このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品は執筆を終了しています。
ピクシス「二つの塔」 ⑤ 進撃×ロード・オブ・ザ・リング
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- 1 : 2015/06/06(土) 21:12:05 :
- 進撃×ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔 第7話です。
http://www.ssnote.net/series/2278
よろしくお願いします<m(__)m>
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- 2 : 2015/06/06(土) 21:13:09 :
イシリアン――――――ゴンドールの領内にあって、ゴンドールの庭と称される緑豊かな森。
かつてゴンドールには三つの主要都市があった。
大河アンドゥインの中央にある川中島を中心に築かれた星々の砦 ――――――かつてゴンドールの王宮が置かれていた都市。
オスギリアスから西には守護の塔 ――――――かつては太陽の塔 と呼ばれた弟王アナリオンの居城。現在はここに王宮が置かれており、ベルトルトの故郷でもある。
東にはかつて兄王イシルドゥアの居城であった月の塔 ――――――現在はナズグルたちの手に落ち、アングマールの魔王の居城。呪魔の塔 として知られている。
エレンたち一行は、ここイシリアンを通り、ミナス・モルグルのあるモルグル谷へ向かっているところであった。
第7話
イシリアンの森
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- 3 : 2015/06/06(土) 21:24:59 :
- お久しぶりです!番外編も見ました!期待です!!
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- 4 : 2015/06/06(土) 21:30:36 :
- いつも期待ありがとうございます!
番外編にはいろいろと伏線を張ってます。
例えば、シルマリルに出てくるエレンとミカサの子孫がゴンドールの王家であり、リヴァイはその最後の末裔だったりします。
エレンが持っているガラドリエルの玻璃瓶の光が、実は何の光かも後々書いていきますのでよろしくお願いします<m(__)m>
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- 5 : 2015/06/08(月) 16:45:59 :
ゴラム「はぁッ! はぁッ!」
イシリアンの川に入り、何とか魚を必死に捕まえようとするゴラム。
そんな様子を、アルミンは苦々しい顔をして見つめていた。
アルミン「そんなに遠くに行くなよ、臭いのッ!」
アルミンはゴラムに対して暴言連発であった。
そして、そんなアルミンに機嫌を損ねてエレンはアルミンを窘める。
エレン「おいやめろ、アルミン。傷つく言い方だ。」
アルミン「だって、そういうやつなんだよ?」
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- 6 : 2015/06/08(月) 16:46:41 :
エレンは魚取りに必死なゴラムを見やった。
自分の名前を思い出してからというもの、ゴラムはどこか生き生きしている。
あれが、本来のスメアゴルなのかもしれない。
エレン「あいつは、もともとそういうやつじゃなかったと思うんだ。多分、指輪のせいだ。」
アルミンはやはり不審な顔でエレンを見つめた。
アルミン「はぁ、君は変わったね・・・・・・。」
その言葉は、エレンの逆鱗に触れた。
エレン「テメエはどうなんだよッ!?」
アルミン「えっ?」
エレン「前から聞いてりゃゴラムを殺すことばかり考えやがってッ! テメエには優しさってもんがねえのかよッ!?」
アルミン「何言ってるんだいッ!? 僕は、君のためを思って―――――「誰がテメエに守ってくれって頼んだんだよッ!!!」
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- 7 : 2015/06/08(月) 16:47:24 :
――――――思わずエレンは言い過ぎ、それはアルミンの感情に火をつけてしまった。
アルミン「ふざけるなよッ!!!」
エレンに負けないくらいの大きな声で、アルミンは怒鳴った。
アルミン「君が背負っている重荷のために、僕は力になってあげたいと思っているのに、その言いぐさは無いじゃないかッ!!!」
エレンは呆然自失した――――――俺は今、親友に向かって何を言ったんだ?
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- 8 : 2015/06/08(月) 16:48:10 :
アルミン「・・・・・・ごめん、僕も言い過ぎたよ。」
そんなエレンの様子を見たアルミンは、少し頭を冷やして言った。
エレン「アルミン・・・・・・俺・・・・・・。」
アルミンはエレンを宥めるように言った。
アルミン「分かってるよ・・・・・・指輪のせいなんだね。」
エレン「知った風な口を聞くんじゃねえッ!!!」
アルミン「エ、エレン!?」
指輪に話が触れた途端、エレンは猛然と怒りはじめた。
エレン「これは俺に課せられた使命だッ! 俺の・・・・・・俺だけのものだッ!!!」
背を向けて歩き始めたエレンに、アルミンは再び怒鳴った。
アルミン「その言いぐさ・・・・・・誰かに似ていると思わないのかッ!!!」
一瞬足を止めたエレンは、しかし、振り返ることなく歩き始めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 9 : 2015/06/08(月) 21:48:42 :
- よく考えるとアルミンはいつでも正解を導き出せるからか…!
期待です!
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- 10 : 2015/06/10(水) 01:48:37 :
- いつもコメントありがとうございます!
今日は夜遅くなって申し訳ないです。
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- 11 : 2015/06/10(水) 01:48:48 :
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結局二人はそれから一度も口を利かず、そのまま日が暮れて眠りについた。
さて、ゴラムはそのような関係になった二人を見て、頭を悩ませていた。
というのも、エレンによって忘れ果てていた自分の名前を思い出して以降、失っていた自我を取り戻しつつあったからだ。
ゴラム『あいつらは汚い盗人よ。わしらから愛しいしとを盗んだ。』
ゴラムの中の悪しき人格がしゃべりだす。すると、それに受け答えをするように、スメアゴルがしゃべりだした。
スメアゴル「でも旦那は違うよ。旦那わしらのことを気にかけてくれてるよ。」
ゴラム『違わないさ、あいつわしら裏切るよ。』
スメアゴル「違うよ・・・・・・旦那はわしの、友達よ。」
―――――――名前を思い出すきっかけをくれ、アルミンから守ってくれるエレンのことを、スメアゴルはいつしか友人とみなしていた。
勿論アルミンには苦々しい感情しかなかったのであるが・・・・・・。
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- 12 : 2015/06/10(水) 01:50:25 :
すると、ゴラムはスメアゴルを嘲るように言った。
ゴラム『お前に友人なんかいないよ。』
耳を覆うスメアゴル。
スメアゴル「止めろ・・・・・・聞きたくない。」
ゴラム『その上・・・・・・・・・・・・人殺しだ。』
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- 13 : 2015/06/10(水) 01:51:10 :
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その言葉を聞き、スメアゴルは瞳に涙を浮かべた。
スメアゴル「お前が憎いよ、愛しいしと。」
―――――――――指輪の魔力に魅せられながら、スメアゴルは指輪を最も嫌っていた。
自分をこんな姿に変え、あまつさえ卑しい身に成り果てたのに、指輪は未だ自分を魅了してやまない・・・・・・・・・・・・愛憎の因縁にスメアゴルは囚われていたのだ。
(ついでながら、同じ苦悩に囚われつつあるエレンにはスメアゴルの苦悩を理解でき、アルミンには全く理解できなかったために、二人の関係には亀裂が入りはじめていた。)
ゴラム『それは無理だ、スメアゴル。わしが居なければお前は生きられないよ。』
馬鹿にするように笑いながら言うゴラムに、スメアゴルは決意を持って言った。
スメアゴル「もう・・・・・・二度と・・・・・・わしの前に現れないでッ!」
ゴラム『なに?』
スメアゴル「もう・・・・・・二度と・・・・・・現れないでッ!!」
ゴラム『嫌だッ!』
スメアゴル「もう・・・・・・二度と・・・・・・現れないでッ!!!」
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- 14 : 2015/06/10(水) 01:52:42 :
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しばらくたってもゴラムが現れないので、スメアゴルはあたりを見渡した。
スメアゴル「やった・・・・・・やったぞッ! 愛しいしとが消えたッ!!」
ゴラムの人格が消え去り、スメアゴルは喜びのあまりその場でピョンピョンと飛び跳ねた。
スメアゴル「スメアゴルは自由だッ!!!」
漸く因縁から解放されて、スメアゴルはその思いのたけを口にした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 15 : 2015/06/10(水) 21:15:34 :
- 愛しい人が消えた!ってよく考えるとおかしいww期待です!
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- 16 : 2015/06/11(木) 18:45:12 :
- 確かにおかしいですね。それだけゴラムの人格は相矛盾するところなのだと思います。
愛していながら、憎んでいる・・・・・・難しい。
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- 17 : 2015/06/11(木) 18:45:28 :
スメアゴル「はぁッ! はぁッ!」
ドサッ! エレン「おわッ!」
エレンたちが休憩を取っていると、スメアゴルはどこからかとってきた獲物を二羽持ってきた。
スメアゴル「旦那見るよ、新鮮なウサギだよッ!」
エレン「お、お前が獲って来てくれたのか!? スメアゴル!?」
思わず笑みのこぼれるエレンに、アルミンは不機嫌そうにそっぽを向いた。
スメアゴル「ほら、新鮮でおいしい生肉よ。」ベキッ!
エレン「!?」
するとゴラムはウサギの肉にそのまま齧り付き始めた。
アルミン「ああもう駄目だよ、ゴラムッ!」
アルミンがいきなりスメアゴルから肉を取り上げた。
アルミン「こいつの食べ方は決まってるんだ。」
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- 18 : 2015/06/11(木) 18:46:09 :
スメアゴル「うわあぁああぁぁぁッ!!!」
アルミンがウサギ肉を調理し始めるとスメアゴルが悲鳴を上げた。
アルミン「なに? 文句あるの?」
スメアゴル「チビのホビットさん馬鹿よ! ウサギ肉を・・・・・・シチューにするなんてッ!!!」
アルミン「シチュー美味しいじゃないッ!」
エレン「アルミンの作るシチュー上手いんだぞッ!?」
アルミン「僕らの故郷の味だからね・・・・・・後はジャガさえあればな・・・・・・」
スメアゴル「ジャガ? ジャガって何よ?」
アルミン「ジャガイモさ。」
スメアゴル「うわあぁああぁぁぁッ!!! やっぱり馬鹿よッ!!!」
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- 19 : 2015/06/11(木) 18:46:53 :
自分の頭に関して少なからず自信のあるアルミンにとって、馬鹿呼ばわりされるのはちょっと気に入らなかった。
アルミン「君はジャガイモの素晴らしさを分からないのかい? 揚げたジャガイモに揚げた魚、そしてビールッ!」
スメアゴル「ぶぅぅぅぅッ!」
まるで何か吐き出すような音を立てるスメアゴル。
アルミン「いかにもおいしそうじゃないかッ!?」
スメアゴル「油で揚げるなんてどうかしてるよッ! ・・・・・・わしらは生で食べるぞッ! 馬鹿なおチビさんは揚げたもの食べるといいよ。」
アルミン「・・・・・・・・・・・・どうしようもないな。」
エレン「ま、まぁせっかく作ったんだし、一緒に食おうぜ、アルミン。」
こうしてエレンとアルミンは久しぶりにレンバス以外の食糧を口にした―――――一方スメアゴルは生肉を堪能した。
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- 20 : 2015/06/11(木) 19:00:21 :
エレン「!!! 何か聞こえる!」
アルミン「!!! エレン!?」
人一倍聴覚の鋭いエレンが、何か巨大な生物の足音がするのを耳にした。
エレン「あっちのほうだッ!」
アルミン「ちょっと待ってよ!」
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- 21 : 2015/06/11(木) 19:01:02 :
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小高い丘に伏せるようにして、下の様子を覗く三人組。
その視線の先には―――・・・・・・
南方のハラドリムたちの軍勢――――――モルドールの黒門に向かって北上しているところだった。
エレン「またモルドールに組みする人間たちか。」
アルミン「!!! 見てッ! じゅうだッ!!!」
アルミンが指さした先には、現在の象の十倍はあろうか、巨大なムマキルが、背中にやぐらを乗せて歩いていた。
ホビットたちにとっては、伝説の動物であるじゅう。
アルミン「クリスタに見せてあげたかったな・・・・・・。」
独り言をつぶやくアルミンに、エレンは思わず、小さく笑った。
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- 22 : 2015/06/11(木) 21:19:44 :
- クリスタがちょい役ってそういう事か!!期待!!!
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- 23 : 2015/06/12(金) 00:21:57 :
- そういうことでありますw
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- 24 : 2015/06/12(金) 00:22:24 :
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ヒュンッ!
突然、あらゆる木陰から現れた人間が、ハラドリムたちに矢を射かけ始めた。
突然の奇襲に混乱したハラドリムたちは逃走に転じていた。
エレン「!!! 人間が人間に矢を向けてるッ!?」
アルミン「僕らはどうやらぐずぐずしすぎた。逃げよう!」
アルミンは立ち上がり、後ろへと走り出したが、フードを被った人間にぶつかってしまった。
アルミン「うわッ!!!」
そのままアルミンは組み伏せられ、人間に取り押さえられた。
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- 25 : 2015/06/12(金) 00:22:54 :
エレン「アルミンッ!!!」
アルミンを取り押さえた人間に飛び掛かろうとエレンは剣を抜くも、その右手を別の人間に取り押さえられた。
エレン「くっ、放せよッ!」
すると、奥のほうからハラドリムたちを襲撃した人間の大将らしき人間が現れた。
エルド「何事だ、グンタ?」
グンタ「不審者を捕えたぞ。」
エレンの右手を押さえている人間―――――グンタはエルドにそう答えた。
アルミン「僕らは罪のない旅人ですッ!」
アルミンは必死に訴えたが、無駄だった。
エルド「ここに旅人はいない。いるのは白い塔のものか、黒い塔のものだ。連れて行けッ!」
――――――エレンとアルミンは、ゴンドールの大将、エルドに捕縛されてしまった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 26 : 2015/06/12(金) 00:26:04 :
アイゼンガルドのオルサンクの塔の中で、ガンダルフに駆逐された白のサルマンは独り言ちていた。
サルマン「白のガンダルフだと・・・・・・愚か者のガンダルフだ。」
一人愚痴を言っていると、彼の背後に間者となっていたグリマが現れた。
グリマ「ガンダルフは三人の従者を引き連れています。」
サルマン「・・・・・・馬の匂いがするぞ。」
思わず顔をしかめるサルマン。
少し気分を害しながらも、グリマはサルマンに報告を続けた。
グリマ「その従者はエルフにドワーフ、そして人間です。
その内の人間ですが、奇妙な模様の入った指輪をしておりました。エメラルドの指輪で、一匹の蛇が金の花冠を持ち上げ、もう一匹がそれを貪り喰らっておりました。」
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- 27 : 2015/06/12(金) 00:27:02 :
サルマンはその指輪に心当たりがあり、古の文献を開いた。果たしてそこには、グリマが言った通りの模様を持つ指輪の挿絵が描かれていた。
サルマン「・・・・・・グリシャの指輪か。」
グリシャの指輪――――――かつてエルフであるキースが友情の証に人間のグリシャに贈った指輪であり、息子のエレンに引き継がれ、のちにアルノール王国国王エレンディルに引き継がれた指輪。
サルマン「その人間、イシルドゥアの末裔という訳か。」
サルマンは文献を閉じると外に出て、地下の広大な穴蔵の中に潜り込んでいった。
サルマン「ピクシスはヘルム峡谷へ民を率いて向かうはず・・・・・・機動力にかけておる。」
その言葉を聞いていたウルク=ハイは邪悪な笑みを浮かべた。
サルマンは逃げ行くローハンの民への追手として、魔狼 に乗ったウルク=ハイの一隊を解き放った。
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- 28 : 2015/06/12(金) 00:42:25 :
ライナー「全く馬鹿げた話だ。」
ライナーは馬にまたがりながら、リコにドワーフについての話をしていた。
――――――ローハンの民たちは平原を通り、 ヘルム峡谷へ向けて危険な行軍をしている真っ最中である。
ライナー「俺たちドワーフには女がいないと思われてる。」
リヴァイ「髭も生えてるしな。」
馬上から、リヴァイの思わぬつっこみに、リコはクスリと笑った。
ライナー「だから馬鹿な連中は、ドワーフは岩から生まれるとか、ドワーフはホモだとかぬかしやがるッ!」
リコ「く・・・・・・はははははッ!」
ライナーの語りがおかしかったのか、リコは思いっきり吹き出した。
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- 29 : 2015/06/12(金) 00:43:07 :
そんなリコの様子を、伯父であるピクシスは、馬の上から感慨深げに眺めた。
ピクシス「姪が笑った姿は久しぶりに見るのう。」
リヴァイは黙って、王の言葉に耳を傾けた。
ピクシス「幼い頃に両親を殺され、それ以来わしの身の世話をすることを宿命とした乙女・・・・・・わが姪ながら、少し気の毒なのじゃ。」
ピクシス王には、姪が少し笑ってくれるだけでもうれしかったのである。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 30 : 2015/06/12(金) 00:43:50 :
リコ「なぁあんた、そのネックレスは誰かからの贈り物なのか?」
リヴァイは不意にネックレスのことを尋ねられ、贈ってくれた女性のことに想いを馳せた――――――これは、ペトラが俺のために送ってくれた、夕星の光を湛えたネックレス。
古くはエルヴィンの祖母、航海者アルミンの母、イドリルが身に着けていたものだ。
リヴァイ「ああ、そうだ。」
リコ「・・・・・・。」
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- 31 : 2015/06/12(金) 00:44:50 :
それ以上言葉が続かなかったリコは、話題を変えた。
リコ「そういえばお前は伯父の祖父と一緒に戦ったことがあるらしいな。」
リヴァイ「ああ、その時ピクシスはまだガキだった。」
リコ「お前・・・・・・いったいいくつなんだ?」
少しためらった後、リヴァイは答えた。
リヴァイ「88だ。」
―――――この男、どう見ても40代ほどにしか見えない。
リコ「お前、もしやドゥネダインの一族か?」
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- 32 : 2015/06/12(金) 00:45:51 :
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ドゥネダイン―――――人間の英雄エレンやエルフの乙女ミカサ、航海者アルミン、今は海中に没したヌメノール王国初代国王たるエルロスの血を引く、驚くべき長寿を与えられた人間の一族。
アルノール王国やゴンドール王国の王家の血筋であり、リヴァイはその最後の末裔であった。
リヴァイ「ああ。」
リコ「驚いたな・・・・・・とっくの昔に滅んだ一族だと思っていたがな。」
リヴァイは少し肩を落とし、独り言のようにつぶやいた。
リヴァイ「・・・・・・ごく少数が生き残り、野伏に身を落とした。ちっ、余計なことを話しちまったな。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 33 : 2015/06/12(金) 17:09:19 :
ヘルム峡谷へ向かうローハンの民を先導していたのは、近衛隊長であるハンネスとキッツであった。
ブルルルルッ!
キッツ「おい、どうしたんだッ!?」
キッツの乗っていた馬が突然嘶き始める。
馬を落ち着かせるためにキッツは手綱を引き、周りへの注意力が散漫になってしまった。
ハンネス「おい、大丈夫か?」
キッツ「くっ、何とかな。」
彼らが馬の制御に気を取られているうちに、丘の上に近づくのは、猛獣の影。
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- 34 : 2015/06/12(金) 17:09:49 :
ゴォオオアァァアアァァァッ!!!
キッツ「!!! うわあぁああぁぁぁッ!!!」魔狼 はキッツに飛び掛かり、喉笛を噛み切った。
ハンネス「くそ、こいつッ!!!」
ハンネスが剣を抜き、魔狼 の上に乗っているウルク=ハイを剣を交えた。
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- 35 : 2015/06/12(金) 17:10:16 :
リヴァイ「!!! あの丘の向こうからだ!」
アニ「行くよ、リヴァイ。」
異変を察知したアニが走り出した。
ハンネス「おらぁッ!」
ウルク=ハイ「ギャアウッ!」
鋭い一撃で、ハンネスはウルク=ハイの首を切断。
ついで魔狼 の首筋を切りつけてこれを仕留めた。
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- 36 : 2015/06/12(金) 17:11:11 :
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アニ「あんた、無事かい?」
ハンネス「ああ・・・・・・くそ、キッツが死んだ。」
駆けつけたアニに、ハンネスは毒づいた。
遠目の効くアニが丘の向こうに目を凝らす。
アニ「安心するのはまだ早いね。魔狼 に跨ったウルク=ハイの一団がこちらに向かっている!」
ハンネス「何だとッ!?」
矢をつがえ、弓を引き絞るアニ。
アニ「ピクシスのところへ危急を知らせに行きなッ!」
ハンネス「お、おうッ!」
ハンネスが王の元へ馬を駆け出すと、アニはずっと遠くのウルク=ハイめがけて矢を放った。
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- 37 : 2015/06/12(金) 17:12:26 :
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ピクシス「何事じゃ、ハンネスッ!?」
ハンネス「魔狼 の急襲ですッ!」
第8話
急襲
この知らせに、兵士以外のローハンの民は狼狽えた。
ピクシスは剣を抜くと、叫んだ。
ピクシス「騎馬隊はわしに続けッ! リコ、お前はローハンの民をヘルム峡谷まで導くのじゃ。」
リコ「伯父上、私も戦いますッ!」
ピクシス「ならんッ! お前が最後の砦、ローハンの盾持つ乙女。役割を果たすのじゃ。」
リコ「くッ。」
ピクシスはリコにローハンの民を任せると、自らは先陣に立って馬を駆けていった。
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- 38 : 2015/06/12(金) 17:13:47 :
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ヒュンッ!
ウルク=ハイ「ギャアゥッ!」
一人残ったアニは、次から次へとウルク=ハイに矢を当てていた。
すると、後ろからピクシス率いる騎馬隊が到着。
ライナー「乗れ、アニ。」
ライナーの掛け声に反応し、アニはその身も軽やかに、ライナーの前に跨った。
リヴァイ「このまま突っ込むぞ。」
一陣の風のように、騎馬隊は草原を横切っていく。
ピクシス「突撃ッ!」
ピクシスが剣を掲げ、合図を出した。
ウルク=ハイ「オオォオッ!!!」
向かって来るウルク=ハイも剣を掲げて突撃の合図を出す。
ローハンの騎馬隊と、魔狼 の編隊が、正面から衝突した。
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- 39 : 2015/06/12(金) 17:42:16 :
至る所で剣がぶつかり合い、馬と魔狼 がぶつかり合う。
戦場は、たちまち混戦状態となった。
リヴァイ「はぁッ!」
リヴァイが巧みに馬を操り、敵の間を縫うように駆け抜け、すれ違いざまに斬り裂いていく。
ピクシス「流石じゃな、リヴァイ。わしの血も騒ぐわいッ!」
ピクシスも手綱を取り、16歳年上のリヴァイに後れを取るまいと剣を振るった。
ピクシス「うおおぉおおぉぉぉッ!」
ザシュッ! ウルク=ハイ「ギャアウゥゥッ!!!」
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- 40 : 2015/06/12(金) 18:40:44 :
ヒュンッ!
馬に乗りながらも巧みに弓を操るはアニ。
ライナー「うおッ!?」
アニの後ろに乗っていたライナーは、馬から振り下ろされてしまった。
ライナー「いってぇな・・・・・・てうおッ!?」
落馬したライナーに魔狼 が急襲。
ライナー「おらぁッ!」
ドスッ!魔狼 「グオオォオォォッ!!!」
ライナー「おわッ!」
何とか斧で頭をかち割ったものの、魔狼 の下敷きになってしまった。
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- 41 : 2015/06/12(金) 18:41:20 :
ライナー「くそ、下半身が・・・・・・動かねぇ。」
死んだ魔狼 の下で悪戦苦闘していると、その上からウルク=ハイが現れた。
ライナー(これは・・・・・・まずいッ!)
咄嗟にライナーは手を伸ばし、ウルク=ハイの頭を掴んだ。
ウルク=ハイ「ギャウッ!」
ライナー「おおおおおッ!」
ゴキッ!
首の骨をへし折り、何とか事なきを得た。
ライナー「はぁ、畜生め。」
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- 42 : 2015/06/12(金) 19:07:53 :
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魔狼 「グルルルルル・・・・・・。」
ライナー「・・・・・・マジかよ。」
更に上から魔狼 が現れ、ライナーは思わず声を漏らした。
魔狼 「ガアァアアァァッ!!!」
ブオンッ!
ザシュッ!!!
魔狼 「ギャアウゥゥッ!!!」
駆け寄った戦士が手に持った剣を投げ、それは魔狼 の頭に突き刺さった。
その剣の持ち主はライナーを馬上から見下ろした。
リヴァイ「不様だな、ライナー。」
ライナー「!!! 避けろッ!!!」
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- 43 : 2015/06/12(金) 19:11:00 :
魔狼 「グアアァアアァァッ!」
リヴァイ「ぐあッ!」
背後ろからの急襲。
体をひねり、何とか噛みつかれることだけは免れたが、右腕が魔狼 に着けた馬具に引っかかってしまった。
リヴァイ「く、このクソ野郎がッ!」魔狼 に引きずられていくリヴァイ。
乗っているウルク=ハイが止めを刺そうと剣を抜いた。
リヴァイ「うおおぉおおぉぉぉッ!」
ドスッ! ウルク=ハイ「ギャウッ!」
咄嗟にノルドールのナイフを抜き、ウルク=ハイの腹に突き刺すリヴァイ。
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- 44 : 2015/06/12(金) 19:14:37 :
グオンッ!
リヴァイ「ぐおッ!?」
一瞬飛び跳ねる魔狼 ―――――――その拍子にウルク=ハイがナイフごと落馬。
くそ、絡まった紐が・・・・・・切れねぇ!
そのまま突っ走る魔狼
――――――何とか解こうと悪戦苦闘するリヴァイ。
リヴァイ「うおおぉおおぉぉぉぉッ!!!」
暴走した魔狼 は、そのまま崖へと飛び出した。
リヴァイ「うおああぁああぁぁぁッ!!!」
――――――リヴァイはそのまま、魔狼 と共に奈落の底へと落ちていった。
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- 45 : 2015/06/12(金) 19:43:48 :
ライナー「おらぁ!」ドスッ!
ピクシス「何とか撃退できた様じゃな。」
生き残ったウルク=ハイたちが魔狼 に乗って逃げていく。
アニ「やれやれだね・・・・・・。」
矢を悉く射尽し、くたびれた様子でアニも呟いた。
ふと、アニは次のことに気が付いた。
アニ「・・・・・・リヴァイはどこだ?」
――――――リヴァイの姿が、どこにもない。
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- 46 : 2015/06/12(金) 19:44:12 :
ウルク=ハイ「あっはっはっはっはっ・・・・・・。」
笑い声が聞こえた方を向くと、ノルドールのナイフが腹に突き刺さったウルク=ハイをアニとライナーが発見した。
すかさずライナーが斧を首筋に当てる。
ライナー「殺す前に聞くぞ、リヴァイをどこにやった!?」
ウルク=ハイ「くっくっくっくっくっ・・・・・・あいつは・・・・・・崖に・・・・・・落ちた・・・・・・。」
その瞬間、アニが胸倉をつかんだ。
アニ「あいつが落ちた!? 嘘を付くのも大概に――――「がはッ・・・・・・あ・・・・・・・・・・・・。」
そのままウルク=ハイは事切れた。
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- 47 : 2015/06/12(金) 19:45:09 :
アニ「ん?」
アニはウルク=ハイが手に何かを握っていることに気が付いた。
その手のひらを開けると――――――・・・・・・
リヴァイがペトラから送られたネックレスがそこにあった。
ライナー「あいつ・・・・・・・・・・・・ここから落ちたのか?」
ライナーが崖の下を覗くと、流れの急な川があった。
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- 48 : 2015/06/12(金) 19:45:46 :
ピクシスがゆっくりと近づいてくる。
ピクシス「・・・・・・・・・・・・死体はそのまま打ち棄てていく。」
アニとライナーは思わずピクシスを睨んだ。
ピクシスは目線を少し下に下げると、また元に戻してライナーの肩を叩いた。
――――――そうするよりほかなかった。
またいつ、魔狼 が襲撃しに来るか分からない。
アニとライナーは静かに馬に跨り、リヴァイが落ちていった崖を後にした。
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- 49 : 2015/06/12(金) 19:46:43 :
- 以上で第7話と第8話が終了になります。
次回はいよいよヘルム峡谷に到着です。
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- 50 : 2015/06/12(金) 21:27:30 :
- アイコンがガンダルフになっとるww
どこから持ってきたがぞうだよw
期待w
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- 51 : 2015/06/12(金) 23:24:12 :
- サルマン様ですw
サルマン役のクリストファー・リーが先日6月7日に亡くなられたとのことです。
追悼の意味もこめて、このアイコンです。
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