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エレン「旅の仲間」 進撃×ロード・オブ・ザ・リング
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- 1 : 2015/05/07(木) 13:04:35 :
- 進撃の巨人と映画「ロード・オブ・ザ・リング」のコラボです。
恐らく大長編になると思いますが、よろしくお願いします。
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- 2 : 2015/05/07(木) 13:06:54 :
三つの指輪は、空の下なるエルフの王に、
七つの指輪は、岩の館のドワーフの君に、
九つは、死すべき運命の人の子に、
一つは、暗き御座の冥王のため、
影横たわるモルドールの国に。
一つの指輪は、すべてを統べ、
一つの指輪は、すべてを見つけ、
一つの指輪は、すべてを捕えて、
くらやみのなかにつなぎとめる。
影横たわるモルドールの国に。
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- 3 : 2015/05/07(木) 13:09:05 :
第1話
待ちに待った誕生日
ホビット族が住むホビット庄では、とある人物の誕生日パーティの準備に大忙しであった。
ホビット庄一の長生き。かつて冒険に出てドラゴンと戦った伝説的人物。
――――――庄内一の変人、ダリス・イェーガーの誕生日がいよいよやってくるとあって、庄内は肉や野菜、葡萄酒にビールが準備の段階で既に振る舞われていた。
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- 4 : 2015/05/07(木) 13:09:50 :
そうそう、ホビットというのは背の低い種族で、大人でも人間の子供くらいの大きさしかない。
特に強靭なわけでも、賢者であるというわけでもない。
でも、平和を愛し、のどかな田園を愛し、今日もせっせと仕事に精を出す。
そんな平穏な日常も・・・・・・悪くはない。
ダリス「悪くは・・・・・・ないな・・・・・・。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 5 : 2015/05/07(木) 13:10:23 :
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庄のはずれにある草むらに寝転んで、二人のホビット族の青年が楽しそうに会話を弾ませている。
この物語の主人公。エレン・イェーガーと、アルミン・アルレルトは、こうやって二人で語り合うのが日課だった。
アルミン「いいかい、エレン。このホビット庄の外には、広い広い世界が広がっているんだよ!」
エレン「おう、今日も伝説を聞かせてくれよ、アルミン。」
アルミン「うん、じゃあ今日は大魔王モルゴスとシルマリルのお話を聞かせてあげるね。」
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- 6 : 2015/05/07(木) 13:13:50 :
エレン・イェーガーと親友のアルミン・アルレルトは、ダリスほどではないが、変わり者として知られていた。
エレンは変人ダリスの養子として、お爺さんの伝説を子守唄代わりに育ってきた青年だった。一方のアルミンは、イェーガー家に長年世話になっている庭師のせがれでありながら、人一倍本が好きで、古今の様々な知識に通じた青年だ。
二人には夢があった。
アルミン「ねぇ、エレン?」
エレン「な、なんだよ?」
アルミン「僕らもいつか、ダリスじいちゃんみたいにさ、一緒に冒険に出ようね。」
好奇心に溢れた、キラキラと光る蒼い眼を向けるアルミン。
つられてエレンも翡翠色の瞳を輝かせる。
エレン「ああ、約束だ!」
自分たちも、ダリスじいちゃんみたいに旅に出て、スリル満点の冒険をしたい。
二人の、長年の夢だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 7 : 2015/05/07(木) 13:15:20 :
馬に曳かれて、一台の馬車がゆっくりとホビット庄に入ってきた。
その荷台にはダリスをお祝いするため、工夫を凝らした魔法の花火がぎっしりと詰め込まれている。
灰色のくたびれたとんがり帽子に灰色のローブ、これまた灰色の長いひげを蓄え、鼻歌を歌いながら手綱を引いているのは―――――ガンダルフ。
偉大なる灰色の魔法使い――――――もっともこのホビット庄では彼に課せられた使命は知られておらず、もっぱらダリスを冒険に導いたよそ者として知られているに過ぎない。
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- 8 : 2015/05/07(木) 13:16:24 :
エレン「遅い!」
アルミン「魔法使いは、随分と待たせるんですね?」
二人に尋ねられ、魔法使いは顔を向けた―――――少しムスッとした顔で答える。
ガンダルフ「魔法使いは遅れん・・・・・・遅すぎず、早すぎず、丁度いいと思ったタイミングで現れる。」
ガンダルフエレアル「「「ふふふふふ・・・・・・」」」
表情を和らげて笑い合う三人―――――前回ガンダルフがホビット庄に来たのは、もう何年も昔。
旧友同士の再会に、長い言葉は不要だった。
エレアル「「ガンダルフ!」」
ガンダルフ「懐かしい友よ。また会えて光栄じゃ。」
魔法使いに飛びつく二人。そのままエレンとアルミンは馬車に乗りこんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 9 : 2015/05/07(木) 18:34:44 :
- 両方読みました!期待です
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- 10 : 2015/05/07(木) 19:53:54 :
- 期待
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- 11 : 2015/05/07(木) 21:05:20 :
- 期待ありがとうございます。
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- 12 : 2015/05/07(木) 21:06:26 :
アルミン「それでね、ガンダルフ。シャイア(ホビット庄)は大変な祝賀ムードなんだよ。」
ガンダルフ「そうか・・・・・・ダリスも喜ぶじゃろうな。」
すると、二人の顔が曇った。
エレン「おじいちゃん・・・・・・最近、変なんだ。」
ガンダルフ「ふむ。」
アルミン「気が付くと・・・・・・はなれ山の地図ばっかり見ているんです。」
ガンダルフはしばらく思案顔になった。もしかするとダリスは、この誕生日パーティを機に――――――・・・・・・
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- 13 : 2015/05/07(木) 21:07:01 :
エレン「どうしたの?」
ガンダルフ「ん? いや、何でもない。」
「「「ガンダルフ!!!」」
馬車を進めていくと、ホビットの子供たちが集まり始めた。
アルミン「皆花火師、ガンダルフの魔法の花火を楽しみにしているんですよ。」
エレン「まあ、ガンダルフは大人には嫌われてんだけどな。」
ガンダルフ「んん?」
ちらっと大人のほうを見やると、なんだかとても冷やかな目線。
アルミン「慎ましく暮らすのが好きなホビットにとって、僕らは異端ですからね。」
ガンダルフ「ふむ、では集まってくれた子供たちのために――――・・・・・・
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- 14 : 2015/05/07(木) 21:07:55 :
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パンパン!
馬車の中から少しだけ、魔法のかかった花火がクルクル飛び出した。
「「「うわぁああぁあぁッ!!!」」」
子供たちから歓声が上がる。
つられて大人たちも少し顔をほころばせた。
アルミン「ふふ・・・・・・。やっぱりガンダルフの花火は凄いや。」
エレン「ようこそホビット庄へ、ガンダルフ。俺たちは誕生日パーティの準備の手伝いに行ってくるよ!」
エレンとアルミンが馬車から降り、広場へと走り出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 15 : 2015/05/07(木) 21:08:30 :
のどかな田園風景を通り過ぎ、ガンダルフの馬車は袋小路へと入っていく。
ダリスの袋小路屋敷は伝統的なホビットの住まいである穴ぐらだ。
穴ぐらといっても、じめじめした過ごしづらいところではなく、木で出来た床や壁。木目の美しい家具や暖かい暖炉。先祖代々の調度品に囲まれた、とても過ごしやすいところなのである。
コンコンコン!
ガンダルフが茶色の長い杖でノックをすると、中から声が聞こえてきた。
ダリス「挨拶の客なら帰ってくれ。私は今忙しいんだ。」
ガンダルフ「では、古い友人ならばどうかね?」
ガチャッ
丸い木製のドアが開き、中からダリスが出てきた。
ダリス「おお、久しぶりだ、わが友よ。」
二人は親愛の抱擁を交わした――――もっとも、身長差があるため、ダリスがガンダルフの腰あたりにしがみついたようにしか見えないのであるが。
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- 16 : 2015/05/07(木) 21:08:56 :
ダリス「待っていたよ、入ってくれ!」
陽気なダリスはガンダルフの帽子と杖を受け取った。
ダリス「ようこそ、ようこそ・・・・・・ブランデーでも飲むかね? いい歳で、私と同じくらい古い100年物のブランデーだ。」
ガンダルフ「お茶だけでいい・・・・・・おっと!」
シャンデリアに頭をぶつけるガンダルフ。揺れるシャンデリアを手で押さえ、振り返って前に進み、
ドン! ガンダルフ「おおッ!」
天井にある柱に頭をぶつけるガンダルフ。
そのまま部屋に入っていくと、机の上にある地図に目が留まった。
この地図は・・・・・・はなれ山か。
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- 17 : 2015/05/07(木) 21:09:36 :
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ダリス「――――という訳だ。さて・・・・・・ガンダルフ?」
ガンダルフ「お茶だけでいい。」
ダリス「!!! 後ろから声をかけんでくれ。おっと、腹ペコでね・・・・・・。」
自分で持ってきたおつまみを食べだすダリスに、笑いながらガンダルフは椅子に座った。
ガンダルフ「構わんよ・・・・・・お前はもしや、旅に出るつもりか?」
ダリス「そうだ・・・・・・またあのはなれ山を見たいと思っているんだ。」
ガンダルフ「エレンやアルミンは・・・・・・感づいておるぞ?」
ダリス「利発な子達だからね・・・・・・この屋敷を残していくつもりだ。」
その時・・・・・・ダリスが胸ポケットに手を当てたのをガンダルフは目にした。
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- 18 : 2015/05/07(木) 21:10:46 :
出されたお茶をすすりながら、ガンダルフは話を続けた。
ガンダルフ「では、ここにはもう戻らないと?」
ダリス「ああ、休みが欲しいんだ。もう戻らなくていい・・・・・・私は長生きしているが、何だか・・・・・・飴のように引き伸ばされている・・・・・・そんな感じがするんだ。」
二人は外に出て、草の生えている斜面に腰を下ろした。
外はもう暮れかかり、夕焼けの最後の光がシャイア全体を染めている。
二人はパイプを片手に、かつての冒険話に花を咲かせていた。
ダリス「さて、このパイプ草は長窪印といってね。最高級品だ。」
口から煙を出し、輪っかを作るダリス。
ガンダルフも口から煙を出し、魔法をかけて帆船を作り出した。
ゆっくりと帆船が輪っかを潜り抜けていく。
ダリス「素晴らしい魔法だな・・・・・・今日は忘れられない一日になりそうだ。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 19 : 2015/05/07(木) 22:40:29 :
- 奇跡!私ロードオブザリング大好きなんです!ホビットも途中まで見ました!提案なんですがエルフの国の弓矢の女性はサシャでどうでしょう?そしてスメアゴルポジションがきになるww
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- 20 : 2015/05/07(木) 22:41:00 :
- 期待です!
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- 21 : 2015/05/07(木) 23:04:49 :
- 期待ありがとうございます!
ホビットで出てくる弓矢の女性、ロードオブザリングでは出てこないんですよね泣
ただ、レゴラスはアニで考えています(!)
そして、ギムリはライナー。ボロミアがベルトルトの予定です。
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- 22 : 2015/05/07(木) 23:57:09 :
ホビット庄に夜の帳が降りてから、夜空にはまるで別世界が広がったかのようだった。
ガンダルフが精魂込めて作った花火が夜空を壮大に彩り、お酒や食べ物が振る舞われ、陽気に歌が溢れだした。
花火がそのまま星のようにキラキラした雨のように降り注ぐ下では、ホビットたちがステップを踏んで踊っていた。
アルミン「・・・・・・。」
チラッとステップを踏んでいるホビットたちを見やるアルミン。
―――――やっぱりクリスタはかわいいなぁ・・・・・・。
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- 23 : 2015/05/07(木) 23:58:07 :
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エレン「おいアルミン!」
アルミン「ふぇッ!?」
間抜けな声をあげたアルミンに、エレンは少し底意地の悪い笑顔を浮かべた。
エレン「クリスタって・・・・・・可愛いよな?」
アルミン「あはは・・・・・・ちょっと飲み足りないかな。」
エレン「踊ってこいよ! ホラッ!!!」
アルミン「うわぁッ! チョットォッ!!!」
無理やりアルミンを立たせ、強く背中を押し出した。
そのままアルミンはクリスタの手に掴まった。
クリスタ「あら? 今日は積極的だね? アルミン?」
アルミン「あわわわわわ・・・・・・。」
クリスタ「一緒に踊ろう?」
――――――女神だ。伝承に伝わっているヴァラールの神々よりも、さらに美しい女神が、ここにいる。
・・・・・・結婚しよ。
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- 24 : 2015/05/08(金) 18:26:26 :
ガンダルフ「ははははははは・・・・・・。」
稀代の花火師による圧巻のパフォーマンス。
ジャン「よし、もう行ったぜ。」
マルコ「やっぱりやめようよ、ジャン。」
ジャン「へ、怖気づいたのかよ?」
こやつら、ジャン・キルシュタインとマルコ・ボットはエレンとアルミンの悪友である。
かつての悪ガキ四人組。その中でも特にジャンはイタズラ坊主として知られ、親友のマルコを振り回していた。
今回は・・・・・・ガンダルフの花火を少しばかり拝借して、思いっきり堪能しようという魂胆なのである。
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- 25 : 2015/05/08(金) 18:27:34 :
ジャン「随分な紹介文だな。」
マルコ「正しくその通りだろ? 俺をさんざん振り回してさ。」
ジャン「断らねえくせによく言うぜ。さて、この花火面白そうだな?」
そう言ってくすねたのはドラゴンの形をした花火である。
二人はテントの中に隠れて、こっそり点火した。
それから、何秒か後のこと。
ボシュウッ!!!
ジャンマルコ「「うわッ!!!」」
テントからいきなり巨大なドラゴンが飛び出した。
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- 26 : 2015/05/08(金) 18:28:09 :
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パーティ会場があっという間に大混乱に陥った。
「うわあぁああぁあぁぁッ!!!」
「ドラゴンだッ!」
アルミン「僕に掴まって、クリスタッ!」
エレン「おじいちゃん! ドラゴンだッ!」
ダリス「ドラゴンじゃとッ!?」
紅い焔で出来た神秘的なドラゴンは、ホビット達の頭すれすれを飛び去り、
湖の向こうで大爆発、華麗な花火となって会場を大いに盛り上がらせた。
アルミン「うわぁ~~~、やっぱりガンダルフの花火は凄いや!」
真っ黒焦げになったジャンとマルコも驚嘆の声をあげていた。
マルコ「・・・・・・すごかったね。」
ジャン「全くだな・・・・・・てあででででで!」
マルコ「いたたたたた!」
耳をつねり上げて怒りの形相を見せているのは、灰色の魔法使いである。
ガンダルフ「ジャン・キルシュタイン、マルコ・ボット。このイタズラ坊主めがッ!」
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- 27 : 2015/05/08(金) 18:31:02 :
二人は罰として、ガンダルフ監視の元、皿洗いをさせられることになった。
マルコ「君のせいだよ、ジャン。」
ジャン「なんだかんだで自分も楽しんでんだろが!?」
ガンダルフ「口ではなく手を動かさんか、ばかもの!」
ジャンマルコ「「痛いッ!」」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 28 : 2015/05/08(金) 19:20:33 :
- この様子だとアルクリですか?
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- 29 : 2015/05/08(金) 19:25:13 :
- マルコが悪ガキか…珍しいですね!
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- 31 : 2015/05/08(金) 20:06:00 :
宴もたけなわになり、花火のおかげもあって会場が大いに盛り上がったところで、いよいよ本日の主役が登場した。
エレン「スピーチッ!」
会場からの割れんばかりの拍手に、ダリスは手を振って応え、111歳とは思えないほどの身のこなしで壇上に立った。
ダリス「会場にお集まりのキルシュタイン家、ボット家。」
それぞれのテーブルから歓声が上がる。
ダリス「ボイジャー家に、アルレルト家。」
ジジミン「イェ~~~~イ!!!」
すっかり酔ったアルミンのおじいちゃんが声をあげた。
アルミン「もうちょっとおじいちゃん、飲み過ぎだよ!」
ジジミン「なあにいッとるんじゃ!? アルミン、お前は飲み足りんぞ!?」
アルミン「もごごごッ!!!」
ダリス「レンズ家に、ブラウドフット家。」
「ブラウドフィートだッ!」
会場に、笑いが起こった。
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- 32 : 2015/05/08(金) 20:07:35 :
ダリス「ああ、すまんすまん・・・・・・とにかく、わしの誕生日の為にお集まりいただき、本当に感謝している。」
会場からは割れんばかりの拍手が起こった。
ダリス「今宵、わしは君たちに、抱いてしかるべき好意を抱きたい。」
この言葉に対しては、拍手はまばらであった。
ダリス「だが・・・・・・残念だ。」
急に真顔になったダリス・イェーガーに、会場はしんと静まり返る。
――――――こっそりと、手に隠し持った指輪。
ダリス「君たちとは・・・・・・今日でお別れを告げなくてはならない。」
ガンダルフ「」
ダリス「今まで君たちに言い出せなかった・・・・・・・・・・・・さようなら。」
――――――こっそりと右手の指に、嵌めた。
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- 33 : 2015/05/08(金) 20:08:11 :
会場は大騒ぎになった。
エレン「何が起こったってんだよ!? おいアルミン!?」
アルミン「ろうしたの~~~~えへへへ~~~~。」
エレン「こんな時に何酔っ払ってんだ! ダリスじいちゃんが――――・・・・・・
・・・・・・・・・・・・いきなり消えたんだ!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 34 : 2015/05/08(金) 20:47:10 :
もし、会場の大混乱がなかったならば、足音に誰かが気付けたかもしれない。
もし、アルミンが酔っていなかったら、何が起こったかをすぐに推理できたかもしれない。
人知れず足音は袋小路屋敷に向かい、ひとりでにドアが開閉した。
ダリス「はっはっはっはっはっ!!!」
指輪を指から引き抜き、屋敷の中にダリスは再び姿を現した。
――――かねてからの計画。皆を出し抜けて満足していた。
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- 35 : 2015/05/08(金) 20:47:44 :
あの時ダリスは、前の冒険で手に入れた魔法の指輪を使い、透明になって姿をくらました。
この衝撃的な事件は、のちに具体的な事件の記憶が忘れ去られた後でも伝承として残り、ダリスはいつか、また財宝をもって帰ってくる伝説的な人物となった。
ダリス「さて、冒険の準備は済んでいる。出発するとしよう。」
杖をもって歩き出した・・・・・・丁度その時。
ガンダルフ「皆を出し抜けて満足かね?」
ダリス「!!! また後ろから・・・・・・君はさすがに出し抜けなかったか。」
ガンダルフ「君はこの屋敷をエレンとアルミンに残していくのだろう?」
ダリス「ああ、二人を・・・・・・よろしく頼むぞ。」
ガンダルフ「わしの両目が届く範囲でならな・・・・・・ポケットの中の指輪も、残していくのじゃろう?」
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- 36 : 2015/05/08(金) 20:48:43 :
ダリス「・・・・・・残していく・・・・・・つもりじゃ。」
ガンダルフ「手放すのが嫌なのか?」
ダリス「いや・・・・・・そんなことは・・・・・・・・・・・・」
ダリス「・・・・・・・・・・・・そうだ。手放したくない。」
ポケットの中から指輪を取り出すと、それをさも大切な人であるかのように愛で始めるダリス。
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- 37 : 2015/05/08(金) 20:49:22 :
ダリス「何でで手放せないのだろうな・・・・・・・・・・・・愛しいもの。いや――――・・・・・・愛しい人だ。」
ガンダルフ「愛しい人じゃと!?」
ダリス「これは誰にも渡さんぞッ!!!」
―――――これは、わしの知るダリスではない。
いきなり怒鳴りだしたダリスに驚愕の色を隠せない。
ガンダルフ「この指輪を今すぐに手放すのじゃ。」
ダリス「ふざけるなッ!!! お前もこの指輪が欲しいんだなッ!? この盗人がぁッ!!!」
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- 38 : 2015/05/08(金) 20:50:18 :
ガンダルフ「ダリス・イェーガーッッッ!!!」
ダリス「ひッ!!!」
背中に影を纏い、恐ろしい形相で睨みつけるガンダルフに、ダリスは思わず後ずさりし、背中を壁につけた。
ガンダルフ「わしを汚い盗人扱いするでないッッッ!!!」
―――――影が去り、再び穏やかな表情に戻してから、諭すように語り掛けた。
ガンダルフ「お前を・・・・・・助けたいのじゃ。」
ダリス「ああ・・・・・・ガンダルフ・・・・・・わしは・・・・・・どうかしていた・・・・・・。」
狼狽する友を、ガンダルフは優しく抱きしめた。
ガンダルフ「友よ・・・・・・すまぬ。」
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- 39 : 2015/05/08(金) 20:50:59 :
しばらく抱きあった後、ダリスはいよいよ出発しようとした。
ガンダルフ「ダリス・・・・・・まだポケットに、指輪が残っておるぞ?」
ダリス「ははは・・・・・・。」
ゆっくりと指輪を取り出し、右手の掌に載せるダリス。
そのままゆっくりと右手を斜めに傾け・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・指輪を床に落とした。
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- 40 : 2015/05/08(金) 20:51:33 :
振り返らずに外に出るダリス。
別れ際に、ダリスはガンダルフに語り掛けた。
ダリス「何だか・・・・・・すっきりしたよ。実は私は物書きでね。今は物語を書いているのだが、最後はこう締めくくるつもりだ。」
ガンダルフ「何かな?」
ダリス「ダリス・イェーガーは、一生幸せに暮らしましたとさ、てね。ありきたりだが、いい締め括りだと思うんだ。」
ガンダルフ「楽しみにしておるぞ。」
ダリス「ふふ、また会おう・・・・・・友よ・・・・・・。」
そう言うなりダリスは、夜のホビット庄を、鼻歌交じりに出発した。
ガンダルフ「また会おう・・・・・・友よ・・・・・・。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 41 : 2015/05/08(金) 22:13:17 :
ゆっくりと扉を開け、ガンダルフはダリスが残していった指輪を見る。
―――――まじりっけなしの、純金で出来た指輪。
何の装飾もなく、ただただ金で出来ている。それだけしか特色はない。
だが、これは間違いなく・・・・・・力の指輪。
拾ってゆっくりと見ようと手を伸ばす。
ガンダルフ「!!!」
刹那、禍々しい炎が一瞬見えた。
―――――これは、わしの手には・・・・・・負えない。
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- 42 : 2015/05/08(金) 22:14:46 :
しばらくのあいだ、ゆっくりと腰を下ろして、暖炉の火を見つめていた。
ガンダルフ「・・・・・・愛しい人・・・・・・愛しい・・・・・・。」
ぼんやりと思索に耽り、独り言ちる。
エレン「おじいちゃん!!!」
エレンが勢いよく飛び込んできた。
エレン「あれ、なんだこれ・・・・・・指輪か?」
何のためらいもなく、エレンは指輪を拾った。
それからゆっくりと、暖炉の前に座っているガンダルフに目をやった。
エレン「ダリスじいちゃんは・・・・・・行っちまったのか?」
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- 43 : 2015/05/08(金) 22:15:15 :
ゆっくりとエレンのほうを向いて、いつになく優しい顔をするガンダルフ。
ガンダルフ「そうじゃ・・・・・・旅立っていったぞ。」
エレン「そんな・・・・・・ホントに行っちまうなんて・・・・・・。」
呆然とするエレン。
―――――予兆があったのには気が付いていたのに、どうして俺は止められなかったのだろう?
いや、俺は・・・・・・止めたくなかったのか・・・・・・
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- 44 : 2015/05/08(金) 22:17:16 :
複雑な表情をするエレンを見て、ガンダルフも気持ちを察したのか、言葉を続けた。
ガンダルフ「お前とアルミンにこの屋敷を残していったぞ。その・・・・・・指輪もな。」
突然すぎて、滑稽な気さえした。
いきなり消えたと思ったら、屋敷を残していきました?
エレン「・・・・・・ふざけんなよ・・・・・・。」
その言葉とは裏腹に、その声は・・・・・・震えていた。
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- 45 : 2015/05/08(金) 22:18:19 :
エレン「ちょっと待って、どうしたんだよ。いきなり立ち上がって。」
ガンダルフ「すまんが、用事が出来たんでな。」
エレン「はぁ!? 来たばっかりじゃねえかよ!」
いきなり出発の準備をし始めたガンダルフに、エレンは戸惑っていた。
正直に言うと、大好きだったダリスじいちゃんがいなくなった直後に、ガンダルフまでいなくなってしまうのが寂しかったのだ。
ガンダルフ「わしは少し調べ物をせねばならんのじゃ。ここに戻ってくるのは当分先じゃ。」
戻ってくる―――――ガンダルフはあえてそういった。
少しでもエレンが寂しくないようにと。
ガンダルフ「それと・・・・・・・・・・・・その指輪は隠しておけ。誰にも、話すでないぞ。」
エレン「えっ!?」
―――――意味深な警告を残し、ガンダルフは立ち去った。
この力の指輪にどのような力が秘められているのか?
エレンはまだ・・・・・・知る由もない。
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- 46 : 2015/05/08(金) 22:21:25 :
- 以上で、第一話は終了です。
一スレッドに一話ずつ乗せていきますので、よろしくお願いします。
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