このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品は執筆を終了しています。
ピクシス「二つの塔」 ⑧ 進撃×ロード・オブ・ザ・リング
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- 1 : 2015/06/19(金) 17:48:31 :
- 進撃×ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔 第12話です。
http://www.ssnote.net/series/2278
これが二つの塔の最終話になります。
よろしくお願いします<m(__)m>
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- 2 : 2015/06/19(金) 17:51:56 :
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ジャンとマルコは、木の髭に運ばれて、ホビット庄への帰路につき始めた。
木の髭「森の西境までお前たちを送っていくとしよう。そこでわしらはお別れじゃ。」
ジャンはずっと暗い表情をしていた。
指輪のために苦しい思いをしているだろうエレンやアルミン。
今戦っているだろうリヴァイやライナー、アニ。
彼らのために、俺に出来ることが・・・・・・何もなかったッ!
こみ上げる無力感に、ジャンは苛まれていた。
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- 3 : 2015/06/19(金) 17:55:29 :
すると、マルコが突然、突拍子もないことを提案し始めた。
マルコ「止まって、木の髭。」
木の髭「なんじゃ?」
マルコ「・・・・・・折角だから、アイゼンガルドを遠くから見てみたいんだ。」
木の髭「なんじゃと?」
ジャン「おい、頭おかしくなっちまったのか!? マルコ!?」
何か頭を殴られたかのように、びっくりするジャンと木の髭。
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- 4 : 2015/06/19(金) 17:56:12 :
そんな二人の様子に構わず、マルコは話を続けた。
マルコ「いや、いたって冷静だよ、ジャン。」
ジャン「はぁッ!?」
マルコ「サルマンは、俺たちがこんな危険を冒すはずがないって考えてる。」
その時、一瞬であるが、マルコがほくそ笑んだ。
ジャンはハッとした。
そして、自分の相棒が何を考えているのか、その真意を理解した。
――――――マルコめ、随分といかれたことを考えやがってッ!
そして、ジャンもまたほくそ笑む。
木の髭「わしには何のことかさっぱりわからんが・・・・・・ともかくお前たちはチビだ。上手くいくかもしれんな。」
マルコの機転に丸め込まれ、木の髭はアイゼンガルドの見物に二人を連れていくことにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 5 : 2015/06/19(金) 18:42:49 :
リヴァイたちが砦の中に追い詰められ、ジャンとマルコがアイゼンガルドへと向かい始めた頃。
エレンとアルミン、そしてゴラムは、エルドに連行されてゴンドールの領内を歩いていた。
――――――その中でも、ゴラムだけは両手をひもで括られ、その縄を兵士に握られていた。
エルド「くそ、オスギリアスが・・・・・・炎上してる。」
兄ベルトルトがその身を賭して守ってきた都市が炎上しているのを見て、エルドの胸は痛んだ。
だが・・・・・・今の俺たちには、一発逆転の武器がある。
そう、一つの指輪がそれだ。
俺は、兄貴の守りたかったものを守って見せる!
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- 6 : 2015/06/19(金) 18:44:52 :
エルドの決意は、硬かった。
そして一つの指輪は、そんなエルドの決意に付け込んで、これを堕落せしめようとしているのである。
エレン「なぁ・・・・・・どうして俺をモルドールへと行かせてくれねえんだよ?」
ぼそりとエレンが呟いた。
エルドは、しかし、この声を無視した。
エルド「オスギリアスまではもう少しだ、急いでいくぞ。」
すると、エレンが急に走り出したので、エルドがこれを力ずくで取り押さえた。
エレン「くそ、放せよッ!!!」
口に猿ぐつわを嵌められ、腕を縛られたエレンは、エルドに直接担がれた。
アルミン(くそ・・・・・・今はタイミングじゃない・・・・・・チャンスはある。)
アルミンは虎視眈々と逃走のタイミングを計り、表向きは従順に振る舞っていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 7 : 2015/06/19(金) 18:45:31 :
木の髭は上機嫌になってジャンとマルコに話をしていた。
木の髭「あの道はなぜだか坂道を下っているかのような気分にさせてくれるのじゃ。」
木の髭は最長老故、森に生えている木々を知り尽くしていた。
一人一人の木々の声を聴き、その世話を熱心にする木々の牧者。それがエント本来の姿である。
木の髭「ドングリを運んでくる小さなリスたちがわしの体を登るのがくすぐったくてな、彼らにわしははこばれて・・・・・・・・・・・・おおぉッ!?」
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- 8 : 2015/06/19(金) 18:45:55 :
それきり、木の髭はしばらく沈黙した。
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- 9 : 2015/06/19(金) 18:46:40 :
木の髭が見知っている木々は、見るも無残に斬り倒され、残るは荒涼とした切り株ばかり。
木の髭「ここらの木は・・・・・・・・・・・・わしの友人じゃった・・・・・・・・・・・・。」
やがて、木の髭が声を震わせながら話し始めた。
木の髭「彼らが木の実やドングリだったころから・・・・・・。」
マルコ「・・・・・・・・・・・・ごめん・・・・・・木の髭。」
木の髭「それぞれ・・・・・・・・・・・・声も持っていた・・・・・・・・・・・・。」
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- 10 : 2015/06/19(金) 18:47:20 :
木の髭は荒涼とした土地の先にあるアイゼンガルドを見つめた。
木の髭「サルマンッ!」
胸を焼く悲しみは、今度は怒りとなって声を震わせる。
木の髭「魔法使いともあろうものがッ!!!」
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!
あらん限りの叫び声を木の髭は上げ、その声は森の奥にまで響き渡った。
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- 11 : 2015/06/19(金) 18:47:52 :
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木の髭「これ程の悪行をののしる言葉はエルフ語にも、人間の言葉にも、エント語にもない。」
マルコ「!!! 見てッ! ジャンッ!! 木が動いてるッ!!!」
ジャン「お、おい、どうなってんだよッ!?」
彼らの目線の先には、地面を抉るようにして移動するファンゴルンの森があった。
木の髭「彼らはウルク=ハイに用があるのじゃ。」
そして、木の髭はアイゼンガルドを鋭く睨みつけた。
木の髭「今夜はアイゼンガルドに岩の雨を降らせてやる。」
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- 12 : 2015/06/19(金) 18:49:52 :
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ゴオォォオオォォオオォォッ!
オオオォォオォォォッ!
ジャンとマルコが後ろを振り返ると、森の中から様々なエントたちが這い出てきた。
マルコ「やった・・・・・・・・・。」
ジャン「あぁ・・・・・・マルコ。」
――――――――まだ俺たちにも、やれることがある!
木の髭「さあ行こう、わが友よ。わしらエントもいくさに赴くのじゃ。
恐らくはこれが・・・・・・わしらの破滅になるじゃろう。
これがエント、最後の進撃じゃッ!」
森の中から、様々な木の巨人がアイゼンガルドめがけて歩き出した。
第12話
The Last Attack ~進撃の巨人~
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- 13 : 2015/06/19(金) 19:09:37 :
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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ドゴォン!!!
ウルク=ハイたちは角笛城のほとんどを占領し、いよいよ一番奥の間まで進撃してきた。
破城槌でもって最後の扉を打ち破ろうとしている。
その音は、洞窟に避難していた女子供の耳にまで届いた。
「て、敵が来たッ!!!」
サニー「うわぁぁぁああぁあぁんッ!!!」
―――――――洞窟の中に、たちまち死への恐怖と混乱が広がった。
リコ「大丈夫だ、きっとお前のお兄ちゃんが何とかしてくれる。」
リコは泣きじゃくるサニーを抱きしめ、洞窟の中に蔓延る恐怖と必死に戦っていた。
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- 14 : 2015/06/19(金) 19:10:42 :
ピクシス「・・・・・・砦は奪われた。もうおしまいじゃ。」
傷の手当てを受けながら、ピクシスは呟いた。
リヴァイ「テメエはこの城での戦いを熟知してるんだろッ!? 部下はお前を信じて、死ぬまで戦ってんだぞッ!!!」
一番奥の部屋まで避難しえた兵士たちは、破壊されようとしている扉を守ろうと必死になっていた。
リヴァイ「・・・・・・・・・・・・ちっ、女子供を逃がすぞ。抜け道はどこだ?」
その質問に、ピクシスは沈黙していた。
リヴァイ「抜け道はどこにあるッ!?」
ハンネス「ひとつだけ・・・・・・・・・・・・山腹に出る道がある。」
ピクシス「・・・・・・累々たる死者。」
ピクシスが呟いた。
ピクシス「人間どもが敵わぬ脅威じゃったのじゃ。」
――――――――この時、この部屋にいた誰もが悟った。
自分たちの命運は尽き、ローハンの民はここで皆死ぬということに。
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- 15 : 2015/06/19(金) 19:11:28 :
リヴァイ「・・・・・・打って出るぞ。」
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- 16 : 2015/06/19(金) 19:11:51 :
ピクシス「何じゃと?」
リヴァイ「打って出るぞッ!」
ピクシス「死と名誉のためか?」
リヴァイ「ローハンのため・・・・・・お前の民のために。」
―――――リヴァイは覚悟を固めた。最後の最後まで、剣に斃れるその時まで、剣を振るって戦い抜く。
ライナーが明るみ始めた窓を眺めて、呟いた。
ライナー「日が、昇る。」
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- 17 : 2015/06/19(金) 19:12:24 :
―――――五日後の朝に、わしは戻る。日が昇る、西の方から。
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- 18 : 2015/06/19(金) 19:12:57 :
ピクシスの瞳にも、光が戻る。
ピクシス「そうじゃ・・・・・・そうじゃ・・・・・・。」
拳に力を込めるピクシス。
ピクシス「追手王ヘルムの角笛が、今一度鳴り響く・・・・・・これを最後にッ!」
ライナー「あぁッ!!!」
―――――角笛上の屋上にある角笛を吹き鳴らしに、ライナーは走った。
燃えるような瞳で、ピクシスはリヴァイと向かい合った。
ピクシス「今、共に剣を抜こうぞ。」
ゆっくりと頷くリヴァイ。
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- 19 : 2015/06/19(金) 19:14:54 :
ドゴォンッ!
―――――閂にひびが入る。
愛馬、雪の鬣にまたがり、名剣ヘルグリムを抜くピクシス。
リヴァイやアニ、ハンネス、コニーらも馬にまたがった。
ピクシス「――――――血よ燃えよ。
――――――怒りと共に、敵を滅ぼすッ!
――――――赤き日が昇るッ!!」
ブオォオオォォオオオォオオオォオオォォオオオッ!!!
ヘルム峡谷に、巨大な角笛の咆哮が谺する。
刹那―――――最後の扉が、破られた。
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- 20 : 2015/06/19(金) 19:15:28 :
力の限り、ピクシスが吼えた。
ピクシス「エオルの子らよ前進せよォォォッ!!!」
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- 21 : 2015/06/19(金) 19:15:59 :
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雄叫びを上げ、馬に鞭うち、敵に突撃。
大軍を切り裂く剣の一閃。
馬に乗って駆け抜けるピクシスの剣が、大軍を二つに切り裂いていく。
ピクシス「だあぁあぁぁッ!!!」 スパァッ!
ヘルグリムが敵の首を刎ね、リヴァイやアニ、ハンネス、コニーらもピクシスに続いた。
伝説から抜け出た追手王ヘルムのごとく、鬼気迫るピクシスに、立ち向かうものなし。
城内を駆け抜け、城門を抜け、桟橋を下って敵をなぎ倒していく。
ハンネスの剣が敵の顔面を真っ二つに切り裂き、コニーの剣が桟橋から敵を叩き落とす。
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- 22 : 2015/06/19(金) 19:16:31 :
鬼神のごときピクシスを先頭に、ローハンの騎馬隊が、一万の大軍に突撃。
アニが両手に構えたナイフで敵を切り裂き、リヴァイが素早い動きで敵を切り捨てる。
ピクシスも押し寄せる敵に向かい、一閃光り、剣を振るう。
ふと西の空を仰ぎ見るリヴァイ―――――その西の山の上に・・・・・・
嘶く飛蔭にまたがった白のガンダルフが到着した。
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- 23 : 2015/06/19(金) 19:17:03 :
リヴァイ「遅かったな、ガンダルフ。」
戦況を見渡し、ガンダルフは呟いた。
ガンダルフ「ピクシス王が一人でおられるぞ。」
後ろから馬にまたがった男が来た―――――ローハンの第三騎馬軍団長。
「一人ではありません。」
イアンが名剣グースヴィネを抜き、叫んだ。
イアン「ロヒアリムたちよッ!!!」
イアンの背後に、ローハンの精強な騎馬隊―――――二千騎が駆けつける。
ピクシス「イアンッ!」
王の呼びかけに答えるように、イアンは再び叫んだ。
イアン「王の元へッ!!!」
ウオォオオオォオォォォォオオオォォォォッ!!!
精強な戦士たちが、王の元めがけ駆け出した。
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- 24 : 2015/06/19(金) 19:18:03 :
山の上からガンダルフを先頭に、二千もの騎兵が坂を駆け下りていく。
勢いよく下っていく騎馬隊の地鳴りが峡谷に谺する。
隊を整え、迎撃の体制を整えるウルク=ハイの大軍。
長槍を騎馬隊に向け、雄叫びを上げる。
夜明けの光が、差し込む―――――眩い光がウルク=ハイの目を貫いた。
焼けるような痛みに、悲鳴を上げるウルク=ハイ。
ガンダルフ「おおぉおおぉおぉぉおおぉおぉぉぉぉッ!!!」
ローハンの精強な騎馬隊がウルク=ハイの大軍に衝突。
イアン「だぁッ!」
ガンダルフ「はぁッ!」
イアンの剣が煌めき、ガンダルフの杖が空を舞う。
後から後から力強く大地を蹴った馬の、勢いある一撃を喰らわせていくローハンの本隊。
ウルク=ハイたちを踏み潰し、体を切り裂き、その首を刎ねていく。
――――――――――――――長い夜は、遂に明けた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 25 : 2015/06/19(金) 20:08:02 :
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アイゼンガルドに響き渡るのは、大小さまざまな岩の雨。
オルサンクの塔を取り囲む城壁を破壊し、木の巨人――――エントたちが侵入。
居残っていたウルク=ハイたちを駆逐していく。
エントたちの怒りの声は、まさしく大地の怒りそのものであり、その力でもってウルク=ハイをねじ伏せ、踏みつぶし、バラバラにしていく。
塔を揺るがさんばかりの轟音に驚き、サルマンがベランダに姿を現した。
――――――――何だこれは?
わしが作り上げたウルク=ハイが・・・・・・地下基地が・・・・・・壊されていく・・・・・・。
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- 26 : 2015/06/19(金) 20:09:12 :
ウルク=ハイも斧や火矢でもって反撃を試みるも、エントの怒りにますます油を注ぐ結果に終わり、つぎつぎに物見やぐら、水車、あらゆるものが破壊されていく。
サルマンはただ、破壊されていく自らの勢力を呆然と見つめることしかできなかった。
ジャン「よし・・・・・・お前ら、ダムを打ち壊せッ!!!」
戦局を見たジャンが指示を出す。
ジャン「川の水をここに放つんだッ!!!」
アイゼンガルドの奥にあるダムの、水をせき止めていた石をエントたちは破壊した。
大量の水が飛沫を上げて、轟轟と山の斜面を下ってくる。
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- 27 : 2015/06/19(金) 20:09:49 :
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バシャアァアァァッ!!!
迫りくる水流から逃れようと、ウルク=ハイは走ったが無駄だった。
大地を揺るがさんばかりの声を上げて、水流は全てを呑み込み、破壊していく。
そして、穴という穴に入り込んでは、巨大な穴の中にあった製鉄所の炎を呑み込み、膨大な水蒸気を巻き上げる。
ジャン「マルコ、掴まれ!!!」
マルコ「うんッ!!!」
木の髭「わしに掴まれッ! ホビットたちッ!!!」
エントだけが流れてくる水流に耐えることが出来、ジャンとマルコは水没から免れた。
破壊の水は勢いを増し、ますますあらゆるものを押し流していく。
逃げ場を失ったウルク=ハイは自ら穴に飛び込むか、間に合わずに呑まれるか、いずれにしても悉く破滅していった。
そしてついに水流は、アイゼンガルド一帯を水没させ、ウルク=ハイを悉く駆逐し、サルマンの悪しきものを全て洗い流していった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 28 : 2015/06/19(金) 21:36:34 :
- お久しぶりです!期待です!
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- 29 : 2015/06/19(金) 22:48:54 :
- いつも書き込みありがとうございます!
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- 30 : 2015/06/19(金) 22:49:39 :
ゴンドールのかつての王都、オスギリアスは、三つの区画から構成されていた。
大河アンドゥインの川中島にある王宮、星辰殿のある区画。
そして、大河を挟んだ東岸区画と西岸区画。
拘束されたエレンとアルミン、そしてスメアゴルは、地下水路を通って西岸区画へと連行された。
オルオ「おい、遅かったじゃねえか、どこで道草食ってやがったッ!?」
エルドが留守にしていた間、部隊の指揮を執っていたオルオが愚痴を漏らした。
モルドールの軍の急襲によって東岸と星辰殿は落とされ、残るゴンドールの部隊は西岸に展開していた。
向こう岸から絶えず投石が降ってくる――――――かつての王都は、極めて危険な戦闘区域と化していた。
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- 31 : 2015/06/19(金) 22:50:21 :
エルド「まぁそういうな、オルオ。ミナス・ティリスに使者を出してくれ。」
オルオ「ん? なんでまた?」
エルド「戦況を変える、素晴らしい武器を手に入れたって伝えてくれッ!」
するとエルドは抱えていたエレンを降ろし、猿ぐつわと縄を外した。
オルオ「はぁ? このクソガキがか!?」
エルド「いや、こいつの持っている指輪こそ、俺たちに勝利をもたらしてくれるッ!」
「ねぇ・・・・・・。」
エルドのその一言に、今まで脱出の隙を伺っていたアルミンが切れた。
アルミン「どうして・・・・・・・・・・・・ベルトルトが死んだか・・・・・・教えてあげようか?」
オルオ「おい・・・・・・それ以上ベルトルトを侮辱してみろッ!? テメエの舌を切り落とすぞッ!!!」
エルド「・・・・・・。」
アルミン「ベルトルトはエレンを守ると誓いながら、指輪の誘惑に負けたんだッ!!!」
オルオ「このクソガキッ!!!」
エルド「やめろッ! オルオッ!!!」
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- 32 : 2015/06/19(金) 22:51:02 :
アルミンがオルオやエルドと言い争っている最中、エレンは空を見上げた。
首が・・・・・・鎖が・・・・・・指輪が・・・・・・重い・・・・・・。
指輪が力をますます増しているのを感じる。そして・・・・・・
指輪が、迎えを呼んでいる。
アルミン「!!! エレンッ!!!」
ようやくアルミンがエレンの異変に気が付いた時にはもう遅かった。
エレン「・・・・・・あいつが来る。」
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- 33 : 2015/06/19(金) 22:51:32 :
オスギリアスの空に谺する。冷気を纏った叫び声。
エルド「!!! ナズグルだッ!!!」
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- 34 : 2015/06/19(金) 22:51:59 :
恐るべき翼に乗ったナズグルの一人が、指輪の力を感じ取り、オスギリアス上空に飛来した。
「うわああぁああぁぁぁッ!!!」
「わあぁああぁぁッ!!!」
屈強なはずの兵士が悲鳴を上げて逃げ惑う。
それほどにナズグルはゴンドールの兵士たちに怖れられていた。
スメアゴル「うわああぁああぁぁぁッ!!!」
手を縛られたまま、スメアゴルは物陰に身を隠した。
オルオ「くそ、化け物が飛んできやがったッ!」
グンタ「く、襲われないように物陰に隠れろッ!!!」
恐怖に襲われながらも、部下たちに指示を出す二人。
エルド「ここに隠れるんだ、エレン、アルミン。」
二人を安全な場所に匿うと、自らはナズグルを追い払うために部隊を率いていった。
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- 35 : 2015/06/19(金) 22:52:33 :
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エレン「・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・。」
アルミン「エレン?」
ふらふらと歩き出すエレン。
アルミン「どこに行くの!? エレンッ!!!」
そのままエレンは階段を昇り、建物の屋上に出た。
彼の目の前に・・・・・・おぞましい獣に乗ったナズグルが姿を現した。
誘惑に駆られ、エレンは指輪を取り出した。
アルミン「ダメだッ!!!」
必死に走り出すアルミン。
おぞましい獣が口を開けてエレンを喰らう直前。
アルミンがエレンに飛び掛かり、もろとも屋上から落下。
ヒュンッ!
ドスッ! ギャアアゥウウゥゥゥッ!!!
エルドがおぞましい獣に矢を放ち、獣に命中、ナズグルはそのまま飛び去って行った。
階段を転げ落ちるエレンとアルミン。
エレン「ヴヴヴヴヴヴヴヴッ!!!」
落下したエレンはアルミンを組み伏せ、喉に剣の切先を突きつけた。
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- 36 : 2015/06/19(金) 22:54:13 :
アルミン「・・・・・・エレン?」
エレン「・・・・・・。」
アルミン「・・・・・・僕だよ・・・・・・エレン・・・・・・分からないのかい?」
エレン「あ・・・・・・アルミン・・・・・・。」
ようやく我に返ったエレンは、そのまま後ろにくずおれて、剣を取り落した。
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- 37 : 2015/06/19(金) 22:54:41 :
エレン「俺・・・・・・もう・・・・・・無理だよ・・・・・・アルミンに剣を突きつけちまうなんて・・・・・・。」
悲しそうな顔をするエレン。
その表情は、今にも押しつぶされてしまいそうなほど繊細で、以前の快活なエレンからは想像できないものだった。
すると、アルミンがゆっくりと立ちあがった。
遠くにあるモルドールを見やり、言葉を紡ぎ始めた。
アルミン「・・・・・・本当に、どうしてこんなことになってしまったんだろうね。
旅に出ることが出来て夢みたいだって思ったのに、ガンダルフが死んで、ベルトルトが死んで・・・・・・。
遂にこんなとこにまで来ちゃったんだ・・・・・・。」
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- 38 : 2015/06/19(金) 22:55:35 :
―――――――変な話だけど、なんだか物語の中に迷い込んだ気がするんだ。エレン。
悪いことばかり起こった世界が元通りになると思う?
この残酷な世界で、僕らは希望を見出せると思う?
でも、悪にもいつか終わりは来る。
いつか悪いことが洗い流されて、新しい世界はやってくるんだ。
◇◇◇◇◇
ピクシス「勝利じゃッ!!! わしらの勝利じゃッッ!!!」
◇◇◇◇◇
ジャン「よしッ! これでアイゼンガルドは陥落したぞッ!!!」
マルコ「うんッ! 僕らがやったんだッ!! 僕らにもできたんだッ!!!」
◇◇◇◇◇
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- 39 : 2015/06/19(金) 22:56:25 :
――――――――どうして僕らの心に物語が残ったのか?
子供の時には分からなくても、今ならわかる気がするよ、エレン。
アルミンはエレンの前に座り込み、言葉を続けた。
アルミン「物語の主人公は、決して道を引き返さなかったッ! 決してあきらめなかったんだッ!! だから僕らは、信じるもののために戦わなくちゃいけないんだよッ!!!」
エレン「なぁ・・・・・・・・・・・・俺は・・・・・・何を信じればいいんだ?」
僕はエレンの手を掴み、その目をまっすぐ見据えた。
アルミン「この世界には、僕らが命を懸けるに足る、素晴らしいものがあるんだよッ! エレンッ!!!」
エレン「・・・・・・・・・・・・ゴメン、アルミンッ!!!」
そのままエレンは泣き崩れた。
僕は何も言わず、ただエレンを抱きしめた。
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- 40 : 2015/06/19(金) 22:57:16 :
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ややあって、二人の様子を見ていたエルドがエレンとアルミンに近づいた。
エルド「・・・・・・・・・・・・俺たちは漸く、お互いを分かりあえたみたいだな。」
エレン「・・・・・・エル・・・・・・ド?」
アルミン「どういう、ことなんですか?」
エルド「彼らをモルドールへと行かせてやれッ!」
グンタ「!!! おい、そんなことしたら・・・・・・・・・・・・お前は死刑になるんだぞッ!?」
捕えた捕虜を勝手に逃がすような行為は、ゴンドールでは重罪だった。
だが、エルドはこれに笑って答えた。
エルド「ならば刑に応じよう。モルドールに行かせるにあたって、出来るだけ多くの食料を詰めてやってくれ。」
エレン「・・・・・・・・・・・・ありがとう、エルド。」
エレンとアルミンはオスギリアスに匿われながら、エルドから精一杯のもてなしを受けた。
久しぶりにお腹いっぱいに食べ、そしてバックの中には食料を沢山詰めてもらえた。
―――――名残惜しさから俺たちは、ずっとエルドさんの元にとどまっていたいと思えたほどだったんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 41 : 2015/06/20(土) 14:19:52 :
夜明けを迎えたヘルム峡谷では、遂にウルク=ハイの軍勢は、ローハンの本隊によって駆逐された。
生き残ったウルク=ハイは我先にと逃げ始め、ピクシスをはじめとする騎馬隊が追跡していったのであるが・・・・・・。
イアン「!!! ファンゴルンの森に入るなッ!!!」
峡谷の出口に、昨日までそこになかったファンゴルンの森が広がっている。
ウルク=ハイはこの森の中に逃げ込んでいった。
と、次の瞬間、森の木が動き始めた。
木々の怒り、そして断末魔の悲鳴が聞こえ、静かになる頃には、ウルク=ハイが全員森に呑まれて消えていった。
大いなる自然の怒りを前に、ピクシスをはじめとした戦士たちは、ただ黙ってその様を見ることしかできなかった。
こうして、ウルク=ハイの軍勢は壊滅し、角笛城の戦いはローハンの勝利で終わったのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 42 : 2015/06/20(土) 14:20:46 :
戦いの後に待っていたのは、大量の死体の後片付けであった。
しばらくウルク=ハイの死体を集めていたアニが、斧が突き刺さったウルク=ハイの死体の上に座って休んでいるライナーを見つけた。
アニ「さて、最終討伐数は・・・・・・42体だ。」
競争の報告をするアニ。すると、ライナーは少し上から目線でこれに答えた。
ライナー「まぁエルフにしちゃ上出来じゃねえか。」
その言い方にムスッとするアニ。
アニ「あんたはどうなんだい?」
今度は得意げに答えるライナー。
ライナー「今俺の下にいるのが43体目だ。」
ゲシッ! ライナー「うおッ!!!」
不機嫌になったアニの一撃を喰らうライナーであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 43 : 2015/06/20(土) 14:27:47 :
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マルコ「いや~、それにしてもあそこからの眺めは格別だろうね。ふふふ・・・・・・。」
ジャン「特等席なんじゃねえか? くくく・・・・・・。」
――――――ジャンとマルコは水没したアイゼンガルドの浅瀬に立ち、ベランダの上で呆然自失しているサルマンを、笑いをこらえながら見つめていた。
ジャン「自分の作り上げたものが何もかも壊されて、塔の周りは水没、しかもエントたちがうようよいるとなりゃそりゃ格別だろ。」
マルコ「まぁ、自業自得だけどね。」
ジャン「にしても腹減ったな・・・・・・ホビット庄の食いもんがたらふく食えたらなぁ・・・・・・。」
マルコ「あれ、ジャン!?」
ジャン「ん? リンゴに・・・・・・七面鳥・・・・・・何でこんな食いもんが流れてんだ!?」
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- 44 : 2015/06/20(土) 14:28:50 :
彼らが食べ物をたどっていくと、城壁にある一部屋に辿り着いた。
マルコ「こ、これは!?」
ジャン「サルマンの食料庫だッ!!!」
――――――二人は飛び上らんほど大喜びした。
ジャン「おいマルコ、信じらんねえ・・・・・・。」
ジャンが二つの小さな樽を開けた。
マルコ「まさか・・・・・・長窪印かいッ!?」
長窪印――――――ホビット庄最高級のパイプ草である。
サルマンはパイプを吸うガンダルフを馬鹿にしていたのであるが、自分もその楽しみに気が付くと、密かにパイプを嗜んでいたのである。
ジャン「ああ、しかも一人一樽・・・・・・・・・・・・最高だッ!!!」
マルコ「見て、こっちにはビールだッ!」
ジャン「おいおい、塩漬けの豚まであるぜッ!?」
数時間後、ジャンとマルコはすっかり出来上がりましたとさ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 45 : 2015/06/20(土) 14:40:50 :
エルド「さて、この地下水路を進めばオスギリアスから出られる。」
エレンたちを精一杯もてなしたエルドは、名残惜しくはあったものの、彼らをこのオスギリアスの地下水路に案内した。
エレアル「「ありがとうございました。」」
二人はお辞儀をした。
アルミン「エルドさん・・・・・・・・・・・・あなたは・・・・・・立派な人でした。その・・・・・・ベルトルトのことで、あなたを傷つけて・・・・・・ごめんなさい。」
エルド「いや、君が正しい。君たちの様子を見て、指輪がいかに危険なしろものかを認識出来た。俺はもう指輪を見たいとも思わない。」
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- 46 : 2015/06/20(土) 14:41:49 :
エルドは次にスメアゴルを見た。
エルド「さて、お前はイシリアンの神聖な池に入った・・・・・・本来であれば死刑だ。だが、エレンとアルミンの道案内をする限り、これを許そう。もしお前が彼らに危害を加えるのならば、お前の上に死をもたらそう。」
そしてエルドは数歩下がり、三人を見送った。
エルド「さぁ行けッ! 君たちの上に、ヴァラールの加護があらんことをッ!!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 47 : 2015/06/20(土) 14:54:54 :
ガンダルフはリヴァイやアニ、ライナー、ピクシスとイアン、ハンネスらを伴い、角笛城を馬で出た。
ヘルム峡谷の前にある丘陵を登ると、遠く彼方にかの国の影を見つめることが出来た。
ガンダルフ「さて、モルドールの様子が見えるかの?」
アニ「やれやれ、噴煙がいつにもまして多くなってるね。」
ライナー「そりゃそうだろうな、サルマンが負けたとあって不機嫌なんだろッ!?」
リヴァイ「ちっ、気に入らねぇ。」
激しい雷を発生させ、かの国から燃え上がる噴煙はこれまでにないほど赤黒かった。
ガンダルフ「かの者の怒りは大きく、その報復は速やかじゃろう。ヘルム峡谷の戦いは終わった。じゃが、中つ国の命運を決める戦いはここからじゃ。」
目に見えて大きなサウロンの怒りは、これから起こる戦い、その前触れであった。
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- 48 : 2015/06/20(土) 15:32:06 :
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オスギリアスの地下水路を抜けたエレンとアルミンは、モルドールへと続く枯れ林の中を歩いていた。
アルミン「ねぇエレン・・・・・・もし僕ら冒険が物語になるとしたら、どんな感じになるんだろうね?」
エレン「な、なんだよいきなり?」
アルミン「ふふ、たぶんこんな風になると思うんだ。『ねぇ、エレンと指輪の話を聞かせてッ!』『僕、あの話大好きなんだッ!』って感じにさ。」
エレン「ダリスじいちゃんが俺たちに語ってくれたみたいにか?」
アルミン「うん。」
エレン「ちょっと待てよ、一つ忘れてる話があるぜ?」
アルミン「えッ!?」
エレンはアルミンを見つめた。
エレン「勇者アルミンのお話だ。」
アルミン「ちょっとエレンッ! からかわないでよ~ッ! 真面目に話してるんだからさ~ッ!」
エレン「くく、俺だってまじめだぜ? さて、行くか、アルミン!」
先に歩いていくエレン。
アルミン「・・・・・・・・・・・・勇者アルミンか。」
アルミンはエレンのあとを急いで追っていった。
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- 49 : 2015/06/20(土) 15:33:17 :
エレン「お~いッ! スメアゴル~! どこ行ったんだよッ!?」
アルミン「置いてくよッ!?」
スメアゴルがいなくなっていることに気が付いた二人は、彼を呼び始めた。
ゴラム「言った通りだっただろう? 奴らはお前を裏切った。」
スメアゴル「哀れなスメアゴルをもうほっといてよッ!」
――――――スメアゴルは自分の中のもう一つの人格に再び蝕まれていた。
ゴラム「お前を裏切ったやつらが憎くないのか? ゴラムッ! ゴラムッ!」
スメアゴル「そりゃ憎いよ・・・・・・・・・・・・でも、あのチビのホビット気が付くよ。」
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- 50 : 2015/06/20(土) 15:34:47 :
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その時、スメアゴルの頭にふと黒い考えが萌した。
スメアゴル「そうか・・・・・・・・・・・・あの女 にやらせりゃいいんだ。」
エレン「スメアゴルッ!!!」
スメアゴル「こっちよッ! 旦那ッ!」
木陰からひょっこり姿を現すスメアゴル。
アルミン「全く・・・・・・・・・・・・勝手にはなれないでよね。」
スメアゴル「モルドールまではもう少しよッ!」
エレン「やれやれ、やっとモルドールか・・・・・・。」
スメアゴル「ついてくるといいよ。」
エレンたちに背を向けたその表情は、悪意に満ちていた。
いよいよモルドールに近づくエレンとアルミン。
影の山脈の向こうでは、滅びの山が朦々と、赤黒い噴煙を上げていた。
To be continued to "The Return of the King"
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- 51 : 2015/06/20(土) 15:51:29 :
- 以上で二つの塔が終了になります。
次回はいよいよ最終章、王の帰還になります。
今までで一番長い話になると思うのですが、よろしくお願いします<m(__)m>
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- 52 : 2015/06/20(土) 17:27:57 :
- こちらが続きになります。
よろしくお願いします<m(__)m>
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