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金色の悪魔

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  1. 1 : : 2015/06/24(水) 15:31:52
    39作目です。

    金色の悪魔と人間のお話。

    誤字や脱字などあればご指摘お願いします。
  2. 2 : : 2015/06/24(水) 16:28:07



    雨が降る夜。

    街路に昼間のような賑わいはない。


    そこにあるのは真っ赤な死体とナイフを持った自分だけ。


    私は何も思わなかった。


    なぜなら私は、化け物だから。


  3. 5 : : 2015/06/24(水) 18:42:05



    「ねぇ、アニ」


    誰もいないと思っていた。


    「アルミン……?」


    あのときと一緒だ。


    「うちにおいでよ」


    彼はまた、賭けを誘う。



  4. 6 : : 2015/06/24(水) 19:02:41

    2年前。

    私は賭けに負けた。

    情報を、お父さんを、そして自分を守るために結晶化した。

  5. 7 : : 2015/06/24(水) 19:36:33

    ある日突然、私は目を覚ました。

    警備は薄いどころではなく皆無で、逃げ出すのはとても簡単だった。

    その後、全兵団を使って捜索が行われたようだけど、壁外に逃げて乗り切った。

    それでも追いかけてくるかと思ったけど、壁外にくる者は皆無だった。

    どうやら調査兵団は解体されたらしい。

  6. 8 : : 2015/06/24(水) 21:45:09

    結晶化を解いた時点で私の巨人化能力は失われている。

    けれど、壁外で巨人に捕食対象として見なされることはなかった。

    完全な人間にはなれないということだ。

  7. 11 : : 2015/06/24(水) 22:00:25

    アルミンの家で暮らし始めて1ヶ月が経つ。

    彼は相変わらず気遣いができるし、物腰も柔らかだし、優しかった。

    家事も身の回りのことも全てやってくれる。


    「そういえばさ、今までどうやって生活してたの?」

    「……ウォールマリアにある空き家から生活に必要なものを拝借したり、ローゼで強盗とかしてた」

    「どうりで事件が多発してるわけだ」


    彼はただ笑った。

    昔なら、きっと大きな目をさらに広げて驚いただろう。

  8. 12 : : 2015/06/24(水) 22:49:29

    「いただきます」

    「どうぞ」

    「……」

    「どうかな?」

    「まあまあ」


    最初は私を憲兵に突き出すんじゃないかとか、拷問にかけるんじゃないかとか、色々想像した。

    でも、なんとなくあの頃のアルミンじゃないような気がして、もう一度信じようと思った。

    あと彼の作るご飯が美味しい。

  9. 13 : : 2015/06/24(水) 22:54:22

    「ありがとう」

    「別に美味しいとは言ってないけど」

    「ううん。あの時、あそこで、殺してくれてありがとう」


    ただ、頭がおかしくなっていた。

  10. 14 : : 2015/06/24(水) 23:13:48

    「っ……何言ってんの」

    「だって、あれがあったから僕はアニに会えた」


    彼と過ごしてわかったことがある。


    ひとつ、彼はもう兵士ではなく一般市民としてこのウォールローゼにいるということ。

    ふたつ、エレンは私が結晶化したあと、処刑されたということ。


    エレンの処刑は私の結晶化が引き金だ。

    つまり、私は彼にとって人類の敵であり、幼馴染を殺すきっかけだったということだ。

  11. 15 : : 2015/06/25(木) 00:19:05

    「……私さ、ここを出ようと思う」

    「えっ」


    だからここを出ようと思った。

    相変わらず優しい彼を傷つけないように。


    「もう壁内にいるのは危険だから」

    「そんな、まって」


    適当な理由をつけて。


    「アルミン……あんたは私の、良い人だったよ」


    いつかと似たような言葉をかけて、去ろうとした。

  12. 18 : : 2015/06/25(木) 16:21:17

    「話してよアニ! 僕達はまだ話し合うことができる!!」

    「……あんたさ、私がやったこと知ってるでしょ。エレンのことだって……なのに……」



    「僕は、アニのことが好きなんだ!」



    「訓練兵の頃から、ずっと、ずっと追いかけてきた」
  13. 19 : : 2015/06/25(木) 16:40:48

    なのに彼は、引き止める。

    昔からのずるさも変わってない。


    「アニ……!」

    「……そう」


    結局、また賭けに負けた。

  14. 22 : : 2015/06/25(木) 21:00:19

    彼はよく私のことを『金色の悪魔』だと称した。

    君の魅力が僕を離してくれない、だとか変なことを言っていた。

    悪魔の末裔と教えられた人に悪魔だと呼ばれるのは、少し変な感じがする。

  15. 23 : : 2015/06/25(木) 21:09:36

    1年が経った。

    一緒にメイクを勉強した。

    雰囲気を変えることで、多くはないが外に出ることもできるようになった。


    「アニ、これ買って帰ろうか」

    「……ケーキ?」

    「うん」

    「高いよ?」

    「でも、1年記念だから」

    「ばかじゃないの…………来年はやらないからね」

    「はは、わかったよ」


    普段、あまり要求をしない彼にしては珍しい。

    馬鹿らしいと思いながらも了承した。

    なんとなく、普通の恋人のように思える行為だったから。
  16. 26 : : 2015/06/25(木) 21:28:18

    ロウソクを1本だけ立て、部屋の灯りを消す。


    「ふー、していいよ」

    「……」

    「アニ?」


    私は、想いを伝えることにした。

  17. 29 : : 2015/06/25(木) 22:11:45

    「私はたくさんの人を殺した」


    「嫌だったけど、やらなくちゃいけなかった」


    「次第に、殺す罪悪感を忘れた」


    これは紛れもない、本音だ。


    「アニ、大丈夫? 突然……アニらしくないよ」


    「私は許されないことをした。けど、少しずつでも、償っていきたいの」



    「アルミン……あなたが、好き」



  18. 30 : : 2015/06/25(木) 22:25:05

    彼はずっと黙っている。


    「……ダメ、かな」


    私を普通の女の子にしてくれた彼は

    私を受け入れてくれるだろうか。

  19. 31 : : 2015/06/25(木) 22:42:10



    「アニは、変わったね」



    その瞬間から、人類の敵――女型の巨人――ではなくなった。

    罪を犯したアニ・レオンハートでもない。

    過去の私は、もういない。


    ただの、普通の女の子。



    -悪魔は涙を流して笑った-
  20. 32 : : 2015/06/26(金) 10:30:49
    アニ、よかった…!
    淡々と進みながらもぐっと引き込まれる作品でした(^O^)
  21. 33 : : 2015/06/26(金) 17:41:47
    >>32
    佐美未散さん

    ありがとうございます。
    少々淡白すぎたかと思いましたが、それでもそう言っていただけたのならなによりです!
  22. 34 : : 2015/07/25(土) 19:54:41
    泣きそうになった...
  23. 35 : : 2015/07/30(木) 22:49:46
    >>34
    まいんさん

    わわ、それはそれは・・・!
    恐縮です!

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著者情報
Liebeschon1104

咲*

@Liebeschon1104

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金色の悪魔 シリーズ

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