このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品は執筆を終了しています。
ピクシス「二つの塔」 ⑦ 進撃×ロード・オブ・ザ・リング
-
- 1 : 2015/06/16(火) 02:15:37 :
- 進撃×ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔 第11話です。
http://www.ssnote.net/series/2278
よろしくお願いします<m(__)m>
-
- 2 : 2015/06/16(火) 02:17:00 :
ピクシス「一万もの大軍が、ここに迫っておるじゃとッ!?」
ハンネス「おいおい、冗談じゃねえぞ?」
死の淵から帰還したリヴァイからの報告は、ローハンの歴戦の兵でさえ、震え上がらせるのには十分であった。
リヴァイ「クソめでたいことに、今日の夜遅くにはご到着だ。ちっ、気に入らねぇ。」
毒づくリヴァイに、ピクシスは暗い顔をしていった。
ピクシス「リヴァイ、ライナー、アニ・・・・・・ついてくるのじゃ。」
-
- 3 : 2015/06/16(火) 02:18:10 :
砦の外では、ローハンの民たちが所々壊れた城壁や門の補修に当たっていた。
補修された門の外に出、桟橋の上から強固な城壁を眺め、ピクシスは呟いた。
ピクシス「わしは長年いくさを戦い抜いてきた。この砦の防衛の仕方は心得ておるつもりじゃ。」
リヴァイ「・・・・・・だといいがな。」
ライナー「敵は愚鈍なオークなんかじゃねえ。手ごわいウルク=ハイどもだ。」
すると、ピクシスがこちらを向いていった。
ピクシス「わしにどうせよというのじゃッ!?」
-
- 4 : 2015/06/16(火) 02:19:24 :
-
アニ「あんたに同盟者はいないのかい? こんなに追い詰められているのに救援を出さないだなんて、考えられないけどね。」
ピクシス「救援か・・・・・・生憎、わしには盟友が存在せぬ。」
リヴァイ「ゴンドールに救援を出すのはどうだ。」
ピクシス「ゴンドールじゃとッ!?」
思わずピクシスの声に力が籠る。
ピクシス「わしらローハンの民が西の谷を襲撃されておったとき、奴らは何をしていたのじゃッ!? 古のゴンドールとローハンの同盟はとうに絶えた。わしは・・・・・・孤立無援なのじゃ。」
言葉の端々から、リヴァイは王の諦観を感じ取っていた。
ピクシス「これが最後の戦いになるというのなら、記憶されるに値する立派な最後にして見せようぞッ!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 5 : 2015/06/16(火) 02:20:10 :
「女子供は洞窟に避難し、武器を取れるものは戦いに参加せよッ!」
ローハンの民の内、幼い子供と女性が砦の後ろにある洞窟――――――燦光洞の中に避難し始めた。
リコ「ふざけるな、洞窟の中に避難しろだとッ!?」
ピクシスから命じられ、リコは怒り心頭であった。
リヴァイ「落ち着くんだな、リコ。」
リコ「これが落ち着いていられるかッ!?」
リヴァイは、リコを宥めるように言った。
リヴァイ「名誉無き勇気が必要な時もある。もしもの時は、テメエが民を率いて脱出できるようにとの、ピクシスの配慮が分からねぇわけじゃねえだろうな?」
-
- 6 : 2015/06/16(火) 02:21:58 :
リコは何も言い返せなかった。
リコ「・・・・・・分かっている。私のなすべきことを成す。」
――――――従うしかなかった。
リヴァイにまで説得されて、どうしてこれ以上反論できただろう。
リコ「・・・・・・ローハンの民は、あんたに心を支えられている。いいか、絶対に死ぬなッ!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 7 : 2015/06/16(火) 02:22:40 :
ピクシス「・・・・・・ハンネスよ、わしは何者じゃ?」
ハンネス「我らの、王であらせられます。」
砦の一番奥の部屋で、ピクシスは鎧をハンネスに着させ始めていた。
ピクシス「おまえは、わしの命とあらば、命を棄てて戦う覚悟があるのかのう?」
ハンネスは王の意図を測りながら、言葉を続けた。
ハンネス「王のご命令とあらば、ローハンの民はどこまでもついていきましょう。」
鎧を体にあてられながら、ピクシスは呟いた。
「そうか・・・・・・。」
-
- 8 : 2015/06/16(火) 02:23:24 :
――――――いったいどうして、こんなことに・・・・・・。
洞窟の中では、剣を握れると判断された老人や子供が戦力として召し出されていた。
それはさながら、口減らしのために選ばれるがごとしであった。
コニー「いい子で待ってんだぞ、マーティン、サニー。」
マーティン「やだよッ!!! 戦いに行かないでよッ!!!」
サニー「あんちゃんッ!!! あんちゃんッ!!!」
-
- 9 : 2015/06/16(火) 02:24:13 :
――――――栄光の日々は、遥か西方へと去っていった・・・・・・。
「さらばじゃ、ばあさんや・・・・・・。」
「わたしゃいつでも待っていますよ。」
-
- 10 : 2015/06/16(火) 02:24:36 :
――――――山々のあなた・・・・・・。
「お願いッ! 息子を連れて行かないでッ!!!」
「さよなら・・・・・・母さん・・・・・・。」
「あぁあぁあぁぁぁッ! うわあぁああぁあぁぁぁッ!!!」
ピクシス「・・・・・・・・・・・・闇の、中へ・・・・・・。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 11 : 2015/06/16(火) 15:16:20 :
アニ「ここにいるのは、老人や子供ばかりだ・・・・・・。」
砦の武器庫の中は、アニの言う通り、子供や老人が大勢を占めていた。
しかも、長い間しまわれて、ボロボロに痛んだ武器が供される始末で、まともな装備など、どこにもなかったのである。
アニ「兵士や馬はどこにいる。」
アニは苛立っていた。この・・・・・・あまりにも絶望的な状況に。
-
- 12 : 2015/06/16(火) 15:18:01 :
-
アニはその苛立ちを、リヴァイにぶつけ始めた。他のものには分からぬよう、エルフ語で。
アニ<リヴァイ・・・・・・この戦いに、勝ち目はない。>
リヴァイ「・・・・・・。」
アニ<周りを見なッ! 皆目が死んでいるッ! 300 対 10000・・・・・・・・・・・・どうやったら私たちは勝てるッ!?>
リヴァイ「・・・・・・。」
アニ<私たちは・・・・・・・・・・・・ここで終わりさ。>
リヴァイ「なら俺もここで最期を遂げてやるッ!!!」
突然怒鳴ったリヴァイに、武器庫の中は静まりかえった。
リヴァイ「・・・・・・・・・・・・ちッ。」
そのままリヴァイは、武器庫の外へと出て行ってしまった。
アニ「!!! リヴァイッ!!!」
ライナー「止めろ、アニ・・・・・・・・・・・・あいつの好きに、させてやれ。」
-
- 13 : 2015/06/17(水) 00:05:44 :
外に出たリヴァイは、戦闘の準備であわただしい子供や老人たちをよそに、一人座っていた。
リヴァイ「おいガキ・・・・・・お前、その剣を見せてみろ。」
少年「えっ!?」
リヴァイ「とっととしろ。」
少年「は、はいッ!」
リヴァイの目線にびくつきながら、子供は武器庫から支給された、傷んだ剣を差し出した。
剣を取ったリヴァイは、まるで確かめるように剣を振りまわす。
-
- 14 : 2015/06/17(水) 00:06:16 :
少年「・・・・・・皆言ってるよ、今日の夜が最後だって・・・・・・。」
すると、リヴァイが剣を振り回すのを止め、まっすぐ少年の目を見据えた。
リヴァイ「おいッ!」
少年「ひッ!」
リヴァイ「・・・・・・・・・・・・いい剣だな。」
少年「ふぇッ!?」
狐につままれたような顔をする少年をよそに、リヴァイは剣を返した。
少年は剣を見つめ、首を傾げた。
リヴァイ「・・・・・・お前は死ぬことを選ぶのか?」
少年「・・・・・・。」
リヴァイ「戦い続ける限り、希望はある・・・・・・分かったらとっとと失せろ。」
少年「・・・・・・うんッ!」
リヴァイ「・・・・・・いい表情だ。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 15 : 2015/06/17(水) 00:07:14 :
-
再び武器庫に入ったリヴァイはいくさ支度を始めた。
鎖帷子を着込み、その上から野伏の服を着、ベルトをきちっと締め上げる。
そして・・・・・・・・・・・・目の前に差し出された剣を取った。
アニ「悪かったね・・・・・・さっきは弱気になったよ。」
リヴァイ「・・・・・・一応受け取っておく。」
ライナー「くそ、楔帷子のサイズを直せたらな・・・・・・。」
ジャララララ・・・・・・
背の低いライナーにとって、大人用の鎖帷子は床にまで届く長さになってしまった。
アニ「・・・・・・・・・・・・くく。」
リヴァイ「・・・・・・・・・・・・ふっ。」
ライナー「胸のあたりが苦しいのが気になんだよな・・・・・・。」
-
- 16 : 2015/06/17(水) 00:08:53 :
アニ「!!! この角笛の音・・・・・・・・・・・・オークのものじゃないッ!?」
角笛城の中には驚愕と困惑が広がった。
「も、門を開けろッ!!!」
城門に続く桟橋の上を、エルフの軍団が整列して登ってくる。
思わぬ援軍に、ピクシスが当惑しながら姿を現した。
エルフの軍勢を率いてきたのは――――――ミケ。
ロスロリアンの森にすむエルフたちの軍勢を率いてきたのである。
ピクシス「夢でも・・・・・・見ておるのか?」
ミケ「・・・・・・裂け谷のエルヴィンからの伝言だ・・・・・・・・・・・・古来エルフと人間は同盟を結び、共に戦い、友に死んだ仲。」
リヴァイ「ミケッ!!!」
ミケ「フッ・・・・・・・・・・・・今ここに、同盟を果たしにやってきたぞ、リヴァイ。」
精強なエルフの戦士たちが一斉にこちらを向いて整列する。
いずれも美しい鎧、強力な弓と剣に身を包んだエルフたちの心強い参戦。
戦いのときは、迫っていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 17 : 2015/06/17(水) 00:23:47 :
城壁の上と背後にエルフの軍。
砦にはローハンの軍が展開し、その時を静かに待っていた。
谷の向こうに、松明らしき光が見え始める。
黒蟻が群がってくるかのごとく、一万ものウルク=ハイの大軍が遂に見える位置にまで進軍してきたのだ。
城壁の上にはリヴァイとアニ、そしてライナーとミケも待機している。
リヴァイがエルフ語で、エルフたちに檄を飛ばす。
リヴァイ<敵にいっぺんの慈悲もかけるなッ! 慈悲を持たねえクズ野郎どもだッ!>
-
- 18 : 2015/06/17(水) 00:38:11 :
-
ライナー「城壁が高くて何も見えねぇ! どうなってんだッ!」
アニ「踏み台でもいるのかい?」
ライナー「ん?」
アニ「解説してあげようか?」
からかられたライナーは、この野郎といわんばかりに笑い始めた。
リヴァイがライナーとアニのそばに戻り、敵軍の様子を伺う。
ゴロゴロゴロゴロ・・・・・・
ドォォォォン
夕立の雷鳴轟き、雨が降り始める。
その雨音にもかき消されないほどの足音を立てて、ウルク=ハイの大軍は城壁の少し手前まで進軍してきた。
-
- 19 : 2015/06/17(水) 00:38:46 :
ウルク=ハイ「ウオオオオオオッ!!!」
岩に上った指揮官役のウルク=ハイが剣を空に突き上げる。
それを合図に軍は進軍を止め、全員が立ち止った。
全員が黒の鎧を着こみ、城壁の上にまで届くほどの長槍を持つ兵もいる。
ウルク=ハイ「ウオオオッ!!! ウオオオオオッ!!!」
ドンッ!!! ドンッ!!! ドンッ!!! ドンッ!!!
長槍で地面を突き、一斉に威嚇し始めるウルク=ハイの大軍。
ピクシス「構えよッ!」
ピクシスの合図で一斉に弓を引き絞るローハンの兵たち。
-
- 20 : 2015/06/17(水) 00:40:44 :
-
ドンドンッ!!! ドンドンッ!!! ドンドンッ!!! ドンドンッ!!!
ますます激しく音を立てるウルク=ハイ。
あるものは長槍で地面をたたき、あるものは自らの鎧を叩く。
リヴァイは静かに剣を抜いた。
ドンドンッ!!! ドンドンッ!!! ドンドンッ!!! ドンドンッ!!!
ますます激しく、自らを鼓舞し、相手を威嚇。
打ち鳴らす一万の大音響が、雨の中に谺する。
ドスッ! ウルク=ハイ「グオッ!?」
-
- 21 : 2015/06/17(水) 00:42:13 :
-
リヴァイ<!!! 待てッ!!!>
ローハンの老人兵の一人が、震えから引き絞った弓を離し、矢を放ってしまった。
ウルク=ハイ「ウウウ・・・・・・。」ドサッ
射られたウルク=ハイは、静かに倒れた。
ウルク=ハイ「ウウウウウッ!」
ウルク=ハイ「オオオオオオッ!!」
ウルク=ハイ「グウウウウウッ!!!」
――――――ウルク=ハイたちのなかに渦巻く激しい怒り。
ウルク=ハイ「グオオオオオオオオオッ!!!」
指揮官役のウルク=ハイが再度剣を突き上げ、その怒りを解き放った。
――――――進撃するウルク=ハイ。一万もの大軍が動き出した。
ピクシス「・・・・・・・・・・・・始まったな。」
第11話
角笛城の戦い
-
- 22 : 2015/06/17(水) 00:55:44 :
-
リヴァイ<構えッ!!!>
エルフの戦士たちが一斉に弓を引く。
アニ<奴らの鎧は、首と、脇が弱点だよ。>
リヴァイ<放てッ!!!>
城壁の上のエルフたちが一斉に矢を発射。
ドスッ! ウルク=ハイ「グウゥッ!」
先陣を切って壁に突撃してくるウルク=ハイたち――――――その首筋や、腋の下に矢が命中。
一度に多くの敵兵をなぎ倒した。
ピクシス「わしらも射よッ!」
ハンネス「撃てッ!!!」
角笛城の上から大量の矢が降り注ぎ、ウルク=ハイたちを駆逐していく。
その降り注ぐ矢が、地面をみるみる黒い血で染めていく。
ライナー「あ、当たったのか!?」
-
- 23 : 2015/06/17(水) 01:06:06 :
-
リヴァイ<第二陣、放てッ!!!>
城壁の後ろに待機するエルフたちも、城壁の上に向かって矢を放つ離れ業をやってのける。
矢は城壁の兵の上を飛び、進撃してくる敵へと飛び込んでいく。
多くのウルク=ハイが悲鳴を上げて倒れていく中で、それでもなお敵は進撃を止めない。
弩を構えたウルク=ハイが、反撃とばかりに黒い矢を放つ。
ヒュンッ! エルフ「ぐあッ!」
ヒュンッ! エルフ「うわあぁあぁぁッ!」
矢はエルフたちの頭や喉を貫き、城壁を血で染めた。
ウルク=ハイの大軍が壁の真下まで殺到。
すると、高い壁を上っていくための、鉄製の梯子が何本も姿を現した。
その梯子に何体ものウルク=ハイが掴まる。
リヴァイ<剣を抜いて応戦しろッ!!!>
一斉に剣を抜くエルフ達。
ライナー「来やがれッ!!!」
カンッ!
城壁にかけられた梯子から、ウルク=ハイの兵士たちが次々とよじ登ってきた。
-
- 24 : 2015/06/17(水) 01:07:34 :
-
城壁の上で激しく剣を交えるエルフとウルク=ハイ。
リヴァイ「はぁッ!」
ミケ「はッ!!!」
リヴァイが鋭い斬撃で敵を切り裂き、ミケが力強い斬撃で圧倒する。
―――――二人の手が、たちまち黒い血で汚れていく。
ライナー「おらぁッ!!!」
待っていたとばかりに斧を振るうライナー。
登ってきた敵の頭をかちわり、さらに隣のはしごから登ってきた敵の腹部を切り裂く。
ライナー「おいアニッ! 2人討ったぞッ!!!」
アニ「ふん、私はもう17人だねッ!」
―――――弓で敵を迎え撃っていたアニは既にそこまで敵を倒していた。
ライナー「なッ! エルフには負けねぇぞッ!!!」
大きく斧を振り回し、敵を一気に薙ぎ払うライナー。
アニ「フンッ!!!」
手早い弓の一撃であっという間に二人の頭を射抜くアニ。
アニ「19人ッ!!!」
ライナー「この戦いッ!」
アニ「負けられないねッ!」
ライアニ「「うおおぉおぉぉッ!!!」」
お互いに意地を張り合う二人。
そんな彼らの元に、敵は容赦なく押し寄せた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 25 : 2015/06/18(木) 17:14:03 :
リヴァイたちが必死に戦っている間、ジャンとマルコはずっっと待ちぼうけを喰らっていた。
古いエント語によるエントムートがなかなか終わらず、ジャンはかなり苛立っていた。
漸く、エントの最長老である木の髭がこちらを向いた。
ジャン「結論は・・・・・・出たのかよ?」
木の髭「うむ・・・・・・・・・・・・お前たちのことじゃが、お前たちがオークでないということで、皆の意見が一致した。」
マルコ「それは・・・・・・・・・・・・よかったね?」
-
- 26 : 2015/06/18(木) 17:14:26 :
ジャン「ふざけてんのか? 戦いのことはどうなったんだよッ!?」
エントたちが互いに顔を見合わせる。
すると、木の髭は宥めるように話し始めた。
木の髭「そう焦るな、ジャン。古いエント語は話すのに時間がかかる。それでわしらは滅多に口を開かんのじゃ。」
ジャン「あせんなだと!? 俺の友人たちは今戦ってんだよッ!!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 27 : 2015/06/18(木) 17:14:57 :
-
ライナー「17ッ! 18ッ! 19ッ!! 20ッ!!!」
ウルク=ハイのかけた梯子と梯子の間に立ち、交互に斧を突き出しては討伐数を増やしていくライナー。
リヴァイ<桟橋に射かけろッ!!!>
ウルク=ハイたちが隊列を組み、矢が当たらないように頭上に盾を張りながら桟橋を登り、ゆっくりと城門に近づいていた。
リヴァイの合図でエルフたちは桟橋へ集中砲火。前進を妨げる。
ローハンの兵たちも城門の上から投石や投槍。あるいは矢を射かけてこれを妨害した。
ピクシス「この程度か? サルマンよ。」
-
- 28 : 2015/06/18(木) 17:15:41 :
すると、ウルク=ハイの別働隊が密かに城壁の排水溝に侵入。
球状の鉄を二つ積んだ――――――――その中に詰め込まれているのは、火薬。
リヴァイ「!!!」
リヴァイはこの時、松明をもって走ってくるウルク=ハイを見た。
なぜかこのウルク=ハイのために周りが鼓舞し、道を開けている。
リヴァイ<アニッ!!! 奴を射ろッ!!!>
反応したアニが即座に弓を射かける。
ところが、左肩を射られても走ることを止めない。
リヴァイ<殺せッ!!! 殺せッッ!!!>
アニ「くッ!!!」
今度は右肩を射た。なのに奴は止まらない。
ウルク=ハイ「グオオォオォォッ!!!」
そのままウルク=ハイは排水路に飛び込んだ。
-
- 29 : 2015/06/18(木) 17:16:18 :
ドゴオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!
-
- 30 : 2015/06/18(木) 17:17:06 :
ピクシス「なッ!?」
炸裂する二つの巨大な爆弾。
その爆発は城壁の一部を吹き飛ばし、近くにいたリヴァイを城壁の後ろに吹き飛ばし、少し離れたライナーを転倒させた。
ピクシス「壁が・・・・・・・・・・・・壊されたじゃとッ!?」
―――――城門への隊列は、おとりじゃったのかッ!!!
バシャアァアァァッ!!!
排水溝にたまっていた水が一気に外へ流れ出る。
やがてそれが収まると、吹き飛ばされた城壁からウルク=ハイが侵入し始めた。
-
- 31 : 2015/06/18(木) 17:18:16 :
ガシャガシャガシャガシャ・・・・・・・・・・・・
ピクシス「!!!」
桟橋の隊列の中で、何かが走ってくる音がする。
と次の瞬間、破城槌が隊列の中から姿を現し、城門を壊しにかかり始めた。
ピクシス「城門を守れッ!!!」
―――――しまったッ!
これは二重の罠じゃったのかッ!!!
城門に気を取られているうちに城壁を爆破。
そして、城壁に気を取られている隙に城門を突破。
―――――ローハンは、サルマンの策に落ちてしまった。
-
- 32 : 2015/06/18(木) 17:18:51 :
リヴァイ「・・・・・・ぐうっ!」
吹き飛ばされたリヴァイがようやく体を起こし始める。
そこに、ウルク=ハイの大軍が迫る。
ライナー「!!! リヴァイッ!!!」
同じく体を起こしたライナーがリヴァイの危機を察した。
ライナー「うおおおぉおぉぉッ!!!」
城壁の上からウルク=ハイの大軍の中へ飛び込むライナー。
上空からのタックルで敵をなぎ倒し、斧を大きく振り回して敵を蹴散らす。
だが、敵は余りに多すぎた。
ドカッ! ライナー「ぐあッ!!!」
一撃を喰らい、転倒して水の中へと倒れ込むライナー。
-
- 33 : 2015/06/18(木) 17:19:36 :
リヴァイ「ライナーッ!!!」
リヴァイは剣を上げ、城壁の後ろに待機していたエルフに合図。
リヴァイ<撃てッ!!!>
エルフの矢が一斉にウルク=ハイを襲い、ライナーの危機を救った。
リヴァイ<剣を抜けッ!!!>
一斉に剣を抜くエルフたち。
リヴァイ<突撃ッ!!!>
エルフの隊列が走り出し、壁内に侵入したウルク=ハイの大軍めがけて突撃していく。
ウルク=ハイも隊列を組み、長槍をまっすぐに突き立てる。
リヴァイ「はぁああぁぁぁぁッ!!!」
剣で長槍をはじき、突撃、敵を斬り伏せるリヴァイ。
ドスッ! エルフ「ぐあッ!」
何人かのエルフが長槍をさばけずに串刺しになる。
それでも5人に4人は長槍を突破し、壁内は混戦状態に陥った。
-
- 34 : 2015/06/18(木) 17:20:10 :
-
アニ「ライナーッ!!!」
城壁の上にいたアニが駆け出し、ウルク=ハイの盾を奪うと階段の上に投げ、自分はその上に乗った。
階段を滑り降りながら弓を連射し、飛び降りて着水。
アニ「大丈夫かいッ!?」
倒れたライナーの右手を掴んで引っ張り上げた。
ライナー「す、すまねぇ、アニ。」
アニ「無茶するね、アンタも。」
ライナー「お前だってそうだろうがッ!?」
二人はお互いを鼻で笑うと、再び武器を取ってウルク=ハイの討伐競争を再開した。
城壁を破壊され、ますます劣勢へと追いやられるローハン。
――――――長い夜は、まだ続いていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 35 : 2015/06/18(木) 22:08:36 :
- いやはやいやはや…話が重くなってきましたね…!!
-
- 36 : 2015/06/19(金) 08:53:46 :
- いつもコメントありがとうございます。
いよいよ重くなってきました。
話は変わりますが、番外編の一つが書き終わりましたので、そちらもよろしくお願いします<m(__)m>
-
- 37 : 2015/06/19(金) 08:54:27 :
木の髭「これだけは分かって欲しいのじゃ、ジャン。」
膝をついた木の髭は、いかにも分別を聞かせているという風に話しかけた。
木の髭「わしらエントには、この嵐は止められん。」
木の髭のこの言葉に、ジャンは遂に切れた。
ジャン「だから見捨てるってのかッ!? テメエらも世界の一員だろうがッ!!!」
だが、ジャンのこの言葉も、エントたちを動かすことが出来なかった。
木の髭「お前は勇敢じゃ、ジャン。じゃが、お前の役割は終わった。」
最長老のエントはこれまでと変わらない様子で答えた。
木の髭「お前たちにもうできることはない。故郷に帰るのじゃ。途中までは送ろう。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 38 : 2015/06/19(金) 08:55:08 :
マルコ「・・・・・・仕方がなかったんだよ、ジャン。」
失意の親友を慰めるように、マルコは話しかけた。
マルコ「俺たちホビットに戦争なんて、身の丈に合わない話だったんだよ・・・・・・・・・・・・故郷に帰ろう、ジャン。」
ジャン「はッ、そうだよな。」
ジャンは吐き捨てるように言った。
ジャン「だがよ、闇の勢力が勝っちまえば、俺たちの故郷だって消えちまうんだ。」
マルコ「!!!」
ジャン「俺たちには・・・・・・黙ってこれを見ることしか出来ねぇってのかよ・・・・・・。」
――――――自分に力がないのがもどかしい。
俺たちにもっと・・・・・・・・・・・・力があれば。
ジャンはそう思わずにはいられなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 39 : 2015/06/19(金) 08:55:48 :
-
ドゴォン!!!
ウルク=ハイの破城槌によって、城門の閂にひびが入り始める。
この状況を見たピクシスは決断を迫られた。
――――――城壁は既に破られた。
このまま破られた城壁に兵力を割くのは・・・・・・・・・・・・得策ではない。
ピクシス「リヴァイッ!!! 砦に撤退せよッ!!!」
ピクシスは峡谷中に響く声でリヴァイに命じた。
ピクシス「ハンネス! おまえも剣を抜けッ! 城門へ向かうぞッ!」
ハンネス「はッ!」
そう言ってピクシスは剣を抜くと、城門へと向かい始めた。
-
- 40 : 2015/06/19(金) 08:56:57 :
リヴァイ<撤退だッ! 砦の中に引けッ!!!>
ピクシスの命を受けたリヴァイは、エルフたちに砦の中に戻るよう命令した。
リヴァイ<ミケッ!!!>
リヴァイは城壁の上で戦っていたミケに、壁内から声をかけた。
リヴァイ<撤退しろッ!!!>
ミケもまた頷き、仲間のエルフたちに呼びかけた。
ミケ<撤退だッ!!!>
エルフの軍勢が引き上げ始め、角笛城の中に撤退し始める。
ミケはその殿を務め、何とか時間を稼ごうと剣を振るった。
-
- 41 : 2015/06/19(金) 08:57:36 :
ザシュッ! ミケ「ぐッ!!!」
敵の斬撃を右手に喰らい、傷を負うミケ。
ミケ「はぁッ!!!」
傷を負わせた敵の一瞬の隙を突き、剣を腹部に突き立ててこれを斬り捨てた。
ミケ「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・。」
息を大きく乱すミケ。
手に力を入れて再び剣を握りなおしたその時だった。
ドシュッ! ミケ「あッ・・・・・・。」
後頭部に、剣の一撃。
そのままミケは、膝をついた。
リヴァイ「!!! ミケッ!!!」
リヴァイが城壁へ駆けのぼり、ミケを後ろから支えようと隣にしゃがんで右腕を肩に回す。
-
- 42 : 2015/06/19(金) 08:58:30 :
-
カクン
だが、もう既にミケは事切れ、無表情に目を開いた頭が、リヴァイの腕にもたれかかった。
リヴァイ「・・・・・・。」
ゆっくりと、リヴァイは左手をミケの胸にあてた。
と、次の瞬間、丁度梯子から城壁に上ってきたウルク=ハイに鉄拳を喰らわせて吹き飛ばし、自ら梯子に掴まって城壁を蹴った。
梯子はウルク=ハイの軍の中に倒れ込み、リヴァイは大軍の中に飛び込んだ。
リヴァイ「はあぁああぁぁぁぁッ!!!」
これ以上ないほどの素早い動きがリヴァイの武器。
ウルク=ハイたちの間をすり抜け、腹部や喉を素早く切り裂いていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 43 : 2015/06/19(金) 14:47:19 :
-
砦の城門は危機に瀕していた。
バキャァッ!!!
破城槌によって扉に穴が開き、そこから弩の一撃が放たれる。
「ぐあぁッ!」
「うわぁあぁッ!」
放たれた矢が老人や子供たちに突き刺さる。
ハンネス「こっちも撃てッ!!!」
コニー「うおおぉおおぉッ!!!」
ローハンの兵たちも弓で応戦し、入り口に群がるウルク=ハイたちを一掃していく。
だが、兵力の差は歴然で、倒しても倒しても、後から後から後詰の兵が現れた。
ガシッ! ハンネス「ぐはッ!」
ウルク=ハイに首を掴まれるハンネス。
ピクシス「はぁッ!!!」 スパァッ!
その腕を、ピクシスの名剣ヘルグリムが両断した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 44 : 2015/06/19(金) 14:47:58 :
-
その頃、壁の外にいる敵軍に新たな動きがみられた。
ビュンッ!!!
砦の高い城壁めがけ、巨大な弩から、紐のついた錨が発射。
それを支えに巨大な梯子が持ち上がり、砦に直接架けてきたのだ。
砦の中に敵兵が入り込んでくる。
老人や子供たちが中心のローハンの兵たちに、屈強なウルク=ハイが容赦なく襲い掛かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 45 : 2015/06/19(金) 14:50:38 :
ドスッ! ピクシス「ぐっ!」
敵の槍が、城門内で戦うピクシスの右わきを捉えた。
ピクシス「ぬうう・・・・・・うおおあああッ!!!」
負けじとピクシスも槍を持ち、突き刺してきた敵の喉を突き返した。
ズボッ!
ハンネス「どけッ! 王が手傷を負われたッ!」
傷は浅かったが、手当は必要であった。城門から撤退していくピクシス。
-
- 46 : 2015/06/19(金) 14:51:16 :
リヴァイ「大丈夫かッ! ピクシスッ!?」
丁度城壁から撤退してきたリヴァイやライナーと合流。
ピクシス「大丈夫じゃ・・・・・・お前たちで時間を稼いでくれッ!」
リヴァイ「どれくらい稼げばいいッ!?」
ピクシス「可能な限り長くじゃッ!」
城門は、破られる寸前まで破損していた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 47 : 2015/06/19(金) 14:52:00 :
バタンッ!
リヴァイとライナーは、砦の右わきにある勝手口から外に出た。
少し岩場を回り込むと、向こうに城門の桟橋が見える。
-
- 48 : 2015/06/19(金) 14:52:33 :
ライナー「よし、ここから奇襲できるな。」
リヴァイ「・・・・・・遠いぞ?」
ライナー「!!!」
今いる岩場から、城門前までの桟橋は、ライナーでは飛び越えられないほど遠かった。
リヴァイ「聞こえないな。」
ライナー「飛べないから投げろッ!」
いかにも恥ずかしそうな様子のライナー。
背中を掴まれると、アニにはいわないでくれとライナーは念を押した。
-
- 49 : 2015/06/19(金) 14:53:11 :
-
リヴァイ「ふん、誰にも言わねえよ。」
力いっぱい桟橋めがけてライナーを投げるリヴァイ。
ライナー「うおおおぉおぉぉッ!!!」
突然のライナーアタックに蹴散らされるウルク=ハイ。
リヴァイ「はあぁああぁぁぁぁッ!!!」
続いてリヴァイも飛び上って桟橋に着地。
リヴァイの剣とライナーの斧が、城門に近づくウルク=ハイを血祭りにあげていく。
ピクシス「今じゃ。横木で門を補強せよッ!!!」
兵たちが次から次へと横木を城門に並べていく。
-
- 50 : 2015/06/19(金) 14:53:42 :
しばらく城門の前でリヴァイとライナーが戦い続けていると、城門の隙間からピクシスが声をかけた。
ピクシス「もう十分じゃ、そこから引けッ!!!」
ドンッ!
城門の隙間は、横木で塞がれた。
-
- 51 : 2015/06/19(金) 14:54:07 :
-
アニ「ライナーッ! リヴァイッ! 掴まりなッ!!!」
二人を救出すべく、アニが砦の上から縄を投げた。
縄に掴まったリヴァイとライナーを、アニが渾身の力でゆっくりと引き上げていく。
パシッ!
アニがライナーの手を取り、砦の上に引っ張り上げ、ついでリヴァイも引っ張り上げた。
ライナー「助かったぞ、アニ。」
アニ「礼なら生き残ってから言うんだね。」
ライナーの言葉に、アニは皮肉で応じた。
-
- 52 : 2015/06/19(金) 14:54:36 :
-
――――――もうこの砦は、もたない。
息を切らしたピクシスが、ハンネスに命じた。
ピクシス「く・・・・・・ここはもう限界じゃ・・・・・・砦の中に撤退せよ。」
ピクシスの命を受け、ハンネスは叫んだ。
ハンネス「砦の中に撤退しろッ!!!」
「撤退だッ!!!」
砦の中に逃げ込み始める兵士たち。
バキャアッ!!!
「城門が破られたッ!!! 敵が入ってくるぞッ!!!」
横木で補強した城門も、遂に破られた。角笛城は、それを守る城壁も城門も失った。
破られた城門から、敵軍が押し寄せてくる。
――――――――――――夜明けが来る前に、ローハンの民は砦 の中に追い込まれてしまった。
-
- 53 : 2015/06/19(金) 15:11:39 :
- 以上で第11話が終了になります。
次回が二つの塔の最終話になります。
ここまで本当に長かった・・・・・・次回もよろしくお願いします<m(__)m>
- 著者情報
- この作品はシリーズ作品です
- 「進撃の巨人」カテゴリの人気記事
- 「進撃の巨人」カテゴリの最新記事
- 「進撃の巨人」SSの交流広場
- 進撃の巨人 交流広場