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星合いの夜に、君と。

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  1. 1 : : 2015/06/24(水) 20:43:39



    キーンコーンカーンコーン

    「……はぁ。やーっと終わった……」

    スピーカーから流れるチャイムの音に期末テストという名の地獄の終わりを告げられ、俺は大きく息を吐いた。

    同時に、教室中から喜怒哀楽様々な悲鳴が発せられる。様々な、とは言うものの、実際には『哀』の割合がかなり高いように思われるが。


    「あ゛〜!!達彦ぉぉぉ!!!死んだー!!俺もう死んだぁぁぁぁぁ!!!!!」


    俺の机に倒れこみながらそう叫んだのは、俺の友人である萩 康介(はぎ こうすけ)だった。

    黒髪に眼鏡、オマケに少し痩せ型の体型と『ザ・優等生』のような見た目の男なのだが、実際はかなり頭が良くない。いや、IQ的な頭はむしろ良い方なのだが、いかんせん記憶力ゲームが苦手過ぎる。


    「大丈夫だろ、前もそんな事言いながら平気だったじゃん」

    「あの時はあの時!今回は出来た気がしなさ過ぎる上に、しかも提出物の一部出せてねえんだよおおお!!!留年する!高3にもなって留年しちまううう!!!」

    「最悪でも補習止まりだろ、留年って……。それにな、こんな『ど田舎』の高校、教師に胡麻擦っときゃ何とかなるよ」


    俺や康介が住んでいる村は、過疎化の影響をモロに受けて今や廃村寸前になっている。

    やれ伝統だの、やれ風習だの。

    馬鹿な事ばかり言って他地域との交流を頑なに拒むこの閉鎖的な村が、俺は大嫌いだった。


    「ど田舎って、自分の住んでる村に対してお前………、やっぱ引きずってんのか?『あの事』。……あれはしょうがねえって!誰もお前を責めなんか……」

    「……なあ康介。今日、何日だっけ」

    「え?あー……テスト終わりだから、七月五日だな」

    「……そっか。悪いな、俺今日は寄るとこあっから。先帰るわ」

    「康介……おう、また明日な」


    たった今考えた即席の嘘を、かれこれ10年以上も付き合っている萩が見破れない筈がなかった。

    それでも敢えて触れずにいてくれる。そういう気遣いが出来るからこそ、俺はこいつと仲良くしていけるのだ。そう思った。

  2. 2 : : 2015/06/24(水) 20:47:20



    学校からの帰り道、当然寄る場所など無い。一直線に真っ直ぐ家を目指す。

    左右に建ち並ぶ住宅を見ると、あちらこちらに『七夕』の文字が並び、笹の葉が置かれていた。


    七夕。

    一年に一度だけ、天の川を超えて織姫と彦星が出会える日。

    ある程度歳を取ると大抵「くだらない」と一蹴されてしまうという不遇な伝説だが、俺は案外嫌いではなかった。


    何故ならば、俺は七夕の伝説に親近感を覚えているからだ。

    ……まあ、正確に言えば、


    ──俺が超えたいのは天の川ではなく、三途の川なのだが。

  3. 3 : : 2015/06/24(水) 20:52:09








    星合いの夜に、君と。









  4. 4 : : 2015/06/24(水) 20:55:13



    俺の住む水瀬村(みなせむら)には、ある言い伝えがあった。


    『村の近くで一番高い山、星合山。七夕祭の夜に、その頂上にある大岩に願い事を書いた短冊を置いておく。そうすると日付の変わる瞬間に死者が天国から現れ、短冊を持って帰る。もしも死者が願いを好めば、その力を持って叶えてくれる』


    七夕と盆と、ついでにドラゴ⚪︎ボールを混同させたような奇妙な言い伝えだが、 一時はこの言い伝えのお陰で観光客が激増し村が活性化した事もあったらしい。

    もっとも、星合山は標高600M程はある山だ。言い伝えを信じる爺婆には辛く、若者はそもそも言い伝えを知りもしないので、今や実践する者は皆無と言って差し支えなかった。


    ……だが。

    1年前の七夕での事だった。

    とある馬鹿が、星合山に登った。

  5. 5 : : 2015/06/24(水) 20:58:57



    今から1年前、高2の夏。

    俺には幼馴染がいた。


    「遅ーい!!早く早くー!!」

    「もうちょい……ゼェ……待てよ……ハァ……詩織…!!」

    「なっさけないなぁー達彦!女の子に負けてどうすんだよー」


    幼馴染の名前は秦野 詩織(はたの しおり)。とても元気で活発な奴だった。

    俺と康介、そして詩織。小さい頃から仲の良かった俺たちは(狭い村という事もあって)幼稚園から高校までずっと一緒で、まさに親友と言うべき間柄だった。


    「うるせー!俺は運動とか出来ねえ代わりに勉強出来っから良いんだよ!」

    「ガリ勉は嫌われるぞぉー?」

    「ああ゛!?言ったな康介この野郎ぉー!!!」

    「うお!?急に速く……うぎゃあああ!!!」

    「ほんっと仲良いよねー、2人」

    「「良くねえよ!!!」」


    どうでも良いような事で喧嘩する俺たちを、いつも詩織は笑って見ていた。

    そんな時間は、とても居心地が良くて。


    「……いつまでも、こうしてたいな」

    「え?何か言ったか?」

    「んー?いや、何も?」


    風に乗せて飛ばすように、ボソッと呟いた。


    ……だが。


    『いつも通り』を最初に失ったのは、他ならぬ俺だった。



    いつだったろうか。


    俺が詩織の事を『親友』として見れなくなったのは。

  6. 6 : : 2015/06/24(水) 22:20:15



    「ねーねー達彦」


    詩織は、美しい女性だった。

    それに気付いたのはいつだったか分からないけれど、とにかく美しく、綺麗で、可愛かった。

    体質なのか、外を走り回っているのにも関わらず、その肌は透き通るように白かった。

    パチクリとした瞳は主張し過ぎず、仄かに輝く夜空を思わせ。少し細めな身体の線は、しかし彼女のサラリと流れる黒髪とベストマッチしていた。


    「ねぇねぇ、達彦ってば!」

    「えっ、あっ、うん!?ごめん意識飛んで……!!」


    一度気付いてしまえば、もう見て見ぬ振りも出来ないわけで。

    俺は破裂しそうになる心臓を必死になだめながら話す事を余儀なくされた。


    「……っ、」

    「え、ちょっと達彦?なんで顔逸らして……」

    「あっ、いや別に……で、どうしたんだよ?」

    「むー。今日の数学分かんなかったから教えてもらおうとしたんだけど。もう良いよ!」

    「!詩織!?」


    そんな俺の感情に詩織が気付くはずも無く。

    段々と、しかし着実に俺たちはすれ違い始めていた。

  7. 7 : : 2015/06/24(水) 22:30:30



    俺は、そんな状況が堪らなく嫌で。

    詩織と心が離れていくのが怖くて、心細くて、泣きそうになって。

    一時期は本当にどうにかなりそうだった。


    「……はぁ…」


    そんな時、俺を助けてくれたのは、


    「どうしたんだよ、溜息なんか吐いて。らしくねえぞ?」

    「!康介……」


    康介だった。

    あいつは最初こそ驚いた顔をしたものの、その後は親身になって俺の話を聞いてくれた。


    「なるほど、詩織と上手く行かないかぁ……」

    「このままじゃ駄目だって、分かってはいるんだけどさ。……でも、どうすりゃ良いか……」

    「うーん……一番大切なのはお前の考えだから、俺は強要出来ねえけど。それでもやっぱり、俺は気持ちを伝えた方が良いと思うぜ」

    「……」

    「このままじゃ、歯車はすれ違ってすれ違って。終いには外れて終わっちまう。そうなるくらいなら、まだ当たって砕けた方が良い。俺は、そう思う」

    「……!だよな、そうだよな!!当たらずに消えるくらいなら、せめて砕けてでも当たった方が良いよな!!うおお、何か吹っ切れた!!ありがとな!!!」

    「おお!?元気出てきたじゃねえか!!良いぞ良いぞ、その調子だ!!」

    「康介、今日って何日だ!?」

    「えーっとな、七夕祭の前日だから七月五日だ!!」

    「よし!よしよしよし!!決めたぞ!!俺、明日の七夕祭で詩織に告白する!!!」

    「うおおおお!達彦、俺は応援してるからな!!大丈夫だ、お前ならきっと大丈夫!!もし万が一駄目でも俺が抱き締めてやるから安心しろ!!」

    「おう、本当にありがとな!!!男の抱き着きは要らねえけど!!!」


    俺は康介に礼を言うと、そのままダッシュで家まで帰った。

    そして、メールで詩織を七夕祭に誘った。

    その日はずっとドキドキして、殆ど眠れなかった。



    ……まさか、夢にも思わなかったんだ。

    『明日、詩織を殺してしまう事になるなんて』。

  8. 8 : : 2015/06/24(水) 22:43:52



    次の日。

    午前12時きっかりに、俺は詩織の家の前まで来ていた。


    「すいませーん」


    インターホンを鳴らす。

    すぐに玄関から詩織が出てきた。


    「ごめんごめん、待たせちゃった!」

    「いやいや、俺が早く来ちゃっただけだし。ごめんな」


    最近学校でしか詩織を見ていなかったので、私服姿を見るのはかなり久しぶりだった。

    ……そして、俺は死んだ。


    「ごほっ、ゴホゴホッ!!」

    「ちょ、大丈夫!?」

    「だ、大丈夫。ちょっと咽せただけだから」


    咳き込むフリをして下を向いた隙に、必死でニヤケ顔を直す。躊躇無く頬の裏に歯を立てた。


    「じゃあ、行こうか」

    「うん!」


    俺と詩織は、2人で街の図書館へ向かった。

  9. 9 : : 2015/06/24(水) 22:57:45



    「〜〜〜がこうなるから、ここがこうなる」

    「ふむふむ」

    「そこでこの定理の出番だ。Aを代入すると……」

    「ふむ……?」

    「2A+3で括れるから、この答えが出る。分かったか?」

    「……数学は嫌い」


    七夕祭に誘うに当たって、俺は図書館での勉強も提案した。

    流石に出会ってすぐ祭、そして告白というのは俺のチキンハートには辛すぎたからだ。

    それに、勉強ならば俺の得意分野だ。良いところをアピール出来る。


    「苦手でもちゃんとやらないと。先生に怒られるぞ?」

    「うぐぅ……」


    俺の真隣に詩織が座っているという状況に、俺の心臓はすでにクライマックスを迎えつつあったが。心の中でひたすら素数を数える事で気を紛らわせた。

  10. 10 : : 2015/06/24(水) 23:16:15




    「……ふう。疲れたなぁ。ちょっと休憩するか」

    「さんせーい。このままじゃ死んじゃう……」


    時計の針が3を指す頃に、俺らは勉強を中断した。


    「……」

    「……」


    2人の間に、静寂が訪れた。

    またこれだ。……さっきまで、勉強を教えてた時なら軽口も叩けたのに。

    目的のない自由時間になった途端、脳が動かなくなったみたいに言葉が出てこなくなる。

    クソ、こんなんじゃ駄目だ!こんなんじゃまた……詩織に嫌われて……!!


    「……ねえ、達彦」

    「!!ん……?」


    俺が必死で頭をフル回転させていた時だった。

    不意に、詩織が言った。









    「達彦ってさ、最近妙によそよそしいよね……」










    違う。

    違う違う違う違う違う!!!!!

    俺の頭をNOの文字が埋め尽くした。

    ……それなのに。


    「……ぁ、あー……えっと、そうか……?」


    言葉が、出てこない。

    『そんな事ない』の一言が、どうしても喉を出てくれない。


    「ほら、また……違うの、別に達彦を責めてるわけじゃなくて。ただ……もし私が何かしちゃったんだとしたら、謝りたいなぁって。それだけ」


    違う。違うんだ。詩織が謝るなんてとんでもない。謝らなきゃいけないのは俺の方だ。こんな勘違いさせて、心配させて……!!!

    言葉は出ない。詰まったような声で、声でもないような音を零すのが精一杯だった。

    『違う』と言えばきっと、詩織は『じゃあなんで』と聞いてくるだろう。……それに対して答える事を、俺は恐れているのだ。

    優柔不断。煮え切らない。

    本当に馬鹿みたいで、最低だった。


    「……」


    とうとう、詩織は黙って俯いてしまった。

    声を掛けたい。違うんだ、って叫びたい。

    でも、それなのに……!!!

    なんでそんな単純な事が……!!!


    「……ごめんね、なんか……ちょっと具合悪くなっちゃった。……本当に、ごめん」

    「……あっ、違うんだ!!」

    「!……何が?何が違うの?」


    詩織が席を立った瞬間、俺はようやくその一言を吐き出す事が出来た。

    ……しかし……


    「……あの、その……」

    「……!!もう良いよ!!達彦のバカッ!!!」


    そう言うと、詩織は走って図書館を出て行ってしまった。

    俺はただ、呆然とその姿を見送る事しか出来なかった。

  11. 11 : : 2015/06/24(水) 23:23:48






    ……そして。





    翌日、彼女は死体で発見された。





    星合山の山中で、頭から血を流している状態で。







    死因は、足を滑らせた事による頭部の強打との事だった。





  12. 12 : : 2015/06/24(水) 23:28:22




    ……俺が、殺した




    俺がちゃんと答えていれば





    俺が図書館になんか連れて行かなかったら






    俺が告白なんてしようとしなかったら








    俺が、詩織の事を好きになんかならなければ











    詩織は…………星合山になんて登る事なく………………








    「あ、あ………」






    「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




  13. 13 : : 2015/06/24(水) 23:44:29




    「……1年、か」


    夜の山を登りながら、俺は1人呟いた。

    今日は七月六日。村では七夕を祝う祭りが開かれており、木の生い茂る山の中にも薄っすらと太鼓の音が聞こえる。

    ……詩織も、この音を聞いたのだろうか。この風を浴びたのだろうか。この土を踏んだのだろうか。

    そう考えると、堪らなく悲しくなって。

    目頭に熱いものを感じながら、俺は黙々と山を登った。


    「いっそ……俺も足を滑らせれば……」


    無意識に零していた。

    だが、幸か不幸か、そんな事をする勇気は俺にはなかった。


    「……」


    鳥の鳴く夜の山を、ひたすら登った。

  14. 14 : : 2015/06/25(木) 00:06:27




    「……ここが……」


    視界に。『星合いの大岩』というプレートが立て掛けられた巨大な岩が映った。

    どうやら、頂上に着いたらしい。


    「今は……23時、46分。……あと、14分……!!」


    俺は大岩に空いた穴の中に、1枚の短冊を丁寧に入れた。

    そしてその近くで、ただその時を待つ。


    「……」


    ──許してくれ、だなんて言うつもりはない。

    ──好きだ、なんて恥知らずな言葉が言える筈もない。

    ──ただ、詩織に会って、謝りたかった。


    康介も、詩織のお母さんも、詩織のお父さんも。皆が皆、俺は悪くないと言ってくれたけれど。


    ……これは、ただの自己満足かもしれないけれど。


    ──それでも良いから、謝りたい。


    ──だから。お願いです。


    神様……織姫と彦星が出会う、この星合いの夜に。



    どうか──どうかどうか、俺と詩織を……!!!



    もう一度だけ、会わせてください……っ!!!!!


  15. 15 : : 2015/06/25(木) 00:12:42







    時計の針が、12を指す。





    日付が、変わる。





















    ………だが。









    彼女は、現れなかった。




  16. 16 : : 2015/06/25(木) 21:17:42



    「……はは、そうだよな………」


    ──馬鹿らしい。

    ああ、馬鹿らしい。

    俺は何を期待していたというのだろう。

    死者が蘇るなんて、あり得ない。

    そんな事、分かりきっている事だろうに。


    「……帰、ろう……」


    力の抜けた足で、フラフラと歩き出した。

    大岩の中に入れた短冊を、右手で掴んで引っ張り出す。






    その時だった。

  17. 17 : : 2015/06/25(木) 21:18:03






    何か、俺の入れたものではない紙が1枚、ヒラリと穴から舞って出た。



  18. 18 : : 2015/06/25(木) 21:18:41



    「ん……?なんだ、これ……」


    思わず拾い上げる。

    それは、桃色の短冊だった。

    裏返して、書かれている内容を見る。


    「……!!!…え……?」


    見て、言葉を失った。







    『どうか、達彦と仲直り出来ますように。 秦野 詩織』














    「あーあ、見られちゃったか」
  19. 19 : : 2015/06/25(木) 21:19:10



    「!?」


    聞こえた声に、思わず振り返る。

    そして、固まった。


    「あはは、何だか恥ずかしいなぁ」


    そこに立っていたのは紛れもなく、俺の知っている……俺の大好きだった女性、秦野 詩織だった。


    「しお、り……?…なんで……」

    「なんでって、変わった事言うんだね。達彦も知ってて来たんでしょ?水瀬村の言い伝え」

    「…詩織、俺は……俺は……!!!」

    「うん、ぜーんぶ知ってるよ。私、死んじゃってから見たの。達彦が1人で泣いてるの」

    「あの時……俺があんな事言わなげれば……!!」

    「ううん。私こそ……ごめんね。達彦の気持ちに気付けなくて」

    「!!違う、違うんだ……!!詩織、謝るのは俺の方で……!!!」

    「……私こそ、中々言い出せなかったんだもん」

    「………え……?」

    「ほら、これ」


    詩織はゆっくりとこちらへ近付いてくると、大岩の穴に手を入れた。

    そして、1枚の、黄色の短冊を取り出した。


    「私ね、欲張りだから2枚入れちゃったんだ。……読んで?」


    差し出されたそれを、滲む視界で読む。






    『それと、もしも叶うなら。

    達彦に、私の気持ちが届きますように。』






    「……えへへ、やっぱり恥ずかしいや……」





    「……詩織…、お前……!!」

    「さあ。時間もあんまりないから。……叶えよ?達彦のお願い」

    「俺、は……!!」

    「……うん」

    「俺は……!!!」
  20. 20 : : 2015/06/25(木) 21:20:53









    「ずっと……詩織の事が好きでした……!!!ずっとずっと、大好きでした……!!!!!」



    「………うん、私も!」









    目に薄っすらと涙を溜めながら微笑む詩織は、とても美しかった。





    滲む視界の中で、彼女の黒髪がフワリと揺れた。












  21. 21 : : 2015/06/25(木) 21:22:09





    「……!!」


    気が付くと、俺は大岩にもたれかかって寝てしまっていた。

    泣き腫らしたらしく、目が痛い。


    ──しまった、寝ちまってたのか……!?、!それよりも!!


    俺は大急ぎで時計を見た。

    時刻は12時00分ジャスト。


    俺は身構えて……そして、足元にあるものを発見した。


    「……これって…!!」


    それは、桃色と黄色、2色の短冊だった。


    「夢じゃ……なかったんだな……」



    俺は、短冊を拾い上げると、


    胸にギュッと押し付けた。



    「……ありがとう、詩織……!」


    「俺、もうクヨクヨしないから……そこで見ててくれ!!!」





    空を、見上げた。



    広い広い夜の空に、天の川が燦々(さんさん)と輝いていた。
  22. 22 : : 2015/06/25(木) 21:22:45








    星合いの夜に、君と。



  23. 23 : : 2015/06/25(木) 21:24:38





    ここまでお読みくださり、ありがとうございます。

    不慣れなオリジナル作品でしたが、如何だったでしょうか。

    少しでも楽しんでもらえた事を祈っております。

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Poiuytrewq

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