この作品は執筆を終了しています。
エレン「旅の仲間」 ⑦ 進撃×ロード・オブ・ザ・リング
-
- 1 : 2015/05/21(木) 10:19:38 :
- 進撃×ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間の第7話です。
http://www.ssnote.net/series/2230
恐らくこれが旅の仲間の最終話になります。
-
- 2 : 2015/05/21(木) 10:27:27 :
霧降山脈に水源を発し、中つ国の中央を流れる大河アンドゥイン。
その西河岸を、昼夜厭わず走り続ける軍団があった。
妖術によってオークと人間を掛け合わせて生まれた戦士――――ウルク=ハイの一団。
森の中を、まるで影のように走り去る。
オークと違い、日の光を厭わない彼らは、白い手の印―――――サルマンの印を体につけて行動していた。
ラーツを先頭に、その影は、エレンたち旅の仲間に近づきつつある。
―――――貴重な武器を持つホビットを誘拐するという使命を帯びて――――・・・・・・・・・・・・
第7話
離散
-
- 3 : 2015/05/21(木) 12:48:01 :
- お!最終話ですかー
-
- 4 : 2015/05/21(木) 15:46:34 :
- >>3
はい、やっと3分の1が終わります。
よろしくお願いします<m(__)m>
-
- 5 : 2015/05/21(木) 15:47:15 :
リヴァイ「ちっ・・・・・・・・・・・・あのクソ野郎。大河で撒いたと思ったんだがな・・・・・・・・・・・・。」
日もすっかり暮れて夜の帳が降り、エレンたち一行は大河アンドゥインの岸で仮眠を取っていた――――――リヴァイとベルトルトは岩陰から、一行を付けてくる醜い生き物を見張っていた。
ベルトルト「ゴラムかい?」
リヴァイ「あぁ・・・・・・・・・・・・丸太を漕いでつけてきやがった。」
――――――一行を付けてきたゴラムは、エレンたち一行とは反対側の対岸に丸太を停め、息を潜めていた。
-
- 6 : 2015/05/21(木) 15:48:21 :
-
アルミン「エレン・・・・・・・・・・・・少し眠りなよ?」
エレン「・・・・・・・・・・・・何だか眠くならねえんだ。」
ホビット庄を旅立ってからというもの、エレンは充分な睡眠を取れなくなりつつあった。食欲も失せつつある。
エレンは指輪の魔力に蝕まれている。
――――アルミンはこのことに気が付いていたが、結局こうして声をかけることしかできなかった。
心配しているアルミンが疲れに負けて眠りについた後も、エレンは人一倍鋭くなった聴覚が捉える様々な音に耳を傾けていた。
-
- 7 : 2015/05/21(木) 15:51:19 :
-
リヴァイ「ゴラムが敵に捕まると厄介だな。」
ベルトルト「・・・・・・・・・・・・ゴンドールに行こう、リヴァイ。そこで兵を募って、モルドールへと行くんだ。」
リヴァイ「兵力なんざクソの役にも立たねぇ。」
ベルトルト「何を恐れているんだい? リヴァイ?」
リヴァイ「」
――――――リヴァイとベルトルトが言い争っているのが聞こえる。
ベルトルト「確かに人間は弱い・・・・・・。でも、名誉を知っている。僕らが今団結して邪悪に立ち向かわなきゃ、ただ全滅するのを待つだけだ。」
リヴァイ「」
ベルトルト「・・・・・・・・・・・・知らなかったよ。君がそんなに臆病者だなんて・・・・・・・・・・・・。」
リヴァイ「指輪をテメェの故郷に近づけさせはしねぇ。」
ベルトルト「!!!」
エレン「」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 8 : 2015/05/21(木) 16:17:28 :
早朝、俺たちは早々に船に乗り込み、川下りを再開した。
――――――リヴァイとベルトルトは一言も口をきいていない。
アルミン「ねぇエレン・・・・・・・・・・・・リヴァイとベルトルト、何だか不機嫌そうだけど、何かあったの?」
エレン「・・・・・・・・・・・・分からねぇ。」
アルミン「そう・・・・・・・・・・・・。」
今日はずっと船を漕いでいた。
――――――途中何度か休憩をはさみ、気が付けば昼を過ぎていた。
-
- 9 : 2015/05/21(木) 16:18:11 :
-
リヴァイ「おい、エレン。」
突然エレンに声をかけるリヴァイ――――――その口調は、僅かに高揚していた。
エレン「なんだよ、リヴァイ。」
リヴァイ「見ろ・・・・・・・・・・・・アルゴナスだ。」
エレンたち一行の目の前に、見上げなければ視界に入りきらないほどの巨大な石像が姿を現した―――――両岸にそれぞれ彫り込まれた石像は、千年以上もの風雨に耐え、なおも偉大な王の姿をとどめている。
リヴァイ「俺の先祖にようやく会えた。」
――――――普段血筋の話などしないリヴァイが、ここでは感嘆した様子を僅かながら見せていた。
二体の石像はそれぞれ左手を前に突き出し、ゴンドール王国への侵入者を厳しく阻んでいるように見える。
ゴンドールの初代王――――――兄王イシルドゥアは向かって右側、髭を生やし、右手にナルシルの剣を握っている。
向かって左側は弟王アナリオン――――――右手には斧を持ち、兄と並んで侵入者を厳しく見下ろしているかのようだった。
かつてのゴンドールの国境、このアルゴナスの門ーーーーーー二人の偉大な王の足元を、エレンたち一行は畏怖の感情を抱きながら通過していく。
ベルトルト「ゴンドールの・・・・・・・・・・・・偉大な王。」
――――――ベルトルトも、その巨大な威容にすっかり感服していた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 10 : 2015/05/21(木) 17:04:46 :
アルゴナスの門を過ぎると、目の前にはラウロスの大瀑布――――――轟音を轟かせながら、勢いよく大河の水が落下していく。
エレンたち一行は、向かって左側の岸に上陸し、休憩を取り始めた。
リヴァイ「東河岸はオークどもに見張られている。出発は日暮れを待ってからだ。向こう岸に辿り着いたら、船を隠して出発する。」
ライナー「ふん、エミン・ムイルの山越えは楽しいぞ?」
ライナーが皮肉っぽく言った――――――ずっと漕ぎ続けていたた疲れからか、ライナーは少し苛立っていた。
ライナー「切り立った岩山が迷路のように続くからな・・・・・・そこから先はもっと楽しい。」
マルコ「楽しい?」
ライナー「多くの死者が眠る呪われた死者の沼地が待っている。」
ジャン「はっ、幽霊だなんているわけねえだろ? なぁアルミン?」
-
- 11 : 2015/05/21(木) 17:05:31 :
-
アルミン「」
ジャン「おいッ!? そこ頷くところだろ!?」
アルミン「死者の沼地――――――伝承によると、三千年前の戦いの死者が葬られたところに出来た沼地なんだよね・・・・・・。」
―――――物知りなアルミンは、少し蒼ざめてジャンに言った。
リヴァイ「その通りだ、アルミン。そこを通る。せいぜい精気を養うんだな。」
ライナー「何が精気を養えだ・・・・・・・・・・・・ったく。」
――――――愚痴を交えつつも、ライナーは横になった。
-
- 12 : 2015/05/21(木) 17:06:53 :
リヴァイ「・・・・・・・・・・・・おい、エレンはどこへ行った!?」
リヴァイのこの一言に、アルミンもハッとして飛び起きる。
――――――しまった。疲れてエレンから目を離してしまった。
リヴァイは次のことにも気が付いた。
――――――――――ベルトルトも、いなくなっている。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 13 : 2015/05/21(木) 22:14:23 :
――――――一つの指輪は、その魔力でもって誘惑し、破滅へと導いていく。
ガラドリエルのこの言葉の意味を俺は考えたくて、一人、川岸から程近いアモン・ヘンの山に来ていた。
「指輪の魔力に屈しちゃいけないよ、エレン。」
エレン「!!!」
――――――振り返るとそこには、薪を拾っているベルトルトの姿があった。
ベルトルト「君はとてつもなく重い重荷を背負っている。休めるときに休んでおくんだ・・・・・・・・・・・・エレン?」
-
- 14 : 2015/05/21(木) 22:14:58 :
エレン「・・・・・・・・・・・・なぁ、ベルトルト。お前、ホントに俺のこと心配していってくれてんのか?」
ベルトルト「えっ?」
エレン「俺は・・・・・・・・・・・・お前が信じらんねえよ・・・・・・・・・・・・。」
ベルトルト「エレン?」
ゆっくりとエレンに近づくベルトルト。
――――――まるで何かを狙う狩人のように。
ベルトルト「ダメだよ、エレン・・・・・・・・・・・・君は指輪に蝕まれているんだ。」
少しずつ後ずさりするエレン。
ベルトルト「指輪が奪われたら・・・・・・・・・・・・すべてが終わってしまうんだッ!」
拾った薪を地面に叩き付けるベルトルト――――――もうあの優しく、仲間想いなベルトルトではなくなっていた。
-
- 15 : 2015/05/21(木) 22:16:19 :
-
エレン「俺は、お前の故郷には行かねぇぞ、ベルトルトッ!!!」
ベルトルト「少し借りるだけだ・・・・・・・・・・・・それで、僕の故郷は守られるんだッ!!!」
――――――狂ってやがる。
いや・・・・・・・・・・・・俺が・・・・・・・・・・・・狂わせたんだ・・・・・・・・・・・・。
エレン「指輪は俺がモルドールへと持っていくッ!!! これは俺に課せられた使命だッ!!!」
ベルトルトに背を向けて歩き出すエレン。
-
- 16 : 2015/05/21(木) 22:19:49 :
ベルトルト「このわからず屋めッ!!!」
突然ベルトルトはエレンに飛び掛かった。
ベルトルト「僕にその指輪をよこすんだッ!!!」
エレン「くっ、この裏切りもんがぁぁぁぁぁッ!!!」
咄嗟にエレンは、指輪を嵌めた。
ベルトルト「!? エレンが・・・・・・・・・・・・消え―――――ぐあッ!」
消えたと思うと、見えない力に蹴飛ばされ、ベルトルトは仰向けに倒れた。
-
- 17 : 2015/05/21(木) 22:20:29 :
ベルトルト「・・・・・・・・・・・・そうか、分かったぞッ!!! サウロンに指輪を渡しに行く気だなッ!!??
・・・・・・・・・・・・忌々しいホビットッ! この悪魔の末裔がッ!!!
殺してやるッ! 根絶やしにしてやるッ!!!」
いきり立って叫ぶベルトルト――――――立ち上がろうと力を込めると、足を取られて不様にも坂を転げ落ちた。
ベルトルト「・・・・・・・・・・・・エレン?」
――――――僕は・・・・・・エレンに何をした?
辛い重荷を背負っている仲間に対して、何をやった!?
ベルトルト「・・・・・・・・・・・・僕は・・・・・・・・・・・・なんてことを・・・・・・・・・・・・。」
今更気が付いても遅かった。
――――――僕は、指輪の魔力に屈してしまった。
ベルトルト「ごめん・・・・・・・・・・・・エレン・・・・・・・・・・・・僕を、許してくれ・・・・・・・・・・・・エレンッ!!!」
-
- 18 : 2015/05/21(木) 22:53:53 :
影の世界に入ったエレンは、そのままアモン・ヘンの山頂にある石造りの高御坐へと登って行った。
――――――「視る椅子」と呼ばれるこの場所で、エレンははるか遠くを見渡した。
エミン・ムイルの山々超え、死者の沼超え、影の山脈飛び越えて―――――・・・・・・・・・・・・
かの暗黒の国、モルドール――――そこに位置する暗黒の塔、バラド=ドゥア。
そして――――その頂点で燃え盛るかの目・・・・・・・・・・・・サウロンを。
思わず後ずさりしたエレンは、指輪をはずそうとして登った高御坐から落下――――――――拍子で指輪が外れた。
エレン「あでででで・・・・・・・・・・・・くそ、くそ、くそぉおッ!!!」
当り散らそうとしても、どうにもならなかった―――――――あのベルトルトが、俺を・・・・・・・・・・・・襲ってきやがった。
「エレン?」
-
- 19 : 2015/05/21(木) 22:54:22 :
-
エレン「!!!」
―――――――思わず振り返ると、リヴァイがそこにいた。
エレン「リヴァイッ! ベルトルトが・・・・・・・・・・・・ベルトルトがッ!!!」
エレンの尋常ではない様子を見て、リヴァイは次の言葉をかけた。
リヴァイ「指輪は無事か?」
俄かに、エレンの顔に恐怖と怒りが走った。
エレン「!!! お、俺に近寄んじゃねぇッ!!!」
咄嗟に左手で剣を抜いた―――――――右手は指輪を守るように握りしめている。
リヴァイ「馬鹿な真似は止めろ、エレン。俺はお前の味方だ。」
エレン「お前は指輪に勝てんのかッ! 誘惑に勝てんのかよッ!!!」
エレンは右手の拳を開き、一つの指輪をリヴァイに見せた。
リヴァイ「!!!」
-
- 20 : 2015/05/21(木) 22:55:08 :
―――――――その指輪は、見れば見るほど完璧な円形に見えた。
まじりっけなしの純金製・・・・・・・・・・・・そして、恐ろしいほどの魔力を秘めた魔法の指輪。
この指輪さえあれば、俺は人々をまとめ上げ・・・・・・・・・・・・すべてを支配する王になれる。
リヴァイはゆっくりと手を伸ばし、エレンの右手首を、左手で掴んだ。
エレン「!!!」
-
- 21 : 2015/05/21(木) 22:55:41 :
-
そのままリヴァイは右手でエレンの拳を閉じ・・・・・・・・・・・・エレンの胸に当てた。
リヴァイ「出来れば・・・・・・・・・・・・滅びの山の火口まで、テメエを守りたかったんだがな・・・・・・・・・・・・。」
エレン「・・・・・・・・・・・・リヴァイ。」
エレンの剣が青白い光を発した。
エレン「!!! リヴァイ・・・・・・・・・・・・これは!?」
リヴァイはエレンに背を向けると、叫んだ。
リヴァイ「行けッ!!! エレンッ!!!」
エレン「・・・・・・・・・・・・ごめんなさいッ!!!」
そのままエレンは、リヴァイに背を向けて走り出した。
リヴァイが剣を抜き、そのまま進んでいくと――――――サルマンの放ったウルク=ハイの一団が既に到着していた。
大勢のウルク=ハイが、一斉にリヴァイに斬りかかる。
先頭のウルク=ハイの一撃を躱すと、容赦なくリヴァイはウルク=ハイたちに刃を突き立てた。
リヴァイ「先祖の名に懸けて、テメエらを・・・・・・・・・・・・駆逐してやるッ!!!」
リヴァイの剣が、うねるように飛び跳ね、敵を切り裂いた。
-
- 22 : 2015/05/22(金) 00:07:05 :
-
ラーツ「ホビットたちを捕えろッ!!!」
獣が唸るような声で、指揮官のラーツはウルク=ハイたちに指示を出す。
リヴァイに襲い掛かったウルク=ハイとは別のウルク=ハイたちがエレンの後を追跡――――――リヴァイは完全に足止めを食らっていた。
ライナー「リヴァイッ!」
アニ「しっかりしなッ!」
ドワーフとエルフの二人組が、数で押されていたリヴァイの元へ駆けつけた―――――ライナーがタックルで敵をなぎ倒し、アニが弓でウルク=ハイを駆逐していく。
リヴァイ「ちっ、テメエらに助けられるなんてな。」
――――――頼もしい仲間に助けられ、リヴァイは剣の柄に力を籠め直した。
-
- 23 : 2015/05/22(金) 02:52:04 :
-
ウルク=ハイの追撃から逃げるため、エレンは全速力で走った。
エレン「くそ、俺に・・・・・・・・・・・・もっと力があれば・・・・・・・・・・・・。」
――――――この世は残酷だ。弱い俺には、どうしようもできないほどのウルク=ハイたちの追撃。
今の俺には、指輪を奪われることのないよう、逃げることしかできない・・・・・・・・・・・・。
木陰に隠れて、どうにか追跡を躱す――――――ウルク=ハイたちはエレンが隠れたことに気が付かず、その木を無視して通り過ぎていった。
-
- 24 : 2015/05/22(金) 03:00:40 :
「おい、エレンッ!」
――――――ふと声が聞こえた方を見ると、俺とは別の木陰にジャンとマルコが隠れているのが見えた。
ジャン「こっちにこい。すぐに見つかっちまうぞ!」
マルコ「早くするんだ!」
エレンは・・・・・・・・・・・・首を横に振った。
――――――エレンの奴、様子がおかしい。
マルコ「どうして来ないの? 早く!」
ジャン「・・・・・・・・・・・・まさか。」
-
- 25 : 2015/05/22(金) 03:02:30 :
ジャン「あいつ、一人でモルドールへ行こうってのかッ!?」
マルコ「!!! ダメだよ、エレン! 自殺行為だッ!」
――――――エレンのあの目、本気だ・・・・・・・・・・・・。
ジャン「いい加減にしやがれッ! この死に急ぎがッ!!!」
エレジャンマル「「「!!!」」」
――――――向こうからまたウルク=ハイがやってくる。
このまんまじゃ・・・・・・・・・・・・死に急ぎとマルコもろとも捕まっちまって終わりだ。
-
- 26 : 2015/05/22(金) 03:04:17 :
今の俺に出来んのは――――――これしかねぇ。
俺には・・・・・・・・・・・・今やるべきことが手に取るように分かんだよッ!!!
ジャンは茂みから飛び出した。
ジャン「おいテメエら、この俺を捕まえてみやがれッ!!!」
マルコ「!!! ジャンッ!!!」
――――――分かったよ、ジャン! 俺も出来ることはやってやるッ!
マルコ「捕まえて見ろッ!!!」
マルコも茂みから飛び出し、ジャンと一緒にエレンと反対方向へ走り出した。
エレン「ジャン・・・・・・・・・・・・マルコ・・・・・・・・・・・・すまねぇ・・・・・・・・・・・・。」
二人が注意をひきつけているうちに、エレンは再び走り出した。
-
- 27 : 2015/05/22(金) 10:39:34 :
-
マルコ「やったよッ! あいつら、俺たちを追いかけてきたッ!!!」
ジャン「バカ野郎ッ! とっとと逃げるぞッ!!!」
――――――追いかけてくるウルク=ハイの群れから、ジャンとマルコが山を下りながら全速力で逃げていく。
ジャン「!!! 正面からも来やがったッ!!!」
マルコ「!!!」
最悪だ・・・・・・・・・・・・エレンを逃がせたのはいいものの、代わりに俺たちが敵に捕まっちまうなんて・・・・・・・・・・・・。
-
- 28 : 2015/05/22(金) 10:39:56 :
ジャン「捕まってたまるかよッ!!!」
剣を抜くジャン――――――死が俺たちを襲う、その瞬間まで戦い抜いてやるッ!!!
マルコ「どこまでも一緒だよ、ジャンッ!!!」
親友と一緒に戦うことを決意し、マルコも剣を抜いた。
ウルク=ハイ「グオォオォォオオオォォォオオォォォォッ!!!」
先端が横に曲がった剣を振り上げるウルク=ハイ――――――その振り下ろされる一撃を、横から割って入った剣が受け止めた。
ジャンマル「「ベルトルトッ!!!」」
ベルトルト「うおおぉおおぉぉぉおおぉぉぉッ!!!」
一撃を受け止めたベルトルトはそのまま刃を滑らせ、ウルク=ハイを切り裂いた。
-
- 29 : 2015/05/22(金) 12:20:50 :
リヴァイとライナー、アニの奮闘ぶりはまことに凄まじかった――――――彼らの周りには死体の山が築かれ、立ち向かうウルク=ハイを悉く死体に変えていった。
アニ「く、キリがないね。」
ライナー「なぁに・・・・・・まだまだこれからだッ!」
――――――アニとライナーが種族のしがらみを超えて息を合わせ、敵を打ち破ろうとしていた丁度その時。
リヴァイ「!!! ゴンドールの合図ッ!!!」
遠くから響いてきたのは、ゴンドールの執政の家に伝わる由緒ある角笛の音――――――ベルトルトの救援信号だった。
音のする方へ走り出すリヴァイ。
-
- 30 : 2015/05/22(金) 12:21:26 :
ブオォォォォォッ! ブオォォォォォッ! ブオォォォォォッ!
角笛を鳴らしながらも、向かって来る敵をその剣で駆逐するベルトルト。
ジャン「おらぁッ!」 マルコ「はぁッ!」
―――――――――ジャンとマルコも石を投げて応戦。
ベコンッ! ウルク=ハイ「ギャアウッ!」
ウルク=ハイたちの顔面へ次々とヒットさせていく―――――――石を投げさせては、ホビット族の右に出る種族はいなかった。
思わぬホビットたちの活躍に、ベルトルトの顔もほころんだ。
ベルトルト「よし、ジャン、マルコ・・・・・・・・・・・・リヴァイたちが来るまで頑張ろう!」
ジャン「おうッ!」 マルコ「うんッ!」
-
- 31 : 2015/05/22(金) 12:22:05 :
ヒュン!
ドスッ! ベルトルト「あ”ッ!」
―――――――はは・・・・・・・・・・・・なに・・・・・・これ・・・・・・・・・・・・
何で僕の手は、血で染まっているの・・・・・・・・・・・・
何で僕の・・・・・・・・・・・・左胸に・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・黒い矢が、突き刺さっているの?
-
- 32 : 2015/05/22(金) 12:23:06 :
―――――――その瞬間をジャンとマルコはその目で見た・・・・・・・・・・・・まるで時が止まってしまったかのように、ゆっくりとベルトルトが膝をつくのを・・・・・・・・・・・・。
ジャン「お、おい・・・・・・・・・・・・嘘だろ、ベルトルト・・・・・・。」
マルコ「そ、そんな・・・・・・・・・・・・。」
ベルトルト「うおぉおおぉぉおおぉぉおおおぉぉぉぉッ!!!」
出せるだけの雄叫びを上げ、ベルトルトは立ち上がってウルク=ハイに刃を向けた――――――まるで蝋燭が、最後の瞬間に激しく燃え上がるかのように。
ヒュン!
ドスッ! ベルトルト「ぐあッ! ・・・・・・・・・・・・あっ・・・・・・・・・・・・」
再び膝を地面につくベルトルト―――――――ラーツの黒い矢が、再び左胸に突き刺った。
-
- 33 : 2015/05/22(金) 12:23:57 :
-
ベルトルト「はぁ・・・・・・・・・・・・はぁ・・・・・・・・・・・・うわああぁぁぁああぁああぁぁあぁぁぁッ!!!」
再び立ち上がり、向かって来るウルク=ハイを切り刻むベルトルト。まるで燃え上がる炎のように、剣を振るい、叫んだ――――――――――
ヒュン!
ドスッ! ベルトルト「ああぁあぁぁ・・・・・・・・・・・・」
三本目の矢を、再び左胸に受け、ベルトルトは再び膝をついた。
――――――ゴンドールの角笛が、真っ二つに割れた。
ジャン「うおおぉぉおおぉぉぉッ!!!」
マルコ「あああぁぁああぁぁぁッ!!!」
二人のホビットが剣を持ってウルク=ハイの軍団に突っ込んでいく。
何体かウルク=ハイを斬り倒すものの、体格の差は埋めようがなかった。
―――――――ベルトルトの奮闘も虚しく、ジャンとマルコは連れ去られていった。
-
- 34 : 2015/05/22(金) 12:24:28 :
ベルトルト「はぁ・・・・・・・・・・・・はぁ・・・・・・・・・・・・。」
膝をつき、死を待つばかりのベルトルトの前に、一体のウルク=ハイが立ちふさがった。
ウルク=ハイの首領、ラーツは、止めを刺そうと弓を引き絞った。
ラーツは満面の笑みを浮かべ、矢尻をベルトルトの頭に向けた。
-
- 35 : 2015/05/22(金) 12:24:51 :
リヴァイ「はあぁああぁぁッ!!!」
矢を放とうとしたラーツにリヴァイが体当たり、矢はベルトルトの顔をそれた。
ラーツも応戦し、取っ組み合いになる。
体格で勝るラーツはリヴァイを蹴り倒し、踏みつける。
ドスッ! ラーツ「グオオォオォォッ!!!」
ノルドールのナイフを左足に突き刺し、リヴァイも応戦。体勢を立て直そうとする。
バキッ! リヴァイ「ぐあッ!!!」
拳で殴られ、吹き飛ばされるリヴァイ―――――――足からナイフを引き抜き、ナイフを投げつけるラーツ。
ギャリンッ!
ナイフを剣ではじき、ラーツに斬りかかるリヴァイ。ラーツも剣を抜いて応戦。
剣術に秀でたリヴァイがラーツを圧倒、剣を持った右腕を切り落とし、腹部に刃を突き立てる。
リヴァイ「はぁッ!!!」
剣を引き抜き、最後にラーツの首を刎ねた。
-
- 36 : 2015/05/22(金) 12:25:20 :
リヴァイ「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・。」
ラーツを討ったリヴァイは、仰向けに倒れたベルトルトの元へと駆け寄った。
ベルトルト「・・・・・・ごめん・・・・・・・・・・・・ジャンと・・・・・・マルコが・・・・・・・・・・・・」
リヴァイ「分かってる。俺が助け出してやるから安心しろ。」
ベルトルト「エレンは・・・・・・エレンは・・・・・・どこに・・・・・・・・・・・・」
リヴァイ「大丈夫だ、あいつは旅立っていった。指輪は遠くへ行った。」
少し安心したように、ベルトルトは涙を流した。
ベルトルト「僕は・・・・・・・・・・・・指輪の誘惑に・・・・・・・・・・・・負けた・・・・・・・・・・・・エレンから・・・・・・・・・・・・指輪を・・・・・・・・・・・・」
リヴァイ「お前は、立派に戦った・・・・・・・・・・・・名誉を、汚さなかった。」
矢を抜こうとするリヴァイを、ベルトルトはもういいと押しとどめた。
ベルトルト「もう・・・・・・・・・・・・おしまいだ・・・・・・・・・・・・僕も・・・・・・・・・・・・人間の世界も・・・・・・・・・・・・」
-
- 37 : 2015/05/22(金) 12:26:02 :
リヴァイは、ベルトルトの左手を取ると、強く握った。
リヴァイ「俺の血に・・・・・・・・・・・・どれ程の力があるかは分からねぇ。だが、俺たちの故郷、俺たちの民は、この俺が守ってやる。」
ベルトルトの目をまっすぐ見つめ、リヴァイは決意を込めていった。
リヴァイ「約束しよう・・・・・・・・・・・・俺は、必ず王になる。」
-
- 38 : 2015/05/22(金) 12:26:26 :
今わの際に、ベルトルトは微笑んだ。
ベルトルト「僕らの故郷・・・・・・・・・・・・僕らの・・・・・・・・・・・・民・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・心残りだ、リヴァイ・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・僕らの、指揮官・・・・・・いや・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・我らが・・・・・・王よ・・・・・・・・・・・・
-
- 39 : 2015/05/22(金) 15:58:18 :
リヴァイは右手の拳を額に当て、唇に当てると、一言、つぶやいた。
リヴァイ「安らかに眠れ、ゴンドールの息子。」
―――――――両手をベルトルトの顔に当て、ゆっくりと、その額に口づけをした。
ややあって、ライナーとアニが到着。
ライナー「・・・・・・・・・・・・ベルトルト。」
ライナーが膝をつき、アニが顔を背ける――――――リヴァイがベルトルトの顔から手を離し、立ち上がった。
リヴァイ「ゴンドールの民は待ち続けるんだろうな・・・・・・・・・・・・二度と帰らぬ指揮官を・・・・・・・・・・・・。」
リヴァイの瞳から、一筋の涙が、零れ落ちた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 40 : 2015/05/22(金) 16:31:07 :
―――――――――俺は、これ以上、仲間を傷つけることは出来ない。
この指輪は、丁度ベルトルトを誘惑したように、一人一人を誘惑していく。
一緒にいるだけで、俺は仲間を、殺してしまう。
だから・・・・・・・・・・・・モルドールへは、俺一人で行くッ!!!
決意を固め、エレンは大河アンドゥインに止めてあった小船の一つに乗り込んだ。
―――――――オールに力を込めて、向こう岸へと漕ぎ出していく。
「待ってよッ!!! エレンッ!!!」
エレン「えっ!?」
-
- 41 : 2015/05/22(金) 16:32:02 :
-
思わず振り返ると、息を切らしたアルミンの、岸にいるのが見える――――――――次の瞬間には俺のところに来ようと、水の中を進み始めた。
エレン「来んなよッ!!! アルミンッ!!!」
―――――――ダメなんだ、一緒にいちゃ・・・・・・・・・・・・指輪がお前を、殺しちまうから。
アルミン「僕を置いていかないでよッ! エレンッ!!!」
エレン「来るなッ!!! お前泳げえねだろッ!!!」
構わずアルミンは進んできた―――――――そのままアルミンは川の中へと沈んでいく。
エレン「アルミンッ!!!」
-
- 42 : 2015/05/22(金) 16:32:47 :
―――――――僕の体が・・・・・・・・・・・・沈んでいく・・・・・・・・・・・・。
エレン・・・・・・・・・・・・僕には分かった・・・・・・・・・・・・。
君がいなくなった時・・・・・・・・・・・・あぁ、一人でモルドールへと行く気なんだって・・・・・・・・・・・・。
一緒に・・・・・・・・・・・・行ってあげたかったな・・・・・・・・・・・・。
-
- 43 : 2015/05/22(金) 16:33:11 :
-
沈んでいくアルミンの右腕を、エレンは掴んだ――――――アルミンもエレンの腕を強く握り返し、エレンはアルミンを引っ張り上げた。
バシャアッ!!! アルミン「ゲホッ!!! ゲホッ!!!」
エレン「何で・・・・・・・・・・・・何で付いてきたんだよッ! アルミンッ!!!」
アルミン「・・・・・・・・・・・・ずるいよ。」
エレン「えっ!?」
アルミン「一緒に・・・・・・外へ行こうって約束したじゃないかッ! 君だけで行こうなんて、そんなの・・・・・・・・・・・・ずるいよッ!!!」
アルミンの両目から、涙が零れ落ちる。
エレン「くくく・・・・・・・・・・・・あはは・・・・・・・・・・・・。」
―――――――なんでだろう。可笑しいと思うのに、勝手に涙が溢れてくるのは・・・・・・・・・・・・。
アルミン「笑うなんて・・・・・・・・・・・・酷いよ・・・・・・・・・・・・エレン。」
エレン「ごめん・・・・・・・・・・・・アルミン・・・・・・・・・・・・。」
小舟の上で、俺たちは抱き合った。
お互いの友情を確かめるように、しっかりと、抱き合った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 44 : 2015/05/22(金) 17:02:35 :
-
小舟の上に、俺たちはベルトルトの亡骸を乗せた―――――――オークの豚野郎どもに辱めを受けないよう、その胸に剣と、真っ二つに割れた角笛、討ち取ったウルク=ハイの武器を乗せ、大河アンドゥインへと流した。
ベルトルトの亡骸は、ラウロスの大瀑布へ落ちていき、水の中に抱き取られていった。
アニ「ライナー、リヴァイ。エレンとアルミンが向こう岸に・・・・・・・・・・・・すぐに追いかけよう。」
船を漕ぎ出そうと支度をするアニ。
ベルトルトの着けていた籠手を身に着けながら、リヴァイは去っていくエレンとアルミンを、ただただ見つめていた。
向こう岸へと行こうとしないリヴァイを、ライナーが不審がって尋ねた。
ライナー「おい、リヴァイ・・・・・・・・・・・・お前まさか、エレンとアルミンだけをモルドールへと行かせるつもりか?」
リヴァイは遠くを見たまま答えた。
リヴァイ「そうだ・・・・・・・・・・・・あいつらはあいつらの運命に従った――――――俺たちとは違う運命をたどるだろう。」
-
- 45 : 2015/05/22(金) 17:03:34 :
ライナーはため息をついた。
ライナー「そうか・・・・・・・・・・・・これで、旅の仲間は解散か・・・・・・・・・・・・。」
すると、リヴァイがライナーとアニの肩を掴んだ。
リヴァイ「いや、まだ終わってねえ・・・・・・・・・・・・あのクソガキ二人を助け出す。」
アニ「・・・・・・・・・・・・世話が焼けるね、全く。」
ライナー「あぁ、俺たちがしっかりと面倒を見てやらなきゃな。」
―――――――二人の顔に、笑顔が戻った。
リヴァイ「いらねえものは捨てていけ・・・・・・・・・・・・身一つになって、ウルク=ハイの豚どもを駆逐してやろう。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 46 : 2015/05/22(金) 17:05:38 :
-
エミン・ムイルの岩山のはるか遠く、俺たちは遂にかの影の国をその目に捉えた。
アルミン「あれが・・・・・・・・・・・・モルドール。」
―――――――暗い山脈の向こうで、朦々とした煙が上がっているのが見える。
アルミン「行こう、エレン。」
エレン「あぁ。」
モルドールへの道は、まだまだ遠い・・・・・・・・・・・・。
エレン「・・・・・・・・・・・・なぁ、アルミン。」
アルミン「なんだい? エレン?」
アルミンをしっかり見据え、俺は微笑んだ。
エレン「お前が一緒で・・・・・・・・・・・・よかったよ・・・・・・・・・・・・。」
To be continued to "The Two Towers"
-
- 47 : 2015/05/22(金) 17:06:58 :
- 以上で旅の仲間編は終了になります。
三部作の第一章なのに、こんなに長くなるとは思いませんでしたw
次回は第二章、二つの塔をお送りします。
-
- 48 : 2015/05/23(土) 15:17:29 :
- こちらが続きになります。
http://www.ssnote.net/series/2278
- 著者情報
- この作品はシリーズ作品です
- 「進撃の巨人」カテゴリの最新記事
- 「進撃の巨人」SSの交流広場
- 進撃の巨人 交流広場