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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

エレン「シャドーモセス事件」 ④ 進撃×MGS

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  1. 1 : : 2016/03/14(月) 05:10:32
















    「まだ殺すな。生かしておけ。」

    「私にお任せください。」

    「いいか、DARPA局長の二の舞は踏むなよ。」

    「この男は私の獲物だ。あんたらには渡さない。」






    目を開けると、まるで手術台の上に乗せられているかのような眩しい光が目に入ってくる。
    それに、誰だろうか・・・・・・・・・・・・数人の声が聞こえてくる。







    「いつか貴様に会うと思っていた―――――――俺から光の部分を奪い去った男。お前のせいで俺は・・・・・・。
    俺か? 俺は貴様からポジティブな部分を奪われた男だ。


    多くの兄弟を犠牲に生まれ落ちた兄弟―――――――30年ぶりの再会というわけだ。
    「光」と「影」のな・・・・・・・・・・・・。」







    「それで、この男のゲノム情報も採取するのかい?」

    「ああ、殺す前に生きた組織を採取する―――――ゲノム兵の奇病を治療するためにな。」

    「そう、それで・・・・・・・・・・・・ゲノム兵の奇病は直る?」

    「いや、ビッグボスのゲノム情報でなければだめだ。」

    「奴らが要求を呑むとでも? 無駄な話だ・・・・・・奴らはいつも政治を優先する!」

    「クルド人としての意見か? 心配するな、奴らが恐れているのは新型核兵器の存在が明るみに出ることだ。」





    恐らく、声の主はオセロットにアニ。
    それに・・・・・・・・・・・・






    「ボス・・・・・・・・・・・・エレンがお目覚めのようです。」





    オセロットがそう言うと、エレンの両手両足を枷で拘束している回転式ベットがゆっくりと起き上がり始める。
    そして、遂に対面した・・・・・・・・・・・・



    今回の事件の黒幕・・・・・・・・・・・・FOXHOUND部隊を率いるリーダー・・・・・・・・・・・・








    エルヴィン・イェーガーはしげしげと、目を覚ましたばかりのエレンを眺め、やがて恨みの籠った声で呟いた。






  2. 2 : : 2016/03/14(月) 05:42:23








    「ふん、随分と似ていないものだな・・・・・・・・・・・・我が弟よ。いや、兄貴というべきか?
    そんなことはどうでも良い。お互い「ビッグボスの息子達」の数少ない生き残りだ。」



    エルヴィンは吐き捨てるように言うと、エレンに対して背を向けた。









    漸く意識のはっきりしてきたのと裏腹に、俺の心の中は疑念に満たされていた。


    こいつは今なんて言った?
    俺と、エルヴィンが・・・・・・・・・・・・兄弟?









    すると、エルヴィンの通信機に連絡が入った。



    「俺だ、どうかしたか? ほう、それで・・・・・・・・・・・・ふざけた奴らめ!」








    どうやら、彼らにとっては凶報だったようだ。
    「分かったライナー、すぐに行く。」というと、エルヴィンは腹立たし気に通信を切った。







    「奴ら、俺たちの要求を拒むつもりだ。」

    「ぐ、アメリカ人めッ!!」





    エルヴィンの苛立ちも尋常ではなかったが、それ以上にアニの苛立ちは凄まじかった。


    アニの出身民族―――――――中東のクルド人は、常にアメリカをはじめとした大国に踊らされてきた。
    その恨みが一気に爆発したかのようだった。






  3. 3 : : 2016/03/14(月) 05:46:14







    そんな中、オセロットは冷静を保ち、エルヴィンに話しかけてきた。







    「読みが外れましたね。」

    「ふん、臆病者の政府(ホワイトハウス)らしくない。その男(エレン)の働きに余程期待しているのか、それとも何か切り札があるのか・・・・・・・・・。
    まあ良い・・・・・・・・・・・・予定通り、10時間後に核を発射する。」

    「記念すべき核発射に立ち会えるということですね。」

    「俺は核兵器の発射準備に入る、オセロット・・・・・・今度はやり過ぎるな。」

    「あれは事故だったんです。」






    オセロットはエルヴィンに対し、弁明を始めた。






    「ただの民間人があれほどに我慢強いとは・・・・・・。」

    「恐らく、催眠療法による精神障壁がかけられていたんだろう。」








    「ところで、あの忍者はどうなりました?」

    「もう12人もやられた・・・・・・・・・・・・奴はすでに正気を失っている。」

    「私も腕を・・・・・・・・・・・・。」






    無くした右腕を痛そうにさするオセロット。
    彼は幻肢痛を感じているらしかった。


    すると、エルヴィンは鋭い声でこう言い放った。








    「あの忍者、どこから入ってきたのか・・・・・・・・・・・・俺たちの中に裏切り者がいるのかもしれん。
    ナイルは死んだ。それに、サネス社長とベルトルトの死因も調べなければならない――――――人手不足だ。
    オセロット・・・・・・・・・・・・拷問もほどほどにな。」

    「拷問ではありません―――――――事情聴取(デブリーフィング)ですよ。」

    「どちらでもいい。オセロット、後は任せたぞ。」








    エルヴィンはそう言うと、くるりと背を向けてエレンの囚われている部屋から退出した。







  4. 4 : : 2016/03/14(月) 08:46:17








    エルヴィンが退出すると、オセロットは底意地の悪い笑みを浮かべて、アニに話しかけてきた。







    「お前はどうする? 私のショーを見ていくか?」

    「興味ない・・・・・・・・・・・・家族と食事をする時間だ。」

    「ふふふ、私のショーより狼のほうがいいか。」






    アニは懐からカプセル型のジアゼパムを取り出すと、口の中へと運んでそれをゴクッと飲み込んだ。
    アニの身体はどうやら、ジアゼパムの乱用による薬物依存症に蝕まれているようだった。


    それからアニはエレンにゆっくりと近づき、顔を近づけて耳元へ囁くように。








    「あの女はまだこの世界にいる。」

    「!! ミカサが!?」

    「また・・・・・・・・・・・・あんたとの戦い、楽しみにしている。」






    アニはわずかに微笑んだ後、エルヴィンの後を追って部屋を出ていった。










    __________ミカサはまだ生きている。



    アニからの情報とは言え、心のどこかで、ホッとするのを俺は禁じえなかった。






  5. 5 : : 2016/03/14(月) 09:32:28








    「あの女は一度標的を定めると、周りのものが見えなくなる。時に標的に対して恋愛感情を持つほどだ。」



    一人部屋に残ったのは、オセロットだった。
    オセロットは皮肉な笑みを浮かべ、俺に話しかけてきた。








    「さて、漸く二人きりになれた。どうだ、気分は?」

    「こんな居心地のいいベットで熟睡させてくれたんだ。悪くねぇな。」

    「それは良かった、この回転式ベットは優れモノでな。それにしてもお前は随分と期待されてるじゃないか・・・・・・・・・・・・運び屋(ベクター)?」







    自慢げに話してくるオセロットに、俺は少しずつ嫌な予感が募り始める。
    どこかうわずったような言葉遣いをしてくるオセロットは、どうやら悦に入っているらしかった。







    「・・・・・・俺の装備はどこにある?」

    「そこにまとめておいてある。お前が持っていた光ディスク。あれはサネス社長から預かったものだな?」

    「それがどうかしたのかよ?」

    「他にコピーは無いのだな?」

    「何の話か分からねぇな。」

    「ないならそれでいい。それと、お前が持っているPALキー、残る二つのPALキーはどこにある? PALキーの“仕掛け”とは何だ?」

    「仕掛け? 何の話だよ?」

    「あのタヌキ社長が仕組んだPALキーの仕掛けのことだ。だがまあ、その反応を見るに、お前は何も知らないようだな?」

    「ぐっ・・・・・・。」





    この男、一体何を知っている?


    拳銃の腕前もそうだがそれ以上に、オセロットは何を考えてるのかわからない―――――――得体の知れない男だ。






    あの女(ミカサ)はまだ生きている―――――――アニが気紛れを起こしたおかげでな。だが、これからも生き続けられるかはお前次第だ。」

    「!? どういうことだ。」

    「これから始めるのは拷問ではない・・・・・・・・・・・・スポーツだ。」

    「ぐっ、悪趣味なサディスト野郎め。」

    「私のはGRU仕込みだ。KGBの制服連中と一緒にされては困る。」






    いよいよオセロットは楽し気だ。
    かつてソ連の特殊部隊、KGBの拷問特別顧問まで務めあげた拷問のスペシャリストは、嬉々として話を続けた。






  6. 6 : : 2016/03/14(月) 09:35:11








    「いいか、○ボタンを連打すればLIFEが回復する。」

    「はっ!?」

    「服従したければSELECTボタンを押せ。そのかわり、あの女は殺すがな。」

    「いったいお前は!?」

    「LIFEがゼロになればゲームオーバーだ。コンテニューは無いぞ!?」

    「何を言ってるんだっ!?」

    「言っておくが、連射パッドを使おうなどとは思うなよ!?」







    くそ、今までシリアスだったのに突然メタ発言ぶっこんできやがって。
    じゃなくて、拷問に耐え切れなかったら、ミカサを殺すだと!?


    ・・・・・・・・・・・・ふざけやがって。








    「今からお前の体に高圧電流を流し込む。」

    「なっ!?」

    「安心しろ・・・・・・短時間なら命に別状はない程度のものだ。」






    やっと、この回転式ベットが優れモノだという意味が分かった。
    オセロットは俺に背をむけて、制御装置を左手で操作し始めた。









    「激痛がお前の体をくまなく走る。恥ずかしがることない・・・・・・思いっきり感じてくれ。ではいくぞ!」



    一際うわずった声を上げ、オセロットは装置のスイッチを押した。






  7. 7 : : 2016/03/14(月) 09:37:57









    次の瞬間、果たして、全身に耐え難いほどの激痛が走った。



    「ぐああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁぁあぁぁあぁあぁああぁぁあぁぁぁぁぁああぁあぁぁぁああぁぁああぁぁぁあぁあぁあぁぁぁッ!!」








    全身が焼き切れてしまいそうなほどの強烈な痛み。
    体中のありとあらゆるところが悲鳴を上げ、身を捩ろうにも両手両足を枷で固定され、逃げることも敵わない。


    這いずりまわる痛みに耐えきれず、俺は悲鳴を上げ、挙句に失禁してしまった。
    それから、オセロットは漸く装置を止めた。





    股のあたりに、不愉快な生温かさが広がっていく・・・・・・。








    「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・。」

    「どうだ、効くだろう?」






    うわずった声を維持したまま、オセロットは尋ねてくる。
    凄まじい激痛に、俺は答える余裕もなかった。



    すると・・・・・・・・・・・・








    「では、もう一度いこうか?」

    「!!」






    オセロットは再びスイッチを押し、俺は再び激痛に苛まれて悲鳴を上げた。








    「服従するか? どうだ!?


    ま だ ま だ 終 わ ら ん ぞ ?」














    __________それから俺は、オセロットの気の向くままに、高圧電流を流され続け、そのたびに悲鳴を上げさせられた。










    漸く拷問が終わった時、朦朧とする意識の中で俺は再び引きずられ、オセロットと回転式ベットが遠ざかっていくのが見えた・・・・・・・・・・・・











  8. 8 : : 2016/03/14(月) 09:38:59








































  9. 9 : : 2016/03/14(月) 15:54:47
    ぎえへへ
    また会ったのお
    ワシじゃよ進撃さん
    期待じゃよ
  10. 10 : : 2016/03/14(月) 16:49:20
    またエレミカの部分あると良いなぁ…………期待ですよ!!!拷問可哀想(泣)
  11. 11 : : 2016/03/14(月) 19:14:22
    >>9
    いつもありがとうございます!
    頑張ります(`・ω・´)ゞ

    >>10
    今はまだ何とも言えませんが、今後の展開にご期待くださいw
    お気に入り登録ありがとうございます(∩´∀`)∩
  12. 12 : : 2016/03/14(月) 19:15:50

















    「ハックシュンッ! くそ~、本格的に風邪ひいちまった~!」



    例の坊主頭の看守がくしゃみをしながら一人愚痴る声に、俺は目を覚ました。









    「あの女のせいだ・・・・・・・・・・・・身ぐるみはがされたせいでこうなっちまったんだ! くっそ~・・・・・・ヘックシュンッ!!」








    気が付くと、俺は三方がガラス張りの独房の中に入れられていた。
    ガラスの外では、坊主頭の看守がFAMASを持って巡回している。






    まだ痛む体を持ち上げ、上半身を起こすエレン。
    と、部屋の片隅に、男が一人、座り込んでいるのが見えた。










    「どうやら、先客が――――――!?」



    それ以上は言葉が続かなかった。









    エレンの目の前にあったもの・・・・・・・・・・・・それは腐敗の進んだDARPA局長――――――オルオ・ボザドの遺体だった。
    どうやら血を抜き取られており、体の至る所にウジ虫が湧いていて、それは酷い匂いだった。






  13. 13 : : 2016/03/14(月) 19:16:45










    プルルルッ! プルルルッ!


    すると、不意にエレンの通信機に通信が入ってきた。









    『大丈夫か、エレン?』

    「大佐か・・・・・・・・・・・・最悪の気分だ。」






    そう言うとエレンは深くため息をついた。






    『とにかく、お前は無事なんだな。』

    「ああ、だが・・・・・・・・・・・・ミカサは奴らに捕まってしまった。」

    『そうか・・・・・・・・・・・・。』

    『リヴァイ大佐・・・・・・・・・・・・。』






    普段はあまり感情を出さないリヴァイであったが、この時ばかりはわずかに声に暗い感情が滲み出ていた。
    そんなリヴァイを気遣うように、ペトラも声をかける。







    「ところで、聞きたいことがある。」

    『何だ?』

    「今回のメタルギア・プロジェクトは、新型核弾頭を撃ち出すためのもの――――――違うか?」

    『何の話だ?』

    「いいか、俺にこれ以上隠し事をするな。確かにミカサのことは済まないと思ってる。だがな・・・・・・・・・・・・これ以上の隠し立ては止めろ!」

    『・・・・・・・・・・・・。』

    「やっぱり最初から知ってたんだな?」

    『・・・・・・・・・・・・済まない。』







    エレンは思わず舌打ちし、イライラした様子で話を続けた。
    何も知らされず、ただただ戦争の犬として利用され続けることが気に食わなかった。






  14. 14 : : 2016/03/14(月) 19:21:58








    「この話、どこまでの人間が知っている!?」

    『少なくとも、大統領は昨日までREXのことを知らなかった。』

    「!! 必要なものにだけ知らせる―――――――ニーズ・トゥ・ノウの原則か・・・・・・。リヴァイ大佐、あんた、変わったな。」

    『・・・・・・・・・・・・。』





    『・・・・・・・・・・・・大統領は明日、第三時戦略兵器削減条約(STARTⅢ)の調印式を控えている―――――――この繊細な時期にメタルギアの存在が明るみに出れば調印式どころじゃない。
    第二次戦略兵器削減条約(STARTⅡ)戦域ミサイル防衛(TMD)の話も蒸し返しになる。』

    「本当にそれだけか? 新型核兵器の正体を知ってるんじゃないのか!?」

    『俺は・・・・・・・・・・・・そこまでは知らない。』

    「ふん、もういい・・・・・・。」







    吐き捨てるようにエレンは言った。







  15. 15 : : 2016/03/14(月) 19:23:36








    「大佐・・・・・・・・・・・・もうひとつ、妙なことがある。」

    『妙?』

    「目の前にDARPAの局長の遺体が転がっている。だが、死体の痛み方が激しい。」







    すると、メディカル・スタッフであるペトラもおかしいと思ったのか、通信を入れてきた。







    『おかしいわね。局長が死んでから、まだ数時間しかたっていない筈。』

    「ああ、だが、血も抜き取られている。」

    『腐敗を防ぐためかしら?』

    「分からない・・・・・・それとも、血液中に何か大切なものでもあったのか。」

    『あり得ないわ。ナノマシンとか生体情報を調べるためならまだわかるけど。』






    とにかく、死んだばかりのオルオ局長がなぜこんなにも痛みが激しいのか・・・・・・。
    謎は深まるばかりだった。








    『とにかく、エレン・・・・・・・・・・・・何とか独房から脱出してくれ。』

    「はぁ、簡単に言ってくれる・・・・・・。」

    『それと・・・・・・・・・・・・。』

    「ミカサか。」

    『そうだ。』

    「助けるさ。」

    『・・・・・・・・・・・・済まない。』







    リヴァイは暗い声でエレンに謝ると、通信を切った。







  16. 16 : : 2016/03/14(月) 21:07:30









    ミカサはまだ生きている。
    まだ・・・・・・・・・・・・諦めるわけにはいかない。


    エレンは通信機のスイッチを押し、呼びかけるように話し始めた。








    「アルミン、まだ無事か!?」

    『ステルス迷彩のおかげでね、どうしたの?』

    「敵に捕まっちまってな・・・・・・・・・・・・助けてほしいんだ。」

    『そう来ると思ったよ。準備は出来てる。』

    「!! ホントか!?」

    『勿論だよ・・・・・・・・・・・・それで、君は今どこにいるの?』

    「独房の中で休憩中だ。居心地がいいせいか、妙に時間が立つのが長く感じる。」

    『はは、ちなみに近くに何が見える?』

    「拷問台だ。」

    『ああ、分かった。今近くにいる・・・・・・すぐに行くから待ってて。』






    アルミンはそう言うと、通信を切った。
    流石はアルミン―――――あいつ、ただのインテリというだけではなさそうだ。







    ビーッ! ビーッ!


    すると突然、独房内にブザーが鳴った。
    独房の扉へと看守が近づいてくる。






    坊主頭の看守は、少し楽し気にエレンに話しかけてきた。








    「エレ~ン? ショータイムだ。オセロットが呼んでるぞ?」

    「!?」







    ああ、俺はすっかり、あいつのことがトラウマになってしまったらしい・・・・・・・・・・・・。









    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇








  17. 17 : : 2016/03/14(月) 21:27:10









    「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・・・・・・・。」

    「ふふ、強情な奴だ。「恐るべき子供達計画(レス・アンファントス・テレブレス)」も無駄ではなかったということか。」






    サディスティックな笑みを浮かべ、拷問に耐えたエレンを、オセロットは恍惚とした表情で眺める。
    この拷問マニアは、拷問をする中で、このあたりに美意識を見出しているらしかった。






    「私はアフガニスタン、モザンビーク、エリトリア、チャドでも戦った。アフガンゲリラの間で、シャラシャーシカのあだ名で怖れられた。
    その私から見てもあの男(エルヴィン)は大したものだよ。ハインドDでF16戦闘機を二機、撃墜するとは・・・・・・。」

    「!!」

    「あんな男は見たことがない。私の夢を叶えてくれるかもしれん。」

    「うぐ・・・・・・・・・・・・ゆ、夢?」

    「嘆かわしい時代よな。帝政、全体主義、ペレストロイカ・・・・・・・・・・・・確かに20世紀のロシアは問題を抱えてはいたが、イデオロギーがあった。今のロシアには何もない。」

    「ぐ、何が望みだ?」

    「強いロシアの復活、世界秩序の再建。幸い、ロシアの実力者とも話が付いている――――――GRUの本部長、スぺツナズの司令官を歴任した男だ。
    彼は新型メタルギアを購入してくれる。ハインドDはその前金だ。」









    再び俺は回転式ベットから降ろされ、兵士に引きずられていく。
    朦朧とした意識の中、オセロットの姿が再び遠ざかっていった・・・・・・・・・・・・













  18. 18 : : 2016/03/14(月) 22:46:32

















    気が付くと、俺は再び独房のベットの上で横になっていた。
    通信機のコール音に起こされて、俺は通信に出た。







    『エレン・・・・・・・・・・・・大丈夫?』

    「ああ、腕が痛い。」

    『・・・・・・・・・・・・可哀相に。ナノマシンを通して鎮痛剤を増やしてみる?』

    「いや、いい。デキセドリンは投与しないでくれよ、性欲を持て余すからな。」

    『それだけ元気があれば充分ね。』






    取り敢えず(卑猥な)ジョークを言う元気がまだあることにペトラはホッとした様子だった。
    すると、エレンは少し笑って。







    「なあ、何か気の紛れる話をしてもらってもいいか?」

    『え? でも私、そう言うの苦手よ?』

    「そうだな、お前の話が聞きたい。」

    『私の話?』

    「ああ、例えば・・・・・・・・・・・・お前の家族とかな。」







  19. 19 : : 2016/03/14(月) 22:47:19







    エレンがそう言った瞬間、無線の向こうで、ペトラの表情が曇った。






    『私にはあまり愉快な話ではないわ。』

    「俺に家族はいない・・・・・・いや、一人、父親を名乗った男がいた。」






    つられてエレンも少し沈んだ声になる。
    すると、二人の会話を聞いていたリヴァイが、会話に入ってきた。







    『ビッグボスのことだな?』

    『えっ!? ビッグボスが!?』

    「ああ、あいつは、私がお前の父親だと言っていた。」







    エレンの声は、どこか愁いを帯びた口調へと変わっていた。







    『ペトラ。お前が知らないのも無理はない。6年前のザンジバーランド―――――――真相を知っているのは、今となっては俺とエレン、それに、マスターエルドだけだ。』

    『それで・・・・・・・・・・・・ビッグボスは!?』

    「・・・・・・・・・・・・殺した。」

    『殺した!? 父親と知っていて!?』

    「・・・・・・・・・・・・そうだ。俺が、この手で。」

    『そんな・・・・・・・・・・・・親殺しなんて。』

    「そうだ・・・・・・・・・・・・俺の人生における、大きなトラウマだ。」







  20. 20 : : 2016/03/14(月) 22:47:57








    『だからエレンは、アラスカへと引きこもったの?』

    「アラスカの厳しさが、俺にとっちゃ心地よかったからな。」






    無線越しにも、エレンが俯くように話しているのが、ペトラには手に取るように分かった。
    ややあって、今度はペトラが自分の過去を話し始めた。








    『私にも、家族はいない―――――――大学へと進学させてくれた兄が一人いただけ。でも、血は繋がっていない。
    私、自分が何者なのかを知りたかった。それで遺伝子の研究を始めたの。』

    「そうだったのか・・・・・・・・・・・・。」

    『私、両親の顔を知らない。だから遺伝子にかかれていることが分かれば、私の空白の記憶を埋めてくれると思ったの。』

    「それで、その空白の記憶は埋まったのか?」

    『・・・・・・・・・・・・分からない。たった四つの塩基配列に、人の運命のすべてが刻まれている・・・・・・でも結局、私の記憶も、私の運命も分からなかった。』






    ペトラは、FOXHOUNDのメディカル・スタッフであると同時に、遺伝子工学、ナノマシン研究の権威でもあった。
    彼女をこの道へと進ませたきっかけの一つは、両親の面影を求めて、なかんずく、自分が誰なのかを突き止めたかったからに他ならなかった。






  21. 21 : : 2016/03/14(月) 22:48:49








    『ねえ、エレン・・・・・・・・・・・・あなたに、友人はいないの?』



    突然、ペトラは話題を変えた。
    するとエレンは、少し考えた後にこう答えた。






    「・・・・・・・・・・・・リヴァイ大佐だ。」

    『まだ俺を友人と呼んでくれるとはな。』






    少し悪態をつきつつも、良心の呵責に苦しんでいたリヴァイには、嬉しい一言だった。






    『他には?』

    「そうだな・・・・・・・・・・・・あと一人いる。フランク・イェーガーだ。」

    『えっ!?』

    『FOXHOUND最強の男の証であるFOXの称号を持つ男―――――――グレイ・フォックスのことだな?』






    予想外のエレンの言葉に、ペトラは動揺し始めた。






    『どうして、エレン!? あなたたちは殺し合ったんでしょ!?』

    「ああ。だが敵意があったわけじゃない・・・・・・・・・・・・たまたま敵と味方に振り分けられていたんだ。」

    『おかしいわ。』






    まるで理解が出来ないという風なペトラに対し、エレンはフランク・イェーガー―――――――今のサイボーグ忍者との思い出を語り始めた。







  22. 22 : : 2016/03/14(月) 22:49:27







    「FOXHOUNDに入隊してから、フランクには沢山のことを教えられた。アウターヘブンで会ったとき、あいつは捕虜になっていた。
    だが、俺にはどうしても捕虜には見えなかった―――――――俺に的確なアドバイスをくれ、新米だった俺をサポートしてくれた。


    次にザンジバーランドで会った時、俺たちは敵同士だった。
    地雷原の中で、俺たちは殴り合った。


    奇妙なほど健全な時間だった。敵も味方もない―――――そこにはスポーツのような一体感があったんだ。」







    『・・・・・・・・・・・・理解できないわ。それはただの殺し合いよ。』

    「そうかもしれない。」

    『あなたの遺伝子には、殺人を助長する遺伝子が刻み込まれているのよ。』

    「やけにこだわるな、その話。なら、俺の未来はどうなるんだ?」

    『!! み、未来・・・・・・あなたの、未来は・・・・・・・・・・・・。』






    不意を突かれて、ペトラは押し黙ってしまった。
    ややあって。






    『ごめんなさい・・・・・・分からないわ。』

    「そうだろうな。お前は科学者であって、予言者じゃない、だろ?」






    エレンはそう言って、通信を終了した。







  23. 23 : : 2016/03/15(火) 05:18:53








    (さて、いつになったらアルミンは来るんだかな・・・・・・。)






    通信を終えると、エレンはまた一人になった。
    もう策があるといってくれたアルミンがここに到着するまでに、オセロットがまた来なければいいのだが・・・・・・。


    ベットの上で横になり、そんなことを考えていると、独房の窓の外で異常事態が発生した。








    ギュルルルルル・・・・・・


    「くぅぅっ! は、腹がッ! た、たまらんッ! も、漏れるッ!!」








    何とそいつ、お腹を壊してお尻を押さえ、トイレ目がけて猛ダッシュし始めたのだ。
    そういやこいつ、最初見かけたときもトイレの中だったような・・・・・・。



    すると、独房の外の扉がひとりでに開き、足音が近づいてくるのが聞こえた。









    「エレン! こっちだッ!」

    「!! どこだ!?」






    エレンは音のした方―――――――独房の扉の小さな鉄格子を見た。
    その向こうに、ヒュンという音と共に、アルミンが姿を現した。






    「元気そうだね、エレン。」

    「お前、俺をからかってんのか?」

    「そんなにイライラしないでよ。せっかく脱出の方法を考えたんだからさ。」

    「!! どんな方法だ?」

    「はいこれ。」







    そう言うアルミンは鉄格子の中にあるものを入れてきた。






  24. 24 : : 2016/03/15(火) 05:19:55







    「!! これは・・・・・・まさかっ!?」

    「うん、そのまさかだよ。」

    「待て待て待て! こんなんじゃ―――――――「この鉄格子はカードキーじゃ開かないからね。後、これは君に。」






    それからアルミンはセキュリティー6のカードキー。それと、なぜか白いハンカチを渡してきた。
    「なんだよ、これ?」とエレンが尋ねると、アルミンは少し恥ずかしそうな様子で。







    「アニから、貰ったんだよ。彼女だけは、僕に優しいんだ。」

    「ストックホルム症候群か?」

    「僕は、この島にいるウルフドックを世話していたんだ。そしたら、アニもウルフドックの世話をし始めて・・・・・・・・・・・・。
    テロリストの奴ら、初めは島にいるウルフドックを処分しようとしてたんだけど、アニの反対で無くなった。彼女・・・・・・・・・・・・ホントは優しいんだ。」

    「目を覚ませよ、アルミン! ミカサは・・・・・・そんなアニに撃たれたんだぞッ!?」

    「ッ!?」







    驚いたように、アルミンは数歩下がる。
    と、その時、丁度トイレのドアが開いた。





    「!! もう見張りが戻ってくるッ!!」

    「お、おいま―――――――「それじゃまたッ!」





    アルミンは再びステルス迷彩のスイッチを押し、姿を消した。
    エレンはため息をつき、頭を抱えた。







    「おいおい、こんなんでホントに大丈夫なのかよ・・・・・・・・・・・・。」







  25. 25 : : 2016/03/15(火) 05:55:35










    「あ~・・・・・・スッキリした~・・・・・・・・・・・・ッ!!」



    ややあって、坊主頭の看守は、実に晴れ晴れとした笑顔でトイレから生還した。








    「まったくよ~・・・・・・なんで俺はこんなにお腹が緩いんだかな・・・・・・。」



    坊主頭の看守――――――コニー・スプリンガーはため息をつきながら独房のほうへと戻ってくる。
    すると・・・・・・・・・・・・









    「!! いったい何があったんだッ!?」



    何と、捕虜がうつぶせに倒れて、血を流していた。
    慌てて独房のカギを開け、倒れた捕虜に近づくコニー。










    バキッ!!


    「ほげぇッ!?」






    突然、コニーの視界に火花が散った。
    飛び起きたエレンから強烈なパンチを喰らって、可哀相なコニーは一発でKOされた。








    さて、エレンは服にべっとりとついた赤いケチャップを拭い始める。
    すると、アルミンから通信が入ってきた。







    『成功したかい? エレン?』

    「・・・・・・・・・・・・脱獄出来たぞ。」

    『ふふ、流石だね。』

    「はぁ、こんな古典的な手が通用するなんてな。」






    呆れたようにため息をつくと、エレンはそのまま通信を切った。







  26. 26 : : 2016/03/16(水) 05:14:55








    さて、エレンは独房から抜け出し、そのまま拷問部屋へと入った。
    オセロットの言う通り、忌まわしい拷問台の脇には、俺の装備一式がまとめておいてあった。


    俺はスニ―キングスーツに着替えると、拷問部屋を出て、再び通信棟を目指し始めた。








    拷問部屋はどうやら、戦車格納庫―――――――つまり、俺が最初に潜入した建物の中にあったらしく、遠い道のりを戻らなくてはならなかった。
    核弾頭保存棟を抜け、所長室を通り・・・・・・・・・・・・











    カチッ、カチッ、カチッ、カチッ・・・・・・・・・・・・








    「ん? 何の音だ?」



    すると、今まで聞こえなかった、時を刻むような音に気が付いた。
    慌てて装備品をもう一度確認すると、そこにはなんと時限爆弾があった。







    「!!」



    慌てて時限爆弾を投げ捨てるエレン。
    ややあって、時限爆弾は大きな音を立てて爆発した。







    『エレン、大丈夫か?』



    爆発音に気が付いたリヴァイが無線を入れてくる。
    俺はまたしてもため息をつき、若干イライラした口調で答えた。







    「大丈夫だ。おれの装備の中に時限爆弾が紛れこんでいやがった。」

    『!! ちっ、抜け目のない奴だな。』

    「ああ、あのサディスト野郎(オセロット)め・・・・・・・・・舐めたことしてくれやがって。」







  27. 27 : : 2016/03/16(水) 09:09:56








    舌打ちをしつつも通信棟を目指していくエレン。









    「やっと着いたな・・・・・・・・・・・・。」



    通信棟Aの前の通路に来て、エレンはふと足を止めた。
    その足元には、ミカサの血の跡があった。








    『エレン・・・・・・・・・・・・あなたは、生きて。そして、誰かを・・・・・・好きになって・・・・・・。』








    血に染まっていくミカサが発した、ほとんど最後の言葉。
    少し俯き、どこか影を帯びた表情で、エレンはリヴァイに通信を入れた。










    「・・・・・・・・・・・・済まない、大佐。」

    『何だ。』

    「俺はミカサを・・・・・・守れなかった。」

    『・・・・・・・・・・・・あいつも軍人だ。戦場で傷つくことくらい、覚悟はできていただろう。』






    ミカサが敵に捕らわれてしまったことを、厳粛に受け止めるリヴァイ。
    だが、エレンの受け止め方は、リヴァイとは異なっていた。







  28. 28 : : 2016/03/16(水) 09:10:33








    「違うんだ、大佐。」

    『違う?』

    「あいつは、軍人にならなきゃならない――――――そう思い込んでいたんだ。軍人になれば、父親を理解できるって言ってな。」

    『!! あいつが・・・・・・そんなことを。』

    「あいつはまだ覚悟ができていなかった。傷つく覚悟も・・・・・・・・・・・・なのに俺は――――――――『すこしいいか、エレン?』







    と、その時、通信にエルドが入ってきた。







    「!! マスター!?」

    『ちっ、聞いていたのか、エルド。』

    『ああ、黙ってるつもりだったんだが、居ても立っても居られなくなってな・・・・・・・・・・・・エレン、反省するのはいい。後悔するのも勝手だ。
    けどな、そうやって物事を否定的に捉えるのは止めろ。』

    「!!」

    『それは何も生み出しやしない。人をネガティブにするだけだ。』

    「マスター・・・・・・・・・・・・。」







    すると、ミーナも通信に入ってきた。






    『そうだよ、エレン! 後悔なんて『伝説の男』にふさわしくないよ!?』

    「はは、だよな・・・・・・。」







  29. 29 : : 2016/03/16(水) 09:12:12








    最後に、ペトラも通信の中に入ってきた。







    『エレン、やっぱりあなたにとって、ミカサは特別な人なのね。』

    「特別っていや特別だ。あんな跳ねっかえり、そうはいないからな。」

    『それだけ?』

    「今となっちゃ、あいつは大切な戦友だ。」

    『私にはそれだけとは思えないわ、エレン。』

    「何だよ、まるで警察の取り調べみたいだな。」







    エレンは少し苦笑いを浮かべ、ペトラの追及を免れようとしていた。
    隣で聞いていたリヴァイも少し苦笑しながら、口を挟んできた。








    『どうやら、血は争えないみたいだな、ペトラ。』

    『大佐!?』

    『聞けば、お前の祖父はフーバー時代にFBIの長官補佐まで勤め上げたらしいな?』

    『え、ええ・・・・・・。』






    成程、だからこんなに追及が鋭かったのかと感心するエレン。
    すると、エルドがペトラの祖父について、詳しく訪ねてきた。






    『ほう、お前のじいさん、FBIの長官補佐だったのか?』

    『そうよ。私の祖父は日本人で、優秀な警官だったらしいわ。もっとも、私が大人になってから調べて分かったことで、一度も顔を合わせたことはなかったけれど。』

    『それはだいたいいつ頃の話だ?』

    『1950年代だったかしら。ニューヨークでマフィアのおとり捜査官なんかもやっていたらしいわ。』






    ペトラのおじいさん、そんなにすごかったのか・・・・・・。
    これ以上追及されたくはないなと、無線を聞いているエレンは苦笑いを浮かべた。






  30. 30 : : 2016/03/16(水) 09:12:56








    さて、無線を切ったエレンは、遥か上まで続く通信棟Aを見上げた。
    いよいよこの通信棟を昇っていく。



    確か、建物の中腹と屋上に渡り廊下があって、通信棟Bへと繋がっているという話だったな。










    エレンは覚悟を固め、通信棟へと入り、廊下を進んでいく。
    すると・・・・・・・・・・・・








    (ファンッ!)



    突然、目の前に!マークが表示されたかのような警報音が鳴った。








    __________しまった!


    監視カメラに見つかってしまったッ!








    途端に警報音が鳴り、通信が妨害されてソリトン・レーダーが使えなくなる。
    すると後ろから、FAMASを持ったゲノム兵たちがエレンを追いかけてきた。








    「クソッ!!」

    『何ぼさっとしてる!? 逃げろッ!!』






    大佐からの通信が聞こえ、俺はエレベーターのない通信棟の、吹き抜けになっている螺旋階段を駆け上がり始めた。







  31. 31 : : 2016/03/16(水) 21:04:07








    「いたぞっ!」
    「あそこだッ!!」





    ゲノム兵たちが後ろから、銃弾を浴びせてくる。
    エレンはコニーから奪ったFAMASを持って、銃弾を放ちながら駆け上がる。









    (くそ、体が・・・・・・。)



    エレンは既に、疲労感を覚えていた。
    FOXHOUNDと何度も激戦を交え、しかも拷問まで受けたエレンの体は既にボロボロだった。







    (諦めて、たまるかッ!!)



    それでもエレンは階段を駆け上がっていった。
    囚われたミカサを助け出すため。





    歯を食いしばり、悲鳴を上げる体に鞭打って、エレンは走り、銃を撃った。




    そして・・・・・・・・・・・・








    (見えてきた! 中腹の渡り廊下へと続く扉だッ!!)



    エレンは漸く、渡り廊下へと続く、セキュリティーレベル6の扉へと辿り着いた。
    すかさずカードキーをかざすエレン。


    が・・・・・・・・・・・・










    (!? 何でだ!? 何で開かな――――――)



    そう思っている間にもゲノム兵が追い付いて来て銃撃戦になった。
    激しい銃弾の撃ち合いの中、エレンは無線で連絡を入れた。







    「どうなってんだ、アルミンッ!! 渡り廊下の扉が開かねぇぞッ!!」

    『!! そうだった・・・・・・・・・・・・通信棟の扉は吹雪で凍り付いて開かなくなることが良くあるんだ。』

    「!? そう言うのは先に言えよッ!! どうすりゃいいんだよ!?」

    『外からC4爆弾とかで吹き飛ばすしかないッ!!』

    「出来るわけねぇだろ!? ふざけんなッ!!」

    『渡り廊下は、屋上にもある・・・・・・・・・・・・そこまで何とか行ってくれッ!!』

    「!! く、うおおぉおぉぉぉッ!!」







    銃を乱射し、敵が物陰に隠れた隙を見て、エレンは再び走り出し、今度は屋上を目指し始めた。







  32. 32 : : 2016/03/16(水) 22:12:37











    「はぁ、はぁ・・・・・・・・・・・・何とかついたぞ。」



    必死に階段を駆け上がり、銃を撃ち続けて、エレンは漸く敵の追撃を振り切った。
    階段の一番上にかかっていた梯子を登りきると、そこには屋上へと出る扉があった。







    『お疲れ様、エレン。随分と早い到着だったね。』

    「はぁ、はぁ、俺としちゃ、ゆっくりと昇りたかったんだがな。急かす野郎がいたせいだ。」

    『君は本当にすごいよ、エレン。僕だったらもうあきらめてた。』

    「あきらめねえさ、あいつを・・・・・・・・・・・・助けるまではな。」







    息を切らせながらも、エレンは少し微笑んで見せた。






    辛い時こそユーモアを言って、周りへの気遣いを見せる。
    他人への無関心を標榜してはいるが、根は思いやりがある。


    それが、エレン・イェーガーという男だった。







    今度は、ペトラから通信が入ってきた。







    『くれぐれも、無茶はしないでね・・・・・・・・・・・・エレン。』

    「気遣ってもらって悪いが、無茶はしてねえよ。」

    『強がってもダメよ。呼吸が荒いし、心拍数も上がってる――――――――モニターを通して、ちゃんと見てますからね。』

    「分かった。気を付ける。」






    そんなエレンだからこそ、周りの人間を動かせる。
    そして、エレン自身もまた、少しずつ、変わっていった。








    「よし、屋上へと出るぞ。」



    ふっと微笑みながら、エレンはそう言って、通信を切った。







  33. 33 : : 2016/03/17(木) 07:43:48











    扉が開くと、外は吹きすさぶ猛烈な吹雪。
    まるで噛みつかれるような、肌を指す猛烈な冷気に晒される。



    屋上にはアルミンの言う通り、A棟とB棟を繋ぐ渡り廊下。
    その上には、通信用のアンテナが取り付けられている。








    ここを渡ってB棟を降り、雪原をまっすぐ進めば、地下整備基地へと到達する。
    いよいよ、メタルギアREXが格納されている地下整備基地へ。









    その時だった。




    突然、耳をつんざくような音がしたかと思うと、数発のミサイルが飛んできて・・・・・・・・・・・・












    激しい光と爆音と、大きな振動が同時にエレンを襲う。
    ミサイルは通信棟を繋ぐ屋上の渡り廊下を完全に破壊し、通信アンテナが炎に包まれて下へと落下していく。



    すると、バタバタバタとローターの音が聞こえ、続いて拡声器の音が聞こえてきた。








    「ここから先は進ませんぞッ! 兄弟ッ!!」

    「!! ぐっ、ハインドD!? くそ、エルヴィンッ!!」







    ロシア製の重武装ヘリ(ガンシップ)―――――――ハインドD。





    ソ連のアフガン侵攻の際に、アフガンゲリラであるムジャヒディンを恐怖に陥れた重武装ヘリ。
    エルヴィンはこれに乗り、エレンを突如、襲撃してきたのである。






  34. 34 : : 2016/03/17(木) 07:46:22








    「死ねえぇえぇッ!!」



    凄まじい勢いでの機銃掃射に、エレンは咄嗟に身を隠した。
    屋上に積まれたコンテナに銃弾があたり、強くたたくような音がする中、エレンは何とか対抗策を考えた。











    ・・・・・・・・・・・・ないッ!





    エレンが持ってる武器は、FAMASアサルトライフルにSOCOMピストル、PSG-1スナイパーライフル、ニキータミサイル・・・・・・・・・・・・。
    とても火力でハインドDに太刀打ちできるものではなかった。



    それこそ、素手で巨人に勝負を挑むようなものだ。









    「アルミン! 聞こえるかッ!?」

    『今度はどうしたの!?』

    「この施設に、何か重武装ヘリを落とせそうな火器はないか!?」

    『えっ!? 戦車の次は重武装ヘリ!? それ本当かい!?』

    「今襲撃されてんだよッ!」







    ビュウウと強い吹雪が吹き付けてくる中、エルヴィンはコンテナの影に隠れたエレンを探してひたすらに機銃を掃射してくる。
    銃声は通信機を通してアルミンの耳にも届いていた。







  35. 35 : : 2016/03/17(木) 07:47:25







    「何かないか!? アルミン!?」

    『そうだ! 通信棟Bにスティンガーミサイルがあるよ! 僕も今通信棟Bにいる!』

    「通信棟B!? ダメだ・・・・・・屋上の渡り廊下を破壊されちまった!」

    『!! さっきの爆音はその音だったのか!?』






    携行地対空ミサイル(スティンガー)・・・・・・・・・・・・ソ連アフガン侵攻の際にアメリカがムジャヒディンたちに流した兵器。
    文字通り猛威を振るうハインドDへの対策として実戦投入され、多くの重武装ヘリを撃墜したミサイル兵器。





    https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/4e/Launched_FIM-92A_Stinger_missile.jpg/1024px-Launched_FIM-92A_Stinger_missile.jpg






    こいつがあれば確かに戦える。
    だが、通信棟Bへいく手段は、もう残されて・・・・・・・・・・・・









    『おいエレン、聞こえるか!?』

    「大佐!?」

    『ロープを使って屋上から中腹にある渡り廊下へと降下しろッ!』







    突然、リヴァイ大佐から突拍子もない提案が飛び出してきた。







    「はぁ!? そんなことしたら、狙い撃ちにされちまうだろ!?」

    『他に選択肢はねぇぞ! とにかくやれッ!!』

    「ぐっ・・・・・・。」








    確かに、通信棟Bへ行くには、それしか方法がない。
    くそ、一か八か・・・・・・・・・・・・







    「やってやるよッ!!」



    エレンは鉄柱にロープを素早く巻き、猛吹雪の中、通信棟の壁を思いっきり蹴って降下し始めた。






  36. 36 : : 2016/03/17(木) 10:17:01








    「!! そこかッ!!」



    降下していくエレンを目ざとく見つけ、エルヴィンが機銃を掃射していく。
    そのうちの一発が配管を突き破り、配管から熱い蒸気が噴き出して、エレンに襲い掛かった。






    「ぐあっ!!」



    焼けるように手がひりひり痛む。
    いや、もう体中が痛んでしょうがない。







    でも、ここで手を放したらひとたまりもない。







    必死になってロープにつかまるエレンを撃ち殺そうとガンシップで狙いを定めるエルヴィン。
    右手でトリガーを握り、再び指をスイッチにかける。







    「これで終わりだ、兄弟。」







    エルヴィンは呟き、トリガーを引く。
    機銃から銃弾が放たれた、丁度その時。







    「!? うおッ!?」



    激しい突風が吹き、狙いはわずかに逸れてエレンのすぐそばに銃弾が着弾した。
    そのまま激しい乱気流に流されるハインドD。







    (猛烈な吹雪に救われたな・・・・・・。)



    アラスカの強烈な北風が、エレンを守った。
    その隙にエレンは一気に降下、渡り廊下のある通信棟のベランダへと着地した。








    「逃がすものかッ!!」



    すると、態勢を立て直したハインドDが、再びエレンめがけて機銃を掃射してきた。








    「うおおぉおぉおぉおぉぉぉッ!!」



    そしてエレンは、銃弾が降り注いでくる中、渡り廊下を一気に走り出した。







    背後から迫ってくる銃弾の雨。
    吹き付ける刃のような雪。
    横殴りの強い風。



    全てを振り払うようにエレンは通信棟Bへと向かって走っていき。








    「ぐぅ、エレエェエェェエェェンッ!!」







    エルヴィンが叫び声を上げる中、遂に渡り廊下を渡り切って通信棟Bへと飛び込んだ。







  37. 37 : : 2016/03/17(木) 10:31:36








    通信棟Bに飛び込んだエレンは、仰向けに倒れて、ケラケラと笑い始めた。








    「あは、あはは・・・・・・・・・・・・俺、まだ生きてる・・・・・・。」







    流石に死ぬかと思った。
    ハインドDに狙いを定められて、蜂の巣にされると思ってた。


    笑わずにはいられなかった。
    自分の悪運の強さに。



    ・・・・・・・・・・・・全く俺はまだ死ねないらしいな。







    ようやっと起き上がるエレン。
    すると、アルミンから慌てたように通信が入ってきた。







    『無事かい!? エレン!?』

    「ああ、大丈夫だぜ。全く、自分の悪運の強さにほとほと呆れたぞ。」

    『良かった・・・・・・・・・・・・君、随分と無茶するんだね?』

    「毎回そうだ、気にするなよ。」

    『もう、君はホントに“死に急ぎ野郎”だよ。全く・・・・・・。』

    「この世界でも俺のあだ名はそれか、アルミン。」

    『へ?』

    「いや、何でもない。」






    少し呆れたように、でもホッとしたようにアルミンは俺に不名誉なあだ名をつけてきた。
    でも不思議と、それをとがめる気にはなれなかった。







    『エレン、この通信棟Bの倉庫に、スティンガーミサイルはある。』

    「分かった。うるせえハエをこれから落としに行ってくる。」







    エレンはそう言って通信を切ると、通信棟Bの倉庫へと向かって歩き出した。






  38. 38 : : 2016/03/17(木) 12:56:09









    漸くスティンガーミサイルを手に入れた俺は、B棟の螺旋階段を昇っていく。
    少し息を切らせながら階段を昇っていき、梯子を登って、ドアを開けると、再び俺は強い吹雪の中へと飛び込んでいった。








    「やっと上がってきたか・・・・・・準備運動は万全だな、兄弟ッ!」



    待ち構えていたようにハインドDが屋上に姿を現す。
    ガンシップを睨みつけながら、エレンは内心、こんなことを考えていた。







    (まただ・・・・・・・・・・・・こいつ、また俺のことを兄弟って呼びやがった。いったいどういうつもりなんだ?)







    「おいっ! 何で俺を兄弟呼ばわりするんだッ!?」

    「はっ、貴様が殺した親父(ビッグボス)に聞くがいい・・・・・・・・・・・・あの世でなッ!!」









    エルヴィンは俺の質問にすら耳を傾けず、再び機銃を掃射してくる―――――――吹雪吹き荒れる通信棟Bの屋上において決闘が始まった。






  39. 39 : : 2016/03/17(木) 12:57:06










    コンテナの影に隠れ、スティンガーミサイルを構えるエレン。



    ・・・・・・・・・・・・あいつ相手に焦りは禁物だ。
    たとえスティンガーを持っていたとしても、正面切っては勝ち目がない。










    エルヴィンもまた分かっていた。



    奴は必ず搦め手を突こうとする。
    正面切っては攻撃してこない――――――むしろ、背後を突こうとするだろう。









    だからこそ、





    あいつが俺を見失った時、
    奴が物陰から飛び出した時、






    __________その瞬間に、勝負をかける。







  40. 40 : : 2016/03/17(木) 12:59:03








    ビュウウゥゥッ!!




    と、再び二人の間に強烈な風が吹き付けた。
    ハインドDが一瞬制御を取れなくなり、強風に流されていく。







    __________エルヴィンは一瞬、エレンがどこにいるかを見失った。










    (!! 今だッ!!)



    その瞬間、全てがまるでスローモーションのように見えた。









    エレンは物陰から勢いよく飛び出し、スティンガーミサイルを構えた。
    ハインドDへ向けて、勢いよくミサイルが飛び出していく。


    放たれたミサイルが、強風に流されるハインドDめがけて飛んでいく。










    「舐めるなぁッ!!」



    ところが、強風に流されながら、エルヴィンは機銃のトリガーを引いた。
    機銃が眩しい光を放ちながら銃弾を発射する。









    放たれた銃弾はエレンの放ったミサイルに命中、ミサイルは着弾することなく空中で爆発した。










    「!! そんな・・・・・・・・・・・・化け物かよ!?」



    呆然と呟くエレンは気が付いた。
    コンテナの影から飛び出した自分が今や、絶好の獲物になっていることに。








    __________狩人と獲物の関係が逆転した。







  41. 41 : : 2016/03/17(木) 13:00:04









    「死ねえぇえぇぇッ!!」



    エルヴィンの叫び声が聞こえ、それから、ミサイルの放たれる音が聞こえてきた。













    次の瞬間、B棟の屋上が眩しい光に包まれて、続いて強烈な爆音が鳴り響き、その後には強い風の切るような音が残った。


    そこには、エレンの姿はなかった。











    「あはははははは・・・・・・あーーっはっはははははッ!!」








    エルヴィンは、狂ったように笑いだした。
    いや、既に狂気じみた男だったが、エレンを殺したと確信し、いよいよ気ちがいじみた笑い声を立てていた。








    「さらばだ・・・・・・・・・・・・兄弟。」



    エルヴィンはそう言うと、ハインドDを地下整備基地の方角へと向けて帰投しようとした。

















    その時だった。







  42. 42 : : 2016/03/17(木) 13:01:22







    どこからか、空を切るような音が聞こえてきた。
    と思うと、強い衝撃と眩しい光がエルヴィンを襲った。






    「なッ!? なんだッ!? 何が起こったッ!?」



    突然の出来事に戸惑うエルヴィン。
    ハインドDが操縦不能になり、クルクルと廻りながら徐々に高度が下がっていく。








    と、その時、ある光景が目に入った。







    屋上から垂れ下がったロープ。
    その先に体を縛り付けたエレンが、スティンガーミサイルを構えている姿だった。



    この光景を見たエルヴィンは、全てを悟った。











    「こいつ、ロープを命綱にして!? くそォッ!! エレェエェエェェエェェェンッ!!」










    制御を失ったハインドDは、そのままクルクルと回転しながら落下。
    地上へと墜落して爆発、炎上した。












    『やったッ! エレンッ!!』

    「大したことねえよ、アルミン。ヘリを一機落としただけだ――――――火葬も済んだみたいだしな。」









    どこからか、戦いの様子を覗いていたアルミンからの通信に対し、エレンはクールに返信して通信を切った。







  43. 43 : : 2016/03/17(木) 13:03:26
    以上で、④は終了になります。
    次回もよろしくお願い致します<m(__)m>
  44. 44 : : 2016/03/17(木) 13:05:52
    次回作楽しみにしているので頑張ってください!!

  45. 45 : : 2016/03/17(木) 13:23:25
    いつもありがとうございますo(^▽^)o
    次回も頑張ります!
  46. 46 : : 2016/03/17(木) 16:09:47
    花粉症キツイです( ;∀;)






    お疲れサマーです!

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hymki8il

進撃のMGS

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進撃×MGS ~シャドーモセス事件~ シリーズ

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