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《銀のエルフと冥府の石》➀
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- 1 : 2016/01/08(金) 15:52:42 :
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指輪物語やホビットの世界観を進撃の巨人のキャラで描きます。
作中の地名や道具の名前などはシンダリンやクウェンヤを元に、原作と全くかぶらない程度に創作しました。
映画のイメージで書いた場面もありますので似たような場面が出てきたらPJの映画の壮大な映像をイメージしながらお読みください。
ストックがあまり多くないことと、あくまで隙間時間に考えたものなので、更新は不定期になると思います。
また、今作が自身初めての作品になるのでその辺も込みで暖かく見守っていただけると幸いです。
では、始めます。
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- 2 : 2016/01/08(金) 15:54:53 :
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今から何千年も昔のこと…
人間の国《エレノール》
その北部に広がる緑豊かな高地、《オルド=ガレリン》のさらに北
《白の山脈》の奥地に、エルフの隠れ王国があった
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- 3 : 2016/01/08(金) 15:55:57 :
その国は、太古の昔から冥王により奴隷とされていた古エルフの一族、《銀のエルフ》たちが、冥王の城から逃げ出し、白の山脈を彷徨った末にたどり着いた安息の地。
アヴァリの神々によって約束された土地である《ケルヴァニオン》に拠りつくられた王国であった。
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- 4 : 2016/01/08(金) 15:56:54 :
冥府《モルゴロス》から逃げ出した銀のエルフたちの指導者であった《レイス家》の人々は、やがてこの地を治める王家となり、彼らによって谷には強固な結界がはられた。
このため、谷の存在は人間にも、他のエルフ族にも、また、数々の邪悪な黒魔術を操る冥王にすら知られることなく、二千年の間、王国は谷に凜然と栄えていた。
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- 5 : 2016/01/08(金) 15:59:09 :
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谷のエルフたちは古の白の魔法と、巧みな冶金術によって見事な調度品や宝石、武器や防具の数々を生み出したが、その中でも彼らが最も大切にしていた宝があった。
《冥王の心臓》と言われる、赤黒い宝石。
冥王の奴隷であった銀のエルフたちが冥王の城を抜け出す際に、盗み出したと言われるこの宝石には、冥王の命そのものが宿ると言われていた。
この宝石に触ったものはたちどころに堕落し、冥王の暗黒にとらわれ滅びの運命を迎える、と。
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- 6 : 2016/01/08(金) 16:29:24 :
彼らがどのようにしてこのような恐ろしい宝を手にしたのかは定かではない。
ある人は長きにわたり自分たちに酷い仕打ちをしてきた冥王に一矢報いるために盗んだといい、ある人は冥王を殺そうとして、そうできなかったために盗み出したのだといった。
しかしいずれにせよ、彼らのその行いは災いを呼ぶことになった。
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- 7 : 2016/01/08(金) 16:36:36 :
自分の心臓を奪われた冥王の怒りは凄まじく燃え上がった。
火を吹く山々は一層灰を撒き散らし、厚い雷雲となってモルゴロスの荒野に轟いた。
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- 8 : 2016/01/08(金) 16:39:32 :
冥王は自分の心臓が奴隷たちに盗まれたことはすぐにわかった。
エルフたちがモルゴロスから離れるにつれ、偉大なる白の魔力を取り戻しつつあることもわかっていた。
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- 9 : 2016/01/08(金) 16:42:57 :
はやる気持ちを抑え、冥王は配下のオークたちを周辺の山脈に放った。
エルフを探し出し、石を取り戻すのだ‼︎
しかし石は一向に見つからなかった。
古のエルフたちの魔力はオーク共の目を欺き続けたのだ。
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- 10 : 2016/01/08(金) 16:55:20 :
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その間も冥王の怒りは静まることはなく、モルゴロスの火の山から噴き出した漆黒の灰が大地を覆い、人々は恐れおののいた。
が、しかし、
冥王の真の恐ろしさはその業火の如き怒りではなく、むしろ、数千年の長きにわたり培われてきた執念と狡猾さであった。
たとえ己の心臓が握られていようとも、冥王は決して焦らず、ゆっくりと自分の魔力を周囲の山々にはべらせ、さながら獲物を待つ釣人のような心持ちで、宝石の在り処を探っていった。
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- 11 : 2016/01/08(金) 16:56:23 :
古の力を取り戻したエルフ達の魔力は確かに凄まじいものだったが、冥王の執念はそれらを次第に衰えさせていった。
そしてエルフ達が気づいた頃にはすでに、冥王の魔の手は彼らの喉元まで迫っていたのだーーー
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- 12 : 2016/01/08(金) 17:08:57 :
ーーー銀のエルフたちが冥王の心臓を盗み出しておよそ二千年後
ケルヴァンエルフの第三代女王フリーダ・レイスの御代のことである
彼女の父、ロッド・レイスが、突如谷の結界を解き、王国の存在は冥王の知るところとなってしまった
冥王の魔力がついに谷にまで及んでしまったのである
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- 13 : 2016/01/08(金) 17:10:20 :
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ロッドは妻を失ってからというもの、実の娘であるフリーダに亡き妻の面影を重ね、自分でも理解できない、特殊な感情を抱くようになっていた
そしてロッドは冥王にその心の隙を突かれ、密かに冥王と、ある取引きをしてしまった
それは、
愛する娘フリーダを己の新たな妻にむかえること
そしてその見返りに冥王に宝石を渡すこと
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- 14 : 2016/01/08(金) 17:10:59 :
結界の解除は部分的かつ速やかに行われるはずだった。
しかし、そのわずかな隙をつかれ、谷にはオークやトロルの大軍がなだれ込み、平和を享受してきたエルフの国は瞬く間に蹂躙された。
一部の兵とレイス家の人々は手に武器をとり果敢に立ち向かったが、多勢に無勢。
彼らのほとんどはオークやトロルに討ち取られ、亡き骸は引き裂かれた。
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- 15 : 2016/01/08(金) 17:13:30 :
女王フリーダは王国の最後を悟ると、冥王の宝玉を密かに隠し、闇の首領たる冥王に一騎打ちを挑んだ。
彼女は冥王の注意を少しでも自分に引きつけ、民の逃げる時間を稼ごうとしたのだ。
自分の奴隷であったエルフに打ち負かされるはずがないと思ったのか、
はたまた奴隷に背を向けることを冥王の矜持が許さなかったのか、
いずれにせよ、冥王はフリーダとの一騎打ちに応じた。
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- 16 : 2016/01/08(金) 17:19:19 :
冥王は一瞬で勝負がつくと思っていた。
エルフたちの生まれるはるか昔からこの地の冥王として君臨してきた自分に、エルフの小娘が敵うはずがないと。
しかし女王は倒れなかった
アヴァリの神々と先祖たちの加護により、フリーダは冥王と互角に渡り合ったのだ。
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- 17 : 2016/01/08(金) 17:20:28 :
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三日三晩絶え間なく続いた決闘の末
4日目の暁に、女王の愛刀《エルミシル》が冥王の胸を貫いた。
冥王の鎧は音を立てて崩れ落ち、肉体は消滅した。
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- 18 : 2016/01/08(金) 17:22:44 :
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冥王を打ち倒した女王フリーダは最後の力を振り絞り、持てる全ての魔力で以って谷を崩した。
彼女は最後の役目を果たすため、主を失って谷から逃がれんとしていた数多のオークやトロルとともに谷の底へと消えていったのだ。
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- 19 : 2016/01/08(金) 17:24:55 :
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こうして谷の記憶は人々の間から消え去り
今や、エルフたちのかくれ王国を知る者は誰ひとりいなくなってしまったという
そして生き残った銀のエルフたちは今もこの地のどこかで女王の帰りを待っていることだろう
決して帰ることのない女王の帰りを……
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- 20 : 2016/01/08(金) 17:32:39 :
- 冒頭から素晴らしい世界観に引き込まれました。
期待です!
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- 21 : 2016/01/08(金) 18:14:43 :
- ありがとうございます!
MGSさんの作品も拝見しました!
まだまだMGSさんには及びませんが、頑張ります‼︎
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- 22 : 2016/01/08(金) 23:08:52 :
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いつもと変わらない目覚めだ…
いつもと変わらない朝日…
いつもと変わらない天井に…
いつもと変わらない床…
そうして見慣れた布団をゆっくりと払いのけ、寝台に腰をかける。
アルミン「んー、あーっ……っはぁ…」ノビ-
伸びをしてふと見下ろした向かいのベットには、見慣れた幼馴染の顔がある
何か楽しい夢でも見てるのかな?
なんだかとても幸せそうだ…
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- 23 : 2016/01/08(金) 23:14:56 :
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つられて僕も布団の中に戻りそうになるけれど、明け方の騒々しさはそれを許さない…
オイ オクレルゾ!ヨウイデキタカ!?
ハヤクメシイコウゼ!!セキガナクナル!
オイ!オレノクツシタシラネエカ!?
シラネエヨ!オイテクゾ!!
廊下はさながら戦場のようだ。
アルミン「エレン、朝だよ。」ユサユサ
エレン「んー、なんだよぉ…あるミィん…」ウトウト
アルミン「もう朝だって、ご飯間に合わなくなっちゃうよ…」ユサユサ
エレン「先に行って二人分取っといてくれよ…」ファ-
アルミン「もう…それは何ヶ月も前に、食堂のおばちゃんにダメって怒られたでしょ?」
アルミン「自分の分は自分で、って」
エレン「んーー。ああ、わかったよ。今起きる…」ゴソゴソ
僕の親友は、少し寝坊助だ。
もう慣れっこだけど…
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- 24 : 2016/01/08(金) 23:20:57 :
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アルミン「はぁ、今日もいい朝だよエレン。少し寒いけどね…」ブルッ
渡り廊下の欄干にもたれながら呟く
エレン「もうすぐ冬だな…」
アルミン「うん。僕らがここにきてから3度目の冬だ…」
エレン「…いよいよ卒団か…あっという間の訓練生活だったな…」
アルミン「……名残惜しいかい?」
エレン「まあ少しはな……」
エレン「…でも、」
エレン「ようやく兵士になれるんだ。今はよろこびの方が大きいよ。」ニカッ
アルミン「ふふ、そうだね。」ニコ
エレン「よーし、とりあえずメシだ!早く行こうぜアルミン‼︎席がなくなる!」ダツ
アルミン「もう!調子がいいんだから!」ダッ
食堂へと続く階段を駆け下りた
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- 25 : 2016/01/09(土) 11:22:01 :
食堂
ガヤガヤ
エレン「よーし、結構空いてんな!」
アルミン「僕らが来るのが遅かったんだよ。みんなもう食べ終わったんだと思うよ?」
そう言いながら長椅子に腰掛け、皿に盛られた料理に手をつけようとして、アルミンがおもむろに懐から分厚い本を取り出す
アルミン「ねえ、エレン。これ見てよ。」
エレン「ん?なんだよそれ…」モグモグ
アルミン「《エレンディンの歌》っていう詩集なんだ。昨日の夜、図書室でみつけたんだよ。」
エレン「すっげえ古そうな本だな…」モグモグ
アルミン「本棚の整理を手伝っていたら一番上の棚からたまたま落ちてきたんだ」
アルミン「かわいそうに…長いあいだ誰も手をつけなかったみたいで、ホコリまみれだったよ…」パッパッ
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- 26 : 2016/01/09(土) 11:24:16 :
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エレン「そりゃおとぎ話の詩集なんて、訓練兵にもなって読むやつはいないだろうからな」
エレン「座学の参考書ならまだしも、なんでそんなもんが図書室にあるんだ?」パクッ
アルミン「僕も最初はそう思ったんだ…」
アルミン「けど、これただのおとぎ話じゃないんだよ。この本には、この世界の数千年にわたる様々な伝説や神話が載ってるんだ。しかもとっても詳細に!まるで、歴史の教科書だよ!」
エレン「歴史ってったってお前、何千年も前の話だってんなら、それこそ神話の世界だろ…歴史っていうほどしっかりしたもんじゃないとおもうけどな…」モグモグ
アルミン「うーん、確かにそうなんだけど…」
本を開き、机に乗せる
アルミン「でも、たとえばこの《銀のエルフと冥府の石》っていうお話の中に出てくる『白の山脈』や『オルド=ガレリン』っていうのは実在する地名だし、エルフだってじいちゃんが子供の頃にはエレノールにもたくさんいたらしいよ?」ユビサシ
アルミン「だから、いくら数千年も昔のことだからって、単におとぎ話で片づけてしまうのは早計だとおもうんだ…」
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- 27 : 2016/01/09(土) 11:27:07 :
アルミン「そ、それに、もしかしたら!この本を調べることで伝説のエルフの人たちに出会える手がかりがつかめるかもしれないじゃないか!」ガタ
エレン「おいおい、落ち着けよアルミン……お前がエルフに会いたいってのは昔からの夢だからな、その気持ちはわかる。けどよ…」モグモグ
エレン「実際の地名を使うのは話に現実味を持たせるためにはよくあることだし、そもそもエルフだってお前のじいちゃんが子供のころ噂で聞いただけで、実際にその目で見たんじゃないんだろ?」ゴクン
エレン「そんな胡散くせえ本に載ってることがエルフに会う手がかりになるとはとても思えねえよ…」パクッ
アルミン「まあ、そうだけど・・・」
エレン「大方、教官の誰かが売れない吟遊詩人に押し付けられでもしたんだろ。いかにも奇をてらったような名前だしな…」モグモグ
アルミン「そ、そうかもね…」アハハ...
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- 28 : 2016/01/09(土) 11:38:43 :
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アルミン(……でも、この本に書いてある話はどれも本当に鮮明に描かれている。まるで実際に目にしてきたかのように…)ペラ
アルミン(特に銀のエルフのお話は興味深いな…谷の挿絵もきれいだ…)ペラ
アルミン(このエルフの女王と冥王の決闘の場面なんてホントに最高だよ!……ん?)
アルミン(…そういえば、この冥王の宝石は結局どうなっちゃったんだろう…)ペラ
アルミン(冥王が二千年もの間執着していたくらい大事な宝なのに、肝心の宝石についてのその後はーーー全く書かれていない。そのまま話は終わってるのか…なんだかすごく不自然だーーー)ペラ ペラ ペラ
アルミン(ーーーもしかして、宝石について知られたら困ることがあったのかな……いや、だとしたら、この本の作者もはそもそもなぜこんな話を書いたんだ?………ん?これは…)ジ-
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- 29 : 2016/01/09(土) 12:16:19 :
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エレン「ふぃー、ごちそうさん。……アルミン、なあ、アルミン‼︎」ガタッ
アルミン「……ふぇ!?」
エレン「そろそろ訓練の時間だぞ。おとぎ話の考察もいいけど、早くメシ食っちゃえよ。またキース教官にどやされるぜ?」
アルミン「そ、そうだった!もうこんな時間⁈は、早く食べなきゃ!」バクバク
エレン「おいおい、あんまり急いで喉に詰まらせんなよ!」ハハハ
アルミン「もぐもぐ…ゴクッ。よし、ごちそうさまでした!」ガタ
ホラアルミン!オイテクゾ-!! ア-!マッテヨエレ-ン!!
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- 30 : 2016/01/09(土) 13:24:58 :
- 期待!
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- 31 : 2016/01/09(土) 14:38:08 :
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みずきさん、ありがとうございます!
趣味の延長ですが、暇つぶしでよろしければご覧になって下さいね!
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- 32 : 2016/01/09(土) 15:56:21 :
エレンとアルミンはエレノールの兵士になるべく、東の境の《赤の山脈》の麓にある《シガンシナ》からエレノールの首都《アラド=ルイン》にある訓練兵団にやってきた。
彼ら訓練兵は三年間の訓練課程を経た後、新兵として東方や南方の前線へ赴任し、この国の国防を担うことになるのだ。
人間の盟主として長きにわたりこの地に君臨してきたエレノール王国だったが、大河《アドウィン川》を隔てた東の《砂漠の民》や、南の《アスワド族》、《アドレン湾の海賊》など、エレノールに刃向かう蛮族は散見されていた。
彼らの領内への侵入を阻み、民を守ることが兵士たちの主な任務であった。
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- 33 : 2016/01/09(土) 15:58:45 :
タッタッタッタッタッ
エレン「ぃよーし‼︎何とか時間までに着いたぜ」
アルミン「うん…遅れなくてよかったね」ハアハア
エレン「お、ミカサ、お前先に来てたのか!」
ミカサ「エレン、アルミン、おはよう」
アルミン「お、おはようミカサ」ハアハア
彼女は二人の幼馴染のミカサ・アッカーマン
彼女もまた、3年前に故郷のシガンシナから兵団にやってきた。
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- 34 : 2016/01/09(土) 16:00:17 :
ミカサ「エレン、また寝坊したのね。こんなに時間ぎりぎりまで来ないなんて…心配させないで。」
エレン「ち、ちげーよ!今日はちゃんと起きたんだよ!」
ミカサ「嘘をついてはいけない。」
エレン「うそじゃねーよ‼︎」
ミカサ「エレン。あなたが朝に弱いのは昔から変わらない。ここに来る前は私が無理やりにでも起こしてあげないと、いつまでたってもベットから出られなかったくらいだ。」
エレン「お、おい!でけえ声でいうなよ!みんなに誤解されんだろ!」
ミカサ「誤解?本当のことなのに・・・」クビカシゲ
エレン「ーーーっ、お前なぁ‼︎」イライラ
クスクス アノフタリツキアッテタノ?
エレン「ーーっ///」
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- 35 : 2016/01/09(土) 16:03:13 :
アルミン「ち、違うんだよミカサ!エレン、今日”は”ほんとにちゃんと起きれたよ!けど、朝ごはんの時、僕が昨日図書室で見つけた本のことで、その…少し盛り上がっちゃって!」アセアセ
エレン(ありがとうアルミン…‼︎)グッ!
ミカサ「……それはほんとう?エレン。」
エレン「あっ、あぁ!ホントだよ…!ちゃんと起きたんだよ、今日は…」オドオド
ミカサ「………そう。アルミンがそう言うのならば信じよう。けれどエレン、あなたが朝弱いのも事実。そんなことでは一人前の兵士にはなれない。」
エレン「あーもう、わかったよ!あしたからはちゃんと起きるって!ったく、お前は俺の母さんかよ…」
ミカサ「アルミン。あなたも、本に夢中になるのはわるいことではないけれど、常に時間は意識すべき。特に朝は皆いそがしいので、」
アルミン「そうだねミカサ、気をつけるよ。」ウンウン
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- 36 : 2016/01/09(土) 20:16:25 :
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ーーカツカツカツカツ
キース「貴様ら!静かにしろ!!」ガラガラ
訓練兵長「教官殿に敬礼!!」バッ
訓練兵一同「」バッ
キース「直れ。さて、卒団までいよいよあとひと月となった。前線に出れば、訓練とは違い、敵はお前たちを本気で殺しにくるだろう。」
キース「実戦は訓練とは比べものにならんほど過酷なものになるぞ!戦場で1日でも長く生き伸びるためにも、より一層気を引き締めて訓練に励め!いいな!!」
訓練兵一同「はっ‼︎」バッ
キース「それでは、訓練にかかれ‼︎」
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
ー
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- 37 : 2016/01/09(土) 20:20:41 :
夜 食堂
エレン「ふーー、今日も終わったなー」ドカッ
アルミン「ぼく、もうへとへとだよ〜」グッタリ
ミカサ「今日もアルミンはよく頑張った。」
エレン「確かにな。始めの頃は朝になったら家に帰る、とか言い出すんじゃねえかってヒヤヒヤしてたけど、弱音一つ吐かないで、気がつきゃ3年経ってるんだもんな。ホントよく頑張ったよ、おまえは!」ポン
アルミン「そ、そんなことないよ・・・ぼくはただ、みんなについて行くのに必死で・・・」
ミカサ「脱落していった人も多かったけれど、アルミンはちゃんと踏み止まった。」
ミカサ「あなたをバカにしてた他の訓練兵も、あなたを見る目が日に日に変わっていった。」
アルミン「そ、そうかなぁ?」
エレン「ああ、そうだよ。お前は強くなったんだ!だからもっと自信持っていいんだぜ!」
アルミン「ありがとうエレン…」
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- 38 : 2016/01/09(土) 20:23:34 :
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ミカサ「そういえば二人とも、今度の休暇はどうする予定?」
エレン「あー!そうだった!確か、次で最後の休暇なんだよな…」
アルミン「うん…この休暇が終わって卒団したら新兵は即前線に配置されるから、今度の休暇はいつもより長いらしいんだ。だからぼく、一度家に帰っておじいちゃんに顔を見せたいなぁと思ってたんだけど……」
エレン「そうだなー、俺も父さんと母さんには顔出しとかないといけないかな…」
ミカサ「私も、おじさんとおばさんに会いたい……」
ミカサ「けれど…」
エレン「?…けどなんだよ、ミカサ…」
ミカサ「……最近、お父さんとお母さんが死んだ時のことをよく夢にみるの。二人を失った時の悲しみが、鮮明に思い出される…」
ミカサ「私はおじさんとおばさんには本当に感謝してる。とても愛情深く接してくれたし、私も二人を愛してる。けど、だからこそ私と同じ気持ちを味わってほしくない。」
ミカサ「……そんなことを考えたら、急に二人に会うのが怖くなってしまって…」
ミカサ「あの暖かい我が家に帰ったら、兵士としての覚悟が折れてしまうのではないかと思って…」
エレン「ミカサ、お前…」
アルミン「た、確かに…僕もおじいちゃんにあったら戦場になんか行きたくなくなっちゃうかも…」
アルミン「僕が死んだらおじいちゃんは天涯孤独だ…もう何年も病気で辛い思いをしているのに…」
アルミン「僕が死んだら、おじいちゃんきっと悲しむだろうな…」
ミカサ「…」シュン
アルミン「…」シュン
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- 39 : 2016/01/09(土) 21:20:23 :
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エレン「・・・お、おい、お前ら!なに湿っぽくなってんだよ!これから華々しく卒団するってのに!」ドン!!
アルミン「エレン…」
エレン「そりゃ教官の言う通り、前線に出れば、敵は俺たちが新兵だからって手加減してくれるわけじゃねえ!」
エレン「誰がいつ死んでもおかしくない状況だ……俺だって、父さんや母さんを置いて死んでくのは…つらいさ。」
エレン「けどよ、」
エレン「今度の休暇が、今生の別れになるか、あるいは単なる休暇の思い出のひとつになるか……」
エレン「そいつは俺たちの、これからの働き次第じゃねえのか!」バン!
ミカサ「…‼︎」
エレン「顔も知らない王様のためじゃない!いつも優しく見守ってくれた愛する家族の笑顔を守るために、この3年間、地獄のような訓練に耐えてきたんじゃねえのかよ!」グッ
エレン「途中何度も死にそうになったし、現に死んじまった奴もいる!けどよ…俺たちは生き残った!」
エレン「それなのに、なにを今更ビビッてんだ‼︎ただ帰郷して戻ってくるだけのことじゃねえか‼︎そんなことで折れるほどやわなもんじゃねえだろ!この三年間で学んだことは…‼︎」
ミカサ「エレン…」
エレン「……まあ、そりゃ、お前らの気持ちも分からないわけじゃねえ。結局、その時が来たら俺だって怖くなって逃げ出すかもしれねえからな…けどよ…」
エレン「少なくとも、このまま一度も顔を見せずに死んでいくのは……違うだろ。そんな、親不孝な話があるかよ…」ガタ
アルミン「エレン…」ジワッ
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- 40 : 2016/01/09(土) 21:21:16 :
ミカサ「ええ……そうね、エレン。確かにあなたの言う通り。さっきの言葉は忘れて。私は冷静じゃなかった。」
エレン「ミカサ…」
ミカサ「ごめんなさい。怖いのはみな同じなのに、つい弱音を吐いてしまった。」
エレン「何言ってんだよ。今までだっていつも三人で支えあってきたじゃねえか。これからも一緒だよ…」
ミカサ「そうね。そのとおり…」
アルミン「グシグシ。よーし、折角の休暇なんだ!みんなで王都のお土産いっぱい買って帰ろう!街のみんなきっと喜ぶよ!」
エレン「ああ、そうだなアルミン!いまから楽しみだ!」ハハハハ
ミカサ「ええ、私も楽しみ!」フフ
ミカサ(ーーーこの三年間、私はこの二人の明るさに何度も救われてきた。故郷を離れてからというもの辛いことだらけだったけれど、そんなときはいつも二人が隣で支えてくれた。本当は自分たちも辛いはずなのに。ありがとう…エレン、アルミン…)
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- 41 : 2016/01/09(土) 21:22:41 :
アルミン「ミカサ?大丈夫かい?心なしか顔が赤いような気がするけど…」
ミカサ「ええ、大丈夫よアルミン。けれど、」
ミカサ「今日の私は少し疲れているみたいだ。あしたも訓練があるし、そろそろ眠らなければ。それじゃ二人とも、おやすみなさい。」ガタッ
アルミン「お、おやすみなさい、ミカサ!」
エレン「おう、おやすみー。っておい、ホントに大丈夫かよあいつ…?」
アルミン「さあ…?」キョトン
ミカサ(……私は、二人を死なせない。何があっても。例え私の命に代えても、二人を、二人の笑顔を守る…必ず…)
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- 42 : 2016/01/10(日) 15:36:34 :
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はい、とりあえず第1話はこれで終わりです!
今の所シガンシナの三人とフリーダしか出てきませんが、(あとロッドレイス)これから色々出演してもらう予定です。
それから、ロードオブザリングやホビットの映画を知らないという方もいると思うのですが、作者のイメージするエルフやオークなどのクリーチャー、並びに作品の世界観は基本的にこれらに準拠していますので、そういった意味では、作品全体の印象がみなさんの想像するものにそぐわないように感じられるかもしれません……。
ただ!そういった方々に、この機会にトールキン作品の魅力を知っていただけるとそれだけでとても嬉しいです!(トールキンの作品は僕の物語の数億倍の面白さがありますから!!)
最後になりましたが、ここまでご覧下さった皆さんに感謝!
ということで、第2話以降も頑張りますので、どうぞよろしくお願いします(*^^*)
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《銀のエルフと冥府の石》 シリーズ
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