この作品は執筆を終了しています。
金色の悪魔 ~Another side~
-
- 1 : 2015/06/26(金) 18:41:15 :
- 40作目です。
『金色の悪魔』(http://www.ssnote.net/archives/36576)
の別視点でのお話。
誤字や脱字などあればご指摘お願いします。
-
- 4 : 2015/06/26(金) 19:33:19 :
雨が降る夜。
街路に昼間のような賑わいはない。
そこにあるのは傘を差した僕と、それと、
赤に染まったナイフを持つ少女だった。
“それ”を見ても僕は何も思わなかった。
-怖い、気持ち悪い、可哀想-
普通の人が持つ感情はない。
なぜなら僕は、人間性を捨てたから。
-
- 7 : 2015/06/26(金) 22:24:40 :
だけど、ナイフを持った彼女にはひどく魅かれた。
-美しい、欲しい、手に入れたい-
金色の髪と赤いナイフ。
まるで、金色の悪魔だと思った。
-
- 8 : 2015/06/26(金) 22:38:06 :
「ねぇ、アニ」
「アルミン……?」
「うちにおいでよ」
-
- 11 : 2015/06/26(金) 23:00:10 :
2年前。
僕は賭けに勝った……とは言い難い状況だった。
街にかなりの被害を出しながらも、女型の巨人から情報が引き出せなかった調査兵団は解体された。
調査兵団がいなくなった代わりに、ウォール教が様々な情報を開示し始めた。
そのおかげで壁の謎は明らかになった。
相変わらず、巨人の事は分からないことだらけらしいけど。
-
- 12 : 2015/06/26(金) 23:40:00 :
調査兵団員は駐屯兵団に入るか、ただの一般人になるかの選択を迫られた。
僕は一般人になった。
いろんな人に引き止められたが、『兵団』というだけで思い出してしまう。
幼馴染のエレンを、処刑という名目で殺したこと。
だから一般人になった。
ウォールローゼの西部に位置するクロルバ区に一軒家を支給され、何事もなく暮らしていた。
-
- 13 : 2015/06/26(金) 23:57:03 :
ある日突然、彼女は目を覚まし逃げ出したそうだ。
全兵団を使って必死の捜索が行われたようだが、見つからなかった。
しかし結晶から出たということは巨人化能力を失うことだ、とウォール教の司祭は教えてくれた。
つまり壁外に出ていても生きられない。
彼女の捜索は壁内だけにとどまり、最近はほとんど話題にすら上がらなくなった。
-
- 14 : 2015/06/27(土) 01:02:48 :
「いただきます」
「どうぞ」
「……」
「どうかな?」
「まあまあ」
僕の家で暮らし始めて1ヶ月が経つ。
彼女は相変わらず無口で、無愛想で、そして優しかった。
逃げ出してからどうしていたのかと問うと、人がいなくなったウォールマリアで空いた家を転々としていたという。
ローゼで強盗や殺人をして過ごすこともあったらしい。
街で事件が多発していたのはそういうことか、と納得した。
-
- 15 : 2015/06/27(土) 02:41:19 :
「ありがとう」
「別に美味しいとは言ってないけど」
「ううん。あの時、あそこで、殺してくれてありがとう」
「っ……何言ってんの」
「だって、あれがあったから僕はアニに会えた」
きっと、ただ街で見かけるだけだったら僕はすぐに憲兵へ通報していただろう。
彼女は幼馴染を殺すきっかけであり、人類の敵であったから。
-
- 18 : 2015/06/27(土) 22:55:47 :
-
「……私さ、ここを出ようと思う」
「えっ」
「もう壁内にいるのは危険だから」
「そんな、まって」
「アルミン……あんたは私の、良い人だったよ」
「話してよアニ! 僕達はまだ話し合うことができる!!」
僕は彼女の腕を掴んだ。
彼女を離したくない
ただ一心で。
「……あんたさ、私がやったこと知ってるでしょ。エレンのことだって……なのに……」
「僕は、アニのことが好きなんだ!」
-
- 19 : 2015/06/28(日) 19:30:13 :
「訓練兵の頃から、ずっと、ずっと追いかけてきた」
咄嗟に出た言い訳だった。
「アニ……!」
「……そう」
けれど、それは彼女を引き止めるのに十分すぎた。
今度こそ、賭けにかったのだ。
-
- 20 : 2015/06/28(日) 21:11:29 :
彼女は言うなれば芸術品だ。
美しい瞳。
綺麗な髪。
訓練兵時代と変わらない容姿。
この“作品”を僕は『金色の悪魔』と名付けた。
-
- 23 : 2015/06/29(月) 21:36:31 :
-
そうして1年が経った。
最近は一緒にメイクを勉強したかな。
雰囲気を変えることで、多くはないけど外に出ることもできるようになった。
「アニ、これ買って帰ろうか」
「……ケーキ?」
「うん」
「高いよ?」
「でも、1年記念だから」
「ばかじゃないの…………来年はやらないからね」
「はは、わかったよ」
まさか了承してくれるなんて思わなかったけど、嬉しい。
いつもより軽い足取りで家路についた。
-
- 24 : 2015/06/29(月) 22:39:01 :
ロウソクを1本だけ立てて灯りを消す。
「ふー、していいよ」
「……」
「アニ?」
「私はたくさんの人を殺した」
突然、彼女は宙を見て話し始めた。
-
- 25 : 2015/06/30(火) 16:05:29 :
「嫌だったけど、やらなくちゃいけなかった」
「次第に、殺す罪悪感を忘れた」
「アニ、大丈夫? 突然……アニらしくないよ」
彼女は顔をあげて僕のことを見た。
おかしい。
これは、彼女じゃない。
この目は違う。
あのときの、アニじゃない。
-
- 26 : 2015/06/30(火) 22:41:25 :
赤いナイフを手に持ち、無表情で人を殺していた、アニじゃない。
「アルミン……あなたが、好き」
違う。
僕は君の、何にも突き動かされない、闇を抱えたその瞳が好きだった。
「私は許されないことをした。けど、少しずつでも、償っていきたいの」
美しくない。
「アルミン……ダメ、かな」
僕がそうさせてしまった?
必死になって捕まえた結晶は、
運命的な出会いをして捕まえた強盗殺人犯は、
どこにいってしまったの?
-
- 27 : 2015/06/30(火) 23:31:10 :
「アニは、変わったね」
僕は涙を流しながら、どうにか笑った。
もう、僕が捕まえた女型の巨人じゃない。
たくさんの罪を犯した、アニ・レオンハートでもない。
僕が望んだ、過去の美しい彼女はもういない。
これじゃあ、まるで……
ただの、普通の女の子。
-金色の悪魔はどっち?-
-
- 28 : 2015/07/01(水) 17:37:19 :
- 凄い・・・!
-
- 29 : 2015/07/01(水) 21:40:09 :
- >>28
りお
読んでくれてありがとうー!
そういってもらえると嬉しいよw
-
- 30 : 2015/07/02(木) 15:41:41 :
- ええーっ
そういうことだったんですか( ゚д゚)
予想外の展開やよく考えられた物語性にいつも感服させられます。
-
- 31 : 2015/07/03(金) 20:26:18 :
- >>30
佐美未散さん
そういうことでした・・・!
ありがとうございます!
これからよろしくお願いします。
- 著者情報
- この作品はシリーズ作品です
-
金色の悪魔 シリーズ
- 「進撃の巨人」カテゴリの人気記事
- 「進撃の巨人」カテゴリの最新記事
- 「進撃の巨人」SSの交流広場
- 進撃の巨人 交流広場