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密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの死闘』
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- 1 : 2015/10/13(火) 12:19:16 :
- 密めき隠れる恋の翼たち~『エルヴィン・スミス暗殺計画』
(http://www.ssnote.net/archives/2247)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスとの1週間』
(http://www.ssnote.net/archives/4960)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの苦悩』
(http://www.ssnote.net/archives/6022)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの審判』
(http://www.ssnote.net/archives/7972)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの否応』
(http://www.ssnote.net/archives/10210)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの溜飲』
(http://www.ssnote.net/archives/11948)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの流転』
(http://www.ssnote.net/archives/14678)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの渇望』
(http://www.ssnote.net/archives/16657)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの血涙』
(http://www.ssnote.net/archives/18334)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの証明』
(http://www.ssnote.net/archives/19889)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの慕情』
(http://www.ssnote.net/archives/21842)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの天命』
(http://www.ssnote.net/archives/23673)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの微睡』
(http://www.ssnote.net/archives/25857)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの再陣』
(http://www.ssnote.net/archives/27154)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの謀反』
(http://www.ssnote.net/archives/29066)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの杞憂』
(http://www.ssnote.net/archives/30692)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの勇敢』
(http://www.ssnote.net/archives/31646)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの挽回』
(http://www.ssnote.net/archives/32962)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの慈愛』
(http://www.ssnote.net/archives/34179)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの青天』
(http://www.ssnote.net/archives/35208)
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- 2 : 2015/10/13(火) 12:20:41 :
- 密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの夢想』
(http://www.ssnote.net/archives/36277)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの愛念』
(http://www.ssnote.net/archives/37309)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの咆哮』
(http://www.ssnote.net/archives/38556)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの大望』
(http://www.ssnote.net/archives/39459)
★巨人に右腕を喰われたエルヴィンと最愛のミケを失うが、エルヴィンに仕えることになった隠密のイブキとの新たなる関係の続編。
『進撃の巨人』の最新話に私の想像(妄想)を書き足したオリジナルストーリー(短編)です。
オリジナル・キャラクター
*イブキ
かつてイヴと名乗りエルヴィンの命を狙っていた隠密の調査兵 。
生前のミケ・ザカリアスと深く愛し合っていた。
ミカサ・アッカーマンの年の近い叔母。
※SSnoteのルールに則り感想等を書いていただくグループコミュニティを作りました。
お手数ですが、コメントがございましたら、こちらまで
お願いします⇒http://www.ssnote.net/groups/542/archives/2
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- 3 : 2015/10/13(火) 12:22:53 :
- 隠密の調査兵として調査兵団団長、エルヴィン・スミスの傍らから片時も離れないイブキはその背中に感じる凍てつくような視線の正体を探そうとした。背後に広がるシンガンシナの住宅街を肩越しに見やっても何も見えない。しかしながら、何かとてつもない存在が蠢いている、と感じて鋭い眼光のまま睨みつけていた。
エルヴィンは信頼に足り、兵士として付き合いの長い精鋭と本作戦を遂行しながらも、イブキが傍らにいるだけで、どことなく安堵感を感じ、死と隣り合わせの作戦でも前進できる、と無意識に感じていた。
それだけでなく、イブキの隠密としての勘の鋭さを信じ、まだ新兵であるアルミン・アルレルトの洞察力を通して彼の聡さを頼っていた。
凍てついていたはずのイブキの背中は少しずつ温か味が帯びていく。和むような空気の塊がイブキの背中を包み込むようだった。イブキはその存在に気づいて、胸に手を添える。手のひらには脈の速さを押し付けつけるように鼓動の激しさが伝わってきた。
「ミケ……」
イブキはその名を小さくつぶやく。壁上で吹いている風の音でか細い声はエルヴィンには届かない。
それでもイブキは自分を愛し、今ではその心で生き続けるミケ・ザカリアスの名を口に出さずにはいられなかった。
(イブキ、俺もついている、見守っている……)
イブキの胸に湧き上がるような温かな声を感じて、添えていた手のひらをぎゅっと握った。拳には相変わらず鼓動の激しい心臓の音が響いている。
「……お願い、ミケ」
その手のひらさえ、温かさが帯びていった。ミケが見守っている実感をすれば、冷静さを取り戻し、調査兵としてその場に立つ意味を改めて自覚する。
人類の勝利のため――。エルヴィンが多くの兵士を率いて敵地に乗り込んできた理由を思い返し、イブキは頬を引き締める。大きく深呼吸をしながら、エルヴィンが精鋭と話す最中、特に壁下に何か手がかりがないかと、眼光鋭く辺りを見渡していた。しかしながら、多くの視線を感じることに変わりはない。正体不明で、割れたガラスの破片の頂の如く、鋭い視線を遠くから感じるほど、エルヴィンから離れられない。その視線が発する場所を特定できないからだ。
かつて暗殺者のイヴとして、闇の世界で死と隣り合わせで生きてきた時期もあったのに、イブキはそれとはまた比べ物にならない恐怖に戸惑いを隠せなかった。しかし、心のうちを見せないように努め、またミケに見守られていると実感するほど、心は強くなると感じていた。
シガンシナの緩やかな丘陵の彼方から顔を見せる太陽は東の空からその姿を半分以上現し、あちらこちらに新鮮なプラチナの光の矢を射している。辺りが暖かな空気に覆われても、忙しく任務を遂行する兵士達に緊張感が漂い、立体機動で翔るときに頬を撫でる真新しい空気に浸ってはいられなかった。
5年前に巨人の襲来で破壊され、放置され続けた家々を注意深く飛び回り、敵が潜んでいないか隈なく兵士達は調べている。かつては温かな家庭を築いていたであろう、その家には家族の面影すら残っておらず、古ぼけて朽ち果て饐えた廃墟がシガンシナには連なっていた。
そのとき、エレン・イェーガーがその巨人の硬化能力を使い、シンガンシナの壊されたままの外門を塞いだ。成功を意味する信炎弾の煙が壁の外側と内側から上った。壁上では成功を見届けた兵士達の歓声が一瞬だけ上がっても、今度はフードで顔を隠しながら敵を探し始めた。
エレンたちが作戦を遂行する最中、敵がこれといった反応を示さない成り行きをエルヴィンは冷静に受け入れている。
「これで、終わりじゃないよね……」
外門方面から見えた信炎弾の煙が風に流され、シガンシナの空になじんでいく。イブキは無反応で、見えない敵に思わず素っ気無い独り言を投げた。エルヴィンは冷静にその煙を眺めていたが、立体起動装置のガスの音が近づいてくる方向に視線を下げた。壁上に降り立った直後に異変を感じていたアルミンの報告を待っていた。
「調べてきました! 地面には野営用具が一式散乱しています――」
エルヴィンの目前に立つアルミンの身体は兵士として小さい身体が際立つようだった。額に汗を流し、鉄製のポットやカップを見つけ、それが短時間で冷え切っていた様子を上官であるエルヴィンに報告した。アルミンが見てきたものを熱心に報告する姿を眺めるエルヴィンの眼差しは厳しくもあり、優しさも交差するとイブキはどことなく感じる。その視線を再びシンガンシナの丘陵に投げた。
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- 4 : 2015/10/13(火) 12:24:58 :
- 不穏で得体の知れない多くの視線が増えていき、更にそれらがにいっせいに壁上に向かっている気がする。次第にイブキの膝が震える感覚が襲っても、エルヴィンがアルミンの報告を聞きながら手短に的確な敵の状況を分析する口ぶりに何も言えず、その訝しい視線の正体を探ることだけに集中していた。
壁上に立つ兵士達に不穏な視線を向ける正体の一人にあの『猿の中身』も含まれた。壁上や壁下で動く兵士の姿が小さくても、敵であることに間違いないと、彼は当たり前に確信する。
「あのいい女も向こうにいるだろうが、殺すには惜しいなぁ。まぁ、俺たちの敵だし、せめてあの身体を弄んでから、ってのも……この場じゃムリか――」
男は指先で鼻下を掻いて、数日前、偶然に見かけたイブキに対して皮肉っぽくつぶやいた。続いて男はその手を目の前の大岩に宛がう。厭らしく頬を上げ、改めて少し前まで自分が根城としていた壁上を眺めていた。
イブキはそのとき、男が発した毒々しい視線を感じたようで、治まっていたはずの胸の鼓動を激しくしていた。手のひらを胸に宛がい、大きく深呼吸をしては気持ちを引き締める。
「この震えは何なの……」
エルヴィンは近くに潜むであろう敵の捜索をアルミンに命ずる。またアルミンが指揮を執って捜索が続行されると決まり、多くの先輩兵士達に囲まれ、小柄な新兵は責任感から戸惑いの色を隠せないが、的確な指示を与える。
イブキはアルミンの顔を見ながら、震えているのは自分だけではないと感じつつ、それでも別の恐怖に襲われていると感じている。
アルミンの指揮に応じて、壁下に飛び立つ兵士たちを見送り、精鋭と話しながらエルヴィンはようやくイブキの異変に気づく。
「どうした、イブキ…震えているのか?」
「えっ、うん……」
三重に連なる壁でももっとも外側の壁上に初めて立ち、しかもたった一度だけしか挑めない本作戦に震えるのは仕方ないと感じつつ、強張るイブキの唇を眺め、抱きしめ落ち着かせたい気持ちをエルヴィンは拭い去る。左腕に備える装置を覗き見させ、エルヴィンは傍らの精鋭と本作戦について話し続けた。
精鋭兵士は二人の関係をもちろん理解しているが、あえて無関心を装った。
「…まぁ、何も隠し事があるのは彼らだけではないからな…」
エルヴィンはイブキに新たなる武器を見せながら、自分の身体が頼りにならなくても、これがあると、見せ付けているようだった。短期戦の活路であり、その手段の一つをイブキに知らせながら、少しでも不安を取り除かせる彼なりの配慮だった。
ちょうどそのとき、壁下から音響弾の特徴である耳を劈くような金属音が響いてくる。少しでも異変があれば響き渡る合図ゆえ、兵士たちは瞬く間にエルヴィンの傍に駆け寄った。何かあれば、団長への報告が最優先だと、兵士達の行動は身体に染み付いていた。
「――アルレルト、見つけたのか!?」
「敵はどこだ!?」
兵士達は立体起動を操作させ、エルヴィンの周辺に集まっている。アルミンの顔を見ながら、彼が見つけたであろう、敵について問い詰めた。
「まだです!! 全員で壁を調べてください――」
「壁はもう調べたといっただろ!!」
「壁の中です!!」
アルミンが自信を持って投げうる発言に兵士達は唖然とし一瞬だけ言葉を失った。現実的ではないアルミンが言うことに対し、ベテラン兵士達は彼に詰め寄って口調を荒げた。
「壁の中!?」
「はい!! きっと人が長い間、入っていられる空間がどこかにあるはずです」
「なぜ、それがわかる!?」
詰め寄られながらもアルミンは先輩兵士たちが注ぐ強い眼差しを忙しく眺めていた。気圧されそうになっても、アルミンは自分の意見を通す。
「……勘です」
根拠のなさそうな言い分に特にアルミンの父親でもおかしくないくらいの年齢のベテラン兵士は怒りだし、息子のような兵士に噛み付いた。アルミンの両肩を掴み語気を荒げて詰め寄った。
「お前、今がどいうときだかわかっているのか!? そんなことにかける時間は――」
「し、しかし……敵は!!
いつだってありえない巨人の力を使って、僕達を追い込んできました! 誰でも思いつく常識の範疇に留まっていては……到底、敵を上回ることはできないのです!!」
ベテラン兵士に半ば気圧されながらも自分の意見を通すアルミンをエルヴィンは傍らで見ていた。彼の考えに親近感を覚え、改めてアルミンの見解が調査兵団の武器であると確信した途端、エルヴィンのその左手には信炎弾が握られていた。
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- 5 : 2015/10/13(火) 12:26:49 :
- 緑の炎弾が空高く上る。アルミンに反感を持つ兵士達が再び詰め寄る姿をエルヴィンは押し留めた。
涼しい顔を兵士達に向けたと思われたが、エルヴィンの目の奥に強さが宿る。
移動中に上空で揺れる緑の煙を見つけたハンジ・ゾエ分隊長は作戦中止の合図と判断し、新たなる命令が出るまで壁上で兵士たちの動きを散らばせ待機させた。
煙が揺らめいても、エルヴィンは左手を上げたまま、兵士達を冷静でも深みのある口調を投げかけた。
「…時に厳格に、時に柔軟に。兵士の原理原則に則り最善を尽くせ。指揮系統を遵守せよ!
我々は勝利するためにここにきたのだ」
直にアルミンに従え、とエルヴィンが命ずることはなくても、皆は上官の意図に気づく。最初にそれを汲み取ったのは、やはりアルミンだった。
「再び二手に分かれて、壁面の調査を!! 扉の上部から入念に……捜索開始!!」
幼くても険しい眼差しに命じられ、最もアルミンに詰め寄っていたベテラン兵士は苦虫を噛むようだった。しかしながら、尊敬するエルヴィンの命令と同等であると咄嗟に判断し、アルミンに従って壁下に飛び出していった。
立体起動装置のアンカーを壁面に突き刺して、兵士達はブレードを壁に打ち付けて、入念に敵の居場所を探し出す。カンカン、という鋼が石に当たる音が鳴り響き、壁面だけでなく、壁上まで届いていた。
その音に耳を澄ましながら、イブキはエルヴィンの傍らに立って耳元で囁いた。
「あなたはやはり、堅物だけではないのね……アルミンの聡明さを理解している」
イブキの声をくすぐったく感じ、その一言が心を和ませ鼻で笑っても、直ちに作戦の指揮を執る最高責任者として顔を引き締めた。
兵士達が壁の真ん中あたりに移動したときだった。あのベテラン兵士が音響弾を空に向かって打ち上げた。
「――ここだ!! ここに空洞があるぞ!!」
その叫び声を耳にし、アルミンには更なる緊張感が走る。敵が壁の中に潜んでいる可能性を当てた自分の勘が正しかった、というだけでなく敵が見つかったという合図も兼ねているからだ。
音響弾を懐にしまった途端、壁面上で甲高い音を立てていた大きな欠片が突如、開かれた。あっ、と声を上げるだけで、兵士は突然、身体をブレードで貫かれ、壁下に叩き落された。最初の犠牲者を目の当たりにし、エルヴィンは大きく目を見開いた。悔しさで奥歯をかみ締めたのも束の間、血まみれのブレードを手にして壁の中から姿を現したのはライナー・ブラウンだった。
「ライナー!!」
アルミンは久方ぶりに同期のその名を叫び、ブレードを向けようとしても、互いが訓練兵時代に切磋琢磨した場面が突として蘇った。壁下へ落ちてゆく兵士を眺める暇もなく、ライナーはアルミンの姿に戸惑うも、その隙を見逃さなかったのは兵士長のリヴァイだった――。
リヴァイは壁上から立体起動を操作し、誰よりも早くライナーの首を目掛けてブレードを突き刺した。
彼の首筋から半分はブレードが切り込まれる。アルミンは瞬く間の出来事を目前にし、その顔から生気を失うようでも、エルヴィンは冷静に眺めていた。命を落としたであろう部下を眺めていたときよりも冷淡で、血を流すライナーを見ていた。
リヴァイに加勢をしようとするエレンを身体を張って阻止したのはミカサ・アッカーマンである。リヴァイは更に左手のブレードを用いて今度はライナーの心臓を目掛け突き刺した。体の中でも、もっとも大事な部分を攻撃しても、リヴァイは手ごたえがないと感じる。睨みつけるような彼の眼差しでそれに気づいていた。
「どうして……?」
イブキも暗殺者として多くの命を死に追いやった経験上、首と胸に突き刺さったブレードを眺めて、即死であろうと踏んでもライナーから死の気配を感じなかった。固唾を呑んで唖然と眺めるだけだった。
人類最強と呼ばれようと、ライナーから命を奪えなかったような感触から腹いせのように腹部に蹴りを入れ、大地に突き落した。
「クソッ!!」
恨み節をぶつける珍しいリヴァイの姿を見やり、アルミンは兵長、と声を掛けずにはいられなかった。
仰向けに倒れ、首にブレードを突き刺したままのライナーを二人は眺めていた。
「これも『巨人の力』か!? あと一歩……命を絶てなかった」
大地を背を向けていたライナーの身体が軽く浮き上がり、その目や口から光を放った途端、さらに爆音が轟いた。上空に向かって蒸気が立ちこめていく。エレンとミカサは憎しみを込めて、その姿を見つめていた。ライナーが鎧の巨人に変貌を遂げた。建物として朽ち果てていたシンガンシナの家々は再び鎧の巨人に蹂躙されていくようだった。
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- 6 : 2015/10/13(火) 12:28:04 :
- イブキはまた新たな巨人を目の当たりにして、大きく目を見開いて眺めるもどうにか冷静さを保っている。エルヴィンが指揮を執って左手を上げる傍らで、突如、背中にゾクっと棘が突き刺さる感覚が駆け巡った。
「エルヴィン!!」
その感覚を感じたと同時に彼の顔を見上げて、名を思わず叫ぶ。エルヴィンと目が合った瞬間、互いの背後に広がる丘陵付近から、横一直線に爆音を上げる地響きが壁上の突端まで伝わってきた。
冷酷な指揮官であるはずなのに、苦い何かが胸に広がるような滅多にない感覚と伴に、エルヴィンはその方角に視線を投げた。そこには獣の巨人を中心とした多くの巨人たちが変貌を遂げた直後だった。
イブキは多くの視線の正体にようやく気づき、戸惑いと恐怖の色を隠せずに眺めていた。特に中心に立つ『猿』を睨みつけた。
加えてコニー・スプリンガーが故郷の村を壊滅に追い込んだであろう、『さる』について悔しそうに話してくれたことを思い返し、乱れる呼吸を整えた。
「あいつが…ミケを……」
イブキはミケを死に追いやった『猿』を睨んで怒気を隠せずにいた。恐怖よりも憎悪が入り乱れる色がイブキの目に浮かんだとき、猿は見繕っていた大岩を手に取って、たやすく壁に目掛け投げ込んできた。
投石を目撃し、イブキは咄嗟にエルヴィンの盾になろうした。その飛んでくる大岩の方角を眺めエルヴィンはイブキの肩に軽く触れる。指揮官として冷静さを保っているつもりでも、エルヴィンの指先の冷たさがイブキにも伝わった。敵の不意を付いた逆襲と、迫り来る脅威をエルヴィンなりに緊張しているのだとイブキも感じていた。壁上の兵士達を狙っていると予想された投石の距離は伸びず、壁下に落ちていく。
イブキを始め多くの兵士達は的が外れたと思うも、エルヴィンだけは違っていた。
「外したか?」
「いいや…いいコントロールだ」
精鋭の独り言にエルヴィンは嫌味を込めて褒め称えた。壁下では土煙が上がり、乾いた空気と重なり合い兵士達に動揺を与えた。
「ヤツは扉を塞いだ。馬が通れない程度にな……。まずは馬を狙い、包囲する。我々の退路を断ち、ここで全滅するために――」
瞬時に敵の意図を読むエルヴィンにイブキは改めて驚かされた。兵士としての経験か、本来の勘の鋭さなのか、この混乱の最中、それはどうでもよくなる。猿が悪知恵を働かせ、兵士の働きを防ぐことに変わりはない。巨人と人類の死闘で落とすであろう覚悟の灯を胸に輝かすエルヴィンの眼差しはどこか冷めていた。
猿を眺めながら、咄嗟にエルヴィンは傍らのイブキの手のひらを左手で強く握り、振り払った。その手は冷ややかで、とうに死を受け入れている気がしてならない。イブキはエルヴィンと過ごした日々が脳裏に浮かび、自分の中にある女の気持ちが一瞬だけ揺らぎを与える。目を閉じて自分が死ぬ意味をその胸で改めて確かめる。
(ミケ、この戦いを潜り抜ければ、あなたに会えるかもしえない……)
(……俺はまだ会いたくないな)
イブキは胸に広がるミケの優しさを感じ、目を見開いていつもの妖しげな美しい笑み湛えていた。
鋼の巨人として立ち上がるライナーを憎しみ込めて睨むエレンの目の奥には父親譲りの強さが宿っていた。
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- 7 : 2015/10/13(火) 12:28:24 :
- ★あとがき★
みなさま、いつもありがとうございます。
今回の原作もまたすごい展開でしたね。猿っていったい何者なんでしょうかね…。
投石する姿に意思を持って行動する知的の巨人と確定したので、また脅威が増えました。
(石と意思をかけたわけではありません)
エルヴィンが巨人との全面戦争を仕掛けた気がしないでもなく、いわゆる死亡フラグが立って
しまい、誰が生き残るのか?ってのが今後の展開なのでしょうか。。
いつもエルヴィンの傍らで健気に彼を支えるイブキだけど、初めての脅威に震えずには
いられない描写を増やしました。他の兵士だって同じ事だろうけど、それをあえてイブキに
代弁してもらった、感じです。ミケも見守っている。だけど、ミケは会いたいようで、会いたくない。
会ってしまえば、イブキの死を意味する。だから、ミケも見守ることに徹することを願う、
ということを表現してみました。今後はどうなるのか?エルヴィン大好きな私は生き残って欲しいです。
また来月もよろしくお願いいたします!
お手数ですが、コメントがございましたら、こちらまでお願いいたします!
⇒http://www.ssnote.net/groups/542/archives/2
★Special thanks to 泪飴ちゃん(•ㅂ•)/♡love*
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