまで“彼”を評価してるとは思って無かったよ。
あんたにそこまで言わせる程・・・“彼”にはエルヴィンの後を
任せられるだけの何かを感じられたのかな。
それはそれで悪い話じゃないんだけど」
「・・・・余計なおしゃべりは終いにして、
お前はとっとと自分の仕事をしろ。
・・・それに“次はまだ”奴じゃねえ・・順番的には仕事をしない
メガネの番だったはずだ」
「・・・・さぁ・・・、それはどうかな。
最近思ったんだ、、私ってよくもこんな調子で
毎度毎度死に損なってるもんだなと自分の悪運の強さに
心底関心してたんだけど・・・
流石に腕をやっちゃったあの時はここまでかなと思ったよ。
この歳まで続いた私の悪運もどこまで保つやらわかんないよ?」
「心配するな。
そういう悪運 の絶対量に関しては・・・
お前以上に現団長 の奴が身体を張ってそれ以上のものを
証明している。お前の限界もどこまで底が深いか、行って見るまで
決め付けられたものじゃねえ。
現にコレだけ絶望的な生還率の調査兵団において、
王政転覆なんて一大イベントを乗り越えた上に
ガキまでこさえてるじゃねぇか。
そういった意味じゃお前はエルヴィン 以上だ。安心しろ」
「ふぅん...
そういうものなのかな・・・・(溜息)。
しかし本当に食堂の方がさっきより騒がしいな。。
こうも賑やかだとやっぱり仕事が手につかないよ」
ソワソワ
膨れっ面で卓上のペンを爪弾くハンジの言う通り、
二人が今居るリヴァイの居室から食堂までの距離を考えても、
相当な盛り上がりを感じられる騒音が・・・・
ハンジのみならずリヴァイの耳にも少なからず纏わり付いていた。
-
- 177 : 2017/01/18(水) 22:52:53 :
-
「・・・・アレだけ騒げる気力があるならそいつは悪い事じゃねえ。」
「よく言うよ。あんたがその場に居たら間違いなく
食事中くらい静かにしろって悪態を吐くだろうに」
「普通ならそうするが。
・・・晩飯の品書きに気を遣ってまで
団員の士気を保つことを優先してるこの状況だ。
・・・俺もそれくらいの空気は読む」
「・・・・・」コトッ・・
「・・・おい、便所か?
分かってると思うがそいつは適当こいて
手放しにしていい類の仕事じゃねえ。今日中になんとか
出来ねえって事になれば手前で手前の首を絞める事に」
「違うって。・・・まあそっちも気になるけどさ、
今私がどうしても気になって仕方が無いのは寧ろ・・・・」
「・・・アルミン の事を気にしてるってんなら止めとけ。」
「止めとけって・・・・何をさ?」
「態々部屋から出歩いてまでちょっかいを出しに行くなと言ってる。
あんな話をされた後だ。・・最悪の場合
仮にも“元”同僚である女を手にかけなきゃならねえなんて
ことになれば、そりゃ忙しくなる前に
顔くらいゆっくり拝んでおくかって気にもなるのが道理だ。
・・・俺ならそんな場に鬱陶しいメガネが現れれば、
流石に嫌な気分になる」
「果たして彼がそんなに分かりやすい人間だと簡単に
決め付けられるものかな。
・・・彼が本当にこの件についてこちらの意図に反する事を
何一つ考えて居なければそれが一番だけど・・・」
「考えてたところでどうにもしようがねえと・・さっきから
何度もそう言ってるだろうが。そんなに不安があるなら
計画の実行はミカサかエルヴィンにでも一任すりゃあいい。」
「そんな安直な・・」
「安直じゃねえ。それを言うなら“妥当”だろ。
お前も危惧している通りだが・・・頭がいいヤツってのは
常に一つの方向に思考を縛られる事がない。
――故に機転も利くし多方向が視野に収まる。
つまるところ周りのヤツからすれば
頼りにはなるが腹の底までは読めやしねえ・・・
“正直何考えてやがるのかさっぱり分からないヤツ”
・・・それがアルミン だ」
「なんだ・・・結局あんたもそこまで彼の事を
信用しきってる訳じゃないんじゃないか」
「・・・・誤解を招くような事を言うな。
・・・とは言ってみたところでこの場に誤解を受けるような
第三者は居ない訳だが・・・
一番誤解されると困る相手・・つまりお前には言っておく」
「・・・・・?」
「俺はな・・・そういう奴だから あえてあいつを部下として
下に置いてるんだ。・・・お前ならそんなことは一々言わなくても
分かってると思ったが・・・」
-
- 178 : 2017/01/18(水) 22:55:43 :
「・・・・・・・・・・・・・・・・・成る程」
リヴァイの顔色、そして声色が話の途中から明らかに
その色を一変させたのを認めるなり、リヴァイの思慮を
映し出すその眼に垣間見えたかつての班員達の影を
同時に思い出したハンジは
「・・・・・成る程成る程。。。」
軽い溜息と同時に何度か頷き、、
「そうだったね...あんたが自分の部下をどういう基準で
選んでいたか・・私もすっかり忘れてたみたいだ。
いや、下らないことで疑心暗鬼に駆られちゃってホントゴメンね。
でもコレは調査兵団にいたら誰もが煩う職業病みたいな
ものだから、・・ま、大目に見てくれよ」
それまで纏っていた緊張を自らの肩から下ろすようにして言い放った。
~調査兵団拠点よりそう遠くない地下通路奥~
――そこは、王都直下の地下街等の建造がピークに達していたのと
ほぼ同時期に掘削された、地下坑道を利用して造られた
地下通路のうちの一つだった。
当時は地下街に続く連絡通路、もしくは通気口として
利用される案も出ていた様だが結局その様に活用される事はなく、
中途半端な深度まで掘り下げられたこの地下坑道は・・しかし。
“15mの巨体では”まず身動きが取れないであろうと言う
適度な狭さと、その深度が有効視され、
今尚水晶体の中核で沈黙を守り続ける一人の少女・・・・否、
壁の内にて巨人の脅威に怯えるしかない
全人類にとっての怨敵の身柄を安置しておくのにこの上なく
好条件な場所として活用されていた。
「(しかし驚いたな・・・見張りの人は当然居たけど・・・
驚くほどすんなり通してくれた・・・。
―――まあこの有様じゃあ・・・
“何か”しようにも...ってことなのかな」
アルミンの大きな両目が見据える先にあるのは...
篝火の灯りを受けてその表面を輝かせる、
巨大な宝石のような透明の楕円状。
木杭数本による支柱と、周囲から張り巡らされたロープによって
支持され、直立するその楕円形の中核にて、まるで眠る様に
その時間を静止させている・・・・
“かつての同期 の姿”
「本当に・・・何度見ても信じられないよ・・・
アニ・・・君は一体何を・・どこまでの事を知っていたの・・・・?」
スッ・・・・
冷たい結晶体の表面に指をのせ、思案するに留まらず
思ったことをそのまま声にするアルミン。
「そしてこの有様は・・・・君が意図してそうした 結果だったのか・・・・?」
しかし彼の中に、アニに何かを伝えたいという強い気持ちが
あった訳ではなく、“それ”は無意識の内に口にした
独り言でしかなかった。
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リヴァイ×ハンジ エレ×ミカ シリーズ
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