このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品は執筆を終了しています。
星になった航海者 ~アルミンとヒストリアの物語~
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- 1 : 2015/06/03(水) 12:26:36 :
- 進撃×ロード・オブ・ザ・リング 番外編その2です。
「旅の仲間 ⑤」「旅の仲間 ⑥」と「二つの塔」に出てきた伝説、星になった航海者アルミンのお話を書いていきます。
よろしくお願いします<m(__)m>
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- 2 : 2015/06/03(水) 12:27:22 :
やだ・・・・・・じいちゃんと離れたくないッ!
行くのじゃ、アルミンッ!
やだッ!! いやだぁあぁぁぁッ!!!
行けぇぇッ!!!
止めて、父さんッ! 放してッ! じいちゃんッ!! じいちゃぁぁぁんッ!!!
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- 3 : 2015/06/03(水) 12:28:18 :
・・・・・・・・・・・・エルフと人間。両方の種族の血を引くお前は、必ずや双方の救世主となる。
頼んじゃぞ・・・・・・アルミン・・・・・・。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 4 : 2015/06/03(水) 12:30:04 :
~7年前~
大理石の街並み美しい、鐘の音響くエルフの隠れ王国、ゴンドリン。
白く輝く王宮の一室で、輝く金髪を持った男の子が産声を上げた。
トゥオル「よくやったぞ、イドリルッ! これで俺も・・・・・・パパになったんだ!」
父親になった人間、トゥオルはわが子の誕生に目を細めた。
イドリル「ふふ、もう、はしゃいじゃって・・・・・・子供みたい。」
トゥアゴン「まったくじゃ。少しは落ち着かんか、トゥオルよ。」
トゥオル「ごめん、義父さん・・・・・・俺、嬉しくて・・・・・・。」
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- 5 : 2015/06/03(水) 12:30:58 :
孫の誕生に、ノルドール族の上級王にして、ゴンドリンの王たるトゥアゴンの口もとも緩んだ。
トゥアゴン「わしも嬉しいぞ・・・・・・アルミン。」
イドリル「アルミン?」
トゥアゴン「うむ、わしが考えたこの子の名じゃ。どうじゃイドリル? 父の願いを、聞いてはくれんか?」
イドリル「あなたはどう? トゥオル?」
トゥオル「アルミン・・・・・・分かるかい? 俺がアルミンのパパだぞ~!」
イドリル「あらあら、アルミンッたら泣き疲れてぐっすりと眠っちゃったみたいね。」
後に偉大な航海者として知られる半エルフ、アルミンは、その輝くような光を湛えたまま、すやすやと寝息を立てていた。
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- 6 : 2015/06/03(水) 22:36:40 :
仲間のエルフたちの中でも、アルミンは取り分けて聡明な子供として成長した。
本を愛し、古今東西の伝承に通じたアルミンを、同年代の子供は変わり者だと陰口をたたいた。
いじめっ子1「おい、お前がここにいると邪魔なんだよッ!」
いじめっ子2「何また読んでんだ? どれどれ、見せてみろよッ!?」
アルミン「!!! 止めろ! 僕の本を返すんだ!」
淡々と言葉を紡ぐアルミンを、いじめっ子たちはますます面白がった。
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- 7 : 2015/06/03(水) 22:37:49 :
バシッ! いじめっ子1「痛てッ!」
―――――飛んできた石のつぶてが右手に当たり、持っていたアルミンの本を取り落した。
ファーラン「感心しないねぇ、なぁにやってるのかな?」
いじめっ子1「げっ、ファーラン!」
イザベル「俺だっているんだぜ。」
いじめっ子2「ちっ、めんどくせぇなぁ・・・・・・行くぞ。」
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- 8 : 2015/06/03(水) 22:38:13 :
アルミンの兄貴分と姉貴分として、ファーランとイザベルはアルミンと一緒に育った仲だった。
ファーラン「おい、大丈夫か?」
イザベル「立てるか、アルミン?」
イザベルが差しのべた手をアルミンは取らず、呟くように言った。
アルミン「大丈夫・・・・・・一人で・・・・・・立てるよ・・・・・・。」
イザベル「何だよ・・・・・・可愛くねぇなぁ。」
ファーラン「まぁまぁ、アルミンも大変だったんだからさ。」
ブーブー文句を言うイザベルをなだめるファーラン。
アルミンは何も言わず、立ち上がってそのまま自分の本を拾った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 9 : 2015/06/03(水) 22:39:34 :
トゥアゴン「何!? アルミンがいじめられているじゃとッ!?」
部下からの報告に接し、ゴンドリンの王は激怒した。
―――――しかしそれは、いじめられっ子に向けられた怒りなどではなかった。
バタンッ!
アルミン「!!! じいちゃんッ!? どうしたの、そんなに急いで!?」
トゥアゴン「アルミンッ!!!」
凄い剣幕で怒った祖父を初めて見たアルミンは、心底怯え、怖気づいた。
歴戦の強者であり、王である以前に一人の戦士であるトゥアゴンは、いじめられる孫の弱さが許せなかったのだ。
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- 10 : 2015/06/03(水) 22:40:19 :
トゥアゴンはそのまま剣を抜き、孫に迫った。
トゥアゴン「聞いたぞ・・・・・・お前が・・・・・・いじめられておると・・・・・・何故お前はやり返さなかったのじゃ?」
アルミンは黙ったまま答えなかった。目を大きく見開き、じっと王の様子を窺っている。
その態度はトゥアゴンの怒りにますます拍車をかけた。
トゥアゴン「答えよッ! アルミンッ!!!」
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- 11 : 2015/06/03(水) 22:41:01 :
やがてアルミンは口を開いた。
アルミン「やられたことをやり返すだけでは、彼らと同レベルです。僕は・・・・・・私は、彼らと同じになりたくはありませんッ!」
トゥアゴン「成程な・・・・・・アルミン。お前、わしに斬られようと、やり返さぬと申すか?」
アルミン「それ以前の問題です。王は間違っておられますッ!」
トゥアゴン「その口を閉じんかッ! アルミンッ!!!」
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- 12 : 2015/06/03(水) 22:42:00 :
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大きく剣を振り上げるトゥアゴン。
そのまま剣はアルミンに振り下ろされ―――――・・・・・・
アルミンの首筋に当たる直前で止まった。
目を大きく見開き、恐怖におののいて涙を流しながらも、アルミンはすっとその場に立って動かなかった。
そんな孫の様子を見たトゥアゴンは、名剣グラムドリングを鞘に納めた。
トゥアゴン「わしは・・・・・・お前の意志の強さに負けたわ。その強さ、大切にせよ。」
トゥアゴンが部屋から出ていった後、アルミンは決意した。
アルミン「僕、もっとしっかりしなくちゃ・・・・・・。相手が手を出せないように。相手が認めてくれるように・・・・・・。」
―――――アルミン七歳の時、運命の日の一ヶ月前のことであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 13 : 2015/06/04(木) 06:33:45 :
その日からアルミンは、苦手にしていた武芸に打ち込み始めた。
トゥアゴン「今日も精が出るのう、アルミンや。」
弓を引き絞り、的を見据えたアルミンは、ひょうと矢を放った。
アルミン「う~ん、中心から少し外れちゃったかな・・・・・・。」
トゥアゴン「最初に比べればはるかに上達したじゃろう。」
王の目から見ればまだまだ未熟。だが、体の弱かったアルミンが日に日に強くなっていくのを見て、少し頼もしく感じ始めていたのも事実。
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- 14 : 2015/06/04(木) 06:34:28 :
あの日から、アルミンの顔に見られたあどけなさは消え、替わりに現れたのは精悍さ―――――大魔王モルゴスに一騎打ちを挑んで討死した父王、フィンゴルフィンの、あの精悍さだった。
今は亡き父の面影をアルミンに見出し、以前とは違うアルミンがそこにいることに、トゥアゴンの心は安らいだ。
トゥアゴン「さて、明日は祝祭じゃ。祭りの準備を手伝ってはくれんかのう? アルミンや?」
アルミン「はい! じい様!」
鍛錬の手を止め、アルミンは祖父に向かって微笑んだ。
次の日は夏の門と呼ばれる、ゴンドリン最大の祝日。前日の夜から祝われ、夜明けと共に夏の到来を祝福する。
ゴンドリンの街は、夜通し行われる宴の準備のために大変にぎわっていた。
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- 15 : 2015/06/04(木) 06:35:54 :
イザベル「お~い! アルミ~ン!」
アルミン「あ、イザベル! ファーラン!」
ファーラン「よう、アルミン。」
ここ最近アルミンは武芸の鍛錬のために、二人とあまり会っていなかった。
ファーラン「何だかアルミン、変わったな。」
アルミン「そうかな?」
イザベル「絶対そうだって! 前はなんか女の子~って感じだったけど、今では男の子だもん!」
ファーラン「お前はもうちょっと女らしくてもいいと思うんだけどな、イザベル。」
イザベル「なっ、ひで~よ! ファーランの兄貴!」
アルミン「ふふっ。」
イザベル「アルミンまでッ!? ねぇちょっとひどくない!?」
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- 16 : 2015/06/04(木) 06:37:19 :
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久しぶりに三人一緒に集まった幼馴染みたちは、祭りの準備を一緒に手伝うことになった。
ファーラン「へぇ、最近のアルミンが急に男らしくなったのはそういうわけだったのか。」
アルミン「うん、知識だけじゃなくて、武芸も身に着けようと思って、じいちゃんに頼み込んだんだ。」
―――――勿論アルミンは祖父に剣を突きつけられたことは話していない。
イザベル「おいおい、今にも敵が攻め込んでくんじゃねえの!?」
ファーラン「笑えない冗談だね、イザベル。」
シュンとするイザベル。
アルミン「ははは・・・・・・。でも、あり得ないことでもないと思うな。」
ファーラン「アルミン?」
アルミン「僕らの都は、500年もの間、モルゴスの目を逃れてきた。だからといって、これからも見つからない保証なんて、どこにもないよ。」
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- 17 : 2015/06/04(木) 06:39:01 :
ドゴォオオォォンッ!!!
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- 18 : 2015/06/04(木) 06:39:36 :
アルミン「うわッ!!!」
イザベル「な、何なんだよッ!!!」
ファーラン「大地が急に・・・・・・揺れた?」
アルミン「あ、あれはッ!!!」
―――――その時はいよいよ訪れた。
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- 19 : 2015/06/04(木) 06:40:32 :
環状山脈エホリアス。その向こうに、雲を突くほど高い、山のような影。
恐ろしい両翼を広げ、巨大な咆哮を響かせる黒瞑々たる火炎龍―――――アンカラゴン。
アルミン「そんな・・・・・・あの山々は・・・・・・数千メートルもあるんだぞ!?」
次の瞬間、龍の口から、破滅の炎が流れ出た。
その強力な一撃が、エホリアスの山脈の一部を吹き飛ばし、ゴンドリンの守りを切り崩した。
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- 20 : 2015/06/04(木) 06:41:40 :
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アルミン「山に・・・・・・穴・・・・・・あけられた・・・・・・。」
開けられた穴からは、オークやトロル、そして、炎と闇の悪鬼、バルログの大部隊。空からはドラゴンの大軍が一気になだれ込んできた。
あまりの出来事に、アルミンは放心状態となった。
アルミン「もう、おしまいだ・・・・・・この都は、モルゴスの軍勢に殲滅されるッ!!!」
―――――危急を知らせるため、アルミンはゴンドリンの都の頂上にある王宮へと走った。
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- 21 : 2015/06/04(木) 06:42:34 :
- 期待!!
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- 22 : 2015/06/04(木) 07:21:59 :
- 期待ありがとうございます!
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- 23 : 2015/06/04(木) 07:23:06 :
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息を切らせ、アルミンは王宮の広間に入ってきた。
トゥアゴン「何事じゃ、アルミンッ!?」
アルミン「モルゴスの軍勢です! 敵が遂に我らの都の位置を突き止めました!」
廷臣たちが皆一様に動揺する中、トゥアゴンは暗い顔をしていった。
トゥアゴン「いよいよ、マンドスの呪いがわしの身にもふりかかったか・・・・・・。」
マンドスの呪い―――――ノルドール族から大宝玉シルマリルが盗まれた時、ノルドール族の長であり、大宝玉の製作者フェアノールはモルゴスに父親を殺され、激しい復讐心に駆られた。
そして、聞くだに恐ろしい誓いを立てた。
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- 24 : 2015/06/04(木) 07:24:00 :
フェアノール「たとえイルーヴァタールの御名によろうと、何人もこれを破ること、あるいは取り消すことのできぬ。
これを守らぬようなことがあれば常闇に呑まれるべし。
ヴァラであれ、鬼神であれ、エルフであれ、まだ生まれておらぬ人間であれ、あるいは、偉大なると卑小なるとを問わず、善なると悪なるとを問わず、世の終わりの日まで時が世界にもたらすべきいかなる被造物であれ、かれらからシルマリルの一つを奪う者、手許に置く者、所有する者は誰であれ、この世の果てまで、復讐と憎悪をもって追跡するであろう。」
この誓約に縛られたノルドール族は、至福の地アマンから、モルゴスのいる中つ国へ出撃しようとし、船を出すことを拒んだテレリ族のエルフを虐殺して船を奪った。
恐るべきエルフの同族殺害が、ここに初めて行われ、至福の地は血で穢された。
そのことは、ヴァラールの神々の怒りを買った。
そして、神々の一人である予言者マンドスが姿を現し、ノルドール族へ向けて宣告を下した。
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- 25 : 2015/06/04(木) 07:25:20 :
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マンドス「尽きぬ涙を汝らは流すであろう。ヴァラールは、ヴァリノールに汝らの入るのを拒み、汝らを閉め出すであろう。汝らの嘆きの声の谺すら、アマンの山並みを越えて聞こえてくることはないであろう。
フェアノール一族に対しては、ヴァラールの怒りがこれなる西方の地より、最果ての東の地に至るまで向けられるであろう。彼らに従う者にもその怒りは向けられるであろう。
彼らの誓言は彼らを駆り立て、しかも彼らを裏切り、彼らが追跡を誓った宝物そのものを常に彼らの前から奪い去るであろう。
初め良きものも全て悪しき結末に至るであろう。この悪しき結末は、血に繋がる者の裏切りにより、また裏切りへの恐れによりもたらされるであろう。
彼らはとこしえに奪われたる者となるであろう。
汝らは不当にも同族の血を流して、アマンの地を汚した。汝らは血には血を支払い、アマンを過ぎれば、死の影の元に住まうであろう。
エルは汝らがエアでは死なぬように定め給うたが故に、汝らは病魔に襲われることはないであろうが、非業の死を遂げることはあるかも知れぬ。そして非業の死を遂げるであろう。
武器により、拷問により、嘆きによって命を落とすであろう。
そこに汝らの霊魂は久しく留まり、汝らの肉体に切に焦がれるであろうが、汝らが命を奪った者達全員が汝らのために嘆願してくれようとも、慈悲を見出すことは殆ど無いであろう。
中つ国で命を長らえ、マンドスの許に来ぬ者は、あたかも重き荷を負うているが如く、この世に倦み果て、次第に衰え、後に来るより若き種族の前に、悔恨の影の如き者となり果てるであろう。
以上ヴァラールの言である。」
この呪いが下された場所に、トゥアゴンはいたのである。
同族殺害には手を出さなかったが、誓約のためにやむなくフェアノールと行動を共にし、父王フィンゴルフィンは遂に破滅した。
そして、この呪いがいよいよ自分の身にも迫っていることを、トゥアゴンは悟った。
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- 26 : 2015/06/04(木) 19:08:19 :
- 期待!
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- 27 : 2015/06/04(木) 21:22:10 :
- 期待ありがとうございます!
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- 28 : 2015/06/04(木) 21:51:20 :
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トゥアゴンは玉座から立ち上がり、グラムドリングの剣を抜いた―――――剣から放たれる青い光は、オークの接近を告げていた。
トゥアゴン「迎え撃つぞ、トゥオル! エクセリオン! グロールフィンデル!」
トゥオルエクセリオングロールフィンデル「「はッ!!!」」
屈強な部下である泉のエクセリオンも剣を抜く―――――彼の名剣オルクリストも同様に青い光を放っていた。
トゥアゴン「アルミン・・・・・・お前は母イドリルの元へ行け! 何があっても母を守るのじゃ!」
アルミン「はい! じい様!」
こうしてトゥアゴンはエルフの軍勢を率い、モルゴスの軍勢との戦いに打って出た。
城門を固く閉ざし、壁下に群がるオークやバルログ、ドラゴンの軍勢に大量の矢を射かけ始めた。
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- 29 : 2015/06/04(木) 21:52:57 :
アルミン「母さんッ! 母さんッ!!」
祖父から命ぜられ、アルミンは母の部屋に行ったのだが、人の影すらなかった。
不安に駆られ、アルミンは必死になって母を呼んだ。
すると、王宮の奥の部屋から悲鳴が聞こえた。
アルミン「!!! 母さん!!!」
部屋に入ると、王の甥であるマイグリンが、母イザベルに手をかけようとしているところであった。
即座にアルミンは弓を構えた。
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- 30 : 2015/06/04(木) 21:53:40 :
アルミン「マイグリン!!! お前が・・・・・・僕らを裏切ったんだなッ!?」
マイグリン「相変わらず鋭いガキだ! ああそうさ! 僕がモルゴスにここを教えたんだッ!!!」
マイグリンは喚いた。
マイグリン「全部イドリルが悪いんだッ! イドリルが、僕のものにならないからッ!!!」
―――――初め良きものも全て悪しき結末に至るであろう。この悪しき結末は、血に繋がる者の裏切りにより、また裏切りへの恐れによりもたらされるであろう。
アルミンの脳裏に、マンドスの呪いの一節がよぎった。
ゴンドリンは、王の甥たるマイグリンの裏切りによって、その栄華が閉じられようとしている。
この時、アルミンもまた次のことを悟った。
―――――マンドスの呪いは、神々の怒りは、この僕にも向けられている。
いつかこの呪いは、僕をも破滅に追いやるだろう。
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- 31 : 2015/06/05(金) 04:52:32 :
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ドゴオォオォォンッ!!!
マイグリン「うわッ!!!」
―――――王宮に衝撃が走る。
ドラゴンの火球が宮殿に直撃、たちまち火の手が上がった。
一瞬の隙をついてアルミンは母の手を握り、引っ張った。
マイグリン「!!! 待て、このクソガキッ!!!」
破壊と混乱の極みの中にあって、アルミンは必死に母の手を引っ張って逃げた。
イドリル「ダメよアルミン! 追いつかれるわ!」
アルミン「いやだ、離すもんかッ! じいちゃんからの命令だッ!!!」
イドリルの胸に、夕星の光を湛えたネックレスが輝いた。
僕は、この夕星の光を必ず守る。守って見せる!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 32 : 2015/06/05(金) 04:53:30 :
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ドオォオォォンッ!!!
エクセリオン「城門が破られたッ!!!」
トゥアゴン「く、止むをえん・・・・・・撤退せよッ!!!」
遂にゴンドリンの城門は破られ、中にオークの大軍が殺到し始めた。
すると、城門の前にトゥオルは立ちはだかり、その大きな斧を肩に担いだ。
トゥオル「このグランボルレグの斧の錆になりたいものは名乗りでよッ!!! 我が名はトゥオルッ!!! わが名誉にかけて、貴様らをここから先へは進ませはせんッ!!!」
鋼のように重く、剣のように鋭い斧を、自在に振り回す剛勇、トゥオル。
トゥオル「おおぉおおぉおぉぉぉッ!!!」グオンッ!
重量のあるその一撃は、オークをまとめて切り裂き、モルゴスの軍勢を一時押し戻した。
トゥアゴン「今じゃ、一気に前進せよッ!!!」
おおぉおおぉぉぉおおぉぉぉッ!!!
エルフの軍勢が浮足立ったオークの軍勢めがけ、一気呵成に攻め込んでいく。
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- 33 : 2015/06/05(金) 04:54:19 :
そこにすかさず、バルログの軍勢が現れた。
炎と闇を司るこの怪物は、後年の個体よりもずっと力が強く、吐き出す炎も桁違い。炎の鞭、炎の剣もまた強力であった。
バルログ「ゴアァアアァァアアァァッ!!!」
その悪しき炎は、突撃していったエルフを、瞬く間に灰へと変えていった。
トゥオル「ぐうっ!!!」グオン!
バルログ「ゴアァアアァァアアァァッ!!!」バキィ!
大斧と炎の剣が火花散らす。必死に攻撃を防ぐも、数で押され始めるトゥオル。
グロールフィンデル「トゥオル様ッ!!!」
エクセリオン「助太刀いたすッ!!!」
二人の臣下がそれぞれ剣を抜き、バルログの軍団に斬りかかる。
エクセリオングロールフィンデル「「おおぉぉおおぉぉぉッ!!!」」
エクセリオンの剣がバルログの一体を斬り捨て、グロールフィンデルの剣がトゥオルへの攻撃を防いだ。
トゥオル「す、すまねぇな、助かった・・・・・・。」
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- 34 : 2015/06/05(金) 04:55:17 :
ドゴオォオォォンッ!!!
トゥオルエクセリオングロールフィンデル「「!!!」」
トゥアゴン「王宮に・・・・・・ドラゴンの火球が・・・・・・。」
トゥオル「イドリルッ!!! アルミンッ!!!」
一瞬のよそ見。
バルログ「ゴオオォオォオォォッ!!!」ヒュルル・・・・・・
パァン! トゥオル「ぐあッ!」
炎の鞭で囚われるトゥオル。
トゥアゴン「はぁあぁぁッ!!!」スパァッ!
グラムドリングの剣がバルログの腕を切断。
バルログ「ギャアァアァァァッ!!!」
トゥオル「おおぉおおぉぉぉッ!!!」グオンッ!
ドシュッ!!!
一瞬の隙をついてバルログを横に凪いだ。
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- 35 : 2015/06/05(金) 04:56:02 :
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トゥアゴン「王宮へ行け、トゥオルッ!!!」
トゥオル「!!! しかしッ!!!」
トゥアゴン「命令じゃッ!!! イドリルとアルミンを守れッ!!!」
王の命令に一瞬の逡巡の後、答えた。
トゥオル「・・・・・・ご武運をッ!!!」
―――――無事でいてくれ、イドリルッ!!! アルミンッ!!!
戦いを王たちに任せ、トゥオルは王宮へと走り出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 36 : 2015/06/05(金) 17:02:20 :
アルミンとイドリルは王宮を抜け出し、マイグリンに追われながらも、北にある脱出口へと急いだ。
イザベル「アルミンッ!」
ファーラン「こっちだッ!」
アルミン「!!! 二人とも、何で戻ってきたのッ!?」
イザベル「ほっとけるかよッ!」
ファーラン「急ぐよ、アルミンッ!」
マイグリン「く、そこにいたのかぁッ!!!」
なおも追って来るマイグリン。
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- 37 : 2015/06/05(金) 17:02:52 :
遂にアルミンとイドリル、イザベルとファーランは、街の北はずれにあるカラグドゥーアの断崖にまで追い詰められてしまった。
マイグリン「やっと追い詰めたね、イドリルッ! これで、君は永遠に僕のものだッ!!!」
イドリル「ふざけないでッ!!!」
覚悟を決めて、ハザファングの剣を抜くイドリル。
母の様子を見て、アルミンも弓を構えた。
そんな母子の様子を見たマイグリンは逆上した。
マイグリン「ふざけるな、イドリルッ!!! 君のせいで僕はこんなになったんだッ!!!」
剣を振り上げ、斬りかかるマイグリン。
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- 38 : 2015/06/05(金) 17:03:19 :
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その一撃は、しかし、グランボルレグの大斧が受け止めた。
トゥオル「おいテメエ、俺のもんに何手を出してんだッ!!!」
マイグリン「!!! トゥオルッ!!!」
トゥオル「おおぉおおぉぉぉおおぉぉぉッ!!!」ブオンッ!
バキャアッ!
マイグリン「うわあぁああぁああぁあぁあぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁッ!!!」
大斧の一撃に吹き飛ばされたマイグリンの体は、カラグドゥーアの断崖に落下し、崖に三回ぶつかって炎の中に呑まれていった。
アルミン「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・父さん・・・・・・。」
トゥオル「よく頑張ったぞ、アルミン。よく・・・・・・イドリルを守ってくれた。」
アルミン「う・・・・・・う・・・・・・うわあぁああぁぁぁッ!!!」
―――――今まで恐怖と戦い、気丈に振る舞っていたアルミンは、ようやく7歳の子供に戻った。
トゥオルは我が子をしっかりと抱きしめ、小さいながらも勇敢な我が子を称えた。
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- 39 : 2015/06/05(金) 17:04:09 :
トゥアゴン「無事じゃったかッ! イドリルッ! アルミンッ!」
トゥアゴンとグロールフィンデルが遅れてアルミンの元へと来た。
トゥオル「!!! 義父さん、エクセリオンはどこに!?」
トゥアゴン「・・・・・・エクセリオンは、バルログの首領ゴスモグとの一騎打ちにて、最後を遂げおった。」
トゥオル「なっ・・・・・・。」
トゥオルは言葉を失った。
―――――ゴンドリンにおいて武勇の誉れ高き泉のエクセリオンは、燃え盛る王宮の中でゴスモグと相打ちになり、庭園にあった泉の中へ、共に沈んでいったのだった。
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- 40 : 2015/06/05(金) 17:05:00 :
ドゴオォオォォンッ!
トゥオル「くそ、まだバルログとドラゴンの軍勢が・・・・・・。」
遂に王宮が陥落し、ゴンドリンの街はアルミンたちがいる北部を除いて蹂躙されていた。
トゥアゴン「トゥオル。」
トゥアゴンはトゥオルの肩を掴み、託すように言った。
トゥアゴン「お前が、生き残った民衆を導くのじゃ。これで、エルフの国は全て滅びる。じゃが、生けるものあれば、また立て直すことも出来よう。後のことは頼んじゃぞッ!」
トゥオルは落涙し、王の手をしっかりと掴んで答えた。
トゥオル「はッ! この俺が・・・・・・必ずッ!」
王の手を離したトゥオルはトゥアゴンに背を向け、生き残ったエルフたちに命じた。
トゥオル「至急、抜け道へ向かえ、この都はもう落ちた。何としても生き延びよッ! 上級王トゥアゴン最後の命令だッ!!!」
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- 41 : 2015/06/05(金) 17:06:20 :
アルミン「やだ・・・・・・じいちゃんと離れたくないッ!」
緊張の糸が切れたアルミンは、もはや先ほどのようには振る舞えず、年相応に大粒の涙を流し始めた。
トゥアゴンは、しかし、厳しい顔をしてアルミンに厳命した。
トゥアゴン「行くのじゃ、アルミンッ!」
アルミン「やだッ!! いやだぁあぁぁぁッ!!!」
トゥアゴン「行けぇぇッ!!!」
悲しみを押し殺し、鬼のような形相で、トゥアゴンは叫んだ。
義父の厳命を聞き、トゥオルも涙を堪え、泣きじゃくるアルミンを脇に抱えた。
アルミン「止めて、父さんッ! 放してッ! じいちゃんッ!! じいちゃぁぁぁんッ!!!」
泣き叫ぶアルミンを抱えて、トゥオルはエルフたちを先導し、秘密の抜け道へと走り出した。
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- 42 : 2015/06/05(金) 17:07:17 :
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トゥアゴン「・・・・・・・・・・・・エルフと人間。両方の種族の血を引くお前は、必ずや双方の救世主となる。
頼んじゃぞ・・・・・・アルミン・・・・・・。」
孫の姿が見えなくなってから、トゥアゴンは、一粒の涙を流し、青く光る剣を抜いた。
兜を被り直し、トゥアゴンは迫りくるバルログやドラゴンの軍勢に向かって叫んだ。
トゥアゴン「見よッ! ノルドールの上級王は、かくも兜を正してから、死ぬものじゃぞッ!!!」
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- 43 : 2015/06/05(金) 17:08:52 :
―――――バルログとドラゴンの大軍に囲まれ、トゥアゴンは壮絶な最期を遂げた。
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- 44 : 2015/06/06(土) 17:45:06 :
あんなに美しかったゴンドリンの都は、赤黒い炎に舐め尽くされた。
水の音なう都、或は、石の歌。
都を称える麗しい修辞も、今や虚しく響くだけ。
―――――どうして僕らは奪われるの?
僕らが一体、何をしたの?
トゥオルに率いられたゴンドリンの残党は、秘密の抜け道を抜けて、キリス・ソロナスの山道へと辿り着いた。
高い連峰に囲まれた、山腹をうねうねと螺旋状に這うように続く道であり。右手は絶壁になっている険しい道だった。
グロールフィンデル「トゥオル様、もう少しです!」
トゥオル「ああ、ここを超えれば・・・・・・ゴンドリンから脱出できる。」
―――――僕の涙は、枯れていた。
燃え盛る炎が水を蒸発させるがごとく、涙は既に蒸発し、替わって僕の心には、今まで感じたことの無い感情が兆し始めた。
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- 45 : 2015/06/06(土) 18:19:37 :
ゴオォォオオォォオオォォッ!!!
トゥオル「なッ!!!」
狭い山道の上に、バルログの一体が再び現れた。
―――――残党を一人も討ち漏らさぬよう、モルゴスは用心深く、すべての道という道に伏兵を用意していた。
グロールフィンデル「先にお行き下さいッ!!!」
グロールフィンデルが剣を抜き、バルログとの一騎打ちに挑んだ。
グロールフィンデル「おおぉおぉおぉぉッ!!!」
剣と剣がぶつかり、激しい火花散り、吹き出す炎が黒々とした煙を生じさせていく。
グロールフィンデルは遂にバルログを山頂にまで追い詰めた。
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- 46 : 2015/06/06(土) 18:19:50 :
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バルログ「ギャアウゥゥッ!!!」
剣の一閃がバルログの心臓を貫き、前のめりになって山道から崖に落ちていく。
グォッ!
ガシッ! グロールフィンデル「ぐあぁッ!!!」
刹那、死にかけたバルログが最後の力を振り絞ってグロールフィンデルの長い金髪を掴んだ。
トゥオル「!!! グロー――――・・・・・・「うわあぁああぁぁぁッ!!!」
言い終わらないうちにグロールフィンデルは、断崖の下、奈落の底へと落ちていった。
―――――――トゥアゴンの臣下の中でも、特に忠実で、特に愛された金髪のグロールフィンデルは、トゥオルへの忠義を貫いたまま、その生涯を終えた。
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- 47 : 2015/06/06(土) 18:21:11 :
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アルミンは再び呆然自失したが、泣こうにももう涙が出てこなかった。
兆しはじめた感情はさらに大きくなり、アルミンの体内を焦がすまでになっていたからだ。
トゥオルにしても、事情は同じであった。
トゥオル「ッ!!! モルゴスッ!!! この世の黒き敵めッ!!!」
トゥオルは膝をつき、両手で地面を叩いた・・・・・・手から血が滲むほど、地面を叩いて叫んだ。
アルミン「父さんも・・・・・・同じなんだね・・・・・・。」
そう呟くと、僕らはもう一度、山腹から見えるゴンドリンの都を見渡した。
渦巻く炎に蹂躙されて、朦々とした黒煙は天にまで達している。
―――――これが、僕の見たゴンドリンの・・・・・・僕の故郷の最後の姿だった。
アルミン「僕は・・・・・・僕の故郷を滅茶苦茶にした、モルゴスを絶対に許さない・・・・・・。」
――――――――――夏の門の祝祭日の前日。
エルフの国の中で最も美しく、最も繁栄したゴンドリンは、かくの如く滅亡した。
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- 48 : 2015/06/06(土) 18:51:27 :
- 予想以上に長くなってしまいましたので、いったん区切ります。
次回は、ヒストリアサイドから物語を進めていきます。
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- 49 : 2023/07/09(日) 19:41:40 :
- http://www.ssnote.net/archives/90995
●トロのフリーアカウント(^ω^)●
http://www.ssnote.net/archives/90991
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2 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 16:43:56 このユーザーのレスのみ表示する
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16 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 19:01:59 このユーザーのレスのみ表示する
ちょっと時間あったから3つだけ作った
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アカウントの譲渡について
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36 : 2021年11月6日 : 2021/10/13(水) 19:43:59 このユーザーのレスのみ表示する
理想は登録ユーザーが20人ぐらい増えて、noteをカオスにしてくれて、管理人の手に負えなくなって最悪閉鎖に追い込まれたら嬉しいな
22 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:37:51 このユーザーのレスのみ表示する
以前未登録に垢あげた時は複数の他のユーザーに乗っ取られたりで面倒だったからね。
46 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:45:59 このユーザーのレスのみ表示する
ぶっちゃけグループ二個ぐらい潰した事あるからね
52 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:48:34 このユーザーのレスのみ表示する
一応、自分で名前つけてる未登録で、かつ「あ、コイツならもしかしたらnoteぶっ壊せるかも」て思った奴笑
89 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 21:17:27 このユーザーのレスのみ表示する
noteがよりカオスにって運営側の手に負えなくなって閉鎖されたら万々歳だからな、俺のning依存症を終わらせてくれ
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