このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品はオリジナルキャラクターを含みます。
この作品は執筆を終了しています。
《銀のエルフと冥府の石》⑤
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- 1 : 2016/01/30(土) 15:59:43 :
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指輪物語やホビットの世界観を進撃の巨人のキャラで描きます。第5話です!
そろそろ投稿にも慣れてきたかなあと思う今日この頃、
いつもコメントやフォローしてくださる方々には誠に感謝しております!
さてこのシリーズですが、自分の中の構想として三部作構成でいきたいと思っております。
そのためなかなかの大長編になると予想されますが、何卒最後までお付き合い下さい。
それでは、始めます!
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- 2 : 2016/01/30(土) 16:25:51 :
- 期待です‼
早く読みたいな~!!!!
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- 3 : 2016/01/30(土) 16:32:33 :
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ーディンネン川 東岸ー
グゥゥゥゥ!!
ガアァァァァ!!
グルルルル…
レンジャーの一団に追い立てられた後、オークの集団は数里南下し、ディンネン川の岩場にたむろしていた。
周囲には腹を空かせたワーグの苛立つ声や、オークの怒鳴り声が響く。
ワーグ乗り『納得いかねえ!』
ラガシュ『…』
ワーグ乗り『俺たちはてめえの召使いじゃねえんだ、これ以上付き合いきれるかよ!』
ワーグ乗り『お頭が連れてかれた今、俺たちを縛るもんは何もねえぜ!』
オーク『さがれ!ヴェレノールのハイエナどもが!』
ドン!
ワーグ乗り『ガア!!』
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- 4 : 2016/01/30(土) 16:33:14 :
オーク『黒の大将の命令だ!奴らを殺すまで巣穴には帰らせねえ!』
ワーグ乗り『なら、ここでてめえらを殺してから奴らを殺しに行けばいい!』
オーク『やってみろォ!』
グワァァァ!!
ガウゥゥゥ!!
モルゴロスのオークとヴェレノールのワーグ乗りは二つの派閥に分かれ威嚇し合った。
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- 5 : 2016/01/30(土) 16:34:08 :
-
ラガシュ『ガァァ!』
ザグッ!
ドッ…
ワーグ乗り『⁉︎』
突如立ち上がったラガシュが斧を一振りしてワーグ乗りの一人の頭をはねた。
オークもワーグ乗りも、突然のことに静まり返った。
ラガシュ『てめえらの頭はこの俺だ!不満がある奴はワーグのエサにしてやる!!』
ワーグ乗り『グゥゥゥ…』
ラガシュの迫力に、小柄なワーグ乗りたちは思わずあとずさる。
ラガシュ『エルフどもがいつまでもレンジャーの洞穴にこもってるわけがねえ!』
ラガシュ『北に回り込むぞ!森に入る前に奴らを仕留めるんだ!』
オーク『ウオォォォ!!』
ワーグ乗り『・・・ムウ!』
ラガシュを先頭に、オークの一団は北を目指し走り出した。
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- 6 : 2016/01/30(土) 16:35:53 :
- ≫2
ポンちゃん、期待ありがと〜(o^^o)
楽しんでね〜!
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- 7 : 2016/01/30(土) 18:58:32 :
ーラス・ゴナス 大広間ー
カツカツカツカツ!
オルオ「兵長!やはり納得いきません!」
エルド「オルオ、よせ!」
リヴァイ「…」カチャカチャ
リヴァイはオルオの声が聞こえないかのように落ち着き払い、荷造りをしている。
オルオ「エルド!お前だっておかしいと思わないのか⁉︎」
オルオ「この緊急事態に、いったいどこに行くというんだ!」
エルド「オルオ!兵長も考えあってのことだ…!」
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- 8 : 2016/01/30(土) 18:59:54 :
-
リヴァイ「俺は理解してもらおうとは思ってない。」
オルオ「なっ!」
リヴァイ「お前たちは指示に従い、ハンジの下で東からの敵の進行を食い止めるんだ。」
リヴァイ「兵士に私情は必要ない。」
オルオ「その兵士たちが前線で血を流している時に!兵長は戦いを避けて、あの女たちと西へ逃げるのですか!?」
リヴァイ「…」
エルド「オルオ!お前なんてことを!!」
オルオ「違うんなら説明してくださいよ!俺は、納得できる理由が欲しいんです!」
リヴァイ「」ポン
オルオ「!?」
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- 9 : 2016/01/30(土) 19:00:42 :
リヴァイ「オルオ・・・俺は自分の役目を果たしに行く。他の奴らと同じようにな。」
エルド「兵長…」
リヴァイ「お前の目には、俺が敵に背を向けているように写ってるのかもしれねえ。だがな、俺は俺の運命と向き合うだけだ。」
リヴァイ「迷いがないかと言われれば…嘘になる。でもこれだけは約束しよう。」
ギュッ!
オルオ「⁉︎」
リヴァイ「俺は決して仲間を見捨てねえ!!オークどもに背を向けて、この国が滅ぼされるのを黙って見ていることはできねえ!!」
リヴァイ「奴らを地獄の底に叩き落とし、冥王の息の根を止めるまで、俺は戦う!そして最後には、勝利を手にするんだ!!」
オルオ「へ、兵長っ!」
リヴァイ「俺はそのために西へ行く。だから止めてくれるな…」
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- 10 : 2016/01/30(土) 19:01:45 :
オルオ「・・・・・・・やっぱりわかりません。」ボソッ
エルド「オルオ…!」
オルオ「兵長の考えは、やはり俺には理解できません。納得もしてません。でも…」
オルオ「俺たちの兵長は、兵長しかいません。他に変わりは務まらないです…だから、」
バッ!
オルオ「だから必ず帰ってきてください!俺たちは、兵長の帰還を待ってますから!」ジワッ
リヴァイ「ああ、約束しよう。俺は必ず戻る。そして冥王に勝つ!絶対にだ!」
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- 11 : 2016/01/30(土) 19:02:51 :
エレン「か、かっけー!」
エレン「まさしく戦う漢ってかんじだな!」
ミカサ「くだらない…」
ミカサ「あのオルオとかいう兵士、無駄に暑苦しいから苦手だ。」
アルミン「み、ミカサらしいシビアな意見だね…」
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- 12 : 2016/01/30(土) 19:03:31 :
ペトラ「私も同感ね。」
ミカサ「ペトラさん」
ペトラ「これは私たちからの旅の選別よ。受け取ってくれる?」
ペトラの手には3着の緑色のマントが握られていた。
アルミン「こ、これは!」
ペトラ「レンジャーのマントよ。オークたちがまだうろついてるかもしれないから、顔を隠しながら進むにはちょうどいいと思って。」
エレン「ありがとうございます!!」
グンタ「君たちを追ってきたオークは南に逃げて行ったが、奴らは執念深い。必ずや君たちを仕留めようとするだろう。」
グンタ「オルド=ガレリンまでの道のりは険しく馬は使い物にならない。道中気をつけてな!」
アルミン「はい!」
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- 13 : 2016/01/30(土) 19:06:54 :
ユミル「肩の調子はどうだ?クリスタ。」
クリスタ「大丈夫。問題ないよ。」
クリスタの顔色は相変わらず白い絹のようだが、血行はよく、毒の影響は完全に失せっているようだ。
ユミル「そうか。」
ハンジ「少しでも地上を歩きたくなければ、レンジャーの隠し通路を抜けていくといい。」
ハンジ「そこから緑の高地とは目と鼻の先だ。馬がないならなおさらだね。」
ユミル「ああ、そうしよう。」
ハンジ「私の部下に案内させるよ。洞窟は入り組んでわかりにくいからね。」
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- 14 : 2016/01/30(土) 19:07:39 :
リヴァイ「ハンジ」
ハンジ「ん?なぁに?」
ツカツカツカ
リヴァイ「お前一人に責任をかける形になっちまった…すまねえな。」
ハンジ「あはは、珍しいね!君があやまるなんて!」
リヴァイ「茶化すな…」
ハンジ「へへへ・・・でもまぁ、安心してよ。」
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- 15 : 2016/01/30(土) 19:08:33 :
ハンジ「半年は持たせるつもりだ・・・けど、それ以上は自信がない。」
リヴァイ「全然安心できねえじゃねえか…」
ハンジ「あは、そうだよね!でもそれまでには、我らが兵長が帰ってきてくれるだろうし、私は心配してないよ?」
リヴァイ「・・・そうか」
ハンジ「だから君は自分の役目を果たしに行きなよ。オルオじゃないけど、君の変わりはいないんだ。」
ハンジ「本当に、君が最後の希望だよ…」
リヴァイ「ああ、そうだな…」
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- 16 : 2016/01/30(土) 19:10:20 :
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ユミル「よし、準備はいいか!」
エレン「ああ!」
ユミル「出発だ!」
一行はレンジャーの案内のもと洞窟の奥深くへとすすみ、ラス・ゴナスを後にした。
オークの一団が、すぐそこまで迫ってきているとも知らずに
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
ー
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- 17 : 2016/01/31(日) 12:25:21 :
アルミン「んー、むぅ…」ゴソ
ミカサ「」ス-ス-
一行はディンネン川の西岸を北上し、オルド=ガレリンまであと10里ほどとなった岩場で休息をとった。
オークに気付かれぬように大きな火は焚かず、リヴァイの煙草の火だけが夜闇に揺らめいている。
リヴァイ「ガキたちは眠ったか…」
クリスタ「ええ、朝からずっと歩き続けでしたから。」
クリスタ「食事をとったらぐっすりです。」フフ
クリスタの笑顔はさながら天使のようである。
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- 18 : 2016/01/31(日) 12:26:07 :
リヴァイ「夜警には俺が立つ。あんたも病み上がりで辛いだろ。寝れるときに寝ておけ。」ザッ
キラッ
ふとリヴァイがクリスタの胸元に目をやると、鎖につながれ、赤く輝く石が首からさげられていた。
リヴァイ「…」
クリスタ「どうか、しましたか?」
リヴァイ「・・・その石は?」
クリスタ「はい?」
リヴァイ「その石をどこで?」
ユミル「」ジッ
ユミルが木陰から二人をじっと見つめる。
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- 19 : 2016/01/31(日) 12:30:42 :
クリスタ「リヴァイさんは、この石のことをご存知で?」
リヴァイ「・・・いや、ただ、綺麗な石だと思ってな。」
クリスタ「これは…姉の形見なのです。私と私の家族の、唯一の絆です。」
リヴァイ「そうなのか…」
クリスタ「確かに美しい石ですよね…とっても。」
クリスタ「この石を見てると、家族の温もりが感じられるようで…とっても安心するんです。」ナデナデ
リヴァイ「ほう…」
クリスタ「なんだかとっても…愛しくって.....」
リヴァイ「愛しい…?」
クリスタはその石に吸い込まれるように、赤く輝く宝石を愛で始めた。
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- 20 : 2016/01/31(日) 12:37:12 :
ガバッ!
クリスタ「!?」
ユミル「クリスタ。」
クリスタ「えっ?」
ユミルは急にクリスタに近づき、クリスタの手をとって話しかけた。
ユミル「今日はもう遅い。明日も早いからな…少しでも体力を残しておくんだ。」
クリスタ「う、うん・・・」
クリスタ「わ、わたし、今なにを?」
ユミル「さっ、立つんだ。」
ユミルはその言葉を遮ってクリスタを立たせた。
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- 21 : 2016/01/31(日) 12:38:01 :
ユミル「まったく、育ち盛りだってのに夜更かしなんてな。反抗期なのか?」
クリスタを寝床まで送り、戻ってきたユミルがわざとらしくつぶやく。
リヴァイ「・・・いつからだ?」
ユミル「ん、反抗期のことか?」
リヴァイ「石だ・・・いつからあの石に執着するようになったんだ。」
ユミル「…」
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- 22 : 2016/01/31(日) 12:39:13 :
リヴァイ「チッ、まただんまりか。お前たちエルフの秘密主義にはうんざりだな…」
ユミル「・・・今に始まったことじゃないだろ?長い付き合いなんだかr」
パキッ!
ユミル「!」シャッ
不審な物音に、思わずユミルが身構える。
エレン「ほ、本当か?」
リヴァイ「エレン…」
二人の背後にはエレンが立っていた。
エレン「あんたらがエルフって、本当なのか!?」
ユミル「ハァ、反抗期がもう一人いたのを忘れてたか…」チャキ
ため息をつきながら剣を鞘に収める。
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- 23 : 2016/01/31(日) 12:40:47 :
エレン「な、なんで黙ってたんだよ!?俺たち、仲間だろ?」
ユミル「仲間?ダハハ、笑わせんなよ…」
エレン「なっ、なに!」
グイッ
ユミルは下品に笑うと、エレンに顔を近づけてすごんだ。
ユミル「仲間ってのはなぁ、自分の背を安心して預けられる奴のことをいうんだ。特に私たちエルフは人間と比べていろんな点で優れてるからな、半端なやつじゃ務まらない…」
リヴァイ「…」
ユミル「だからお前らみたいな訓練兵上がりの新米には、私らの仲間と名乗る資格はないんだよ。精々荷物持ちくらいがお似合いだ!」
エレン「なっ…!」
リヴァイ「・・・その通りだな。」
エレン「兵長まで!」
リヴァイ「うるせえな、お前らが弱いのは事実だろ。」
エレン「それは、そうですけど・・・」シュン
エレンは言葉を失った。
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- 24 : 2016/01/31(日) 12:41:44 :
リヴァイ「弱いやつは戦場で真っ先に死ぬ。訓練所でもそう教わっただろ。」
リヴァイ「だからラス・ゴナスに残っても良かったんだ。なのに、お前たちはついてきた…シガンシナで地獄を見てきたはずなのにな。」クルッ
リヴァイはユミルの方を向きなおして続ける。
リヴァイ「こいつらは確かに弱いが、根性だけは座ってやがる。そして運悪くこの望みのない旅に加わった。」
リヴァイ「あんたは俺に運命を説き、俺はこうしてここにいる。ならこいつらが今ここにいるのも、その運命ってやつじゃねえのか?」
ユミル「…」
リヴァイ「話してやるべきだ。お前たちのその秘密主義は結果として、2000年前の悲劇を生んだ…」
リヴァイ「・・・今度は国が一つ滅びるだけでは済まねえぞ。」
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- 25 : 2016/01/31(日) 21:02:38 :
- 期待していつも読んでいます!
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- 26 : 2016/01/31(日) 23:09:48 :
- MGSさん!
いつも応援ありがとうございます!
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- 27 : 2016/02/01(月) 21:56:10 :
ユミル「・・・聞けば引き返せないぞ。全てを知れば、元の生活には戻れないだろう。」
ユミル「それでも後悔しないか?」
エレンはうつむきながら答える
エレン「・・・俺たちの故郷は奴らに焼かれた。今更元には戻れるとは思えねえよ…」
ユミル「そう、だったな・・・」
グッ!
エレン「教えてくれ、真実を!もうなにも知らずに守られるだけなのはたくさんなんだ!」
エレン「父さんと母さんの仇を討ちたい!それに何より、俺たちの命を救ってくれた、あんたらの役に立ちたいんだ!」
ユミル「・・・!」
エレン「頼む!」
ユミルはエレンの瞳の奥に映る覚悟を感じ取った。
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- 28 : 2016/02/01(月) 21:57:08 :
ユミル「・・・いいだろう。二人を起こしてこい。」
エレン「え!?」
ユミル「お前たち3人に話してやろう。この旅の目的と、この国の真実をな…」
エレン「わ、わかった!」
ダッ!
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- 29 : 2016/02/01(月) 21:57:45 :
ユミル「人間ってのは理解しがたい種族だ。後悔するとわかっていて、自ら死地に飛び込もうとするとは…」
リヴァイ「エルフは違うのか?」
ユミル「ああ、そうだな。」
ユミル「そう思っていた…」
リヴァイ「?」
-
- 30 : 2016/02/01(月) 22:00:28 :
ユミル「私たちはいつからか、自分たちの力を見誤っていた。谷が冥王に攻められた時ですら、自分たちの力を過信していた。」
ユミル「エルフに比べればはるかに劣る人間の力を借りなければ、私たちはこうして生きながらえることはできなかったんだ。」
ユミル「せめて2000年前のあの時、恥も外聞も捨てて、あんたらに助けを求めていれば、結果は違ったかもしれない・・・」
リヴァイはパイプ草に火を灯しながら黙ってユミルの話を聞いていたが、やがて静かに口を開いた。
リヴァイ「未来は誰にもわからない。古のエルフの魔術を使っても、未来を思い通りにすることはかなわかった。」
リヴァイ「結局俺たちにできることは、自分の選択を信じることだけだってことなんだろうよ…」
ユミル「…」
リヴァイ「だからそれがいかなる結果になろうとも、俺はお前の悔いなき選択を尊重する。」
リヴァイ「たとえそれが、もとより望みのない旅だとしてもな…」
ユミル「リヴァイ…」
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- 31 : 2016/02/03(水) 22:30:16 :
- 読み始めました。
頑張って下さい☆彡
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- 32 : 2016/02/03(水) 22:35:04 :
- ゲーマーさん!ありがとうございます!
少し更新が遅くなりますが、期待していてください(o^^o)
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- 33 : 2016/02/04(木) 23:12:27 :
リヴァイ「さて、俺は周囲を見回ってくる。気兼ねなくはなせ。」
リヴァイはたちあがり、夜の闇に消えていった。
ユミルは彼と入れ替わるようにやってきた三人を座らせると、おもむろに口を開いた。
ユミル「さて、どこから話すかな…」
アルミン「あの!」
ユミル「うん?」
アルミン「お二人がエルフっていうのは本当なんですね!?」
ユミル「・・・ああ、そうだ。」
アルミン「じゃあ、二人はケルヴァ二オンを知ってるんですか?」
エレン「なあ、ケルヴァニオンってなんだ?」
アルミン「エレン、訓練所で本を見せた時のお話に出てきたじゃないか。銀のエルフたちの故郷だよ。」
アルミン「エルフの調度品や城の外壁が銀色の輝きを放ち、夜となく昼となく谷間を照らす。」
アルミン「谷そのものが一つの宝石のような美しさを持つ伝説の都さ。僕も実在するとは思ってもみなかったけど・・・」
エレン「へぇ、」
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- 34 : 2016/02/04(木) 23:14:10 :
ユミル「お前、よく知ってるな。まるでその目で見てきたかのようだ。」
アルミン「はい!エレンディンの書で勉強しましたから!」
ユミル「まあ、あながち間違いじゃないが、ひとつ訂正するとしたら・・・実在“した”ってことだな。」
アルミン「あっ…」
ユミル「私たちの故郷は、冥王に滅ぼされた…今は谷も崩れ、山の中に埋まってる。」
ユミル「私の父も母も、妹も一緒にな…」
ミカサ「妹さんがいたの?」
ユミル「ああ、双子のな。二人とも似た顔で、よくみんなに間違えられてたよ、私がイルゼで、イルゼが私。」
エレン「妹はイルゼっていうのか。」
ユミル「そうだ。かわいいやつだった…少し真面目すぎたけどな。」
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- 35 : 2016/02/04(木) 23:15:56 :
ユミル「ほらよ、アルミン。」
アルミン「えっ?」
ヒョイ!
アルミン「うわっ!」
ユミルは唐突に懐から分厚い本を取り出し、アルミンに向かって投げ渡した。
ユミル「エルフはふつう、自分たちの歴史を書に記さない。普通にしてりゃあ死ぬことはないからな、文字に残す必要がない。」
ユミル「だが、イルゼはなんでも書き残すってなクセがあってな…物語として、谷の歴史を記し続けた。」
アルミン「もしかして、それがこの書ってことですか?」
ユミル「そのとおり。私たちの存在は平地の奴らには秘密だったから、歴史が残るのはある意味命取りになる。てなわけで、谷には暗黙のルールがあったんだが、イルゼはそれを破った。」
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- 36 : 2016/02/05(金) 17:19:40 :
ユミル「アルミン。冥王の石の話があっただろ。谷の終焉の物話だ。」
アルミン「はい。たしか…ここですね、《銀のエルフと冥府の石》」
アルミンは書をめくり、あるページを指差した。
ユミル「そう。この話に書いてあるとおり、冥王の心臓と呼ばれる宝石は谷に保管されていた。」
ユミル「私らのご先祖様は、冥王の城から、奴の一番大事にしていた宝を盗んできたんだ。」
ユミル「石は王宮の地下深くに保管され、たとえ王、女王であろうとも、その石に触れることは許されなかった。」
アルミン「でも、石は持ち出されてしまったんですよね・・・?」
ユミル「そうだ。フリーダ女王の父、ロッド・レイスが、冥王の誘惑に負け、冥王と取引をした。」
ユミル「自分の娘である女王を、妃にしようとしてな・・・」
ミカサ「そんなこと、人間では許されない。」
ユミル「人間だけじゃないさ。」
ユミル「エルフは高潔を尊ぶ。近親婚、ましてや自分の娘となんてのは、誰もが反対するし、人々はロッドは気がふれたと噂した。」
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- 37 : 2016/02/05(金) 17:20:19 :
ユミル「実際、ロッドは正気じゃなかった。」
ユミル「奴は知らず知らずのうちに冥王の魔力の虜となっていたんだ。」
アルミン「それはこの石のせいで?」
ユミル「冥王は数千年に渡り自分の心臓を探していた。その執念が、谷の魔力の壁をすり抜けたんだろうな。」
ユミル「ま、ロッド自身の心の弱さもあっただろうが、ともかく奴のせいで谷にはオークどもが押し寄せた。」
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- 38 : 2016/02/05(金) 17:21:22 :
ユミル「谷は2000年間平和そのものだった。その間、武器をとって戦う機会がなかった私たちでは、血に飢えたオークと冥王の怒りの力に太刀打ちできなかった。」
ユミル「兵士だけじゃない。街の至る所でまだ幼い赤ん坊やその母親たちまでが殺された。」
ユミル「美しかった銀の都は、一夜にして血の赤に染まった。ちょうどお前らの故郷のようにな。」
「…!」
三人は忘れようとも忘れられないふるさとの惨状を思い出した。
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- 39 : 2016/02/05(金) 22:49:53 :
ユミル「・・・イルゼもその時に死んだ。この本を私に残してな。」
ユミルの瞳は遠くを見つめ、短い沈黙をもたらした。
アルミン「あ、あの…」
ユミル「うん?」
アルミン「この本は谷の終焉まで記してますよね。イルゼさんがここまで書くのは不可能なんじゃ?」
ユミル「ああ、後の部分は私が書き加えたんだ。その後のことははっきり覚えてる。」
-
- 40 : 2016/02/05(金) 22:51:08 :
ユミル「私は王宮の近衛兵として王女の側で戦った。だが、街の大部分はオークに占領され、いよいよ冥王が王宮に乗り込んできた。」
ユミル「フリーダ女王は冥王と戦い、私たちは迫り来る無数のオークと斬りあった。」
ユミル「そうして三日三晩戦い抜いた末、そこに立っていたのは女王と私だけだった。」
エレン「すげえ…そんなに強かったのかよあんた!」
ミカサ「エレン、黙って。」
ユミルはエレンの言葉を聞き流して続けた。
ユミル「・・・フリーダ女王は冥王を倒し、私は勝利を確信した。」
ユミル「だが、谷にはその勝利を分かち合うはずの同朋の姿は無かった。」
ユミル「ほとんどのエルフはオークどもに殺され、運良く生き延びたものも、谷から逃げ出したらしかった。」
ユミル「昨日まで谷の人々で賑わっていた街には、無数のオークどもがひしめき合っている。」
ユミル「深手を負っていた女王は、国の最期を悟り、自分の幼い妹を私に預けて谷の底へと沈んでいった…」
ユミル「数多のオークと共にな。」
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- 41 : 2016/02/12(金) 14:02:33 :
エレン「な、なあ…」
ユミル「どうした。」
エレン「あんたらが本物のエルフだってことはよくわかったよ。けど肝心なことがまだだろ。」
エレン「この旅の目的だ!どうして俺たちはオークに狙われ続けるんだ?」
ユミル「お前…ここまで教えて気づかないのか?なかなかに鈍感なやつだな、」
エレン「は?」
ユミル「私の主人はフリーダ女王だった。私は女王の命で妹を谷から連れ出した。」
ユミル「女王に子はいない。そして今の私の主人はクリスタだ。つまり彼女は…」
アルミン「フリーダ女王の妹!?ってことは、次のエルフの女王さま!!」
ユミル「そう。そして王の証である、冥王の心臓を継ぐ者だ。」
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- 42 : 2016/02/12(金) 14:04:37 :
エレン「…なあ。その冥王のなんたらってのは敵の追ってる宝でもあるんだろ?」
ユミル「ああ、そうだ。」
エレン「てことは、俺たちがオークに追われてんのはその石のせいじゃんか。」
ユミル「まあそうだろうな。」
エレン「ならさっさと敵に渡しちまえばいい!それがあるから、俺たちの国は攻められてんだろ?」
ユミル「・・・だめだ。」
エレン「なんで!?」
ユミル「あの石は文字通り冥王の命だ。奴の力の源だ。」
ユミル「今はまだ奴の肉体は滅んだままだが、あの石を取り戻したあかつきには人間もエルフも、生きとし生けるもの全てが奴に支配される。」
ユミル「お前たちの故郷で起こったことが、この世のいたるところで繰り広げられるんだ。」
ユミル「そうなることだけは絶対に避けなきゃならない…」
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- 43 : 2016/02/12(金) 14:10:41 :
ミカサ「ならば敵に勝つ見込みはあるの?」
ミカサ「これまでは冥王に歯が立たなかったのでしょう?」
ユミル「ああそうだ…これまでは、な。」
ミカサ「?」
ユミル「敵は本腰を入れて戦を仕掛けてきた。冥王の肉体が滅んで2000年。敵も力を蓄えるのに十分な時間を費やした。」
ユミル「私たちはその間逃げ続けていたが、ただ守勢に回っていたわけではない。」
ユミル「リヴァイを始め、協力者を募り、来る日に備えて準備をしていた。」
アルミン「な、何の準備を?」
ユミル「冥王の心臓を破壊し、今度こそ奴の息の根を止める!」
ユミル「我らの先祖が成せなかったことを、我らが終わらせるんだ!」
-
- 44 : 2016/02/12(金) 14:12:14 :
-
アルミン「な…でも、古のエルフも成し遂げられなかったことですよね?僕らにできるとは到底…」
ユミル「そうだ、はなから望みはない。」
ユミル「だが、ここで座して死を待つより、華々しく戦って散る方がいいとは思わないか?」
アルミン「それは…」
ユミル「石は普通の方法では壊せない。私たちの先祖もありとあらゆる方法を試したが、冥王の魔力は絶大だった。」
ユミル「だが、西の港の賢者なら何か知っているはずだ。古い友人だ…」
そう言うとユミルはおもむろに立ち上がり続けた。
ユミル「散々焦らして悪かったな。私は、お前たちの覚悟を見極めたかっただけだ。」
エレン「なんだよそれ…」
ユミル「改めて言おう。私たちの目的は、アヌンの港へたどり着くこと。」
ユミル「そして・・・冥王の息の根を止めることだ!」
-
- 45 : 2016/02/12(金) 14:23:04 :
- はい!第5話終了です!
今週は何かと忙しくなかなか投稿できず、申し訳ありませんでした(^^;;
さて、5話目にしてようやく旅の目的をエレン達に明かすことができました。
物語の設定を考え、それを読者の皆さまに理解していただくことは簡単ではないと思いますが、なんとか噛み砕いて表現していこうと思っておりますので、宜しくお願いします。
また、今回ゲーマーさん主催で合作を書かせてもらっています!
タイトルは『酒場』です。
http://www.ssnote.net/archives/43161
リヴァイ、ハンジ、エルヴィンが互いの過去を語り合うというものです。
そちらもチェックしていただけると幸いです!
では、次回も頑張りますので応援よろしくお願いします!
以上ツナマヨでした!!
-
- 46 : 2016/02/13(土) 13:23:09 :
- セリフ回しが秀逸で、ところどころ原作であるロード・オブ・ザ・リングやホビットのオマージュが感じられてとても面白かったです。
次回も、期待しております(^^ゞ
-
- 47 : 2016/02/13(土) 13:28:37 :
- ありがとうございます!
そこまで理解していただけるとは!
- 著者情報
- この作品はシリーズ作品です
-
《銀のエルフと冥府の石》 シリーズ
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